説明

自己流動性水硬性組成物の製造方法

【課題】 本発明は水硬性成分としてポルトランドセメントを含むセルフレベリング材において、製造ロット間でスラリーの流動性にばらつきがなく、流動性が安定し、さらに製造時の製品歩留まりが向上した自己流動性水硬性組成物の製造方法を提案することを目的とした。
【解決手段】 本発明は、ポルトランドセメントを含む水硬性成分と、減水剤及び/又は増粘剤とを含む自己流動性水硬性組成物の製造方法において、
ポルトランドセメントに含まれる遊離酸化カルシウム量を測定し、
遊離酸化カルシウム量が1質量%以下のポルトランドセメントを含む水硬性成分と、減水剤及び/又は増粘剤とを混合することを特徴とする自己流動性水硬性組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般建築物の主に床下地調整に使用できる自己流動性の優れるセルフレベリング材として用いることができる、ポルトランドセメントを含む水硬性成分を用いた自己流動性水硬性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルフレベリング性の自己流動性水硬性組成物として、特許文献1にアルミナセメント、ポルトランドセメント、石膏、高炉スラグからなる水硬性成分と、リチウム塩とホウ酸化合物よりなる凝結調整剤と、減水剤と、増粘剤とからなる組成物が開示されている。
特許文献2には、アルミナセメント、ポルトランドセメント、石膏、高炉スラグからなる水硬性成分と、減水剤と、増粘剤とからなる組成物が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−211961号
【特許文献2】特開2000−302519号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セルフレベリング性の自己流動性水硬性組成物(SL材)は、水と混練して流し込むだけで面精度の優れた平面を形成できるので、その自己平滑性を利用してコンクリート構造物の表面仕上げ作業の省力化、効率化のため、建築用左官工事仕上げ工法を主体として広く普及している。
セルフレベリング材は、ポルトランドセメントなどの水硬性成分と、減水剤及び/又は増粘剤などの添加剤とを配合して製造され、高い流動性と、高精度に平滑な面を有することが必須の要件である。
しかし水硬性成分としてポルトランドセメントを含むセルフレベリング材では、製造ロット間で、得られるスラリーの流動性にばらつきが認められる。そのため、製品歩留まりが悪くなり、生産性及び経済性に問題が生じる場合がある。
本発明は水硬性成分としてポルトランドセメントを含むセルフレベリング材において、製造ロット間でスラリーの流動性にばらつきがなく、流動性が安定し、さらに製造時の製品歩留まりが向上した自己流動性水硬性組成物の製造方法を提案することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポルトランドセメントを含む水硬性成分と、減水剤及び/又は増粘剤とを含む自己流動性水硬性組成物の製造方法において、
ポルトランドセメントに含まれる遊離酸化カルシウム量を測定し、
ポルトランドセメントは、遊離酸化カルシウム量が1質量%以下のポルトランドセメントを用い、
遊離酸化カルシウム量が1質量%以下のポルトランドセメントを含む水硬性成分と、減水剤及び/又は増粘剤とを混合することを特徴とする自己流動性水硬性組成物の製造方法である。
本発明において遊離酸化カルシウム量とは、セメント協会標準試験方法JCAS I−01−1997に記載の「遊離酸化カルシウムの定量方法 グリセリン−アルコール法(B法)」に記載の方法を適用して求める値である。そのため本発明の遊離酸化カルシウム量は、遊離酸化カルシウム量とともに水酸化カルシウムの定量値も含む値である。
【0006】
本発明の自己流動性水硬性組成物の製造方法の好ましい態様を以下に示す。好ましい態様は複数組み合わせることができる。
1)水硬性成分は、水硬性成分100重量%中に、ポルトランドセメントを10重量%以上含まれていること。
2)水硬性成分は、さらにアルミナセメント及び石膏から選択された成分を少なくとも1種類含むこと。
3)水硬性成分は、ポルトランドセメント10〜100質量%(但し、100質量%を除く)、アルミナセメント0〜90質量%及び石膏0〜90質量%(但し、ポルトランドセメント、アルミナセメント及び石膏の合計は100質量%である。)とを含むこと。
4)自己流動性水硬性組成物は、さらに無機成分を含み、
水硬性成分100質量部に対し、無機成分が10〜350質量部を含むこと。
