説明

自動車用放電バルブ

【課題】発光管の最冷点を放電発光室側に移動させて電極棒基端部周辺の微小隙間に金属ハロゲン化物が溜まることを抑制し、放電発光に寄与する金属ハロゲン化物の量の減少を防ぐ放電バルブを提供する。
【解決手段】放電電極15が対設され発光物質と始動用希ガスが封入された放電発光室sをセラミック管12内に設けた発光管を備え、放電発光室sに連通する管端部の細孔13に金属パイプ14を接合し、パイプ14に挿通し先端部を放電発光室s内に突出させ後端部をパイプ14に接合した放電バルブで、細孔13内のパイプ14先端から放電発光室s間に凹部17を周設し、最冷点が凹部17内となって微小隙間16内に金属ハロゲン化物が溜まらないため放電発光に寄与する金属ハロゲン化物が減らず、所望の光束が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック管の内部に放電電極が対設されかつ発光物質等(金属ハロゲン化物等)が始動用希ガスとともに封入された発光管を備えた自動車用放電バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用前照灯の光源としては、ガラス製発光管を備えた放電バルブが一般的であるが、ガラス管に封入されている金属ハロゲン化物によりガラス管の腐食が進み、黒化や失透現象が現れて適正な配光が得られず、寿命もそれほど長いものでもないという問題があった。
【0003】
そこで、近年では特許文献1(図9参照)に示すように、放電電極を対設し発光物質を始動用希ガスとともに封入した放電発光室sをもつセラミック製発光管を備えた放電バルブが提案されている。即ち、発光管は、セラミック管200両端部の細孔201にモリブデンパイプ212がメタライズ接合され、セラミック管200(の放電発光室s)内にその先端部が突出するようにモリブデンパイプ212内に挿通した電極棒214の後端部を、セラミック管200から突出するモリブデンパイプ212後端部に接合(溶接)することで、セラミック管200の両端部(放電発光室sに連通する細201)が封止された構造となっている。符号216は、セラミック管200端部に突出するモリブデンパイプ212に接続されたリード線である。セラミック管200は金属ハロゲン化物に対して安定であることから、セラミック製発光管は、ガラス製発光管に比べて寿命が長いというものである。
【0004】
【特許文献1】特開2004−362978号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、セラミック製発光管は、セラミック管200にメタライズ接合されたモリブデンパイプ212内に電極214を挿通して組み立てるため、またセラミック管200両端の封止部に発生する熱応力を吸収するため、電極棒214とモリブデンパイプ212間には例えば25μm程度の微小隙間215が形成されている。一方、モリブデンパイプ212および電極棒214は熱伝導性(放熱性)がよいため、点灯中の発光管の最冷点(放電発光室s連通部における最冷点)は、電極棒214とモリブデンパイプ212間の微小隙間215の奥の方(放電発光室sから遠い方)となる。このため、発光管の点灯中に、放電発光室sに封入されている金属ハロゲン化物が最冷点となる微小隙215の奥の方に、蒸気として、あるいは液体や固体状に溜まったままに保持され、それだけ放電発光に実質的に寄与する金属ハロゲン化物の量が減少して、所望の光束が得られないという問題が発生した。
【0006】
そこで発明者は、封入金属ハロゲン化物が微小隙間215内に溜まらないようにするには、点灯中の発光管の最冷点位置を発光管の端部から放電発光室s側に移動させればよいと考えた。そして、図10に示すように、モリブデンパイプ212の細孔201内への挿入量を従来よりも浅くするとともに、細孔201内周面におけるモリブデンパイプ212先端部と放電発光室sとの間に凹溝217を周設したところ、発光管の最冷点位置が放電発光室S側に移動し、封入金属ハロゲン化物が微小隙間215内に溜まらないことが確認された。
【0007】
また、セラミック製発光管としては、セラミック管200両端部の細孔201に電極棒214を微小隙間を介して挿通し、セラミック管200両端部から突出する電極棒214の突出部をセラミック管200端部にガラス溶着するフリットシール構造(図示せず)も知られているが、このフリットシール構造の発光管においても、細孔201内周面における放電発光室s寄りに凹溝217を周設したところ、発光管の最冷点位置が放電発光室s側に移動し、封入金属ハロゲン化物が微小隙間内に溜まらないことが確認された。そこで、発明者は、この度の出願するに至ったものである。
