説明

自動面圧負荷スライドバルブ装置及び面圧解除方法

【課題】本発明は、バネホルダの外面に面圧解除用ブラケットを設け、摺動不能時に溶融金属容器と面圧解除用ブラケットとの間に解除用アクチュエータを設置してバネを圧縮させ、面圧を解除又は低下させることを目的とする。
【解決手段】本発明による自動面圧負荷スライドバルブ装置は、スライドバルブ整備場で摺動不能トラブルが発生した場合、バネホルダ(15)の外面に設けた面圧解除用ブラケット(30)を用いて摺動不能時の面圧を解除又は低下させる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動面圧負荷スライドバルブ装置及び面圧解除方法に関し、特に、スライドプレートに地金付着が発生し、スライドプレートの摺動不能が発生した場合、バネホルダの面圧解除用ブラケットを用いて面圧解除を行なうことができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、連続鋳造設備においては、溶融金属容器からの溶融金属の流出を制御する手段として、溶融金属容器の底部にその流出口を開閉する自動面圧負荷スライドバルブ装置が設けられている。
【0003】
このスライドバルブ装置は、例えば、トッグル機構を用い、面圧の負荷及び解除を人手によって行うようにした構成があり、他の構成として、特許文献1に示される本出願人が製作して図4に示している二層式の場合を挙げることができる。
すなわち、溶融金属容器1の底部に固定される基枠2に上プレート3が組み込まれ、この上プレート3の下部に位置するスライドケース4内にスライドプレート5と下ノズル6が支持され、前記スライドケース4を油圧または電動のアクチュエータ7により押し引きすることにより上プレート3とスライドプレート5との各ノズル孔3a、5aを合致または非合致とすることにより、溶融金属容器1からインサートノズル8を通じて流下する溶融金属の流出を制御するように構成されている。
【0004】
前記スライドケース4は、図5、6のようにバネ12を用いてバネホルダ15の下部内面の支持面13上を摺動するローラ(移動体)14を用いた押圧手段により上方へ向け付勢されてスライドプレート5を上プレート3に所定の押圧力をもって圧接させ、両プレート3、5のノズル孔3a、5aからの溶融金属の漏洩や空気の侵入を防ぐようになされている。また、このローラ14を有するスライドケース4は図6のように軸支部15を介して開閉自在とされ、耐火物の交換等が可能である。
【0005】
【特許文献1】特開2006−136912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の自動面圧負荷スライドバルブ装置及び面圧解除方法は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
(1)、プレートの面荒れ等に伴い地金付着が発生した場合、SV整備場(耐火物交換場所)で摺動不能が発生することがあった。すなわち、プレート面間に地金付が発生した場合、鋳込み中では地金の強度がないため、特に問題なく摺動するが、鋳込み終了後スラグ廃滓処理およびノズル内洗浄等の作業時間経過と共に地金が冷却され強度が増し、プレートに強固に固着した場合は、摺動不能が発生することがあった。
(2)、摺動不能が発生した場合、トッグルタイプ及びボルト・ナットタイプ等の人力タイプの面圧負荷機構では人手により面圧を解除し、SV装置を摺動させることが可能であったが、自動面圧負荷スライドバルブ装置の場合、自動面圧負荷タイプは、摺動させることにより面圧を負荷したり、解除したりする機構となっているため、面圧を解除することが出来ず摺動させることが出来なかった。
(3)、そのため摺動不能が発生した場合は、スライドバルブ装置の整備作業が出来ず取鍋の交換又は最悪鋳造カットを余儀なくされることもあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による自動面圧負荷スライドバルブ装置は、溶融金属容器の底部下面に固定される基枠と、前記基枠の内側に配設され上ノズルに接続される上プレートと、前記基枠の外側位置にバネを介して上下動自在に配設されたバネホルダと、前記上プレートの下方で前記上プレートに対応して設けられたスライドプレートと、前記スライドプレートの外側位置に設けられ前記バネホルダの下部内面の支持面上を走行するローラを有するスライドケースとを備え、前記スライドケースの摺動により前記ローラが支持面上で移動する又は、支持面から外れることにより、前記バネホルダが上下動し、面圧負荷及び解除を行なうことができるようにした自動面圧負荷スライドバルブ装置において、前記バネホルダの外面には、面圧解除用ブラケットが設けられている構成であり、また、本発明による面圧解除方法は、溶融金属容器の底部下面に