説明

自転車チェーンテンショナ装置

【課題】ベース部材とプーリと蓄電ユニットとを基本的に有する自転車チェーンテンショナ装置を提供する。
【解決手段】この装置は、ベース部材60と、プーリ部材62と、蓄電ユニット64と、を備えている。プーリ部材62は、ベース部材60によって支持され、チェーンによって回転されて電気エネルギを生成する発電機84を有する。蓄電ユニット64は、ベース部材60に配置されるとともに発電機84に電気的に連結され、発電機84によって生成された電気エネルギを蓄積する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のチェーンテンショナ装置、特に、電気エネルギを生成する自転車のチェーンテンショナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自転車のライディングを簡単に、また、より楽しいものとするために、自転車には種々の電気部品が装備されてきている。例えば、電気制御シフティング(変速)システムが装備された自転車が提案されている。電気制御シフティングシステムは、自転車のライディング状況に基づいて自動的に作動させることができ、あるいはライダーによって手動で作動させることが可能である。このような電気制御シフティングシステムは電源が必要である。そこで、特許文献1〜3に示されるように、電気部品を動作させるための電源として電池やハブダイナモを備えた自転車が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開公報5470277
【特許文献2】米国特許公報6204775
【特許文献1】米国特許公報6380731
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、種々の電気部品を装備した自転車には電源が必要である。
【0005】
本発明の課題は、電気自転車部品のための電気エネルギを生成する自転車チェーンテンショナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自転車チェーンテンショナ装置は、ベース部材と、プーリ部材と、蓄電ユニットと、を備えている。プーリ部材はベース部材によって支持される。プーリ部材は、チェーンによって回転され、電気エネルギを生成する発電機を有する。蓄電ユニットは、ベース部材に配置されるとともに発電機に電気的に連結され、発電機によって生成された電気エネルギを蓄積する。
【発明の効果】
【0007】
以上のような本発明では、チェーンテンショナによって電気エネルギを生成し、蓄積するので、従来の自転車に設けられているハブダイナモ等が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】内装ハブ変速機と、本発明の一実施形態によるチェーンテンショナ装置と、を備えた自転車のリア部の部分的側面図。
【図2】ストレート状ハンドルバーに装着された制御ユニットと複数の操作装置(入力装置)とを示す図。
【図3】自転車部品制御装置の全体構成を示す概略ブロック図。
【図4】カバーを取り外した状態で、自転車フレームのハンガー部に装着される自転車のチェーンテンショナ装置の斜視図。
【図5】チェーンテンショナ装置のプーリの展開斜視図。
【図6】本発明の他の実施形態によるチェーンテンショナ装置の図4に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[自転車の駆動部の構成]
図1に、内装ギアハブ12と、本発明の一実施形態による自転車チェーンテンショナ装置14と、を備えた自転車10の一部を示す。
【0010】
以下に説明するように、自転車チェーンテンショナ装置14は、チェーン24を支持するための装置であり、電気的に駆動される内装ギアハブ12のための電力を生成する。
【0011】
内装ギアハブ12はフレーム16のリア部に装着される。また、内装ギアハブ12は、リアホイール18の一部を形成するとともに、ドライブトレイン20の一部を形成する。ドライブトレイン20は、内装ギアハブ12に加えて、フロントクランクセット22とチェーン24とを有している。チェーン24は、フロントクランクセット22のチェーンリング26と内装ギアハブ12のリア駆動スプロケット28と係合する。
【0012】
[コンピュータユニット及び入力装置]
図2に示すように、自転車10は、ハンドルバー32に装着されるコンピュータユニット30を有している。
【0013】
コンピュータユニット30は、好ましくは、自転車の速度、走行距離、ペダリングスピード、ペダリングケイデンスなど種々のライディングパラメータを測定し、計算し、表示する自転車用コンピュータである。コンピュータユニット30は、1つ以上のCPU、記憶ユニット、演算ユニットなどを有する制御回路を有するマイクロコンピュータを有している。また、マイクロコンピュータは、入力装置34および他の入力装置(図示せず)から出力される入力信号に応じて所定のパラメータを出力するソフトウェアを有している。
