説明

自動車用計器

【課題】目盛の配列形状や目盛板の外形を、円形や半円形以外の任意形状に設定して斬新な計器外形を得ることができ、しかも、非計測時には、指針部材を完全に隠して、指針が露出していない斬新な計器デザインを表現することのできる自動車用計器を提供すること。
【解決手段】線形12に延びる帯状域13上に目盛11が付与された帯状目盛板10と、帯状目盛板10上の目盛11を指し示すための指針部材20と、指針部材20を目盛11の始端の外側の待機位置P2から目盛11の終端まで移動可能に案内するガイドレール30と、ガイドレール30上の指針部材20を計測データに応じた目盛11の位置に移動させる針駆動装置40と、待機位置P2に移動した指針部材20の上を覆って隠す針格納カバー50と、を備え、非計測時には針格納カバー50内に指針部材20を隠す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目盛板上の計測値に対応する目盛を指針部材により指し示すことで計測値を教示する自動車用計器に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、自動車のインストルメントパネルに組み込まれるコンビネーションメータユニットの従来例を示したものである。
【0003】
このコンビネーションメータユニット100は、速度計110と回転計120を、ユニットの表示パネル101上に左右に並べて配置している。
【0004】
図示の速度計110及び回転計120は、計測値に対応する目盛板111,121上の目盛112,122を指針部材113,123により指し示すことで計測値を教示する自動車用計器である。
【0005】
これらの速度計110及び回転計120は、いずれも、指針部材113,123がそれぞれの指針部材の基端113a,123aを中心に旋回する構成である。また、目盛112,122は、指針部材113,123の旋回時にこれらの指針部材113,123の先端の移動軌跡となる円弧状に、付与されている。
【0006】
図6は、斬新な計器デザインを表現するべく改良された速度計の従来例を示したものである。
【0007】
図6に示した速度計130は、指針部材133が該指針部材の基端133aを中心に旋回する構成である点、及び、目盛板131上の目盛132が指針部材133の旋回時にこれらの指針部材133の先端の移動軌跡となる円弧状に付与されている点では、図5の速度計110に共通している。
【0008】
しかし、この速度計130の場合は、非計測時には、指針部材133が目盛132の始端の外側の待機位置P1まで回動すると共に、待機位置P1の指針部材133を隠す針格納カバー135を装備している。
【0009】
その結果、非計測時には指針部材133がユーザから見えず、計測時のみ、指針部材が目盛132上に出現するという新規なデザインを表現することができる(下記特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−121212号公報
【特許文献2】実公平05−11461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、特許文献1,2に示した速度計130では、指針部材133が回転移動する形式で、指針部材133の基端133aは回転中心として定位置に残るという構造上の制限から、非計測時に指針部材133の全体を完全に隠すデザインとすることが難しく、非計測時にも、指針部材133の一部(図6では、基端133a側の破線で示した部分)133bはユーザが視認できてしまう。即ち、非計測時に、指針部材を完全に隠す斬新な計器デザインにはできないという問題があった。
【0012】
また、図5及び図6に示したいずれの自動車用計器も、目盛112,122を指針部材113,123の旋回域の周囲に円弧状に配列しなければならないこと、また、目盛板111,121の形状が円形又は円形の一側を切除した半円形に制限されること、等から、デザインが画一的になり易く、斬新な計器デザインを表現することが難しいという問題があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、目盛の配列形状や目盛板の形状を、円形や半円形以外の任意形状に設定して斬新な計器外形を得ることができ、しかも、非計測時には、指針部材を完全に隠して、指針部材が露出していない斬新な計器デザインを表現することのできる自動車用計器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)目盛板上の計測値に対応する目盛を指針部材により指し示すことで計測値を教示する自動車用計器であって、
所定の線形に延びる帯状域上に前記線形の長さ方向に適宜間隔を開けて目盛が付与された帯状目盛板と、
前記帯状目盛板上の目盛を指し示すための指針部材と、
前記線形に沿って延設されて、前記指針部材を前記目盛の始端の外側の待機位置から前記目盛の終端まで移動可能に案内するガイドレールと、