固定される基枠と、前記基枠の内側に配設され上ノズルに接続される上プレートと、前記基枠の外側位置にバネを介して上下動自在に配設されたバネホルダと、前記上プレートの下方で前記上プレートに対応して設けられたスライドプレートと、前記スライドプレートの外側位置に設けられ前記バネホルダの下部内面の支持面上を走行するローラを有するスライドケースとを備え、前記スライドケースの摺動により前記ローラが支持面上で移動することにより、前記バネホルダが上下動し、面圧負荷及び解除を行なうことができると共に、前記バネホルダの外面には、面圧解除用ブラケットが設けられている自動面圧負荷スライドバルブ装置を用い、前記バネによる面圧負荷を解除することが不可能な場合、前記溶融金属容器と前記面圧解除用ブラケット間の距離を解除用アクチュエータで拡開させ、面圧負荷力の解除又は低下とする方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明による自動面圧負荷スライドバルブ装置及び面圧解除方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、請求項1及び3においては、溶融金属容器の底部下面に固定される基枠と、前記基枠の内側に配設され上ノズルに接続される上プレートと、前記基枠の外側位置にバネを介して上下動自在に配設されたバネホルダと、前記上プレートの下方で前記上プレートに対応して設けられたスライドプレートと、前記スライドプレートの外側位置に設けられ前記バネホルダの下部内面の支持面上を走行するローラを有するスライドケースとを備え、前記スライドケースの摺動により前記ローラが支持面上で移動することにより、前記バネホルダが上下動し、面圧負荷及び解除を行なうことができると共に、前記バネホルダの外面には、面圧解除用ブラケットが設けられていることにより、プレートの面荒れ等に伴い地金付着が発生し、摺動不能が発生した場合においても、前記溶融金属容器と前記面圧解除用ブラケット間の距離をアクチュエータで拡開させ、バネを縮小させることにより、バネホルダ及びスライドケースが下方へ移動し、面圧負荷力の解除又は低下となり、面圧解除によってスライドプレートの摺動が可能となる。そのため、取鍋の交換、鋳造カットは皆無となり、生産性の阻害をなくすことができる。
また、請求項2、4においては、前記面圧解除用ブラケットは、全体形状がL字型をなすと共に、水平方向に突出する舌片を有しているため、アクチュエータの設置が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、スライドプレートに地金付着が発生し、スライドプレートの摺動不能が発生した場合、バネホルダの面圧解除用ブラケットを用いて面圧解除を行なうようにした自動面圧負荷スライドバルブ装置及び面圧解除方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明による自動面圧負荷スライドバルブ装置及び面圧解除方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1は、スライドバルブ装置20の使用位置(全閉位置)の状態を示しており、溶融金属容器1の下部底面1aには基枠2を介して下ノズル6に連通するノズル孔3aを有する上プレート3が設けられている。
【0011】
前記上プレート3の下部には、ノズル孔5aを備えたスライドプレート5を有するスライドケース4が油圧又は電動等からなるアクチュエータ7に接続され、このアクチュエータ7の作動によりスライドケース4のみが独立して図中の左右に摺動できるように構成されている。
【0012】
前記基枠2の両側には、圧縮された状態のバネ12を介して上下動自在に設けられた断面コ字型をなすバネホルダ15が設けられており、前記スライドケース4の両側には各々複数のローラ14が回転自在に設けられている。
【0013】
前記各ローラ14は、前記バネホルダ15の下部内面の支持面13上を走行できるように構成され、この支持面13が、図5に示されるように周知のカム面で形成されているため、前記スライドケース4の移動に伴う前記ローラ14の走行又は支持面13から外れることによって前記バネホルダ15の上下動が発生し、上プレート3に対する前記スライドプレート5による面圧負荷及び面圧解除がなされるように構成されている。
尚、前述の構成は、前述の特許文献1に開示されたスライドバルブ装置と同じ周知の構成である。
【0014】
次に、本発明においては、前記バネホルダ15の外面に、面圧解除用ブラケット30が設けられ、この面圧解除用ブラケット30は、一例として、全体形状がL字型をなすと共にボルト31で固定されている。
また、前記面圧解除用ブラケット30の下部には、水平方向に突出する舌片32が形成されている。尚、この面圧解除用ブラケット30の形状は、この構成以外の形状である棒状、筒状もしくは、バネホルダ15と一体物でも可である。
