説明

自在回路を有する導電性織物構造体

【課題】本発明は、簡易に製造することが可能であり、織物本体の内部において任意の方向に引き回し可能な導電性回路を有する織物構造体の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、経糸および緯糸を縦方向あるいは横方向に織り込んでなる織物本体3に、経糸あるいは緯糸に沿って縦方向と横方向と斜め方向の少なくとも一方向に導電性繊維を織り込んでなる導電性回路6、7を備えた回路付織物と、経糸および緯糸を縦方向あるいは横方向に織り込んでなる織物本体4に、経糸あるいは緯糸に沿って縦方向と横方向と斜め方向の少なくとも一方向に導電性繊維を織り込んでなる導電性回路8を備えた他の回路付織物が必要枚数積層され、前記回路付織物がそれらの導電性回路の一部を重ねて電気的に導通させた状態で積層されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物の任意の位置に回路を組み込み構成した織物構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、織物に配線して導電性回路を形成する場合、以下に説明する方法が採用されている。
(1)織物全体を導電性繊維で形成し、織物全体により回路を構成するもの、例えば、織物の縦方向に織り込まれている経糸の全て、あるいは織物の横方向に織り込まれている緯糸の全てを金属線から構成し、織物全体を回路として構成するものが知られている。
(2)織物の経糸もしくは緯糸の一部を導電性繊維で構成し、緯糸の方向に沿ってあるいは緯糸の方向に沿って一方向に導電性を有するものが知られている。
【0003】
前記緯糸の全てあるいは経糸の全てを導電性繊維で形成する技術の一例として、以下の特許文献1に、縦糸と横糸をクロス状に織り込んでなる織物において、縦糸および/または横糸に銅を含む糸を織り込み、他の糸を非導電性の繊維から構成した織物が開示されている。
また、以下の特許文献2には、金属材料を圧延してなる金属箔を帯状に切断して形成した糸を縦糸または横糸の少なくとも一方に使用した織物からなり、電磁波シールド用、帯電防止用であって、衣料用としての実用性に優れ、装飾効果の高い布地が開示されている。
【0004】
更に、以下の特許文献3には、木綿などの非電導性糸からなる領域と金属繊維あるいは炭素繊維などの電導性繊維で形成された糸からなる領域とが交互に配置されて構成され、電導性繊維で形成された糸からなる領域に電力線を接続してなる電気毛布が開示されている。
また、以下の特許文献4には、複数の縦線材と横線材とを織り込み、この横線材を1本間隔に導体線にて構成し、他の横線材と縦線材の全てを絶縁体にて構成し、織り込んだ縦線材と横線材の上面側と下面側とに絶縁フィルム又は絶縁コーティング部を設けた導電用織物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−149481号公報
【特許文献2】特開昭62−289645号公報
【特許文献3】特開平8−060487号公報
【特許文献4】特開平8−134741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1〜4に記載されている技術では、例えば1つの電源からスイッチと導電性回路を介し複数の出力を独立して自在に繋ぐ用途に適用しようとした場合、前記特許文献1に記載の織物構造では、織物全体が導電性を有するために、複数の出力が同時に出力されてしまう問題があり、簡単には適用できない問題がある。
また、前記特許文献2に記載の織物構造では、複数の出力を独立して出力することは可能であるが、その方向が経糸方向もしくは緯糸方向のいずれかの方向に制限されてしまう問題があった。
即ち、導電性を付与した従来の織物構造物では、織物の内部においてあらゆる任意の方向に導電性回路を形成することは不可能であった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、簡易に製造することが可能であって、織物の内部においてあらゆる任意の方向に引き廻しが可能な導電性回路を形成することができる織物構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の織物構造体は、経糸および緯糸を縦方向あるいは横方向に織り込んでなる織物本体に、経糸あるいは緯糸に沿って縦方向と横方向と斜め方向の少なくとも一方向に導電性繊維を織り込んでなる導電性回路を備えた回路付織物と、経糸および緯糸を縦方向あるいは横方向に織り込んでなる織物本体に、経糸あるいは緯糸に沿って縦方向と横方向と斜め方向の少なくとも一方向に導電性繊維を織り込んでなる導電性回路を備えた他の回路付織物が、必要枚数積層され、前記回路付織物がそれらの導電性回路の一部を重ねて電気的に導通させた状態で積層されてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の織物構造体は、経糸および緯糸を縦方向あるいは横方向に織り込んでなる織物本体に、経糸あるいは緯糸に沿って縦方向と横方向と斜め方向の少なくとも一方向に導電性繊維を織り込んでなる導電性回路を備えた1枚以上の回路付織物と、経糸および緯糸を縦方向あるいは横方向に織り込んでなる織物本体に、経糸あるいは緯糸に沿って縦方向と横方向と斜め方向の少なくとも一方向に導電性繊維を織り込んでなる導電性回路を備えた1枚以上の他の回路付織物が、必要枚数、面状の絶縁体を介し積層されるとともに、前記絶縁体をその厚さ方向に貫通するように延在されてその絶縁体を挟んで対峙する前記一方の回路付織物の導電性回路と前記他方の回路付織物の導電性回路とを接続する上下導通用の接続用導体が設けられてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の織物構造体は、前記面状の絶縁体が、非導電性の繊維を経糸および緯糸として横方向あるいは縦方向に織り込んでなる絶縁布とされたことを特徴とする。
