説明

自動車衝突模擬試験装置及びその方法と自動車衝突模擬試験装置用制御装置

【課題】自動車衝突模擬試験装置及びその方法において、再現性を向上可能とする。
【解決手段】供試体15を搭載可能なスレッド11を水平な前後方向に沿って移動自在に支持し、このスレッド11に対して加速度を付与可能な発射装置21として、スレッド11に向けてピストン32を打ち出し可能な油圧シリンダ22と、油圧シリンダ22の後部屋B側に接続されるアキュムレータ23と、油圧シリンダ22の前部屋Aに形成された排出ポート45に設けられるサーボ弁24とを設け、実車衝突試験で得られたデータに基づいてピストン32の打ち出し開始位置を設定する打ち出し開始位置設定手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を破壊することなく衝突時に客室に発生する加速度を再現し、二次衝突による乗員の傷害度合いを再現する自動車衝突模擬試験装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の衝突試験は、クラッシュ量や客室の残存空間量などの物理量と乗員傷害値とを評価するための実車衝突試験があるが、実車にダミーを乗せて所定速度でバリヤに衝突させる方法は破壊試験であり、非常にコストを要する。そのため、ダミーやエアバッグ等を搭載したホワイトボディ、模擬車体等を台車上に取付け、この台車に対して実車衝突時とほぼ同様の加速度を与えることで、供試体に作用する衝撃度を非破壊的に再現して乗員傷害値を評価し、エアバッグなどの安全装置を開発するための自動車衝突模擬試験が行われる。
【0003】
このような自動車衝突模擬試験装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された自動車衝突シミュレータにおけるサーボアクチュエータ装置では、アキュムレータに蓄積・蓄圧された作動油により、油圧アクチュエータのピストンを供試体が搭載されるスレッドに向けて打ち出し可能に構成し、この油圧アクチュエータに作動油が直接流入するようにアキュムレータを接続し、油圧アクチュエータから流出する作動油を制御するようにサーボ弁を接続することでメータアウト回路を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−162313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の自動車衝突シミュレータにおけるサーボアクチュエータ装置にあっては、サーボ弁を開放し、油圧アクチュエータ内の作動油を流出することで、アキュムレータに蓄積・蓄圧された作動油により油圧アクチュエータのピストンを打ち出し、供試体が搭載されるスレッドに対して加速度を付与している。この場合、油圧アクチュエータにおけるピストンの打ち出しストロークは、実車衝突試験で得られた各種データに基づいて設定される。
【0006】
ところで、自動車衝突模擬試験では、実車衝突試験に近い高い再現性が要求される。この高い再現性を確保するには、油圧アクチュエータ内に充填される油の油柱剛性を高くする必要があるが、この油柱剛性は、油圧アクチュエータにおけるピストン受圧面積やピストンのストロークに起因するものであり、油柱剛性の向上は困難なものとなっている。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、再現性を向上可能とする自動車衝突模擬試験装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の自動車衝突模擬試験装置は、水平な前後方向に沿って移動自在に支持されて供試体を搭載可能なスレッドと、該スレッドに向けてピストンを打ち出し可能な流体シリンダと、該流体シリンダの後室側に接続されるアキュムレータと、前記流体シリンダの前室側に形成された排出ポートに設けられるサーボ弁と、実車衝突試験で得られたデータに基づいて前記ピストンの打ち出し開始位置を設定する打ち出し開始位置設定手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、実車衝突試験で得られたデータに基づいてピストンの打ち出し開始位置が設定されることで、ピストンの打ち出しストロークが短い供試体にあっては、ピストンの打ち出し開始位置を前方側に設定することができ、油柱剛性を高めることで自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
【0010】
本発明の自動車衝突模擬試験装置では、前記打ち出し開始位置設定手段は、前記サーボ弁の弁開度を調整可能な制御装置を有し、該制御装置は、前記ピストンが初期位置にあるときに、前記サーボ弁の弁開度を予め設定された所定の一定開度に設定し、前記ピストンが打ち出し開始位置に到達したときに、前記サーボ弁の弁開度を予め設定された所定の試験開度に設定することを特徴としている。
【0011】
従って、装置構成をほとんど変更することなく、サーボ弁の弁開度を制御するだけで、ピストンを所定の打ち出し開始位置に容易に設定することができる。
【0012】
本発明の自動車衝突模擬試験装置では、前記制御装置は、前記ピストンの受圧力及び前記サーボ弁の弁開度に基づいて、前記ピストンが打ち出し開始位置に到達する時間を推定し、前記ピストンが打ち出し開始位置に到達したときに前記サーボ弁を試験開度に設定することを特徴としている。