【0008】
本発明は前記従来技術の問題点および発明者の前記した知見に基づいてなされたもので、その目的は、発光管の端部にあった最冷点を放電発光室側に移動させることで、細孔内に挿通されている電極棒基端部周辺の微小隙間に金属ハロゲン化物が溜まることが抑制されて、放電発光に寄与する金属ハロゲン化物の量が減少することのない自動車用放電バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に係る自動車用放電バルブにおいては、放電電極が対設されかつ発光物質が始動用希ガスとともに封入された放電発光室をセラミック管の長手方向中央部に設けたセラミック製発光管を備えた放電バルブにおいて、前記放電発光室に連通する前記セラミック管両端部の細孔に金属パイプが接合され、前記金属パイプに挿通されその先端部が前記放電発光室内に突出する電極棒の後端部が前記金属パイプに接合された放電バルブであって、
前記細孔の前記金属パイプ先端から前記放電発光室側の開口縁部間に凹部を周設するように構成した。
【0010】
(作用)金属パイプおよび電極棒は熱伝導性(放熱性)がよいため、点灯中の発光管内の最冷点(放電発光室連通部における最冷点)は、一般に、発光管の端部である電極棒と金属パイプ間の微小隙間の奥の方(放電発光室から遠い方、セラミック管の端部側)にある。しかし、熱伝導率のよい金属パイプは細孔の放電発光室への開口位置までは挿入されておらず、さらに細孔の金属パイプ先端から放電発光室間には凹部が周設されている。このため、凹部内には、金属パイプを介した熱および電極棒の輻射熱のそれぞれが伝達され難く、この凹部内が最冷点となる。即ち、発光管内の最冷点が発光管の端部から放電発光室側に移動している。
【0011】
この結果、放電発光室に封入されている金属ハロゲン化物は、最冷点となる凹部に保持される(溜まる)ことはあっても、従来構造のように、電極棒と金属パイプ間の微小隙間内に保持される(溜まる)ことはない。そして、凹部の形成されている空間は、電極棒と金属パイプ間の微小隙間に比べて十分に広くて、しかも放電発光室に近いので、凹部内に溜まった蒸気,液体または固体状の金属ハロゲン化物は、高温となった放電発光室にスムーズに移動できることから、凹部内に溜まったままということもない。
【0012】
請求項2においては、請求項1に記載の自動車用放電バルブにおいて、前記金属パイプの前記セラミック管から突出する領域および前記電極棒との接合部を断熱材で覆うように構成した。
【0013】
金属パイプのセラミック管から突出する領域および電極棒との接合部を覆う断熱材としては、例えば、金属パイプのセラミック管から突出する領域および電極棒との接合部にセラミック製のキャップを被着一体化したり、金属パイプのセラミック管から突出する領域および電極棒との接合部にセラミックス(アルミナ)等の断熱性膜を塗布する構成が考えられる。
【0014】
(作用)断熱材で覆われた発光管(金属パイプおよび電極棒との接合部)からの放熱量が減少し、発光管内の最冷点位置が放電発光室側に移動して、確実に凹部内が最冷点となる。即ち、発光管内の最冷点が端部から放電発光室側に確実に移動している。
【0015】
請求項3に係る自動車用放電バルブにおいては、放電電極が対設されかつ発光物質が始動用希ガスとともに封入された放電発光室をセラミック管の長手方向中央部に設けた発光管を備えた放電バルブにおいて、前記放電発光室に連通する前記セラミック管両端部の細孔に挿通されその先端部が前記放電発光室内に突出する電極棒の後端部が前記細孔の外部開口周縁部に接合された放電バルブであって、
前記細孔の前記放電発光室寄りに凹部を周設するようにした。
(作用)電極棒は熱伝導性(放熱性)がよいため、点灯中の発光管内の最冷点(放電発光室連通部における最冷点)は、一般に、発光管の端部である細孔と電極棒間の微小隙間の奥の方(放電発光室から遠い方、セラミック管の端部側)にある。しかし、細孔の放電発光室寄りには凹部が周設されて、電極棒から離間する分、凹部内には電極棒の輻射熱が伝達され難く、この凹部内が最冷点となる。即ち、発光管内の最冷点が発光管の端部から放電発光室側に移動している。
