説明

自転車用発電ハブの固定子および自転車用発電ハブ

【課題】自転車用発電ハブの固定子の製造コストを下げる。
【解決手段】自転車車用発電ハブ10の固定子13は、環状のコイルボビン16と、複数の第1ヨーク18と、複数の第2ヨーク19と、を備える。複数の第1および第2ヨーク18,19は、第1および第2磁極部24a,26aと、第1および第2挿入部24b,26bと、第1および第2連結部24c,26cと、を有する。複数の第1および第2ヨーク18,19は、コイルボビン16に対して放射状に配置される。複数の第1ヨーク18の第1挿入部24bの軸方向他端側の端部はそれぞれ、隣り合う2つの第2ヨーク19の第2挿入部26bの軸方向一端側の端部に当接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車の車輪のハブを構成する自転車用発電ハブの固定子および自転車用発電ハブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自転車用発電ハブは、筒状の回転子とその内部に配置される固定子を備える。従来の自転車用発電ハブの固定子は、たとえば特許文献1に開示されるように、ハブ軸と、ハブ軸が貫通可能な環状部材と、環状部材の一端側に配置される第1ヨークと、環状部材の他端側に配置される第2ヨークとを備える。従来の自転車用発電ハブの固定子において、各ヨークは、環状部材に対して回転しないように設けられる。第1ヨークおよび第2ヨークは、外周側に配置される磁極部と、貫通孔内に配置される挿通部と、磁極部と挿通部とを連結する連結部と、をそれぞれ有する。磁極部は、半径方向に沿って配置される。連結部は、磁極部に対して僅かに折り曲げられており、半径方向と交差する方向に配置される。これにより、第1ヨークと第2ヨークにおいて、隣り合う挿通部の先端部同士がずれなく接触可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第3644636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように従来の自転車用ハブの固定子では、第1ヨークおよび第2ヨークを途中で折り曲げる必要がある。このため、第1ヨークおよび第2ヨークの製造工程が複雑になり、固定子の製造コストが上昇する。
【0005】
本発明の課題は、自転車用発電ハブの固定子の製造コストを下げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係る自転車用発電ハブの固定子は、環状のコイルボビンと、複数の第1ヨークと、複数の第2ヨークと、を備える。複数の第1ヨークは、第1磁極部と、第1挿入部と、第1連結部と、を有する。複数の第1ヨークは、コイルボビンに対して放射状に配置される。第1磁極部は、コイルボビンの外周面側で軸方向一端側から軸方向他端側に延びる。第1挿入部と、コイルボビンの内周面側で軸方向一端側から軸方向他端側にコイルボビンの軸方向に沿って直線状に延びる。第1連結部は、コイルボビンの径方向沿って直線状に延びて第1磁極部と第1挿入部とを連結する。複数の第2ヨークは、第2磁極部と、第2挿入部と、第2連結部と、を有する。複数の第2ヨークは、コイルボビンに対して放射状に配置される。第2磁極部は、コイルボビンの外周面で軸方向他端側から軸方向一端側に延びる。第2挿入部は、コイルボビンの内周面側で軸方向他端側から軸方向一端側にコイルボビンの軸方向に直線状に延びる。第2連結部は、コイルボビンの径方向に沿って直線状に延びて第2磁極部と第2挿入部とを連結する。複数の第1ヨークの第1挿入部の軸方向他端側の端部はそれぞれ、隣り合う2つの第2ヨークの第2挿入部の軸方向一端側の端部に当接される。
【0007】
この自転車用発電ハブの固定子では、コイルボビンに放射状に配置される複数の第1ヨークおよび第2ヨークがコイルボビンに放射状に配置される。第1連結部および第2連結部は、コイルボビンの径方向に沿って直線状に延びる。第1挿入部の軸方向他端側の端部は、隣り合う2つの第2挿入部の軸方向一端側の端部に当接される。ここでは、第1ヨークおよび第2ヨークがコイルボビンに径方向に沿って配置される。また、コイルボビンの内周面側に配置される第1挿入部の端部と隣り合う第2挿入部の端部とが当接して磁気的に連結され、全ての第1ヨークおよび第2ヨークが磁気的に連結される。これにより、第1ヨークおよび第2ヨークの形状が平板状になり、折り曲げる必要がなくなる。このため、たとえば、金属板を打ち抜き加工するだけで、第1ヨークおよび第2ヨークを容易に製造できる。この結果、固定子の製造工程を簡素化でき、固定子の製造コストを下げることができる。