【0013】
従って、新たな装置を追加することなく、ピストンを所定の打ち出し開始位置に高精度に設定することができる。
【0014】
本発明の自動車衝突模擬試験装置では、前記ピストンの打ち出し開始位置を検出する位置センサを設け、前記制御装置は、前記位置センサの検出結果に基づいて、前記ピストンが打ち出し開始位置に到達したことを判定し、前記サーボ弁を試験開度に設定することを特徴としている。
【0015】
従って、位置センサの検出結果に基づいてサーボ弁の弁開度を制御するだけで、ピストンを所定の打ち出し開始位置に高精度に設定することができる。
【0016】
本発明の自動車衝突模擬試験装置では、前記打ち出し開始位置設定手段は、前記流体シリンダに対して前記ピストンを打ち出し開始位置に拘束する位置拘束部材を有し、該位置拘束部材により前記ピストンを打ち出し開始位置に拘束した状態で前記流体シリンダ及び前記アキュムレータに流体を供給することを特徴としている。
【0017】
従って、位置拘束部材を用いることで、特別な制御を行うことなく、ピストンを所定の打ち出し開始位置に容易に設定することができる。
【0018】
また、本発明の自動車衝突模擬試験方法は、流体シリンダのピストンが初期位置にあるときにアキュムレータ及び該アキュムレータに連通された油圧シリンダに流体を供給することで加圧し、前記流体シリンダの前室側から流体を微小排出することで前記ピストンを打ち出し開始位置まで移動し、前記ピストンが打ち出し開始位置に到達したときに前記流体シリンダの前室側から流体を大量排出することで前記ピストンを供試体が搭載されたスレッドに向けて打ち出す、ことを特徴とするものである。
【0019】
従って、ピストンを所定の打ち出し開始位置に容易に設定することで、ピストンの打ち出しストロークが短い供試体にあっては、ピストンの打ち出し開始位置を前方側に設定することができ、油柱剛性を高めることで自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
【0020】
また、本発明の自動車衝突模擬試験方法は、前記流体シリンダのピストンを打ち出し開始位置に拘束し、前記ピストンが打ち出し開始位置にあるときにアキュムレータ及び該アキュムレータに連通された油圧シリンダに流体を供給することで加圧し、前記流体シリンダの前室側から流体を大量排出することで前記ピストンを供試体が搭載されたスレッドに向けて打ち出す、ことを特徴とするものである。
【0021】
従って、ピストンの打ち出しストロークが短い供試体にあっては、ピストンの打ち出し開始位置を前方側に設定することができ、油柱剛性を高めることで自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の自動車衝突模擬試験装置及びその方法によれば、実車衝突試験で得られたデータに基づいてピストンの打ち出し開始位置を設定するので、油柱剛性を高めることで自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る自動車衝突模擬試験装置を表す概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置におけるピストンの打ち出し開始位置を設定する説明図である。
【図3】図3は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置における試験方法を説明するためのタイムチャートである。
【図4】図4は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置による試験方法を表す動作図である。
【図5】図5は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置による試験方法を表す動作図である。
【図6】図6は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置による試験方法を表す動作図である。
【図7】図7は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置による試験方法を表す動作図である。
【図8】図8は、本発明の実施例2に係る自動車衝突模擬試験装置を表す概略構成図である。
【図9】図9は、本発明の実施例3に係る自動車衝突模擬試験装置を表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る自動車衝突模擬試験装置及びその方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施例1に係る自動車衝突模擬試験装置を表す概略構成図、図2は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置におけるピストンの打ち出し開始位置を設定する説明図、図3は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置における試験方法を説明するためのタイムチャート、図4乃至図7は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置による試験方法を表す動作図である。
【0026】
