説明

自己免疫性眼炎症性疾患を処置するためのIL−23およびIL−17のアンタゴニストの使用

【課題】自己免疫性眼炎症性疾患を処置するためのIL−23およびIL−17のアンタゴニストの使用を提供すること。
【解決手段】自己免疫性眼炎症性疾患を治療するための新規な方法および薬物製品を開示し、方法は、IL−17活性およびIL−23活性のうちの一方または両方に拮抗する因子の投与を含む。本発明は、(1)インターロイキン−23(IL−23)活性またはインターロイキン−17(IL−17)活性をブロックすることがEAUの誘発を予防する;(2)誘発後、IL−17活性の中和はEAUの進行を阻害するまたは後退させるが、IL−23活性の中和はほとんどまったく効果を有していない;および(3)IL−17活性はEAUの誘発に必要ではないという発見に基づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
(連邦政府に支援された研究開発についての申し立て)
本発明は、Cooperative Research and Development Agreement(CRADA)第M−01969−04号の下、政府の支援を一部受けてなされ、本発明への修正は、Schering−Plough BiopharmaおよびNational Eye Institute,National Institute of Healthの間で実行された。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、眼における免疫応答の調節に関する。より具体的には、本発明は、自己免疫性眼炎症性疾患を治療するための、インターロイキン−23(IL−23)およびインターロイキン−17(IL−17)のアンタゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
眼炎症性疾患(OID)は、炎症が眼または周囲の組織に影響する、多くの疾患および状態を包含する一般用語である。OIDに与えられる診断名は典型的に眼炎症の位置に基づく。例えば、ブドウ膜炎はブドウ膜における炎症であり、強膜炎は強膜の炎症であり、扁平部炎は扁平部の炎症である等。OIDは痛み、過敏、および流涙を引き起こし、視覚機能の損失をもたらす可能性がある。例えば、ブドウ膜炎は、先進世界における失明の第3の主な原因である。OIDは、感染、悪性腫瘍、毒素への暴露、外科手術または傷害に対する応答、および自己免疫障害により引き起こされ得る。
【0004】
眼または眼の様々な部分が免疫媒介性炎症性攻撃の標的になる多くの自己免疫疾患が存在する。自己免疫媒介性OID(AOID)を有する患者は、網膜アレスチン(網膜可溶性抗原、S−Ag)等の網膜抗原、光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRB)、ならびにメラニンならびにGP100、MART1、TRP1、およびTRP2を含むその代謝に関する抗原に対する細胞応答および体液性応答を示すことが多い(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。しかしながら、AOIDの多くの症例において標的抗原は知られていない。
【0005】
OIDは、全身性自己免疫疾患の顕性化であることが多く、眼は、体中の様々な攻撃されている器官のうちの1つとなる。上記全身性自己免疫疾患の例は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、結節性多発動脈炎、再発性多発性軟骨炎、ウェジナー肉芽腫、強皮症、ベーチェット病、ライター病、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病)、ならびに強直性脊椎炎を含む。しかしながら、眼は、眼瘢痕性類天疱瘡、モーレン角膜潰瘍、およびブドウ膜炎の様々な形態等の自己免疫疾患において影響される特異的な唯一の標的である可能性がある。
【0006】
ブドウ膜炎等のAOIDは、デキサメタゾン、フルオロメトロン、プレドニゾロン、インドメタシン、アスピリン、フルルビプロフェン、およびジクロフェナク等のステロイド類および非ステロイド性抗炎症薬を含む様々な種類の化合物により治療されてきた。しかしながら、多くのブドウ膜炎症例は、これらの薬剤に反応性ではないまたは治療抵抗性になる(例えば、非特許文献5を参照されたい)。さらに、これらの薬剤は、白内障、緑内障、創傷治癒遅延、プロスタグランジン生産の変化、角膜合併症、眼圧上昇、重感染、および感染に対する免疫の低下等の重大な副作用と関連する(例えば、非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。
【0007】
AOIDに対する既存の療法は、それほど最適ではない効能または望ましくない副作用を有するので、新しい治療レジメンが必要とされる。AOIDの病原に関与する免疫調節性機構を調整することが臨床的に有益である可能性があるということが示唆された(非特許文献8)。
これらの病原性機構は、ヒト自己免疫性ブドウ膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)を使用して、調査された。EAUは、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、およびサル等の実験動物において、ブドウ膜炎患者において反応性であることが示された網膜抗原での免疫化により(例えば、アレスチン、IRBP、ロドプシン/オプシン、ホスデューシン、リカバリン)またはこれらの抗原に特異的なT細胞の注入により誘発される。EAUモデルを使用した研究は、この疾患の誘発および進行に対する機構についての明らかに矛盾した証拠を提供した。いくつかの実験の結果は、EAUにおける主要な病原性経路が、IFN−γ生産Th1エフェクター細胞の産生の促進における、インターロイキン−12(IL−12)の役割によるものであったことを示した。(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11)。しかしながら、他の実験は、IFN−γ欠損ノックアウトマウスがEAUに感受性であったということ、EAUが、内因性IFN−γの中和により増悪するということ、IFN−γのレベルの上昇が野生型マウスにおけるEAUに対する防御となったということを示した(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Pennesi,G.ら、J.Clin.Invest.(2003年)111巻:1171〜1180頁
【非特許文献2】Gocho,K.ら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.(2001年)42巻:2004〜2009頁
【非特許文献3】Sugita S.ら、Int.Immmunol.(1996年)8巻:799〜803頁
【非特許文献4】Yamake,K.ら、J.Immunol.(2000年)165巻:7323〜7329頁
【非特許文献5】Kulkarni,P.Journal of Ocular Pharmacology And Therapeutics(2001年)17巻:181〜187頁
【非特許文献6】Guidera,A.C.ら、Ophthalmology(2001年)108巻:936〜944頁
【非特許文献7】Olsen,E.G.およびDavanger M.Acta Ophtalmol.(1984年)62巻:893〜899頁
【非特許文献8】Caspi,R.R.Int Rev Immunol(2002年)21巻:197〜208頁
【非特許文献9】Tarrant,T.K.ら、J.Immunol.(1998年)161巻:122〜127頁
【非特許文献10】Caspi,R.R.Clin Immunol Immunopathol(1998年)88巻:4〜13頁
【非特許文献11】Xu,H.ら、Cell Immunol(1997年)178巻:69〜78頁
【非特許文献12】Caspi,R.R.ら、J.Immunol.(1994年)152巻:890〜899頁
【非特許文献13】Jonesら、J.Immunol.158巻:5997〜6005頁
【非特許文献14】Tarrant,T.K.ら、J.Exp.Med.(1999年)189巻:219〜230頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明よりも以前に、自己免疫性眼炎症性疾患を予防するまたは治療するための療法の開発においてどの免疫経路を標的にするべきかは明確ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の説明
(発明の要旨)
本発明は、(1)インターロイキン−23(IL−23)活性またはインターロイキン−17(IL−17)活性をブロックすることがEAUの誘発を予防する;(2)誘発後、IL−17活性の中和はEAUの進行を阻害するまたは後退させるが、IL−23活性の中和はほとんどまったく効果を有していない;および(3)IL−17活性はEAUの誘発に必要ではないという発見に基づく。本発明は、自己免疫性眼炎症性疾患を治療するまたは予防するための方法および組成物においてIL−23アンタゴニストおよび/またはIL−17アンタゴニストを使用する。これらのアンタゴニストは、標的サイトカイン自体または標的サイトカインに対する機能的受容体のいずれかに拮抗する。
【0011】
IL−23は、2つのサブユニットから成るヘテロ二量体サイトカインである:IL−23に特有であるp19;およびIL−12と共有されるp40。IL−23は、IL−23RおよびIL−12受容体により共有されるIL−12Rベータ1(IL12RB1)から成るヘテロ二量体受容体に結合することによりシグナリングを媒介する。最近の論文は、IL−23が、IL−17、IL−17F、TNF、IL−6、および他の因子の生産により特徴づけられるT細胞集団を促進することを報告し、これらの細胞を「Th17細胞」と名付けた(Langrishら(2005年)J.Exp.Med.201巻:233〜240頁))。
【0012】
IL−17は、細胞毒性Tリンパ球関連性抗原8(CTLA8)と当初名付けられたが、IL−17RA(IL17Rとしても知られている)およびIL−17Cに結合するホモ二量体サイトカインである。IL−17に対する機能的受容体は、IL−17RAおよびIL−17RCのうちの一方または両方を含む多量体受容体複合体であると考えられ(例えば、IL−17RAホモ二量体、IL−17RCホモ二量体、またはIL−17RA/IL−17RCヘテロ二量体)、おそらく、第3の、今までのところ知られていないタンパク質である(Toy,D.ら(2006年)J.of Immunol.177巻1号:36〜39頁;未発表データ)。
【0013】
一態様では、本発明は、患者にIL−17アンタゴニストを投与することを含む、自己免疫性眼炎症性疾患を有する患者を治療するための方法を提供する。AOIDの存在を直接的に診断する必要はないが、患者が、推定上の自己免疫病因であるおよび/または自己免疫応答の1つまたは複数の特徴を示す、眼炎症を有することを診断により推測してもよい。特に好ましいAOIDは、自己免疫性ブドウ膜炎、例えば感染性の病因を有していないブドウ膜炎である。
【0014】
IL−17アンタゴニストは、IL−17またはIL−17RもしくはIL−17RCの発現を阻害してもよく、あるいは機能的リガンド−受容体相互作用を予防するために直接的にまたは間接的に1つまたは複数のこれらのポリペプチドと相互作用することにより、IL−17シグナリングを阻害してもよい。いくつかの好ましい実施形態では、IL−17アンタゴニストは、IL−17、IL17R、またはIL17Cのいずれかに結合し、その活性を阻害する抗体または抗体断片である。特に好ましい一実施形態では、IL−17アンタゴニストは、IL−17に特異的に結合するモノクローナル抗体である。他の好ましい実施形態では、IL−17アンタゴニストは、IL−23p19およびIL−17;IL−23p19およびIL−17RA;IL−23RおよびIL−17;またはIL−23RおよびIL−17RAに結合し、その活性を阻害する二重特異性抗体(bispecific antibody)である。他の特に好ましい実施形態では、IL−17アンタゴニストは、IL−23p19およびIL−17に結合し、その活性を阻害する二重特異性抗体である。
【0015】
いくつかの実施形態では、IL−17アンタゴニストは、特定の治療レジメンに従って投与される。例えば、一実施形態では、特定の用量のアンタゴニストは、第1の治療期間中、特定の間隔で投与され、AOIDの1つまたは複数の症状の消失の後にまたは特定の時間内に終了してもよい。好ましい実施形態では、治療レジメンは、第1の治療期間の終了と同時に始まる第2の治療期間中にIL−17アンタゴニストの用量を徐々に低下させることをさらに含み、IL−17アンタゴニストでの療法が停止されるときに終了する。第2の治療期間の持続期間は、典型的に、1カ月から12カ月、1カ月から9カ月、1カ月から6カ月、または1カ月から3カ月の間である。
【0016】
いくつかの好ましい実施形態では、特定の治療レジメンは、第1および第2の治療期間のそれぞれの間または第2の治療期間のみの間の患者へのIL−23アンタゴニストの投与をさらに含む。IL−23アンタゴニストは、サイトカイン(IL−23p19またはp40)のいずれかのサブユニット、機能的受容体(IL−23RまたはIL−12ベータ1)のいずれかのサブユニットの発現を阻害してもよく、あるいは機能的リガンド−受容体相互作用を予防するために直接的にまたは間接的に1つまたは複数のこれらのポリペプチドと相互作用することにより、IL−23シグナリングを阻害してもよい。いくつかの好ましい実施形態では、IL−23アンタゴニストは、IL−23p19またはIL−23Rのいずれかに結合し、その活性を阻害する抗体または抗体断片である。特に好ましい一実施形態では、IL−23アンタゴニストは、IL−23p19に特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0017】
IL−23アンタゴニストは、第1および第2の治療期間の一方または両方の間、特定の用量で、特定の間隔で投与されてもよい。第2の治療期間に投与されるIL−23アンタゴニストの用量は、第1の期間に投与される用量よりも低くてもよい。さらに、任意のまたは両方の治療期間において、IL−17アンタゴニストおよびIL−23アンタゴニストの用量は互いに、同一または異なっていてもよい。同様に、2つのアンタゴニストは、各治療期間中、同一または異なる間隔で投与されてもよい。第2の治療期間中、IL−17アンタゴニストの用量は低下させてもよいが、IL−23アンタゴニストの用量は一定に保たれ、または各アンタゴニストの用量は徐々に低下させてもよい。
【0018】