【0014】
図2に示すように、コンピュータユニット30を、リモート入力装置34によって内装ギアハブ12に機能的に接続できる。入力装置34は、ハンドルバー32に装着されるが、必要に応じて、および/または所望により、他の場所に装着することができる。入力装置34は手動で操作される入力部材の一例を構成している。入力装置34は、チェーンテンショナ装置14に入力信号を選択的に出力することができ、これにより、内装ギアハブ12のシフティング設定が変更される。コンピュータユニット30は内装ギアハブ12の動作に必須ではない。なお、「信号」は電気信号に限定されず、コマンドなど他のタイプの信号を含む。
【0015】
図2に示すように、コンピュータユニット30を、配線ハーネス36によってチェーンテンショナ装置14に、またワイヤ38によって入力装置34に、それぞれ接続できる。このように、必要に応じておよび/または所望により、入力装置34から出力された信号を、コンピュータユニット30によって内装ギアハブ12に中継することができる。しかしながら、必要に応じておよび/または所望により、入力装置34からの信号を、チェーンテンショナ装置14へ直接送信するように構成してもよい。入力装置34を、ワイヤによってあるいは無線通信を通じてチェーンテンショナ装置14に接続することもできる。入力装置34が無線通信によって自転車のチェーンテンショナ装置14に接続される場合、配線ハーネス36やワイヤ38は必要ではない。
【0016】
[制御ブロック]
図3に示すように、入力装置34は、無線によって内装ギアハブ12と直接通信でき、またコンピュータユニット30と直接通信できる。この場合、コンピュータユニット30はチェーンテンショナ装置14とは直接通信することはない。入力装置34が無線によって内装ギアハブ12と直接通信する場合、入力装置34には、好ましく1つ以上のスイッチ40と送信器42とが配置され、これにより、無線によって切換信号(例えばシフトアップおよびダウンシフト信号)が出力され、内装ギアハブ12の変速段が変更される。入力装置34は、スイッチ40および送信器42のための電源として機能する電池すなわち電源44を有している。電池44は、例えば、交換可能なあるいは再充電可能なニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池である。
【0017】
図3を参照して、内装ギアハブ12は、電気モータユニット48が配置されている従来のハブ変速機46を有している。ハブ変速機46は、3段、8段、10段あるいは11段などの複数の変速段を有する。ここに例示する電気モータユニット48を、例えば米国特許6,380,731号に示されているように構成することができる。
【0018】
ハブ変速機46は、図1および図6に示すように、基本的にハブシェル54とハブ軸56と遊星ギア変速機(図示せず)とを有している。遊星ギア変速機がハブシェル54とハブ軸56との間で機能的に配置される状態で、ハブシェル54はハブ軸56の周囲で回転する。ハブ軸56は、内装ギアハブ12のハブシェル54の回転軸を定義する。リア駆動スプロケット28は、チェーン24から遊星ギア変速機(図示せず)に駆動力を作用させる。遊星ギア変速機は、ハブシェル54内に配置されており、周知の方法で複数の動力伝達経路を通じてハブシェル54にチェーン24からの駆動力を伝達する。ハブ変速機46および電気モータユニット48は既知の構造であるので、詳細な説明は省略する。
【0019】
内装ギアハブ12は、内部ハブユニットの一例を構成する。必要に応じておよび/または所望により、従来のバンドブレーキ(図示せず)を内装ギアハブ12とともに用いることができる。
【0020】
図3を再び参照して、電気モータユニット48はモータ50とポテンショメータ52とを有している。
【0021】
モータ50は、例えばギア減速ユニット(図示せず)を有するDCモータあるいは三相ブラシレスDCモータである。ACモータがモータ50に用いられるとき、この場合、電気モータユニット48は一般的にインバータを有することになる。インバータは、DC電流をAC電流へ変換して、電気モータユニット48に供給し、モータ50に電力を供給する。
【0022】
ポテンショメータ52は、モータ50のギア減速ユニットの可動部に好ましくは連結される。ポテンショメータ52は、ギア減速ユニットの可動部の現在のポジションを示す信号を出力し、これにより、スイッチ40からの切換信号に基づいて内装ギアハブ12をシフトアップ、又はシフトダウンさせるよう電気モータユニット48を動作させることができる。あるいは、ポテンショメータ52を用いる代わりに、磁石およびール効果センサあるいはホール効果デバイスをギア段の現在のポジションを検知するために用いることもできる。
