説明

自己分散型顔料およびヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤を伴うインクジェットインク

インクの噴出性能および貯蔵安定性を損なうことなく蛍光ペンおよび指の汚れに対する印刷の堅牢度を増強させる、自己分散型顔料着色剤と、ポリエーテルジオールから誘導された幾つかのヒドロキシル基末端ポリウレタンとを含む、印刷向けインクジェット用インクが提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月4日出願の米国仮特許出願第61/266,786号明細書からの35U.S.C.§119に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、インクジェットインク、詳細には、自己分散型顔料と選択されたポリウレタンインク添加剤とを含む水性インクジェットインク、およびこれらをインクジェットインク中で使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
水性インクジェットインクに適した顔料は一般に、当該技術分野において周知である。従来、顔料は、ビヒクル中で顔料の安定した分散を生成するために、ポリマー分散剤または界面活性剤などの分散助剤によって安定化されていた。さらに最近では、「自己分散性」または「自己分散型」顔料(以下「自己分散型顔料」と呼ぶ)が開発されている。自己分散型顔料は、分散剤無しで水中に分散可能である。
【0004】
自己分散型顔料は多くの場合、同じ顔料装填量でより安定性が高くより粘度が低いことから、従来の分散剤で安定化された顔料に比べて有利である。これは、最終的インクにおいてより大きな調合自由度を提供することができる。
【0005】
しかしながら自己分散型顔料インクで行なわれた印刷は、擦り落とされやすくかつ蛍光ペン耐性が低い傾向にある。画像特性を改善するための自己分散型顔料と分散剤安定化顔料の組合せは、欧州特許第1158030号明細書中で教示されているが、CABOJET(商標)200を使用した場合に、結果として蛍光ペン耐性に関する性能が低くなることを開示している。欧州特許第1114851号明細書において、スルホン化C.I.Pigment Red 122は、印刷された文字上を蛍光ペンでこすった場合に摩擦/引っかき耐性の低いことが示されている。
【0006】
ポリウレタンは、米国特許第7,176,248号明細書および米国特許公開第2005/0176848号明細書中にインク添加剤として記載されている。しかしながら、いずれも、余剰のイソシアネート反応基が存在しているポリエーテルジオール由来のポリウレタンと自己分散型顔料との組合せについて記述していない。
【0007】
米国特許第7,348,368号明細書では、ポリウレタンはインクジェットインクに対する添加剤としての使用について記述されており、これらのポリウレタンはポリマーにより分散された顔料と共にそして50超の酸性度指数で使用されている。米国特許公開第2008/0207811号明細書において、ポリウレタンは、60超の酸性度指数を有するものとして記載されており、ポリマー分散型顔料を用いた膨大な実施例が示されている。ただし、これらのいずれも、反復エーテル基内に少なくとも3個の炭素原子を有するポリエーテルジオールから誘導される50未満の酸性度指数を伴うヒドロキシル基末端ポリウレタンと自己分散型顔料の組合せについては記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリウレタン添加剤を伴う水性分散系に基づくインクは、インクジェット印刷の多くの側面において改良されたインクジェットインクを提供してきたものの、詳細にはサーマルインクジェットプリントヘッドから印刷された場合に優れた印刷品質および優れた噴出性を提供する自己分散型顔料の改良型インクジェットインク調合に対するニーズはなおも存在している。サーマルインクジェットプリントヘッドが圧電インクジェットプリントヘッドに比べその噴出性および信頼性に関してポリマー添加剤の添加に対する許容度が低いということは、当業者にとって周知である。本発明は、インクの他の側面、すなわち分散安定性、長いノズル寿命などを維持しながら、改善された光学密度を有する組成物を提供することによって、このニーズを満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、噴出性能を損なうことなく印刷画像の堅牢性を改善するための、自己分散型着色剤を含む水性インクに対するポリエーテルジオールから誘導されたヒドロキシル基末端ポリウレタンの添加を提供している。
【0010】
さらに、実施形態は、ポリエーテルジオールから誘導されたヒドロキシル基末端ポリウレタンを添加することによる、自己分散型顔料を含むインクの噴出性能の改善を提供する。
【0011】
さらなる実施形態では、
a. 自己分散型顔料着色剤と;
b. 水性ビヒクルと;
c. ポリエーテルジオール、イオン基で置換されたジオール、およびイソシアネートを含むヒドロキシル基末端ポリウレタンと、
を含む水性インクジェットインク組成物において、
− ポリエーテルジオールがZ1すなわち、
【0012】
【化1】

【0013】
であり、式中
− pは2以上であり;
− mは3〜約12であり;
− 各R5およびR6は、水素、アルキル、置換アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され;各R5またはR6は同じまたは異なるものであり、R5およびR6は任意に接合されて環状構造を形成してよく;
− イオン基で置換されたジオールがZ2であり、少なくとも1つのZ1および少なくとも1つのZ2がポリウレタン組成物中に存在していなければならず;
− Z1およびZ2から誘導されるイソシアネート反応基の当量が、ヒドロキシル基末端ポリウレタンをもたらすイソシアネート基よりも大きく;
− ポリウレタンが少なくとも10〜50の酸性度指数を有する、
水性インクジェット組成物が提供されている。
【0014】
インクジェットインクが、任意には、当業者にとっては周知の他の添加剤およびアジュバントを含んでいて良い、さらなる実施形態。
【0015】
自己分散型着色剤が、顔料の表面上にカルボニル、カルボキシル、ヒドロキシルおよびスルホンからなる群から選択された少なくとも1つの官能基を結合させるために、次亜塩素酸、スルホン酸またはオゾンでその表面が酸化的に処理された顔料を含んでいる、さらなる実施形態。
【0016】
さらに別の実施形態において、自己分散型顔料は、アニオン親水性化学基を含む自己分散型カーボンブラック顔料である水性インクジェット組成物。
【0017】
さらに別の実施形態において、ポリウレタンインク添加剤と共に自己分散型顔料を含み、インクの総重量に基づいて約0.05〜約5wt%のポリウレタンインク添加剤を有し、インクの総重量に基づいて約0.1〜約10wt%の顔料、25℃で約20ダイン/cm〜約70ダイン/cmの範囲内の表面張力および25℃で約30cP未満の粘度を有する水性顔料インクジェットインク。
【0018】
別の実施形態は、少なくとも3つの異なる色のインク(例えばCMY)そして適切には少なくとも4つの異なる色のインク(例えばCMYK)を含み、インクのうち少なくとも1つが、上述の自己分散型顔料とポリウレタンを伴う水性インクジェットインクである、カラー印刷用のインクジェットインクセットを提供している。
【0019】
さらに別の実施形態は、画像が印刷された時点でその画像が自己分散型顔料に比べて改善された光学密度を有するような形でインクを製造するための、自己分散型顔料と選択されたポリウレタンインク添加剤の組合せを提供している。これらの改善により、インクジェットインクは、特に写真印刷用の高度なカラー画像の作製を成功させることができる。自己分散型顔料と選択されたポリウレタンインク添加剤の組合せは、より安定性が高く、圧電およびサーマルインクジェットカートリッジの両方から噴出可能であるインクを生成する。
【0020】
別の実施形態において、本発明に係るインクセットは少なくとも3つの異なる色のインク(例えばCMY)および任意には少なくとも4つの異なる色のインク(例えばCMYK)を含んでおり、ここでインクのうち少なくとも1つは、
(a)自己分散型顔料着色剤と;
(b)水性ビヒクルと;
(c)上述の通りのポリエーテルジオール、イオン基で置換されたジオール、およびイソシアネートから誘導されたポリウレタンと;
を含む水性インクジェットインクである。
【0021】
一実施形態は、少なくとも4つの異なる色のインク(CMYK)を含むインクセットにおいて、ブラック(K)インクが
(a) ブラックの自己分散型顔料着色剤と;
(b) 水性ビヒクルと;
(c) 上述の通りのポリエーテルジオール、イオン基で置換されたジオール、およびイソシアネートから誘導されたポリウレタンと、
を含むインクセットを提供する。
【0022】
インクセットの他のインクは適切には同様に水性インクであり、着色剤として染料、顔料またはそれらの組合せを含んでいてよい。このような他のインクは、一般に当業者にとっては周知である。
【0023】
別の態様において、本発明は、基材上にインクジェット印刷する方法において、任意の実行可能な順序で、
(a)デジタルデータ信号に対する応答性を有するインクジェットプリンタを提供するステップと;
(b)印刷すべき基材をプリンタに装填するステップと;
(c)水性ビヒクルと、自己分散型顔料と、上述の通りのポリエーテルジオール、イオン基で置換されたジオール、およびイソシアネートを含むヒドロキシル基末端ポリウレタンとを含むインクジェットインクをプリンタに装填するステップと;