他の好ましい実施形態では、IL−23アンタゴニストの用量は、第2の治療レジメンの間、一定に保たれ、IL−23アンタゴニストでの療法は、第2の治療期間の終了(つまりIL−17アンタゴニストでの療法が停止されるとき)と同時に始まる第3の治療期間中、継続される。第3の治療期間中、IL−23アンタゴニストは、第2の治療期間と同一の用量および間隔で投与されてもよくまたは先の期間に使用されたよりも低い用量および/もしくは頻度の低い間隔で投与されてもよい。IL−23アンタゴニストの用量はさらに、第3の治療期間中、徐々に低下させてもよい。第3の治療期間の持続期間は、典型的に、1カ月から12カ月、1カ月から9カ月、1カ月から6カ月、または1カ月から3カ月の間である。
【0019】
さらに他の実施形態では、特定の治療レジメンは、IL−17活性にもIL−23活性にも拮抗しないが、任意のまたはすべての治療期間中、AOIDの少なくとも1つの症状またはIL−17アンタゴニストもしくはIL−23アンタゴニストの少なくとも1つの副作用を緩和することができる治療薬を投与することをさらに含む。いくつかの好ましい実施形態では、治療薬は、ブドウ膜炎の治療において効能を有することで知られているステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬(例えばNSAID)である。他の好ましい実施形態では、治療薬は、Th1応答を促進するサイトカインを標的にする。
【0020】
本発明の他の態様は、自己免疫性眼炎症性疾患に感受性であると診断される患者を予防的に治療する方法であって、患者にIL−23およびIL−17の一方または両方のアンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。この予防的方法のいくつかの好ましい実施形態では、感受性診断は、眼炎症の以前の発病を有する患者に基づく。他の好ましい実施形態では、感受性診断は、全身性自己免疫疾患を有する患者に基づく。アンタゴニストは、第1の治療期間中、特定の用量で、特定の間隔で投与されてもよく、典型的に、アンタゴニストでの療法の3カ月、6カ月、9カ月後にまたは2年後に終了する。いくつかの好ましい実施形態では、アンタゴニストの用量は、第1の治療期間の終了と同時に始まりかつ1カ月から3カ月の間の持続期間を典型的に有する第2の治療期間中、徐々に低下される。
【0021】
他の態様では、本発明は、患者にIL−23アンタゴニストを投与することを含む、自己免疫性眼炎症性疾患について患者を治療する方法を提供する。IL−23アンタゴニストは、第1の治療期間中、特定の間隔で投与されてもよく、その後、IL−23アンタゴニストがより低い用量でもしくはより頻度の低い間隔でまたは徐々に低下される用量で投与される第2の治療期間が続く。Il−23アンタゴニストでの療法は、少なくとも3〜6カ月間典型的に継続されるであろう、そして、12カ月、18カ月、または24カ月もの間、継続してもよい。
【0022】
本発明の他の態様は、患者における自己免疫性眼炎症性疾患(AOID)の治療または予防のための医薬組成物の調製のための、IL−17アンタゴニストまたはIL−23アンタゴニストの使用である。好ましい実施形態では、医薬組成物は、本明細書中に記載される任意の治療レジメンに従ってアンタゴニストを投与するためのものである。
【0023】
他の態様では、本発明は、自己免疫性眼炎症性疾患を治療するための製造された薬物製品を提供する。薬物製品は、(i)IL−17アンタゴニストを含む第1の医薬製剤;および(ii)IL−23アンタゴニストを含む第2の医薬製剤を含む。好ましい実施形態では、薬物製品は、本明細書中に記載される任意の治療レジメンに従って医薬製剤を投与するための使用説明書を含む製品情報を含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(詳細な説明)
I.定義
本発明がより容易に理解されるために、ある種の技術用語および科学用語を具体的に以下に定義する。この文書における他のところで具体的に定義されていない限り、本明細書中に使用される他のすべての技術用語および科学用語は、本明細書中での使用と類似する文脈において使用される場合に本発明が属する当分野の技術者により共通して理解されるであろう意味を有する。
【0025】
添付された請求項を含めて、本明細書中に使用されるように、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」等の単語の単数形は、文脈が明確に異なって規定していない限り、それらの対応する複数形の関連を含む。
【0026】
「アンタゴニスト」は、in vitroまたはin vivoのいずれかで、標的活性、つまりIL−17またはIL−23等のサイトカインの活性を予防する、中和する、阻害する、または低下させることができる任意の分子を意味する。サイトカインアンタゴニストは、サイトカインシグナル伝達および下流の活性を妨害するようにサイトカイン(もしくは任意のそのサブユニット)またはその機能的受容体(もしくは任意のそのサブユニット)に結合する拮抗的な抗体、ペプチド、ペプチド−模倣物(mimetic)、ポリペプチド、および低分子を含むが、これらに限定されない。ペプチドアンタゴニストおよびポリペプチドアンタゴニストの例は、その機能的受容体への結合に利用可能なサイトカインの量を低下させるか、またはサイトカインがその機能的受容体に結合するのを妨げるようにサイトカインに結合するサイトカイン受容体の切断型バージョンまたは断片(例えば可溶性細胞外ドメイン)を含む。アンタゴニストは、例えばmRNAを標的にするアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび妨害メッセンジャーRNA等の、サイトカインまたはその受容体を含む任意のサブユニットの発現を予防する分子をさらに含む(例えばArenzおよびSchepers(2003年)Naturwissenschaften
90巻:345〜359頁;SazaniおよびKole(2003年)J.Clin.Invest.112巻:481〜486頁;Pirolloら(2003年)Pharmacol.Therapeutics 99巻:55〜77頁;Wangら(2003年)Antisense Nucl.Acid Drug Devel.13巻:169〜189頁を参照されたい)。アンタゴニストの阻害効果は、慣例的な技術により測定することができる。例えば、サイトカイン誘発性活性に対する阻害効果を評価するために、サイトカインに対する機能的受容体を発現するヒト細胞をサイトカインで処理し、そのサイトカインにより活性化されるまたは阻害されることで知られている遺伝子の発現を、考えられるアンタゴニストの存在下または非存在下で測定する。本発明において有用なアンタゴニストは、適切な対照と比較した場合に、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、および最も好ましくは少なくとも90%、標的活性を阻害する。
【0027】
「抗体」は、その受容体へのリガンドの結合を阻害する等のまたは受容体のリガンド誘発性シグナリングの阻害により所望の生物活性を示す、任意の形態の抗体を指す。したがって、「抗体」は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、および多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)を特に包含するが、これらに限定されない。
【0028】
「抗体断片」および「抗体結合断片」は、抗体の抗原結合断片およびアナログを意味し、親抗体の抗原結合領域または可変領域(例えば1つまたは複数のCDR)の少なくとも一部を典型的に含む。抗体断片は、親抗体の結合特異性の少なくとも一部を保有する。典型的に、抗体断片は、活性がモルベースで表される場合、親の結合活性の少なくとも10%を保有する。好ましくは、抗体断片は、親抗体の標的に対する結合親和性の少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%、もしくは100%、またはそれ以上を保有する。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvの断片;ダイアボディ(diabody);線状抗体;一本鎖抗体分子、例えばsc−Fv;ならびに抗体断片から形成される多特異性抗体を含むが、これらに限定されない。操作された抗体変異体がHolligerおよびHudson(2005年)Nat.Biotechnol.23巻:1126〜1136頁において概説される。
【0029】
「Fab断片」は、1つの軽鎖および1つの重鎖のC1および可変領域から成る。Fab分子の重鎖は、他の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0030】
「Fc」領域は、抗体のC1ドメインおよびC2ドメインを含む2つの重鎖断片を含む。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合によりおよびCH3ドメインの疎水性相互作用によりともに保持される。
【0031】
「Fab’断片」は1つの軽鎖ならびにVドメインおよびC1ドメインならびにさらにC1ドメインおよびCドメインの間の領域も含む1つの重鎖の一部を含み、F(ab’)分子を形成するよう、鎖間ジスルフィド結合を2つのFab’断片の2つの重鎖間で形成することができる。
【0032】
「F(ab’)断片」は、2つの軽鎖およびC1ドメインおよびCドメインの間の定常領域の一部を含む2つの重鎖を含み、鎖間ジスルフィド結合は2つの重鎖間で形成される。したがって、F(ab’)断片は、2つの重鎖間のジスルフィド結合によりともに保持される2つのFab’断片から成る。
【0033】
「Fv領域」は重鎖および軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定常領域を欠く。
【0034】
「一本鎖Fv抗体(または「scFv抗体」)は、抗体のVドメインおよびVドメインを含む抗体断片を指し、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖中に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVドメインおよびVドメインの間にさらに含む。scFvの概説については、Pluckthun(1994年)THE PHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES、113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer−Verlag、New York、269〜315頁を参照されたい。国際特許出願公開第88/01649号ならびに米国特許第4,946,778号および第5,260,203号もまた参照されたい。
【0035】
「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片である。断片は、同一のポリペプチド鎖中で軽鎖可変ドメイン(V)に連結された重鎖可変ドメイン(V)を含む(V−VまたはV−V)。同一鎖上の2つのドメイン間で対形成させるには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、他の鎖の相補的ドメインと対になるよう強制され、2つの抗原結合部位を作り出す。ダイアボディは、例えば欧州特許第404,097号、国際公開第93/11161号、およびHolligerら(1993年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90巻:6444〜6448頁においてより十分に記載される。
【0036】
「ドメイン抗体断片」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含む免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片である。いくつかの例では、2つ以上のV領域がペプチドリンカーで共有結合し、二価のドメイン抗体断片を作り出す。二価のドメイン抗体断片の2つのV領域は、同一または異なる抗原を標的にしてもよい。
【0037】
自己免疫媒介性眼炎症性疾患(AOID)は、(a)炎症が、眼または周囲の組織(視神経、血管、筋肉を含む)の任意の部分に存在し、かつ(b)炎症が、IL−23およびIL−17の一方もしくは両方を必要とする、またはそれにより促進される免疫応答の一部分である、任意の疾患または状態を意味する。感染性の病因を有していない眼内炎症はAOIDと典型的に考えられる。AOIDの非限定的な例を以下に記載する。
【0038】
バードショット網脈絡膜疾患(Birdshot retinochoriodopathy)(BSRC):眼の後方(後部)部分に主に影響する慢性眼内炎症性疾患。BSRCは、HLA−A29.2抗原と強力な関連を有する、後部ブドウ膜炎の他の形態とは別である。その病因は、知られていないままである。自己免疫機構は、おそらく、重要な病原性の役割を果たすだろう。
【0039】
眼瘢痕性類天疱瘡(OCP):全身性自己免疫疾患。増える証拠により免疫調節機能障害の概念が支持される:抗体は、結膜および重層扁平上皮に由来する他の粘膜ならびに時折皮膚の基底膜帯(BMZ)に対して指向性である。OCPは、免疫抑制を有する治療を一般に必要とする、視覚を脅かす疾病である。
【0040】
角膜炎、辺縁潰瘍性角膜炎:角膜炎は、眼の外側の被膜の前部の大部分を形成する、外側の透明でドーム状の構造である角膜の炎症である。潰瘍が辺縁角膜で発症する場合、辺縁潰瘍性角膜炎と呼ばれる。
【0041】
「交感性眼炎」は、傷害を与えられた眼から放出された抗原に対する自己免疫応答により明らかに、一方の眼に対する外傷が、後に、他方の(「被交感」)眼における破壊性炎症を突然引き起こすAOIDである。
【0042】
フォークト−小柳 原田(VKH):かつてはブドウ膜髄膜炎症候群として知られていたフォークト−小柳−原田症候群(VKH)は、眼系、聴覚系、神経系、および外皮(皮膚)系を含む複数の器官系に影響を及ぼす全身性障害である。網膜下の液体蓄積に関連する重篤な両側汎ブドウ膜炎は眼VKHの特徴である。
【0043】
フックス虹彩異色性虹彩毛様体炎:一方の眼の色が他方と異なっている状態である虹彩異色症により特徴づけられる慢性片側前部ブドウ膜炎。ブドウ膜炎は、若年成人のより明るい色をした眼に典型的に発生する。
【0044】
「結合化合物」は、分子、低分子、巨大分子、抗体、それらの断片もしくはアナログ、または特定の標的に結合することができる可溶性受容体を指す。「結合化合物」は、特定の標的に結合することができる次のもののいずれかをさらに指してもよい:分子の複合体(例えば非共有結合分子複合体);イオン化分子;および共有結合的または非共有結合的に修飾された分子(例えば、リン酸化、アシル化、架橋、環化、または限定切断により修飾される)。結合化合物を溶液中に溶解または懸濁することができる場合に、「結合」は、会合が結合化合物の通常のブラウン運動の低下をもたらす、標的との結合化合物の会合として定義されてもよい。