5)自己流動性水硬性組成物は、さらに細骨材を含み、細骨材が、水硬性成分100質量部に対して50〜500質量部含むこと。
6)自己流動性水硬性組成物は、さらに凝結調整剤を含むこと。
7)水硬性成分100質量部に対して、減水剤0.01〜1.0質量部及び/又は増粘剤0.05〜1.0質量部含むこと。
8)セルフレベリング性のSL値(L30/L0)が、0.90以上であること。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、自己流動性水硬性組成物を製造する上で、ポルトランドセメントの遊離酸化カルシウム量を測定する工程を加え、ポルトランドセメントとして、ポルトランドセメントに含まれる遊離酸化カルシウム量が1質量%以下のものを用いることにより、セルフレベリング材スラリーの流動性の安定した製品が得られ、製造ロット間での品質が安定し、生産時の歩留まりが向上し、その結果生産性、経済性及び品質の優れる自己流動性水硬性組成物の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の自己流動性水硬性組成物の製造方法は、ポルトランドセメントを含む水硬性成分と、減水剤及び/又は増粘剤とを含む自己流動性水硬性組成物の製造方法において、
ポルトランドセメントに含まれる遊離酸化カルシウム量を測定し、
遊離酸化カルシウム量1質量%以下、好ましくは0.95質量%以下、さらに好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.85質量%以下、特に好ましくは0.82質量%以下のポルトランドセメントを含む水硬性成分と、減水剤及び/又は増粘剤と配合し或いは混合して自己流動性水硬性組成物を製造することができる。
本発明の自己流動性水硬性組成物の製造方法は、ポルトランドセメントに含まれる遊離酸化カルシウム量を測定する工程と、水硬性成分としてポルトランドセメント中に含まれる遊離酸化カルシウム量の測定値が1質量%以下、好ましくは0.95質量%以下、さらに好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.85質量%以下、特に好ましくは0.82質量%以下のロットのポルトランドセメントを選択して用い、このポルトランドセメントを含む水硬性成分と、減水剤及び/又は増粘剤とを配合することを特徴とする自己流動性水硬性組成物の製造方法であり、セルフレベリング材として安定した流動性が得られ、製造ロット間で製品(スラリー)の流動性の品質が安定し、生産性及び経済性が向上する。
【0009】
ポルトランドセメント中に含まれる遊離酸化カルシウム量の測定法は、セメント協会標準試験方法JCAS I−01−1997に記載の「遊離酸化カルシウムの定量方法 エチレングリコール法(A法)」や「遊離酸化カルシウムの定量方法 グリセリン−アルコール法(B法)」など、公知の方法を用いることができるが、本発明において遊離酸化カルシウム量(f−CaO量)とは、セメント協会標準試験方法JCAS I−01−1997に記載の「遊離酸化カルシウムの定量方法 グリセリン−アルコール法(B法)」に記載の方法を適用して求める値である。そのため本発明の遊離酸化カルシウム量(f−CaO量)は、遊離酸化カルシウム量とともに水酸化カルシウムの定量値も含む値である。
【0010】
本発明の自己流動性水硬性組成物の製造方法において、ポルトランドセメント中に含まれる遊離酸化カルシウム量の測定値が1質量%を超えるロットは、他のロットと均質に混合し、ポルトランドセメントに含まれる遊離酸化カルシウム量を測定して、ポルトランドセメント中に含まれる遊離酸化カルシウム量の測定値が1質量%以下になれば用いることができる。
【0011】
ポルトランドセメントを含む水硬性成分と、減水剤及び/又は増粘剤とを含む自己流動性水硬性組成物とは、
1)自己流動性水硬性組成物は、ポルトランドセメントを含む水硬性成分と、減水剤とを含む組成物の場合、
2)自己流動性水硬性組成物ポルトランドセメントを含む水硬性成分と、増粘剤とを含む組成物の場合、又は
3)自己流動性水硬性組成物ポルトランドセメントを含む水硬性成分と、減水剤及び増粘剤とを含む組成物の場合、を意味する。
【0012】
水硬性成分は、好ましくはポルトランドセメント10〜100質量%(但し、100質量%を除く)、アルミナセメント0〜90質量%及び石膏0〜90質量%(但し、ポルトランドセメント、アルミナセメント及び石膏の合計は100質量%である。)とを含み、さらに好ましくはポルトランドセメント10〜100質量%(但し、100質量%を除く)、アルミナセメント0〜80質量%及び石膏0〜70質量%とを含み、
より好ましくはポルトランドセメント15〜100質量%(但し、100質量%を除く)、アルミナセメント0〜70質量%及び石膏0〜60質量%とを含み、
