説明

自動車鍵管理システム

【課題】オーナーによる鍵情報の入力や変更の要求を、インターネット網を利用することなく実現できる安全な自動車鍵管理システムを提供する。
【解決手段】オーナーの鍵情報を格納する鍵記憶領域12と、貸出し用鍵情報を格納する貸出し用鍵記憶領域13とを備えたオーナー携帯端末10と、オーナー携帯端末10から送信されるオーナーの鍵情報を格納するオーナー鍵記憶領域31と、貸出し用鍵情報を格納する貸出し用鍵記憶領域32と、携帯電話通信網40を介して通信可能な無線通信手段33とを備えた車載コントローラと30、オーナー携帯端末10から送信される貸出し用鍵情報が格納される第三者用の鍵記憶領域22を備えた第三者携帯端末20と、を備えてなり、インターネット網を経由することなく貸出し用鍵情報を第三者携帯端末20へ転送でき、第三者携帯端末20での車両のドアの施解錠ならびにエンジン始動などを可能にするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話を利用してオーナーが第三者に直接会うことなく電子的にキーを貸し出すことができる自動車鍵管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オーナーが第三者に直接会うことなく、自動車の利用を可能とする自動車鍵情報を、携帯端末を利用して貸し出す(伝達する)ことができる自動車鍵管理システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。図3に示すように、この自動車鍵管理システムは、自動車オーナーの携帯端末110と、自動車の利用を望む第三者の携帯端末120と、これらの携帯端末110,120の携帯電話通信網140と、自動車に備えられた車載コントローラ130と、携帯電話会社150と、インターネット網160と、インターネット網160上の管理サーバー170とで構成されている。車載コントローラ130は、携帯電話通信網140と通信可能な無線通信手段133が備えられる。
【0003】
自動車鍵情報の貸し出しの管理においては、オーナーの携帯端末110の鍵記憶領域(記憶手段)に格納された鍵情報は、無線通信手段111の操作により、携帯電話通信網140を介してインターネット網160上の管理サーバー170にアクセスし、管理サーバー170が管理操作を受け付けるようになっている。管理サーバー170は、このような管理操作を受け付けた後、携帯電話通信網140に接続可能な車載コントローラ130へ管理情報を転送することでオーナーの管理が反映されるようになっている。また、第三者の携帯端末120は鍵記憶領域(記憶手段)122を備えている。管理サーバー170は、貸出し用鍵(鍵情報)を無線通信手段121で携帯電話通信網140にアクセスして貸出し用鍵を第三者携帯端末120の鍵記憶領域122へ転送するようになっている。このようにして第三者は、携帯端末120が車両の鍵として使用可能となる。
【0004】
図3に示すように、車載コントローラ130は、オーナー鍵記憶領域131と貸出し用鍵記憶領域132を備える。オーナー鍵記憶領域131には、オーナーが車両を使用するための鍵情報が格納され、貸出し用記憶領域132には、貸出し用鍵の機能制限や削除を自由に行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−330468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記システムにおいては、貸出し用鍵(鍵情報)171は管理サーバー170に保管する構成となっているが、管理サーバー170は公衆インターネット網160に接続されているため、悪意を持った者がオーナーになりすまし、貸出し用鍵171を不正に取得しようとするなどのアクセスに対して暗号化などの厳重な対策が必要になるという課題がある。
【0007】
また、管理サーバー170は、当該車両の貸出し用鍵171だけでなく、本システムを搭載する全ての車両鍵の情報を保存しているため、悪意を持った者の標的になりやすく、管理サーバー170の運営には厳重な対策と多大なリスクを伴うという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、自動車のオーナーによる自動車鍵情報の貸し出
しや変更を、インターネット網を利用することなく行える安全な自動車鍵管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、自動車鍵管理システムであって、オーナーの鍵情報を格納する鍵記憶領域および貸出し用鍵情報を格納する貸出し用鍵記憶領域を備えたオーナー携帯端末と、オーナー携帯端末から送信されるオーナーの鍵情報を格納するオーナー鍵情報記憶領域および貸出し用鍵情報を格納する車載側貸出し用鍵記憶領域および携帯電話通信網を介して通信可能な無線通信手段とを備えた車載コントローラと、オーナー携帯端末から送信される貸出し用鍵情報が格納される第三者用鍵記憶領域を備えた第三者携帯端末とを備えることを要旨とする。
【0010】
ここで、オーナー携帯端末および第三者携帯端末は、互いに携帯電話通信網を利用して鍵情報を通信可能であり、車載コントローラに対しても携帯電話通信網を利用して通信可能である。
【0011】
また、オーナー携帯端末から第三者携帯端末へ貸出し用鍵情報を直接通信可能な直接通信手段を備え、車載コントローラはオーナー携帯端末から直接通信可能な車載側直接通信手段を備える構成としてもよい。
【0012】
また、オーナー携帯端末の直接通信手段は、第三者携帯端末の直接通信手段および車載側直接通信手段に対して、ブルートゥース(Bluetooth)もしくは非接触の近距離通信を
用いて直接通信を行うことができる。
【0013】