【0045】
「結合組成物」は、安定剤、賦形剤、塩、緩衝液、溶媒、または添加剤等の少なくとも1つの他の物質と組み合わせた結合化合物を指す。
【0046】
「二重特異性抗体」は、同一の抗原上または2つの異なる抗原上にあってもよい2つの異なるエピトープに対する特異性を有する2つの抗原結合部位を有する抗体を意味する。二重特異性抗体は二重特異性抗体断片を含む。例えばHollingerら(1993年)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90巻:6444〜48頁、Gruberら、J.Immunol.152巻:5368頁(1994年)を参照されたい。
【0047】
明細書および請求項にわたり使用される、「〜から本質的に成る(consists essentially of)」および「〜から本質的に成る(consist essentially of)」または「〜から本質的に成る(consisting essentially of)」等の変形は、任意の記載される要素または群の要素の包含および特定の投与レジメン、方法、または組成物の基本的または新規な特性を著しく変化させない、記載される要素と類似するまたは異なる性質の他の要素の随意の包含を示す。非限定的な例として、記載されるアミノ酸配列から本質的に成るサイトカインは、サイトカインの特性に著しく影響しない1つまたは複数のアミノ酸をさらに含んでいてもよい。
【0048】
「インターロイキン−12Rベータ1」または「IL12RB1」は、NCBIタンパク質配列データベース受入番号NP714912、NP005526、またはそれらの自然発生変異体において記載されるヒトIL12RB1の成熟形態の配列から本質的に成る単一ポリペプチド鎖を意味する。
【0049】
「インターロイキン−17」(または「IL−17」)は、1つまたは2つのポリペプチド鎖から成るタンパク質を意味し、各鎖は、NCBIタンパク質配列データベース受入番号NP002181、AAH67505、AAH67503、AAH67504、AAH66251、AAH66252、またはそれらの自然発生変異体のいずれかに記載されるヒトIL17Aの成熟形態の配列から本質的に成る。
【0050】
「IL−17R」または「IL−17RA」は、国際公開第96/29408号またはNCBIタンパク質配列データベース受入番号:NP055154、Q96F46、CAJ86450、もしくはこれらの配列の自然発生変異体のいずれかに記載されるヒトIL−17RAの成熟形態の配列から本質的に成る単一ポリペプチド鎖を意味する。
【0051】
「IL−17RC」は、国際公開第238764A2号またはNCBIタンパク質配列データベース受入番号NP703191、NP703190、およびNP116121のいずれかもしくはこれらの配列の自然発生変異体に記載されるヒトIL−17RCの成熟形態の配列から本質的に成る単一ポリペプチド鎖を意味する。
【0052】
「インターロイキン−23(または「IL−23)は、2つのポリペプチド鎖から成るタンパク質を意味する。一方の鎖は、NCBIタンパク質配列データベース受入番号NP057668、AAH67511、AAH66267、AAH66268、AAH66269、AAH667512、AAH67513、またはこれらの配列の自然発生変異体のいずれかに記載されるヒトIL23、サブユニットp19(IL23Aとしても知られている)の成熟形態の配列から本質的に成る。他方の鎖は、NCBIタンパク質配列データベース受入番号NP002178、P29460、AAG32620、AAH74723、AAH67502、AAH67499、AAH67498、AAH67501、またはこれらの配列の自然発生変異体のいずれかに記載されるヒトIL12、サブユニットp40(IL12BおよびIL23、サブユニットp40としても知られている)の成熟形態の配列から本質的に成る。
【0053】
「インターロイキン−23R」または「IL−23R」は、NCBIタンパク質配列データベース受入番号NP653302またはその自然発生変異体に記載されるヒトIL23Rの成熟形態の配列から本質的に成る単一ポリペプチド鎖を意味する。
【0054】
「mAb」の「モノクローナル抗体」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体を意味し、任意の特定の方法による抗体の生産を必要とするとして解釈されないものとする。
【0055】
「非経口投与」は、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射を意味する。
【0056】
「低分子」は、10kD未満、典型的に2kD未満、および好ましくは1kD未満である分子量を有する分子を意味する。低分子は、無機分子、有機分子、無機成分を含む有機分子、放射性原子を含む分子、合成分子、ペプチド模倣物、および抗体模倣物を含むが、これらに限定されない。抗体およびサイトカインのペプチド模倣物は当技術分野で知られている。例えば、Cassetら(2003年)Biochem.Biophys.Res.Commun.307巻:198〜205頁;Muyldermans(2001年)J.Biotechnol.74巻:277〜302頁;Li(2000年)Nat.Biotechnol.18巻:1251〜1256頁;Apostolopoulosら(2002年)Curr.Med.Chem.9巻:411〜420頁;Monfardiniら(2002年)Curr.Pharm.Des.8巻:2185〜2199頁;Dominguesら(1999年)Nat.Struct.Biol.6巻:652〜656頁;SatoおよびSone(2003年)Biochem.J.371巻:603〜608頁;Stewartらに発行された米国特許第6,326,482号を参照されたい。
【0057】
「特異的な」または「特異的に」は、サイトカインおよびその受容体、ならびに抗体およびその抗原またはエピトープ等の結合対のメンバー間での結合相互作用に関する場合、タンパク質および他の生物物質の不均一な集団における結合対の一方のメンバーの存在を決定する結合反応を示す。したがって、指定された状態の下で、結合対の一方のメンバーは、結合対の他方のメンバーに対して、無関係のタンパク質に対してよりも非常に高い親和性を有する。例えば、抗体が、異なるタンパク質に対するその親和性よりも少なくとも10倍および好ましくは50倍高い親和性を有する特定のタンパク質に結合する場合、抗体は、そのタンパク質に対して特異的であると考えられる。特定のエピトープを含むタンパク質に「特異的に結合する」抗体は、そのエピトープを含まないタンパク質に対して、いかなる測定可能な程度にも結合しない。好ましくは、標的タンパク質に対して特異的な抗体は、例えばスキャチャード解析により決定されるように、約10リットル/molよりも高い標的タンパク質に対する親和性を有するであろう(Munsenら(1980年)Analyt.Biochern.107巻:220〜239頁)。
【0058】
「治療する」または「治療すること」は、本明細書中に記載されるIL−17アンタゴニストおよびIL−23アンタゴニストのいずれかを含む組成物等の治療薬を、治療薬を必要とする患者に内部的にまたは外部的に投与することを意味する。典型的に、治療薬は、1つもしくは複数の疾患症状または異なる治療薬での治療の1つもしくは複数の有害作用を、上記症状または有害作用の発症の予防、後退の誘発、または進行の阻害により、任意の臨床的に測定可能な程度まで予防するまたは緩和するのに有効な量で投与される。任意の特定の疾患症状または有害作用を緩和するのに有効である治療薬の量(「治療的有効量」とも呼ばれる)は、患者の疾患状態、年齢、および体重ならびに患者における所望の応答を誘起する治療薬の性能等の因子に従って変動してもよい。疾患症状または有害作用が緩和されたかどうかは、その症状または有害作用の重症度または進行ステータスを評価するために医師または他の熟練した健康管理提供者により典型的に使用される任意の臨床的測定法により評価することができる。治療薬が、活動性疾患を有する患者に投与される場合、治療的有効量は、少なくとも5%、少なくとも10%、より一般に少なくとも20%、最も一般に少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%、理想的に少なくとも70%、より理想的に少なくとも80%、および最も理想的に少なくとも90%、測定された症状の低下を典型的にもたらすであろう。本発明(例えば治療方法または製品)の実施形態は、すべての患者における標的疾患症状または有害作用を予防するまたは緩和するのに有効ではない可能性があるが、実施形態は、スチューデントのt検定、カイ二乗検定、マンホイットニーのU検定、クラスカル−ワリス検定(H−検定)、ヨンクヒール−タプストラ検定、およびウィルコクソン検定等の当技術分野で知られている任意の統計的検定により決定される統計的に有意な数の患者において上記症状または効果を緩和するはずである。
【0059】
ブドウ膜炎は、ブドウ膜を構成する、眼の3つの部分の1つまたは複数に影響する炎症を意味する:虹彩(眼の色のついた部分)、毛様体(虹彩の後ろ、眼内部の液体の製造を担う)、および脈絡膜(網膜の真下の血管内層組織)。汎ブドウ膜炎は、同一の眼の複数の部分(前部、中間部、および後部セクション)における炎症の存在を表す。
【0060】
ブドウ膜炎は、急性または慢性となり得る。慢性形態は、強直性脊椎炎、ベーチェット症候群、炎症性腸疾患、若年性関節リウマチ、ライター症候群、ザルコイドーシス、梅毒、結核、およびライム病を含む全身性障害と関連することがより多い。
【0061】
眼の前方部分における炎症を含む前部ブドウ膜炎はブドウ膜炎の最も共通した形態である。炎症は、虹彩に一般に単独である;したがって、前部ブドウ膜炎は虹彩炎と称されることが多い。何人かの患者では、前部ブドウ膜炎は、関節リウマチまたは強直性脊椎炎等の自己免疫疾患の存在と関連する可能性があるが、その他の場合では、前部ブドウ膜炎のほとんどの症例は健常な人々において発生し、根底にある全身性疾患を示さない。このOIDは、一方の眼のみに影響する可能性があり、若年および中年の人々において最も共通している。自己免疫疾患の既往歴は危険因子である。前部ブドウ膜炎のほとんどの攻撃は、治療を有する数日から数週間まで持続するが、共通して再発する。
【0062】
中間部ブドウ膜炎は、前部セグメントまたは脈絡網膜の炎症徴候が最小限であるか、または全くない、前部の硝子体、辺縁網膜、および毛様体に主に影響を及ぼす特発性炎症性症候群を表す。
【0063】
扁平部炎は、虹彩および脈絡膜の間の狭いエリアである扁平部の炎症である。扁平部炎は一般に若年男性において発生し、いかなる他の疾患とも一般に関連しない。しかしながら、クローン病との関連の少数の症例報告があった、そして何人かの専門家は、多発性硬化症と関連する可能性があると示唆する。この理由で、これらの専門家は、扁平部炎と診断された25歳を超える患者が脳および脊椎のMRIを受けることを勧めている。
【0064】
後部ブドウ膜炎は、ブドウ膜の後方部に影響し、脈絡膜に主に影響を及ぼしている。これは脈絡膜炎と称される。後部ブドウ膜炎は、網膜の下に横たわる血管の層、加えて一般に網膜の炎症により特徴づけられる。隣接した網膜もまた影響を及ぼされている場合、状態は、脈絡網膜炎と典型的に称される。後部ブドウ膜炎は全身感染を伴うまたは自己免疫疾患と関連して発生する可能性がある。後部ブドウ膜炎では、炎症は数カ月から数年まで持続する可能性があり、治療を用いても、永久的な視覚損傷を引き起こす可能性がある。
【0065】
II.総論
本発明は、自己免疫性眼炎症性疾患を治療するためにIL−17活性およびIL−23活性のアンタゴニストを使用する方法を提供する。
【0066】
IL17活性は、Kolls,J.ら(2004年)Immunity 21巻、467〜476頁に概説されるが、局所的エリアにおける好中球の蓄積を促進することおよび好中球の活性化を含む。IL17は、以下の炎症誘発性の好中球動員性サイトカインのいずれかの生産を、細胞型に依存して誘発するまたは促進することができる:IL−6、MCP−1、CXCL8(IL−8)、CXCL1、CXCL6、TNFα、IL−1β、G−CSF、GM−CSF、MMP−1、およびMMP−13。
【0067】
IL−23活性は、記憶T細胞、PHA芽細胞、CD45RO T細胞、CD45RO
T細胞の増殖を誘発すること;およびPHA芽細胞またはCD45RO T細胞によるインターフェロン−ガンマ(IFNγ)の生産を増強することを含む。IL−12とは対照的に、IL−23は、ヒトおよびマウスの両方において、ナイーブT細胞集団とは対照的な記憶T細胞集団を優先的に刺激する。IL−23は、多くの細胞内細胞シグナリング分子(例えばJak2、Tyk2、Stat1、Stat2、Stat3、およびStat4)を活性化する。IL−12は、分子のこの同一の群を活性化するが、IL−23に対するStat4応答は比較的弱く、一方、IL−12に対するStat4応答は強い(Oppmannら、前掲;Parhamら(2002年)J.Immunol.168巻:5699〜5708頁)。IL−23はまた、Th17細胞としても知られているIL−17産生細胞の維持および増殖に関係した(CuaおよびKastelein(2006年)Nature Immunology 7巻:557〜559頁を参照されたい)。
【0068】
本発明に有用なアンタゴニストは、IL−17またはIL−23に対する機能的受容体の細胞外ドメインを含む可溶性受容体を含む。可溶性受容体は、標準的方法に従って調製し、使用することができる(例えばJonesら(2002年)Biochim.Biophys.Acta 1592巻:251〜263頁;Prudhommeら(2001年)Expert Opinion Biol.Ther.1巻:359〜373頁;Fernandez−Botran(1999年)Crit.Rev.Clin.Lab Sci.36巻:165〜224頁を参照されたい)。
【0069】
本発明での使用のための好ましいIL−17アンタゴニストは、IL−17、IL−17RA、IL−17RC、ならびにIL−17RAおよびIL−17RCを含むヘテロマー複合体のいずれかに特異的に結合し、その活性を阻害する抗体である。より好ましくは、IL−17アンタゴニストの標的はIL−17またはIL−17RAである。特に好ましい1L−17アンタゴニストは、IL−17に特異的に結合し、その活性を阻害する。
【0070】