特に好ましくはポルトランドセメント20〜100質量%(但し、100質量%を除く)、アルミナセメント0〜60質量%及び石膏0〜50質量%(但し、ポルトランドセメント、アルミナセメント及び石膏の合計は100質量%である。)とを含むものを用いることができる。
【0013】
ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントなどを用いるができる。水硬性成分としてポルトランドセメントを用いることにより、コスト低減に効果が認められ好ましい。
【0014】
石膏は、無水、半水等の各石膏がその種を問わず1種又は2種以上の混合物として使用できる。石膏は急硬性であり、また、硬化後の寸法安定性保持成分として働くものである。
【0015】
アルミナセメントは、潜在的に急硬性を有しており、硬化後は耐化学薬品性、耐火性に優れた硬化体を与える。また、潜在水硬性を有する高炉スラグの存在により、その欠点である硬化体強度の経時的な低下も抑制される。アルミナセメントは鉱物組成が異なるものが数種知られ市販されており、何れも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であるが、強度および着色性の面からは、CA成分が多く且つCAF等の少量成分が少ないアルミナセメントが好ましい。
【0016】
自己流動性水硬性組成物は、さらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカなどの無機成分を含むことができ、特に高炉スラグを含むことにより、乾燥収縮による硬化体の耐クラック性を高めることができる。
無機成分の添加量は、水硬性成分100質量部に対し、10〜350質量部、好ましくは30〜200質量部とするのが好ましい。
【0017】
高炉スラグの添加量は、水硬性成分100質量部に対し、10〜350質量部とするのが好ましく、少なすぎると収縮が大きくなり、多すぎると強度低下を招くことがある。
高炉スラグは、JIS・A−6206に規定されるブレーン比表面積3000cm/g以上のものを用いることができる。
自己流動性水硬性組成物は、ポルトランドセメント及び高炉スラグとを含む混合セメントを用いることができる。混合セメントに使用されるフイラーとしては高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材である。
【0018】
自己流動性水硬性組成物は、さらに細骨材を含むことができる。
細骨材は、水硬性成分100質量部に対し、50〜500質量部、好ましくは100〜400質量部、特に好ましくは150〜300質量部の範囲が好ましい。
細骨材としては、粒径2mm以下の骨材、好ましくは粒径0.1〜2mmの骨材、さらに好ましくは粒径0.2〜2mmの骨材、特に好ましくは0.3〜2mmの骨材を主成分としている。
細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、アルミナクリンカー、シリカ粉、粘土鉱物、廃FCC触媒、石灰石などの無機質材、ウレタン砕、EVAフォーム、発砲樹脂などの樹脂粉砕物などを用いることができる。
特に細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、石英粉末、アルミナクリンカーなどが好ましく用いることが出来る。
細骨材の粒径は、JIS Z−8801で規定される呼び寸法の異なる数個のふるいを用いて測定する。
【0019】
自己流動性水硬性組成物は、増粘剤、減水剤、消泡剤、凝結促進剤や凝結遅延剤などの凝結調整剤などを含むことができる。
【0020】
増粘剤は、セルロース系、蛋白質系、ラテックス系、および水溶性ポリマー系などを用いることが出来、特にセルロース系などを用いることが出来る。
増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して0.05〜1.0質量部、さらに0.1〜0.7質量部、特に0.2〜0.5質量部含むことが好ましい。増粘剤の添加量が多くなると、流動性の低下を招く恐れがあり好ましくない。
増粘剤及び消泡剤を併用して用いることは、骨材分離の抑制、気泡発生の抑制、硬化体表面の改善に好ましい効果を与え、セルフレベリング材としての特性を向上させるために好ましい。
【0021】
消泡剤は、シリコン系、アルコール系、ポリエーテルなどの合成物質又は植物由来の天然物質鉱油系など、公知のものを用いることが出来る。
消泡剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して、2質量部以下、さらに1質量部以下、特に0.5質量部以下が好ましい。消泡剤の添加量は、上記より多く添加する場合、消泡効果の向上がみとめられない場合がある。