【0008】
発明2に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明1に記載の自転車用発電ハブの固定子において、第1ヨークは、複数の板状部材をコイルボビンの周方向に積層することによって構成される。
【0009】
この場合には、第1ヨークが積層ヨークになるので、渦電流を低減しやすい。
【0010】
発明3に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明1または2に記載の自転車用発電ハブの固定子において、第2ヨークは、複数の板状部材をコイルボビンの周方向に積層することによって構成される。
【0011】
この場合には、第2ヨークが積層ヨークになるので、渦電流を低減しやすい。
【0012】
発明4に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明1から3のいずれかに記載の自転車用発電ハブの固定子において、第1ヨークの第1磁極部は、コイルボビンの軸方向に沿って直線状に延びる。
【0013】
この場合には、第1磁極部がコイルボビンの軸方向に沿って直線的に延びるので、第1磁極部を容易に形成できる。
【0014】
発明5に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明1から4のいずれかに記載の自転車用発電ハブの固定子において、第2ヨークの第2磁極部は、コイルボビンの軸方向に沿って直線状に延びる。
【0015】
この場合には、第2磁極部がコイルボビンの軸方向に沿って直線的に延びるので、第2磁極部を容易に形成できる。
【0016】
発明6に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明1から5のいずれかに記載の自転車用発電ハブの固定子において、複数の第1ヨークの第1連結部と、第2ヨークの第2連結部とは、コイルボビンに当接し、コイルボビンの周方向に位置決めされる。
【0017】
この場合には、コイルボビンを介して複数の第1ヨークと複数の第2ヨークとが位置決めされる。
【0018】
発明7に係る自転車用発電ハブの固定子は、発明6に記載の自転車用発電ハブの固定子において、ハブ軸および連結部材をさらに備える。ハブ軸は、コイルボビンを挿通し、コイルボビンの軸方向に延びる溝を有する。連結部材は、コイルボビンとハブ軸とを相対的に回転不能に連結する。連結部材は、ハブ軸の溝に係合する突起と、隣り合う2つの第1ヨークおよび隣り合う2つの第2ヨークの少なくともいずれか一方の間に配置される突出部を有する。
【0019】
この場合には、連結部材によりコイルボビンがハブ軸に回転不能に連結されるので、コイルボビンに位置決めされる第1および第2ヨークをハブ軸に対して回転不能に連結できる。
【0020】
発明8に係る自転車用発電ハブは、発明1から7のいずれかに記載される自転車用発電ハブの固定子を備える。
【0021】
この自転車用ハブでは、発明1から7のいずれかに記載の固定子を備えることにより、自転車発電ハブの製造コストを下げることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1ヨークおよび第2ヨークの形状が平板状になり、折り曲げる必要がなくなる。このため、たとえば、金属板を打ち抜き加工するだけで、第1ヨークおよび第2ヨークを容易に製造できる。この結果、固定子の製造工程を簡素化でき、固定子の製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による自転車用発電ハブの半栽断面図。
【図2】その固定子の分解斜視図。
【図3】コイルボビンの側面図。
【図4】固定子の側面図。
