説明

自己接着性オルガノポリシロキサン組成物

【課題】
金属、プラスチック等の基材、特にプラスチックに対して良好に接着し得る硬化物を与える自己接着性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 全組成物中のアルケニル基1モル当たり、本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.5〜10.0モルとなる量、
(C)ヒドロシリル化反応用触媒 有効量、および
(D)エポキシ基を有するイソシアヌル酸エステル 0.01〜10質量部
を含有してなる自己接着性オルガノポリシロキサン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的低温で硬化し、プライマーを使用しなくても金属、プラスチックなどの基材、特にプラスチックに強固に接着する硬化物を形成することができる自己接着性オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を含有するオルガノハイドロジェンシロキサンとを含む付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物を白金系触媒の存在下で付加反応させて弾性硬化物を得ることができることはよく知られており、各種の組成物が提案されている。
【0003】
しかし、これらの組成物から得られる硬化物はいずれも金属、樹脂などとの接着性に劣るため、これを電気回路のポッティングもしくはコーティング、モーター用コイルの含浸、テレビセット用フライバックトランスの含浸、半導体チップの回路基板への接合、構造体の接合部接着、またはフィルム状もしくは織物状樹脂などの含浸もしくはコーティングに用いた場合に、剥離が発生し、必要とする特性が得られないなどの不利な点があった。
【0004】
そのため、種々の基材に対して良好な接着性を有する付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物を得るべく、従来から検討が行われてきた。例えば、特許文献1には、ビニル基含有ジオルガノポリシロキサン、エポキシ基および/またはエステル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 100〜1重量部、ならびにエポキシ基またはエステル基を含有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン0〜99重量部を含む付加硬化型組成物が記載されている。また、特許文献2には、トリアルコキシシリル基、オキシラン基およびヒドロシリル基を1分子中に有するオルガノポリシロキサンを含有する付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物が記載されている。
【0005】
しかし、これら従来の付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物の接着性能は、他の樹脂系接着剤、例えばエポキシ系接着剤と比較すると充分でなく、金属、プラスチック等の基材、特にプラスチックヘの接着保持能力が劣るという問題点があり、接着性能の更なる向上が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特公昭53−13508号公報
【特許文献2】特公昭59−5219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、従来の付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物では接着性に乏しかった金属、プラスチック等の基材、特にプラスチックに対して良好に接着し得る硬化物を与える自己接着性オルガノポリシロキサン組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため種々検討を行い、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物に対し、エポキシ基を持つイソシアヌル酸エステル化合物を配合することにより、その自己接着性能が飛躍的に向上することを見出した。即ち、本発明は、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 全組成物中のアルケニル基1モル当たり、本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.5〜10.0モルとなる量、
(C)ヒドロシリル化反応用触媒 有効量、および
(D)エポキシ基を有するイソシアヌル酸エステル 0.01〜10質量部
を含有してなる自己接着性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る付加硬化型の自己接着性オルガノポリシロキサン組成物は、比較的低温で硬化し、プライマーを使用しなくても金属、プラスチック等の基材、特にプラスチックに強固に接着する硬化物を形成することができるとの優れた効果を奏する。従って、該組成物は、シーリング材、ポッティング材、コーティング材などとして、例えば、エアーバック等に用いられる樹脂繊維紡織布用または一般の樹脂フィルム用のコーティング材またはシーリング材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。
【0011】
[(A)成分]
(A)成分のオルガノポリシロキサンは本発明の組成物のベースポリマーであり、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有する。
【0012】
(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状構造、環状構造が挙げられ、これらの構造は分岐を有していてもよいが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサンが(A)成分として好ましく用いられる。
【0013】
(A)成分の25℃における粘度は、100〜500,000 mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、500〜100,000 mPa・sの範囲内であることが好ましい。該粘度がこの範囲内であると、組成物の取扱作業性と該組成物から得られるシリコーンゴムの物理的強度とを十分に確保することができる。
【0014】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等の、炭素原子数が好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4のものが挙げられ、特に、ビニル基であることが好ましい。(A)成分のオルガノポリシロキサンが直鎖状構造を有する場合、該アルケニル基は、分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方でのみケイ素原子に結合していても、その両方でケイ素原子に結合していてもよい。
【0015】
(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、例えば、アルキル基、特に、メチル基、エチル基、ブロピル基、プチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基;アリール基、特に、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素原子数6〜14のアリール基;アラルキル基、特に、ベンジル基、フェネチル基等の炭素原子数7〜14のアラルキル基;ハロゲン化アルキル基、特に、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜3のハロゲン化アルキル基などの、非置換またはハロゲン置換一価炭化水素基が挙げられ、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0016】
(A)成分の具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、式:R13SiO0.5(R1はアルケニル基以外の非置換または置換の一価炭化水素基である。以下同様。)で示されるシロキサン単位と式:R122SiO0.5(R2はアルケニル基である。以下同様。)で示されるシロキサン単位と式:R12SiOで示される単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R13SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:R1SiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:R2SiO1.5で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0017】