さらに、オーナー携帯端末は、貸出し用鍵記憶領域に、車両機能の制限情報や変更前の貸出し用鍵情報の削除情報が格納されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自動車のオーナーによる自動車鍵情報の貸し出しや変更を、インターネット網を利用することなく行える安全な自動車鍵管理システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る自動車鍵管理システムの構成図である。
【図2】本発明の第2実施の形態に係る自動車鍵管理システムの構成図である。
【図3】従来の自動車鍵管理システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施の形態に係る自動車鍵管理システムについて図1および図2を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る自動車鍵管理システムを示す概略構成図である。
【0018】
図1に示すように、この自動車鍵管理システムは、オーナー携帯端末10と、第三者携帯端末20と、車載コントローラ30と、を備えて構成されている。
【0019】
オーナー携帯端末10は、携帯電話通信網40を利用して通信を行う無線通信手段11と、オーナー鍵の鍵情報を格納するオーナー鍵記憶領域(以下、鍵記憶領域という。)1
12と、貸出し用鍵の鍵情報を格納する貸出し用鍵記憶領域13を備えている。このオーナー携帯端末10は、携帯電話通信網40を介して第三者携帯端末20へ貸出し用鍵の鍵情報を送信できるようになっている。これを受信した第三者携帯端末20では、鍵情報に応じて図示しないドア解施錠装置、セルモータ、ダッシュボード解施錠装置、トランク解施錠装置に対して、解錠、施錠の操作を行うことが可能となる。
【0020】
第三者携帯端末20は、オーナー携帯端末10と同様に、無線通信手段21と、貸出し用鍵の鍵記憶領域22とを備える。鍵記憶領域22は、オーナー携帯端末10から送信された鍵情報が格納される。
【0021】
車載コントローラ30は、オーナー鍵記憶領域31と、貸出し用鍵領域(以下、貸出し用鍵という。)32と、携帯電話通信網40と通信を行う無線通信手段33とを備えている。
【0022】
オーナー携帯端末10においては、オーナー鍵情報が図示しないキーユニットから入力されると、オーナー鍵情報が鍵記憶領域12に格納されている。その後、オーナー携帯端末10を操作することにより、携帯電話通信網40を介して車載コントローラ30のオーナー鍵記憶領域31に格納された鍵情報を車両に反映させることができる。また、オーナー携帯端末10は、携帯電話通信網40を介して車両を使用することを許可する第三者に鍵情報を送信することができる。この第三者携帯端末20は、オーナー携帯端末10の貸出し用鍵領域13に格納された貸出し用鍵情報を取得して鍵記憶領域22に格納する。
【0023】
車載コントローラ30における鍵情報の書き換えとしては、オーナー携帯端末10において前回設定した第三者の使用条件貸出し用鍵情報を書き換えることや、他の第三者の使用条件に書き換える処理を行った内容が、オーナー携帯端末10からの貸出し用鍵情報に基づいて書き換えられる。
【0024】
また、車載コントローラ30では、第三者携帯端末20から通信により、車両制御部32が、オーナー携帯端末10からのオーナー鍵情報に基づいて、ドア解施錠装置、セルモータ、ダッシュボード解施錠装置、トランク解施錠装置に、解錠、施錠の信号を出力することが可能となっている。このため、オーナーから許可を受けた第三者は、第三者携帯端末20を操作することにより、車両の使用を行うことが可能となる。
【0025】
本実施の形態に係る自動車鍵管理システムでは、オーナー携帯端末10と車載コントローラ30とが携帯電話通信網40を利用して通信することにより、予め定義しておいた何らかの照合手段(暗号情報など)により、オーナーに許可を受けた第三者携帯端末10の通信操作により、車両のドア解施錠装置、セルモータ、ダッシュボード解施錠装置、トランク解施錠装置などの、解錠・施錠が可能となる。
【0026】
また、車両のオーナーは、オーナー携帯端末10において、前回第三者に貸与した鍵情報に関して、車両機能の制限や削除(書き換えを含む)などの管理ができるソフトウェアを付加させてもよい。
【0027】
さらに、次回オーナーが携帯端末10を使い車両にアクセスし、照合するときに、記憶されていた管理操作情報(鍵情報)を自動的に車載コントローラ30のオーナー鍵記憶領域31へ転送することにより、オーナーが予め操作していた鍵操作の情報(オーナー鍵情報)を反映させることができる。
【0028】
本実施の形態に係る自動車鍵管理システムでは、インターネット網上の管理サーバーを利用することがないため、インターネット網160上での不正なアクセスによる車両情報
の漏洩が発生することがなく安全なシステムを構築できる。
【0029】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明に係る第2の実施の形態に係る自動車鍵管理システムを示す。本実施の形態に係る自動車鍵管理システムは、上記第1の実施の形態に自動車鍵管理システムにおいて、オーナー携帯端末10A、第三者携帯端末20A、および車載コントローラ30にそれぞれ直接通信手段14、23、33を付加したものであり、互いに直接通信を行うことが可能となっている。
【0030】
オーナー携帯端末10Aは、車載コントローラ30に対して直接通信手段14、33同士で通信を行うことでオーナー鍵記憶領域31や貸出し用鍵記憶領域32へアクセスして、オーナーの鍵情報を反映させることや、第三者用の貸出し用鍵情報の書き換えを可能としている。
【0031】
