説明

自動車用放電バルブ

【課題】耐熱衝撃性と発光効率の双方に優れたセラミック製発光管を備えた放電バルブを提供する。
【解決手段】放電電極15が対設され発光物質等が封入された放電発光室sをセラミック管12の長手方向中央に設けた発光管11Aを備え、放電発光室sに連通する管両端部12cの細孔13に金属パイプ14を接合し、パイプ14に挿通され先端が放電発光室sに突出して電極15を構成する電極棒の後端部をパイプ14の突出端部に接合した放電バルブで、セラミック管12の放電発光室sに対応する管中央部12aと管端部12c間に括れ部12bを設ける。管端部12cの管壁が厚肉化されて、管端部12cの耐熱衝撃強度が高められ、かつ括れ部12b位置の管壁が薄肉化されて、放電発光部12aから管端部12cへの熱伝達が抑制され、発光管本体11Aの発光効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック管の内部に放電電極が対設されかつ発光物質(金属ハロゲン化物等)が始動用希ガスとともに封入されたセラミック製発光管を備えた自動車用放電バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用前照灯の光源としては、ガラス製発光管を備えた放電バルブが一般的であるが、ガラス管に封入されている金属ハロゲン化物によりガラス管の腐食が進み、黒化や失透現象が現れて適正な配光が得られず、寿命もそれほど長いものでもないという問題があった。
【0003】
そこで、近年では特許文献1(図7参照)に示すように、放電電極(電極棒)214を対設し発光物質を始動用希ガスとともに封入した放電発光室sをもつセラミック製発光管を備えた放電バルブが提案されている。即ち、セラミック製発光管は、セラミック管200両端部の細孔201にモリブデンパイプ212がメタライズ接合され、セラミック管200(の放電発光室s)内にその先端部が突出するようにモリブデンパイプ212内に挿通した電極棒214の後端部を、セラミック管200から突出するモリブデンパイプ212後端部に接合(溶接)することで、セラミック管100の両端部(放電発光室sに連通する細孔201)が封止された構造となっている。符号216は、セラミック管200端部に突出するモリブデンパイプ212に接続されたリード線である。セラミック管200は金属ハロゲン化物に対して安定であることから、セラミック製発光管は、ガラス製発光管に比べて寿命が長いというものである。
【0004】
【特許文献1】特開2004−362978号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、セラミック製発光管を構成するセラミック管200は、ガラス製発光管を構成するガラス管に比べて熱伝導性がよい(熱伝導率が高い)ため、放電発光室sに対応するセラミック管中央の放電発光部で発生した熱がそれだけ多くセラミック管端部側に伝達(放熱)されることになって、発光管の発光効率(消費電力に対する光束値)が低下するという第1の問題があった。
【0006】
また、セラミック管200はガラス管に比べて耐熱衝撃性に劣るため、特にモリブデンパイプ212がメタライズ接合されている管端部にクラックが発生するおそれがあるという第2の問題もあった。
【0007】
そして、第1の問題を解決すべく、セラミック管全体を薄肉にすれば、セラミック管の熱容量が低下するとともに、セラミック管端部側への熱伝達量が減少して、発光効率が上がるが、耐熱衝撃性(特に、管端部でのクラックの発生防止)はさらに悪くなる。また、第2の問題を解決すべく、セラミック管全体を厚肉にすれば、耐熱衝撃性は改善されるが、セラミック管の熱容量が増加するとともに、放電発光部からセラミック管端部側への熱伝達量も増加して、発光効率がさらに下がってしまう。このように、前記した第1の問題と第2の問題は相反するものであって、両者を同時に解決することは困難であった。
【0008】