上式中のR1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。また、上式中のR2としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基が挙げられる。
【0018】
[(B)成分]
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分と反応し、架橋剤として作用する。(B)成分の分子構造に特に制限はなく、例えば、線状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等の、従来製造されている各種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。
【0019】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に2個以上、好ましくは3個以上(通常、3〜500個、好ましくは3〜200個、より好ましくは3〜100個程度)のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、ヒドロシリル基またはSiH基)を有する。(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが線状構造を有する場合、これらのSiH基は、分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0020】
(B)成分の一分子中のケイ素原子の数(重合度)は、好ましくは2〜1,000、より好ましくは3〜300、更により好ましくは4〜150程度である。更に、(B)成分の25℃における粘度は、好ましくは0.1〜5,000 mPa・s、より好ましくは0.5〜1,000 mPa・s、更により好ましくは5〜500 mPa・s程度である。
【0021】
(B)成分としては、例えば、下記平均組成式(1):
3abSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R3は、脂肪族不飽和基を除く、非置換または置換の、炭素原子数が好ましくは1〜14、より好ましくは1〜10の、ケイ素原子に結合した一価炭化水素基であり、aおよびbは、好ましくは 0.7≦a≦2.1、0.001≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦3.0、より好ましくは、0.9≦a≦2.0、0.01≦b≦1.0、かつ1.0≦a+b≦2.5を満足する正数である)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが用いられる。
【0022】
上記R3としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロビル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フエニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換した基、例えば、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0023】
(B)成分は公知の製法によって得ることができる。一般的な製造方法、例えば、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラハイドロシクロテトラシロキサン(場合によっては、該シクロテトラシロキサンとオクタメチルシクロテトラシロキサンとの混合物)とヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジハイドロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等の末端基源となるシロキサン化合物とを、あるいは、オクタメチルシクロテトラシロキサンと1,3-ジハイドロ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に−10〜+40℃程度の温度で平衡化させることによって、容易に(B)成分を得ることができる。
【0024】
(B)成分の具体例としては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジエンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:R13SiO0.5(R1は(A)成分について定義および例示したとおりである。以下同様。)で示されるシロキサン単位と式:R12HSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R12HSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R1HSiOで示されるシロキサン単位と式:R1SiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:HSiO1.5で示されるシロキサン単位とからなるオルガノポリシロキサン共重合体が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0025】
(B)成分の配合量は、全組成物中のアルケニル基1モル当たり、特に、全組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モル当たり、とりわけ(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モル当たり、本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)の量が0.5〜10.0モル、好ましくは1.0〜8.0モルの範囲内となる量である。このとき、全組成物中に存在するアルケニル基に対する(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の割合は50〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましい。全組成物中にアルケニル基を有する成分として(A)成分しか存在しない場合には、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モル当たり、本(B)成分中のSiH基の量が0.5〜10.0モル、好ましくは1.0〜8.0モルの範囲内となる量である。(B)成分の配合量が少なすぎると組成物が十分に硬化しない場合があり、逆に多すぎると得られるシリコーンゴムの耐熱性が極端に劣る場合がある。
【0026】
[(C)成分]
(C)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、(A)成分中のアルケニル基と、(B)成分中のSiH基との付加反応を促進するものであれば、いかなる触媒を使用してもよい。例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサンもしくはアセチレン化合物との配位化合物等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム系触媒;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒が(C)成分として使用されるが、特に好ましくは白金系触媒である。
【0027】
(C)成分の配合量は、ヒドロシリル化反応用触媒としての有効量であれば特に制限されないが、(A)および(B)成分の合計量に対して、触媒金属元素に換算して質量基準で好ましくは0.1〜1,000 ppm、より好ましくは1〜500 ppm、更により好ましくは 10〜100 ppmの範囲である。該添加量がこの範囲だと、付加反応が十分に促進され、硬化が十分であり、経済的に有利である。
【0028】
[(D)成分]
(D)成分は、エポキシ基を有するイソシアヌル酸エステルであり、本発明組成物に自己接着性を付与する。(D)成分としては、例えば、下記一般式(1):
【0029】
【化1】

