説明

自動車用手荷物落下防止具

【課題】自動車の運転席以外の座席の座面に手荷物を載置保持させておくことができる手荷物落下防止具。
【解決手段】手荷物落下防止具5は、ガード板6と、装着板7と、固定金具11から成り、装着板7は、中央部近傍にずれ止め板10と滑り防止材10aを設け、他端部に、固定金具11を回動可能に装着し、ガード板6と、ヒンジ部で連結し、柵状に組み立てる。固定金具11を、シートベルトバックル3に着脱可能に挿着することにより、手荷物落下防止具5が座面2に保持され、手荷物4に負荷がかかった際、ガード板6と、固定金具11と,ずれ止め板10が負荷を受け止め、手荷物4の落下が防止される。手荷物落下防止具5を使用しない時は、シートベルトバックル3から取り外し、折り畳んで自動車のドアポケット等に収納ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の運転席以外の座席に一時的に物品を載置する場合に使用する落下防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の座席は人が座る目的で作られており、ハンドバッグ、買い物袋等の手荷物を載置する場所ではないが、一人で運転する場合は、小さな手荷物は座席に載置し易く便利である為安易に載置してしまう。手荷物を載置した状態でブレーキをかけた場合、座席から床に落下し、品物を汚したり破損させたりする場合がある。又、落下時に手荷物に気を取られ、安全上にも問題がある。
【0003】
そこで、この問題を解決するため以下の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、クッション板部材が複数連結され、回動して起立と倒伏を可能にして、座席シートの座面に取り付けてベルトで固定され、座席シートのクッションと、荷物落下防止が共用できる構造が記されている。
【0004】
特許文献2には、シートの座席側方に金具が設けられ、該金具の先端に前記座席の前部と平行となる棒体の両端を固着したアームの下端が回動と、停止が自在になるよう支持され、前記座席の下側から、上側に、前記棒体が移動し、荷物の落下防止をする構造が記されている。
【0005】
特許文献3には、自動車の座席の下部にスライドパイプと、荷物受けネットが取り付けられた引き上げ下げハンドルが組み合わされて荷物落下防止装置が設けられ、必要に応じてハンドルを引き上げて荷物の落下防止を可能にする構造が記されている。
【0006】
特許文献4には、布または網或いは柔軟なシート等を内蔵したリトラクターを自動車の座席または近傍に配置し、該シート先端の係止部を座席の背当て、又は、ダッシュパネル等に係止して、荷物の落下防止をする構造が記されている。
【0007】
特許文献5には、インストルメントパネルの底面前部にカバーシートの基端部を装着し、該カバーシートの先端部に設けられた係止部を、助手席に設けられた固定係止部に接続し係止させることにより、該助手席とインストルメントパネル前部にカバーシートが張り巡らされ、荷物が床に落下しない構造が記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−256538号
【特許文献2】実開平1−178150号
【特許文献3】実用新案登録第3101984号
【特許文献4】実開昭54−081553号
【特許文献5】実開昭61−054933号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されている方法においては、落下防止の目的は十分に果たすことは可能であるが、荷物落下防止器が座席クッションとして助手席の座面に設置されているので、自動車の座席本来の座り心地の良さが損なわれ、安全上も若干問題があると思われる。
【0010】
特許文献2と3は、落下防止の目的は十分に果たすことは可能であるが、座席の前部の下方に落下防止装置が設置されることになり、該装置が座席に座った時に足に当り、座り心地の良さが損なわれ、装置も複雑となりコスト的に問題がある。
【0011】
特許文献4と5は、自動車の座席周辺に大掛かりな装置を設置しておく必要があり、室内の美観も好ましいものではなく、コスト的にも問題がある。
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、自動車の運転席以外の座席及び座席の周辺に装置を固定するのではなく、簡単に着脱ができ、構造もシンプルで、比較的安価に製造できる自動車用手荷物落下防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
自動車の運転席以外の座席の座面に載置できるサイズで、座席の前部とサイドに柵状に組み立てられた複数の板のサイドに位置する板が装着板となり、後端部に金属板の固定金具を連結軸により回動可能に装着し、該固定金具が自動車のシートベルトバックルに着脱可能に挿着でき、前記複数の板はヒンジ部で折り畳みが自在となり、折り畳んで収納が可能な構造を要旨とする。
【0014】
前記金属板の固定金具が回動可能に装着された装着板の中央部近傍に下方に向けた突片のずれ止めを設け、該ずれ止めの先端部に滑り防止材を取り付けることにより、手荷物落下防止具に負荷がかかった際、前記シートベルトバックルに挿着された固定金具を基点に、装着板にトルクがかかり手荷物落下防止具にズレが発生する。このトルクによるずれを防止して、手荷物をしっかり保持できる効果を持たせた構造を要旨とする。