【0016】
この結果、放電発光室に封入されている金属ハロゲン化物は、最冷点となる凹部に保持される(溜まる)ことはあっても、細孔と電極棒間の微小隙間内に保持される(溜まる)ことはない。そして、凹部の形成されている空間は、放電発光室に近いので、凹部内に溜まった蒸気,液体または固体状の金属ハロゲン化物は、高温となった放電発光室にスムーズに移動できることから、凹部内に溜まったままということもない。
【0017】
請求項4においては、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車用放電バルブにおいて、前記電極棒を、先端側の径の小さいタングステン電極棒を後端側の径の大きいモリブデン棒に同軸状に溶接して構成し、前記凹部を該溶接部近傍に設けるように構成した。
【0018】
(作用)発光管内の最冷点となる凹部内の温度は、凹部を放熱性がよい発光管の端部側(高温となる放電発光室から遠い側)に位置させるほど低くなるので、凹部を放電発光室からある程度は遠ざけた方がよい。また、細孔とタングステン電極棒間の隙間は、細孔とモリブデン棒間の隙間に比べると大きく、しかも放電発光室に近いので、金属ハロゲン化物が溜まるにしても、溜まった金属ハロゲン化物はスムーズに放電発光室に移動できる。したがって、タングステン電極棒とモリブデン棒との溶接部近傍に凹部を設けることで、凹部内が確実に発光管内の最冷点となって、請求項4を請求項1または2に適用した場合は、モリブデン棒と金属パイプ間の微小隙間に金属ハロゲン化物が溜まることがさらに抑制され、請求項4を請求項3に適用した場合は、モリブデン棒と細孔間の微小隙間に金属ハロゲン化物が溜まることがさらに抑制される。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る自動車用放電バルブによれば、発光管内の最冷点が細孔の放電発光室寄りに設けた凹部内に移動し、電極棒と金属パイプ間の微小隙間内に封入金属ハロゲン化物が溜まることが原因で放電発光に寄与する金属ハロゲン化物の量が減少することがないので、所望の光束が長期にわたり保証される。
【0020】
請求項2によれば、発光管の端部側における放熱作用が抑制される分、発光管の最冷点が確実の放電発光室寄りに設けた凹部に移動して、電極棒と金属パイプ間の微小隙間内に封入金属ハロゲン化物が溜まって放電発光に寄与する金属ハロゲン化物の量が減少することが一層なくなるので、所望の光束がより長期にわたり保証される。
【0021】
請求項3に係る自動車用放電バルブよれば、発光管内の最冷点が細孔の放電発光室寄りに設けた凹部内に移動し、電極棒と細孔間の微小隙間内に封入金属ハロゲン化物が溜まることが原因で放電発光に寄与する金属ハロゲン化物の量が減少することがないので、所望の光束が長期にわたり保証される。
【0022】
請求項4によれば、凹部内がより確実に発光管内の最冷点になって、電極棒基端部周りの微小隙間内に金属ハロゲン化物が溜まることが原因で放電発光に寄与する金属ハロゲン化物の量が減少することがさらに一層なくなるので、所望の光束がさらに長期にわたり保証される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0024】
図1〜図5は請求項1に係る発明の第1の実施例を示すもので、図1は同発明の第1の実施例である放電バルブを光源とする自動車用前照灯の正面図、図2は同前照灯の鉛直縦断面図(図1に示す線II−IIに沿う断面図)、図3は同放電バルブの要部である発光管の拡大鉛直縦断面図、図4は発光管の横断面図(図3に示す線IV−IVに沿う断面図)、図5は発光管本体の拡大鉛直縦断面図である。
【0025】
これらの図において、符号80は、前面側が開口する容器状の自動車用前照灯のランプボディで、その前面開口部に透明な前面カバー90が組み付けられて灯室Sが画成され、灯室S内には、後頂部のバルブ挿着孔102に放電バルブV1を挿着したリフレクター100が収容されている。リフレクター100の内側には、アルミ蒸着された有効反射面101a、101bが形成され、有効反射面101a、101bは、曲面形状が異なる複数の配光制御用ステップ(多重反射面)で構成され、バルブV1の発光がリフレクター100(の有効反射面101a、101b)で反射されて前方に照射されることで、前照灯の所定の配光パターンが形成される。
【0026】