【0023】
[チェーンテンショナ装置]
図4および図5を参照して、チェーンテンショナ装置14は、ベース部材60と、プーリ部材62と、蓄電ユニット64と、モータコントローラ66と、シフト通信ユニット68と、を基本的に有している。
【0024】
チェーンテンショナ装置14は、以下に説明するように、プーリ部材62を回転させるチェーン24を用いて電力を生成し、その電力を蓄電ユニット64に蓄積する。
【0025】
シフト通信ユニット68は、スイッチ40から切換信号を受信して、モータコントローラ66に制御信号を出力し、電気モータユニット48の動作を制御する。言いかえれば、シフト通信ユニット68は、モータコントローラ66に機能的に連結されて、シフト通信ユニット68からモータ動作信号をモータコントローラ66に送信し、これにより、モータコントローラ66が電気モータユニット48を動作させて内装ギアハブ12をシフトさせる。このように、ライダーは、スイッチ40を用いることによって、内装ギアハブ12を容易にシフトアップでき、またシフトダウンできる。
【0026】
図4に示すように、ベース部材60は、自転車フレーム16に取り外し可能であり、例えばフレーム16のネジ穴16aに螺合されるフレーム取付用のボルト69によって固定される。ボルト69は、ベース部材60の装着軸A1を定義する。プーリ部材62はベース部材60に回転可能に連結される。また、蓄電ユニット64、モータコントローラ66およびシフト通信ユニット68はすべて、ベース部材60上に配置される。この実施形態において、ベース部材60は基本的にフレーム取付部70(例えばブラケット部材)とアーム部72とを有している。
【0027】
フレーム取付部70は、金属プレート、強化カーボンファイバ部材など剛性の高い材料から形成される部材である。
【0028】
アーム部72は、ボルト74によってフレーム取付部70に固定される第1端部と、プーリ部材62を回転可能に支持する第2端部と、を有する。アーム部72は、第1端部と第2端部との間で所定の方向に延びて設けられている。
【0029】
ボルト74は、アーム部72の長手方向と交差する方向に延びる回転軸A2を定義している。ボルト74によって、アーム部72の位置がフレーム取付部70に対して回転軸A2を中心として調整可能となっている。具体的には、ボルト74は、アーム部72の孔を貫通し、フレーム取付部70のネジ穴(図示せず)へと螺合され、これにより、アーム部72をフレーム取付部70に対して複数のテンショナ位置に選択的に締め付けて留めている。言いかえれば、プーリ部材62の位置をフレーム取付部70に対して調整するために、フレーム取付部70がフレーム16に固定された後、ライダーはボルト74を部分的に緩めて、アーム部72をフレーム取付部70に対して揺動可能にし、アーム部72を所望の位置にしてから、ボルト74を再度締め付けることができる。このように、フレーム取付部70をフレーム16に固定されたままにして、アーム部72をフレーム取付部70に対して調整して、プーリ部材62の位置を調整することができる。
【0030】
図4に示すように、フレーム取付部70は、フレーム取付用のボルト69が挿入される開口部70aを有している。ボルト69は、フレーム取付部70の開口部70aを貫通し、フレーム16のハンガー部のネジが形成された開口部16aに螺合され、これにより、フレーム取付部70を直接フレーム16に固定することができる。開口部70aの中心は装着軸A1に対応している。
【0031】
あるいは、必要に応じておよび/または所望により、図6に示すように、フレーム取付部70を直接ハブ軸56に装着し、ナット69’によって固定することができる。図6に示すように、フレーム取付部70は、ハブ軸56のネジが形成された端部と噛み合う非円形の開口部70a’を有する。ここでは、開口部70a’およびハブ軸56はキー留めされ、これにより、フレーム取付部70がフレーム16に対して回転することを防止している。
【0032】
図4に示すように、プーリ部材62はアーム部72に回転可能に連結される。したがって、アーム部72は、プーリ部材62を、プーリ回転軸A3を中心として回転可能に支持するピボットシャフト76を有している。ピボットシャフト76は、アーム部72の第2端部に配置される。第2端部は、アーム部72の所定方向におけるボルト74から反対側のアーム部72の端部である。
【0033】
上述の通り、アーム部72は、回転軸A2を中心としたアーム部72の第1端部におけるボルト74によって、フレーム取付部70に回転可能に連結される。回転軸A2は、プーリ回転軸A3からオフセットされている。蓄電ユニット64、モータコントローラ66およびシフト通信ユニット68はすべて、アーム部72上に配置されている。