本発明の織物構造体は、前記織物本体の端部に前記導電性繊維に接続する電源装置が設けられてなることを特徴とする。
本発明の織物構造体は、前記電源装置を接続した特定の回路付織物の導電性繊維が前記上下導通用の接続用導体を介し他の回路付織物の導電性繊維に接続されるとともに、前記接続用導体を介し接続された他の回路付織物の導電性繊維の端部に電気装置が接続され、前記電源装置から前記電気装置への通電が可能とされてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の織物構造体は、前記絶縁体を挟んで対峙する前記一方の回路付織物あるいは前記他方の回路付織物の少なくとも一方に導電性回路が複数形成され、前記一方の回路付織物の導電性回路と前記他方の回路付織物の導電性回路が複数箇所において前記一以上の上下導通用の接続用導体により相互接続されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の織物構造体によれば、織物本体に配置されている横方向と縦方向と斜め方向の少なくとも一方向に延在する導電性回路を重ねて電気的に接続して導通できるので、織物本体の導電性回路の延在方向の組み合わせにより、織物本体に沿って自由な方向への導電性回路の引き回しが可能となる。これにより、織物本体に沿って導電性回路の向きを自由に調整出来るようになり、織物本体に沿って任意の方向へ自由な導電性回路の引き回しを可能とすることができる。
【0013】
本発明の織物構造体によれば、絶縁体を挟んでその両側の織物本体に配置されている横方向と縦方向と斜め方向の少なくとも一方向に延在する導電性回路を上下導通用の接続用導体により電気的に接続して導通できるので、絶縁体を挟んでその両側に存在する織物本体の導電性回路の延在方向の組み合わせにより、織物本体に沿って自由な方向への導電性回路の引き回しが可能となる。これにより、絶縁体を挟んでその両側において存在する導電性回路の向きを自由に調整出来るようになり、織物本体に沿って任意の方向へ自由な導電性回路の引き回しを可能とすることができる。
【0014】
織物本体の間に配置する絶縁体を非導電性の繊維を用いた織物構造の絶縁布とすることができ、この場合に2枚の織物本体と織物構造の絶縁布の積層構造により織物構造体を実現できる。
織物本体に電源装置を接続することにより、電源装置からの導電性回路を織物本体に沿って自在な方向に引き回した導電性織物構造体を提供することができる。
織物本体に自在な方向に引き回した導電性回路を用いて電源装置と電気装置を接続するならば、織物本体に接続した電源装置から自由な方向に導電性回路を引き回した上に電気装置に通電できるようになるので、織物本体の自由な位置に電源装置と電気装置の設置が可能となり、織物本体に対する電源装置と電気装置の設置及び接続の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明に係る織物構造体の第1実施形態を示す図であり、図1(A)は分解斜視図、図1(B)は積層状態の平面図である。
【図2】図2は第1実施形態に適用される上下導通用の接続用導体の一例を示す斜視略図である。
【図3】図3は本発明に係る織物構造体の第2実施形態を示す図であり、図3(A)は分解斜視図、図3(B)は積層状態の平面図である。
【図4】図4は本発明に係る織物構造体の第3実施形態を示す図であり、図4(A)は分解斜視図、図4(B)は積層状態の平面図である。
【図5】図5は図4に示す織物構造体に適用する織物本体の変形例を示す構成図である。
【図6】図6は本発明に係る織物構造体の第4実施形態を示す図であり、図6(A)は分解斜視図、図6(B)は積層状態の平面図である。
【図7】図7は第4実施形態に適用される上下導通用の接続用導体の一例を示す斜視略図である。
【図8】図8は本発明に係る織物構造体の第5実施形態を示す図であり、図8(A)は分解斜視図、図8(B)は積層状態の平面図である。
【図9】図9は本発明に係る織物構造体を製造するための装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「第1実施形態」
以下、本発明を図面に示す実施形態を参照して詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
図1(A)は本発明に係る第1実施形態の織物構造体Aの分解斜視図、図1(B)は同第1実施形態の織物構造体Aの平面図、図3は接続用導体を示すための略図である。
この第1実施形態の織物構造体Aは、図1の縦向きに相互に並行に配列された複数本の経糸1と図1の横向きに相互に並行に配列された複数本の緯糸2とを主体としてこれらを90゜に交差する如く1本1本互い違いに織り込んでなる織物本体3、4とこれら織物本体3、4の間に挟まれる形態でこれらに積層される布状の絶縁体5を主体として構成されている。なお、図1(A)においては経糸と緯糸の織り込み構造を簡略記載して碁盤目状に表記しているが、経糸と緯糸とは正確には図1(B)に示す如く1本おきに互い違いに交差した状態に織り込まれている。
【0017】
本実施形態の織物本体3は、非導電性繊維が経糸1と緯糸2として図1(B)に示す如く90゜クロス状態に織り込まれた上に、必要な位置に左右方向に直線状に織り込まれた導電性繊維からなる導電性回路6、7が形成された構造とされている。また、織物本体4は、非導電性繊維が経糸1と緯糸2として図1(B)に示す如く90゜クロス状態に織り込まれた上に、必要な位置に縦方向に直線状に織り込まれた導電性繊維からなる導電性回路8が形成された構造とされている。更に、絶縁体5は非導電性の繊維を経糸1あるいは緯糸2として90゜クロス状態に織り込まれて構成されている。
図1(B)に示す実施形態では織物本体3、4、5が、図1の縦方向に延在するとともに横方向に整列する32本の経糸1に対し、図1(B)の横方向に延在するとともに縦方向に整列する32本の緯糸2を90゜クロス状態に織り込んだ構成として例示されている。