(d)基材上に印刷済み画像を形成するために、デジタルデータ信号に応答して、水性インクジェットインクを用いて基材上に印刷を行なうステップと、
を含む方法を提供している。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、基材上にインクジェット印刷する方法において、任意の実行可能な順序で、
(a)デジタルデータ信号に対する応答性を有するインクジェットプリンタを提供するステップと;
(b)印刷すべき基材を前記プリンタに装填するステップと;
(c)プリンタにインクジェットインクセットを装填するステップであって、このインクセット中のインクの少なくも1つが水性ビヒクルと、自己分散型顔料と、上述の通りのポリエーテルジオール、イオン基で置換されたジオール、およびイソシアネートを含むヒドロキシル基末端ポリウレタンを含んでいるステップと;
(d)基材上に印刷済み画像を形成するために、デジタルデータ信号に応答して、水性インクジェットインクを用いて基材上に印刷を行なうステップと、
を含む方法を提供している。
【0025】
本発明のこれらのおよび他の特徴および利点は、以下の詳細な説明を読むことにより、当業者がより容易に理解するものである。
【0026】
明確さを期して別個の実施形態として以上および以下で記述されている本発明の一部の特徴は、単一の実施形態の組合せの形で提供されてもよい。
【0027】
逆に、単一の実施形態に関連して記載されている本発明のさまざまな特徴は、別個にまたは任意の下位組合せの形で提供されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0028】
別段の記載または定義のないかぎり、本明細書で使用されている全ての技術的および科学的用語は、本発明が関係する技術分野における当業者が一般に理解する意味を有する。
【0029】
別段の記載のないかぎり、全ての百分率、部分、比率などは、重量に基づくものである。
【0030】
量、濃度または他の値またはパラメータが、好ましい上位値および好ましい下位値の範囲、好ましい範囲またはリストのいずれかとして示されている場合、これは、範囲が別個に開示されているか否かとは無関係に、任意の上位範囲限界または好適値と任意の下位範囲限界または好適値の任意の対からなる全ての範囲を特定的に開示するものとして理解すべきである。一数値範囲が本明細書に記されている場合、別段の記載のないかぎり、この範囲は、その端点およびその範囲内の全ての整数および分数を含むように意図される。
【0031】
「約」という用語が1つの値または一範囲の端点を記述する上で使用されている場合、本開示は、言及されている具体的値または端点を含むものとして理解されるべきである。
【0032】
本発明中で使用される増強されたまたは改善された「印刷品質」に対する言及は、印刷画像の光学密度および堅牢度(印刷された画像からのインクの除去に対する耐性)[例えば摩擦堅牢度(指摩擦)、水堅牢度(水滴)およびスミア堅牢度(蛍光ペンストローク)を含む]といった一部の面が増大していることを意味する。
【0033】
本明細書で使用される「自己分散型顔料」という用語は、「自己分散性」または「自己分散」顔料を意味する。
【0034】
本明細書で使用される「分散系」という用語は、1つの相が、バルク物質全体を通して分布した細かく分割された粒子(多くの場合コロイドサイズ範囲内のもの)で構成され、これらの粒子が分散相または内部相であり、バルク物質が連続相または外部相である2相系を意味する。
【0035】
本明細書で使用される「分散剤」という用語は、多くの場合コロイドサイズの極めて細かい固体粒子の均一で最大限の分離を促進するために懸濁用媒質に添加される表面活性剤を意味する。顔料用としての分散剤は、最も多くの場合ポリマー分散剤であり、通常、分散剤と顔料は分散用装置を用いて組み合わされる。
【0036】
本明細書で使用される「OD」という用語は光学密度を意味する。
【0037】
本明細書で使用される「官能化度」という用語は、1単位表面積あたりの、自己分散型顔料の表面上に存在する親水基の量を意味する。
【0038】
本明細書で使用される「芳香族」という用語は、3つの2重結合を含む6炭素環を有するベンゼンを典型とする1つ以上の環を含む環状炭化水素を意味する。芳香族には、環状炭化水素例えばナフタレンおよび類似の多環芳香族化合物が含まれる。
【0039】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、アルカンから誘導されてよいパラフィン系炭化水素基を意味し、式はCn2n+1である。置換アルキルは、カルボキシル、アミンヒドロキシルなどのヘテロ原子置換を含む任意の置換を有していてよい。
【0040】
本明細書で使用される「アラルキル」という用語は、アルキル基で置換されたアリール基を意味する。
【0041】
本明細書で使用される「水性ビヒクル」という用語は、水または水と少なくとも1つの水溶性の有機溶媒(共溶媒)との混合物を意味する。
【0042】
本明細書で使用される「イオン性基」という用語は、潜在的にイオンを含む基を意味する。本明細書で使用される「AN」という用語は、酸性度指数すなわち固体ポリマー1グラムあたりのKOHmg数を意味する。
【0043】
本明細書で使用される「中和剤」という用語は、イオン性基をより親水性の高いイオン(塩)基に転換するのに有用である全てのタイプの作用物質を包含することを意味する。
【0044】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、著しい度合、すなわちほぼ全てであることを意味する。
【0045】
本明細書で使用される「Mn」という用語は、数平均分子量を意味する。
【0046】
本明細書で使用される「Mw」という用語は、重量平均分子量を意味する。
【0047】
本明細書で使用される「Pd」という用語は、重量平均分子量を数平均分子量で除したものである多分散性を意味する。
【0048】
本明細書で使用される「d50」という用語は、粒子の50%がより小さいものである粒径を意味し;「d95」は、粒子の95%がより小さいものである粒径を意味する。
【0049】
本明細書で使用される「cP」という用語は、粘度の単位であるセンチポイズを意味する。
【0050】
本明細書で使用される「プレポリマー」という用語は、重合プロセスにおける中間体であり、同様にポリマーとみなすことのできるポリマーを意味する。
【0051】
本明細書で使用される「PUD」という用語は、本明細書中で記述されているポリウレタン分散系を意味する。
【0052】
本明細書で使用される「DBTL」という用語は、ジブチルスズジラウレートを意味する。
【0053】
本明細書で使用される「DMPA」という用語は、ジメチロールプロピオン酸を意味する。
【0054】
本明細書で使用される「DMBA」という用語は、ジメチロールブチル酸を意味する。
【0055】
本明細書で使用される「EDTA」という用語は、エチレンジアミンテトラ酢酸を意味する。
【0056】
本明細書で使用される「HDI」という用語は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを意味する。
【0057】
本明細書で使用される「GPC」という用語はゲル透過クロマトグラフィを意味する。
【0058】
本明細書で使用される「IPDI」という用語は、イソホロンジイソシアネートを意味する。
【0059】
本明細書で使用される「TMDI」という用語は、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを意味する。
【0060】
本明細書で使用される「TMXDI」という用語は、m−テトラメチレンキシリレンジイソシアネートを意味する。
【0061】
本明細書で使用される「ETEGMA//BZMA//MAA」という用語は、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸のブロックコポリマーを意味する。
【0062】
本明細書で使用される「T650」という用語は、TERATHANE(登録商標)650を意味する。
【0063】
本明細書で使用される「PO3G」という用語は、1,3−プロパンジオールを意味する。
【0064】
本明細書で使用される「DMPA」という用語は、ジメチロールプロピオン酸を意味する。
【0065】
本明細書で使用される「NMP」という用語は、n−メチルピロリドンを意味する。
【0066】
本明細書で使用される「TEA」という用語は、トリエチルアミンを意味する。
【0067】
本明細書で使用される「TEOA」という用語は、トリエタノールアミンを意味する。
【0068】
本明細書で使用される「THF」という用語は、テトラヒドロフランを意味する。
【0069】
本明細書で使用される「Tetraglyme」という用語は、テトラエチレングリコールジメチルエーテルを意味する。
【0070】
別段の指摘のないかぎり、上述の化学物質はAldrich(Milwaukee,WI)または他の類似の実験室用化学物質供給業者から得たものである。
【0071】
TERATHANE650は、Invista,Wichita,KS社から購入される分子量650のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)である。
【0072】
TERATHANE250は、分子量250のポリテトラメチレンエーテルグリコールである。
【0073】
本発明中の材料、方法および例は、単に例示的なものにすぎず、別段の明示的記載のないかぎり限定的であることは意図されていない。