実施例1の自動車衝突模擬試験装置において、図1に示すように、スレッド11は、所定厚さを有する板材を有する骨組材であって、平面視が前後方向(図1にて、左右方向)に長い矩形状をなしている。床面12には、所定間隔を有して左右一対のレール13が前後方向に沿って付設されており、スレッド11が下面に固定されたスライダ14を介してこのレール13に沿って移動自在に支持されている。
【0027】
このスレッド11は、上面に供試体15を搭載可能となっている。この供試体15は、本実施例では、骨格のみを有する自動車、所謂、ホワイトボディであって、シート15a、ステアリング15b、エアバッグ15c、シートベルト15dなどの装備品が装着されると共に、ダミー15eが装着されている。この供試体15は、スレッド11における所定の位置に載置され、図示しない固定具により固定される。
【0028】
なお、ここで、供試体15は、ホワイトボディであり、シート15a、ステアリング15b、エアバッグ15c、シートベルト15d、ダミー16eなどを含むものであるが、ホワイトボディ、ステアリング15b、エアバッグ15c、シートベルト15d、ダミー16eを単体で供試体と称する場合もある。
【0029】
また、本実施例にて、供試体15は、スレッド11上に搭載されることから、この供試体15である自動車の前方(図1にて、左方向)をスレッド11の前方とし、供試体15である自動車の後方(図1にて、右方向)をスレッド11の後方として説明する。また、供試体15である自動車の側方、つまり、左右方向(図1にて、上下方向)をスレッド11の側方、つまり、左右方向として説明する。
【0030】
スレッド11の前方側の床面12には、スレッド11に対して後方加速度を付与する加速度装置としての発射装置21が設置されている。この発射装置21は、油圧制御(または、空圧制御、摩擦制御など)可能となっている。この発射装置21は、油圧シリンダ(流体シリンダ)22と、アキュムレータ23と、サーボ弁24と、油圧源25と、制御装置26とを有している。
【0031】
なお、本実施例にて、発射装置21(油圧シリンダ22)は、スレッド11上に対して後方加速度を付与することから、このスレッド11側を発射装置21の前方(図1にて、右方向)とし、スレッド11との反対側を発射装置21の後方(図1にて、左方向)として説明する。
【0032】
即ち、スレッド11の前方側の床面12は、段差により低くなっており、この低い床面12に油圧シリンダ22が設置されている。油圧シリンダ22は、中空円筒形状をなすシリンダ本体31と、このシリンダ本体31に移動自在に支持されるピストン32とから構成されている。なお、ピストン32は、シリンダ本体31の内周部に移動自在に嵌合するランド32aと、シリンダ本体31の中心軸心方向に貫通すると共にランド32aに接続されるピストンロッド32bとから構成されている。この場合、ピストン32(ピストンロッド32b)は、後端部がシリンダ本体31から外部に突出しているが、シリンダ本体31に固定されたケース33により被覆されている。また、ピストン32(ピストンロッド32b)は、前端部がシリンダ本体31から外部に突出し、スレッド11側に延出している。そして、シリンダ本体31とピストン32(ピストンロッド32b)との間には、シール部材34,35が装着されている。
【0033】
また、ピストン32(ランド32a)は、シリンダ本体31内を前後の部屋A,Bに区画しているが、ランド32aの外周面とシリンダ本体31の内周面との間に微小隙間が設定されており、微速での作動油の流通が可能となっている。また、前部屋A側のランド32aの外径が、後部屋Bのランド32aの外径より若干小さく設定されており、ランド32aは前部屋A側の受圧面積が後部屋B側の受圧面積より大きい。そのため、部屋A,Bに同圧の油圧が供給されているとき、ピストン32(ランド32a)は、後方(図1にて左方)側に付勢されている。
【0034】
アキュムレータ23は、図1の図示では1つであるが、油圧シリンダ22の周囲に複数配置されている。このアキュムレータ23は、中空円筒形状をなすハウジング36と、このハウジング36に移動自在に支持される隔壁37とから構成されており、前端部が油圧シリンダ22の後部に固定されている。隔壁37は、ハウジング36内を前後の部屋C,Dに区画しており、前部屋Cが連通路38を通して油圧シリンダ22の後部屋Bに連通されている。また、後部屋Dは、密閉された部屋であり、不活性ガスとしての窒素ガスが封入されている。
【0035】
油圧シリンダ22は、後部の連通路38に位置して、外部から作動油を供給可能な供給ポート39が形成されている。従って、供給ポート39から作動油を供給することで、油圧シリンダ22の後部屋B、前部屋A及びアキュムレータ23の前部屋Cに作動油を充填可能であり、このときに、隔壁37が後退して後部屋Dの窒素ガスが圧縮されることで、油圧シリンダ22及びアキュムレータ23の内部に高圧油を蓄圧可能となる。
【0036】
また、油圧シリンダ22は、図1の図示では1つであるが、前部に複数のサーボ弁24が装着されている。このサーボ弁24は、弁開度を調整可能な電磁弁であって、中空のケーシング41と、このケーシング41内に移動自在に支持された弁体42と、この弁体42を移動可能な駆動部43とから構成されている。サーボ弁24は、油圧シリンダ22の前部屋Aに開口する排出口44と、外部から作動油を供給可能な排出ポート45とを連通・遮断可能となっている。従って、駆動部43により弁体42を閉止位置に移動すると、排出口44と排出ポート45とを遮断することができ、駆動部43により弁体42を開放位置に移動すると、排出口44と排出ポート45とを連通することができ、このとき、油圧シリンダ22の前部屋Aに充填されている作動油を排出ポート45から外部に排出することができる。