そこで発明者は、セラミック管全体を長手方向にほぼ均一の外形に形成すれば、熱応力が作用する部位であるセラミック管端部の管壁は厚肉となって耐熱衝撃強度が高められるとともに、管端部の管壁を厚肉にすることで増加する熱容量は、放電発光部と管端部との間に括れ部を形成することで減少するセラミック管の熱容量で相殺できるし、括れ部によって放電発光部から管端部への熱伝達経路(括れ部に対応する管壁)が薄肉化されて、放電発光部から管端部への熱伝達が抑制され(熱伝達量が減少し)、それだけ放電発光室内の温度の低下が抑制されて、発光管の発光効率が向上する、と考えた。そして、このような形状のセラミック製発光管(セラミック管)を試作してその効果を検証したところ、前記した第1,第2の問題の双方に対し有効であることが確認されたので、この度の出願に至ったものである。
【0009】
本発明は前記従来技術の問題点および発明者の前記した知見に基づいてなされたもので、その目的は、セラミック管の所定位置に括れ部を設けることで、耐熱衝撃性および発光効率の双方に優れたセラミック製発光管を備えた自動車用放電バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1に係る自動車用放電バルブにおいては、放電電極が対設されかつ発光物質等が始動用希ガスとともに封入された放電発光室をセラミック管の長手方向略中央部に設けたセラミック製発光管を備えた自動車用放電バルブにおいて、前記放電発光室に連通する前記セラミック管両端部の細孔に金属パイプが接合され、前記金属パイプに挿通されその先端が前記放電発光室内に突出して前記放電電極を構成する電極棒の後端部が前記金属パイプの突出端部に接合された自動車用放電バルブであって、
前記セラミック管の前記放電発光室に対応する管中央部領域と前記細孔の設けられた管端部領域間に括れ部を設けるように構成した。
【0011】
(作用)セラミック管の長手方向略中央部の放電発光室は、セラミック管端部領域に設けられている細孔に連通しており、例えば、セラミック管の外形(セラミック管の長手方向に直交する断面の外形)を長手方向に略均一に形成することで、セラミック管端部領域の管壁(細孔を取り囲む管壁)が厚肉となって、セラミック管端部領域の耐熱衝撃強度が高められる。
【0012】
また、セラミック管端部領域の管壁が厚肉となることで増加するセラミック管の熱容量の増加分は、セラミック管中央部領域(放電発光部)と管端部領域との間に括れ部を設けることで減少するセラミック管の熱容量の減少分で相殺されて、セラミック管の熱容量が大きく変化することはない。
【0013】
また、括れ部によってセラミック管中央部領域(放電発光部)から管端部領域への熱伝達経路が薄肉化されているので、セラミック管中央部領域(放電発光部)から管端部領域への熱伝達が抑制され(放電発光室内の温度が維持され)て、発光管の発光効率(消費電力に対する光束値)が向上する。
【0014】
請求項2においては、請求項1に記載の自動車用放電バルブにおいて、前記括れ部を、前記金属パイプの挿入先端部から前記放電発光室間に対応する位置に設けるように構成した。
【0015】
(作用)金属パイプの挿入先端部は、放電発光室から離間した位置にあるため、金属パイプにはそれだけ放電発光室側の熱が伝わり難く、細孔のほぼ全域に金属パイプが接合されている(金属パイプの挿入先端部が放電発光室近傍にある)従来技術に比べて、セラミック管端部領域に発生する熱応力は小さく、それだけセラミック管端部領域にクラックが発生し難い。
【0016】
特に、金属パイプの挿入先端部が括れ部対応位置まで延びていないので、薄肉化された管壁の熱伝達抑制作用が熱伝導性のよい金属パイプによって妨げられることなく有効に働く。
【0017】
請求項3においては、請求項1または2に記載の自動車用放電バルブにおいて、前記括れ部の前記放電発光室に臨む側を、放電発光室に光を戻す曲面形状に構成した。
【0018】
(作用)括れ部の放電発光室側から出射しようとする光の一部が、曲面形状のセラミック管表面で反射されて放電発光室に戻るので、それだけセラミック管中央部領域(放電発光部)における発光量が増える。
【0019】
請求項4においては、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車用放電バルブにおいて、前記括れ部を含むセラミック管端部領域に、出射光をセラミック管内部に反射する反射材を設けるように構成した。
【0020】
(作用)括れ部を含むセラミック管端部領域から出射しようとする光が、反射材で反射されてセラミック管内部に戻るので、セラミック管中央部領域(放電発光部)における発光量がさらに増える。
