説明

自脱型コンバイン

【課題】 左右のクローラ走行装置を備えた走行機体の前部に刈取り部を連結するとともに、走行機体に搭載した脱穀装置の後部に、排ワラを横倒れ姿勢で細断する排ワラカッタを連結装備し、前記排ワラカッタにおけるカッタケースの下部に、細断ワラを流下案内して地上に放出する排出シュートを設けた自脱型コンバインにおいて、先の行程での機体通過跡に放置される細断ワラを、次行程において刈取り部の分草具でを引っ掛けることなく刈取り作業を行えるようにする。
【解決手段】 回り刈り時における未刈り側となるがわの細断ワラを既刈り側に流下案内して地上に放出する排出シュート17を機体幅Mの略中央まで延出してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のクローラ走行装置を備えた走行機体の前部に刈取り部を連結するとともに、走行機体に搭載した脱穀装置の後部に、排ワラを横倒れ姿勢で細断する排ワラカッタを連結装備した自脱型コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記した自脱型コンバインにおいては、排ワラカッタにおけるカッタケースの下部に、回り刈り時における未刈り側となるがわの細断ワラを既刈り側に流下案内して地上に放出する排出シュートを設けて、未刈り側となるがわの細断ワラが未刈り作物に降りかからないようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−178432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンバインによる刈取り作業においては、先の行程での機体通過跡に放置された細断ワラを、次行程において刈取り部の分草具で引っ掛けることなく走行できることが必要であり、未刈り側となるがわの細断ワラをできるだけ未刈り側から遠い位置に放出することが望ましい。そのためには、未刈り側となるがわの細断ワラを流下案内する排出シュートをできるだけ長く延出すればよいのであるが、排出シュートは細断ワラを円滑に流下させるに足る流下角をもって傾斜配置することになるので、排ワラカッタの地上高によって排出シュートの長さが制限されることになる。
【0004】
特に、刈取り条数が少ない小型機種においては、機体重心を下げて安定性を高めるために脱穀装置を低く搭載することが望ましいので、排ワラカッタの地上高も低くなりがちであり、排出シュートを長く延出することが難しくなる。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、脱穀装置を低く搭載して機体の安定性を高める仕様の自脱型コンバインにおいても、先の行程での機体通過跡に放置される細断ワラを、次行程において刈取り部の分草具でを引っ掛けることなく刈取り作業を行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、左右のクローラ走行装置を備えた走行機体の前部に刈取り部を連結するとともに、走行機体に搭載した脱穀装置の後部に、排ワラを横倒れ姿勢で細断する排ワラカッタを連結装備し、前記排ワラカッタにおけるカッタケースの下部に、回り刈り時における未刈り側となるがわの細断ワラを既刈り側に流下案内して地上に放出する排出シュートを設けた自脱型コンバインにおいて、
前記排出シュートの下端を機体幅の略中央まで延出してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、回り刈り時における未刈り側となるがわの細断ワラは、未刈り作物から大きく離れた位置(例えば未刈り作物から機体幅の1/2程度離れた位置)で圃場に放置されることになり、放置された細断ワラが次行程における刈り幅から外れて位置することになる。
【0008】
従って、第1の発明によると、先の行程での刈り跡に放置される細断ワラを次行程において刈取り部の分草具でを引っ掛けることなく刈取り作業を行うことができる。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記排出シュートの下端を、左右の前記クローラ走行装置における内端の間に位置させてあるものである。
【0010】
上記構成によると、回り刈り時における未刈り側となるがわの細断ワラは左右のクローラ走行装置における内端の間で圃場に放置されることになり、細断ワラを未刈り作物から十分離して放置して、次行程における刈り幅から外れて位置させることができる。
【0011】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
前記刈取り部を、左右一対の引起し装置と3個の分草具を並列配備した仕様に構成するとともに、刈取り部の刈り幅における左右両端位置と、左右の前記クローラ走行装置の踏み幅における左右両端位置とが機体左右方向で略一致するよう構成し、前記排出シュートの下端の機体左右方向での位置と、刈取り部における中央の分草具の機体左右方向での位置とを前後方向で略一致させてあるものである。