第三者携帯端末20Aは、直接通信手段23で、車載コントローラ30の直接通信手段33と直接通信することで、貸出し用鍵記憶領域32に書き込まれた内容で車両の使用を行うことができる。なお、鍵記憶領域22には、オーナー携帯端末10Aから送信された貸出し用鍵情報が格納され、第三者携帯端末20Aを持った第三者が車両近傍で直接通信手段23を用いて操作を行うことにより、許可された範囲で、ドア解施錠装置、セルモータ、ダッシュボード解施錠装置、トランク解施錠装置などに対して、解錠、施錠の操作を行うことが可能となる。
【0032】
本実施の形態に係る自動車鍵管理システムでは、オーナー携帯端末10A、第三者携帯端末20A、および車載コントローラ30に同規格の直接通信手段14、23、33を備えている。これにより、オーナー携帯端末10Aと、第三者携帯端末20Aと、車載コントローラ30とが直接通信することにより、予め定義しておいた何らかの照合手段(暗号情報など)により、車両のドア解施錠装置、セルモータ、ダッシュボード解施錠装置、トランク解施錠装置などの、解錠・施錠を許可することができる。
【0033】
また、車両のオーナーは、オーナー携帯端末10Aにおいて、前回第三者に貸与した鍵情報に関して、車両機能の制限や削除(書き換えを含む)などの管理ができるソフトウェアを付加させてもよい。
【0034】
このような自動車鍵管理システムによれば、管理操作はオーナー携帯端末10Aの携帯電話通信網40電波状況に依らず実行することができるという利点がある。
【0035】
さらに、次回オーナーが携帯端末10Aを使い車両にアクセスし、照合するときに、記憶されていた管理操作情報(オーナー鍵情報)を自動的に車載コントローラ30へ転送することにより、オーナーが予め操作していた鍵操作の情報を反映させることができる。
【0036】
ここで、オーナー側の直接通信手段14および第三者側の直接通信手段23は、車両側の直接通信手段33に対して、ブルートゥース(Bluetooth)もしくは非接触の近距離通
信を用いて直接通信を行うことが好ましい。
【0037】
例えば、ブルートゥースを直接通信に用いた場合、2.4GHzの周波数帯を用いて、半径10〜100メートル程度の無線通信を行うことができる。ブルートゥースを用いることにより、機器間に建物や物があっても電波が届く範囲で通信が可能である。
【0038】
上述のように本実施の形態に係る自動車鍵管理システムによれば、自動車のオーナーによる自動車鍵情報の変更の要求を、オーナーの携帯端末や車載コントローラのおかれる電
波状態に左右されずに確実に車両に反映させることができ、しかも車載コントローラに無線通信手段を搭載する必要をなくして回線使用料を必要としない自動車鍵管理システムを構築することができる。本実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同様に、インターネット網を利用しないため、不正アクセスよる車両情報が漏洩することを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、複数の使用者によって車両を利用する各種の産業において利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10、10A…オーナー携帯端末
11…無線通信手段
12…鍵記憶領域(オーナー鍵記憶領域)
13…貸出し用鍵記憶領域
14…直接通信手段
20、20A…第三者携帯端末
21…無線通信手段
22…鍵記憶領域(貸出し用鍵情報記憶領域)
23…無線通信手段
30…車載コントローラ
31…オーナー鍵記憶領域
32…貸出し用鍵記憶領域
33…直接通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーナーの鍵情報を格納する鍵記憶領域と、貸出し用鍵情報を格納する貸出し用鍵記憶領域とを備えたオーナー携帯端末と、
前記オーナー携帯端末から送信されるオーナーの前記鍵情報を格納するオーナー鍵情報記憶領域と、前記貸出し用鍵情報を格納する車載側貸出し用鍵記憶領域と、携帯電話通信網を介して通信可能な無線通信手段とを備えた車載コントローラと、
前記オーナー携帯端末から送信される前記貸出し用鍵情報が格納される第三者用鍵記憶領域を備えた第三者携帯端末と、
を備えることを特徴とする自動車鍵管理システム。
【請求項2】
前記オーナー携帯端末および前記第三者携帯端末は、前記オーナー携帯端末から前記第三者携帯端末へ貸出し用鍵情報を直接通信可能な直接通信手段を備え、
前記車載コントローラは前記オーナー携帯端末から直接通信可能な車載側直接通信手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動車鍵管理システム。
【請求項3】
前記オーナー携帯端末の前記直接通信手段は、前記第三者携帯端末の直接通信手段および前記車載側直接通信手段に対して、ブルートゥース(Bluetooth)もしくは非接触の近
距離通信を用いて直接通信を行うことを特徴とする請求項2に記載の自動車鍵管理システム。
【請求項4】
前記オーナー携帯端末は、前記貸出し用鍵記憶領域に、車両機能の制限情報や変更前の貸出し用鍵情報の削除情報が格納されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の自動車鍵管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−209642(P2010−209642A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59540(P2009−59540)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】