説明

自立式穀類収納袋

【課題】収納袋に棒材をより簡単に装着でき、且つ、容易に抜け落ちないようにすると共に、製造コストを低減させた自立式穀類収納袋を提案する。
【解決手段】穀類収納袋の側周面の3個所以上に、棒材を挿通及び抱持する帯環列を設けてなる自立式穀類収納袋であって、前記帯環列は、一方のみ開口する筒状の有底帯環と、上下を開口した筒状の挿入片に該挿入片の一方の開口を閉塞して袋状とする抱持片を取付けてなる抱持帯環とを、互いの開口を対向させて一線上に設ける。また、上記帯環列の中間部に、さらに、上下を開口した中間帯環を設ける。さらに、上記抱持帯環の左右に上記抱持片を固定する1乃至複数の結束紐を縫着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主としてコンバインによって刈り取られた生籾等をコンバインの排出ダクトから直接収納するようにした自立式穀類収納袋の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生籾等をそのまま収納するための自立式穀類収納袋が広く採用されている。その基本的な形態は、例えば本出願人により出願、登録された特許文献1に開示されている。即ち、穀類収納袋の袋本体の側周面の少なくとも3個所以上に、垂直方向に連通する少なくとも上下2個の帯環からなる帯環列を縫着し、該各列の帯環に弾力的に撓曲可能な棒材を挿通可能としたものである。
【0003】
そして、さらにこれを改良して、特許文献2に見られるように、上記各帯環列の上下縁の帯環を、その開口が互いに対向する有底状とする一方、上縁の帯環にファスナーを縫着することによって、挿入される棒材の支持長を充分大きく保ち、自立安定性を高めたものも提案している。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2549432号公報
【特許文献2】実用新案登録第2537796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した改良型の自立式穀類収納袋は、自立安定性は高まったものの、実際の作業において、袋中に穀類が充満されるに伴って袋胴部が外側に膨出し、棒材を撓曲させる結果、該棒材の上下端部を支持する有底帯環が棒材の反発力を受け、特に上縁帯環のファスナーが棒材端部等と直接に当接して、該ファスナーを損傷ないしは破損させる事態が生じ、袋の支持機能を喪失させる場合があった。
【0006】
また、従来の帯環列に棒材を固定する方法では、棒材を撓曲して帯環に挿入するので、有底帯環の長さを一定長さに制限する必要がある一方で、該有底帯環に充分な長さだけ挿通しておかないと、棒材の撓曲によって棒材が抜け出し、支持機能を失う場合もあり、帯環の長さを最適に選定することが困難であった。
【0007】
さらに、該収納袋の製造者にとって、該ファスナーを縫着する作業は多大な手間を要するものであると共に、ファスナー自体も高価であり、製造コストの面から、好ましいものではなかった。
【0008】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みて発明されたものであって、収納袋に棒材をより簡単に装着でき、且つ、容易に抜け落ちないようにすると共に、製造コストを低減させた自立式穀類収納袋を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記各課題を解決するために、本発明は、穀類収納袋の側周面の3個所以上に、棒材を挿通及び抱持する帯環列を設けてなる自立式穀類収納袋であって、前記帯環列は、一方のみ開口する筒状の有底帯環と、上下を開口した筒状の挿入片に該挿入片の一方の開口を閉塞して袋状とする抱持片を取付けてなる抱持帯環とを、互いの開口を対向させて一線上に設けるという手段を採用した。
【0010】
また、上記帯環列の中間部に、さらに、上下を開口した中間帯環を設けるという手段を採用した。
【0011】
上記自立式穀類収納袋は、袋の側周面に設けた帯環列に棒材を抱持させて袋を自立させるという作用は、なお従前のこの種穀類収納袋と同じであるが、棒材を抱持させる手段として、帯環列の一方に設ける抱持帯環において、挿入片に棒材を挿入し、該挿入片の一方の開口を抱持片で閉止することにより棒材を抱持する部分が袋状に形成されるという作用を奏するものである。
【0012】
そして、上記抱持帯環の具体的構成として、布材の左右端を縫着して上下が開口する筒状とした挿入片と、別の布材の端部を縫着し残りを自由端とした抱持片とからなり、上記挿入片と抱持片に互いに係着する面ファスナーを取付け、抱持片を折り返して面ファスナー同士を係着させることで上記挿入片の一方の開口を閉塞して袋状として棒材を抱持可能とするという手段を採用した。
【0013】
さらに、上記抱持帯環の左右に上記抱持片を固定する1乃至複数の結束紐を縫着するという手段も採用した。
【0014】
かかる手段では、面ファスナーを介して係着可能な抱持片を折り返して、棒材を挿入した挿入片の一方の開口を閉塞することで底部を有する袋状に形成され、棒材の端部が確実に抱持されるという作用を奏するものである。また、結束紐は、緊締することで抱持片を確実に固定するという作用を奏するものである。
