説明

自動追尾式立体映像表示装置

【課題】観察者の位置の変化に追従して立体映像表示装置の向きを見やすい方向へ自動的に変化させる自動追尾式立体映像表示装置を提供する。
【解決手段】立体映像表示装置2を左右方向及び上下方向で回転自在な回転モータ10、11を介してベース1に支持し、その回転モータ10、11を、受信機13と送信機14で検出した観察者Dの位置に応じて回転させる構造になっている。従って、立体映像表示装置2の向きは観察者Dの位置を追尾した状態で自動的に変化するため、観察者Dは自身の位置変化に応じてその都度立体映像表示装置2の向きを変化させる必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動追尾式立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手術用顕微鏡に内蔵された撮像装置で、立体視可能な所定の両眼視差を有する左目用及び右目用の電子映像を撮像し、その左右一対の電子映像を、左右一対の電子映像表示パネルにそれぞれ表示し、それを左右の接眼レンズからそれぞれ対応する方の電子映像だけを見るようにすることにより、立体映像が観察できる医療用の立体映像表示装置が知られている。
【0003】
この種の立体映像表示装置は、ベッドや医療機器に固定されたアームの先端に支持され、観察者が見やすい位置に設置されている(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−288296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、立体映像表示装置が観察者にとって見やすい位置に設置されているものの、立体映像表示装置自体の向きは固定されたものであって、立体映像表示装置に対する観察者の位置が変化した場合には、観察者はその都度、立体映像表示装置の角度を手で変化させる必要があった。特に両手で内視鏡手術などを行っている場合などは立体映像表示装置の向きを自身で変えることができず、その都度、助手に行ってもらう煩わしさがあった。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、観察者の位置の変化に追従して立体映像表示装置の向きを見やすい方向へ自動的に変化させる自動追尾式立体映像表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、左右一対の接眼レンズからそれぞれ内蔵された左右一対の電子映像表示パネルの対応する側の電子映像だけを観察することにより立体映像が観察可能な立体映像表示装置を、左右方向及び上下方向の少なくとも一方で回転自在な回転機構を介してベースに支持すると共に、立体映像表示装置の観察者の位置を検出する観察者位置検出手段を設け、該観察者位置検出手段で検出された信号を回転機構に出力して、立体映像表示装置の向きを観察者側へ回転自在にしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、回転機構に加えて、立体映像表示装置を前後方向へ移動させる移動機構も組み合わせられ、観察者位置検出手段で検出された信号を回転機構に出力して、立体映像表示装置の前後方向での位置も移動自在にしたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、観察者位置検出手段が、立体映像表示装置自体又は立体映像表示装置と一緒に動く近接部材に設置された受信機と、観察者に設置された送信機で構成され、送信機からの電波、赤外線、超音波、磁気のいずれかを受信機が受信することにより、観察者の位置を検出自在な構造になっていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、観察者位置検出手段が、立体映像表示装置自体又は立体映像表示装置と一緒に動く近接部材に設置されたカメラ手段と、カメラ手段で撮像された観察者の画像から観察者の位置を検出する画像処理手段とから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、立体映像表示装置を左右方向及び上下方向の少なくとも一方で回転自在な回転機構を介してベースに支持し、その回転機構を観察者位置検出手段で検出した観察者の位置に応じて回転させる構造になっている。従って、立体映像表示装置の向きは観察者の位置を追尾した状態で自動的に変化するため、観察者は自身の位置変化に応じてその都度立体映像表示装置の向きを変化させる必要がなく、立体映像表示装置の利用が容易である。