【0022】
凝結調整剤は、凝結促進を行う成分である凝結促進剤、凝結遅延を行う成分である凝結遅延剤などを、これらを単独で又は併用して用いることが出来る。
【0023】
凝結促進剤としては、公知の凝結促進剤を用いることが出来る。凝結促進剤の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウムなどの有機酸などの、無機リチウム塩や有機リチウム塩などのリチウム塩を用いることが出来る。特に炭酸リチウムは、効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
凝結促進剤としては、特性を妨げない粒径を用いることが好ましく、粒径は50μm以下にするのが好ましい。
特にリチウム塩を用いる場合、リチウム塩の粒径は50μm以下、さらに30μm以下、特に10μm以下が好ましく、粒径が上記範囲より大きくなるとリチウム塩の溶解度が小さくなるために好ましくなく、特に顔料添加系では微細な多数の斑点として目立ち、美観を損なう場合がある。
【0024】
凝結遅延剤としては、公知の凝結遅延剤を用いることが出来る。凝結遅延剤の一例として、硫酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウムなど有機酸などの、無機ナトリウム塩や有機ナトリウム塩などのナトリウム塩を用いることが出来る。特に重炭酸ナトリウムや酒石酸ナトリウムは、効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
【0025】
凝結調整剤は、用いる自己流動性水硬性成分や水硬性成分組成に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、凝結促進剤及び凝結遅延剤の成分、添加量及び混合比率を適宜選択して、自己流動性水硬性成分に添加することにより、自己流動性水硬性組成物の可使時間を調整することができ、セルフレベリング材としての使用が非常に容易になるため好ましい。
凝結調整剤は、自己流動性水硬性組成物をセルフレベリング材として用いる場合、リチウム塩とナトリウム塩の合量が、水硬性成分100質量部に対して0.05〜5質量部、さらに0.1〜2質量部、特に0.3〜1.00質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0026】
自己流動性水硬性組成物の製造方法としては、
水硬性成分と、減水剤及び/又は増粘剤と、必要に応じて細骨材、ポゾラン成分、消泡剤、凝結促進剤や凝結遅延剤などの凝結調整剤などの成分を、アイリッヒミキサーなどの攪拌機や混合機を用いて、混合攪拌する方法。
【0027】
本発明により得られる自己流動性水硬性組成物は、所定量の水と混合し、フロー値が、好ましくは190mm以上、さらに好ましくは200mm以上、特に好ましくは210mm以上に調整されていることが、施工の容易さ及び平滑性の高い硬化体表面を得られやすいという理由により好ましい。
SL値のL0は、好ましくは400mm以上、さらに好ましくは420mm以上、より好ましくは440mm以上、特に好ましくは500mm以上であり、SL値のL30/L0(SL値のL30の値を、SL値のL0の値で除した値)は、好ましくは0.90以上、さらに好ましくは0.91以上、より好ましくは0.92以上、特に好ましくは0.93以上に調整されていることが、施工の容易さ及び平滑性の高い硬化体表面を得られやすいという理由により好ましい。
特に、SL値のL0は、好ましくは400mm以上、さらに好ましくは420mm以上、より好ましくは440mm以上、特に好ましくは500mm以上であり、
SL値のL30が好ましくは380mm以上、さらに好ましくは400mm以上、特に好ましくは410mm以上であり、
SL値のL30/L0(SL値のL30の値を、SL値のL0の値で除した値)は、好ましくは0.90以上、さらに好ましくは0.91以上、より好ましくは0.92以上、特に好ましくは0.93以上に調整されていることが、施工の容易さ及び平滑性の高い硬化体表面を得られやすいという理由により好ましい。
【0028】
本発明により得られる自己流動性水硬性組成物を床下地調整などのセルフレベリング材として用いる場合、水は水硬性成分100質量部に対し、95〜120質量部、さらに95〜115質量部、特に100〜110質量部加えて用いることが好ましい。
【0029】
本発明により得られる自己流動性水硬性組成物は、水と混合して製造されるスラリーの水引時間が、20℃では好ましくは60〜150分、さらに好ましくは65〜150分、特に好ましくは100〜150分の範囲で使用することが好ましい。