また、リフレクター100とランプボディ80間には、図1に示すように、1個の玉継手構造のエイミング支点E0と、2本のエイミングスクリューE1,E2で構成したエイミング機構Eが介装されて、リフレクター100(前照灯)の光軸Lを水平傾動軸Lx,鉛直傾動軸Ly周りにそれぞれ傾動(前照灯の光軸Lをエイミング調整)できるように構成されている。
【0027】
符号30は、リフレクタ100のバルブ挿着孔102に係合する焦点リング34が外周に設けられたPPS樹脂からなる絶縁性ベースで、この絶縁性ベース30の前方には、ベース30から前方に延出する通電路である金属製リードサポート36と、ベース30の前面に固定された金属製支持部材60とによって、発光管10Aが固定支持されて、放電バルブV1が構成されている。
【0028】
即ち、発光管10Aの前端部から導出するリード線18aが、絶縁性ベース30から延出するリードサポート36の折曲された先端部にスポット溶接により固定されることで、発光管10Aの前端部がリードサポート36の折曲された先端部に担持されている。一方、発光管10Aの後端部から導出するリード線18bが、絶縁性ベース30後端部に設けられた端子47に接続されるとともに、発光管10Aの後端部が、絶縁性ベース30の前面に固定された金属製支持部材60で把持された構造となっている。
【0029】
絶縁性ベース30の前端部には凹部32が設けられ、この凹部32内に発光管10Aの後端部が収容保持されている。そして、絶縁性ベース30の後端部には、後方に延出する円筒形状外筒部42で囲まれた円柱形状ボス43が形成され、外筒部42の付け根部外周には、リードサポート36に接続された円筒形状のベルト型端子44が固定一体化され、ボス43には、後端側リード線18bが接続されたキャップ型端子47が被着一体化されている。
【0030】
発光管10Aは、図3に示すように、棒状電極15,15が対設されかつ金属ハロゲン化物等の発光物質が始動用希ガスとともに封入された放電発光室sをもつ発光管本体11Aと、発光管本体11Aを覆う円筒型の紫外線遮蔽用シュラウドガラスと20とが一体化されて構成されている。発光管本体11Aの前後端部からは、放電発光室s内に突出する棒状電極15,15に電気的に接続されたリード線18a,18bが導出し、これらのリード線18a,18bに紫外線遮蔽用のシュラウドガラス20がシール(封着)されることで、発光管本体11Aとシュラウドガラス20が一体化されている。符号22は、シュラウドガラス20の縮径されたシール部を示す。
【0031】
発光管本体11Aは、円筒形状の透光性セラミック管12で構成されており、セラミック管12の長手方向中央部に、放電発光室sを画成する放電発光部12aが形成され、括れ部12bを隔てたセラミック管12の両端部12cには、放電発光部12aの放電発光室sに連通する細孔13が形成されている。
【0032】
細孔13の端部側開口寄りには、モリブデンパイプ14がメタライズ接合により固定されて、セラミック管12の端部からモリブデンパイプ14が突出している。モリブデンパイプ14内に挿通されてその先端部が放電発光室s内に突出する棒状電極15は、その後端部がモリブデンパイプ14突出端部に溶着(接合)されることで、セラミック管12に一体化されるとともに、金属ハロゲン化物等の発光物質が始動用希ガスとともに封入されている放電発光室sに連通する細孔13が封止されている。符号14aはレーザ溶接部である。
【0033】
棒状電極15は、先端側の細いタングステン電極棒15aと基端部側の太いモリブデン棒15bとが同軸状に接合一体化されたもので、モリブデンパイプ14と棒状電極15(のモリブデン棒15b)間には、棒状電極15を挿通できるように、またセラミック管12両端に発生する熱応力を吸収できるように、25μm程度の微小隙間16が形成されている。セラミック管12から突出するモリブデンパイプ14には、リード線18a,18bの先端屈曲部が溶接により固定されて、リード線18a,18bと棒状電極15,15とが同一軸状に配置されている(図3,5参照)。
【0034】
また、セラミック管12両端部に形成されている細孔13内のモリブデンパイプ14挿入先端部近傍位置には、放電発光室sに封入されている金属ハロゲン化物がモリブデンパイプ14と棒状電極15間の微小隙間16に溜まってしまって放電発光に実質的に寄与する金属ハロゲン化物の量が減少することを抑制するための凹部である凹溝17が周設されている。