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、立体映像表示装置を左右方向と上下方向に回転自在にするだけでなく、前後方向にも移動自在にしたため、観察者が前後方向に変化する場合にも対応でき、更に立体映像表示装置の利用が容易になる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、観察者位置検出手段が受信機と発信器から成る無線式のため、観察者の作業の邪魔にならない。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、観察者位置検出手段が立体映像表示装置側に設けられたカメラ手段で撮像された画像を処理することにより観察者の位置を検出可能な構造になっているため、観察者側には何も設置する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動追尾式立体映像表示装置を示す斜視図。
【図2】立体映像表示装置の内部構造を示す断面図。
【図3】立体映像表示装置を示す側面図。
【図4】立体映像表示装置を示す平面図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る自動追尾式立体映像表示装置を示す平面図。
【図6】本発明の第3実施形態に係る自動追尾式立体映像表示装置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示す図である。図1は、ベース1に立体映像表示装置2が支持された状態を示している。ベース1は図示せぬベッドやスタンド装置に固定されたアームの先端であり、任意の位置に移動された状態で固定されている。
【0017】
立体映像表示装置2の構造を図2に基づいて説明する。立体映像表示装置2は、ケース3の内部に、左右一対の電子映像表示パネル4を備え、そこに図示せぬ立体内視鏡の内蔵カメラで撮影した術部に関する左右一対の電子映像をそれぞれ表示することができる。この左右一対の電子映像は両眼視差を有するもので、観察者Dはそれぞれを左右の眼Eによって対応する側の映像だけを見ることにより立体映像が得られる。
【0018】
ケース3の内部には、一対の電子映像表示パネル4に対応する空間を仕切る仕切壁5が設けられている。ケース3における電子映像表示パネル4の反対側には、左右一対の接眼部6が設けられている。
【0019】
接眼部6には、アクロマートレンズによる接眼レンズ7が設けられ、この接眼レンズ7を介して電子映像表示パネル4に表示された電子映像をそれぞれ左右の眼Eで観察することにより、電子映像を立体的に観察できる。
【0020】
このような構造の立体映像表示装置2は、左右両側がコ字状のフレーム8に対して水平回転軸9を介して支持されており、上下方向で回転することができる。一方の水平回転軸9には回転モータ(回転機構)10が設けられている。
【0021】
そして、このフレーム8の底面が別の回転モータ(回転機構)11の垂直回転軸12に支持されており、水平方向で回転することができる。
【0022】
回転モータ11の観察者D側のベース1上には受信機13が設置されている。また、観察者Dの胸元にはプローブとしての送信機14がクリップなどにより設置されている。送信機14からは電波が発信され、それを立体映像表示装置2の近傍に配置された受信機13で受信することにより、受信機13に対する送信機14の位置を検出することができる。この実施形態では、受信機13と送信機14により観察者位置検出手段が構成されている。
【0023】
そして、受信機13で検出された送信機14に位置情報を2つの回転モータ10、11に出力することにより、立体映像表示装置2の向きを、送信機14の方向、すなわち観察者Dの方向に向けることができる。例えば、観察者Dの位置が上方へ変化すれば、立体映像表示装置2は接眼部6が持ち上がるように回転し、また観察者Dの位置が右側へ変化すれば、立体映像表示装置2は接眼部6が右側へ向くように回転する。それらの逆の場合は、逆方向へ回転する。
【0024】
このように、立体映像表示装置2の向きが観察者Dの位置を追尾した状態で自動的に変化するため、観察者Dは自身の位置変化に応じてその都度立体映像表示装置2の向きを変化させる必要がなく、立体映像表示装置2の利用が容易になる。特に、立体内視鏡を利用した手術中などで両手が使えない場合などに便利である。
【0025】
受信機13と送信機14の通信媒体は電波に限らず、赤外線、超音波や磁場などを利用した公知の位置検出手段も利用することができる。また、受信機13が受信機能(センサ)のほかに送信機能も備えRFID等のRFタグ14を観察者Dに取り付けることによって位置検出手段を構成することもできる。
【0026】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態を示す図である。本実施形態は、前記第1実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0027】