【図5】図4のA部を第2挿入部で切断した断面部分図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、本発明の一実施形態による自転車用の発電ハブ(ハブダイナモ)10は、自転車のフロントフォーク102に装着される。ハブ軸15を有する発電ハブ10は、固定子13と、ハブ軸15に回転自在に装着されたハブシェル14と、を備える。ハブシェル14の内周面には、環状の磁石12が設けられる。磁石12には、周方向に複数の磁極が配置される。ここで、図1から図3において、後述するコイルボビン16の周方向が矢印Aで示される。また、図1および図2において、コイルボビン16の軸方向が矢印Bで示される。この実施形態では、ハブ軸15、コイルボビン16、後述する第1ヨーク18、および第2ヨーク19が同軸上に配置される。したがって、いずれにとっても周方向は矢印A方向であり、軸方向は矢印B方向である。
【0025】
<固定子>
固定子13は、ハブ軸15と、ハブ軸15が挿通されるコイルボビン16と、コイルボビン16に巻回されるコイル17と、コイルボビン16に設けられる複数(たとえば16個)の第1ヨーク18および複数(たとえば16個)の第2ヨーク19と、を備える。また、固定子13は、連結部材20と、第1位置決め部材21と、第2位置決め部材22と、をさらに備える。連結部材20は、コイルボビン16の矢印B方向(図1および図2参照)他端側(図1および図2において右側)に配置され、コイルボビン16とハブ軸15とを相対的に回転不能に連結する。第1位置決め部材21は、コイルボビン16の矢印B方向(軸方向:図1および2参照)一端側(図1および図2において左側)に配置される。第2位置決め部材22は、連結部材20をコイルボビン16との間に挟んで、コイルボビン16の他端側に配置される。
【0026】
<ハブ軸>
図1および図2に示すように、ハブ軸15は、中空に形成され、たとえばクイックレリーズ機構11によってフロントフォーク102に着脱可能に固定される。ハブ軸15の第1端(図1左端)の外周面には、第1雄ネジ部15aが形成される。また、ハブ軸15の第2端(図1右側)の外周面には、第2雄ネジ部15bが形成される。さらに、ハブ軸15の外周面には、その中央部から第2端へと延びる軸方向溝15cが形成される。軸方向溝15cは、コイル17から延びる電気配線17aを配置するために用いられる。ハブ軸15の外周面には、第1位置決め部材21をかしめるための第1環状溝15dおよび第2位置決め部材22をかしめるための第2環状溝15eが形成される。第2環状溝15eは、軸方向溝15cを横切るように形成される。軸方向溝15cの深さは、電気配線17aを配置するために、第2環状溝15eの深さよりも大きい。
【0027】
ハブ軸15の第2端には、コイル17からの電力を前照灯等の外部機器に供給するためのコネクタ28が第2雄ネジ部15bに螺合するナット部材50により固定される。
【0028】
<コイルボビン>
コイルボビン16には、コイル17が巻回されるとともに、第1ヨーク18および第2ヨーク19が装着(たとえば接着)される。コイルボビン16は、磁石12の内周面に対向するようにハブ軸15に位置決めされる。コイルボビン16は、コイル17が外周面に巻回される筒状部16aと、筒状部16aの矢印B方向他端側(図1および図2において左側)に設けられる第1フランジ16bと、筒状部16aの矢印B方向一端側(図1および図2において右側)に設けられる第2フランジ16cとを有する。筒状部16aの貫通孔16dには、ハブ軸15が挿通される。コイルボビン16は連結部材20により第2フランジ16c側でハブ軸15に回転不能に連結される。
【0029】
図2および図3に示すように、第1フランジ16bの外側面には、複数の第1ヨーク18が装着される第1溝23aが放射状に複数(たとえば16個)形成される。第1溝23aは、貫通孔16dから径方向外方に向かって延びている。第1溝23aの径方向外方には、第1フランジ16bの外周部から切り欠かれた複数の第1切欠き部23bが形成されている。隣り合う2つの第1切欠き部23bの間には、第2ヨーク19の一端側の端部である先端部が支持される複数の第2切欠き部23cが第1切欠き部23bより浅い深さで形成されている。
【0030】
