説明

自動車

【課題】電力供給装置と電動駆動装置を備えている自動車において、電力供給装置に電力供給装置が損傷するような外力が作用したことを確実に検出したい。
【解決手段】 ケース30内に電力供給装置を収容しておく。ケース30をケースベース10に相対変位可能に支持しておく。ケース30にはコネクタソケット48を固定しておく。ケースベース10にはコネクタプラグ18を固定しておく。ケース30がケースベース10に対して相対変位する前は、コネクタソケット48とコネクタプラグ18が接続されており、ケース30がケースベース10に対して相対変位すると、コネクタソケット48とコネクタプラグ18が離反して電気的接続関係が失われる。コネクタソケット48とコネクタプラグ18が離反して電気的接続関係が失われた時に、制御部でメインスイッチを遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、自動車に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
バッテリとスイッチと電力供給装置と電動駆動装置を備えており、バッテリが供給する電力を電動駆動装置に供給して走行するとともに、スイッチを遮断してバッテリと電力供給装置の間を非導通状態に切換可能な自動車が開発されている。電動駆動装置に供給する電圧は高電圧であり、漏電・感電の可能性を秘めている。スイッチを遮断することで、高電圧に対する安全が確保される。
【0003】
特許文献1に、電力供給装置の前面に感圧センサを配置し、感圧センサで所定値以上の圧力を検知した時にスイッチを遮断する技術が開示されている。特許文献1の技術では、自動車が衝突して電力供給装置のケースが破損するような場合には、スイッチを遮断することによって電力供給装置にバッテリ電圧がかからないようにし、電力供給装置のケースが損傷したときの安全を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−076736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力供給装置のケースを破損させる外力のかかり方は様々であり、例えば、正突、斜突、オフセット衝突、アンダーライド衝突、オーバーライド衝突、オフセットアンダーライド衝突、オフセットオーバーライド衝突などの様々なパターンがある。電力供給装置の前面に感圧センサを配置する技術では、スイッチを遮断するべき場合を検知し損ねることがある。
本明細書では、スイッチを遮断するべき場合を確実に検知する技術を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、バッテリとスイッチと電力供給装置と電動駆動装置を備えており、バッテリ電力をスイッチと電力供給装置を介して電動駆動装置に供給して走行する自動車に関する。特に、スイッチを遮断してバッテリと電力供給装置の間を非導通状態に切換ることでき、それによって安全が確保される自動車に関する。
電力供給装置はケース内に収容されている。ケースはケースベースに対して相対変位可能に支持されている。ケースとケースベースに跨って両者の相対変位を検出する検出装置が配置されている。検出装置が相対変位を検出した時にスイッチを遮断する制御部が設けられている。
【0007】
上記の装置によると、電力供給装置を収容しているケースにケースが損傷するような外力が加われば、ケースはケースベースに対して相対変位し、相対変位したことが検出装置で検出される。検出装置が相対変位を検出すると、バッテリと電力供給装置を接続しているスイッチが遮断される。上記装置によると、スイッチを遮断するべき場合を確実に検出してスイッチを遮断することができる。
【0008】
自動車には、エアバックを作動させるセンサや、サテライトセンサなどが配置されており、衝突の発生を検出することができる。これらの既存の衝突センサに加えて、ケースがケースベースに対して相対移動したことを検出する装置を併用すると、正突、斜突、オフセット衝突、アンダーライド衝突、オーバーライド衝突、オフセットアンダーライド衝突、オフセットオーバーライド衝突などの様々な衝突を確実に検出することができ、スイッチを遮断するべき場合を確実に検出してスイッチを遮断することができる。
上記構成を備えていると、オフセットアンダーライド衝突などの既存の衝突センサでは検出できないよう場合でも確実に検出することができる。
【0009】
一つの具体的な態様では、ケースにコネクタプラグを固定し、ケースベースにコネクタソケットを固定することによって、検出装置を構成する。ケースにコネクタソケットを固定し、ケースベースにコネクタプラグを固定してもよい。ケースとケースベースが相対変位するとコネクタプラグとコネクタソケットが離脱する関係にしておくことで、検出装置を構成することができる。
【0010】
上記構成を備えていると、ケースに強い外力が作用した場合には、ケースがケースベースに対して相対変位し、コネクタプラグとコネクタソケットが離脱する。コネクタプラグとコネクタソケットの電気的接続関係が失われたことから、ケースに強い外力が作用したことを検出することができる。
【0011】
ケースをケースベースに支持するブラケットに、ケースとケースベースの相対変位を許容する長溝を形成しておくことが好ましい。
【0012】
上記によると、ケースがケースベースに対して相対変位する場合、長溝の範囲内で相対変位する。相対変位した後もケースとケースベースは離反しない。ケース位置が完全に不安定となるのを防止することができる。ここでいう長溝とは、長溝と長穴を総称したものである。