【0015】
前述の構成によるスライドバルブ装置20において、鋳込み終了後、スラグ廃滓処理およびノズル内洗浄等の作業時間経過と共に地金が冷却されて強度が増し、各プレート3、5に強固に固着した場合は、摺動不能が発生する。
【0016】
前述の摺動不能が発生した場合、図1から図3で示されるように、例えば、簡易型の油圧シリンダからなる解除用アクチュエータ40を前記溶融金属容器1である取鍋鉄皮と面圧解除用ブラケット30の舌片32との間に設置し、この解除用アクチュエータ40を作動させることにより、この面圧解除用ブラケット30を介してバネホルダ15が下方へ押されてバネ12が圧縮され、各プレート3、5間の面圧が解除又は低下となり、スライドプレート5の摺動が可能となる。
従って、その後のスライドバルブ装置20の確認又は整備作業を実施することができる。尚、本形態では二層式の場合について述べたが、周知の三層式のスライドバルブにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による自動面圧負荷スライドバルブ装置を示す図3のA−A構成図である。
【図2】図1の一部を省略した側断面図である。
【図3】図2の矢視B図である。
【図4】従来の自動面圧負荷スライドバルブ装置を示す断面図である。
【図5】図4の一部を省略した側面図である。
【図6】図4の一部開状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 溶融金属容器
1a 下部底面
2 基枠
3 上プレート
3a ノズル孔
4 スライドケース
5 スライドプレート
5a ノズル孔
6 下ノズル
7 アクチュエータ
8 上ノズル
12 バネ
14 ローラ
15 バネホルダ
20 スライドバルブ装置
30 面圧解除用ブラケット
31 ボルト
32 舌片
40 解除用アクチュエータ(油圧シリンダ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属容器(1)の下部底面(1a)に固定される基枠(2)と、前記基枠(2)の内側に配設され上ノズル(8)に接続される上プレート(3)と、前記基枠(2)の外側位置にバネ(12)を介して上下動自在に配設されたバネホルダ(15)と、前記上プレート(3)の下方で前記上プレート(3)に対応して設けられたスライドプレート(5)と、前記スライドプレート(5)の外側位置に設けられ前記バネホルダ(15)の下部内面の支持面(13)上を走行するローラ(14)を有するスライドケース(4)とを備え、
前記スライドケース(4)の摺動により前記ローラ(14)が支持面(13)上で移動する又は、支持面(13)から外れることにより、前記バネホルダ(15)が上下動し、面圧負荷及び解除を行なうことができるようにした自動面圧負荷スライドバルブ装置において、
前記バネホルダ(15)の外面には、面圧解除用ブラケット(30)が設けられていることを特徴とする自動面圧負荷スライドバルブ装置。
【請求項2】
前記面圧解除用ブラケット(30)は、全体形状がL字型をなすと共に、水平方向に突出する舌片(32)を有することを特徴とする請求項1記載の自動面圧負荷スライドバルブ装置。
【請求項3】
溶融金属容器(1)の下部底面(1a)に固定される基枠(2)と、前記基枠(2)の内側に配設され上ノズル(8)に接続される上プレート(3)と、前記基枠(2)の外側位置にバネ(12)を介して上下動自在に配設されたバネホルダ(15)と、前記上プレート(3)の下方で前記上プレート(3)に対応して設けられたスライドプレート(5)と、前記スライドプレート(5)の外側位置に設けられ前記バネホルダ(15)の下部内面の支持面(13)上を走行するローラ(14)を有するスライドケース(4)とを備え、
前記スライドケース(4)の摺動により前記ローラ(14)が支持面(13)上で移動することにより、前記バネホルダ(15)が上下動し、面圧負荷及び解除を行なうことができると共に、前記バネホルダ(15)の外面には、面圧解除用ブラケット(30)が設けられている自動面圧負荷スライドバルブ装置を用い、
前記バネ(12)による面圧負荷を解除することが不可能な場合、前記溶融金属容器(1)と前記面圧解除用ブラケット(30)間の距離を解除用アクチュエータ(40)で拡開させ、面圧負荷の解除又は低下とすることを特徴とする面圧解除方法。
【請求項4】
前記面圧解除用ブラケット(30)は、全体形状がL字型をなすと共に、水平方向に突出する舌片(32)を有することを特徴とする請求項3記載の面圧解除方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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