【0035】
即ち、モリブデンパイプ14および棒状電極15は熱伝導性(放熱性)がよいため、点灯中の発光管本体11A内の最冷点(放電発光室s連通部における最冷点)は、一般に、発光管本体11Aの端部である棒状電極15とモリブデンパイプ14間の微小隙間16の奥の方(放電発光室sから遠い方、セラミック管12の端部側)にある。しかし、熱伝導率のよいモリブデンパイプ14は細孔13の放電発光室sへの開口位置までは挿入されておらず、さらに細孔13のモリブデンパイプ14先端位置近傍に凹溝17が周設されていることで、凹溝17内には、モリブデンパイプ14を介した熱および棒状電極15の輻射熱のそれぞれが伝達され難く、この凹溝17内が最冷点となる。換言すれば、発光管10A内の最冷点が発光管10Aの端部から放電発光室s側の凹溝17内に移動している。
【0036】
このため、放電発光室sに封入されている金属ハロゲン化物は、最冷点となる凹溝17に保持される(溜まる)ことはあっても、従来構造のように、棒状電極15とモリブデンパイプ14間の微小隙間16内に保持される(溜まる)ことはない。そして、凹溝17の形成されている空間(棒状電極15と細孔13間の隙間)は、棒状電極15とモリブデンパイプ14間の微小隙間16に比べて十分に広くて、しかも放電発光室sに近いので、凹溝17内に溜まった蒸気,液体または固体状の金属ハロゲン化物は、高温となった放電発光室sにスムーズに移動できることから、凹溝17内に溜まったままということもない。
【0037】
したがって、本実施例に示す放電バルブ(の発光管本体11A)では、長期の使用によっても放電発光に寄与する金属ハロゲン化物の量が減少することがなく、所望の光束が長期にわたり保証される。
【0038】
なお、微小隙間16が狭ければ狭いほど、封入されている金属ハロゲン化物が微小隙間16に侵入し難いので、望ましいが、セラミック管12(の細孔13)および棒状電極15外径には製造上の誤差があるため、微小隙間16は、20μm以下にはできない。
【0039】
図6は請求項1に係る発明の第2の実施例である放電バルブの要部である発光管本体の鉛直縦断面図である。
【0040】
前記した第1の実施例では、発光管本体11A(セラミック管12)内の最冷点となる凹溝17が細孔13のモリブデンパイプ14先端位置近傍に設けられているが、この第2の実施例では、モリブデンパイプ14先端位置よりも放電発光室sに近い、先端側の細いタングステン電極棒15aと基端部側の太いモリブデン棒15bとの接合部近傍に、発光管本体11B(セラミック管12B)内の最冷点となる凹溝17が設けられている。
【0041】
このため、凹溝17が開口する細孔13とタングステン電極棒15a間の隙間は、細孔13とモリブデン棒15b間の隙間に比べると大きく、しかも放電発光室sに近いので、それだけ金属ハロゲン化物が微小隙間16に溜まり難いし、最冷点となる凹溝17内に金属ハロゲン化物が溜まるにしても、溜まった金属ハロゲン化物は第1の実施例よりもスムーズに放電発光室sに移動できるので、点灯中の光束の変化が少ない。
【0042】
その他は、前記した第1の実施例と同一であり、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0043】
図7は請求項1に係る発明の第3の実施例である放電バルブの要部である発光管本体の鉛直縦断面図である。
【0044】
この第3の実施例の発光管本体11Cでは、第1の実施例の発光管本体11A(セラミック管12)の端部12cから突出するモリブデンパイプ14および溶着部14aに、セラミック製の断熱キャップ170が被着一体化されて、発光管本体11Cの端部にある最冷点位置が確実に細孔13内の放電発光室s寄りの凹部17内となって、モリブデンパイプ14と棒状電極15間の微小隙間16内に封入金属ハロゲン化物が溜まることがより一層抑制されて、所望の光束が長期にわたり保証されている。
【0045】
即ち、断熱キャップ170で覆われたモリブデンパイプ14および溶着部14aからの放熱量が減少するため、セラミック管12Cの端部12cに熱がこもり、それだけ発光管本体11Cの端部にあった最冷点の放電発光室s側への移動が促進され、発光管本体11Cの端部にある最冷点位置が確実に細孔13の凹溝17内となって、モリブデンパイプ14と棒状電極15間の微小隙間16内に封入金属ハロゲン化物が溜まることが第1,第2の実施例以上に抑制されている。