【0074】
インクジェットインク中で使用するための自己分散型顔料の有用性を拡大するのに必要とされる性能パラメータ間の平衡を求める間に、自己分散型顔料と組合せた形でのポリウレタン添加剤によって印刷特性および印刷の耐久性を改善できることが発見された。ポリウレタン添加剤の特性を入念に選択した場合、自己分散型顔料および特異的ポリウレタン添加剤を伴うインクは優れた印刷特性を導くだけでなく、全てのインクジェット噴出システム内で性能を発揮するために必須の特性を有することもできた。この組合せには、ポリウレタン添加剤が低い酸性度指数を有し、反復エーテル単位内に少なくとも3個の炭素が存在するポリエーテルジオールから誘導されることが求められる。明らかに、これらのポリエーテルジオールは、オキシド例えばエチレンオキシドから誘導されるポリエーテルに比べ疎水性が高く、インクに改善された特性を付与する。同様に、ポリウレタンはヒドロキシル末端基を有する。ポリエーテルジオールとイオン基で置換されたジオールに由来するイソシアネート反応基の当量は、ヒドロキシル基末端ポリウレタンをもたらすイソシアネート基よりも大きい。
【0075】
着色剤
本発明の顔料着色剤は、自己分散顔料である。自己分散型顔料は、別個の分散剤の必要なく安定した分散系を可能にするため分散性付与基で表面改質されている。水性ビヒクル中での分散のため表面改質には親水基、より具体的にはイオン性親水基の添加が関与している。自己分散型顔料の製造方法は周知であり、例えば米国特許第5,554,739号明細書および米国特許第6,852,156号明細書中に見出すことができる。
【0076】
自己分散型顔料着色剤はさらにそのイオン性に応じて特徴づけされ得る。アニオン自己分散型顔料は水性媒質中で、アニオン表面電荷を伴う粒子を生み出す。逆にカチオン自己分散型顔料は、水性媒質中で、カチオン表面電荷を伴う粒子を生成する。粒子表面電荷は例えば、粒子表面にアニオンまたはカチオン部分を伴う基を付着させることによって付与され得る。本発明の自己分散型顔料は、必ずというわけではないが、アニオン親水性化学基を有する。
【0077】
アニオン自己分散型顔料の表面に付着されるアニオン部分は、任意の適切なアニオン部分であり得るが、好ましくは以下に示す通りの化合物(A)または(B)である:−CO2Y(A) −SO3Y(B)なお式中、Yは有機塩基の共役酸;アルカリ金属イオン;「オニウム」イオン、例えばアンモニウム、ホスホニウムおよびスルホニウムイオン;および置換「オニウム」イオン、例えばテトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウムおよびトリアルキルスルホニウムイオン;または任意の適切なカチオン対イオンからなる群から選択される。有用なアニオン部分には同様に、ホスフェートおよびホスホネートも含まれる。より適切であるのは、例えば米国特許第5,571,311号明細書、米国特許第5,609,671号明細書および米国特許第6,852,156号明細書中に記載されているタイプA(「カルボキシレート」)のアニオン部分である;あるいは、スルホン化自己分散型顔料を使用してよく、これらは、例えば米国特許第5,571,331号明細書;米国特許第5,928,419号明細書および欧州特許出願公開第146090A1号明細書中に記載されている。
【0078】
色の濃さを最大にし、優れた噴出を得るためには、小さい着色剤粒子を使用しなければならない。d50として報告されている自己分散型顔料の粒径は一般に約50ナノメートルから約500ナノメートルの範囲内、より具体的には75〜約250ナノメートルの範囲内、より具体的には約100〜約200ナノメートルの範囲内であってよい。
【0079】
インクの本発明で使用されている自己分散型顔料のレベルは、印刷画像に所望の光学密度を付与するのに必要とされるレベルである。自己分散型顔料レベルは、インクの重量で約0.01〜約10%の範囲内であってよい。
【0080】
自己分散型顔料は、ブラック例えばカーボンブラックに基づくものであってよく、あるいはAmerican Association of Textile Chemists and Colorists Color Indexに基づくものなどの着色顔料、例えばPigment Blue PB15:3およびPB15:4シアン、Pigment Red PR122およびPR123マゼンタ、およびPigment Yellow PY128およびPY74イエローであってよい。
【0081】
本発明で使用される自己分散型顔料は、例えば、官能基または官能基を含む分子を顔料の表面上にグラフトすることによってかまたは、物理的処理(例えば真空プラズマ)または化学的処理(例えばオゾン、次亜塩素酸などでの酸化)によって調製されてよい。1つの顔料粒子に単一タイプのまたは複数のタイプの親水性官能基を結合させてよい。官能化のタイプおよび官能化度は、例えば、インク中の分散安定性、色濃度およびインクジェットプリントヘッドの前端部における乾燥特性を考慮に入れることで適切に決定されるかもしれない。
【0082】
一実施形態において、自己分散型顔料上のアニオン親水性化学基は、主としてカルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル基あるいはカルボキシル、カルボニルおよびヒドロキシル基の組合せであり;より具体的には、自己分散型顔料上の親水性官能基は直接付着されており、主としてカルボキシル基、あるいはカルボキシルとヒドロキシルの組合せである。
【0083】
直接付着された1つまたは複数の親水性官能基を有する顔料は、例えば米国特許第6,852,156号明細書中に開示されている方法にしたがって生産されてよい。米国特許第6,852,156号明細書中の方法により処理されたカーボンブラックは、水中で安定した分散系を提供するように塩基中和された高い表面活性の水素含有量を有する。酸化剤はオゾンである。
【0084】
本発明の自己分散型顔料は、アニオン基の密度が顔料表面積1平方メートルあたり約3.5μモル未満(3.5μmol/m2)、そしてより具体的には約3.0μmol/m2未満である官能化度を有していてよい。約1.8μmol/m2未満そしてより具体的には約1.5μmol/m2未満の官能化度も同様に適切であり、一部の特定タイプの自己分散型顔料にとって有用であるかもしれない。
【0085】
ポリウレタンインク添加剤
ヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤は、ポリエーテルジオール、イオン基で置換されたジオール、およびイソシアネートから誘導されており、ここでポリエーテルジオールはZ1すなわち、
【0086】
【化2】

【0087】
であり、式中
− pは2以上であり;
− mは3〜約12であり;
− 各R5およびR6は、水素、アルキル、置換アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され;各R5またはR6は同じまたは異なるものであり、R5およびR6は任意に接合されて環状構造を形成してよく;
− イオン基で置換されたジオールはZ2であり、少なくとも1つのZ1および少なくとも1つのZ2がポリウレタン組成物中に存在していなければならず;
− Z1およびZ2から誘導されるイソシアネート反応基の当量は、ヒドロキシル基末端ポリウレタンをもたらすイソシアネート基よりも大きく;
− 前記ポリウレタンは少なくとも10〜50の酸性度指数を有する。
【0088】
ヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤は、ポリウレタン分散系であり、インクに添加される他の成分とは全く異なるものである。「ポリウレタン分散系」という用語は、当業者がそれを理解する通りに、ウレタン基そして任意には尿素基を含むポリマーの水性分散系を意味する。これらのポリマーは、水中でポリマーの安定した分散を維持するのに必要な程度まで親水性官能性も同様に取り込んでいる。イオン基を含むZ2ジオールは、ポリウレタン分散系のイオン安定化を提供する。
【0089】
ヒドロキシ基末端ポリウレタンインク添加剤の調製におけるステップは、
(a)(i)少なくとも1つのポリエーテルジオールZ1成分、(ii)ジイソシアネートを含む少なくとも1つのポリイソシアネート成分、および(iii)イオン基を含む少なくとも1つのイソシアネート反応性成分Z2を含む少なくとも1つの親水性反応物質、を含む反応物質を提供するステップと;
(b) 水混和性有機溶媒の存在下で(i)、(ii)および(iii)を反応させて、イソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーを形成させるステップと;
(c) 水を添加して水性分散系を形成するステップと;
を含み、Z2はイオン性基を含み、水の添加時点(ステップ(c))でイオン性基は、ポリウレタンを安定して分散できるような量で(イオン性基のタイプに応じて)酸または塩基を添加することによってイオン化されてよい。この中和は、ポリウレタン調製中の任意の好適な時点で行うことができる。
【0090】
反応の一部の時点において(一般的には水を添加した後と連鎖停止の後)、有機溶媒は真空下で実質的に除去され、本質的に溶媒を含まない分散系を生成する。
【0091】
ポリウレタンを調製するために使用されるプロセスは一般に、最終生成物中に上述の構造のポリウレタンポリマーが存在するという結果をもたらすということを理解しなければならない。しかしながら、最終生成物は典型的には生成物の混合物であり、そのうち一部分は上述のポリウレタンポリマーであり他の部分は他のポリマー生成物の正規分布であり、変動する比率で未反応モノマーを含むかもしれない。結果として得られるポリマー不均質性は、選択された反応物質ならびに選択された反応物質条件によって左右される。