前記ガイドレール上の前記指針部材を計測データに応じた目盛の位置に移動させる針駆動装置と、
前記待機位置に移動した前記指針部材の上を覆って隠す針格納カバーと、
を備え、非計測時には前記針格納カバー内に指針部材を隠すことを特徴とする自動車用計器。
【0015】
(2)前記帯状目盛板は、目盛の始端側の線形が、垂直線を漸近線とする曲線に設定されていることを特徴とする上記(1)に記載の自動車用計器。
【0016】
(3)前記針駆動装置は、前記ガイドレールに沿って走行可能に前記ガイドレール上に布設されると共に、中間部に前記指針部材が固定された線条体と、
前記待機位置側に位置する前記ガイドレールの一端側に配置されて、前記指針部材が前記待機位置に位置するように前記線条体の一端側を巻き取る始端側リールと、
前記目盛の終端側に位置する前記ガイドレールの他端側に配置されて、前記線条体の他端側の巻取量を調整することで、前記指針部材を任意の目盛位置に位置決め可能な終端側リールと、
前記終端側リールを回転駆動して前記指針部材の位置を制御するモータと、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用計器上記(1)又は(2)に記載の自動車用計器。
【0017】
(4)前記始端側リールは、ぜんまいバネにより、前記線条体の巻き取り方向に付勢されていることを特徴とする上記(3)に記載の自動車用計器。
【0018】
上記(1)の構成によれば、指針部材はその全体がガイドレール上を移動する構成であるため、指針部材の先端位置の移動軌跡は、ガイドレールの布設経路の形状に沿う線形に相応する。従って、目盛の配列位置や目盛板の外形は、ガイドレールの布設経路の形状に相応する任意の線形に設定することができる。換言すれば、目盛の配列位置や目盛板の外形を、円形や半円形以外の任意形状に設定して斬新な計器外形を得ることができる。
【0019】
しかも、上記(1)の構成によれば、指針部材はその全体がガイドレール上を移動する構成であるため、指針部材が待機位置に移動している非計測時には、その全体を針格納カバーにより隠すことができる。
【0020】
従って、非計測時には、指針部材を完全に隠して、指針が露出していない斬新な計器デザインを表現することもできる。
【0021】
上記(2)の構成によれば、指針部材の待機位置付近での移動方向は、漸近線である垂直線方向になり、指針部材自体は先端が略水平方向に延出した姿勢で移動することになるため、縁が略水平に設定された針格納カバーによって、簡単に指針部材の全体を隠すことができ、非計測時に指針部材を完全に隠す計器デザインを簡単に達成することができる。
【0022】
上記(3)の構成によれば、ガイドレールの構造を例えば線条体が挿通する樋状とすると、ガイドレールの両端のリールにおける線条体の巻き取り量を調整することで、線条体に固定されている指針部材をガイドレール上の任意位置に移動させることができる。
即ち、終端側リールを回転駆動するモータの制御により、簡単に、指針部材を任意の目盛位置に移動させることができ、針駆動装置としての構成が複雑化することを抑止することができる。
【0023】
上記(4)の構成によれば、始端側リールの巻き取り方向への駆動は、ぜんまいバネ(渦巻きバネ)によって行うため、駆動用の電動モータの装備は終端側リール側だけで済み、電動モータの装備数を減らして、コスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による自動車用計器によれば、目盛の配列位置や目盛板の外形は、ガイドレールの布設経路の形状に相応する任意の線形に設定することができる。従って、目盛の配列位置や目盛板の外形を、円形や半円形以外の任意形状に設定して斬新な計器外形を得ることができる。
【0025】
しかも、本発明による自動車用計器によれば、指針部材はその全体がガイドレール上を移動する構成であるため、指針部材が待機位置に移動している非計測時には、その全体を針格納カバーにより隠すことができる。
【0026】
従って、非計測時には、指針部材を完全に隠して、指針が露出していない斬新な計器デザインを表現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る自動車用計器の一実施形態である速度計の正面から見た外観図である。
【図2】図1に示した速度計の構成の説明図である。
【図3】図2に示した針駆動装置の分解斜視図である。
【図4】(a)は非計測時における目盛の始端付近の外観図、(b)は計測開始時に待機位置から指針部材が目盛側に出現した状態の外観図、(c)は計測した速度に相応する目盛の位置に指針部材が移動した状態の外観図である。
【図5】従来の一般的な自動車用計器を組み込んだコンビネーションメータユニットの正面図である。
【図6】従来の別の速度計の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る自動車用計器の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1〜図3は本発明に係る自動車用計器の一実施形態である速度計の説明図で、図1は一実施形態である速度計の正面から見た外観図、図2は図1に示した速度計の構成の説明図、図3は図2に示した針駆動装置の分解斜視図である。