【0012】
上記構成によると、左右一対の引起し装置のそれぞれに1条づつ作物を導入して2条の刈取りを行う回り刈り作業、および、一方の引起し装置に1条の作物を導入するとともに他方の引起し装置に1条の作物を導入して3条全面刈りによる中割り作業を行っても、細断ワラを未刈り作物から離して放置して、次行程における刈り幅から外れて位置させることができる。
【0013】
第4の発明は、上第1〜3のうちのいずれか一つの発明において、
前記排出シュートの下端を左右方向に位置変更可能に構成してあるものである。
【0014】
上記構成によると、作物の条間の大きさに対応した好適な細断ワラ排出位置を設定することができる。
【0015】
第5の発明は、上第1〜4のうちのいずれか一つの発明において、
前記排出シュートの下端高さを変更可能に構成してあるものである。
【0016】
上記構成によると、排出シュートの下端高さを高く設定することで、クローラ走行装置が大きく沈下する湿田での作業時や、畦越え時に機体が後下がり傾斜する際でも、排出シュートを地面に接触させて損傷することを未然に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に、自脱型コンバインの全体側面、図2にその全体平面、および、図3にその背面がそれぞれ示されている。この自脱型コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に刈取り部3が上下揺動可能に連結されるとともに、走行機体2に脱穀装置4とアンローダ付きの穀粒回収タンク5が左右に並列して搭載され、穀粒回収タンク5の前方に原動部を含む運転部6が装備され、かつ、脱穀装置4の後方に排ワラカッタ7と、排ワラカッタ7に脱穀後の排ワラを送り込む排ワラ搬送装置8が配備された構造となっている。
【0018】
刈取り部3には、植立穀稈を所定の刈取り姿勢に引起す左右一対の引起し装置9、引起した植立穀稈を切断するバリカン型の刈取り装置10、引起し刈り取った穀稈を刈幅中間に合流した後、脱穀装置4の機体左側外方に備えられたフィードチェーン11に横倒れ姿勢で送り込む穀稈搬送装置12、等が装備されている。
【0019】
各引起し装置9の前端部と、その中間部位には分草具13が配備されており、左右両端の分草具13の間隔である刈り幅Wが3条の刈取りが可能な寸法に設定されるともに、左右の前記クローラ走行装置1における踏み幅Hの左右外端位置と、刈取り部3における刈り幅Wの左右外端位置とがそれぞれ機体左右方向に一致あるいは略一致されて、全面刈りが可能に構成されている。これによって、図7(a)に示すように、機体横一側(この例では機体左側)を未刈り側として刈取り走行する通常の回り刈り作業時には2条の刈取りを行い、図7(b)に示すように、機体左右を未刈り側として刈取り走行する中割り作業においては未刈り作物を踏みつけることなく全面刈りによる3条の刈取りを行うことが可能となっている。
【0020】
前記排ワラカッタ7は、カッタケース14に回転受刃15と回転切断刃16とを前後所定間隔をもって左右水平に軸支してなる円板型排ワラカッタが利用されており、フィードチェーン11から排ワラ搬送装置8に受け継ぎ搬送されてきた排ワラを横倒れ姿勢で受け入れて細断し、カッタケース14の下端から地上に放出するよう構成されている。
【0021】
図3に示すように、カッタケース14の左右下端部には細断ワラを流下案内する排出シュート17,18がそれぞれ装備されるとともに、カッタケース14の後側下端部には排出された細断ワラが後方に飛散するのを防止する後部案内カバー19が、カッタケース14の全幅に亘って装備されている。
【0022】
図4に示すように、回り刈り作業時に未刈り側となる株元側の排出シュート17は、上端の支点aを中心にして左右揺動可能に連結された上部シュート17aと、その下端部に支点bを中心にして左右揺動可能に連結された下部シュート17bとで構成されている。後部案内カバー19の上部に形成された円弧状長孔20に蝶ボルト21が挿通されて上部シュート17aに締め込に連結されるとともに、後部案内カバー19の下部に形成された円弧状長孔22に蝶ボルト23が挿通されて下部シュート17bに締め込に連結され、各円弧状長孔20,22の範囲内で締め込み連結位置を調節することで、上部シュート17aおよび下部シュート17bの取り付け角度を変更して、排出シュート17の下端eの位置、つまり、細断ワラ排出位置を左右方向および上下方向に変更調節することができるようになっている。
【0023】
下部シュート17bは下方の蝶ボルト23を取外すことで支点b周りに大きく機体横外方(左方)に折り込むことが可能となっており、図5に示すように、取外した蝶ボルト23を後部案内カバー19に形成した2つの連結孔24のいずれかに挿通して、大きく折り込んだ下部シュート17bに締め込み連結することで、下部シュート17bにおける下端の地上高を高くしておくことができるようになている。