【0046】
なお、この第3の実施例において、セラミック製の断熱キャップ170代えて、モリブデンパイプ14のセラミック管12から突出する領域および溶着部14aに、セラミックス(アルミナ)等の断熱性塗膜を塗布するようにしてもよい。
図8は請求項3に係る発明の実施例である放電バルブの要部である発光管本体の鉛直縦断面図である。
【0047】
前記した3つの実施例は、セラミック管12(12B,12C)の細孔13にメタライズ接合されたモリブデンパイプ14を介して棒状電極15がセラミック管12(12B,12C)に接合一体化されていたが、この請求項3に係る発明の実施例では、棒状電極15がフリットシールによって直接、セラミック管12Dに接合一体化されている。
【0048】
即ち、発光管本体11Cを構成するセラミック管12Cは、前記した請求項1に係る発明の第1〜第3の実施例のセラミック管12(12B,12C)と同様、全体が円筒形状であるが、長手方向中央部の放電発光部12aの両端に放電発光部12aよりも外径の小さい円筒形状のセラミック管端部12dが形成されている。一方、棒状電極15は、その基端部側がモリブデン棒15bとニオブ棒15cとの接合体で構成されている。そして、セラミック管端部12dには、放電発光部12aの放電発光室sに連通する細孔13が設けられている。
【0049】
そして、その先端側のタングステン電極棒15aが放電発光室sに突出するように細孔13に挿通された棒状電極15は、その後端側のニオブ棒15cがセラミック管端部12dから大きく突出するとともに、セラミック管端部12dの端面にガラス溶着により一体化されている。符号19はガラス溶着部を示す。棒状電極15(ニオブ棒15c)のセラミック管端部12dからの突出端部には、リード線18a,18bの屈曲部がそれぞれ接合されて、セラミック管12Cとリード線18a,18bが同一軸状に延びている。
【0050】
また、先端側の細いタングステン電極棒15aと基端部側の太いモリブデン棒15bおよびニオブ棒15cとが接合一体化された棒状電極15と、セラミック管端部12dの細孔13との間には、棒状電極15を挿通できるように、またセラミック管12Cの両端部12dに発生する熱応力を吸収できるように、25μm程度の微小隙間16Cが形成されている。
【0051】
そして、セラミック管端部12dに形成されている細孔13内であって、タングステン電極棒15aとモリブデン棒15bとの接合部近傍位置には、放電発光室sに封入されている金属ハロゲン化物が細孔13とモリブデン棒15b間の微小隙間16Cに溜まってしまって放電発光に実質的に寄与する金属ハロゲン化物の量が減少することを抑制するための凹部である凹溝17が周設されている。
【0052】
即ち、棒状電極15は熱伝導性(放熱性)がよいため、点灯中の発光管本体11D内の最冷点(放電発光室s連通部における最冷点)は、一般に、発光管本体11Dの端部である細孔13と棒状電極15間の微小隙間16Dの奥の方(放電発光室sから遠い方、セラミック管12Dの端部側)にある。しかし、細孔13の放電発光室s寄りには凹溝17が周設されていることで、棒状電極15から離間する分、凹溝17内には棒状電極15(タングステン電極棒15a)の輻射熱が伝達され難く、この凹溝17内が最冷点となる。即ち、発光管本体11D内の最冷点が発光管本体11Dの端部から放電発光室s側に移動している。
【0053】
このため、放電発光室sに封入されている金属ハロゲン化物は、最冷点となる凹溝17に保持される(溜まる)ことはあっても、細孔13と棒状電極15間の微小隙間16D内に保持される(溜まる)ことはない。そして、凹溝17の形成されている空間は、モリブデン棒15bと細孔13間の微小隙間16Dに比べて十分に広くて、しかも放電発光室sに近いので、凹溝17内に溜まった蒸気,液体または固体状の金属ハロゲン化物は、高温となった放電発光室sにスムーズに移動できることから、凹溝17内に溜まったままということもない。その他は、前記した請求項1に係る発明の第1の実施例と同一であり、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0054】
このように、この実施例に示す放電バルブ(の発光管本体11D)においても、前記した請求項1に係る発明の第1〜第3の実施例に示す放電バルブ(の発光管本体11A,11B,11C)と同様、長期の使用によっても放電発光に寄与する金属ハロゲン化物の量が減少することがなく、所望の光束が長期にわたり保証される。