【0030】
この一実施形態の速度計1は、帯状目盛板10と、指針部材20と、ガイドレール30と、針駆動装置40と、針格納カバー50とを備え、帯状目盛板10上の計測値に対応する目盛11を指針部材20により指し示すことで計測値を教示する。
【0031】
帯状目盛板10は、図2にも示すように、両側縁が所定の線形12に延びる帯状域13上に、線形12の長さ方向に適宜間隔を開けて目盛11が付与された構成である。目盛11には、速度値14も表記されている。
【0032】
本実施形態の場合、上記の線形12は、上に凸の湾曲線状である。更に、本実施形態の帯状目盛板10では、目盛11の始端側の線形12が、図2に示すように、垂直線Vを漸近線とする曲線に設定されている。
【0033】
指針部材20は、帯状目盛板10上の目盛11を指し示すための部材で、線形12に沿って移動可能に後述のガイドレール30によって案内される本体部21と、該本体部21から線形12に直交する方向に延出した指針部22とを備えている。
【0034】
ガイドレール30は、線形12に沿って上に凸の湾曲線状に延設されている。このガイドレール30は、指針部材20を、目盛11の始端の外側の待機位置P2から目盛11の終端まで移動可能に案内する。
【0035】
本実施形態の場合、ガイドレール30は、図3に示すように、速度計1の表面側を開放した樋状のレール本体31と、後述する針駆動装置40の線条体がレール本体31から脱落しないようにレール本体31の開放部を覆うレールカバー32と、を備えている。
【0036】
ガイドレール30の始端側には、図2に示すように、指針部材20が待機位置P2に移動したときに、指針部材20が当接して指針部材20を待機位置P2に位置決めするストッパ34が設けられている。
【0037】
針駆動装置40は、ガイドレール30上の指針部材20を、計測データに応じた目盛11の位置に移動させる装置である。
【0038】
本実施形態の場合、針駆動装置40は、図3に示すように、線条体41と、始端側リール42と、終端側リール43と、モータ44と、を備える。
【0039】
線条体41は、樹脂製又は金属製の糸状体で、ガイドレール30に沿って走行可能に、ガイドレール30上に布設される。具体的には、レール本体31の内部に配設される。この線条体41は、中間部に指針部材20が固定される。
【0040】
始端側リール42は、図2に示すように、待機位置P2側に位置するガイドレール30の一端側に配置される。この始端側リール42は、指針部材20が待機位置P2に位置するように、線条体41の一端側を巻き取る。本実施形態の場合、始端側リール42は、内蔵のぜんまいバネ(渦巻きバネ)により、線条体41の巻き取り方向に付勢されている。
【0041】
終端側リール43は、図2及び図3に示すように、目盛11の終端側に位置するガイドレール30の他端側に配置されている。この終端側リール43は、線条体41の他端側の巻取量を調整することで、指針部材20を任意の目盛11位置に位置決め可能である。
【0042】
モータ44は、終端側リール43を回転駆動して、終端側リール43における線条体41の巻取量を調整して、前記指針部材20の位置を制御する。
【0043】
このモータ44の動作は、車両の走行速度の検出部を有する不図示の制御部からの信号で、制御される。
【0044】
以上に説明したガイドレール30や針駆動装置40は、帯状目盛板10の内側に配置される見返し60によって覆われて、隠される。
【0045】
本実施形態の場合、図1及び図2に示すように、見返し60の中央部には、速度以外の情報を表示するためのLCD表示器70が配置される。
【0046】
針格納カバー50は、見返し60の上に配置され、待機位置P2に移動した前記指針部材20の上を覆って隠す。
【0047】
従って、本実施形態の速度計1は、非計測時には針格納カバー50内に指針部材20を隠す。
【0048】
次に、本実施形態の速度計1において、指針部材20の表示形態を図4に基づいて説明する。
【0049】
速度計1の非計測時には、図4(a)に示すように、指針部材20は始端側リール42のぜんまいバネによる巻き取り力で、待機位置P2に位置しており、針格納カバー50の下に隠れて、ユーザからは視認することができない。
【0050】
速度計1の計測時には、計測データに応じてモータ44が終端側リール43を駆動して、図4(b)、(c)に示すように、指針部材20が計測データに相応する目盛11の位置に移動する。
【0051】
以上に説明した本実施形態の速度計1の場合、指針部材20はその全体がガイドレール30上を移動する構成であるため、指針部材20の先端位置の移動軌跡は、ガイドレール30の布設経路の形状に沿う線形12に相応する。従って、目盛11の配列位置や目盛11板の外形は、ガイドレール30の布設経路の形状に相応する任意の線形12に設定することができる。換言すれば、目盛11の配列位置や目盛11板の外形を、本実施形態に示したように、円形や半円形以外の任意形状に設定して斬新な計器外形を得ることができる。