本発明での使用のための他の好ましいIL−17アンタゴニストは、二重特異性抗体または二重特異性抗体断片であり、IL−23活性にさらに拮抗する。上記二特異性アンタゴニストは、以下の組合せのいずれかの各メンバーに特異的に結合し、その活性を阻害する:IL−17およびIL−23;IL−17およびIL−23p19;IL−17およびIL−12p40;IL−17およびIL−23R/IL12RB1複合体;IL−17およびIL−23R;IL−17およびIL12RB1;IL17RAおよびIL−23;IL−17RAおよびIL−23p19;IL−17RAおよびIL−12p40;IL−17RAおよびIL−23R/IL12RB1複合体;IL−17RAおよびIL−23R;IL−17RAおよびIL12RB1;IL17RCおよびIL−23;IL−17RCおよびIL−23p19;IL−17RCおよびIL−12p40;IL−17RCおよびIL−23R/IL12RB1複合体;IL−17RCおよびIL−23R;IL−17RCおよびIL12RB1;IL−17RA/IL−17RC複合体およびIL−23;IL−17RA/IL−17RC複合体およびIL−23p19;IL−17RA/IL−17RC複合体およびIL−12p40;IL−17RA/IL−17RC複合体およびIL−23R/IL12RB1複合体;IL−17RA/IL−17RC複合体およびIL−23R;ならびにIL−17RA/IL−17RC複合体およびIL12RB1。本発明で使用される二重特異性抗体により標的にされる好ましい組合せは次のとおりである:IL−17およびIL−23;IL−17およびIL−23p19;IL17RAおよびIL−23;ならびにIL−17RAおよびIL−23p19。特に好ましい二重特異性抗体は、IL−17およびIL−23p19のそれぞれに特異的に結合し、その活性を阻害する。
【0071】
好ましいIL−23アンタゴニストは、IL−23、IL−23p19、IL−12p40、IL23R、IL12RB1、およびIL−23R/IL12RB1複合体のいずれかに結合し、その活性を阻害する抗体である。他の好ましいIL−23アンタゴニストは、IL−23Rの細胞外ドメイン、例えばGenBank AAM44229のアミノ酸1〜353またはその断片から本質的に成るIL−23結合ポリペプチドである。
【0072】
本発明における使用のための抗体アンタゴニストは、抗体を調製するための、当技術分野で知られている任意の方法により調製されてもよい。モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびヒト化抗体の調製は、SheperdおよびDean(編)(2000年)Monoclonal Antibodies、Oxford Univ.Press、New York、NY;KontermannおよびDubel(編)(2001年)Antibody Engineering、Springer−Verlag、New York;HarlowおよびLane(1988年)Antibodies A
Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、139〜243頁;Carpenterら(2000年)J.Immunol.165巻:6205頁;Heら(1998年)J.Immunol.160巻:1029頁;Tangら(1999年)J.Biol.Chem.274巻:27371〜27378頁;Bacaら(1997年)J.Biol.Chem.272巻:10678〜10684頁;Chothiaら(1989年)Nature 342巻:877〜883頁;FooteおよびWinter(1992年)J.Mol.Biol.224巻:487〜499頁;およびVasquezらに発行された米国特許第6,329,511号中に記載される。
【0073】
所望の標的の任意の抗原形態は抗体を産生するために使用することができ、抗体は、所望の拮抗活性を有する抗体についてスクリーニングすることができる。したがって、誘起抗原は、単一のエピトープもしくは複数のエピトープを含むペプチドであってもよく、または誘発抗原は、完全なタンパク質のみであってもよくもしくは当技術分野で知られている1つもしくは複数の免疫原性増強剤と組み合わせてもよい。抗原ペプチドの免疫原性を改善するために、ペプチドは担体タンパク質に結合体化してもよい。抗原はまた、単離完全長タンパク質、細胞表面タンパク質(例えば抗原の少なくとも一部を移入された細胞で免疫化する)、または可溶性タンパク質(例えばタンパク質の細胞外ドメイン部のみで免疫化する)であってもよい。抗原は、遺伝的に修飾された細胞により発現されてもよく、抗原をコードするDNAは、ゲノムまたは非ゲノムである(例えばプラスミド上)。
【0074】
予測される高度な抗原性の領域から本質的に成るペプチドは、抗体産生に使用することができる。例えば、Vector NTI(登録商標)スイート(Informax社、ベセスダ、MD)を使用したパーカープロットでの解析により決定されるように、ヒトp19の高度な抗原性の領域は、GenBank AAQ89442(gi:37183284)のアミノ酸16〜28;57〜87;110〜114;136〜154;および182〜186で発生し、ヒトIL−23Rの高度な抗原性の領域は、GenBank AAM44229(gi:21239252)のアミノ酸22〜33;57〜63;68〜74;101〜112;117〜133;164〜177;244〜264;294〜302;315〜326;347〜354;444〜473;510〜530;および554〜558で発生する。
【0075】
免疫化の任意の適切な方法を使用することができる。上記方法は、アジュバント、他の免疫刺激剤、反復追加免疫の使用および1つまたは複数の免疫化経路の使用を含むことができる。免疫化はまた、DNAベクター免疫化により実行することもでき、例えばWangら(1997年)Virology 228巻:278〜284頁を参照されたい。あるいは、動物は、興味のある抗原を有する細胞で免疫化することができ、精製抗原での免疫化よりも優れた抗体産生を提供する可能性がある(Kaithamanaら(1999年)J.Immunol.163巻:5157〜5164頁)。
【0076】
好ましい抗体アンタゴニストはモノクローナル抗体であり、当業者によく知られている様々な技術により得られてもよい。モノクローナル抗体を産生する方法は、一般に、Stitesら(編)BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY(第4版)Lange Medical Publications、Los Altos、CAおよびそこに引用された参考文献;HarlowおよびLane(1988年)ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL CSH Press;Goding(1986年)MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE(第2版)Academic Press、New York、NY中に記載される。典型的に、免疫化された哺乳動物宿主から単離された脾細胞は、ハイブリドーマを生産するために、一般に骨髄腫細胞との融合により不死化される。KohlerおよびMilstein(1976年)Eur.J.Immunol.6巻:511〜519頁;Meyaardら(1997年)Immunity 7巻:283〜290頁;Wrightら(2000年)Immunity 13巻:233〜242頁;Prestonら(1997年)Eur.J.Immunol.27巻:1911〜1918頁を参照されたい。不死化の代替方法は、エプスタインバーウイルス、癌遺伝子、もしくはレトロウイルスでの形質転換、または当技術分野で知られている他の方法を含む。例えばDoyleら(1994年刊行および定期増刊)CELL AND TISSUE CULTURE:LABORATORY PROCEDURES、John Wiley and Sons、New York、NYを参照されたい。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、適切な結合アッセイおよびバイオアッセイを使用して、所望の特異性、親和性、および阻害活性の抗体の生産についてスクリーニングされる。例えば、抗体の標的への結合特性は、例えば表面プラズモン共鳴により(Karlssonら(1991年)J.Immunol.Methods 145巻:229〜240頁;Neriら(1997年)Nat.Biotechnol.15巻:1271〜1275頁;Jonssonら(1991年)Biotechniques 11巻:620〜627頁)または競合ELISA(Friguetら(1985年)J.Immunol.Methods 77巻:305〜319頁;Hubble(1997年)Immunol.Today 18巻:305〜306頁)により測定することができる。
【0077】
あるいは、ヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体またはその結合断片をコードするDNA配列を単離してもよい。例えばHuseら(1989年)Science 246巻:1275〜1281頁を参照されたい。他の適切な技術は、ファージ抗体ディスプレイライブラリーのスクリーニングを含む。例えばHuseら、Science 246巻:1275〜1281頁(1989年);およびWardら、Nature 341巻:544〜546頁(1989年);Clacksonら(1991年)Nature 352巻:624〜628頁およびMarksら(1991年)J.Mol.Biol.222巻:581〜597頁;Presta(2005年)J.Allergy Clin.Immunol.116巻:731頁を参照されたい。
【0078】
本発明での使用のための好ましいモノクローナル抗体は、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)であり、可変ドメインは、ラットまたはマウス等の実験的哺乳類動物において産生された親抗体からのものであり、定常ドメインはヒト抗体から得られ、結果としてのキメラ抗体は、ヒト対象における有害な免疫応答を親の哺乳類抗体ほど誘起しないであろう。より好ましくは、本発明で使用されるモノクローナル抗体は「ヒト化抗体」であり、可変ドメインにおける超可変ループ(例えば相補性決定領域またはCDR)のすべてまたは実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに相当し、可変ドメインにおけるフレームワーク(FR)領域のすべてまたは実質的にすべてはヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である。本発明での使用のための特に好ましいモノクローナル抗体は「完全ヒト抗体」、例えばヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体である。完全ヒト抗体は、抗体が生産される細胞種からの糖鎖を含んでいてもよく、例えば、マウスにおいて、マウス細胞において、またはマウス細胞に由来するハイブリドーマにおいて生産される場合、完全ヒト抗体はマウス糖鎖を典型的に含むであろう。
【0079】
本発明で使用されるモノクローナル抗体は、ラクダ化単一ドメイン抗体をさらに含んでいてもよい。例えばMuyldermansら(2001年)Trends Biochem.Sci.26巻:230頁;Reichmannら(1999年)J.Immunol.Methods 231巻:25頁;国際公開第94/04678号;国際公開第94/25591号;米国特許第6,005,079号を参照されたい。
【0080】
本発明で使用される拮抗的な抗体は、エフェクター機能の変更を実現するために修飾された(またはブロックされた)Fc領域を有していてもよい。例えば、米国特許第5,624,821号、国際公開第2003/086310号、国際公開第2005/120571号、国際公開第2006/0057702号を参照されたい。Fc領域の変更は、アミノ酸の変更(置換、欠失、および挿入)、グリコシル化または脱グリコシル、ならびに複数のFcの追加を含む。Fcの変化により、治療抗体の半減期を変更させることができ、それほど頻繁ではない投薬、したがって利便性の上昇および物質の使用の減少を可能にする。Presta(2005年)J.Allergy Clin.Immunol.116巻:731頁、734〜35頁を参照されたい。
【0081】
抗体はまた、保管中の抗体の安定性を改善するまたはin vivoでの抗体の半減期を上昇させるために分子に結合体化(例えば共有結合的に連結)してもよい。半減期を上昇させる分子の例は、アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)およびポリエチレングリコール(PEG)である。抗体のアルブミン連結型誘導体およびPEG化誘導体は、当技術分野でよく知られている技術を使用して調製することができる。例えば、Chapman,A.P.(2002年)Adv.Drug Deliv.Rev.54巻:531〜545頁;AndersonおよびTomasi(1988年)J.Immunol.Methods 109巻:37〜42頁;Suzukiら(1984年)Biochim.Biophys.Acta 788巻:248〜255頁;ならびにBrekkeおよびSandlie(2003年)Nature Rev.2巻:52〜62頁を参照されたい。
【0082】
IL−17活性およびIL−23活性の両方に拮抗する二重特異性抗体は、当技術分野で知られている任意の技術により生産することができる。例えば、二重特異性抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現を使用して組換えで生産することができる。例えばMilsteinら(1983年)Nature 305巻:537〜39頁を参照されたい。あるいは、二重特異性抗体は、化学的連結を使用して調製することができる。例えばBrennanら(1985年)Science 229巻:81頁を参照されたい。これらの二機能性抗体はまた、ジスルフィド交換、ハイブリッド−ハイブリドーマ(クアドローマ(quadroma))の生産により、二重特異性抗体を包含する単一ポリペプチド鎖を生産するための転写および翻訳または二重特異性抗体を生産するために共有結合的に関連し得る複数のポリペプチド鎖を生産するための転写および翻訳により、調製することもできる。企図される二重特異性抗体はまた化学合成により完全に作製することもできる。二重特異性抗体は、2つの異なる可変領域、2つの異なる定常領域、1つの可変領域および1つの定常領域、または他の変形を含んでいてもよい。
【0083】
本発明で使用される抗体は、一般に少なくとも約10−3M、より一般に少なくとも10−6M、典型的に少なくとも10−7M、より典型的に少なくとも10−8M、好ましくは少なくとも約10−9M、より好ましくは少なくとも10−10M、そして最も好ましくは少なくとも10−11MのKで結合するであろう(例えばPrestaら(2001年)Thromb.Haemost.85巻:379〜389頁;Yangら(2001年)Crit.Rev.Oncol.Hematol.38巻:17〜23頁;Carnahanら(2003年)Clin.Cancer Res.(Suppl.)9巻:3982s〜3990s頁を参照されたい)。