第2フランジ16cの外側面には、複数の第2ヨーク19が装着される第2溝23dが放射状に複数(たとえば16個)形成される。第2溝23dは、第1溝23aの間に位置するように配置される。したがって、第2溝22cは、第1フランジ16bの第2切欠き部23cと同じ矢印A方向(周方向)位置に配置される。第2溝23dは、貫通孔16dから径方向外方に向かって延びる。第2溝23dの一つには、コイル17の両端を第2フランジ16c外に取り出すための2つの貫通孔23gと、コイル17を径方向に通すためのスリット23hとが形成される。第2溝23dの径方向外方には、第2フランジ16cの外周部から切り欠かれた第3切欠き部23eが形成される。隣り合う2つの第3切欠き部23eの間には、第1ヨーク18の他端側の端部である先端部が支持される第4切欠き部23fが第3切欠き部23eより浅い深さで形成される。
【0031】
<コイル>
図1に示すように、コイル17は、コイルボビン16の筒状部16aに巻回される。コイル17は、たとえば、銅線、アルミニウム合金線等の導電金属線材製である。コイル17の両端部には、2本の電気配線17aが電気的に接続される。電気配線17aは、コイル17で発生した電力を外部に出力するために設けられる。電気配線17aは、前述した軸方向溝15cに配置される。
【0032】
<第1ヨーク>
図2および図4に示すように、複数の第1ヨーク18は、コイルボビン16の矢印A方向(周方向)に積層される複数(たとえば7枚)の積層片25aでそれぞれ構成される積層ヨークである。積層片25aは、たとえば、表面に酸化被膜が形成される珪素鋼板(より詳しくは無方向性珪素鋼板)で形成される。積層片25aは、板状部材の一例である。なお、図2では、一つの第1ヨーク24にだけ積層片25aが示されるが、全ての第1ヨーク18は積層片25aで構成される。矢印A方向に並べられる複数の第1ヨーク18間の隙間を小さくするために、図5に示すように、第1ヨーク18において矢印A方向一端に配置される積層片25aは他の積層片25aよりも径方向の寸法が短く設けられる。
【0033】
複数の第1ヨーク18はそれぞれ、コイルボビン16の外周面側でコイルボビン16の矢印B方向(軸方向)一端側から他端側に直線状に延びる第1磁極部24aをそれぞれ有する。また、複数の第1ヨーク18は、第1挿入部24bと、第1磁極部24aと第1挿入部24bとを連結する第1連結部24cと、をさらにそれぞれ有する。
【0034】
第1磁極部24aは、コイル17の径方向外側でコイルボビン16の矢印B方向(軸方向)一端側から他端側に延びる。第1磁極部24aは、径方向外側部分がハブ軸15と実質的に平行に配置される。また、第1磁極部24aは、コイルボビン16の矢印B方向一端側から他端側にかけて径方向内側部分が径方向外側部に対して接近するように斜めに形成され、径方向内側部分の先端部がハブ軸15と実質的に平行に形成される。第1磁極部24aの一端側の端部である基端部24dは、第1切欠き部23bにより支持される。第1磁極部24aの他端側の端部である先端部24eは、第4切欠き部23fにより支持される。
【0035】
第1挿入部24bは、図1に示すように、コイルボビン16の貫通孔16dに挿入され、筒状部16aとハブ軸15の外周面との間で矢印B方向にコイルボビン16の一端側から他端側に延びる。具体的には、貫通孔16dの矢印B方向中央部の近傍まで延びる。
【0036】
第1連結部24cは、コイルボビン16に当接し、コイルボビン16の周方向に位置決めされる。具体的には、第1連結部24cは、第1フランジ16bの第1溝23aに嵌め込まれてコイルボビン16に固定される。これにより、複数の第1ヨーク18は、コイルボビン16に対して回転しないように設けられる。
【0037】
<第2ヨーク>
複数の第2ヨーク19は、この実施形態では、複数の第1ヨーク18と同じ形状である。複数の第2ヨーク19は、コイルボビン16の矢印A方向(周方向)に積層される複数(たとえば7枚)の積層片25bでそれぞれ構成される積層ヨークである。積層片25bは、たとえば、表面に酸化被膜が形成される珪素鋼板(より詳しくは無方向性珪素鋼板)で形成される。積層片25bは、板状部材の一例である。なお、図2では、一つの第2ヨーク19にだけ積層片25bが示されるが、全ての第2ヨーク19は積層片25bで構成される。
【0038】