【0034】
蓄電ユニット64、モータコントローラ66、シフト通信ユニット68およびパワーリミット回路96は、アームカバー66aによってカバーされる。アームカバー66aは、水および/またはごみによって、蓄電ユニット64、モータコントローラ66、シフト通信ユニット68およびパワーリミット回路96が汚れることを防止する。
【0035】
図4および図5に示すように、プーリ部材62は基本的にプーリ80と1対のプーリガイド82とを有している。プーリ80は、自転車チェーン24と係合する複数のチェーン係合歯を有している。
【0036】
プーリ80は、アーム部72のピボットシャフト76に回転可能に装着され、これにより、プーリ回転軸A3を中心として回転する。このように、プーリ80は、フレーム16上のベース部材60によって支持される。
【0037】
プーリガイド82は、チェーン24をプーリ80にガイドするためにプーリ80の軸方向の対向する側部に配置される円板状の部材である。必要に応じておよび/または所望により、プーリガイド82は、回転不能にあるいは回転可能にアーム部72のピボットシャフト76に装着することができる。
【0038】
プーリ部材62は、チェーン24によって回転されるプーリ80に応じて電気エネルギを生成するダイナモ(発電機)84を有している。発電機84は、蓄電ユニット64に電気的に接続されて、これにより、発電機84によって生成された電気エネルギが蓄電ユニット64に供給される。蓄電ユニット64およびモータコントローラ66は、以下に説明するように、電気ケーブル86によって電気モータユニット48に接続される。
【0039】
図5に示すように、発電機84は基本的にロータ88とステータ90とカバー92とを有している。ロータ88は、プーリ80に固定されて、プーリ80とともに回転する。ステータ90は、アーム部72のピボットシャフト76に回転不能に装着される。カバー92は、スナップフィット連結によってプーリ80に固定される。ロータ88およびステータ90は、カバー92およびプーリ80によって形成された空間に配置される。ロータ88は、一定の磁界を生成するため複数の永久磁石を有する。ステータ90は複数のアーマチュア(電機子)巻線を有し、これにより、電機子巻線がロータ88上の永久磁石の磁界を通るとき、電流が生成される。
【0040】
このように、ロータ88およびステータ90は、電磁気の原理を用いる発電機を形成し、機械エネルギ(プーリ80の回転)を電気エネルギ(交流電流)に変換する。具体的には、ロータ88がステータ90の周囲を回転して、これにより、チェーン24によって回転されるプーリ80に応じて電気エネルギが生成される。
【0041】
図4に示すように、蓄電ユニット64(例えば図示の1つ以上の電池、アキュムレータ(蓄電池)あるいはコンデンサ)が、ベース部材60のアーム部72に装着される。蓄電ユニット64は、内装ギアハブ12および他の電気的な自転車部品のための電源として機能する電気エネルギ蓄積デバイスあるいは蓄積要素を構成する。蓄電ユニット64は例えばニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池とすることができる。
【0042】
図4に示すように、ベース部材60のアーム部72は、モータコントローラ66およびシフト通信ユニット68を有するプリント回路基板(非常に簡略化して概略的に例示)を有する。
【0043】
図3に示すように、シフト通信ユニット68は好ましくはワイヤレス受信器94を有し、これにより、図3に示すように入力装置34の送信器42と無線通信を行う。このように、図3に示すように、ライダーが入力装置34のスイッチ40のうちの1つを操作すると、ワイヤレス受信器94は無線によって送信器42からシフト信号を受信する。しかし、シフト通信ユニット68の受信器を、図2に示すように、入力装置34の送信器42に電線で接続することもできる。
【0044】
また、この例示の実施形態において、プリント回路基板は、発電機84によって生成された交流電流(AC)を直流電流(DC)に変換する整流回路98を有するパワーリミット回路96を有する。パワーリミット回路96は、図に示すように、モータコントローラ66の一部とすることもでき、あるいはプリント回路基板上の別々のチップにすることもできる。
【0045】
図3に示すように、モータコントローラ66は蓄電ユニット64に電気的に連結されて、蓄電ユニット64に蓄積された電気エネルギを受け取る。電気モータ50はモータコントローラ66に機能的に連結されて、モータコントローラ66からの制御信号に応じて動作する。具体的には、ポテンショメータ52からの信号に基づいて蓄電ユニット64に蓄積された電気エネルギの電気モータ50への供給を制御することによって、モータコントローラ66は電気モータ50を動作させる。