そして、図1に示す織物本体3において、32本の緯糸2において、上側から順に第1行目の緯糸2〜第32行目の緯糸2と順番に呼称し、32本の経糸1において、左側から順に第1列目の経糸1〜第32列目の経糸1と順番に呼称して説明することにする。
なお、本実施形態の織物構造体Aにおいて、経糸1と緯糸2の織り込み本数はあくまでも1例を示したものであって、織物構造体として必要な縦横の寸法に応じて適宜の数に増減しても良いのは勿論である。
【0018】
この第1実施形態において、図1(B)に示す如く第4行目の緯糸として導電性繊維が織り込まれて直線状の導電性回路6が織物本体3の左側の端部(一側端部)から右側の端部(他側端部)に至るように織り込み形成されている。また、図1(B)に示す如く第19行目の緯糸として導電性繊維が織り込まれて直線状の導電性回路7が織物本体3の左側の端部(一側端部)から右側の端部(他側端部)に至るように織り込み形成されている。
また、図1(B)に示す如く織物本体4において、第26列目の経糸として導電性繊維が織り込まれて直線状の導電性回路8が織物本体4の上側の端部から下側の端部まで至るように形成されている。
【0019】
次に、織物本体3、4はそれらの間に絶縁体4を挟むように重ねて積層されており、織物本体3、4と絶縁体5はいずれも図1(B)に示す如く3枚重ねた状態において、第1行目〜第32行目の緯糸2を行毎に平面視重ねるとともに、第1列目〜第32列目までの経糸1を列毎に平面視重ねて積層されている。従って、図1(B)に示す如く平面視した状態において、導電性回路6と導電性回路8とが、第4行目、かつ、第26列目の交差部分において上下に重ねられるとともに、導電性回路7と導電性回路8とが、第19行目、かつ、第26列目の交差部分において上下に重ねられている。そして、第4行目、かつ、第26列目の交差部分に、前記織物本体3と織物構造の絶縁体5と織物本体4とをそれらの積層方向に貫通して導電性回路6、8に接続された上下導通用の接続用導体10が設けられている。この接続用導体10は導電性の繊維からなり、織物本体3、織物構造の絶縁体5、織物本体4の各経糸1と各緯糸2の織り込み部分の隙間を通過するようにして織物本体3と絶縁体5と織物本体4とを貫通して導電性回路6、8の交差部分を縫い付ける如く設けられている。
【0020】
ここで導電性回路6、8を接続した上下導通用の接続用導体10は織物本体3、織物構造の絶縁体5、織物本体4の各経糸1と各緯糸2の織り込み部分の隙間を複数回繰り返し往復通過するようにして導電性回路6、8の交差部分を締結し接続している。この接続用導体10による導電性回路6、8の交差部分の接続は、接続用導体10による締結に加えて導電性接着剤などの接合手段により接続しておくことが好ましい。なお、各織物本体3、4と絶縁体5を構成する各繊維の耐熱性が高い場合は、低融点はんだによる接続も可能である。
更に、導電性回路6、8の他の交差部分、即ち、導電性回路6と導電性回路8とが、第19行目、かつ、第26列目の交差部分において上下に重ねられている部分の接続においても、前述の接続用導体10の場合と同様に接続用導体11によって電気的に接続されて上下導通されている。
なお、図2に導通用導体10、11と導電性回路6、7、8との接続関係を分解斜視略図として示しておくが、実際には、織物本体3と絶縁体5と織物本体4は順次密着するように3層積層されており、接続用導体10、11もこれらを接続するために必要十分な長さでもって織物本体3と絶縁体5と織物本体4を貫通するように配置されている。
【0021】
前記導電性回路6、7、8あるいは接続用導体10、11を構成する導電性繊維は、銅やアルミニウムなどの良電導性の金属あるいは貴金属、またはそれらの合金からなる繊維状の導体を用いても良いし、該導体の周囲を絶縁性の被覆層にて適宜被覆してなる構造の被覆導体を用いても良い。
また、これらの電導性繊維は、丸線や角線、他の異形線あるいはテープ状の導体など、いずれの断面形状のものであっても良い。
【0022】
次に、図1(B)に示す如く織物本体3と絶縁体5と織物本体4の3枚重ねの積層体からなる織物構造体Aにおいて、左側上端部には、電源装置20が設置され、この電源装置20の図示略の出力端子に、前記直線状の導電性回路6の一端が接続され、この導電性回路6に電源装置20から通電できるように構成されている。また、織物本体3の導電性回路7の右側端部に照明装置などの電気装置21が接続されていて、先の電源装置20から電気装置21に通電できるように構成されている。
【0023】
以上の如く構成された織物構造体Aにあっては、織物本体3に直線状の導電性回路6を形成しており、この導電性回路6に接続用導体10を介して導電性回路8を電気的に接続し、導電性回路8に接続用導体11を介して導電性回路7を電気的に接続しているので、電源20から電気装置21に通電して電気装置21を作動させることができる。
電気装置21が照明装置であれば、必要に応じ電源装置20からの通電により作動させて照明することができる。また、電気装置21は照明装置に限らず、モータやセンサなどの電気部品、あるいはICやLSIなどの電気部品、または、他の配線や配線基板、あるいは、前記と同様構造の他の織物構造体など、通電操作が必要なあらゆる電気装置の配線接続用に適用することができる。
【0024】
本実施形態に係る織物構造体Aにおける導電性回路6、7、8にあっては、導電性繊維を織り込む織込位置と方向を適宜変更することが容易に実現できるので、これらの延在方向あるいは折曲方向を適宜調節することで織物構造体Aの自由な方向に回路を延在させた織込回路として構成することができる。従って、従来のこの種の導電性織物では達成不可能であった自由な方向への導電性回路の形成が可能となる効果がある。
例えば、導電性回路6を形成する位置は第1行目〜第32行目の経糸1のいずれの位置でも容易に織り込み可能であるので、織物本体3を織り込む場合に実現が容易であり、導電性回路8を形成する位置は第1列目〜第32列目の緯糸2のいずれの位置でも織物本体を織り込む場合に容易に織り込み可能であるので、実現が容易である。