【0084】
IL−17アンタゴニストおよびIL−23アンタゴニストは、医薬組成物として患者に典型的に投与され、アンタゴニストは、薬学的に許容し得る担体または賦形剤と混合される。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Phannacopeia:National Formulary、Mack Publishing Company、Easton、PA(1984年)を参照されたい。医薬組成物は、意図した投与の経路に適切な任意の方法で調合されてもよい。医薬製剤の例は、凍結乾燥散剤、スラリー、水溶性液剤、懸濁剤、および徐放性製剤を含む(例えばHardmanら(2001年)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、McGraw−Hill、New York、NY;Gennaro(2000年)Remington:The Science and Practice
of Pharmacy、Lippincott、Williams,and Wilkins、New York、NY;Avisら(編)(1993年)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems、Marcel Dekker、NY;WeinerおよびKotkoskie(2000年)Excipient Toxicity and Safety、Marcel Dekker,Inc.、New York、NYを参照されたい)。
【0085】
投与の経路は、アンタゴニストまたは医薬組成物中に使用される他の治療薬の特性に依存するであろう。可能性として考えられる投与経路は、塗布具または点眼器等の当技術分野において知られている眼の送達系を使用して、軟膏剤、ゲル、または滴剤の形態で、局所に、眼に、医薬組成物を投与するためのものである。あるいは、医薬組成物は、眼の結膜の下に配置されるポリマー移植片を介してまたは直接的に眼への注射によって眼内に投与されてもよい。好ましくは、IL−17アンタゴニストおよびIL−23アンタゴニストを含む医薬組成物は、経口摂取、注射、もしくは注入により、静脈内経路、腹腔内経路、脳内経路、筋肉内経路、眼内経路、動脈内経路、脳脊髄内経路、病変内経路、もしくは肺経路により、または移植片等の徐放性系により全身に投与される。中枢神経系への遺伝子導入ベクターの注射もまた記載された(例えば、Cuaら(2001年)J.Immunol.166巻:602〜608頁;Sidmanら(1983年)Biopolymers 22巻:547〜556頁;Langerら(1981年)J.Biomed.Mater.Res.15巻:167〜277頁;Langer(1982年)Chem.Tech.12巻:98〜105頁;Epsteinら(1985年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82巻:3688〜3692頁;Hwangら(1980年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77巻:4030〜4034頁;米国特許第6,350466号および第6,316,024号を参照されたい)。
【0086】
本発明で使用される医薬組成物は、AOIDの1つまたは複数の症状を寛解させるまたは予防する任意の治療レジメンに従って投与されてもよい。治療レジメンの選択は、アンタゴニストの半減期、患者の症状の重症度、および任意の有害作用の種類または長さを含むが、これらに限定されないいくつかの組成物依存性の因子および患者依存性の因子に依存するであろう。好ましくは、投与レジメンは、許容し得るレベルの副作用を損なわずに、患者に送達される治療薬の量を最大にする。治療抗体および低分子の適正な用量の選択におけるガイダンスが利用可能である(例えばWawrzynczak(1996年)Antibody Therapy、Bios Scientific Pub.Ltd、Oxfordshire、UK;Kresina(編)(1991年)Monoclonal Antibodies、Cytokines and Arthritis、Marcel Dekker、New York、NY;Bach(編)(1993年)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases、Marcel Dekker、New
York、NY;Baertら(2003年)New Engl.J.Med.348巻:601〜608頁;Milgromら(1999年)New Engl.J.Med.341巻:1966〜1973頁;Slamonら(2001年)New Engl.J.Med.344巻:783〜792頁;Beniaminovitzら(2000年)New Engl.J.Med.342巻:613〜619頁;Ghoshら(2003年)New Engl.J.Med.348巻:24〜32頁;Lipskyら(2000年)New Engl.J.Med.343巻:1594〜1602頁を参照されたい)。
【0087】
抗体等の生物学的アンタゴニストは、継続的注入によりあるいは例えば、1日当たり1回、1週間当たり1回、もしくは1週間当たり2〜7回、隔週に1回、または1カ月当たり1回の間隔での用量により提供されてもよい。抗体の毎週の合計用量は、一般に少なくとも0.05μg/体重kg、より一般に少なくとも0.2μg/kg、最も一般に少なくとも0.5μg/kg、典型的に少なくとも1μg/kg、より典型的に少なくとも10μg/kg、最も典型的に少なくとも100μg/kg、好ましくは少なくとも0.2mg/kg、より好ましくは少なくとも1.0mg/kg、最も好ましくは少なくとも2.0mg/kg、最適に少なくとも10mg/kg、より最適に少なくとも25mg/kg、および最も最適に少なくとも50mg/kgである(例えばYangら(2003年)New Engl.J.Med.349巻:427〜434頁;Heroldら(2002年)New Engl.J.Med.346巻:1692〜1698頁;Liuら(1999年)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67巻:451〜456頁;Portieljiら(20003年)Cancer Immunol.Immunother.52巻:133〜144頁を参照されたい)。治療低分子、例えばペプチド模倣物、天然産物、有機化学物質の所望の用量は、モル/kgベースで、抗体またはポリペプチドとほぼ同一である。適正な用量の決定は、例えば、当技術分野で治療に影響することで知られているもしくは疑われているまたは治療に影響することが予測されるパラメーターまたは因子を使用して臨床医によりなされる。一般に、開始用量は、最適用量よりも多少少ない量であり、その後、任意の負の副作用に関連して、所望のまたは最適な効果が達成されるまで、用量を少量の増分ずつ上昇させる。
【0088】
IL−17アンタゴニストまたはIL−23アンタゴニストを使用する治療レジメンは、治療する医師により典型的に決定されるであろう、そして、患者の年齢、病歴、疾患症状、ならびに異なる種類の薬物療法および投薬レジメンに対する耐性を考慮に入れるであろう。一般に、治療レジメンは、過度に攻撃的な免疫系を抑制するために設計され、体が体自体を最終的に再調節することを可能にし、結果として、患者が不適正な免疫応答を抑制するために有限時間(例えば1年)全身性薬物療法を続けた後、次いで、薬物療法は、次第に減らされ、自己免疫攻撃の回帰を伴わないで停止させることができることが多い。時に、攻撃の再開が発生し、その場合には、患者は再治療されなければならない。
【0089】
したがって、いくつかの症例では、医師は、ある一定の用量のアンタゴニストを、処方期間にわたり利用するよう患者に処方してもよく、その後、アンタゴニストでの療法は中止される。好ましくは、疾患の1つまたは複数の急性症状が消失した最初の治療期間の後に、医師は、いくらかの時間、作用薬療法を継続し、投与されるアンタゴニストの量および/または頻度は、治療が停止される前に、徐々に低下させられるであろう。
【0090】
本発明は、IL−17アンタゴニストがIL−23アンタゴニストと組み合わせて使用される治療レジメンをさらに企図する。上記レジメンは、AOIDの急性期に治療するのに特に有用であってもよく、IL−17アンタゴニストは、既存のTh17細胞の活性を阻害し、一方、IL−23アンタゴニストは新しいTh17細胞の産生を予防する。上記組合せ療法は、より低用量のIL−17アンタゴニストを使用しておよび/またはIL−17アンタゴニストをより短時間投与してAOIDの有効な治療を提供してもよい。症状が寛解すると、IL−17アンタゴニストでの療法は好ましくは中止され、一方、IL−23アンタゴニストの投与は、疾患の回帰につながり得る新しい自己反応性Th17細胞の産生を予防するために継続される。2つのアンタゴニストは、単一の組成物または個別の組成物において同時に投与されてもよい。あるいは、2つのアンタゴニストは、交互に個別の間隔で投与されてもよい。異なる用量のアンタゴニストもまた使用してもよい。同様に、二特異性アンタゴニストもまた急性期中に投与されて、徐々に休薬されてもよく、その後、疾患の阻止を維持するためのIL−23アンタゴニストでの治療が続いてもよい。
【0091】
治療レジメンは、AOIDの1つまたは複数の症状を寛解させるためにまたはアンタゴニスト療法からの有害作用を予防するもしくは寛解させるために他の治療薬の使用をさらに含んでいてもよい。AOID症状を治療するために使用された治療薬の例は、ステロイド類および他の抗炎症剤である。上記療法の例は、デキサメタゾン、フルオロメトロン、およびプレドニゾロン等のステロイド類ならびにインドメタシン、アスピリン、フルルビプロフェン、およびジクロフェナク等の非ステロイド性抗炎症剤、代謝拮抗薬(例えばメトトレキサート、アザチオプリン)、転写因子の阻害剤(例えばシクロスポリン、タクロリムス)、ならびにDNA架橋薬(例えばシクロホスファミド、クロラムブチル)を含むが、これらに限定されない。サイトカインおよびそれらの受容体に対して指向性である新しい因子は、それらの多くがシグナリング経路ではなく重要なTh1サイトカインを阻害することにより作用し、ブドウ膜炎を有する患者の治療に使用され始めている。これらは、インフリキシマブ(Remicade(登録商標)、Centocor社、マルバーン、PA)、エタネルセプト(Enbrel(登録商標)、Amgen社、サウサンドオークス、CA)、およびアダリムマブ(Humira(登録商標)、Abbott Laboratories社、アボットパーク、IL)等のTNF阻害剤ならびにダクリズマブ(Zenapax(登録商標)、Roche Laboratories社、ナトリー、NJ)およびバシリキシマブ(Simulect(登録商標)、Novartis Pharmaceutical社、イーストハノーバー、NJ)を含む、IL−2シグナリングの特異的阻害剤を含む。
【0092】
2つ以上の異なる治療物質が使用される(例えばIL−17アンタゴニストおよびIL−23アンタゴニスト、IL−17アンタゴニストおよびIL−17活性にもIL−23活性にも拮抗しない治療薬)、本明細書中に記載される任意の療法では、異なる治療物質が互いに関連して投与されることが理解されるであろう、すなわち、治療物質は、同一の医薬組成物において同時にもしくは個別の組成物として投与されてもよくまたは物質は、個別の時間におよび異なる順序で投与されてもよい。
【0093】
患者におけるAOIDの存在の診断は、上記疾患に付きものであることで知られている症状について患者を検査することを典型的に含むであろう。例えば、前部ブドウ膜炎の典型的な現れ方は、痛み、光恐怖症、および涙液分泌過多を含む。患者は、影響を及ぼされた眼および周囲の眼窩が深く鈍く痛むと報告する。光に対する関連する感受性は重篤である可能性がある。過剰な流漏は、涙腺の神経刺激の上昇に対して二次的に発生し、患者は異物感を報告しない。癒着膜または毛様体炎膜が存在する場合、視力は、軽度のぼやけから著しい視覚喪失まで可変性である。検査により、偽性眼瞼下垂をもたらす軽度から中程度の眼瞼腫脹が明らかにされる可能性がある。たとえ眼瞼結膜が特徴的に正常でも、結膜および上強膜への、深い角膜縁周囲の注射が典型的である。角膜は軽度の浮腫を呈する可能性がある。
【0094】
前部ブドウ膜炎の特徴的な徴候は前眼房における小空洞(cell)および発赤を含む。前眼房反応が著しい場合、角膜後面沈着物として知られている、少量の灰色から褐色の内皮沈積物が存在する可能性がある。これは、その後、内皮細胞機能障害および角膜浮腫につながり得る。虹彩所見は、水晶体包(虹彩後癒着)またはそれほど共通していないが辺縁角膜(虹彩前癒着)への付着を含む可能性がある。さらに、肉芽腫性結節が虹彩の表面上に出現する可能性がある。眼内圧は、毛様体の分泌性の低張により影響を及ぼされた眼において最初に低下する。しかしながら、反応が続くにつれて、炎症性副産物が柵状織中に蓄積する可能性がある。この残屑が著しく増える場合かつ毛様体がその通常の分泌量を取り戻す場合、IOPは急激に増し、二次的なブドウ膜炎緑内障をもたらし得る。
【0095】
AOIDに感受性である患者の同定には個人および家族の病歴が典型的に利用されるであろう、そして、遺伝子試験を含んでいてもよい。例えば、何人かの個人は、自己免疫疾患プロセスに関する、ブドウ膜炎の遺伝的素因を有するであろう。最も共通したこれらの「遺伝子」は、ブドウ膜炎のみのまたは同様に血清反応陰性脊椎関節症および腸疾患に基づく関節症の素因になり得るHLA B27ハプロタイプである。例として、強直性脊椎炎、反応性関節炎(ライター症候群)、乾癬性関節炎、過敏性腸疾患、およびクローン病がある。これらの自己免疫疾患のいずれかの家族既往歴があるまたは患者がすでに上記疾患と診断されている場合、患者はまた、AOIDに感受性であるとして診断される可能性がある。
【0096】
特定の患者においてAOIDを予防するまたは治療するためのアンタゴニスト療法の有効性は、例えば眼炎症の量または影響を与えられた眼における炎症性サイトカインのレベルといった炎症症状の低下または発生等の診断測定を使用して決定することができる。眼炎症の症状は、大部分は、眼の、影響を与えられたエリアに依存する。最も共通した徴候および症状は次のとおりである:痛み、赤み、フローター、視覚減退、および光感受性。炎症性サイトカインのレベルは、例えば興味のある炎症性サイトカインに対する結合化合物を患者の眼からの試料および対照対象からのまたは患者からの影響されていない組織もしくは液体からの試料と接触させて、次いで、結合化合物により検出されたサイトカインレベルを比較することにより測定することができる。対照対象または対照試料からの発現または活性は、例えば対照対象の統計的に適正な群から得られた所定値として提供され得る。