【0037】
なお、油圧シリンダ22にて、ピストン32のおけるシリンダ本体31から突出した前端部には、フランジ部51が一体に形成されており、このフランジ部51がシリンダ本体31に当接することで、ピストン32の後退位置(後述する初期位置)が規定されている。また、油圧シリンダ22の前方にて、ピストン32の前端部に対応して、ピストン32をこの後退位置に拘束する拘束部材52が設けられている。この拘束部材52は、上下一対をなし、エアシリンダ53によりピストン32のおけるフランジ部51の前側を拘束可能となっている。なお、このエアシリンダ53には、エア給排装置54が連結されている。
【0038】
油圧源25は、収容タンク61、供給ポンプ62、冷却装置63等から構成されている。収容タンク61は、排出配管64を介して排出ポート45に連結されており、油圧シリンダ22の前部屋A内の作動油を排出ポート45から排出配管64を通して回収可能である。供給ポンプ62は、供給配管65を介して供給ポート39に連結されており、収容タンク61内の作動油を供給配管65から供給ポート39を通して油圧シリンダ22及びアキュムレータ23内に供給可能である。
【0039】
制御装置26は、サーボ弁24を制御可能となっており、運転操作装置27からの操作信号を受けてサーボ弁24の開閉制御、開度調整制御を実行する。また、制御装置26は、エア給排装置54を介してエアシリンダ53を作動することで、拘束部材52を作動可能となっている。この場合、制御装置26は、拘束部材52に設けられた図示しないセンサから拘束/解除信号が入力される。
【0040】
従って、サーボ弁24を閉止し、且つ、拘束部材52により油圧シリンダ22のピストン32を初期位置に拘束した状態で、供給ポンプ62により収容タンク61内の作動油を供給配管65から供給ポート39を通して油圧シリンダ22の各部屋A,B及びアキュムレータ23の前部屋Cに供給する。すると、この油圧シリンダ22の各部屋A,B及びアキュムレータ23の前部屋Cが加圧され、所定の高圧状態となると、供給ポンプ62の作動を停止する。そして、この高圧状態で、サーボ弁24を開放すると、油圧シリンダ22の前部屋Aの作動油が排出ポート45から排出配管64を通して収容タンク61に回収されることで、油圧シリンダ22のピストン32は、油圧シリンダ22の後部屋B及びアキュムレータ23の前部屋Cの圧力により前方(スレッド11側)に打ち出すことができる。
【0041】
そのため、発射装置21は、ピストン32の先端がスレッド11の前端に接触した状態で、ピストン32を打ち出すことで、このスレッド11に対して後方への衝撃力、つまり、加速度を与えることができる。即ち、発射装置21によりスレッド11に後方加速度を付与することは、スレッド11上の供試体15が前方衝突したときに前方加速度を受けることと同様の形態となり、模擬的に自動車衝突事故を発生させることができる。
【0042】
自動車衝突模擬試験では、上述したように、油圧シリンダ22及びアキュムレータ23内を高圧状態とし、サーボ弁24を開放して油圧シリンダ22の前部屋Aの作動油をすることで、ピストン32を打ち出し、スレッド11に対して後方加速度を与え、模擬的に自動車衝突事故を発生させる。この場合、発射装置21によるピストン32の打ち出しストロークは、実車衝突試験で得られたデータに基づいて設定されるが、供試体15の質量などに応じて変動する。例えば、質量の大きい供試体15はピストン32の打ち出しストロークが長く、質量の小さい供試体15はピストン32の打ち出しストロークが短い。
【0043】
一方で、自動車衝突模擬試験にて、実車衝突試験に近い高い再現性を確保するには、油圧シリンダ22の前部屋Aに充填される作動油の油柱剛性を高くする必要があり、この油柱剛性は、ランド32aの受圧面積、ランド32a(ピストン32)のストロークに起因しており、下記数式により求めることができる。ここで、Kは油柱剛性、Aは受圧面積、Lはストローク、βは作動油の物性地(体積弾性係数)である。
K=(A/L)β
【0044】
この場合、ランド32aの受圧面積A、作動油の物性地(体積弾性係数)βが一定値であることから、油柱剛性を高くするには、ランド32a(ピストン32)のストロークLを小さくすればよい。即ち、油圧シリンダ22にて、ランド32a(ピストン32)の最大ストロークは、衝突模擬試験を実施可能な最も質量の大きい供試体15に対して設定されていることから、質量の小さい供試体15に対して衝突模擬試験を実施する場合には、ランド32a(ピストン32)の打ち出しストロークは短くなる。
【0045】
そこで、実施例1では、実車衝突試験で得られたデータに基づいてピストン32の打ち出しストロークを設定し、この打ち出しストロークに応じてピストンの打ち出し開始位置を設定する。具体的には、実車衝突試験で得られたデータに基づいて設定されたピストン32の打ち出しストロークに応じて、ピストン32を初期位置から前進側に移動して打ち出し開始位置に停止させ、この前進した打ち出し開始位置から衝突模擬試験を実施するようにしている。この場合、質量の小さい供試体15は、ピストン32の打ち出しストロークが短くなることから、上述したランド32a(ピストン32)のストロークが短縮され、油柱剛性Kを高くなって、自動車衝突模擬試験における高い再現性を確保することができる。