従って、これらの織り込み位置を選択することで電源20と電気装置21を設置して接続する位置を自由に変更することができるので、自由な方向への導電性回路の形成が可能となる。
【0025】
ところで、第1実施形態の構造では、絶縁体5を挟むように織物本体3、4を積層して3層構造の織物構造体Aを構成したが、積層総数は3層に限らず、5層、7層あるいはそれ以上の総数であっても容易に実現できる。また、絶縁体5は本実施形態では布状の織物構造としたが、上下導通用の接続導体10、11を貫通可能な構成であれば、シート層であっても良い。
また、積層する場合の総数は奇数層に限るものではなく、偶数の層の積層構造であっても良い。例えば、織物本体の平面視重ならない部分に大略の導電性回路を構成しておき、接続点のみ重なる位置に導電性回路の接続部分を形成しておくならば、絶縁体5を介する積層でなくても良い。
【0026】
例えば、図1に示す第1実施形態の構造において、布状の絶縁体5を略して構成し、織物本体3、4を2層積層構造とするならば、2層構造の織物構造体を提供できる。そしてこの場合、上下導通用の接続用導体10、11を織物本体3、4を貫通するように設けて織物本体3、4の導電性回路6、8の接合あるいは導電性回路6、7の接合に用いれば良い。なお、織物本体3、4を2層積層構造とした場合、導電性回路6と導電性回路8、あるいは、導電性回路6と導電性回路7は相互接触により自然に導通するので、接続用導体10、11は略しても良いが、確実な導通を図るためには接続用導体10、11を設けておいた方が良い。勿論、これらの導通のためには、先に詳述した導電性接着剤等の他の電気的接合手段による接合であっても良い。
【0027】
「第2実施形態」
図3(A)は本発明に係る第2実施形態の 織物構造体Bの分解斜視図、図3(B)は同第3実施形態の織物構造体Bの平面図である。
この第2実施形態の織物構造体Bは、図3の縦向きに相互に並行に配列された複数本 の経糸1と図3の横向きに相互に並行に配列された複数本の緯糸2とを主体としてこれらを90゜に交差する如く1本1本互い違いに織り込んでなる織物本体13、14とこれら織物本体13、14の間に挟まれる形態で積層される布状の絶縁体15を主体として構成されている。なお、図3(A)においては経糸と緯糸の織り込み構造を簡略記載して碁盤目状に表記しているが、経糸と緯糸とは正確には図3(B)に示す如く1本おきに互い違いに交差した状態に織り込まれている。
【0028】
本実施形態の織物本体13は、非導電性繊維が経糸1と緯糸2として図3に示す如く90゜クロス状態に織り込まれた上に、先の第1実施形態の導電性回路6に加えて導電性回路6A、6B、6Cが設けられ、織物本体14は先の第1実施形態の導電性回路8に加えて導電性回路8Aを設けた点に特徴を有する。その他、織物本体13の基本構造は織物本体3の基本構造と同等であり、絶縁体14の基本構造は絶縁体4と同等であり、織物本体15の構造は織物本体4の基本構造と同等である。
この第2実施形態の織物本体13では、第4行目の導電性回路6に加え、第10行目の導電性回路6A、第16行目の導電性回路6B、第22行目の導電性経路6Cが設けられている。また、織物本体14では、第26列目の導電性回路8に加えて第18列目に導電性回路8Aが設けられている。
そして、導電性回路6Aと導電性回路8Aとが平面視交差する部分に先の接続用導体10と同等構造の接続用導体16が設けられ、導電性回路6Bと導電性回路8とが平面視交差する部分に先の接続用導体10と同等構造の接続用導体17が設けられ、導電性回路6Cと導電性回路8Aとが平面視交差する部分に先の接続用導体10と同等構造の接続用導体18が設けられている。
また、電源20の出力端子が導電性回路6と6Aに接続され、電気装置21が導電性回路6Bの右端部側に接続され、電気装置22が導電性回路6Cの左端部側に接続されている。
【0029】
この第2実施形態に係る構造においては、電源20の出力端子が導電性回路6、接続用導体10、導電性回路8、接続用導体17、導電性回路6Bを介して電気装置21に接続されるとともに、電源20の他の出力端子が導電性回路6A、接続用導体16、導電性回路8A、接続用導体18、導電性回路6Cを介して電気装置22に接続されている。
以上の如く構成された織物構造体Bにあっては、電源装置20の一方の出力端子に導電性回路6、接続用導体10、導電性回路8、接続用導体17、導電性回路6Bを介して電気装置21を接続しているので、電気装置21に電源装置20から通電することができる。また、電源20の他の出力端子を導電性回路6A、接続用導体16、導電性回路8A、接続用導体18、導電性回路6Cを介して電気装置22に接続しているので、電気装置22に通電することができる。
その他の作用効果について先の第1実施形態の構造と同等の作用効果を得ることが出来る。
【0030】
「第3実施形態」
図4(A)は本発明に係る第3実施形態の織物構造体Cの分解斜視図、図4(B)は同第3実施形態の織物構造体Cの平面図である。
この第3実施形態の織物構造体Cは、図4の縦向きに相互に並行に配列された複数本の経糸1と図4の横向きに相互に並行に配列された複数本の緯糸2とを主体としてこれらを90゜に交差する如く1本1本互い違いに織り込んでなる織物本体23、24とこれら織物本体23、24の間に挟まれる形態で積層される布状の絶縁体25を主体として構成されている。なお、図4(A)においては経糸と緯糸の織り込み構造を簡略記載して碁盤目状に表記しているが、経糸と緯糸とは正確には図4(B)に示す如く1本おきに互い違いに交差した状態に織り込まれている。
【0031】