【0092】
ヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤のポリエーテルジオール成分
ジオール成分{Z1}は、3〜12個のメチレン基を伴う(m=3〜12)ポリエーテルジオールに基づいている。ポリエーテルジオールは個別に、または他のジオールとの混合物の形で使用可能である。
【0093】
一実施形態において、Z1として示されるポリエーテルジオールは、他のオリゴマーおよび/またはポリマー多官能性イソシアネート−反応性化合物、例えばポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリチオアミン、ポリヒドロキシチオールおよびポリヒドロキシルアミンと配合されてよい。配合される場合、二官能基成分そしてより適切には、例えばポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリレートジオール、ポリオレフィンジオールおよびシリコーンジオールを含む1つ以上のジオールを使用するのが適切である。
【0094】
pが1超である場合、Z1に示されたポリエーテルジオールは、反復単位の少なくとも50%がエーテル化学基内に3〜12個のメチレン基を有しているオリゴマーおよびポリマーである。より具体的には、(m=3〜12であるZ1において)反復単位の約75%〜100%、さらにより具体的には約90%〜100%、そしてさらに一層具体的には約99%〜100%がエーテル化学基内の3〜12個のメチレン基である。適切なメチレン基数は3または4個である。Z1中に示されたポリエチレンジオールは、アルファ、オメガジオールを含むモノマーの重縮合によって調製され得、結果として以上で示された構造的リンケージを含むポリマーまたはコポリマーをもたらす。上述の通り、反復単位の少なくとも50%は3〜12個のメチレンエーテル単位である。
【0095】
ポリエーテルジオールに基づくオリゴマーおよびポリマーは、Z1中のエーテルのアルキル部分に3〜12個のメチレン基の反復基を2〜50個有しており、したがってpは2〜50であってよい。任意には、pは、Z1中のエーテルのアルキル部分内で3〜12個のメチレン基の反復基の5〜20であってよい。pが反復基の数を表わす場合、R5およびR6は独立して水素、アルキル、置換アルキル、およびアリールであってよく;R5とR6は同じかまたは異なるものであり、R5とR6を任意に接合して環状構造を形成してよい。一般に、置換アルキルは、ポリウレタン調製中不活性であるように意図されている。
【0096】
3〜12個のメチレンエーテル単位に加えて、より少量の他の単位、例えばエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドから誘導される他のポリアレキレンエーテル反復単位が存在してよい。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのエポキシドから誘導されるエチレングリコールおよび1,2−プロピレングリコールの量は、ポリエーテルジオール総量の10%未満に制限される。
【0097】
ポリエーテルジオールは1,3−プロパンジオール、(PO3G)から誘導されてよい。利用されるPO3Gは、さまざまな周知の化学的経路のいずれかによってかまたは生化学的変換経路によって得られるかもしれない。1,3−プロパンジオールは、再生可能な供給源から生化学的に得られるかもしれない(「生物学的に誘導された」1,3−プロパンジオール)。
【0098】
1超のpを有するZ1として示されたポリエーテルジオールが提供される場合、このジオールは、約200〜約5000、そしてより具体的には約240〜約3600の範囲内の数平均分子量(Mn)を有していてよい。ポリエーテルジオールの配合物も同様に使用可能である。例えば、Z1として示されたポリエーテルジオールは、より高いおよびより低い分子量の配合物を含むことができ、さらにポリエーテルジオールは、約1000〜約5000の数平均分子量を有してよく、低分子量のポリエーテルジオールは約200〜約750の数平均分子量を有するかもしれない。配合されたポリエーテルジオールのMnはなお、約250〜約3600の範囲内にあってよい。典型的に多分散性のポリマーを有するポリエーテルジオールが本明細書における使用に適しているかもしれず、多分散性(すなわちMw/Mn)は適切には約1.0〜約2.2、より具体的には約1.2〜約2.2そしてさらに一層具体的には約1.5〜約2.1である。多分散性は、Z1として示されているポリエーテルジオールの配合物を使用することによって調整可能である。
【0099】
イオン基で置換されたジオール
イオン基で置換されたジオールはイオン基および/またはイオン性基を含む。これらの反応物質は、適切には1つまたは2つ、より適切には2つのイソシアネート反応基、ならびに少なくとも1つのイオン基またはイオン性基を含む。本発明中で記述されているヒドロキシル末端ポリエーテルポリウレタンの構造的説明の中で、イオン基を含む反応物質はZ2と呼称されている。
【0100】
イオン分散基の例としては、カルボキシル基(−COOM)、ホスフェート基(−OPO32)、ホスホネート基(−PO32)、スルホネート基(−SO3M)、4級アンモニウム基(−NR3Y、なお式中Yは塩素またはヒドロキシルなどの一価のアニオンである)、または他の任意の有効なイオン基が含まれる。Mは、カチオン例えば一価の金属イオン(例えばNa+、K+、Li+など)、H+、NR4+であり、各R4は、独立してアルキル、アラルキル、アリールまたは水素であり得る。これらのイオン分散基は典型的に、ポリウレタン主鎖から張り出して位置づけされている。
【0101】
一般にイオン性基は、それらが酸(例えばカルボキシル−COOH)または塩基(例えば1級、2級または3級アミン−NH2、−NRH、または−NR2)形態をとるという点を除いて、イオン基に対応する。イオン性基は、以下で論述する通り分散系/ポリマー調製プロセス中にそのイオン形態に容易に転換されるようなものである。
【0102】
イオン基または潜在的イオン基は、ポリウレタンを分散系の水性媒質中で分散可能にするのに充分なイオン基含有量を(必要な場合には中和を伴って)提供する量で、ヒドロキシル基末端ポリウレタン中に化学的に取込まれる。典型的イオン基含有量は、ヒドロキシル基末端ポリウレタンのポリウレタン100gあたり約10〜約60ミリグラム当量(meq)まで、具体的には約20〜約50meqの範囲内である。
【0103】
これらの基を取込むための適切な化合物としては、(1)イオン基および/またはイオン性基を含むモノイソシアネートまたはジイソシアネートおよび(2)イソシアネート反応基とイオン基および/またはイオン性基の両方を含む化合物が含まれる。本開示に関連して、「イソシアネート反応基」という用語は、関連技術分野においてイソシアネートと反応するものであることが当業者に周知である基、そして適切にはヒドロキシル基、1級アミノおよび2級アミノ基を含むものとして考慮される。
【0104】
イオン基または潜在的イオン基を含むイソシアネートの例としては、スルホン化トルエンジイソシアネートおよびスルホン化ジフェニルメタンジイソシアネートがある。
【0105】
イソシアネート反応基およびイオン基または潜在的イオン基を含む化合物に関しては、イソシアネート反応基は典型的にはアミノおよびヒドロキシル基である。潜在的イオン基またはその対応するイオン基は、カチオンまたはアニオン基であってよいが、アニオン基が最も適切である。アニオン基の例としては、カルボキシレートおよびスルホネート基が含まれる。カチオン基の例には、4級アンモニウム基およびスルホニウム基が含まれる。
【0106】
アニオン基置換の場合、基はカルボン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基、リン酸基およびホスホネート基であり得る。酸性塩は、NCOプレポリマーの形成の前、途中または後のいずれかで、適切にはNCOプレポリマーの形成後に、対応する酸性基を中和することによって形成される。
【0107】
適切なカルボキシル基含有化合物は、(HO)jQ(COOH)kという構造に対応するヒドロキシ−カルボン酸であり、式中Qは1〜12個の炭素原子を含む直鎖または分岐炭化水素ラジカルで、jは1または2、適切には2であり、kは1〜3、より適切には1または2そして最も適切には1である。
【0108】
これらのヒドロキシ−カルボン酸の例としては、クエン酸、酒石酸、ヒドロキシピバリン酸が含まれる。特に適切な酸は、j=2、k=1である上述の構造を有するものである。これらのジヒドロキシアルカン酸は、米国特許第3,412,054号明細書中に記載されている。特に適切なジヒドロキシアルカン酸は、
【0109】
【化3】

【0110】
という構造式で表わされるアルファ、アルファジメチロールアルカン酸であり、式中Q’は、水素または1〜8個の炭素原子を含むアルキル基である。最も適切な化合物は、アルファ、アルファ−ジメチロールプロピオン酸、すなわち上記式中Q’がメチルである化合物である。
【0111】
ヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤の安定した分散系を得るためには、結果として得られるポリウレタンが水性媒質中に安定した形で分散した状態にとどまることになるよう、充分な量の酸性基が中和されなければならない。一般に、酸性基の少なくとも約75%、適切には少なくとも約90%が、対応する塩基に中和される。