複数の第2ヨーク26は、コイルボビン16の外周面側でコイルボビン16の矢印B方向他端側から一端側に直線状に延びる第2磁極部26aを有する。また、第2積層ヨーク26は、第2挿入部26bと、第2磁極部26aと第2挿入部26bとを連結する第2連結部26cと、をさらに有する。矢印A方向に並べられる複数の第2ヨーク19間の隙間を小さくするために、図5に示すように、第2ヨーク19において矢印A方向一端に配置される積層片25bは他の積層片25bよりも径方向の寸法が短く設けられる。
【0039】
第2磁極部26aはそれぞれ、コイル17の径方向外方で他端側から一端側に延びる。第2磁極部26aは、第1磁極部24aと矢印A方向(図2および図4参照)において交互に配置される。第2磁極部26aは、径方向外側部分がハブ軸15と実質的に平行に配置される。また、第2磁極部26aは、コイルボビン16の他端側から一端側にかけて径方向内側部分が径方向外側部分に対して接近するように形成され、径方向内側部部分の先端部がハブ軸15と実質的に平行に形成される。第2磁極部26aの他端側の端部である基端部26dは、第3切欠き部23eにより支持されている。第2磁極部26aの一端側の端部である先端部26eは、第2切欠き部23cにより支持される。
【0040】
第2挿入部26bは、図1に示すように、コイルボビン16の貫通孔16dに挿入され、筒状部16aとハブ軸15の外周面との間で矢印B方向にコイルボビン16の他端側から一端側に延びる。具体的には、貫通孔16dの矢印B方向中央部の近傍まで延びる。これにより、第2挿入部26bは、第1挿入部24bと磁気的に結合する。さらに、図5に示すように、複数の第1ヨーク18の第1挿入部24bの軸方向他端側の端部はそれぞれ、隣り合う2つの第2ヨークの第2挿入部の軸方向一端側の端部に当接される。したがって、複数の第2ヨーク19の第2挿入部26bの軸方向他端側の端部はそれぞれ、隣り合う2つの第1ヨーク18の第1挿入部24bの軸方向一端側の端部に当接される。
【0041】
これにより、全ての第1ヨーク18および第2ヨーク19が第1挿入部24bおよび第2挿入部26bで磁気的に連結される。
【0042】
第2連結部26cは、コイルボビン16に当接し、コイルボビン16の周方向に位置決めされる。具体的には、第2連結部26cは、第2フランジ16cの第2溝23dに嵌め込まれてコイルボビン16に固定される。これにより、第2ヨーク19は、コイルボビン16に対して回転しないように設けられる。
【0043】
<連結部材>
連結部材20は、図2および図4に示すように、リング状の板状部材である。連結部材20は、ハブ軸15の軸方向溝15cに係合する突起20aと、隣り合う第2ヨーク19間に配置される複数(たとえば、16個)の突出部20bと、を有する。突起20aは、連結部材0の内周面に径方向内方に突出して形成される。複数の突出部20bは、周方向に間隔を隔てて配置される。複数の突出部20bは、矢印B方向に沿って突出する。複数の突出部20bは、図4に二点鎖線で示すように、隣り合う第2ヨーク19の第2連結部26cの間に両者に接触して配置される。これにより、第2ヨーク19がハブ軸15に対して回転不能に連結される。また、第2ヨーク19が回転不能に連結されたコイルボビン16とハブ軸15とが相対的に回転不能に連結される。
【0044】
<第1位置決め部材>
図1および図2に示すように、第1位置決め部材21は、コイルボビン16の一端側でハブ軸15にかしめられる。第1位置決め部材21は、たとえば、アルミニウム合金、鉄系合金等の金属製である。第1位置決め部材21は、図2に示すように、第1ヨーク18に接触可能な第1鍔部21aと、ハブ軸15の外周面に嵌合可能な第1筒部21bと、を有する。第1筒部21bは、第1鍔部21aが第1ヨーク18に接触した状態で第1環状溝15dと重なり合う位置に配置される。第1筒部21bを第1環状溝15dに向けて変形させることにより、第1位置決め部材21がハブ軸15にかしめられ、矢印B方向に移動不能になる。
【0045】
<第2位置決め部材>
図1および図2に示すように、第2位置決め部材22は、コイルボビン16の他端側でハブ軸15にかしめられる。第2位置決め部材22は、第1位置決め部材21と同材料からなる。第1位置決め部材21と同様に、第2位置決め部材22は、図2示すように、第2ヨーク19に接触可能な第2鍔部22aと、ハブ軸15の外周面に嵌合可能な第2筒部22bと、を有する。第2筒部22bは、第2鍔部22aが第2ヨーク19に接触した状態で第2環状溝15eと重なり合う位置に配置される。第2筒部22bを第2環状溝15eに向けて変形させることにより、第2位置決め部材22がハブ軸15にかしめられ、矢印B方向に移動不能になる。