【実施例】
【0097】
本発明は、IL−23p19ノックアウト(KO)マウスにおける研究ならびに自己免疫性ブドウ膜炎のマウスモデルに対する抗IL−23p19抗体および抗IL−17抗体の投与に基づく。これらの実験は、後述のセクションIIに記載される材料および方法に従って実行された。
【0098】
I.結果および考察
IL−23p19 KOマウスに関与する実験では、IL−23p19 KO(IL−23欠損)マウスのEAU感受性を、IL−12p35 KO(IL−12欠損)マウスおよびIL−12p40 KO(IL−12およびIL−23欠損)マウスのEAU感受性と比較した。マウスはすべて、バックグラウンドがC57BL/6であり、EAUの誘発およびスコアリングは、後述の一般的な方法においてに記載されるとおりであった。IL−12p35はIRBP特異的眼組織破壊の生成に必要とされないことがわかった。対照的に、IL−23p19はEAUの発症に必須である(表1)。IRBP免疫化マウスに由来するリンパ節細胞培養のサイトカイン分析は、EAU感受性IL−12欠損マウス(IL−12p35KO)は、IL−23欠損マウス(IL−23p19KOおよびIL−12p40KO)と比較してIFN−γ、IL−6、IL−17、およびIL−18のレベルが高まっていたことを示した。耳介腫脹アッセイにより検査された、3種のKO系統のIRBPに対する遅延過敏症(DTH)応答は、IRBPに対するDTH応答がEAUスコアと十分に相互に関連していた、つまり、それぞれのマウスで、野生型(WT)と比較して、p19 KOおよびp40 KOについては応答が著しく低く、p35 KOにおいては応答が著しく高度であったことを示した。
【0099】
表1:IL−12ではなくIL−23がEAU発症に必須である。
【0100】
【表1】

これらの結果は、高度に感受性であるB10.RIII系統のブドウ膜炎のマウスモデルにおいて抗マウスIL−23p19抗体を使用する実験によりさらに支持された。抗マウスIL−23p19抗体治療は免疫媒介性眼炎症を著しくブロックしたことがわかった。隔日にマウス当たり330μgの用量で、抗IL−23p19治療マウスのEAU疾患指数は、免疫化後の11日目に収集された眼の病理組織診断により決定されたように、抗アイソタイプ抗体治療対照および非抗体対照と比較して劇的に低下した(表2)。さらに、抗IL−23p19療法は、EAUをブロックすることにおいてプレドニゾンと同じくらい効果的であった。抗IL−23p19治療マウスの眼においてIFN−γ mRNAではなくIL−17 mRNAの発現レベルが対照群よりも低く、これは、IL−23を標的にすることが、IL−17産生細胞の浸潤をブロックすることによりまたは眼内の病原性IL−17産生細胞の増大を予防することによりEAUを阻害したことを示唆した。抗IL−23p19治療マウスの好中球エラスターゼおよびミエロペルオキシダーゼのmRNAレベルは、ナイーブおよびプレドニゾン対照群と同等であったのに対して、「非抗体」およびアイソタイプ対照治療マウスは、これらの炎症性遺伝子の発現において10〜100倍の増加を示した。IL−1β、TNF、IL−6、NOS2、およびCOX2等の他の炎症誘発性因子は抗IL−23p19治療マウスにおいて多少低下した。これらの結果は、IL−23を標的にすることが自己免疫性ブドウ膜炎の発症を阻害することを実証する。
【0101】
表2:抗IL−23p19治療は、EAUおよび眼における炎症性サイトカインの発現を阻害する。
【0102】
【表2】

抗IL−23p19抗体での治療を抗IL−12p40抗体での治療と比較する実験の他のセットもまた実行した。この実験では、マウスは、免疫化の前日から、隔日で、500μgの示された抗体を受け、眼およびリンパ器官を免疫化後の17日目または対照における疾患発病後の6〜7日目に収集した。データは、抗IL−23p19抗体がブドウ膜炎の発病をブロックするときに抗p40抗体と同じくらい有効であることを示した。データを表3に示す。
【0103】
さらに、これらのマウスのリンパ節におけるサイトカインタンパク質発現を多重ELISAにより評価した。これらのデータは、IL−23アンタゴニストでの治療が、Th1サイトカインおよび炎症誘発性サイトカインの生産を減らすことを示す。データを表3に示す。
【0104】
表3:抗IL−23p19治療は、EAUおよびブドウ膜炎抗原に対する全身性サイトカイン応答を阻害する。
【0105】
【表3】

この実験の第2部により、IL−23が必要とされた病原性プロセスの段階を検査した。マウスは、免疫化後の7日目から、隔日で、500μgの抗IL−23 p19抗体で治療し、疾患を、免疫化の前日から治療したマウス(上記)と比較した。抗p19抗体または抗p40抗体のいずれかでの早期治療によりEAUを予防することができた。しかしながら、治療を免疫化後の7日目、ブドウ膜炎性エフェクターT細胞がすでに初回刺激を受け、LNおよび脾臓から単離することができる時点から開始した場合、EAU発症を止めることができず、治療マウスが発症した疾患スコアは対照に類似した。これは、IL−23の必要性は疾患病原の早期段階で発生することを示唆する。データを表4に示す。
【0106】
表4:抗p19抗体での治療はEAUを予防するが、後退させない。
【0107】
【表4】

全体として、これらの実験は、IL−23の中和が、動物モデルにおけるブドウ膜炎を予防するが、後退させないということを実証し、そして、IL−23アンタゴニストでの治療が、エフェクタープール中への新しいT細胞の補充を予防し、その結果として、重症度を低下させて、疾患の進行を停止させることによる、ヒトの慢性ブドウ膜炎における有益な効果を有するはずであるということを示す。
【0108】
IL−17欠損がEAU発症に影響し得るかどうかを試験するために、IL−17A−/−マウス(例えばNakaeら(2002年)Immunity 17巻:375〜387頁を参照されたい)をIRBPのブドウ膜炎性レジメンで免疫化した。遺伝子IL−17欠損によるEAUの阻害は部分的なものでしかなかった(表5)。IL−17−/−マウスのEAUスコアの比較的中程度の低下は、これらのマウスが、サイトカインのIL−17Aアイソフォームを欠損しており、通常それほど豊富に生産されていないIL−17Fアイソフォームにより、先天性欠損の条件下において補われる可能性があるという事実により説明されるかもしれない。
【0109】
表5:遺伝子IL−17欠損は、EAU感受性を低下させるが、抑止しない。
【0110】
【表5】

対照的に、野生型マウスにおけるIL−17A抗体でのIL−17Aの中和は、疾患の全過程またはエフェクター段階のみ(7日目から)を通して、防御となった。重要なことには、IL−23中和とは違って、IL−17の中和は、ブドウ膜炎性エフェクターがすでに産生されている免疫化後7日目から投与された場合に疾患を阻害することができた。EAUスコアの低下は関連する免疫学的応答、遅延型過敏症(DTH)、および抗原特異的LN細胞増殖の低下と相互に関連した。したがって、IL−17は、EAUの病原における役割を有し、IL−23とは違って、疾患のエフェクター段階に関与すると思われる。データを表6に示す。
【0111】
表6:抗IL−17A抗体での治療はEAUを予防し、後退させる。
【0112】
【表6】

セクションII.材料および方法
A.総論
分子生物学の標準的方法が記載される(Maniatisら(1982年)Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring
Harbor、NY;SambrookおよびRussell(2001年)Molecular Cloning、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;Wu(1993年)Recombinant DNA、217巻、Academic Press、San Diego、CA)。標準的方法は、Ausbelら(2001年)Current Protocols in Molecular Biology、1〜4巻、John Wiley and Sons,Inc.New York、NYにもあり、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA変異誘発(1巻)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(2巻)、複合糖質およびタンパク質発現(3巻)、ならびにバイオインフォマティクス(4巻)を記載する。
【0113】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳働、遠心分離、および結晶化を含むタンパク質精製についての方法が記載される(Coliganら(2000年)Current Protocols in Protein Science、1巻、John Wiley and Sons,Inc.、New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生産、およびタンパク質のグリコシル化が記載される(例えばColiganら(2000年)Current Protocols in Protein Science、2巻、John Wiley and Sons,Inc.、New York;Ausubelら(2001年)Current Protocols in Molecular Biology、3巻、John Wiley and Sons,Inc.、NY、NY、16.0.5〜16.22.17頁;Sigma−Aldrich,Co.(2001年)Products for Life Science Research、St.Louis、MO;45〜89頁;Amersham Pharmacia Biotech(2001年)BioDirectory、Piscataway、N.J.、384〜391頁を参照されたい)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の生産、精製、および断片化が記載される(Coliganら(2001年)Current Protcols in Immunology、1巻、John Wiley and Sons,Inc.、New York;HarlowおよびLane(1999年)Using Antibodies、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;HarlowおよびLane、前掲)。リガンド/受容体相互作用を特徴づけるための標準的な技術が利用可能である(例えばColiganら(2001年)Current Protcols in Immunology、4巻、John Wiley,Inc.、New Yorkを参照されたい)。
【0114】
蛍光活性化細胞分類(FACS)を含むフローサイトメトリーについての方法が利用可能である(例えばOwensら(1994年)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice、John Wiley and Sons、Hoboken、NJ;Givan(2001年)Flow Cytometry、第2版;Wiley−Liss、Hoboken、NJ;Shapiro(2003年)Practical Flow Cytometry、John Wiley and Sons、Hoboken、NJを参照されたい)。例えば診断試薬としての使用のための、核酸プライマーおよび核酸プローブを含む核酸、ポリペプチド、ならびに抗体を修飾するのに適切な蛍光試薬が利用可能である(Molecular Probes(2003年)Catalogue、Molecular
Probes,Inc.、Eugene、OR;Sigma−Aldrich(2003年)Catalogue、St.Louis、MO)。
【0115】
免疫系の組織学の標準的方法が記載される(例えばMuller−Harmelink(編)(1986年)Human Thymus:Histopathology and Pathology、Springer Verlag、New York、NY;Hiattら(2000年)Color Atlas of Histology、Lippincott、Williams,and Wilkins、Phila、PA;Louisら(2002年)Basic Histology:Text and Atlas、McGraw−Hill、New York、NYを参照されたい)。
【0116】
例えば抗原断片、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能的ドメイン、グリコシル化部位、および配列アラインメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが利用可能である(例えばGenBank、Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc、Bethesda、MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.、San Diego、CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.、Crystal Bay、Nevada);Menneら(2000年)Bioinformatics 16巻:741〜742頁;Menneら(2000年)Bioinformatics Applications Note 16巻:741〜742頁;Wrenら(2002年)Comput.Methods Programs Biomed.68巻:177〜181頁;von Heijne(1983年)Eur.J.Biochem.133巻:17〜21頁;von Heijne(1986年)Nucleic Acids Res.14巻:4683〜4690頁を参照されたい)。
【0117】
B.動物
IL−23 KO(p19 KO)は、Cuaら(2003年)Nature 421巻:744〜748頁において記載された。Nakaeら(2002年)Immunity 17巻:375〜387頁に記載されるようにIL−17−/−マウスを生産した。IL−12p35 KO(P35 KO)、IL−12p40 KO(P40 KO)、IFN−γ KO(GKO)(すべてバックグラウンドがC57BL/6)、ならびにC57BL/6およびB10RIIIのマウスをJackson Laboratories社から購入した。動物は、特定の、病原体なしの設備で保存し、水および標準的な飼料を適宜与えた。動物の世話および使用は機関のガイドラインおよびAssociation for Research in Vision and Ophthalmology Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Researchに従った。
【0118】
C.EAUの誘発およびスコアリング