【0015】
自動車の座席の形状、及びシートベルトバックルの位置は各自動車メーカー、機種により異なるので、前記金属板の固定金具の装着による位置調整が必要となる。その為、該固定金具の位置変更が可能な装着孔を複数設け、前記連結軸の位置変更を可能にして、自動車の座席の形状に合わせた調整ができる構造を要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
手荷物落下防止具を必要に応じて、自動車の座席(座面)に載置し、前記金属板の固定金具は、自動車のシートベルトを挿着する時と同様、シートベルトバックルに固定金具を挿入することにより簡単に挿着でき、座席の座面前方とサイドに板の壁が手荷物のガードとなり、急ブレーキをかけても手荷物が座面から落下することは無い。
【0017】
手荷物落下防止具が不要の時は、シートベルトバックルから取り外し、折り畳んでドアポケット等に収納するため、座席周辺に装置が不要で、自動車の座席本来の座り心地を損なうことが無い。さらに、構造がシンプルで、安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の自動車用手荷物落下防止具の使用例の斜視図。
【図2】本発明の自動車用手荷物落下防止具の斜視図。
【図3】本発明の自動車用手荷物落下防止具の正面図。
【図4】本発明の自動車用手荷物落下防止具の平面図
【図5】図3の固定金具取り付け部のA−A拡大断面図。
【図6】「図2」の折畳んだ状態の斜視図。
【図7】「図6」の平面図。
【図8】本発明の複数のヒンジ部からなる自動車用手荷物落下防止具の斜視図。
【図9】「図8」の折畳んだ状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について図1から図9により詳細に説明する。図1は、本発明の手荷物落下防止具5を、自動車の座席シート1の座面2に載置し、シートベルトバックル3に固定金具11を挿着して、手荷物4を載置した使用状態である。
【0020】
図1〜図4に示す、手荷物落下防止具5は座面前方に位置するガード板6と座面サイドに位置する装着板7が固定金具11とずれ止め板10とを備え、ヒンジ部8で略L字形に連結されて柵状となり、開閉軸9で回動し、折り畳みが自在となる。図6と図7は手荷物落下防止具5の折り畳んだ状態である。図8と図9は複数のヒンジ部からなる実施形態である。以下、図1に示す手荷物4が載置された側を内側とし、固定金具11側を外側として説明する。
【0021】
ガード板6は、図2と、図4に示すように、板が座席シート1の座面2に沿う形で形成され、ヒンジ部8へ繋がった形成がなされている。ガード板6の先端の曲折部6aは手荷物4が自動車のブレーキ等の作用でガード板6に当った後の横ズレを防止するため、45度から90度内側へ曲折されている。曲折寸法は、折り畳んで収納する場合に不都合でない寸法であれば良い。
【0022】
装着板7は、図2〜図4に示すように、一端部がヒンジ部8となり、ガード板6と開閉軸9により回動可能に組み合わされる。他端部は固定金具11が連結された連結軸12を嵌挿する位置決め孔7aが複数個設けられている。該位置決め孔7aは、図5に示す、連結軸12の軸がゆるく嵌挿するサイズで、嵌挿後、軸の回り止めとなる孔の形状である。但し、位置決め孔7aは、複数個のネジ孔で、連結軸12を直接ねじ込むことも可能である。さらに、最端部は、図7に示すように、ガード板6を折り畳んだ状態で、ローレットノブ14がガード板6に接触しない寸法で内側へ曲折されている。
【0023】
ずれ止め板10は、下端部が舟底形に湾曲した形状の板で、装着板7の中央部近傍の内側の位置で、下方に突出して取り付けられている。このずれ止め板10の下端部は直線でも良いが、図3に示すように舟底形に湾曲させることにより、シートベルトバックル3に固定金具11を挿着し、座面2に載置時、手荷物落下防止具5の姿勢を保ち易いと共に、座面2への当たりも柔らかく、シートを傷め難い。ずれ止め板10はネジ等により、着脱自在に取付けを可能にすることにより、反対側(上部)に取り付けることで、手荷物落下防止具5を180度反転させて使用することも可能である。この場合、ガード板6と装着板7は上下対称の形状が望ましい。ずれ止め板10は装着板7と一体で形成してもよい。
【0024】
ずれ止め板10の下端部に取り付けられた滑り防止材10aは、図1に示す、ガード板6に負荷がかかった際、座面2のサイドの若干盛り上がった部分でずれを防止する為、座面2のシートを傷めない材質であり、摩擦抵抗の高い材質の合成ゴム、柔軟性のあるプラスチック、ゴム類等の成形品が、ずれ止め板10に嵌着されている。又、滑り防止材10aは、前記材料の単品を接着してもよい。
【0025】
図1〜図4に示す、固定金具11は、シートベルトバックル3に挿着可能な、短冊状の金属板を略コの字状で、3辺の内1辺が長くなる形状に曲折し、長辺側の先端部はシートベルトバックル3に着脱可能に挿着できる幅に形成され、ロック用の角孔11aが設けられている。長辺側と対面の短辺側は、図5に示す、連結軸12の嵌挿部に回動可能に嵌挿できる貫通孔が設けられている。該貫通孔と同軸で長辺側に貫通孔11bが設けられている。固定金具11の曲折は、シートベルトバックル3への挿着性をよくするためで、連結軸12の寸法と形状を変更すれば、平板でもよい。又、色々なデザインに変更も可能である。