本実施形態の織物本体23は、非導電性繊維が経糸1と緯糸2として図4に示す如く90゜クロス状態に織り込まれた上に、先の第1実施形態の導電性回路6に代えて導電性回路6D、6E、6F、6G、6H、6Iが設けられ、織物本体24は先の第1実施形態の導電性回路8に加えて導電性回路8B、8Cが設けられた点に特徴を有する。その他、織物本体23の基本構造は織物本体3の基本構造と同等であり、絶縁体25の基本構造は絶縁体5と同等であり、織物本体24の基本構造は織物本体4の基本構造と同等である。
この第3実施形態の織物本体23では、先の第1実施形態の第4行目の導電性回路6に代えて、第2行目の導電性回路6D、第8行目の導電性回路6E、第14行目の導電性経路6Fが設けられ、第20行目の導電性回路6Gが設けられ、第26行目の導電性回路6Hが設けられ、第32行目の導電性回路6Iが設けられている。また、織物本体24では、織物本体24を斜め45度方向に横断する方向の導電性回路8Bと8Cとが形成されている。
【0032】
前記導電性回路8Bは、平面視した織物本体24を斜め45度方向に横断するように織り込まれているので、図4(B)に示す如く拡大視してみると、90゜交差して織り込まれている経糸1…と緯糸2…に対して階段状に織り込まれている。この実施形態では経糸1と緯糸2に対して確実に織り込むことを想定し、織り込み部分が複数行分の緯糸2と複数列分の経糸1に渡るように階段状に織り込まれている。
なお、階段状に織り込む部分については、1行または複数行おきか、1列または複数列おきかで任意の行数あるいは任意の列数で折り曲げるように織り込むことは自由にできるので、その織り込み方に応じた傾斜角度の導電性回路8Bと8Cを構成できるのは勿論である。なお、経糸1と緯糸2とは別に導電性回路8Bと8Cを単独で織り込むならば、階段状ではなく、直線状に織り込みことも可能であるので、導電性回路8Bと8Cは直線状に傾斜した織り込み部であっても差し支えない。
【0033】
次に、図4(B)に示す如く電源20の出力端子が導電性回路6Dと導電性回路6Eに接続され、電気装置26が導電性回路6Fの右端部側に接続され、電気装置27が導電性回路6Hの左端部側に接続されている。
この第3実施形態に係る構造においては、電源20の出力端子が導電性回路6D、接続用導体26、導電性回路8B、接続用導体27、導電性回路6Fを介して電気装置28に接続されるとともに、電源20の他の出力端子が導電性回路6E、接続用導体29、導電性回路8C、接続用導体30、導電性回路6Hを介して電気装置31に接続されている。
以上の如く構成された織物構造体Cにあっては、電源装置20の一方の出力端子に導電性回路6D、接続用導体26、導電性回路8B、接続用導体27、導電性回路6Fを介して電気装置28を接続しているので、電気装置28に電源装置20から通電することができる。また、電源20の他の出力端子を導電性回路6E、接続用導体29、導電性回路8C、接続用導体30、導電性回路6Hを介して電気装置31に接続しているので、電気装置31に通電することができる。
その他の作用効果について先の第1実施形態の構造と同等の作用効果を得ることが出来る。
【0034】
図5は図4に示す織物構造体Cに適用する織物本体24の変形例を示すもので、この例の織物本体24’は、先に説明した織物本体23と同じ構造であるが縦横サイズの若干大きい織物本体23’をまず作製し、図5に示す如く周回り方向に45゜回転させて経糸1及び緯糸2を45゜向きとした状態で必要な大きさに裁断し、図4(A)に示す織物本体24と同じ大きさの織物本体24’を構成し、この織物本体24’を図4(A)に示す織物本体24に交換して絶縁体25及び織物本体23と重ねてから上下導通させて使用する。この場合、織物本体23’には、6D〜6Iの6本の導電性回路が組み込まれ、これらがそのまま織物本体24’の導電性回路6D’〜6I’となっているが、図4(A)に示す如く必要な導電性回路は2本であるので、6本の導電性回路6D’〜6I’のうち、必要な位置の2本のみを選択して接続用導体で上下導通すれば目的の電気回路を接続することができる。
【0035】
「第4実施形態」
図6(A)は本発明に係る第4実施形態の織物構造体Dの分解斜視図、図6(B)は同第4実施形態の織物構造体Dの平面図である。
この第4実施形態の織物構造体Dは、図6の縦向きに相互に並行に配列された複数本の経糸1と図6の横向きに相互に並行に配列された複数本の緯糸2とを主体としてこれらを90゜に交差する如く1本1本互い違いに織り込んでなる織物本体33、34とこれら織物本体33、34の間に挟まれる形態で積層される布状の絶縁体5を主体として構成されている。なお、図6(A)においては経糸と緯糸の織り込み構造を簡略記載して碁盤目状に表記しているが、経糸と緯糸とは正確には図6(B)に示す如く1本おきに互い違いに交差した状態に織り込まれている。
【0036】
本実施形態の構造は、図1に示す第1実施形態の構造において織物本体3の左端部側から右端部側に至る導電性回路6、7を設け、織物本体3の上端部側から下端部側まで至る導電性回路8を設けていたものを回路接続に必要な長さのみ形成した形態に係る。この第4実施形態において、導電性回路6aは第4行目の緯糸2に沿って形成されているが、織物本体3の左側端部から第26列目の経糸1の部分、即ち、接続用導体10が設けられる部分まで形成されている。また、導電性回路8aは接続用導体10が設けられる部分から第26列目の経糸1に沿って第19行目の緯糸2の部分、即ち、接続用導体11が設けられる部分まで形成され、導電性回路7aは接続用導体11が設けられた位置から第19行目の緯糸2に沿って織物本体3の右側端部まで形成されている。接続用導体10、11の織物本体33、34と絶縁体5に対する導通関係は図7に示すようになるが、この関係は図2に示す接続用導体10、11の関係と同様である。
この第4実施形態において電源装置20が導電性回路6aに接続され、電気装置21が導電性回路7aに接続されている。
【0037】
図6に示す織物構造体Dにおいても図1に示す構造の織物構造体Aと同等の作用効果を得ることができる。