【0055】
なお、前記した請求項1,3に係る発明の実施例における放電バルブにおける発光管10A〜10Dが、いずれも絶縁性ベース30の前方にセラミック製発光管本体11A〜11Dとこの発光管本体11A〜11Dを包囲するシュラウドガラス20とを一体化した構造として説明されているが、ベース30の前方に配置する発光管10A〜10Dは、シュラウドガラス20を設けないセラミック製発光管本体11A〜11Dだけの構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】請求項1に係る発明の第1の実施例である放電バルブを光源とする自動車用前照灯の正面図である。
【図2】同前照灯の鉛直縦断面図(図1に示す線II−IIに沿う断面図)である。
【図3】同放電バルブの要部である発光管の拡大鉛直縦断面図である。
【図4】発光管の鉛直横断面図(図3に示す線IV−IVに沿う断面図)である。
【図5】発光管本体の拡大断面図である。
【図6】請求項1に係る発明の第2の実施例である放電バルブの要部である発光管本体の鉛直縦断面図である。
【図7】請求項1に係る発明の第3の実施例である放電バルブの要部である発光管の鉛直縦断面図である。
【図8】請求項3に係る発明の実施例である放電バルブの要部である発光管本体の鉛直縦断面図である。
【図9】従来の放電バルブの要部である発光管本体の鉛直縦断面図である。
【図10】発明者が考えた発光管本体の構造を示す鉛直縦断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10A,10B,10C,10D 発光管
11A,11B,11C,11D 発光管本体
12,12B,12C,12D セラミック管
s 放電発光室
12a 放電発光部
12c 発光管の端部
13 細孔
14 モリブデンパイプ
14a レーザ溶接部
15 放電電極である棒状電極
15a タングステン電極棒
15b モリブデン棒
15c ニオブ棒
16 モリブデンパイプと棒状電極間の微小隙間
16D 細孔と棒状電極間の微小隙間
19 ガラス溶着部
20 紫外線遮蔽用シュラウドガラス
30 合成樹脂製絶縁性ベース
170 セラミック製断熱キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極が対設されかつ発光物質が始動用希ガスとともに封入された放電発光室をセラミック管の長手方向中央部に設けたセラミック製発光管を備えた放電バルブにおいて、前記放電発光室に連通する前記セラミック管両端部の細孔に金属パイプが接合され、前記金属パイプに挿通されその先端部が前記放電発光室内に突出する電極棒の後端部が前記金属パイプに接合された放電バルブであって、
前記細孔の前記金属パイプ先端から前記放電発光室側の開口縁部間に凹部が周設されたことを特徴する自動車用放電バルブ。
【請求項2】
前記金属パイプの前記セラミック管から突出する領域および前記電極棒との接合部が断熱材で覆われたことを特徴する請求項1に記載の自動車用放電バルブ。
【請求項3】
放電電極が対設されかつ発光物質が始動用希ガスとともに封入された放電発光室をセラミック管の長手方向中央部に設けた発光管を備えた放電バルブにおいて、前記放電発光室に連通する前記セラミック管両端部の細孔に挿通されその先端部が前記放電発光室内に突出する電極棒の後端部が前記細孔の外部開口周縁部に接合された放電バルブであって、
前記細孔の前記放電発光室寄りに凹部が周設されたことを特徴する自動車用放電バルブ。
【請求項4】
前記電極棒は、先端側の径の小さいタングステン電極棒が後端側の径の大きいモリブデン棒に同軸状に溶接されて構成され、前記凹部は該溶接部近傍に設けられたことを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載の自動車用放電バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−26912(P2007−26912A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208040(P2005−208040)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】