【発明の効果】
【0013】
本明細書に記載されている装置によると、電力供給装置を収容しているケースが損傷して高電圧に対する安全対策が必要な場合には、バッテリと電力供給装置を接続しているスイッチを遮断してバッテリと電力供給装置の間を非導通状態に切換える。本明細書に記載されている装置によると、スイッチを遮断して安全対策を講ずる必要がある事象を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ケースベースとケースとコネクタプラグとコネクタソケット等の分解斜視図。
【図2】ケースベースとケースとコネクタプラグとコネクタソケットを組み立てた状態の斜視図。
【図3】ケースがケースベースに対して相対的に後方に移動した状態の斜視図。
【図4】バッテリとスイッチと電力供給装置と検出装置と制御装置を示す図。
【図5】制御装置が実施する処理手順図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
下記に示す実施例の主要な特徴を列記する。
(特徴1)ケースとケースベースをブラケットによって相対変位可能に支持する。ケースベースに接する位置のブラケットに、車両の前後方向に長い溝が形成されている。ケースベースにはねじ穴が形成されている。ブラケットの長溝の幅よりも大径の頭部と小径の軸を持つねじをねじ穴にねじ込んで、ねじの頭部で長溝の両サイドを確定しているブラケットをケースベースに押付けることで、ケースをケースベースに支持する。そのねじ込み力は、ケースが損傷する外力よりもわずかに小さな外力がケースに作用するとケースが相対変位する値に調整されている。
(特徴2)コネクタは、ケースが損傷する外力よりも小さな外力で離反するものが選ばれている。
【実施例】
【0016】
図1は、ケースベース10とケース30とコネクタプラグ18とコネクタソケット48を斜視した図である。ケース30をケースベース10によって支持する前の状態を示している。
ケースベース10は、自動車のボディに固定されているブラケットであり、ねじ60のためのねじ穴12と、ねじ14のためのねじ穴が設けられている。ねじ穴12は3個存在し、ねじ14のためのねじ穴は1個存在する。ケースベース10は、自動車のボディに対して接地されており、接地電圧に維持される。
【0017】
ケース30は、直流を3相交流に変換するインバータ回路を収容している。インバータ回路に対する配線は、図示を省略している。ケース30は、ほぼ直方体形状であり、自動車の前後方向に対して直交する前面と、右側面と、上側面と、左側面と、底面と、後面を備えている。右側面と上側面と左側面と底面は、自動車の前後方向に沿って伸びており、本明細書でいう側面に相当する。
ケース30の前面にはねじ32のためのねじ穴が2個設けられている。右側面と左側面にはねじ38のためのねじ穴が各面2個ずつ設けられている。また、左側面にはねじ44のためのねじ穴が2個設けられている。
【0018】
ケース30は、ブラケット34とブラケット40とねじ60で、ケースベース10に固定されている。ケース30の底面とケースベース10の間には、間隙が確保される。ブラケット34のねじ穴36とブラケット40のねじ穴42は自動車の前後方向に長い溝状であり、前方部分が開いている形状を有する。ケース30の右側面のブラケット(図面では陰になっていて見えない)のねじ穴の形状も同様である。ケース30は、ブラケット34とブラケット40とねじ60を介してケースベース10に導通しており、接地電圧に維持される。
【0019】
コネクタソケット48は、ブラケット46とねじ44でケース30の左側面に固定されている。コネクタソケット48の外側は絶縁部材で覆われている。
コネクタプラグ18はブラケット16とねじ14によってケースベース10に固定されている。コネクタソケット18の外側は絶縁部材で覆われている。コネクタソケット18からは配線62、63が伸びている。
【0020】
図2が、組み付け状態を示している。コネクタプラグ18はコネクタソケット48と接続される。コネクタソケット48内には、2端子を接続する回路が収容されている。コネクタプラグ18とコネクタソケット48が接続されていれば、配線62と配線63が接続される。後記するように、配線62には非接地電位が印加される。コネクタプラグ18とコネクタソケット48が接続されていれば、配線63には非接地電位が印加される。コネクタプラグ18とコネクタソケット48の接続が失われれば、配線63の電位は接地電位に低下する。
【0021】
図3は、ケース30に前方から後方に向かう外力が作用して、ケース30が後方に相対変位した状態を示している。ブラケット34が長溝36を備えており、ブラケット40が長溝42を備えていることから、ケース30はケースベース10に対してスムースに相対変位する。尚且つ、ケース30とケースベース10の間には間隙が確保されているため、外力がかかるとケース30は後方にスムースに移動する。これにより、ケース30にかかる衝撃が緩和できる。
【0022】
コネクタソケット48はケース30に固定されているため、外力がかかるとケース30と共に後方に移動する。その結果コネクタプラグ18とコネクタソケット48の接続関係が失われる。コネクタプラグ18とコネクタソケット48が遮断されれば、配線62と配線63は非導通となり、配線63の電位は接地電位に低下する。
【0023】