本発明では織物本体に対し図1の実施形態の如く一側端部から他側端部まで導電性回路を延在させて織り込んでも良いし、図6に示す実施形態の如く必要部分にのみ導電性回路を織り込んでも良い。即ち、本発明で用いる織物本体に形成する導電性回路は織物としての製造性の容易さから鑑み、織物本体の一側端部から織物本体の他側端部まで織り込んでも良いし、必要な部分のみ織り込む形態、あるいは織り込み性を考慮して導電性回路部分以外の部分まで織り込むなどのいずれの織り込み形態でも採用して良い。
【0038】
「第5実施形態」
図8(A)は本発明に係る第5実施形態の織物構造体Eの分解斜視図、図6(B)は同第5実施形態の織物構造体Eの平面図である。
この第5実施形態の織物構造体Eは、図8の縦向きに相互に並行に配列された複数本の経糸1と図8の横向きに相互に並行に配列された複数本の緯糸2とを主体としてこれらを90゜に交差する如く1本1本互い違いに織り込んでなる織物本体43、44とこれら織物本体43、44の間に挟まれる形態で積層される布状の絶縁体5を主体として構成されている。なお、図8(A)においては経糸と緯糸の織り込み構造を簡略記載して碁盤目状に表記しているが、経糸と緯糸とは正確には図8(B)に示す如く1本おきに互い違いに交差した状態に織り込まれている。
【0039】
この第5実施形態は、図3に示す先の第2実施形態の織物構造体Bにおいて、織物本体13の左端部側から右端部側に至る導電性回路6、6A、6B、6Cを設け、織物本体13の上端部側から下端部側まで至る導電性回路8、8Aを設けていた構造に代えて導電性回路接続に必要な長さの回路のみ形成した形態に係る。
この形態において、導電性回路6’は第4行目の緯糸2に沿って形成されているが、織物本体3の左側端部から第26列目の経糸1の部分、即ち、接続用導体10が設けられる部分まで形成されている。また、導電性回路8a’は接続用導体10が設けられる部分から第26列目の経糸1に沿って第16行目の緯糸2の部分、即ち、接続用導体11が設けられる部分まで形成され、導電性回路6B’は接続用導体11が設けられた位置から第19行目の緯糸2に沿って織物本体3の右側端部まで形成されている。
この実施形態において電源装置20の一方の出力端子が導電性回路6’に接続され、電気装置21が導電性回路6B’に接続されている。また、電源装置20の他方の出力端子が第10行目の緯糸2に沿って設けられている導電性回路6A’に接続され、導電性回路6A’は接続用導体16の位置まで形成され、この接続用導体16に接続される導電性回路8A’が接続用導体16の形成位置から接続用導体18の位置まで形成され、この接続用導体18の位置から織物本体43の左型端部まで導電性回路6C’が形成され、この導電性回路6C’に電気装置22が接続されている。
【0040】
この実施形態の織物構造体Eにおいても電源装置20から電気装置21、22に通電できるようになっている点においては先の第2実施形態の織物構造体Bと同等であり、同様な作用効果を得ることができる。
【0041】
「製造装置」
次に、図1に示す構造の織物構造体Aを製造可能な装置と製造方法の一例について以下に説明する。
図9は図1に示す構造の織物構造体Aを製造可能な装置の第1実施形態を示すもので、この第1実施形態の製造装置Fは、一般に知られている織機を本発明用に改造することで構成されている。
この第1実施形態の製造装置Fは、対向して水平に離間配置されたロッド状のフロントビーム50およびバックビーム51と、フロントビーム50の下に設置された巻取ローラー型のクロスビーム52と、バックビーム51の下に配置された供給ローラー型のワープビーム53と、前記フロントビーム50およびバックビーム51の中間位置に上下方向に移動自在に設置された第1の綜絖55および第2の綜絖56と、これら綜絖55、56とフロントビーム50との間に綜絖55、56とフロントビーム50との間を水平方向に移動自在に配置された筬57と、この筬57と前記フロントビーム50との間を前記フロントビーム50と平行方向に移動自在に設けられる第1のシャトル59と第2のシャトル60とを主体として構成されている。
【0042】
なお、図9においては、フロントビーム50およびバックビーム51とクロスビーム52およびワープビーム53の支持機構などは略されているが、フロントビーム50およびバックビーム51は門型のフレームなどにより固定支持され、クロスビーム52およびワープビーム53はそれぞれ図示略の門型のフレームや軸受けなどの回転支持機構によりそれらの周周りに回転自在に支持されている。また、綜絖55、56においても図示略のフレームにより上下に平行移動自在に支持されるとともに、筬57についても水平方向に平行移動できるように図示略のフレームに支持されている。
【0043】
前記綜絖55、56は、この実施形態では、上枠61と下枠62の間に複数本の針金状のヘルド部材63を個々に離間し平行に架設して構成され、各ヘルド部材63の中央部に針金を輪状に形成したヘルド孔部64が形成されている。これらのヘルド孔部64には後述するように経糸1を通過できるように構成されている。綜絖55と綜絖56は、本第1実施形態ではそれらに形成された各ヘルド部材63を互い違いに横並びに配置するような位置関係に配置され、後述する如くフロントビーム50およびバックビーム51に複数並行に掛け渡される経糸1の1本1本を各綜絖55、56のヘルド穴64に通すことができるように配置されている。
【0044】
これらの綜絖55、56は図示略の上下駆動機構により個々に上下に移動自在に設けられており、しかも綜絖55と綜絖56の上下移動が交互に繰り返しなされるように構成されている。例えば、図9に示す如く綜絖55が下側に、綜絖56が上側に移動することにより、綜絖55がヘルド部材63により区分け支持している1本おきの経糸1の群を下側に引っ張り、綜絖56がヘルド部材63により区分け支持している他の1本おきの経糸1の群を上側に引っ張ることにより、2つに区分けしたうちの1群の経糸1と他の1群の経糸1との間に隙間を大きく形成することができる。この隙間の形成により後述する如くシャトル59、60の経糸1…に対する交差方向への移動が可能となる。また、逆に、綜絖55が上側に綜絖56が下側に移動すると、先の2つに区分けした1群の経糸1と他の1群の経糸1との上下関係が逆転するので、シャトル59、60が1群の経糸間の隙間を介して行う経糸1の交差方向への通過が可能となる。