【0024】
上部シュート17aおよび下部シュート17bをそれぞれ最も右方に揺動調節して、排出シュート17の下端位置、つまり、細断ワラ排出位置を最も排ワラ穂先側(この例では右側)に調節した図3に示す状態では、排出シュート17の下端eの機体左右方向での位置が、左右のクローラ走行装置1における内端の中間に位置するとともに、機体幅Mの略中央に位置し、かつ、排出シュート17の下端eの機体左右方向での位置と、刈取り部3における中央の分草具13の機体左右方向での位置とが前後方向で略一致している。
【0025】
図3,図6に示すように、回り刈り作業時に既刈り側となる穂先側の排出シュート18は、支点cを中心にして左右揺動可能にカッタケース14の下端部に連結され、後部案内カバー19に形成された円弧状長孔25に蝶ボルト26が挿通されて排出シュート18に締め込に連結され、円弧状長孔25の範囲内で排出シュート18揺動調節することで、排出シュート18の下端fの位置を左右に変更調節することができるようになっている。
【0026】
上記構成によると、図7に示すように、通常の作業形態である回り刈り作業時には、機体左側を未刈り側として左右の各引起し装置9に1条づつ作物を導入して2条の刈取りを行う。この時、刈取り行程における細断ワラSは、次の刈取り行程における刈り幅Wの右端より既刈り側に外れて排出されることになり、次の刈取り行程で、右側のクローラ走行装置1に踏みつけられることなく、右端の分草具13に引っ掛けられることはない。
【0027】
図8に示すように、機体左右を未刈り側として刈取り走行する中割り作業においては、左側の引起し装置9に1条の作物を導入するとともに、右側の引起し装置9に2条の作物を導入して全面刈りによる3条の刈取りを行う。その後の回り刈り作業時において、先の中割り刈取り行程における細断ワラSは、次の回り刈り行程における刈り幅Wの右端より既刈り側に外れて排出されることになって、次の回り刈り行程で、右側のクローラ走行装置1に踏みつけられることなく、右端の分草具13に引っ掛けられることもない。
【0028】
〔他の実施例〕
(1)株元側の排出シュート17を上部の支点a周りに左右揺自在、かつ、シュート長手方向に沿ってスライド伸縮自在に構成して、排出シュート17の下端位置を左右および上下に調節可能に構成して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】自脱型コンバインの側面図
【図2】自脱型コンバインの平面図
【図3】自脱型コンバインの背面図
【図4】株元側の排出シュートの背面図
【図5】排出シュートの折込み状態を示す背面図
【図6】穂先側の排出シュートの背面図
【図7】回り刈り作業形態を示す概略平面図
【図8】中割り作業形態を示す概略平面図
【符号の説明】
【0030】
1 クローラ走行装置
2 走行機体
3 刈取り部
4 脱穀装置
7 排ワラカッタ
9 引起し装置
13 分草具
14 カッタケース
17 排出シュート
H 踏み幅
M 機体幅
W 刈り幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のクローラ走行装置を備えた走行機体の前部に刈取り部を連結するとともに、走行機体に搭載した脱穀装置の後部に、排ワラを横倒れ姿勢で細断する排ワラカッタを連結装備し、前記排ワラカッタにおけるカッタケースの下部に、回り刈り時における未刈り側となるがわの細断ワラを既刈り側に流下案内して地上に放出する排出シュートを設けた自脱型コンバインにおいて、
前記排出シュートの下端を機体幅の略中央まで延出してあることを特徴とする自脱型コンバイン。
【請求項2】
前記排出シュートの下端を、左右の前記クローラ走行装置における内端の間に位置させてある請求項1記載の自脱型コンバイン。
【請求項3】
前記刈取り部を、左右一対の引起し装置と3個の分草具を並列配備した仕様に構成するとともに、刈取り部の刈り幅における左右両端位置と、左右の前記クローラ走行装置の踏み幅における左右両端位置とが機体左右方向で略一致するよう構成し、前記排出シュートの下端の機体左右方向での位置と、刈取り部における中央の分草具の機体左右方向での位置とを前後方向で略一致させてある請求項1または2記載の自脱型コンバイン。
【請求項4】
前記排出シュートの下端を左右方向に位置変更可能に構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の自脱型コンバイン。
【請求項5】
前記排出シュートの下端高さを変更可能に構成してある請求項1〜4のいずれか一項に記載の自脱型コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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