【0046】
ここで、上述した実施例1の自動車衝突模擬試験装置による自動車衝突模擬試験方法について説明する。
【0047】
実施例1の自動車衝突模擬試験装置により自動車衝突試験を実施する場合、事前に、スレッド11の設計データ(重量や重心位置など)、実車衝突試験で得られた衝突時間に対する加速度変化の各データから、この加速度の時間的変化(波形)を再現できるように、発射装置21における油圧シリンダ22のピストン32の打ち出し開始位置、ピストン32の打ち出し力、スレッド11上の供試体15の位置を所定値に設定しておく。
【0048】
この場合、実車衝突試験で得られたデータに基づいてピストン32の打ち出し開始位置を設定する。この実施例では、実車衝突試験で得られた加速度データに基づいてピストン32の打ち出し開始位置を算出する。
【0049】
即ち、図2に示すように、実車衝突試験で得られた時間に対する加速度Gのデータが検出されると、この加速度Gのデータを積分することで速度Vのデータを算出し、この速度Vのデータ更に積分することで距離Lのデータを算出する。ここで、加速度Gのデータにて、時間t0にて、加速度G=0となるため、この時間t0に対応する距離Lが油圧シリンダ22におけるピストン32の打ち出し距離(ストローク)となる。この場合、図1に示すように、油圧シリンダ22は、ピストン32の初期位置から停止位置までの最大打ち出しストロークLaが設定されていることから、ピストン32の打ち出し開始位置から停止位置までの打ち出しストロークLが設定されると、ピストン32の初期位置からピストン32の打ち出し開始位置までの準備ストロークLが設定される。
【0050】
このようにピストン32の準備ストロークLと、打ち出しストロークLが設定されると、まず、図1、図3、図4に示すように、発射装置21における油圧シリンダ22のピストン32をフランジ部51がシリンダ本体31に当接する初期位置に停止させ、拘束装置51によりこの初期位置に規定すると共に、サーボ弁24を閉止状態とする。この状態で、オペレータは、時間t1にて、運転操作装置27により制御装置26に運転信号を出力し、供給ポンプ62を作動し、収容タンク61内の作動油を供給配管65を通して供給ポート39から油圧シリンダ22及びアキュムレータ23内に供給する。
【0051】
すると、図5に示すように、供給された作動油により、油圧シリンダ22の後部屋Bとアキュムレータ23の前部屋Cが加圧され、また、油圧シリンダ22の後部屋Bの作動油が前部屋Aに移送し、この後部屋Bも加圧される。そして、アキュムレータ23の後部屋D内の窒素ガスは、各部屋A,B,Cに供給された作動油により圧縮され、この各部屋A,B,Cの作動油が所定の高圧状態となると、供給ポンプ62の作動を停止する。
【0052】
次に、この状態から、図1、図3、図5に示すように、オペレータは、時間t2にて、運転操作装置27により制御装置26に運転信号を出力し、エア給排装置54によりエアシリンダ53を作動し、拘束部材52によるピストン32の拘束を解除する。そして、オペレータは、運転制御装置27に解除信号が入力されると、時間t3にて、運転操作装置27により制御装置26に運転信号を出力し、サーボ弁24を所定開度だけ開放、つまり、微開し、油圧シリンダ22の前部屋A内の作動油を排出ポート45から排出配管64を通して収容タンク61に排出回収する。
【0053】
すると、図3及び図6に示すように、油圧シリンダ22の前部屋Aの圧力が若干低下することで、ピストン32が微速で前進して距離が増加し、スレッド11を微速で後退させる。ここで、スレッド11の速度Vが若干上昇すると共に、加速度Gが上昇するが、サーボ弁24の開放開度が一定であることから、スレッド11の速度Vは一定速度となり、加速度Gが0となる。
【0054】
制御装置26は、ピストン32の受圧力、サーボ弁24の弁開度、設定されたピストン32の準備ストロークL(打ち出しストロークL)に基づいて、ピストン32の初期位置から打ち出し開始位置に到達する時間を推定している。そして、制御装置26は、ピストン32が所定の打ち出し開始位置に到達したと推定したら、図3及び図7に示すように、時間t4にて、サーボ弁24を全開し、油圧シリンダ22の前部屋A内の作動油を排出ポート45から排出配管64を通して収容タンク61に全て排出回収する。
【0055】
すると、油圧シリンダ22は、ピストン32を前方に打ち出し、スレッド11に対して目標前後加速度(スレッド11、供試体15における後方加速度)を与え、衝突時を模擬する加速度を供試体15に与える。すると、スレッド11は、与えられた目標前後加速度に伴って所定距離だけ後方に移動する。このとき、ピストン32が高速で前進することで所定距離(打ち出しストロークL)が増加し、スレッド11を高速で後退させる。ここで、スレッド11の速度Vが高速で上昇すると共に、加速度Gが高速で上昇することとなる。
【0056】
このように実施例1の自動車衝突模擬試験装置にあっては、供試体15を搭載可能なスレッド11を水平な前後方向に沿って移動自在に支持し、このスレッド11に対して加速度を付与可能な発射装置21として、スレッド11に向けてピストン32を打ち出し可能な油圧シリンダ22と、油圧シリンダ22の後部屋B側に接続されるアキュムレータ23と、油圧シリンダ22の前部屋Aに形成された排出ポート45に設けられるサーボ弁24とを設け、実車衝突試験で得られたデータに基づいてピストン32の打ち出し開始位置を設定する打ち出し開始位置設定手段を設けている。