【0046】
モータコントローラ66は、中央処理装置(CPU)とモータドライバとを有している。モータコントローラ66が電気モータ50を動作させるとき、モータコントローラ66は蓄電ユニット64の電圧を検知する。モータコントローラ66によって判断された蓄電ユニット64の電圧が所定の値より低い場合、モータコントローラ66は電気モータ50を動作させない。
【0047】
また、モータコントローラ66はスリープモードを有するよう好ましくは構成される。シフト通信ユニット68の受信器94がスイッチ40から切換信号(シフトアップあるいはダウンシフト信号)を所定時間受信しないとき、その場合、モータコントローラ66はスリープモードに入り、エネルギを節約する。モータコントローラ66が発電機84によって出力される速度信号を所定時間検知しない場合にも、モータコントローラ66はまたスリープモードに入る。言いかえれば、プーリ80が所定時間動かない場合、モータコントローラ66はスリープモードに入る。スリープモードの際には、モータコントローラ66はシャットダウンし、ポテンショメータ52のモニターおよび/またはシフト通信ユニット68との通信を停止する。
【0048】
一方、シフト通信ユニット68の受信器94がスイッチ40から切換信号(シフトアップあるいはダウンシフト信号)を受信すると、切換信号がモータコントローラ66に入力され、これにより、モータコントローラ66は素早く起動することができる。またプーリ80が再び回転し始めれば、発電機84から速度信号がモータコントローラ66に入力され、チェーン24が回転するときにはモータコントローラ66は素早く起動することができる。
【0049】
[用語の意味]
本発明の範囲の理解において、ここで用いられる用語「備える」およびその派生語は、記載された特徴、要素、部品、群、完全体、および/またはステップがあることを明記しているオープンエンドの用語を意味するのであって、記載されていない特徴、要素、部品、群、完全体、および/またはステップがあることを排除するものではない。上記は、用語「有する」、「含む」およびそれらの派生語など同様の意味を持つ語にも当てはまる。また、単数形的に用いられる用語「部分」、「セクション」、「部」、「部材」あるいは「要素」は、単一の部分あるいは複数の部分の2つの意味を持ちうる。さらには、ここでは、「ほぼ」、「およそ」、「約」といった程度を示す用語は、最終結果が大きく変わらないような、妥当な変形の条件の変更量を意味するものとして用いる。
【0050】
[他の実施形態]
本発明の説明のためにいくつかの実施例が選択されたに過ぎず、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱することがない範囲で、種々の変更、変形ができる。例えば、必要に応じておよび/または所望により、種々の部品の大きさ、形状、配置、向きを変更できる。互いと直接的に連結あるいは接触するよう示した部品は、それらの間に中間構造体を有することができる。1つの要素の機能は2つによって達成することができ、またその逆の場合も同様である。
【0051】
(a)前記実施形態では、モータコントローラ66およびシフト通信ユニット68はベース部材60に配置されている。しかし、モータコントローラおよび/またはシフト通信ユニットをモータユニット48に配置することもできる。
【0052】
(b)前記実施形態では、モータコントローラ66、シフト通信ユニット68、パワーリミット回路96および蓄電ユニット64は、アーム部72に配置されている。しかし、モータコントローラ66、シフト通信ユニット68、パワーリミット回路96および蓄電ユニット64の少なくとも1つを、フレーム取付部70に配置することもできる。
【0053】
(c)必要に応じておよび/または所望により、シフト通信ユニット68を、図示するように、送信器42に近接するアーム部72の実質的に第2端部に、あるいはアーム部72上の他の位置に、配置することもできる。また、モータコントローラ66、シフト通信ユニット68、パワーリミット回路96および蓄電ユニット64を、アーム部72上の他の位置に配置することもできる。モータコントローラ66、シフト通信ユニット68、パワーリミット回路96および蓄電ユニット64を軸A3方向においてプーリ62とは反対側に配置することによって、電気部品がチェーン24とぶつかることを防止できる。
【0054】
(d)前記実施形態では、チェーンテンショナ装置14は1つのプーリ62のみを有している。しかし、チェーンテンショナ装置14は、ベース部材60に配置された複数のプーリを有することもできる。これらのプーリのそれぞれは、電気エネルギを生成するよう、チェーン24によって動作される発電機84を有することもできる。
【0055】