【0030】
本発明により得られる自己流動性水硬性組成物は、公知の方法でセルフレベリング材として施工することが出来る。例えば施工の一例として、特開2001−040862号公報などに開示されている。
【0031】
本発明により得られる自己流動性水硬性組成物は、一般建築物の主に床下地調整に使用されるセルフレベリング材として用いることができる。
本発明により得られる自己流動性水硬性組成物は、コンクリートの表面仕上げ材として広く使用することができ、一般の建築用左官材料、例えばPータイル貼、長尺シート、じゅうたん、ウレタン等の合成樹脂塗り床の下地の施工にも使用することができる。
本発明により得られる自己流動性水硬性組成物は、特に40℃以下、好ましくは35℃以下、特に好ましくは33℃以下の幅広い温度範囲で優れた特性を有し、セルフレベリング材として使用できる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は下記実施例により制限されるものでない。
【0033】
(1)ブレーン比表面積の評価法:JIS・R−5201に規定されているブレーン空気透過装置を使用して測定する。
(2)ポルトランドセメント中に含まれる遊離酸化カルシウム量(f−CaO含量)の測定方法:セメント協会標準試験方法JCAS・I−01−1997に記載の「遊離酸化カルシウムの定量方法 グリセリン−アルコール法(B法)」に記載の方法を適用して測定する。
【0034】
(3)スラリーの評価:評価は、表2〜4に示す温度20℃又は30℃で行う。
・フロー値: JASS・15M−103に準拠して測定する。厚さ5mmのみがき板ガラスの上に内径50mm、高さ51mmの塩化ビニル製パイプ(内容積100ml)を置き練り混ぜたコンクリート組成物を充填した後、パイプを引き上げる。広がりが静止した後、直角2方向の直径を測定し、その平均値をフロー値とする。
・セルフレベリング性: 図1に示すSL測定器を使用し、幅30mm×高さ30mm×長さ750mmのレールに、先端より長さ150mmのところに堰板を設け、混練直後のスラリーを所定量満たして成形する。成形直後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をL0とする。
同様に成形後30分後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をL30とする。
【0035】
(4)表面状態(水浮き、骨材分離、白華の有無、凹凸、気泡痕):
骨材分離は、(3)のセルフレベリング性において、スラリーの流れ停止後にスラリーの途中で骨材が停止していないかどうかを触診で観察する。
水浮きは、堰板引き上げ後のブリージング水がスラリー自体よりも早く流れて水分だけが長く流れていないかどうか、また、白華の有無、凹凸、及び気泡痕は、上記(2)で得られるスラリーを、30cm×30cmのコンクリート板へ厚さ10mmで流し込み、硬化終了後、目視で観察した。評価は以下の通りとした。
○:無し、×:有り。
【0036】
(5)水引時間(分):
上記(2)で得られるスラリーを、30cm×30cmのコンクリート板へ厚さ10mmで流し込み、スラリー表面の水分が無くなる(水引き)時間を目視で観察して、評価した。
【0037】
(6)使用材料:以下の材料を使用した。
・アルミナセメント:ブレーン比表面積3,600cm/g、モノカルシウムアルミネート含有量45質量%。
・ポルトランドセメント:早強セメント、ブレーン比表面積4,500cm/g。
・石膏:II型無水石膏、ブレーン比表面積3,300cm/g。
・高炉スラグ:ブレーン比表面積4,400cm/g。
・珪砂:4号珪砂(市販品)。
・リチウム塩:炭酸リチウム(市販品)。
・アルミニウム塩:硫酸アルミニウム塩(市販品)。
・ナトリウム塩:重炭酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム(何れも市販品)。
・減水剤:ポリカルボン酸系減水剤(市販品)。
・増粘剤:メチルセルロース系増粘剤(市販品)。
・消泡剤:ポリエーテル系消泡剤(市販品)。
【0038】
(実施例1〜5、比較例1〜4)水硬性組成物及びスラリーの調製、評価:
表1(SL−1)に示す水硬性成分、高炉スラグ、細骨材、減水剤、増粘剤、凝結調整剤、消泡剤(総量:1.5kg)を、ケミスタラーを用いて混練し、水硬性組成物を調整し、さらに所定量の水を加えて3分間混練して、スラリー(SL−1)を得た。水硬性組成物及びスラリーの調整は、20℃で行った。用いるポルトランドセメントは、予めポルトランドセメントに含まれるf−CaO量を測定し、表2に示すものを使用した。