【0045】
また、前記筬57は上枠65と下枠66との間に並行に複数本の筬羽67を平行に備えて構成され、これらの筬羽67の間にフロントビーム50およびバックビーム51間に複数並行に掛け渡されている経糸1を挿通できるように配置され、この状態のまま筬羽67をフロントビーム50側に平行移動できるように構成されている。なお、図9においては綜絖55、56と筬57の個々の支持移動機構についても詳細を略してそれらの動作方向のみを矢印にて示している。
【0046】
前記第1のシャトル59には本発明に係る先の織物構造体Aのうち、緯糸2となるべき非導電性繊維が巻き付けられていて、第1のシャトル59はフロントビーム50の長さ方向に沿ってフロントビーム50と平行に移動自在に設けられており、必要に応じて第1のシャトル59から非導電性繊維を必要な長さ自由に繰り出すことができるように構成されている。
次に、前記第2のシャトル60はフロントビーム50の長さ方向に沿って該フロントビーム50と平行に移動自在に設けられているが、本実施形態において第2のシャトル60は、フロントビーム50の長さ方向に沿って平行移動している間の任意の位置から、即ち、経糸1…に交差する方向に移動している間の任意の位置から、バックビーム51側に方向変換して移動自在とされている。そして、この移動課程において第2のシャトル60は複数の筬羽67の間隙を通過自在とされるとともに、綜絖55、56の複数のヘルド部材63の間隙を通過自在とされていて、第2のシャトル60がバックビーム51側まで非導電性繊維を繰り出しながら移動することにより、バックビーム51側に導電性繊維70を備えた第2のシャトル60を到達できるように構成されている。
【0047】
次に、図9に示す構成の製造装置Fを用いて図1に示す構成の織物構造体Aを製造する方法の一例について説明する。
織物構造体Aを製造するには、製造装置Fのフロントビーム50とバックビーム51の間に並行にテープ状の非導電性繊維からなる経糸1を必要本数張設しておく。図9に示す実施形態では、概略のみを示すが、複数張設した経糸1は各綜絖55、56の各ヘルド孔部64を通過するようにしてフロントビーム50とバックビーム51との間に張設しておく。また、第1のシャトル59にはテープ状の非導電性繊維からなる緯糸2を必要長さ巻き付けておき、第2のシャトル60には導電性繊維70を必要長さ巻き付けておく。また、図1(A)に示す織物本体4を織り込む場合には、経糸1のうち、必要な位置の1本を導電性繊維からなる経糸とし、他の経糸を非導電性繊維としてフロントビーム50とバックビーム51の間に架設しておくものとするが、織物本体3を織り込む場合には全ての経糸1を非導電性繊維としてフロントビーム50とバックビーム51の間に架設しておくものとする。
【0048】
図1(A)に示す織物本体3を製造するには、全ての経糸1を非導電性繊維としてフロントビーム50とバックビーム51の間に架設しておき、綜絖55、56を交互に上下移動させると、図9に示す如く1本おきに経糸1を2つの群に区分けして上下に移動できるので、群分けした1本1本の経糸1間に大きな隙間が生じる。この隙間を利用し、第1のシャトル59に巻かれている緯糸2をフロントビーム50の一端側から反対端側に向かって第1のシャトル59とともに移動させると、第1のシャトル59の移動に伴い、緯糸2を経糸1…の1本おきに交差する方向に織り込むことができる。
第1のシャトル59が経糸1の全ての列を通過してフロントビーム50の反対端側に移動すると、一列全ての経糸1に対して1本おきに緯糸2を織り込むことができるので、この後、筬57をフロントビーム50側に移動させて緯糸2をフロントビーム30側に押し込む操作を行うことで緯糸2を打ち込むことができる。そして、第1のシャトル59が経糸1…の全ての列を通過して織り込んだ緯糸2を上述の如く打ち込み後、綜絖55、56の上下位置を逆転させると2つに区分けした経糸1の群が上下入れ替わるので、第1のシャトル59を再度フロントビーム50に沿って逆方向移動させて先の位置に戻す操作を行い、張設した経糸1…の1本おきに緯糸2を織り込むことができる。
以上の操作を繰り返し行うが、織物本体3を織り込んでいる最中において、導電性回路6、7を形成するべき位置まで織り込んだところで、第1のシャトル59を停止したまま、第2のシャトル60を先の第1のシャトル59と同じように操作することで第2のシャトル60に巻回されている導電性繊維70を経糸1に対して織り込むことができる。導電性繊維70を必要長さ織り込んだならば、第2のシャトル60を停止して再度第1のシャトル59を上述と同様に操作することにより、織物本体3を順次織り込むことができ、必要な位置まで織り込んだならば、再度第2のシャトル60を操作することで、導電性繊維70を再度織り込むことができる。
以上の操作を行うことで、非導電性繊維の緯糸2と導電性繊維の緯糸を使い分けて必要な位置に必要な長さの導電性回路を織り込むことができる。
【0049】
なお、この実施形態の製造装置Fでは、経糸1に沿って直線状に位置する導電性回路と緯糸2に沿って直線状に位置する導電性回路の他に、経糸1と緯糸1に対して斜め方向に交差する方向の導電性経路を織り込むこともできる。
例えば、上述の如く経糸1と緯糸2により織物本体24を織り込んでゆくのと同時に、第1のシャトル59からの非導電性繊維の供給とともに、以下に説明するように第2のシャトル60から導電性繊維を供給しながら織り込んでゆくことで織物本体の内部の斜め方向に延在する導電性回路を形成することができる。
【0050】