(1)

(式中、R4は独立にエポキシ基含有基を表し、R5は独立に水素原子、またはエポキシ基を含有しない基を表し、xは1〜3の整数を表し、yは0〜2の整数を表し、ただし、x+yは3である。)
で表されるイソシアヌレート化合物が挙げられる。
【0030】
上記R4で表されるエポキシ基含有基としては、例えば、
【0031】
【化2】


(式中、R6は炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表す。)、
【0032】
【化3】


(式中、R6は前記と同様であり、R7は炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表す。)、
【0033】
【化4】


(式中、R6は前記と同様である。)
が挙げられ、その具体例としては、
【0034】
【化5】


(式中、mは1〜3の整数である。)、
【0035】
【化6】


(式中、mおよびnは独立に1〜3の整数である。)、
【0036】
【化7】


(式中、mは1〜3の整数である。)
などが挙げられる。
【0037】
上記R5としては、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基などのアルケニル基;γ-アクリロキシプロピル基、γ-メタクリロキシプロピル基などの(メタ)アクリロキシアルキル基;式:(R8O)3Si-R7-もしくは式:(R8O)3Si-R6-O-R7-(式中、R6およびR7は前記と同様であり、R8はメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などの炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。)で示されるトリアルコキシシリルアルキル基およびその部分加水分解縮合物、例えば、式:(CH3O)3Si-(CH2)m-もしくは式:(C2H5O)3Si-(CH2)m-(式中、mは2〜4の整数である。)で示される基;またはSiH基を有するシリル誘導体、例えば、式:(R8O)2(H)Si-R9-もしくは式:(R8O)2(H)Si-R9-O-R10-(式中、R8は前記と同様であり、R9およびR10は独立に、窒素原子を含有してもよい炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表す。)で示される基などが挙げられる。
【0038】
(D)成分の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0039】
1,3,5-トリグリシジルイソシアヌル酸:
【0040】
【化8】


(以下、「接着性付与剤(a)」という)
【0041】
1-アリル-3,5-ジグリシジルイソシアヌル酸:
【0042】
【化9】


(以下、「接着性付与剤(b)」という)
【0043】
1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌル酸:
【0044】
【化10】