【0039】
(実施例6、7、比較例5,6)水硬性組成物及びスラリーの調製、評価:
表1(SL−2)に示す水硬性成分、高炉スラグ、細骨材、減水剤、増粘剤、凝結調整剤、消泡剤(総量:1.5kg)を、ケミスタラーを用いて混練し、水硬性組成物を調整し、さらに所定量の水を加えて3分間混練して、スラリー(SL−2)を得た。水硬性組成物及びスラリーの調整は、30℃で行った。用いるポルトランドセメントは、予めポルトランドセメントに含まれるf−CaO量を測定し、表3に示すものを使用した。
【0040】
(実施例8、比較例7)水硬性組成物及びスラリーの調製、評価:
表1(SL−3)に示す水硬性成分、高炉スラグ、細骨材、減水剤、増粘剤、凝結調整剤、消泡剤(総量:1.5kg)を、ケミスタラーを用いて混練し、水硬性組成物を調整し、さらに所定量の水を加えて3分間混練して、スラリー(SL−3)を得た。水硬性組成物及びスラリーの調整は、20℃で行った。用いるポルトランドセメントは、予めポルトランドセメントに含まれるf−CaO量を測定し、表4に示すものを使用した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】SL測定器を用いて、セルフレベリング性評価の概略示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメントを含む水硬性成分と、減水剤及び/又は増粘剤とを含む自己流動性水硬性組成物の製造方法において、
ポルトランドセメントに含まれる遊離酸化カルシウム量を測定し、
ポルトランドセメントは、遊離酸化カルシウム量が1質量%以下のポルトランドセメントを用い、
遊離酸化カルシウム量が1質量%以下のポルトランドセメントを含む水硬性成分と、減水剤及び/又は増粘剤とを混合することを特徴とする自己流動性水硬性組成物の製造方法。
【請求項2】
水硬性成分は、水硬性成分100質量%中に、ポルトランドセメントを10質量%以上含まれていることを特徴とする請求項1に記載の自己流動性水硬性組成物の製造方法。
【請求項3】
水硬性成分は、さらにアルミナセメント及び石膏から選択された成分を少なくとも1種類含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自己流動性水硬性組成物の製造方法。
【請求項4】
水硬性成分は、ポルトランドセメント10〜100質量%(但し、100質量%を除く)、アルミナセメント0〜90質量%及び石膏0〜90質量%(但し、ポルトランドセメント、アルミナセメント及び石膏の合計は100質量%である。)とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自己流動性水硬性組成物の製造方法。
【請求項5】
自己流動性水硬性組成物は、さらに無機成分を含み、
水硬性成分100質量部に対し、無機成分が10〜350質量部を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自己流動性水硬性組成物の製造方法。
【請求項6】
自己流動性水硬性組成物は、さらに細骨材を含み、
細骨材が、水硬性成分100質量部に対し、50〜500質量部含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自己流動性水硬性組成物の製造方法。
【請求項7】
自己流動性水硬性組成物は、さらに凝結調整剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自己流動性水硬性組成物の製造方法。
【請求項8】
水硬性成分100質量部に対して、減水剤0.01〜1.0質量部及び/又は増粘剤0.05〜1.0質量部含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の自己流動性水硬性組成物の製造方法。
【請求項9】
セルフレベリング性のSL値(L30/L0)が、0.90以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の自己流動性水硬性組成物の製造方法。



【図1】
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【公開番号】特開2006−168999(P2006−168999A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359290(P2004−359290)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】