この実施形態では、ベース15を前後方向での移動手段16によりスライド自在に支持し、受信機13で検出した送信機14の前後位置情報に応じて、立体映像表示装置2をベース15ごと前後にスライドさせる構造になっている。移動手段16の内部には図示せぬモータにより駆動するワイヤ17がプーリ18を介して巻回され、その一部にベース15が固定されている。受信機13で受信された送信機14の前後位置情報は図示せぬ回転モータの出力され、ワイヤ17を前後方向へ移動させることにより、立体映像表示装置2を前後に移動させることができる。
【0028】
この実施形態によれば、立体映像表示装置2を、左右方向及び上下方向に加えて、前後方向にも移動させることができるため、観察者Dが前後方向に変化する場合にも対応でき、更に立体映像表示装置2の利用が容易になる。
【0029】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態を示す図である。本実施形態も、先の実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0030】
この実施形態では、ベース1にカメラ手段19を設け、このカメラ手段19により観察者D側を撮影する。カメラ手段19で撮影された画像は画像処理手段20に送られ、そこで、観察者Dの頭部の位置を検出する。この実施形態では、カメラ手段19と画像処理手段20により観察者位置検出手段が構成されている。
【0031】
画像処理手段20で検出された観察者Dの頭部の位置情報は2つの回転モータ10、11に出力され、観察者Dの頭部側へ接眼部6が向くように、立体映像表示装置2を上下方向及び水平方向へ回転させる。この実施形態によれば、観察者D側には何も設置する必要がないため便利である。
【0032】
また、カメラ手段19として赤外線カメラを用い、観察者DがIRタグを装着し、IRタグが発生する赤外線を赤外カメラが検出することにより、観察者Dの位置情報を取得したり観察者Dを識別することが可能になる。この変更実施形態によれば、観察者DはIRタグを装着するだけで迅速な画像処理によりIRタグの位置を検出することができる。
【符号の説明】
【0033】
1、15 ベース
2 立体映像表示装置
4 電子映像表示パネル
6 接眼部
10 回転モータ(上下方向の回転機構)
11 回転モータ(水平方向の回転機構)
13 受信機(観察者位置検出手段)
14 送信機(観察者位置検出手段)
16 移動手段
19 カメラ手段(観察者位置検出手段)
20 画像処理手段(観察者位置検出手段)
D 観察者
E 眼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の接眼レンズからそれぞれ内蔵された左右一対の電子映像表示パネルの対応する側の電子映像だけを観察することにより立体映像が観察可能な立体映像表示装置を、左右方向及び上下方向の少なくとも一方で回転自在な回転機構を介してベースに支持すると共に、立体映像表示装置の観察者の位置を検出する観察者位置検出手段を設け、該観察者位置検出手段で検出された信号を回転機構に出力して、立体映像表示装置の向きを観察者側へ回転自在にしたことを特徴とする自動追尾式立体映像表示装置。
【請求項2】
回転機構に加えて、立体映像表示装置を前後方向へ移動させる移動機構も組み合わせられ、観察者位置検出手段で検出された信号を回転機構に出力して、立体映像表示装置の前後方向での位置も移動自在にしたことを特徴とする請求項1記載の自動追尾式立体映像表示装置。
【請求項3】
観察者位置検出手段が、立体映像表示装置自体又は立体映像表示装置と一緒に動く近接部材に設置された受信機と、観察者に設置された送信機で構成され、送信機からの電波、赤外線、超音波、磁場のいずれかを受信機が受信することにより、観察者の位置を検出自在な構造になっていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動追尾式立体映像表示装置。
【請求項4】
観察者位置検出手段が、立体映像表示装置自体又は立体映像表示装置と一緒に動く近接部材に設置されたカメラ手段と、カメラ手段で撮像された観察者の画像から観察者の位置を検出する画像処理手段とから構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動追尾式立体映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−208372(P2012−208372A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74744(P2011−74744)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(390013033)三鷹光器株式会社 (114)
【Fターム(参考)】