(e)前記実施形態では、自転車のリア部に配置されるチェーンテンショナ装置14を示している。しかし、チェーンテンショナ装置14を、フロントスプロケットの近傍など他の位置に配置することもできる。
【0056】
(f)シフト通信ユニット68は、入力装置34あるいは配線ハーネス36を介してコンピュータユニット30に、発電機84からの速度信号に応じた現在の速度を表す情報を送信することもできる。コンピュータユニット30は、現在の速度を表す情報をディスプレイに表示することもできる。
【0057】
(g)コンピュータユニット30が配線ハーネス36によってチェーンテンショナ装置14に、そしてワイヤ38によって入力装置34に接続される場合、蓄電ユニット64は電力をコンピュータユニット30および入力装置34に供給することができる。
【0058】
先行技術から区別されるそれぞれの特徴は、それ単独として、あるいは他の特徴と組み合わせとして、そのような特徴により実施される構造的あるいは機能的思想を含む出願人によるさらなる発明の内容として付帯的に考慮されるものとする。このように、前述の本発明にかかる実施例の説明は単なる例示であって、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって決められる本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0059】
10 自転車
12 内装ギアハブ
14 自転車チェーンテンショナ装置
20 ドライブトレイン
22 フロントクランクセット
24 チェーン
26 チェーンリング
28 リア駆動スプロケット
30 コンピュータユニット
40 スイッチ
48 電気モータユニット
50 モータ
52 ポテンショメータ
60 ベース部材
62 プーリ部材
64 蓄電ユニット
66 モータコントローラ
68 シフト通信ユニット
70 フレーム取付部
72 アーム部
84 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のチェーンを支持するチェーンテンショナ装置であって、
ベース部材と、
前記ベース部材によって支持され、前記チェーンによって回転されて電気エネルギを生成する発電機を有するプーリ部材と、
前記ベース部材に配置されるとともに前記発電機に電気的に連結され、前記発電機によって生成された電気エネルギを蓄積する蓄電ユニットと、
を備える自転車チェーンテンショナ装置。
【請求項2】
前記プーリ部材は、前記チェーンと係合する複数のチェーン係合歯を有するプーリを有している、請求項1に記載の自転車チェーンテンショナ装置。
【請求項3】
前記ベース部材は、
自転車フレームに支持される取付部と、
前記プーリをプーリ回転軸の周りに回転自在に支持するアーム部と、
を有している、請求項2に記載の自転車チェーンテンショナ装置。
【請求項4】
前記アーム部は、前記プーリ回転軸からオフセットしている回転軸を中心に回転可能に前記取付部に連結されている、請求項3に記載の自転車チェーンテンショナ装置。
【請求項5】
前記ベース部材は、
ハブ変速機に支持される取付部と、
前記プーリをプーリ回転軸の周りに回転自在に支持するアーム部と、
を有している、請求項2に記載の自転車チェーンテンショナ装置。
【請求項6】
前記アーム部は、前記プーリ回転軸からオフセットしている回転軸を中心に回転可能に前記取付部に連結されている、請求項5に記載の自転車チェーンテンショナ装置。
【請求項7】
前記ベース部材はフレーム取付開口部を有している、請求項1に記載の自転車チェーンテンショナ装置。
【請求項8】
前記蓄電ユニットはコンデンサおよび電池の少なくとも一方を有している、請求項1に記載の自転車チェーンテンショナ装置。
【請求項9】
前記発電機からの電流を整流する整流デバイスをさらに備える、請求項1に記載の自転車チェーンテンショナ装置。
【請求項10】
前記蓄電ユニットは前記アーム部に配置されている、請求項3又は5に記載の自転車チェーンテンショナ装置。
【請求項11】
前記蓄電ユニットに電気的に連結されて内部ハブユニットのモータを制御するモータコントローラをさらに備える、請求項1に記載の自転車チェーンテンショナ装置。
【請求項12】
前記モータコントローラに連結されるとともにシフト信号を無線で受信するワイヤレス受信器を有しているシフト通信ユニットをさらに備える、請求項11に記載の自転車チェーンテンショナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−1388(P2013−1388A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−126661(P2012−126661)
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)