【0112】
NCOプレポリマー内への取込みの前、途中または後のいずれかで酸性基を塩基に転換するための適切な中和剤としては、3級アミン、アルカリ金属カチオンおよびアンモニアが含まれる。適切には、トリアルキル置換3級アミン、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジルチルシクロヘキシルアミンおよびジメチルエチルアミン。
【0113】
中和は、プロセス中の任意の時点で発生してよい。典型的な手順には、プレポリマーの少なくとも一部の中和が含まれる。
【0114】
イオン安定化基が酸である場合、酸性基は、ポリウレタン1.0グラムあたり少なくとも約10ミリグラムのKOH、任意にはポリウレタン1.0グラムあたり20ミリグラムのKOHという、当業者には酸性度指数{AN}(固体ポリマー1グラムあたりのKOHmg数)として公知の、尿素末端ポリウレタンについての酸性基含有量を提供するのに充分な量で、取り込まれる。酸性度指数(AN)の上限は約50である。
【0115】
これらのヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤についてのヒドロキシル価は、固体ポリマー1グラムあたり5〜50mgのKOHである。ヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤は、約2000〜約30000の数平均分子量を有する。適切には、分子量は約3000〜20000である。
【0116】
ポリウレタンインク添加剤は、約60重量%まで、具体的には約15〜約60重量%そして最も具体的には約30〜約45重量%の固形分含有量を有するポリウレタン粒子の一般に安定した水性分散系である。しかしながら、分散系を所望の任意の最小固形分含有量まで希釈することがつねに可能である。
【0117】
他のイソシアネート反応性成分
上述の通り、Z1として示されているポリエーテルジオールは、他の多官能性イソシアネート反応性成分、とりわけオリゴマーおよび/またはポリマーポリオールと配合されてよい。
【0118】
他の適切なジオールは、少なくとも2つのヒドロキシル基を含み、約60〜約6000の分子量を有する。これらのうち、他のポリマージオールは、数平均分子量によって最もよく定義され、約200〜約6000、具体的には約400〜約3000そしてより具体的には約600〜約2500の範囲内であり得る。分子量は、ヒドロキシル基分析(OH価)により決定可能である。
【0119】
ポリマーポリオールの例としては、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリ(メト)アクリレート、ポリエステルアミド、ポリチオエーテルおよび混合ポリマー例えば、エステルとカーボネートリンケージの両方が同じポリマー内に見られるポリエステル−ポリカーボネートが含まれる。これらのポリマーの組合せも使用することができる。例えば、同じポリウレタン合成において、ポリエーテルポリオールおよびポリ(メト)アクリレートポリオールを使用してよい。
【0120】
適切なポリエステルポリオールには、任意には三価アルコールも追加してよい多価アルコール、具体的には二価のアルコールと、多塩基(適切には二塩基)のカルボン酸との反応生成物が含まれる。
【0121】
ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族および/または複素環式またはその混合物であってよく、これらは例えばハロゲン原子で置換されていてもかつ/または不飽和であってもよい。
【0122】
1のポリエーテルジオールに加えて使用可能である適切なポリエーテルポリオールは、公知の要領で、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリンまたはその混合物などのアルキレンオキシドと反応性水素原子を含む出発化合物とを反応させることによって得られる。ポリエーテルは、約10重量%超のエチレンオキシド単位を含んでいてはならない。
【0123】
イソシアネート重付加反応において二官能性である上述の成分に加えて、NCOプレポリマーまたはポリウレタンの分岐が所望される場合には、ポリウレタン化学において一般に公知である一官能性さらには小部分の三官能性およびそれより高い官能性の成分、例えばトリメチロールプロパンまたは4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネートを使用してもよい。
【0124】
しかしながら、NCO官能性プレポリマーが実質的に線状であることが適切であり、これは、プレポリマー出発成分の平均官能性を2.1以下に維持することによって達成されるかもしれない。
【0125】
ポリイソシアネート成分
適切なポリイソシアネートは、イソシアネート基に結合された芳香族基、脂環式基または脂肪族基のいずれかを含むものである。これらの化合物の混合物も使用してよい。適切なのは、脂環式または脂肪族部分に結合されたイソシアネートを伴う化合物である。芳香族イソシアネートが使用される場合、脂環式または脂肪族イソシアネートも存在する。R1は脂肪族基と置換され得る。
【0126】
ジイソシアネートは適切であり、ポリエーテルグリコール、ジイソシアネートおよびジオールからポリウレタンおよび/またはポリウレタン−尿素を調製する上で有用であるあらゆるジイソシアネートを本発明において使用することができる。
【0127】
適切なジイソシアネートの例としては、2,4−トルエンジイソシアネート(TDI);2,6−トルエンジイソシアネート;トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI);4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI);4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI);3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート(TODI);ドデカンジイソシアネート(C12DI);m−テトラメチレンキシリレンジイソシアネート(TMXDI);1,4−ベンゼンジイソシアネート;トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート;1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI);1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);4,6−キシリエンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI);およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。IPDIおよびTMXDIがさらに好適である。
【0128】
ジイソシアネートの重量に基づいて適切には約3wt%未満の少量のモノイソシアネートまたはポリイソシアネートをジイソシアネートと混合した形で使用することができる。有用なモノイソシアネートの例としてはアルキルイソシアネート、例えばオクタデシルイソシアネートおよびアリールイソシアネート、例えばフェニルイソシアネートが含まれる。ポリイソシアネートの例は、トリイソシアナトトルエンHDI三量体(Desmodur3300)、およびポリマーMDI(Mondur MRおよびMRS)である。
【0129】
水性ビヒクル
適切な水性ビヒクル混合物の選択は、具体的利用分野の要件、例えば所望の表面張力および粘度、選択された着色剤、インクの乾燥時間およびインクが印刷される基材のタイプなどに左右される。本発明において利用してよい水溶性有機溶媒の代表例は、米国特許第5,085,698号明細書中に開示されているものである。
【0130】
水と少なくとも1つの水混和性溶媒の混合物が使用される場合、水性ビヒクルは典型的に約30%〜約95%の水を含み、残部(すなわち約70%〜約5%)は水溶性溶媒である。本発明の組成物は、水性ビヒクルの総重量に基づいて約60%〜約95%の水を含んでよい。
【0131】
インク中の水性ビヒクルの量は、典型的に、インクの総重量に基づいて約70%〜約99.8%、具体的には約80%〜約99.8%の範囲内にある。
【0132】
水性ビヒクルは、界面活性剤または浸透剤例えばグリコールエーテルおよび1,2−アルカンジオールを含み入れることによって高速浸透(高速乾燥)性のものにすることができる。適切な界面活性剤としては、エトキシル化アセチレンジオール(例えばAir Products製のSurfynol(登録商標)シリーズ)、エトキシル化第1級アルコール(例えばShell製のNeodol(登録商標)シリーズ)および第2級アルコール(例えばUnion Carbide製のTergitol(登録商標)シリーズ)、スルホスクシネート(例えばCytec製のAerosol(登録商標)シリーズ)、有機シリコーン(例えばWitco製のSilwet(登録商標)シリーズ)およびフルオロ表面活性剤(例えばDuPont製のZonyl(登録商標)シリーズ)が含まれる。
【0133】
添加される1つまたは複数のグリコールエーテルおよび1つまたは複数の1,2−アルカンジオールの量は、適切に決定されなければならないが、典型的には、インクの総重量に基づいて約1〜約15重量%、そしてより典型的には約2〜約10重量%である。界面活性剤は、典型的には、インクの総重量に基いて約0.01〜約5%そしてより適切には約0.2〜約2%の量で使用されてよい。