(以下、「接着性付与剤(c)」という)
【0045】
(D)成分の配合量は、本発明組成物に良好な接着性を付与するのに十分な量であればよく、(A)成分 100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好ましくは 0.05〜5質量部の範囲である。該配合量が少なすぎると本発明組成物に良好な接着性を付与することができない場合があり、また該配合量が多すぎると目的のゴム強度を有するシリコーン硬化物を得ることができない場合がある。
【0046】
(D)成分の配合方法としては特に制限はない。例えば、(D)成分をそのままの状態でシリコーン組成物に添加・分散させてもよい。また、(D)成分を適当な溶媒に溶かした上でシリコーン組成物に添加・分散させてもよい。更に、(D)成分の融点が室温(例えば、23℃)以上であるために(D)成分が室温下で固体状である場合には、(D)成分を適当な分散液(例えば、オルガノシロキサン等)に混合した後、3本ロールミル等の装置を用いて均一に分散させて得られたペースト状態の混合物をシリコーン組成物に添加・分散させてもよい。
【0047】
[その他の成分]
本組成物において、上記の(A)〜(D)成分に加えて任意の成分として、付加反応触媒に対して硬化抑制効果を有するとされている従来公知のすべての制御剤化含物を使用することができる。このような化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物、トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物、硫黄含有化合物、1-エチニル-1-ヘキサノールなどのアセチレン系化合物、トリアリルイソシアヌル酸、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが挙げられる。制御剤化合物による硬化遅延効果の度合は、制御剤化合物の化学構造によって大きく異なる。従って、制御剤化合物の添加量は、使用する制御剤化合物の個々について最適な量に調整すべきであるが、そのような調整は当業者に周知の方法によって容易に行うことができる。一般には、該添加量が少なすぎると室温において本発明組成物の長期貯蔵安定性が得られず、逆に該添加量が多すぎると該組成物の硬化が阻害される。
【0048】
また、その他の任意の成分として、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機充填剤、および、これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面処理した充填剤が挙げられる。また、充填剤としては、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダーなども挙げられる。
【0049】
更に、本発明組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、その他の任意の成分として、例えば、ケイ素原子に結合した水素原子またはアルケニル基を一分子中に一個含有するオルガノポリシロキサン、ケイ素原子に結合した水素原子およびアルケニル基のどちらをも含有しないオルガノポリシロキサン、有機溶剤、クリープハードニング防止剤、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、可塑剤、チキソトロピー付与剤、顔料、染料、防かび剤等が含まれていてもよい。
【0050】
[組成物の用途]
本発明の自己接着可能性オルガノポリシロキサン組成物は、比較的低温で硬化し、プライマーを使用しなくても金属、プラスチックなどの基材に強固に接着する硬化物を形成することができる。従って、該組成物は、シーリング材、ポッティング材、コーティング材などとして、例えば、エアーバック等に用いられる樹脂繊維紡織布用または一般の樹脂フィルム用のコーティング材またはシーリング材として使用することができる。
【0051】
使用に際して、本発明の組成物は用途に応じて所定の基材に塗布した後、加熱することにより硬化させることができる。本発明組成物の硬化条件は、その量により異なり、特に制限されない。硬化温度は好ましくは60〜200℃、より好ましくは100〜180℃である。通常、0.5〜10分程度で硬化する。
【実施例】
【0052】
以下、実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記の例において「部」は「質量部」を意味する。また、粘度は25℃における測定値である。
【0053】
実施例1
(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された、粘度が 10Pa・sのジメチルポリシロキサン 100部、(B)粘度が5mPa・sである分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(SiH基の含有量=1.45質量%) 2.0部((B)成分中のSiH基/(A)成分中のビニル基(モル比)=5.3)、(C)塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体 (A)および(B)成分の合計量に対して、白金金属元素に換算して質量基準で30 ppm、(D)接着性付与剤(a) 0.3部、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール 0.15部(硬化遅延剤として添加)、ならびにヘキサメチルジシラザンで処理された比表面積 120m2/gのシリカ 15部(疎水性シリカとして添加)を混合して組成物Aを調製した。なお、実際に上記(D)成分を添加する際には、接着性付与剤(a)と、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された、粘度が100 Pa・sのジメチルポリシロキサンとを等質量混合した後、3本ロールミルにて均一に分散させることにより調製したペースト状態の混合物0.6部を該組成物中に分散させた。
【0054】
実施例2
実施例1において(D)成分の接着性付与剤(a)を接着性付与剤(b)に置き換えた以外は、実施例1と同様にして組成物Bを調製した。
【0055】
実施例3
実施例1において、(D)成分の接着性付与剤(a)を接着性付与剤(c)に置き換え、かつ、実際に(D)成分を添加する際には、接着性付与剤(c)を等質量のメタノールに均一に溶解させることにより調製したメタノール溶液0.6部を組成物中に分散させた以外は、実施例1と同様にして組成物Cを調製した。
【0056】
比較例1
実施例1において、(D)成分の接着性付与剤(a)を下記の構造式で表される化合物(i):
【0057】
【化11】