【0021】
請求項5においては、請求項4に記載の自動車用放電バルブにおいて、前記反射材を、金属を混合した導電性塗膜で構成するようにした。
【0022】
(作用)セラミック管端部領域に設けた導電性塗膜は、補助電極として作用し、発光管の始動特性が向上する。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る自動車用放電バルブによれば、 セラミック管端部領域の管壁(細孔を取り囲む管壁)が厚肉となって、セラミック管端部領域の耐熱衝撃強度が確保されるとともに、管壁の括れ部対応領域が薄肉となってセラミック管中央部領域(放電発光部)から管端部領域へのへの熱伝達が抑制されるので、耐熱衝撃性および発光効率の双方に優れたセラミック製発光管を備えた放電バルブが提供される。
【0024】
請求項2によれば、セラミック管端部領域の耐熱衝撃強度がさらに確保されるとともに、セラミック管中央部領域(放電発光部)から管端部領域へのへの熱伝達がさらに抑制されるので、耐熱衝撃性および発光効率の双方に一層優れたセラミック製発光管を備えた放電バルブが提供される。
【0025】
請求項3によれば、セラミック管中央部領域(放電発光部)における発光量が増える分、セラミック製発光管の発光効率がさらに向上する。
【0026】
請求項4によれば、放電発光部における発光量がさらに増える分、セラミック製発光管の発光効率がさらに一層向上する。
【0027】
請求項5によれば、セラミック管端部領域に設けた導電性塗膜が補助電極として作用するので、放電バルブの起動電圧が下がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0029】
図1〜図5は請求項1に係る発明の第1の実施例を示すもので、図1は同発明の第1の実施例である放電バルブを光源とする自動車用前照灯の正面図、図2は同前照灯の鉛直縦断面図(図1に示す線II−IIに沿う断面図)、図3は同放電バルブの要部である発光管の拡大鉛直縦断面図、図4は発光管の横断面図(図3に示す線IV−IVに沿う断面図)、図5は発光管本体の拡大鉛直縦断面図である。
【0030】
これらの図において、符号80は、前面側が開口する容器状の自動車用前照灯のランプボディで、その前面開口部に透明な前面カバー90が組み付けられて灯室Sが画成され、灯室S内には、後頂部のバルブ挿着孔102に放電バルブV1を挿着したリフレクター100が収容されている。リフレクター100の内側には、アルミ蒸着された有効反射面101a、101bが形成され、有効反射面101a、101bは、曲面形状が異なる複数の配光制御用ステップ(多重反射面)で構成され、バルブV1の発光がリフレクター100(の有効反射面101a、101b)で反射されて前方に照射されることで、前照灯の所定の配光パターンが形成される。
【0031】
また、リフレクター100とランプボディ80間には、図1に示すように、1個の玉継手構造のエイミング支点E0と、2本のエイミングスクリューE1,E2で構成したエイミング機構Eが介装されて、リフレクター100(前照灯)の光軸Lを水平傾動軸Lx,鉛直傾動軸Ly周りにそれぞれ傾動(前照灯の光軸Lをエイミング調整)できるように構成されている。
【0032】
符号30は、リフレクタ100のバルブ挿着孔102に係合する焦点リング34が外周に設けられたPPS樹脂からなる絶縁性ベースで、この絶縁性ベース30の前方には、ベース30から前方に延出する通電路である金属製リードサポート36と、ベース30の前面に固定された金属製支持部材60とによって、アークチューブ10Aが固定支持されて、放電バルブV1が構成されている。
【0033】
即ち、発光管10Aの前端部から導出するリード線18aが、絶縁性ベース30から延出するリードサポート36の折曲された先端部にスポット溶接により固定されることで、発光管10Aの前端部がリードサポート36の折曲された先端部に担持されている。一方、発光管10Aの後端部から導出するリード線18bが、絶縁性ベース30後端部に設けられた端子47に接続されるとともに、発光管10Aの後端部が、絶縁性ベース30の前面に固定された金属製支持部材60で把持された構造となっている。