【0052】
しかも、本実施形態の速度計1によれば、指針部材20はその全体がガイドレール30上を移動する構成であるため、指針部材20が待機位置P2に移動している非計測時には、その全体を針格納カバー50により隠すことができる。
【0053】
従って、非計測時には、指針部材20を完全に隠して、指針が露出していない斬新な計器デザインを表現することもできる。
【0054】
また、本実施形態の速度計1によれば、指針部材20の待機位置P2付近での移動方向は、漸近線である垂直線V方向になり、指針部材20自体は先端が略水平方向に延出した姿勢で移動することになるため、縁が略水平に設定された針格納カバー50によって、簡単に指針部材20の全体を隠すことができ、非計測時に指針部材20を完全に隠す計器デザインを簡単に達成することができる。また、指針部材20の全体が同時に出現するように動作するので、計測値の斬新な教示が可能となる。
【0055】
また、本実施形態の速度計1によれば、ガイドレール30の構造を線条体41が挿通する樋状としていて、ガイドレール30の両端のリールにおける線条体41の巻き取り量を調整することで、線条体41に固定されている指針部材20をガイドレール30上の任意位置に移動させることができる。
【0056】
即ち、終端側リール43を回転駆動するモータ44の制御により、簡単に、指針部材20を任意の目盛11位置に移動させることができ、針駆動装置40としての構成が複雑化することを抑止することができる。
【0057】
また、本実施形態の速度計1によれば、始端側リール42の巻き取り方向への駆動は、ぜんまいバネによって行うため、駆動用の電動モータ44の装備は終端側リール43側だけで済み、電動モータ44の装備数を減らして、コスト低減を図ることができる。
【0058】
なお、本発明の自動車用計器は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
【0059】
例えば、帯状目盛板10は、実施形態の線形に限るものではなく、例えば、高速側が上方に立ち上がるような曲線状、或いは、法定速度部分にピークを持つ曲線状など、種々の形態に設定することができる。
また、針駆動装置40は、ラック&ピニオンを利用した機構とすることも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 速度計(自動車用計器)
10 帯状目盛板
11 目盛
12 線形
13 帯状域
20 指針部材
30 ガイドレール
40 針駆動装置
41 線条体
42 始端側リール
43 終端側リール
44 モータ
50 針格納カバー
60 見返し
P2 待機位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目盛板上の計測値に対応する目盛を指針部材により指し示すことで計測値を教示する自動車用計器であって、
所定の線形に延びる帯状域上に前記線形の長さ方向に適宜間隔を開けて目盛が付与された帯状目盛板と、
前記帯状目盛板上の目盛を指し示すための指針部材と、
前記線形に沿って延設されて、前記指針部材を前記目盛の始端の外側の待機位置から前記目盛の終端まで移動可能に案内するガイドレールと、
前記ガイドレール上の前記指針部材を計測データに応じた目盛の位置に移動させる針駆動装置と、
前記待機位置に移動した前記指針部材の上を覆って隠す針格納カバーと、
を備え、非計測時には前記針格納カバー内に指針部材を隠すことを特徴とする自動車用計器。
【請求項2】
前記帯状目盛板は、目盛の始端側の線形が、垂直線を漸近線とする曲線に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用計器。
【請求項3】
前記針駆動装置は、前記ガイドレールに沿って走行可能に前記ガイドレール上に布設されると共に、中間部に前記指針部材が固定された線条体と、
前記待機位置側に位置する前記ガイドレールの一端側に配置されて、前記指針部材が前記待機位置に位置するように前記線条体の一端側を巻き取る始端側リールと、
前記目盛の終端側に位置する前記ガイドレールの他端側に配置されて、前記線条体の他端側の巻取量を調整することで、前記指針部材を任意の目盛位置に位置決め可能な終端側リールと、
前記終端側リールを回転駆動して前記指針部材の位置を制御するモータと、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用計器。
【請求項4】
前記始端側リールは、ぜんまいバネにより、前記線条体の巻き取り方向に付勢されていることを特徴とする請求項3に記載の自動車用計器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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