CFAはSigma社から購入した。結核菌株H37RAはThomas Scientific社から購入した。精製ボルデテラ属PTはSigma−Aldrich社から購入した。前に記載したように、IRBPは、Con A−セファロースアフィニティークロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーを使用してウシ網膜から単離した(例えばPepperbergら(1991年)Photochem Photobiol 54巻:1057〜1060頁を参照されたい)。IRBP調製物を等分し、−70℃で保管した。ヒトIRBP由来ペプチド161〜180(Karabezekian,Z.ら、(2005年)Invest Ophthalmol Vis Sci.46巻10号:3769〜76頁)はFmoc化学により合成した(432A型ペプチド合成機;Applied Biosystems社、フォスターシティ、CA)。
【0119】
中和抗マウスIL−23抗体および中和抗マウスIL−17A抗体はSchering−Plough Biopharma社より提供された(パロアルト、CA)。抗マウスIL−23は前に記載され(例えばLangrishら(2005年)J Exp Med 201巻:233〜240頁を参照されたい)、C17.8(抗IL−12p40、ラットIgG2a)ハイブリドーマは、Wistar Institute、フィラデルフィア、PAにより提供された。モノクローナル抗体は、Harlan Bioproducts for Science社(インディアナポリス、IN)により腹水で生産され、イオン交換HPLCにより精製された。FITC標識抗マウスCD4(クローンL3T4)、PE標識抗マウスIL−17(クローン−TC11−18H10)、およびAPC標識抗IFN−γ(クローン−XMG1.2)、ならびにサイトカイン分泌ブロッカー(GolgiStop(商標))は、Becton Dickinson社(サンディエゴ、CA)から購入した。PMA、イオノマイシンはLC Laboratories(ボストン、MA)から購入した。
【0120】
EAUは、C57BL/6マウスに対する150μgのIRBPおよびB10RIIIマウスに対する7μg IRBPペプチド161〜180で能動免疫により誘発した(Jackson Labs、メイン)。C57BL/6マウスについては、2%正常マウス血清を含むPBS中の百日咳菌毒素(0.5μg/マウス)を腹腔内注射により免疫化と同時に与え、いくつかの実験では、IRBPに、500μgのIRBPペプチド1〜20を加え(Avichezer,D.ら(2000年)、Invest Ophthalmol Vis Sci.41巻1号:127〜31頁)、この系統で見られる通常中程度の疾患スコアを高めた。抗原溶液は、結核菌株H37RAで2.5mg/mlまで補充したCFA中で1:1 v/vに乳化した。合計200μlの乳濁液をs.c.注射し、3つの部位(尾のつけ根および両大腿)に分けた。
【0121】
あるいは、EAUは、ブドウ膜炎性T細胞系の養子移入により誘発した(以下参照)。抗原で新たに刺激した1〜2百万個の細胞を腹腔内に注射した。他に詳細に記載されるように、臨床EAUは、瞳孔の拡大後、双眼顕微鏡下での眼底検査により評価し、炎症性病変の程度に基づく基準を使用して0〜4の段階で類別した(例えばAgarwalおよびCaspi、(2004年)Methods Mol Med 102巻:395〜419頁;ならびにChanら(1990年)J Autoimmun 3巻:247〜255頁を参照されたい)。免疫化後の17〜21日目または養子移入後の14日目に採取された眼は、1時間、4%リン酸緩衝グルタルアルデヒド中に前固定し(人為現象的網膜剥離を予防するために)、次いで、処理まで10%リン酸緩衝ホルムアルデヒド中に移した。固定され、脱水された組織をメタクリル酸塩中に包埋し、4〜6μmの切片を標準的なH&Eで染色した。瞳孔から視神経までの平面で切り取られた眼切片を盲検的にスコアリングした。EAUの重症度は、前に記載した基準を使用して、病変の種類、数、およびサイズに基づき、0.5ポイントの増分で0〜4の段階で類別した(AgarwalおよびCaspi、前掲;およびChanら、前掲を参照されたい)。
【0122】
D.免疫学的応答の決定
IRBPへの遅延型過敏症(DTH)を耳介腫脹アッセイにより評価した(例えばTarrantら(1998年)J Immunol 161巻:122〜127頁を参照されたい)。初代培養におけるAg特異的リンパ球増殖およびサイトカイン生産については、脾臓および流入領域リンパ節(鼡径部および腸骨)(群当たり5つ)を、示されるように各実験の最後に収集した。リンパ系細胞を群内でプールし、本質的に記載されるように、三連の0.2ml培養液中で段階的用量のAgと共にインキュベートした(例えばAvichezerら(2000年)Invest Ophthalmol Vis Sci
41巻:127〜131頁を参照されたい)。増殖は、[H]チミジン取り込みにより決定した。サイトカインは、Pierce社製Multiplex SearchLight Arrays技術を使用して、48時間Ag刺激された上清中で定量した(例えばMoodyら(2001年)Biotechniques 31巻:186〜190頁、192〜184頁を参照されたい)。
【0123】
E.IL−23、IL−12p40、およびIL−17の中和
B10RIIIマウスは、示されるように、IRBPまたはIRBPブドウ膜炎性ペプチド(161〜180)で免疫化した。用量当たり0.5mgの抗p19、抗p40、または抗IL−17をマウスに腹腔内に注射した。治療は、初回刺激およびエフェクター段階の両方を包含する免疫化後の−1日目から15日目まで(予防プロトコール)またはエフェクター段階のみを包含する7日目から15日目まで(治療)、隔日で与えられた。対照には、アイソタイプの同一レジメンを与えた(ラットIgG1)。眼およびリンパ器官は、疾患発病の6〜7日後である17日目に採取した。
【0124】
F.ブドウ膜炎性T細胞系
ヒトIRBP(p16〜180)のペプチドに特異的なブドウ膜炎性Th1細胞系が記載される(例えばSilverら(1995年)Invest Ophthalmol Vis Sci 36巻:946〜954頁を参照されたい)。手短に言えば、系は、ヒトIRBPペプチド161〜180で免疫化されたB10.RIIIマウスの流入領域リンパ節に由来し、抗原、IL−12、および抗−IL−4の存在下の培養によりin vitroでTh1表現型に分極(polarize)した。その後、細胞は、IL−2中での増殖、および、APCとして、3000ラドで照射した同系の脾細胞の存在下での2〜3週毎の1μg/mlのp161〜180での再刺激を交互に行うサイクルにより維持した。EAU誘発については、48時間、Agで新たに刺激した細胞を未処置の同系のレシピエントにi.p.注射した。
【0125】
G.細胞内IL−17およびIFNγの検出
短刺激:T細胞系を、照射されたAPCの存在下で、1μg/ml IRBPペプチド161〜180で24時間刺激し、最後の4時間、GolgiStop(商標)タンパク質移動阻害剤(BD Biosciences社、サンホセ、CA)を追加した。その後、細胞をフィコールで分離し、洗浄し、細胞外CD4を染色した。次いで、細胞を洗浄し、Cytofix/Cytoperm(商標)固定および透過処理緩衝液(BD Biosciences社)で固定し、透過処理し、FACS分析のために、PE結合体化抗Il−17およびAPC結合体化抗IFN−γで染色した。
【0126】
長刺激:T細胞系を、抗原(1μg/ml IRBPペプチド161〜180)または抗原+rIL−23(10ng/ml)または抗原+IL−23+抗IFN−γ(10μg/ml)で、照射されたAPCの存在下で5日間刺激した。培養の最後の4時間、GolgiStop(商標)タンパク質移動阻害剤(BD Biosciences社)を追加して、細胞をPMAおよびイオノマイシンで刺激した。その後、上記に述べられるように、細胞を処理し、細胞内IL−17およびIFN−γについて染色した。
【0127】
H.IL−17およびIFNγアッセイ
照射されたAPCの存在下での、1μg/ml IRBPペプチド161〜180での刺激の48時間後、T細胞系を、ナイーブThy1.1/.2ヘテロ接合マウスにi.v.で養子移入した(2×10/マウス)。90時間後、脾臓を採取し、24時間、最後の4時間はPMA、イオノマイシン、およびGolgiStop(商標)タンパク質移動阻害剤(BD Biosciences社)存在下で脾細胞をIRBPペプチド161〜180で刺激した。その後、細胞を処理し、上記に述べられるように、細胞内IL−17およびIFN−γについて染色した。
【0128】
I.統計分析
実験は、少なくとも2回、通常3回以上繰り返した。表は、代表的な実験から集計されたデータを示す。EAUスコアの統計分析は、比率における線形傾向についてのスネデカーおよびコクランの検定によるものであった(ノンパラメトリック、度数ベース)(例えばSnedecorおよびCochran(1967年)Statistical Methods Iowa State University Press、Ames、IA:248頁を参照されたい)。各マウス(両眼の平均)を一統計的事象として処理した。DTHおよび増殖はt検定(両側)により検査した。サイトカイン応答は、プールした試料(通常群当たりマウス5匹)についてアッセイした。
【0129】
当業者にとって明らかであろうが、本発明の多くの修飾および変形は、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなすことができる。本明細書中に記載される特定の実施形態は例として提供されるにすぎず、本発明は、添付された請求項の用語により、加えて上記請求項が資格を有する均等物の最大限の範囲により、限定されるものとし、本発明は、例として本明細書中に提示された特定の実施形態により限定されないものとする。
【0130】
本明細書中の引用文はすべて、あたかもそれぞれの個々の刊行物または特許文献が参照により含まれるよう具体的に個々に示されるのと同程度に参照により本明細書中に含まれる。しかしながら、刊行物または特許文献のいずれかについての本明細書中の引用文は、引用された参考文献が関係のある先行技術であるということが許可されることを意図するものでもなく、参考文献の内容または有効な先行技術の日に関するいかなる許可も構成するものではない。
例えば、本発明は以下を提供する:
(項目1)
患者にIL−17アンタゴニストを投与することを含む、自己免疫性眼炎症性疾患(AOID)を有する患者を治療する方法。
(項目2)
前記患者は、推定上の自己免疫病因の眼炎症を有すると診断されている項目1に記載の方法。
(項目3)
特定の用量の前記IL−17アンタゴニストは、第1の治療期間中、特定の間隔で投与される項目1に記載の方法。
(項目4)
前記AOIDの1つまたは複数の症状の消失の後に前記第1の治療期間は終了する項目3に記載の方法。
(項目5)
前記第1の治療期間は、前記AOIDのすべての症状の消失の後に30日以内に終了する項目4に記載の方法。
(項目6)
投与される前記IL−17アンタゴニストの用量を、前記第1の治療期間の終了と同時に始まる第2の治療期間中、徐々に低下させる項目4に記載の方法。
(項目7)
前記第2の治療期間の持続期間は少なくとも1年である項目6に記載の方法。
(項目8)
前記IL−17アンタゴニストは、モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体断片である項目1に記載の方法。
(項目9)
前記IL−17アンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体または完全ヒトモノクローナル抗体である項目8に記載の方法。
(項目10)
前記IL−17アンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体断片または完全ヒトモノクローナル抗体断片である項目8に記載の方法。
(項目11)
前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体断片はペグ化される項目8に記載の方法。
(項目12)
前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体断片は、IL−17に結合し、その活性を阻害する項目8に記載の方法。
(項目13)
前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体断片は、IL−17RAまたはIL−17RCに結合し、その活性を阻害する項目8に記載の方法。
(項目14)
前記IL−17アンタゴニストは、
a)IL−17およびIL−23p19;または
b)IL−17およびIL−23R
に結合し、その活性を阻害する二重特異性抗体または二重特異性抗体断片である項目1に記載の方法。
(項目15)
前記第1の治療期間中、IL−23アンタゴニストを前記患者に投与することをさらに含む項目3に記載の方法。
(項目16)
特定の用量の前記IL−23アンタゴニストは、前記第1の治療期間中、特定の間隔で投与される項目15に記載の方法。
(項目17)
前記AOIDの1つまたは複数の症状の消失の後に前記第1の治療期間は終了する項目16に記載の方法。
(項目18)
前記第1の治療期間は、前記AOIDのすべての症状の消失の後に30日以内に終了する項目16に記載の方法。
(項目19)
前記IL−17アンタゴニストおよび前記IL−23アンタゴニストのそれぞれの用量を、前記第1の治療期間の終了と同時に始まる第2の治療期間中、徐々に低下させる項目18に記載の方法。
(項目20)
前記IL−17アンタゴニストの用量を、前記第1の治療期間の終了と同時に始まる第2の治療期間中、徐々に低下させ、該第2の治療期間中、投与される前記IL−23アンタゴニストの用量は、該第1の治療期間において投与される用量と同一であり、該IL−17アンタゴニストでの療法が停止される場合に該第2の治療期間は終了する、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記第2の治療期間の持続期間は、1カ月から3カ月の間である項目20に記載の方法。
(項目22)
前記第2の治療期間の終了と同時に始まる第3の治療期間中、前記IL−23アンタゴニストを投与することをさらに含む項目20に記載の方法。
(項目23)
前記第3の治療期間の持続期間は、6カ月から12カ月の間である項目22に記載の方法。
(項目24)
前記IL−23アンタゴニストの用量を、前記第3の治療期間中、徐々に低下させる項目22に記載の方法。
(項目25)
前記IL−23アンタゴニストは、モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体断片である項目15に記載の方法。