【0034】
絶縁性ベース30の前端部には凹部32が設けられ、この凹部32内に発光管10Aの後端部が収容保持されている。そして、絶縁性ベース30の後端部には、後方に延出する円筒形状外筒部42で囲まれた円柱形状ボス43が形成され、外筒部42の付け根部外周には、リードサポート36に接続された円筒形状のベルト型端子44が固定一体化され、ボス43には、後端側リード線18bが接続されたキャップ型端子47が被着一体化されている。
【0035】
発光管10Aは、図3に示すように、棒状電極15,15が対設されかつ金属ハロゲン化物等の発光物質が始動用希ガスとともに封入された放電発光室sをもつ発光管本体11Aと、発光管本体11Aを覆う円筒型の紫外線遮蔽用シュラウドガラスと20とが一体化されて構成されている。発光管本体11Aの前後端部からは、放電発光室s内に突出する棒状電極15,15に電気的に接続されたリード線18a,18bが導出し、これらのリード線18a,18bに紫外線遮蔽用のシュラウドガラス20がシール(封着)されることで、発光管本体11Aとシュラウドガラス20が一体化されている。符号22は、シュラウドガラス20の縮径されたシール部を示す。
【0036】
発光管本体11Aは、外形が長手方向に均一の真円筒形状の透光性セラミック管12を備え、セラミック管12の長手方向中央部には、放電発光室sを画成する放電発光部12aが形成されている。セラミック管12の両端部には、放電発光部12aの放電発光室sに連通する細孔13が設けられた管端部領域12cが形成されている。
【0037】
管端部領域12cの細孔13の端部側開口寄りには、モリブデンパイプ14がメタライズ接合により固定されて、セラミック管12の端部からモリブデンパイプ14が突出している。モリブデンパイプ14内に挿通されてその先端部が放電発光室s内に突出する棒状電極15は、その後端部がモリブデンパイプ14突出端部に溶着(接合)されることで、セラミック管12に一体化されるとともに、金属ハロゲン化物等の発光物質が始動用希ガスとともに封入されている放電発光室sに連通する細孔13が封止されている。符号14aはレーザ溶接部である。
【0038】
そして、セラミック管12は、長手方向に直交する断面の外形が長手方向に均一に形成されて、セラミック管端部領域12cの細孔13を取り囲む管壁が厚肉となって、管壁全体がほぼ均一の厚さに形成されている従来のセラミック管(図7参照)に比べて、特にセラミック管端部領域12cの耐熱衝撃強度が高められている。
【0039】
また、モリブデンパイプ14は細孔13の開口端部寄りに接合されて、モリブデンパイプ14の挿入先端部は、放電発光室sから離間した位置にあるため、それだけ放電発光室s側の熱がモリブデンパイプ14に伝わり難い。このため、細孔13のほぼ全域にモリブデンパイプが接合されている(モリブデンパイプの挿入先端部が放電発光室近傍にある)従来技術(図7参照)に比べて、セラミック管端部領域12cに発生する熱応力は小さく、それだけセラミック管端部領域12cにクラックが発生し難い。
【0040】
また、セラミック管中央部領域である放電発光部12aと管端部領域12cとの間には、細孔13を取り囲む管壁を薄肉化することで放電発光部12aから管端部領域12cへの熱伝達を抑制して、管端部領域12cにおける耐熱衝撃強度を高めるとともに、放電発光部12aにおける発光効率を高めるための括れ部12bが周設されている。
【0041】
即ち、括れ部12bに対応する管壁は管端部領域12cの厚さより薄く、セラミック管中央部領域(放電発光部)12aから管端部領域12cへの熱伝達経路が薄肉化されて、セラミック管中央部領域(放電発光部)12aから管端部領域12cへの熱伝達が抑制されている。このため、抑制管端部領域12cへの熱伝達量が減少する分、管端部領域12cが高温とならず、モリブデンパイプ14がメタライズ接合されている管端部領域12cに発生する熱応力も小さく、耐熱衝撃強度が高いといえる。
【0042】
また、セラミック管中央部領域(放電発光部)12aから管端部領域12cへの熱伝達が抑制されているため、放電発光室s内の温度が維持されて、発光管本体11A(放電発光部12a)の発光効率(消費電力に対する光束値)が向上する。
【0043】