【0134】
他の成分
他の成分は、それが日常的な実験によって容易に決定し得るインクの安定性および噴出性と干渉しないレベルで、インクジェットインク内に調合してよい。このような他の成分は、一般に、当該技術分野において周知である。
【0135】
微生物の成長を阻害するために殺生物剤を使用してもよい。
【0136】
例えば重金属不純物の有害効果を削除するためには、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、イミノジ酢酸(IDA)、エチレンジアミン−ジ(o−ヒドロキシフェニル酢酸)(EDDHA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N’’、N’’−ペンタ酢酸(DTPA)、およびグリコールエーテルジアミン−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(GEDTA)およびそれらの塩などの金属イオン封鎖剤(キレート剤)を含み入れることが有利であるかもしれない。
【0137】
主要成分の割合
このインク中で用いられる自己分散型顔料のレベルは、印刷画像に所望の色濃度を付与するために典型的に必要とされるレベルである。典型的には、自己分散型顔料のレベルは、インクの重量で約0.05〜約10%の範囲内である。ヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤は、全く異なる添加剤としてインク調合時にインクに添加される。ヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤を含むさまざまなインク成分を一緒に、任意の適切な順序で添加することができる。
【0138】
インク内で使用されるヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤の量は、求められる定着度および許容され得るインク特性の範囲によって左右される。典型的には、ポリウレタン分散系レベルは、全インク組成物の重量で約5重量%まで、適切には約0.1〜約5%、より適切には約0.2〜約4%の範囲である。ヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤は、基材上への或る一定の改善されたインク定着度を提供する。より高いレベルではより優れた定着が得られるが、一般に、或る点で粘度が過度に増大し、噴出性能が許容不可能なものとなる。各状況について特性間の正しい平衡を判定しなければならず、この判定は一般に当業者の技能範囲内に充分入る日常的実験により行なわれてよい。
【0139】
ヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤対自己分散型顔料の重量比は0.05〜0.50である。任意には、この比は0.1〜0.35であり得る。
【0140】
インク特性
噴出速度、液滴分離長、滴下サイズおよび流れ安定性は、インクの表面張力および粘度により大きく影響を受ける。顔料インクジェットインクは典型的に、25℃で約20ダイン/cm〜約70ダイン/cmの範囲内の表面張力を有する。粘度は25℃で30cPという高いものであり得るが、典型的にはそれよりも幾分か低い。インクは、広範囲の吐出条件すなわちドロップオンデマンド型装置または連続式装置のいずれかについての圧電素子の駆動周波数またはサーマルヘッドの吐出条件およびノズルの形状およびサイズと相容性ある物理的特性を有する。インクは、インクジェット装置内で有意なレベルまで詰まることがないように長期間にわたる優れた貯蔵安定性を有していなければならない。さらに、インクは、インクが接触するインクジェット装置の部分を腐食してはならず、および、インクは、本質的に無臭かつ非毒性である必要がある。
【0141】
いずれかの特定の粘度範囲またはプリントヘッドに制限されるわけではないが、発明力あるインクセットは、サーマルプリントヘッドによって必要とされるようなより低粘度の利用分野に特に適している。したがって、発明力あるインクの粘度(25℃での)は、約7cP未満であり得、適切には約5cP未満であり、最も適切には約3.5cP未満である。サーマルインクジェットアクチュエータは、インク液滴を吐出するために瞬間的加熱/気泡形成に依存しており、液滴形成のこの機序には、一般により低粘度のインクが求められる。
【0142】
基材
本発明は、一般的電子写真複写機用紙および写真用紙、光沢紙およびインクジェットプリンタ内で使用される類似の用紙などの普通紙上での印刷に特に有利である。
【実施例】
【0143】
ポリウレタン反応の程度
ポリウレタン反応の程度は、ウレタン化学における一般的な方法であるジブチルアミン滴定によってNCO%を検出することによって決定された。この方法においては、プレポリマーを含むNCOの試料を、既知の量のジブチルアミン溶液と反応させ、残留アミンをHClで逆滴定する。ヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤は検出可能なNCOを全く有していてはならない。
【0144】
粒径測定
ポリウレタン分散系、顔料およびインクの粒径を、Honeywell/Microtrac(Montgomeryville,PA)製のMACROTRAC UPA150分析装置を用いて動的光散乱により決定した。
【0145】
この技術は、粒子の速度分布と粒径の関係に基づくものである。レーザーにより生成された光が各粒子から散乱させられ、粒子ブラウン運動によってドップラー偏移される。偏移された光と偏移されていない光の周波数差は、増幅されデジタル化され、粒径分布を回収するために分析される。
【0146】
報告された以下の数字は、体積平均粒度である。
【0147】
固形分含有量の測定
溶媒を含まないポリウレタン分散系についての固形分含有量を、Sartorius製のMA50型水分計を用いて測定した。次に、NMP、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどの高沸点溶媒を含むポリウレタン分散について、150℃のオーブン内で180分間の焼成の前後の重量比によって、固形分含有量を決定した。
【0148】
ポリウレタン添加剤のMW特徴づけ
テトロヒドロフランを溶離剤としてポリ(メチルメタクリレート)標準を用いるGPCによって、全ての分子量を決定した。フローリにより導出された静力学を用いて、ポリウレタンの分子量をNCO/OH比とモノマーの分子量に基づいて計算または予測した。分子量は同様に、ポリウレタンを定義づけするために使用できるポリウレタンの1つの特性でもあった。分子量は、数平均分子量Mnとして日常的に報告される。ヒドロキシル基末端ポリウレタンインク添加剤について、適切な分子量範囲は2000〜30000、またはより適切な3000〜20000である。ポリウレタン添加剤は、分子量ガウス分布に限定されず、二峰性分布などの他の分布を有しているかもしれない。
【0149】
ポリウレタンインク添加剤実施例1 IPDI/T650/DMPA AN45
2L入り反応装置に232.9gのTerathane(登録商標)650、111.8gのスルホラン、および45.3gのジメチロールプロピオン酸を装填した。60分間N2パージと共に115℃まで混合物を加熱した。その後反応を75℃まで冷却した。141.9gのイソホロンジイソシアネートを60分かけて添加し、続いて24.6gのスルホランを添加した。反応を90℃で9時間保持し、この時間中39gのスルホランを添加して粘度を低下させた。この時点で、NCOの%は0.2%未満であり、45%のKOH(37.9g)と306.2gの水の混合物を添加しその後続いて追加の604.9gの水を添加することによって、高速混合下でポリウレタン溶液を反転させた。ポリウレタン分散系の粘度は43.6cPs、固形分は27.98%、pHは7.95、d50の粒径は9.4nmそしてd95の粒径は16.2nmであった。
【0150】
ポリウレタンインク添加剤実施例2 IPDI/T650/DMPA AN45
2L入り反応装置に230.7gのTerathane(登録商標)650、204.5gのスルホラン、および45.2gのジメチロールプロピオン酸を装填した。60分間N2パージと共に115℃まで混合物を加熱した。その後反応を75℃まで冷却した。144.1gのイソホロンジイソシアネートを60分かけて添加し、続いて24.1gのスルホランを添加した。反応を90℃で9時間保持した。この時点で、NCOの%は0.2%未満であり、45%のKOH(37.9g)と354.3gの水の混合物を添加しその後続いて追加の460.6gの水を添加することによって、高速混合下でポリウレタン溶液を反転させた。ポリウレタン分散系の、固形分は28.5%、pHは7.56、そしてGPCによる分子量はMn17658、Pdは1.78であった。
【0151】
ポリウレタンインク添加剤実施例3 IPDI/PO3G650/DMPA
2L入り反応装置に239.9gのPO3G650、107.7gのスルホラン、および43.7gのジメチロールプロピオン酸を装填した。60分間N2パージと共に115℃まで混合物を加熱した。その後反応を75℃まで冷却した。136.4gのイソホロンジイソシアネートを60分かけて添加し、続いて22.6gのスルホランを添加した。反応を90℃で6時間保持した。この時点で、NCOの%は0.2%未満であり、45%のKOH(36.5g)と296.2gの水の混合物を添加しその後続いて追加の622.3gの水を添加することによって、高速混合下でポリウレタン溶液を反転させた。ポリウレタン分散系の粘度は59.7cPs、固形分は28.64%、pHは7.63、そしてGPCによる分子量はMn16954、Pdは1.87であった。