【0057】
従って、実車衝突試験で得られたデータに基づいてピストン32の打ち出し開始位置が設定されることで、ピストン32の打ち出しストロークが短い供試体15にあっては、ピストン32の打ち出し開始位置を前方側に設定することができ、ピストン32の打ち出し距離を短くして油柱剛性を高めることができ、自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
【0058】
また、本実施例の自動車衝突模擬試験装置では、打ち出し開始位置設定手段として、サーボ弁24の弁開度を調整可能な制御装置26を設け、制御装置26は、ピストン32が初期位置にあるときに、サーボ弁24の弁開度を予め設定された所定の一定開度(微開)に設定し、ピストン32が打ち出し開始位置に到達したときに、サーボ弁24の弁開度を予め設定された所定の試験開度(全開)に設定している。従って、装置構成をほとんど変更することなく、サーボ弁24の弁開度を制御するだけで、ピストン32を所定の打ち出し開始位置に容易に設定することができる。
【0059】
また、本実施例の自動車衝突模擬試験装置では、制御装置26は、ピストン32の受圧力及びサーボ弁24の弁開度に基づいて、ピストン32が打ち出し開始位置に到達する時間を推定し、ピストン32が打ち出し開始位置に到達したときにサーボ弁34を試験開度に設定している。従って、新たな装置を追加することなく、ピストン32を所定の打ち出し開始位置に高精度に設定することができる。
【0060】
また、本実施例の自動車衝突模擬試験装置では、制御装置26は、実車衝突試験で得られたデータに基づいてピストン32の打ち出し開始位置を算出している。従って、自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
【0061】
また、本実施例の自動車衝突模擬試験方法にあっては、油圧シリンダ22のピストン32が初期位置にあるときに油圧シリンダ22の部屋A,B、アキュムレータ23の前部屋Cに作動油を供給することで加圧し、油圧シリンダ22の前部屋Aから作動油を微小排出することでピストン32を打ち出し開始位置まで移動し、ピストン32が打ち出し開始位置に到達したときに、油圧シリンダ22の前部屋Aから作動油を大量排出することでピストン32を供試体15が搭載されたスレッド11に向けて打ち出すようにしている。従って、ピストン32を所定の打ち出し開始位置に容易に設定することで、ピストン32の打ち出しストロークが短い供試体15にあっては、ピストン32の打ち出し開始位置を前方側に設定することができ、油柱剛性を高めることで自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
【実施例2】
【0062】
図8は、本発明の実施例2に係る自動車衝突模擬試験装置を表す概略構成図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0063】
実施例2の自動車衝突模擬試験装置では、図8に示すように、実車衝突試験で得られたデータに基づいて油圧シリンダ22におけるピストン32の打ち出しストロークを設定し、この打ち出しストロークに応じてピストン32の打ち出し開始位置を設定する。即ち、実施例1と同様に、実車衝突試験で得られたデータに基づいてピストン32の打ち出しストロークを設定し、この打ち出しストロークからピストン32の打ち出し開始位置を設定する。そして、ピストン32を初期位置から打ち出し開始位置まで移動し、この打ち出し開始位置から衝突模擬試験を実施する。
【0064】
また、実施例2では、ピストン32の位置を検出する位置センサ71が設けられており、検出結果が制御装置26に入力される。この場合、ピストン32には、検出子(図示略)が内蔵されており、位置センサ71は、この検出子を検出することで、ピストン32の位置を検出する。制御装置26は、この位置センサ71の検出結果をフィードバックすることで、ピストン32が打ち出し開始位置と現在のピストン32の位置を比較し、ピストン32が打ち出し開始位置に到達したことを判定し、サーボ弁24を試験開度に設定している。
【0065】
従って、まず、発射装置21における油圧シリンダ22のピストン32を初期位置に停止させ、この状態で制御装置26は供給ポンプ62を作動し、収容タンク61内の作動油を供給配管65を通して供給ポート39から油圧シリンダ22及びアキュムレータ23内に供給することで、各部屋A,B,Cの作動油を所定の高圧状態とする。
【0066】
次に、この状態から、制御装置26は、サーボ弁24を微開し、油圧シリンダ22の前部屋A内の作動油を排出ポート45から排出配管64を通して収容タンク61に排出回収する。すると、ピストン32が微速で前進し、スレッド11を微速で後退させる。位置センサ71はピストン32の位置を検出し、検出結果を制御装置26に出力している。制御装置26は、この位置センサ71の検出結果に基づいて、ピストン32が打ち出し開始位置に到達したこと認識したら、サーボ弁24を全開し、油圧シリンダ22の前部屋A内の作動油を排出ポート45から排出配管64を通して収容タンク61に全て排出回収する。