図4において、参照番号96は多数のバッテリを直列に接続した高圧バッテリであり、スイッチ(システムメインリレー)90を介して、ケース30に収容されている電力供給装置(実施例ではインバータ)にバッテリ電力を供給する。ケース30とモータ99の間は3相ケーブル98で接続されており、モータ99はインバータから供給される電力によって回転し、自動車が走行する。参照番号70は、制御装置であり、スイッチ90の開閉状態は制御装置70によって制御され、インバータの動作も制御装置70によって制御される。
【0024】
配線62の一端は、制御装置70が内蔵しているプラス5ボルトの電源端子72に接続されており、他端は、コネクタプラグ18の一方の端子に接続されている。配線63の一端は、オペアンプ76に接続されており、他端は、コネクタプラグ18の他方の端子に接続されている。配線63は、電流制限回路74を介して接地されている。
コネクタプラグ18とコネクタソケット48が接続されていれば、配線62と配線63が導通し、配線63の電位はプラス5ボルトに維持される。ケース30が後方に移動してコネクタプラグ18とコネクタソケット48が遮断されると、配線62と配線63は非導通状態となり、配線62と配線63は接地電圧に変化する。
【0025】
配線63がプラス5ボルトであれば、オペアンプ76の出力はハイである。配線63が接地電圧に低下すると、オペアンプ76の出力はローに反転する。オペアンプ76の出力はCPU78に入力される。CPU78はコネクタプラグ18とコネクタソケット48が接続されていて配線63の電圧がプラス5ボルトに維持されているか、コネクタが外れて配線63の電圧が接地電圧になったかを検出する。
CPU78は、コネクタが外れたことを検出すると、スイッチ90を遮断し、電力供給回路(インバータ)にバッテリ電力が供給されないようにする。ケースが損傷して電力供給回路(インバータ)が露出している場合、あるいはケースが損傷して電力供給回路とケース間の絶縁状態が破られるような場合に、電力供給回路(インバータ)に高電圧が生じないようになっている。
【0026】
図5は、CPU78が実行する処理手順を示し、短時間間隔で繰り返し実行される。ステップS2ではオペアンプ76の出力がハイかローかを検出する。ハイであれば、コネクタが接続されて配線62と配線63が導通してプラス5ボルトに維持されている正常状態であることから、処理を終了する。正常時はその処理手順が繰り返し実行される。
コネクタが外れると、ステップS2がローとなる。その場合には、ステップS4でスイッチ90を遮断し、ステップS6で電力供給回路(インバータ)の動作を停止させる。
【0027】
上記では、ケース内にインバータが収容されている場合を説明した。ケース30内に、インバータと昇圧装置が収容されていることもある。あるいは、ケース30とスイッチ90の間に、別のケースに収容されている昇圧回路が挿入されていてもよい。いずれの場合も、安全対策を講じる必要があるときにはスイッチ90を遮断して安全を確保することができる。
【0028】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0029】
10:ケースベース
12:ねじ穴
14:ねじ
16:ブラケット
18:コネクタプラグ
30:ケース
32:ねじ
34:ブラケット
36:ブラケットねじ穴
38:ねじ
40:ブラケット
42:ブラケットねじ穴
44:ねじ
46:ブラケット
48:コネクタソケット
60:ねじ
62:配線
63:配線
70:制御部
72:プラス5ボルト端子
74:電流制限素子
76:オペアンプ
78:CPU
80:信号線
82:信号線
90:スイッチ(システムメインリレー)
92:電源線
94:電源線
96:高圧バッテリ
98:3相ケーブル
99:モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリとスイッチと電力供給装置と電動駆動装置を備えており、バッテリ電力をスイッチと電力供給装置を介して電動駆動装置に供給して走行するとともに、スイッチを遮断してバッテリと電力供給装置の間を非導通状態に切換可能な自動車であり、
電力供給装置はケース内に収容されており、
ケースがケースベースに対して相対変位可能に支持されており、
ケースとケースベースに跨って両者の相対変位を検出する検出装置が配置されており、
検出装置が相対変位を検出した時にスイッチを遮断する制御部を備えている自動車。
【請求項2】
検出装置は、ケースとケースベースの一方に固定されているコネクタプラグと、ケースとケースベースの他方に固定されているコネクタソケットを備えており、
ケースとケースベースが相対変位するとコネクタプラグとコネクタソケットが離脱することを特徴とする請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
ケースをケースベースに支持するブラケットに、ケースとケースベースの相対変位を許容する長溝が形成されていることを特徴とする請求項1または2の自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−47038(P2013−47038A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185696(P2011−185696)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】