図4に示す構造の織物本体24を図9に示す製造装置Fにより製造するに際し、非導電性繊維と導電性繊維がいずれもテープ状あるいは偏平状のものである場合は、第1のシャトル59と第2のシャトル60に巻き掛けられている非電導性繊維と電導性繊維の両者を重ねて第1、第2のシャトル59、60を経糸1に対し通過させることで、非導電性繊維の緯糸2の上に導電性繊維を重ねた状態の導電性回路を得ることができる。
次に、第1のシャトル59は経糸1…に対し交差する方向に経糸1…を全て通過するようにフロントビーム50に沿って平行移動させるが、第2のシャトル60は緯糸1に対して重ね織りするべき位置まで経糸1を通過させた後、綜絖55、56と筬57の作動を停止し、第2のシャトル60の方向を90゜変更してフロントビーム50から離れる方向に移動させ、筬57の筬羽67、67の間を通過させ、綜絖55、56のヘルド部材64、64の間を通過させて導電性繊維をバックビーム51の経糸1が掛け渡された部分に仮固定する。この操作により、経糸1の上に導電性繊維が重なった状態となるので、この状態から、再度、綜絖55、56を上下移動し、第1のシャトル59をフロントビーム50の平行方向に往復移動させて必要な行の非導電性の緯糸2を織込形成してゆく。
【0051】
必要な位置まで緯糸2の織込を行った後、先程バックビーム51に仮固定していた導電性繊維を外し、第2のシャトル60を綜絖55、56を通過させ、筬57を通過させて緯糸2の織込をした部分まで戻し、ここで再度、導電性繊維の方向を90゜変更するとともに、綜絖55、56を作動させて2つの群に分けている経糸1…どうしの隙間に第1のシャトル59と第2のシャトル60を通過させることにより、緯糸2に沿って導電性繊維を重ね織り込みすることができる。
以上の操作を複数行と複数列毎に行うことにより、図4(B)に示す織物本体24に平面視階段状の導電性回路8Bを織り込むことができる。なお、織物本体24には導電性回路8Cも織り込む必要があるので、その場合は更に導電性繊維を巻き掛けた第3のシャトルを用いて先の第2のシャトル60と同様に必要な位置にて移動方向を90゜変更して織り込むことで、織物本体24に2種類の導電性回路8B、8Cを順次織り込むことができる。
以上の操作により各シャトルを操作することで、図1〜図8に示すいずれの構成の織物本体A、B、C、D、Eであっても織り込み形成することができる。
【符号の説明】
【0052】
A、B、C、D、E…織物構造体、1…経糸、2…緯糸、3、4、13、14、23、24、33、34、43、44…織物本体、6、7、8…導電性回路、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、6I、8A、8B、8C、6a、7a、8a、6’、6A’、6B’、6C’、8A’、8a’…導電性回路、10、11、16、17、18…導通用導体、20…電源装置、21、22、28、31…電気装置、F…製造装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸および緯糸を縦方向あるいは横方向に織り込んでなる織物本体に、経糸あるいは緯糸に沿って縦方向と横方向と斜め方向の少なくとも一方向に導電性繊維を織り込んでなる導電性回路を備えた回路付織物と、
経糸および緯糸を縦方向あるいは横方向に織り込んでなる織物本体に、経糸あるいは緯糸に沿って縦方向と横方向と斜め方向の少なくとも一方向に導電性繊維を織り込んでなる導電性回路を備えた他の回路付織物が必要枚数積層され、
前記回路付織物がそれらの導電性回路の一部を重ねて電気的に導通させた状態で積層されてなることを特徴とする導電性織物構造体。
【請求項2】
経糸および緯糸を縦方向あるいは横方向に織り込んでなる織物本体に、経糸あるいは緯糸に沿って縦方向と横方向と斜め方向の少なくとも一方向に導電性繊維を織り込んでなる導電性回路を備えた1枚以上の回路付織物と、
経糸および緯糸を縦方向あるいは横方向に織り込んでなる織物本体に、経糸あるいは緯糸に沿って縦方向と横方向と斜め方向の少なくとも一方向に導電性繊維を織り込んでなる導電性回路を備えた1枚以上の他の回路付織物が、必要枚数、面状の絶縁体を介し積層されるとともに、
前記絶縁体をその厚さ方向に貫通するように延在されてその絶縁体を挟んで対峙する前記一方の回路付織物の導電性回路と前記他方の回路付織物の導電性回路とを接続する上下導通用の接続用導体が設けられてなることを特徴とする導電性織物構造体。
【請求項3】
前記面状の絶縁体が、非導電性の繊維を経糸および緯糸として横方向あるいは縦方向に織り込んでなる絶縁布とされたことを特徴とする請求項1または2に記載の導電性織物構造体。
【請求項4】
前記織物本体の端部に前記導電性繊維に接続する電源装置が設けられてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性織物構造体。
【請求項5】
前記電源装置を接続した特定の回路付織物の導電性繊維が前記上下導通用の接続用導体を介し他の回路付織物の導電性繊維に接続されるとともに、前記接続用導体を介し接続された他の回路付織物の導電性繊維の端部に電気装置が接続され、前記電源装置から前記電気装置への通電が可能とされてなることを特徴とする請求項4に記載の導電性織物構造体。
【請求項6】
前記絶縁体を挟んで対峙する前記一方の回路付織物あるいは前記他方の回路付織物の少なくとも一方に導電性回路が複数形成され、前記一方の回路付織物の導電性回路と前記他方の回路付織物の導電性回路が複数箇所において前記一以上の上下導通用の接続用導体により相互接続されてなることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の導電性織物構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−253805(P2010−253805A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106679(P2009−106679)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】