【0067】
すると、油圧シリンダ22は、ピストン32を前方に打ち出し、スレッド11に対して目標前後加速度(スレッド11、供試体15における後方加速度)を与え、衝突時を模擬する加速度を供試体15に与える。
【0068】
このように実施例2の自動車衝突模擬試験装置にあっては、実車衝突試験で得られたデータに基づいて油圧シリンダ22におけるピストン32の打ち出しストロークを設定し、この打ち出しストロークに応じてピストン32の打ち出し開始位置を設定すると共に、ピストン32の位置を検出する位置センサ71を設け、制御装置26がこの位置センサ71の検出結果に基づいて、ピストン32が打ち出し開始位置に到達したことを判定している。
【0069】
従って、位置センサ71の検出結果に基づいてサーボ弁24の弁開度を制御するだけで、ピストンを所定の打ち出し開始位置に高精度に設定し、この位置から試験を行うことができ、自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
【0070】
なお、上述した実施例1、2では、サーボ弁24を微開することでピストン32を微速で前進させ、このピストン32が打ち出し開始位置に到達したら、サーボ弁24を全開することでピストン32を前方に打ち出し、スレッド11に目標前後加速度を与えるようにしたが、この方法に限定されるものではない。例えば、サーボ弁24を微開することでピストン32を微速で前進させ、このピストン32が打ち出し開始位置に到達したら、サーボ弁24を全閉することでピストン32を所定時間停止させる。そして、スレッド11の振動が停止(速度や加速度が0)して安定したら、サーボ弁24を全開することでピストン32を前方に打ち出し、スレッド11に目標前後加速度を与えるようにしてもよい。
【実施例3】
【0071】
図9は、本発明の実施例3に係る自動車衝突模擬試験装置を表す概略構成図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0072】
実施例3の自動車衝突模擬試験装置では、図9に示すように、実車衝突試験で得られたデータに基づいて油圧シリンダ22におけるピストン32の打ち出しストロークを設定し、この打ち出しストロークに応じてピストン32の打ち出し開始位置を設定する。即ち、実施例1と同様に、実車衝突試験で得られたデータに基づいてピストン32の打ち出しストロークを設定し、この打ち出しストロークからピストン32の打ち出し開始位置を設定する。そして、ピストン32を初期位置から打ち出し開始位置まで移動し、この打ち出し開始位置から衝突模擬試験を実施する。
【0073】
また、実施例3では、打ち出し開始位置設定手段として、油圧シリンダ22に対してピストン32を打ち出し開始位置に拘束する位置拘束部材81を設け、この位置拘束部材81によりピストン32を打ち出し開始位置に拘束した状態で、油圧シリンダ22及びアキュムレータ23に作動油を供給するようにしている。即ち、油圧シリンダ22にて、ピストン32のおけるシリンダ本体31から突出した前端部にフランジ部51が形成されている。そして、ピストン32が打ち出し開始位置に移動した状態で、シリンダ本体31とフランジ部51との間に位置拘束部材81を介装する。この位置拘束部材81は、上下一対をなし、エアシリンダ53によりピストン32のおけるフランジ部51の前側を拘束可能となっている。なお、このエアシリンダ53には、エア給排装置54が連結されている。
【0074】
従って、まず、発射装置21における油圧シリンダ22のピストン32を初期位置に停止させ、サーボ弁24を開放状態とする。この状態で、制御装置26は、供給ポンプ62を作動し、収容タンク61内の作動油を供給配管65を通して供給ポート39から油圧シリンダ22及びアキュムレータ23内に供給する。このとき、サーボ弁24を開放状態にあることから、ピストン32が前進すると共に、油圧シリンダ22の作動油が排出ポート45から排出配管64を通して収容タンク61に回収される。
【0075】
そして、ピストン32が打ち出し開始位置に到達したら、サーボ弁24を閉止状態にすると共に、エア給排装置54によりエアシリンダ53を作動し、位置拘束部材81をシリンダ本体31とフランジ部51との間に介装し、ピストン32の後退を阻止する。すると、継続して供給された作動油により、油圧シリンダ22の後部屋A,Bとアキュムレータ23の前部屋Cが加圧され、所定の高圧状態となり、供給ポンプ62の作動を停止する。
【0076】
次に、この状態から、制御装置26は、サーボ弁24を全開し、油圧シリンダ22の前部屋A内の作動油を排出ポート45から排出配管64を通して収容タンク61に全て排出回収する。すると、油圧シリンダ22は、ピストン32を前方に打ち出し、スレッド11に対して目標前後加速度(スレッド11、供試体15における後方加速度)を与え、衝突時を模擬する加速度を供試体15に与える。
【0077】
このように実施例3の自動車衝突模擬試験装置にあっては、実車衝突試験で得られたデータに基づいて油圧シリンダ22におけるピストン32の打ち出しストロークを設定し、この打ち出しストロークに応じてピストン32の打ち出し開始位置を設定すると共に、油圧シリンダ22に対してピストン32を打ち出し開始位置に拘束する位置拘束部材81を設け、この位置拘束部材81によりピストン32を打ち出し開始位置に拘束した状態で、油圧シリンダ22及びアキュムレータ23に作動油を供給するようにしている。