【0026】
図5に示す、連結軸12は金属製で、固定金具11の短辺側に設けられた貫通孔を挿入する第一嵌挿部と、座金13を挿入する第二嵌挿部と、カシメ部12aと、装着板7の位置決め孔7aへ挿入する第三嵌挿部と、ネジ部とを備え、固定金具11の短辺側に設けられた貫通孔を連結軸12の第一嵌挿部に回動可能に挿入し、第二嵌挿部に座金13を嵌挿し、カシメ部12aで座金13を固定し、固定金具11の離脱を防止する。固定金具11の貫通孔11bはカシメ時に利用する。
【0027】
図5に示す、装着板7への連結軸12の装着は、連結軸12の第三嵌挿部を装着板7の位置決め孔7aに嵌挿し、ネジ部にローレットノブ14を着脱可能に挿着する。
【0028】
ゴム板15はローレットノブ14の回り止めとして、ローレットノブ14の面に接着等で取り付ける。ゴム板15が装着板7の面と接触し、ネジの圧力による圧縮作用で、回り止めとなる。
【0029】
連結軸12の材料は金属製にこだわることなく、ネジ部とカシメ部12aが軸状の一体品に合成樹脂で嵌挿部を成型したもの等で、手荷物落下防止具としての強度を保てればよい。
【0030】
図8と、図9に示す、複数のヒンジ部8と、16からなる実施形態は、前記曲折部6aに換わり、ヒンジ部16と、開閉軸17と、側板18を設け、略コの字状の柵がヒンジ部16と、開閉軸17により、折り畳み自在に組み立てられた状態で、手荷物4の座席の左側への飛び出しが防止できる構造である。側板18の高さはガード板6と同一か、それ以下であればよい。幅については、収納可能に折り畳みができればよい。該実施形態は、デパート、コンビニ等で購入した複数の小さな物品を載置する場合に有効である。手荷物落下防止具5を使用しない場合は折り畳んで、自動車のドアポケット等に収納できる。
【0031】
上記ガード板6と、装着板7と、ずれ止め板10と、側板18と、開閉軸9の材質は、自動車が急ブレーキをかけた際、手荷物4を受け止めて落下させない強度が有れば、プラスチック、金属、木材、厚紙等いずれでも良い。又、形状も、直線、曲線により色々なデザインにすることも可能である。
【0032】
図2〜図4と、図8と、図9に示す、ヒンジ部8と、16は折り畳み携帯電話等一般的に広く使用されているものと同様の機構で、開閉軸9と、17により回動可能であるヒンジ部8は、手荷物落下防止具5に負荷がかかった場合、L字形、及び、コの字形の組立形状を保持するため、保持部8aと16aのフラット面が重合して機械的に動きを制止する構造である。開閉軸9と17は回動可能構造の他に、使用状態と、折り畳み状態において、ガード板6と、装着板7と、側板18の動きを一時制止できる構造である。
【0033】
図6と、図7に示す、手荷物落下防止具5を折り畳んだ状態は、ガード板6と、開閉軸9の中心の位置ズレにより、ガード板6と、装着板7がほぼ平行で重なり合うコンパクトな構造となり、ドアポケット等に収納が可能となる。
【0034】
手荷物落下防止具5の使用方法は、図1に示す、座席シート1の座面2に、柵状に組み立てた状態で手荷物落下防止具5を載置し、固定金具11をシートベルトバックル3へ挿着する。座席シート1の座面2は、自動車の機種により、サイズ、形状が異なるので、ガード板6と、ずれ止め板10が座面2にバランスよく載置できるよう固定金具11の位置を、位置決め孔7aで調整してローレットノブ14を挿着する。
手荷物4の載置が不要で、使用しない場合、又は、人を乗せる時は固定金具11をシートベルトバックル3のロックを解除して取り外し、折り畳んでドアポケット等に収納する。
【符号の説明】
【0035】
1 座席シート
2 座面
3 シートベルトバックル
4 手荷物
5 手荷物落下防止具
6 ガード板
6a 曲折部
7 装着板
7a 位置決め孔
8 ヒンジ部
8a 保持部
9 開閉軸
10 ずれ止め板
10a 滑り防止材
11 固定金具
11a 角孔
11b 貫通孔
12 連結軸
12a カシメ部
13 座金
14 ローレットノブ
15 ゴム板
16 ヒンジ部
16a 保持部
17 開閉軸
18 側板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の運転席以外の座席の座面に載置できるサイズで、柵状に組み立てられた複数の板から成る内の一枚の板の一端部に、金属板の固定金具を回動可能に装着し、該固定金具が自動車のシートベルトバックルに着脱可能に挿着でき、前記複数の板は折り畳み自在で、収納が可能な構造を特徴とする自動車用手荷物落下防止具。
【請求項2】
前記金属板の固定金具が回動可能に装着された板の中央部近傍に突片を設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車用手荷物落下防止具。
【請求項3】
前記金属板の固定金具が装着された板に、該固定金具の位置変更が可能な装着孔を複数個設けたことを特徴とする請求項1又は、請求項2に記載の自動車用手荷物落下防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−17046(P2012−17046A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156396(P2010−156396)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(505178860)
【Fターム(参考)】