【0152】
ポリウレタンインク添加剤実施例4 IPDI/PO3G650/DMPA AN30
2L入り反応装置に260.52gのPO3G650、151.9gのスルホラン、および30.9gのジメチロールプロピオン酸を装填した。60分間N2パージと共に115℃まで混合物を加熱した。その後反応を75℃まで冷却した。128.8gのイソホロンジイソシアネートを60分かけて添加し、続いて21.2gのスルホランを添加した。反応を90℃で16時間保持し、この時間中52gのスルホランを添加して粘度を低下させた。この時点で、NCOの%は0.2%未満であり、45%のKOH(25.7g)と207.6gの水の混合物を添加しその後続いて追加の676.2gの水を添加することによって、高速混合下でポリウレタン溶液を反転させた。ポリウレタン分散系の粘度は97.4cPs、固形分は27.22%、pHは7.76、d50の粒径は7.43nmそしてd95の粒径は12.75nmであり、GPCによる分子量はMn15620、Pdは1.98であった。
【0153】
ポリウレタンインク添加剤実施例5 IPDI/PO3G650/DMPA AN30
2L入り反応装置に265.5gのPO3G650、75.2gのスルホラン、および30.5gのジメチロールプロピオン酸を装填した。60分間N2パージと共に115℃まで混合物を加熱した。その後反応を75℃まで冷却し、0.2gのジブチルスズラウレートを添加した。124.1gのイソホロンジイソシアネートを60分かけて添加し、続いて20.4gのスルホランを添加した。反応を90℃で9時間保持し、この時間中51gのスルホランを添加して粘度を低下させた。この時点で、NCOの%は0.2%未満であり、45%のKOH(25.5g)と204.6gの水の混合物を添加しその後続いて追加の755.2gの水を添加することによって、高速混合下でポリウレタン溶液を反転させた。ポリウレタン分散系の粘度は67.4cPs、固形分は27.46%、pHは7.53、そしてGPCによる分子量はMn14058、Pdは2.06であった。
【0154】
比較用添加剤ポリマー1 ETEGMA//BZMA//MAA3.6//13.6//10.8
3リットル入りフラスコには機械式撹拌器、温度計、N2入口、乾燥用管出口および添加漏斗が装着されていた。フラスコにテトラヒドロフランTHF、291.3gを投入した。その後、アセトニトリル中1.0Mの溶液である0.44mlの触媒テトラブチルアンモニウムm−クロロベンゾエートを添加した。開始剤1,1−ビス(トリメチルシロキシ)−2−メチルプロペン、20.46gm(0.0882モル)を注入した。補給物I[アセトニトリル中の1.0M溶液である0.33mlのテトラブチルアンモニウムm−クロロベンゾエートと16.92gmのTHF]を開始させ、185分かけて添加した。補給物II[トリメチルシリルメタクリレート、152.00gm(0.962モル)]を0.0分から開始して、45分かけて添加した。補給物IIが完了し(モノマーの99%超が反応し)てから180分後に、補給物III[ベンジルメタクリレート、211.63gm(1.20モル)を開始させ、30分かけて添加した。補給物IIIが完了(モノマーの99%超が反応)してから40分後に、補給物IV[エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、78.9gm(0.321モル)を開始させ、30分かけて添加した。
【0155】
400分経過した時点で、73.0gmのメタノールと111.0gmの2−ピロリドンを上述の溶液に添加し、蒸留を開始した。最初の蒸留段階中、352.0gmの材料を除去した。その後、2−ピロリドンをさらに340.3gm添加し、追加の81.0gmの材料を蒸留した。最終的に、合計86.9gmの2−ピロリドンを添加した。最終的ポリマーは、固形分40.0%であった。
【0156】
ポリマーはETEGMA//BZMA//MAA3.6//13.6//10.8という組成を有する。その分子量はMn=4,200であり、酸性度指数は162である。
【0157】
比較用添加剤ポリマー2
3リットル入りフラスコには機械式撹拌器、温度計、N2入口、乾燥用管出口および添加漏斗が装置されていた。フラスコにテトラヒドロフランTHF、844.00gを投入した。開始剤1,1−ビス(トリメチルシロキシ)−2−メチルプロペン、40.10g(0.1728モル)を添加し、その後、アセトニトリル中1.0Mの溶液である1.33mlの触媒テトラブチルアンモニウムm−クロロベンゾエートを添加した。補給物I[アセトニトリル中1.0Mの溶液である1.1mlのテトラブチルアンモニウムm−クロロベンゾエートと7.00gのTHF]を開始させ、他の補給物と同時に添加した。補給物II[トリメチルシリルメタクリレート、161.10g(1.22モル)、2−エチルヘキシルメタクリレート、526.50g(2.659モル)、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、268.10g(1.089モル)を0.0分から開始して、120分かけて添加した。さらに60分後、HPLCにより98%超のモノマーが転換された状態で、重合を完了した。
【0158】
上述の溶液にメタノール(168.5g)を添加した。その後、2Pを添加しながら、120℃までゆっくりと加熱することによりTHFおよび他の揮発性副産物を蒸留した。最終的ポリマー溶液は固形分43.0%で、測定された酸価(acid value)は1.53mEq/gであり、酸性度指数(acid number)は85.66であった。ポリマーは、EHMA/ETEGMA/MAA15.6/5.9/6.2という組成を有し、分子量はMn=5,200である。
【0159】
比較用添加剤ポリマー3 AN60のポリカーボネート
2L入りの反応装置に175gのEternacoll UH50(宇部興産株式会社のポリカーボネートジオール、MW=501)、132.0gテトラエチレングリコールジメチルエーテルおよび69.0gのジメチルエーテルプロピオン酸を装填した。混合物を1時間115℃まで加熱した。その後反応を60℃まで冷却し、4滴のジブチルスズラウレートを添加した。5分かけて、212gのイソホロンジイソシアネートを添加し、これに続いて15.0gのテトラエチレングリコールジメチルエーテルを添加した。反応を80℃で8時間保持し、このときNCO%は1.2%であった。次に23.95gのビス(2−メトキシエチル)アミンを5分かけて添加した。80℃で1時間後、80℃で45%のKOH(57.7g)と807.4gの水の混合物を加え、それに続いて80℃で追加の422.8gの水を加えることにより、高速混合下でポリウレタン溶液を反転させた。ポリウレタン分散系の粘度は23.0cPsであり、固形分は17.5%、pHは9.15であった。
【0160】
比較用添加剤ポリマー4 IPDI/T650/DMPA AN60
この調製物は、同じNCO/OH比を維持する一方で、ポリウレタンの最終的酸性度指数をポリマー1gあたりKOH60mgに調整するためにTerathane 650の一部を追加のジメチロールプロピオン酸で置き換えた状態で、実施例1のポリウレタンインク添加剤と同一であった。ポリウレタン分散系は、固形分26.37%で45.1cPsの粘度、7.70のpH、d50=13.1nmおよびd95=21.6nmの粒径を有し、GPCによる分子量はMn13809;Pdは2.01であった。
【0161】
比較用添加剤ポリマー5 TDI/PO3G650/DMPA AN60、E112913−128)
この調製物は、イソホロンジイソシアネートの代わりにトルエンジイソシアネートを使用し、同じNCO/OH比を維持するように分子量の差を調整しながらポリウレタンの最終酸性度指数をポリマー1gあたりKOH60mgまで増大させるためにTerathane 650の一部を追加のジメチロールプロピオン酸で置き換えた状態で、実施例3のポリウレタンインク添加剤と同一であった。ポリウレタン分散系の固形分は28.73%で、GPCによる分子量はMn9270、Pdは2.49であった。
【0162】
自己分散型ブラック顔料
自己分散型顔料を、先に言及した米国特許第6,852,152号明細書に記載されている方法(実施例3参照)によって調製した。自己分散型顔料試料1は、リチウムヒドロキシド中和と共にDegussa製Nipex 160を使用し、自己分散型顔料試料2は、カリウム中和と共にDegussa製Nipex 180を使用した。
【0163】
自己分散型顔料およびポリウレタンインク添加剤を伴うインクの調製
ポリウレタンインク添加剤および比較用ポリマーを用いてインクを調製した。表1は組成を示す。
【0164】
【表1】

【0165】
【表2】

【0166】
表1および2に記載されている通りに成分を組合せてインクを調製した。パーセントは、活性の固体を指す。示されている全ての量は、重量パーセント単位である。
【0167】
【表3】

【0168】
【表4】

【0169】
調製したインクを次の3つの異なる用紙に印刷した:Hammermill(商標)Copy Plus、Xerox(商標)4200およびColorLok(登録商標)を伴うHewlett−Packard(商標)Multipurpose
【0170】
ブラックカートリッジホルダ中のHP45Aプリントヘッドを用いてHewlett Packard(San Diego,Calif)製のサーマルインクジェットプリンタDesk Jet(商標)6122で印刷を行なった。印刷は、プリンタによって選択される標準正規印刷モードで行なわれた。