【0078】
従って、位置拘束部材81を用いることで、特別な制御を行うことなく、ピストン32を所定の打ち出し開始位置に容易に設定することができる。
【0079】
また、実施例3の自動車衝突模擬試験方法にあっては、油圧シリンダ22のピストン32を打ち出し開始位置に拘束し、ピストン32が打ち出し開始位置にあるときに油圧シリンダ22及びアキュムレータ23に作動油を供給することで加圧し、油圧シリンダ22の前部屋Aから作動油を大量排出することでピストン32を供試体15が搭載されたスレッド11に向けて打ち出すようにしている。従って、ピストン32の打ち出しストロークが短い供試体15にあっては、ピストン32の打ち出し開始位置を前方側に設定することができ、油柱剛性を高めることで自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
【0080】
なお、上述したこの実施例にて、発射装置21のピストン32を打ち出し開始位置に移動するとき、油圧シリンダ22及びアキュムレータ23に作動油を供給して行ったが、別途、ピストン32を移動するための装置を設け、この装置により行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る自動車衝突模擬試験装置及びその方法は、実車衝突試験で得られたデータに基づいてピストンの打ち出し開始位置を設定することで、自動車衝突模擬試験の再現性を向上可能とするものであり、いずれの自動車衝突模擬試験装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
11 スレッド
15 供試体
21 発射装置(スレッド加速度装置)
22 油圧シリンダ
23 アキュムレータ
24 サーボ弁
25 油圧源
26 制御装置(打ち出し開始位置設定手段)
27 運転操作装置
32 ピストン
71 位置センサ
81 位置拘束部材(打ち出し開始位置設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な前後方向に沿って移動自在に支持されて供試体を搭載可能なスレッドと、
該スレッドに向けてピストンを打ち出し可能な流体シリンダと、
該流体シリンダの後室側に接続されるアキュムレータと、
前記流体シリンダの前室側に形成された排出ポートに設けられるサーボ弁と、
実車衝突試験で得られたデータに基づいて前記ピストンの打ち出し開始位置を設定する打ち出し開始位置設定手段と、
を備えることを特徴とする自動車衝突模擬試験装置。
【請求項2】
前記打ち出し開始位置設定手段は、前記サーボ弁の弁開度を調整可能な制御装置を有し、該制御装置は、前記ピストンが初期位置にあるときに、前記サーボ弁の弁開度を予め設定された所定の一定開度に設定し、前記ピストンが打ち出し開始位置に到達したときに、前記サーボ弁の弁開度を予め設定された所定の試験開度に設定することを特徴とする請求項1に記載の自動車衝突模擬試験装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ピストンの受圧力及び前記サーボ弁の弁開度に基づいて、前記ピストンが打ち出し開始位置に到達する時間を推定し、前記ピストンが打ち出し開始位置に到達したときに前記サーボ弁を試験開度に設定することを特徴とする請求項2に記載の自動車衝突模擬試験装置。
【請求項4】
前記ピストンの打ち出し開始位置を検出する位置センサを設け、前記制御装置は、前記位置センサの検出結果に基づいて、前記ピストンが打ち出し開始位置に到達したことを判定し、前記サーボ弁を試験開度に設定することを特徴とする請求項2に記載の自動車衝突模擬試験装置。
【請求項5】
前記打ち出し開始位置設定手段は、前記流体シリンダに対して前記ピストンを打ち出し開始位置に拘束する位置拘束部材を有し、該位置拘束部材により前記ピストンを打ち出し開始位置に拘束した状態で前記流体シリンダ及び前記アキュムレータに流体を供給することを特徴とする請求項1に記載の自動車衝突模擬試験装置。
【請求項6】
流体シリンダのピストンが初期位置にあるときにアキュムレータ及び該アキュムレータに連通された油圧シリンダに流体を供給することで加圧し、
前記流体シリンダの前室側から流体を微小排出することで前記ピストンを打ち出し開始位置まで移動し、
前記ピストンが打ち出し開始位置に到達したときに前記流体シリンダの前室側から流体を大量排出することで前記ピストンを供試体が搭載されたスレッドに向けて打ち出す、
ことを特徴とする自動車衝突模擬試験方法。
【請求項7】
前記流体シリンダのピストンを打ち出し開始位置に拘束し、
前記ピストンが打ち出し開始位置にあるときにアキュムレータ及び該アキュムレータに連通された油圧シリンダに流体を供給することで加圧し、
前記流体シリンダの前室側から流体を大量排出することで前記ピストンを供試体が搭載されたスレッドに向けて打ち出す、
ことを特徴とする自動車衝突模擬試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−2699(P2012−2699A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138599(P2010−138599)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】