特に、括れ部12bは、モリブデンパイプ14の挿入先端部から放電発光室s間に対応する位置に設けられている(モリブデンパイプ14の挿入先端部が括れ部12b対応位置まで延びていない)ので、薄肉化された管壁の熱伝達抑制作用が熱伝導性のよいモリブデンパイプ14によって妨げられることなく有効に働く。
【0044】
また、セラミック管端部領域12cが厚肉となる分、セラミック管12の体積(重量)が増えて、セラミック管12の熱容量はそれだけ増加することになる。しかし、放電発光部12aと管端部領域12cとの間に括れ部12bが設けられることで、セラミック管12の体積(重量)が減って、セラミック管12の熱容量はそれだけ減少することになる。即ち、セラミック管12の熱容量の増加分と減少分が相殺されて、セラミック管12の熱容量は従来のセラミック管(図7 参照)と比べて大きく変化することはない。
【0045】
しかし、放電発光部12aと管端部領域12c間の管壁(細孔13を取り囲む管壁)が括れ部12bによって薄肉化されているため、放電発光部12a側から管端部領域12c側への熱伝達経路の断面積が縮小されて、放電発光部12aから管端部領域12cへの熱伝達量が減少し、それだけ放電発光室s内の温度低下が抑制されて、発光管本体11A(放電発光部12a)の発光効率(消費電力に対する光束値)が向上している。
【0046】
また、括れ部12bの放電発光室sに臨む側12b1は、図5に示すように、放電発光室sに光を戻す再帰反射曲面(所定の曲率の曲面)に形成されて、括れ部12bの放電発光室に臨む側12b1から出射しようとする光の一部が、この再帰反射曲面で反射されて放電発光室sに戻るため、それだけ放電発光部12aにおける発光量が増えて、発光管本体11Aの発光効率がさらに向上するようになっている。
【0047】
さらに、セラミック管12の括れ部12bを含む管端部領域12cの外周面には、アルミナとタングステンを混合した導電性遮光膜12dが塗布されて、放電発光部12cにおける発光量をさらに増やすとともに、グレア光の発生が抑制されている。即ち、導電性遮光膜12dは裏面白色・表面黒色に構成されて、括れ部12bおよび管端部領域12cから出射しようとする光は、導電性遮光膜12dで反射されてセラミック管12内に確実に戻るので、放電発光部12aにおける発光量がそれだけ増えるのである。
【0048】
また、放電発光部12a以外の領域12b,12cでの僅かな発光(セラミック管特有の拡散光)がグレア光につながることのないように、導電性遮光膜12dは、セラミック管12内中央部側の側縁部が棒状電極15の先端対応位置Pの軸方向±0.5mmの範囲内にくるように正確に形成されている。
【0049】
また、導電性遮光膜12dは、アルミナとタングステンを混合したセラミック塗膜で構成されており、導電性遮光膜12dが補助電極として作用し、発光管本体11Aの始動特性が改善される等、放電バルブ10Aの起動電圧を低くできる。
【0050】
そして、本実施例に示すセラミック管12の外径は1.5〜3.5mm(望ましくは1.5〜2.5mm)、電極間距離は2.0〜6.0mm、放電発光室s内に封入されている始動用希ガス(Xe)の封入圧は0.6〜1.6MPaに設定されて、ホットゾーンが前照灯として望ましい所定位置にくるとともに、鮮明なクリアカットラインが得られるように構成されている。
【0051】
また、棒状電極15は、先端側の細いタングステン電極棒15aと基端部側の太いモリブデン棒15bとが同軸状に接合一体化されたもので、モリブデンパイプ14と棒状電極15(のモリブデン棒15b)間には、棒状電極15を挿通できるように、またセラミック管12両端に発生する熱応力を吸収できるように、25μm程度の微小隙間16が形成されている。セラミック管12から突出するモリブデンパイプ14には、リード線18a,18bの先端屈曲部が溶接により固定されて、リード線18a,18bと棒状電極15,15とが同一軸状に配置されている(図2,3参照)。
【0052】
図6は本発明の第2の実施例である放電バルブの要部である発光管本体の鉛直縦断面図である。
【0053】