【0015】
そして、上記帯環列において、穀類収納袋の上縁に有底帯環を設け、下縁に抱持帯環を設けるという手段、或いは、逆に、穀類収納袋の上縁に抱持帯環を設け、下縁に有底帯環を設けるという手段を採用した。
【0016】
即ち、必要に応じて、袋の上方から棒材を挿通することも、逆に、袋の下方から棒材を挿通することも可能となるものである。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明に係る自立式穀類収納袋は、棒材の端部を抱持する手段として、一方のみ開口する筒状の有底帯環と、上下を開口した筒状の挿入片に該挿入片の一方の開口を閉塞して袋状とする抱持片を取付けてなる抱持帯環とからなる帯環列を設けるようにしたので、一方端部から棒材を挿入し、端部の開口を抱持片で閉塞するという簡単な作業で、棒材を確実に抱持できるようになり、従来のように、棒材に力を加えて撓曲させ、有底帯環に挿着するといった手間を軽減でき、誰にでも簡単に自立式穀類収納袋を組み立てることが可能となった。
【0018】
また、棒材は、一方から挿入するようにしたので、有底帯環や抱持帯環の長さが制限されないので、比較的長いものを採用すれば、穀類の収納時に袋が膨出して棒材が撓曲した場合にも、上下の帯環から棒材が抜け落ちる事故を確実に防止できるようになった。
【0019】
また、従来のように帯環にファスナーを縫着するという手間が軽減できるので、その製作手順が簡略されると共に、この種穀類収納袋を安価に提供できるという優れた効果が期待できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る自立式穀類収納袋の好ましい実施形態を、添付した図面に従って説明する。図1は、本発明に係る自立式穀類収納袋の概略を示す全体斜視図である。また、図2は、その帯環列部分の拡大図である。
【0021】
図1において、1は、例えば500〜1000kgの生籾を収納可能とした大型の穀類収納袋で、比較適剛直なメッシュ地で円筒状に縫製し、その上縁の開口に、ファスナー等で開閉自在な蓋体2を設けたものである。3は、袋の側周面の鉛直方向に縫着する補強帯布で、必要に応じて側周面の複数個所に設けるものである。なお、この穀類収納袋は、例示した円筒状に限定されるものではなく、例えば角筒状のものであってもよい。
【0022】
4は、上記補強帯布3の上端縁近傍に縫着する有底帯環で、下方に開口して、下述する棒材を下から挿入可能としている。5は、上記補強帯布3の中間部に縫着する中間帯環で、上下を開口して棒材を挿通可能にしている。この中間帯環は必要に応じて設けるもので、省略することもある。6は、上記補強帯布3の下縁近傍に縫着する抱持帯環で、後述するように、棒材を挿通した後に抱持片を折り返して袋状に形成し、棒材の抜け落ちを規制するようにしたものである。有底帯環4、中間帯環5(省略可)、抱持帯環6は、鉛直方向の一線上に連通しており、これら一組で帯環列7を構成する。そして、この帯環列7は、収納袋1の側周面の少なくとも3個所に設けるものである。
【0023】
8は、棒材であって、各帯環列7に上下方向に挿通、抱持させることで、収納袋1を自立させるものである。この棒材8は、撓曲性を有する高弾性素材、例えば、強化プラスチック、グラスファイバー等で構成するもので、上記収納袋の全高よりも少しく短い長さを有するものである。
【0024】
9・・、10・・はそれぞれ、収納袋1の上周縁及び下周縁に沿って複数設ける保持帯で、強化プラスチック等の適宜な弾性材料からなるロッド11、12を全周にわたって挿通し、上縁開口部及び底部を一定形状に維持するようにしたものである。
【0025】
なお、上記収納袋1は、必要に応じて上縁部に懸吊用の取手環を取り付け、また、下面には穀類排出用の中筒を設けることは自由であり、その他、穀類収納袋としての基本的構成は従来のものと同様である。
【0026】
続いて、上記帯環列7のより具体的な構成について、図2、図3に従って説明する。各図において、有底帯環4は、適宜な布材の下方を残して他の三方を補強帯布3に縫着し、下方開口の筒状にしたもので、下方から棒材8を挿入し、抱持するものである。中間帯環5は、適当長さの布材の左右端を補強帯布3に縫着し、上下に開口を形成して棒材8を挿通可能としている。
【0027】
次に、抱持帯環6について説明すると、適当長さの布材のおよそ上半分を補強帯布3に縫着して下方の自由端を抱持片13とし、該縫着部分には別の布材の左右端を補強布材3に縫着して上下が開口する筒状の挿入片14を形成している。さらに、上記抱持片13の先端部分と挿入片14の上端部分には互いに係着する面ファスナー15のオス、メスを取り付け、図3(B)に示すように、抱持片13を折り返して面ファスナー同士を係着させた時、上記挿入片14の下辺を閉塞して底部13aを形成し、挿入後の棒材8が下方から抜け出さないように抱持している。なお、16、16は、上記挿入片14の左右に縫着した適当長さの結束紐で、抱持片13を折り返して係着した上から緊締して、抱持片13が不用意に外れ落ちないようにするためのものである。
【0028】