【0171】
光学密度を、Greytag−Macbeth SpectoEye(商標)計器(Greytag−Macbeth AG,Regensdorf,Switzerland)を用いて測定した。
【0172】
印刷画像を印刷後約1時間乾燥させた後、Faber−Castel蛍光ペンを用いて、蛍光ペンスミアに関する画像の耐久性を行なった。画像を蛍光ペンで一回、そして同様に二回、マーキングした。蛍光ペンによる印刷されていない部域内へのインク転移量を目視により指摘し、5を最高として1〜5の等級で評定した。5の評定では、蛍光ペンでの印刷画像のスミアはあったとしてもごくわずかであった。
【0173】
報告された印刷データは、表5に報告されており、列挙されている発明力あるインクと比較用インクは両方共多数の測定値の平均である。光学密度および耐久性については、平均は次の3つの用紙タイプについて測定された:Hammermill(商標)Copy Plus,ColorLok(登録商標)を伴うHP MultipurposeおよびXerox(商標)4200。全ての場合において、より高い値はより高いレベルそしてより優れた性能を表わしている。
【0174】
報告されたサーマルインクジェット液滴吐出信頼性は、12kHzの周波数でHP45Aプリントヘッドからインクを発射した場合のインク液滴の重量により決定された。報告された信頼性は、インク液滴のインク重量とインク液滴のコンシステンシーの組合せである。インク液滴が大幅に変動する場合には、インクの評定は低くなる。このインクジェット信頼性についての比較は、この試験において優秀なインクとみなされている比較用インク2に対するものである。
【0175】
【表5】

【0176】
ポリウレタンインク添加剤ポリマーの添加により、ポリマー添加剤を全く含まないインクまたはポリマーがアクリル系材料である場合のインクの耐久性は著しく改善された。他の性能パラメータ光学密度および液滴吐出信頼性は、比較用インク2と同程度に良好であった。発明力ある例4および5は、液滴吐出信頼性が比較的低いが、これは自己分散型顔料とポリウレタンインク添加剤の組合せが最適化されなかったことに原因があるかもしれない。
【0177】
インク貯蔵安定性は、70℃で7日間の貯蔵の前後、ならびに−40℃で4時間から+70℃で4時間までの温度サイクルにインクを合計4回のサイクルに付した後に、Nanotrac(Microtrac Inc.,Montgomeryville,PA)により粒径変化を追跡することによって評価した。一般に、10%以下の粒径のわずかな減少または小さな変化は許容可能であり、顔料分散系の相対的な安定性を表わす。一般に、10%超の粒径の増大は、顔料粒子の有意な凝集に起因するものと考えられる。粒径の大幅な増加は、添加剤に起因する貯蔵安定性の低下を表わす。
【0178】
【表6】

【0179】
特に70℃で7日間にわたり、発明力あるインク例は、比較例に匹敵するかまたはそれよりも優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 自己分散型顔料着色剤と;
b. 水性ビヒクルと;
c. ポリエーテルジオール、イオン基で置換されたジオール、およびイソシアネートを含むヒドロキシル基末端ポリウレタンと、
を含む水性インクジェットインク組成物において、
− 前記ポリエーテルジオールがZ1
【化1】

であり、式中
− pは2以上であり;
− mは3〜約12であり;
− 各R5およびR6は、水素、アルキル、置換アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され;各R5またはR6は同じまたは異なるものであり、R5およびR6は任意に接合されて環状構造を形成してよく;
− イオン基で置換された前記ジオールがZ2であり、少なくとも1つのZ1および少なくとも1つのZ2がポリウレタン組成物中に存在していなければならず;
− 前記Z1およびZ2から誘導されるイソシアネート反応基の当量が、ヒドロキシル基末端ポリウレタンをもたらすイソシアネート基よりも大きく;
− 前記ポリウレタンが少なくとも10〜50の酸性度指数を有する、
水性インクジェット組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシル基末端ポリウレタンが前記全インク組成物の重量に基づいて約0.1〜約5重量%である、請求項1に記載の水性インクジェット組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシル基末端ポリウレタンが前記全インク組成物の重量に基づいて0.2〜4重量%である、請求項1に記載の水性インクジェット組成物。
【請求項4】
前記インクの総重量に基づいて0.1〜10重量パーセントの自己分散型顔料着色剤、25℃で20ダイン/cm〜70ダイン/cmの範囲内の表面張力、および25℃で30cPの未満の粘度を有する、請求項1に記載の水性インクジェット組成物。
【請求項5】
前記自己分散型顔料着色剤が、アニオン親水性化学基を含む自己分散型カーボンブラック顔料である、請求項1に記載の水性インクジェット組成物。
【請求項6】
前記自己分散型カーボンブラック顔料上の前記アニオン親水性化学基がカルボキシル基を含む、請求項5に記載のインク。
【請求項7】
前記自己分散型顔料が、前記顔料の表面上にカルボニル、カルボキシル、ヒドロキシルおよびスルホンからなる群から選択された少なくとも1つの官能基を結合させるために、次亜塩素酸、スルホン酸またはオゾンでその表面が酸化的に処理された顔料を含んでいる、請求項1に記載の水性インクジェット組成物。
【請求項8】
前記自己分散型顔料着色剤が、オゾンでその表面が酸化的に処理された顔料を含んでいる、請求項1または7に記載の水性インクジェット組成物。
【請求項9】
前記自己分散型顔料が、顔料表面1平方メートルあたり3.5μモル(3.5μmol/m2)未満の官能化度を含む、請求項1に記載の水性インクジェット組成物。
【請求項10】
前記自己分散型顔料が、顔料表面1平方メートルあたり3.0μモル(3.0μmol/m2)未満の官能化度を含む、請求項1に記載の水性インクジェット組成物。
【請求項11】
前記ヒドロキシル基末端ポリウレタン対自己分散型着色剤の重量比が、少なくとも0.05かつ0.50までである、請求項1に記載の水性インクジェット組成物。
【請求項12】
前記自己分散型着色剤が、75〜250ナノメートルのd50粒径を有する、請求項1に記載の水性インクジェット組成物。
【請求項13】
前記水性ビヒクルが、水と少なくとも1つの水混和性溶媒との混合物である、請求項1に記載の水性インクジェット組成物。
【請求項14】
基材上にインクジェット印刷する方法において、任意の実行可能な順序で、
a. デジタルデータ信号に対する応答性を有するインクジェットプリンタを提供するステップと、
b. 印刷すべき基材を前記プリンタに装填するステップと;
c. 請求項1に記載の水性インクジェット組成物を前記プリンタに装填するステップと;
d. 前記基材上に印刷済み画像を形成するために、前記デジタルデータ信号に応答して、前記水性インクジェットインクを用いて前記基材上に印刷を行なうステップと;
を含む方法。
【請求項15】
インクジェットインクセットにおいて、前記インクジェットインクセット内の前記インクの少なくとも1つが、
a. 自己分散型顔料着色剤と;
b. 水性ビヒクルと;
c. ポリエーテルジオール、イオン基で置換されたジオール、およびイソシアネートを含むヒドロキシル基末端ポリウレタンと、
を含む水性インクジェットインク組成物であって、
− 前記ポリエーテルジオールがZ1
【化2】

であり、式中
− pは2以上であり;
− mは3〜約12であり;
− 各R5およびR6は、水素、アルキル、置換アルキルおよびアリールからなる群から独立して選択され;各R5またはR6は同じまたは異なるものであり、R5およびR6は任意に接合されて環状構造を形成してよく;
− イオン基で置換された前記ジオールがZ2であり、少なくとも1つのZ1および少なくとも1つのZ2がポリウレタン組成物中に存在していなければならず;
− 前記Z1およびZ2から誘導されるイソシアネート反応基の当量が、ヒドロキシル基末端ポリウレタンをもたらすイソシアネート基よりも大きく;
− 前記ポリウレタンが少なくとも10〜50の酸性度指数を有する、
水性インクジェット組成物である、インクジェットインクセット。
【請求項16】
基材上にインクジェット印刷する方法において、任意の実行可能な順序で、
a. デジタルデータ信号に対する応答性を有するインクジェットプリンタを提供するステップと、
b. 印刷すべき基材を前記プリンタに装填するステップと;
c. 請求項15に記載の水性インクジェットインクセットを前記プリンタに装填するステップと;
d. 前記基材上に印刷済み画像を形成するために、前記デジタルデータ信号に応答して、前記水性インクジェットインクセットを用いて前記基材上に印刷を行なうステップと、
を含む方法。

【公表番号】特表2013−512999(P2013−512999A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542216(P2012−542216)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/058851
【国際公開番号】WO2011/069041
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】