前記した第1の実施例の発光管10A(発光管本体11A)では、セラミック管12の括れ部12bを含む管端部領域12cの外周面に導電性遮光膜12dが形成されて、発光管本体11Aの発光量の増加とグレア光発生の防止が図られていたが、この第2の実施例の発光管10B(発光管本体11B)では、導電性遮光膜12dに代えて、セラミック管12の括れ部12bを含む管端部領域12bにアルミナとタングステンを混合したセラミック製の導電性遮光キャップ12eが被着一体化されている。
【0054】
その他は、前記した第1の実施例と同一であり、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0055】
なお、前記した実施例では、放電バルブにおける発光管10A,10Bが、いずれも絶縁性ベース30の前方にセラミック製発光管本体11A,11Bとこの発光管本体11A,11Bを包囲するシュラウドガラス20とを一体化した構造として説明されているが、ベース30の前方に配置する発光管10A,10Bは、シュラウドガラス20を設けないセラミック製発光管本体11A,11Bだけの構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施例である放電バルブを光源とする自動車用前照灯の正面図である。
【図2】同前照灯の鉛直縦断面図(図1に示す線II−IIに沿う断面図)である。
【図3】同放電バルブの要部である発光管の拡大鉛直縦断面図である。
【図4】発光管の横断面図(図3に示す線IV−IVに沿う断面図)である。
【図5】発光管本体の拡大鉛直縦断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例である放電バルブの要部である発光管本体の鉛直縦断面図である。
【図7】従来の放電バルブの要部である発光管本体の鉛直縦断面図である。
【符号の説明】
【0057】
V1 自動車用放電バルブ
s 放電発光室
10A,10B 発光管
11A,11B セラミック製発光管本体
12 セラミック管
12a セラミック管中央部領域である放電発光部
12b 括れ部
12b1 再帰反射曲面
12c セラミック管の端部領域
12d 導電性遮光膜
12e 導電性遮光キャップ
13 細孔
14 モリブデンパイプ
14a 放電発光室の封止部である溶着部
15 放電電極を構成する棒状電極
15a タングステン電極棒
15b モリブデン棒
20 紫外線遮蔽用シュラウドガラス
30 合成樹脂製絶縁性ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極が対設されかつ発光物質等が始動用希ガスとともに封入された放電発光室をセラミック管の長手方向略中央部に設けたセラミック製発光管を備えた自動車用放電バルブにおいて、前記放電発光室に連通する前記セラミック管両端部の細孔に金属パイプが接合され、前記金属パイプに挿通されその先端が前記放電発光室内に突出して前記放電電極を構成する電極棒の後端部が前記金属パイプの突出端部に接合された自動車用放電バルブであって、
前記セラミック管の前記放電発光室に対応する管中央部領域と前記細孔の設けられた管端部領域間に括れ部が設けられたことを特徴する自動車用放電バルブ。
【請求項2】
前記括れ部は、前記金属パイプの挿入先端部から前記放電発光室間に対応する位置に設けられたことを特徴する請求項1に記載の自動車用放電バルブ。
【請求項3】
前記括れ部の前記放電発光室に臨む側は、放電発光室に光を戻す曲面形状に構成されたことを特徴する請求項1または2に記載の自動車用放電バルブ。
【請求項4】
前記括れ部を含むセラミック管端部領域には、出射光をセラミック管内部に反射する反射材が設けられたことを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載の自動車用放電バルブ。
【請求項5】
前記反射材は、金属を混合した導電性塗膜で構成されたことを特徴する請求項4に記載の自動車用放電バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−26921(P2007−26921A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208265(P2005−208265)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】