(項目26)
前記IL−23アンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体または完全ヒトモノクローナル抗体である項目25に記載の方法。
(項目27)
前記IL−23アンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体断片または完全ヒトモノクローナル抗体断片である項目25に記載の方法。
(項目28)
前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体断片はペグ化される項目25に記載の方法。
(項目29)
前記IL−23アンタゴニストは、IL−23p19に結合し、その活性を阻害する項目25に記載の方法。
(項目30)
前記IL−23アンタゴニストは、IL−23Rに結合し、その活性を阻害する項目25に記載の方法。
(項目31)
前記AOIDはブドウ膜炎である項目1に記載の方法。
(項目32)
IL−17活性にもIL−23活性にも拮抗しない治療薬を投与することをさらに含み、該治療薬は、前記AOIDの少なくとも1つの症状または前記IL−17アンタゴニストの少なくとも1つの副作用を緩和することができる項目1に記載の方法。
(項目33)
前記治療薬は、前記AOIDの少なくとも1つの症状を緩和することができ、かつ該治療薬は、ステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、またはTNF阻害剤である項目32に記載の方法。
(項目34)
自己免疫性眼炎症性疾患(AOID)に感受性であると診断される患者を予防的に治療する方法であって、IL−23アンタゴニスト、IL−17アンタゴニスト、およびIL−17およびIL−23の両方のアンタゴニストから成る群から選択されるアンタゴニストを該患者に投与することを含む方法。
(項目35)
前記感受性診断は、眼炎症の以前の発病を有する前記患者に基づく項目34に記載の方法。
(項目36)
前記感受性診断は、全身性自己免疫疾患を有する前記患者に基づく項目34に記載の方法。
(項目37)
前記アンタゴニストは、モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体断片である項目36に記載の方法。
(項目38)
前記アンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体または完全ヒトモノクローナル抗体である項目37に記載の方法。
(項目39)
前記アンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体断片または完全ヒトモノクローナル抗体断片である項目37に記載の方法。
(項目40)
前記抗体または前記抗体断片はペグ化される項目37に記載の方法。
(項目41)
前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体断片はIL−23p19またはIL−23Rに結合し、その活性を阻害する項目37に記載の方法。
(項目42)
前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体断片は、IL−23p19に結合し、その活性を阻害する項目41に記載の方法。
(項目43)
前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体断片は、IL−17またはIL−17RAに結合し、その活性を阻害する項目37に記載の方法。
(項目44)
前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体断片は、IL−17に結合し、その活性を阻害する項目43に記載の方法。
(項目45)
特定の用量の前記アンタゴニストは、第1の治療期間中、特定の間隔で投与される項目34に記載の方法。
(項目46)
前記第1の治療期間の持続期間は、3カ月から2年の間である項目45に記載の方法。
(項目47)
前記第1の治療期間の持続期間は6カ月から1年の間である項目46に記載の方法。
(項目48)
前記アンタゴニストの用量を、前記第1の治療期間の終了と同時に始まる第2の治療期間中、徐々に低下させる項目45に記載の方法。
(項目49)
前記第2の治療期間の持続期間は、1カ月から6カ月の間である項目48に記載の方法。
(項目50)
患者にIL−23アンタゴニストを投与することを含む、自己免疫性眼炎症性疾患(AOID)について患者を治療する方法。
(項目51)
前記IL−23アンタゴニストは、IL−23p19またはIL−23Rに結合し、その活性を阻害するモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体断片である項目50に記載の方法。
(項目52)
特定の用量の前記IL−23アンタゴニストは、第1の治療期間中、特定の間隔で投与される項目50に記載の方法。
(項目53)
前記第1の治療期間の持続期間は、3カ月から2年の間である項目50に記載の方法。
(項目54)
前記第1の治療期間の持続期間は、6カ月から1年の間である項目51に記載の方法。
(項目55)
前記IL−23アンタゴニストの用量を、前記第1の治療期間の終了と同時に始まる第2の治療期間中、徐々に低下させる項目50に記載の方法。
(項目56)
患者における自己免疫性眼炎症性疾患(AOID)の治療のための医薬組成物の調製のためのIL−17アンタゴニストの使用。
(項目57)
前記医薬組成物は、特定の用量の前記IL−17アンタゴニストを、第1の治療期間中、特定の間隔で投与するためのものである項目56に記載の使用。
(項目58)
前記第1の治療期間は、前記AOIDの1つまたは複数の症状の消失の後に終了する項目57に記載の使用。
(項目59)
前記第1の治療期間は、前記AOIDのすべての症状の消失の後に30日以内に終了する項目57に記載の使用。
(項目60)
前記医薬組成物中の前記IL−17アンタゴニストの用量を、前記第1の治療期間の終了と同時に始まる第2の治療期間中、徐々に低下させる項目57に記載の使用。
(項目61)
前記第2の治療期間の持続期間は、少なくとも1年である項目60に記載の使用。
(項目62)
前記IL−17アンタゴニストは、モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体断片である項目56から61のいずれか一項に記載の使用。
(項目63)
前記IL−17アンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体または完全ヒトモノクローナル抗体である項目62に記載の使用。
(項目64)
前記IL−17アンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体断片または完全ヒトモノクローナル抗体断片である項目62に記載の使用。
(項目65)
前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体断片はペグ化される項目62に記載の使用。
(項目66)
前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体断片は、IL−17に結合し、その活性を阻害する項目62に記載の使用。
(項目67)
前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体断片は、IL−17RAまたはIL−17RCに結合し、その活性を阻害する項目62に記載の使用。
(項目68)
前記IL−17アンタゴニストは、
a)IL−17およびIL−23p19;または
b)IL−17およびIL−23R
に結合し、その活性を阻害する二重特異性抗体または二重特異性抗体断片である項目56から61のいずれか一項に記載の使用。
(項目69)
IL−23アンタゴニストは、前記医薬組成物と関連して投与されることになる項目56から61のいずれか一項に記載の使用。
(項目70)
前記医薬組成物および前記IL−23アンタゴニストは、同時にまたは連続的に投与されることになる項目69に記載の使用。
(項目71)
前記IL−23アンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体、完全ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体断片、または完全ヒトモノクローナル抗体断片である項目70に記載の使用。
(項目72)
前記IL−23アンタゴニストは、IL−23p19またはIL23Rに結合し、その活性を阻害する項目71に記載の使用。
(項目73)
患者における自己免疫性眼炎症性疾患(AOID)の治療のための医薬組成物の調製のためのIL−23アンタゴニストの使用であって、該医薬組成物はIL−17アンタゴニストと関連して投与されることになる使用。
(項目74)
前記医薬組成物は、特定の用量の前記IL−23アンタゴニストを、第1の治療期間中、特定の間隔で投与するためのものである項目73に記載の使用。
(項目75)
前記医薬組成物は、前記第1の治療期間の終了と同時に始まる第2の治療期間中さらに投与され、投与される前記IL−17アンタゴニストの用量を該第2の治療期間中徐々に低下させる項目74に記載の使用。
(項目76)
前記IL−17アンタゴニストでの療法が停止される場合に前記第2の治療期間は終了する項目75に記載の使用。
(項目77)
前記第2の治療期間の持続期間は1カ月から3カ月の間である項目75に記載の使用。
(項目78)
前記医薬組成物は、前記第2の治療期間の終了と同時に始まる第3の治療期間中、さらに投与される項目75に記載の使用。
(項目79)
前記第3の治療期間の持続期間は6カ月から12カ月の間である項目78に記載の方法。
(項目80)
前記医薬組成物における前記IL−23アンタゴニストの用量を、前記第3の治療期間中、徐々に低下させる項目78に記載の使用。
(項目81)
前記医薬組成物および前記IL−17アンタゴニストは同時にまたは連続的に投与されることになる項目73から80のいずれか一項に記載の使用。
(項目82)
前記IL−23アンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体、完全ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体断片、または完全ヒトモノクローナル抗体断片である項目73から80のいずれか一項に記載の使用。
(項目83)
前記IL−23アンタゴニストは、IL−23p19またはIL−23Rに結合し、その活性を阻害する項目82に記載の使用。
(項目84)
前記IL−17アンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体、完全ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体断片、または完全ヒトモノクローナル抗体断片である項目73から80のいずれか一項に記載の使用。
(項目85)
前記IL−17アンタゴニストは、IL−17、IL−17RA、またはIL−17RCに結合し、その活性を阻害する項目82に記載の使用。
(項目86)
前記AOIDはブドウ膜炎である項目56または73に記載の使用。
(項目87)
前記医薬組成物は、IL−17活性にもIL−23活性にも拮抗しない治療薬をさらに含み、該治療薬は、前記AOIDの少なくとも1つの症状または前記アンタゴニストの少なくとも1つの副作用を緩和することができる項目56または73に記載の使用。
(項目88)
前記治療薬が、前記AOIDの少なくとも1つの症状を緩和することができ、かつ該治療薬が、ステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、またはTNF阻害剤である項目87に記載の使用。
(項目89)
眼自己免疫性炎症に感受性であると診断される患者の予防的治療のための医薬組成物の調製のための、IL−23アンタゴニスト、IL−17アンタゴニスト、およびIL−17およびIL−23の両方のアンタゴニストから成る群から選択されるアンタゴニストの使用。
(項目90)
前記感受性診断は、眼自己免疫性炎症の以前の発病を有する前記患者に基づく項目89に記載の使用。
(項目91)
前記感受性診断は、全身性自己免疫疾患を有する前記患者に基づく項目89に記載の使用。
(項目92)
前記アンタゴニストはIL−23アンタゴニストである項目89に記載の使用。
(項目93)
前記アンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗体、完全ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体断片、または完全ヒトモノクローナル抗体断片である項目92に記載の使用。
(項目94)
前記抗体または前記抗体断片は、IL−23またはIL−23Rに結合し、その活性を阻害する項目93に記載の使用。
(項目95)
前記医薬組成物は、特定の用量の前記アンタゴニストを、第1の治療期間中、特定の間隔で投与するためのものである項目89から94のいずれか一項に記載の使用。
(項目96)
前記第1の治療期間の持続期間は3カ月から2年の間である項目95に記載の使用。
(項目97)
前記第1の治療期間の持続期間は6カ月から1年の間である項目96に記載の使用。
(項目98)
前記医薬組成物中の前記アンタゴニストの用量を、前記第1の治療期間の終了と同時に始まる第2の治療期間中、徐々に低下させる項目97に記載の使用。
(項目99)
前記第2の治療期間の持続期間は1カ月から6カ月の間である項目98に記載の使用。
(項目100)
(a)IL−17アンタゴニストを含む第1の医薬製剤および
(b)IL−23アンタゴニストを含む第2の医薬製剤
を含む、自己免疫性炎症性疾患(AOID)を治療するための製造された薬物製品。
(項目101)
項目15から24のいずれか一項に記載の方法に従って前記医薬製剤を投与するための使用説明書をさらに含む項目100に記載の製造された薬物製品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2011−184466(P2011−184466A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−143593(P2011−143593)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【分割の表示】特願2008−529228(P2008−529228)の分割
【原出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【出願人】(305056858)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ,センターズ フォー  (15)
【Fターム(参考)】