に置き換えた以外は、実施例1と同様にして組成物Dを調製した。
【0058】
比較例2
実施例1において、(D)成分の接着性付与剤(a)をγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランに置き換えた以外は、実施例1と同様にして組成物Eを調製した。
【0059】
剪断接着力試験
これらの組成物A、B、C、D、Eをアルミニウム板、Nylon66板およびSPS(シンジオタクチックポリスチレン)板のそれぞれ2枚の間に2mm厚になるように流し込しこみ、120℃にて1時間加熱処理して硬化させた。室温に戻して、JIS K 6850に規定する接着剤の引張り剪断接着強度試験方法に準じ、ショッパー型引張り試験機を用い、引張り速度50mm/分の条件で剪断接着力試験を行った。凝集破壊率は、剪断接着力試験を行ったサンプルの破壊状態を目視にて観察することにより測定した。その結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
評価
表1に示すとおり、どの被着体についても、実施例の硬化物は比較例の硬化物よりも高い剪断接着力および凝集破壊率を示した。このことから、実施例の組成物は、プライマーを使用しなくても金属基材およびプラスチック基材に強固に接着する硬化物を形成することができることが分かる。
【0062】
実施例4
(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された、粘度が約30Pa・sであるジメチルポリシロキサン 60部、同じく分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された、粘度が約5Pa・sであるジメチルポリシロキサン 20部、およびVi(Me)SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなるビニル基含有メチルポリシロキサンレジン(ビニル基含有量:2.3質量%) 20部、(B)粘度が5mPa・sである分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(SiH基の含有量=1.45質量%) 3.1部((B)成分中のSiH基/(A)成分中のビニル基(モル比)=2.3)、(C)塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体 (A)および(B)成分の合計量に対して、白金金属元素に換算して質量基準で30 ppm、(D)接着性付与剤(b) 0.3部、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール 0.10部(硬化遅延剤として添加)、ならびにベンガラ 0.5部(コーティング状態を目視で確認できるようにするために添加)を均一に混合して組成物Fを調製した。なお、実際に上記(D)成分を添加する際には、接着性付与剤(b)と、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された、粘度が100 Pa・sのジメチルポリシロキサンとを等質量混合した後、3本ロールミルにて均一に分散させることにより調製したペースト状態の混合物0.6部を該組成物中に分散させた。
【0063】
比較例3
実施例4において、(D)成分の接着性付与剤(b)を下記の構造式で表される化合物(ii):
【0064】
【化12】


に置き換えた以外は、実施例4と同様にして組成物Gを調製した。
【0065】
比較例4
実施例4において、(D)成分の接着性付与剤(b)を下記の構造式で表される化合物(iii):
【0066】
【化13】


に置き換えた以外は、実施例4と同様にして組成物Hを調製した。
【0067】
揉み耐久評価
これらの組成物F、G、HをNylon66繊維紡織布(420デニール)上にナイフコーターにより、平均コート量が約30g/m2になるよう、均一にコーティングし、オーブンにて170℃で1分間加熱することにより硬化させた。次にこのコート済み紡織布を幅30mm、長さ150mmの短冊形状に切断し、コート面同士を張り合わせて試験片を作製した。この試験片をスコット式揉み試験機にかけ、コート面の揉み耐久評価を行った。具体的には、該評価は、押し圧力1kgf/cm2で500回、1000回、1500回の揉み試験を行った後、コート面のシリコーンゴムの紡織布表面からの剥離状況を目視観測することにより行った。その結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
評価
表2に示すとおり、実施例の硬化物は比較例の硬化物よりも揉みに対してより高い耐久性を示した。このことから、実施例の組成物は、樹脂繊維紡織布にも強固に接着する硬化物を形成することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 全組成物中のアルケニル基1モル当たり、本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.5〜10.0モルとなる量、
(C)ヒドロシリル化反応用触媒 有効量、および
(D)エポキシ基を有するイソシアヌル酸エステル 0.01〜10質量部
を含有してなる自己接着性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(D)成分がアルケニル基を有することを特徴とする請求項1に記載の自己接着性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
(D)成分の融点が23℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の自己接着性オルガノポリシロキサン組成物。

【公開番号】特開2006−137797(P2006−137797A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326521(P2004−326521)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】