上記構成からなる本発明の穀類収納袋は、図2に示すように、袋の下方から、即ち上記挿入片14の下方から棒材8を挿入し、中間帯環5を挿通した後、袋上縁の有底帯環4の開口に挿入する。次に、抱持帯環6において、抱持片13を持ち上げて折り返し、面ファスナー15を介して抱持片13と挿入片14を係着させ底部13aを形成する。さらに、結束紐16を緊締して抱持片13を確実に固定する。これによって、棒材8は確実に収納袋の側周面の鉛直方向に抱持、固定され、袋を支持する。かかる一連の作業を、少なくとも3個所に設けられる帯環列7について繰り返すことにより、棒材8を介して穀類収納袋が自立する。さらに、必要に応じて、上下周縁に設ける保持体9、10に環状のロッド11、12を挿通すれば、袋の開口部及び底部の形状が一定形状に維持され、穀類の収納を円滑に行うことができる。なお、図2、図3では、ロッドの図示を省略している。
【0029】
上述したように、本発明に係る自立式穀類収納袋は、棒材8を抱持帯環6のある端部から挿入し、中間帯環5を経て有底帯環4に挿入し、抱持帯環6において、抱持片13と結束紐16で棒材8を抱持、固定するものであるから、従来のように、棒材を撓曲して有底の帯環に挿入する作業は必要でない。従って、作業者が非力であっても、極めて簡単に収納袋に棒材8を固定できるものである。また、従来の収納袋では、棒材8を撓曲して有底の帯環に挿入する必要上、帯環の長さに制限があったが、端部から挿入する本発明手段では、棒材8を挿入固定するだけなので、有底帯環4や抱持帯環6の長さを制限する必要がなく、比較的長いものを採用できる。そのため、穀類の収納によって袋胴部が膨出して棒材8が撓曲しても、棒材8の端部が上下の帯環から抜け落ちるといった事故を確実に防止できるものである。
【0030】
なお、上記実施形態では、収納袋の上縁に有底帯環4を設け、下縁に抱持片13を有する抱持帯環6を設けたものを提示しているが。これに限定するものではない。即ち、逆に、収納袋の上縁に抱持帯環を設け、下縁に有底帯環を設けるものであってもよい。かかる構成では、袋の上縁から棒材を挿入することになるが、その場合も、組み立て作業の手間は変わらないし、袋の自立機能は些かも損なわれない。どちらの位置関係を採用するかは、袋の大きさや、製作の手間等から任意に採用できるものである。
【0031】
また、結束紐16は、面ファスナー15で係着する抱持片13が不用意に外れ落ちないようにするために、少なくとも一つは設けることが好ましいが、抱持帯環6を比較的長くした場合には、抱持片13を確実に固定するために2個所以上に設けることもある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る自立式穀類収納袋の一例の概略構成を示す全体斜視図である。
【図2】帯環列部分の拡大図である。
【図3】(A)は抱持帯環の拡大図、(B)はその断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 穀類収納袋
2 蓋体
3 補強帯布
4 有底帯環
5 中間帯環
6 抱持帯環
7 帯環列
8 棒材
9、10 保持帯
11、12 ロッド
13 抱持片
14 挿入片
15 面ファスナー
16 結束紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類収納袋の側周面の3個所以上に、棒材を挿通及び抱持する帯環列を設けてなる自立式穀類収納袋であって、前記帯環列は、一方のみ開口する筒状の有底帯環と、上下を開口した筒状の挿入片に該挿入片の一方の開口を閉塞して袋状とする抱持片を取付けてなる抱持帯環とを、互いの開口を対向させて一線上に設けたものであることを特徴とする自立式穀類収納袋。
【請求項2】
上記帯環列の中間部に、さらに、上下を開口した中間帯環を設けた請求項1記載の自立式穀類収納袋。
【請求項3】
上記抱持帯環は、布材の左右端を縫着して上下が開口する筒状とした挿入片と、別の布材の端部を縫着し残りを自由端とした抱持片とからなり、上記挿入片と抱持片に互いに係着する面ファスナーを取付け、抱持片を折り返して面ファスナー同士を係着させることで上記挿入片の一方の開口を閉塞して袋状として棒材を抱持可能としたものである請求項1又は請求項2記載の自立式穀類収納袋。
【請求項4】
上記抱持帯環の左右に上記抱持片を固定する1乃至複数の結束紐を縫着した請求項1から請求項3のいずれか1項記載の自立式穀類収納袋。
【請求項5】
上記帯環列において、穀類収納袋の上縁に有底帯環を設け、下縁に抱持帯環を設けるものである請求項1から請求項4のいずれか1項記載の自立式穀類収納袋。
【請求項6】
上記帯環列において、穀類収納袋の上縁に抱持帯環を設け、下縁に有底帯環を設けるものである請求項1から請求項4のいずれか1項記載の自立式穀類収納袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−269662(P2009−269662A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123667(P2008−123667)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000217251)田中産業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】