【0046】
このように、第1位置決め部材21および第2位置決め部材22により、コイルボビン16、第1ヨーク18、第2ヨーク19および連結部材20が矢印B方向(軸方向)に位置決めされる。このため、たとえばナット等を用いて軸方向に位置決めする場合と比べ、第1ヨーク18第1積層ヨーク24および第2ヨーク19の第2積層ヨーク26に過大な軸方向の力が作用しなくなる。従って、第1ヨーク18および第2ヨーク19が変形しにくくなる。
【0047】
<ハブシェル>
ハブシェル14は、図1に示すように、ハブ軸15に第1軸受30および第2軸受31により回転自在に支持される。第1軸受30は、ナット部材51により矢印B方向(軸方向)の位置が調整される。ハブシェル14は、第1軸受30が配置される筒状のシェル本体40と、シェル本体40に装着される第2軸受31が配置される蓋部材42と、を有する。シェル本体40には、車輪とリムと連結される一対のハブフランジ40aが矢印B方向に間隔を隔てて配置される。
【0048】
シェル本体40の内周面には、磁石12が固定される。磁石12とシェル本体40との間には、バックヨーク27が配置される。磁石12の内周面は、第1ヨーク18の径方向外側部分および第2ヨーク19の径方向外側部分と僅かな隙間をあけて配置される。
【0049】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
(a)前記実施形態では、クイックレリーズ機構11によってハブ軸15をフロントフォークに固定したが、中実のハブ軸をナットによってフロントフォークに固定してもよい。
【0051】
(b)前記実施形態では、連結部材20が第2ヨーク19に連結されたが、本発明はこれに限定されない。軸方向溝が他端側から固定子を超えてハブ軸に形成されている場合は、連結部材20が第1ヨークに連結されてもよい。また、第1ヨークおよび第2ヨークの両方に連結されてもよい。
【0052】
(c)前記実施形態では、第1ヨークおよび第2ヨークを積層ヨークとしてが、第1ヨークおよび第2ヨークは積層ヨークに限定されない。
【0053】
(d)前記実施形態では、固定子13をハブ軸にかしめ固定される第1位置決め部材および第2位置決め部材により固定子13を矢印B方向(軸方向)に位置決めしたが、本発明はこれに限定されない。ハブ軸の外周面に雄ネジ部を形成し、雄ネジ部に係合するナット部材により固定子の少なくとも一端側を位置決めしてもよい。また、固定子の一端側をナット部材により位置決めし、他端側をハブ軸と一体または別体で設けられる環状の突起部により位置決めしてもよい。
【0054】
(e)前記実施形態では、本発明を自転車のフロントフォークに固定される自転車用発電ハブに適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、自転車のフレームのリヤエンドに固定される自転車用発電ハブにも適用できる。
【符号の説明】
【0055】
10 発電ハブ
13 固定子
15 ハブ軸
15c 軸方向溝
16 コイルボビン
16d 貫通孔
17 コイル
17a 電気配線
18 第1ヨーク
19 第2ヨーク
20 連結部材
20a 突起
20b 突出部
24a 第1磁極部
24b 第1挿入部
24c 第1連結部
24d 基端部
24e 先端部
26a 第2磁極部
26b 第2挿入部
26c 第2連結部
26d 基端部
26e 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のコイルボビン、
前記コイルボビンの外周面側で軸方向一端側から軸方向他端側に延びる第1磁極部と、前記コイルボビンの内周面側で前記軸方向一端側から前記軸方向他端側に前記コイルボビンの軸方向に沿って直線状に延びる第1挿入部と、前記コイルボビンの径方向沿って直線状に延びて前記第1磁極部と前記第1挿入部とを連結する第1連結部と、を有し、コイルボビンに対して放射状に配置される複数の第1ヨーク、および
前記コイルボビンの外周面で前記軸方向他端側から前記軸方向一端側に延びる第2磁極部と、前記コイルボビンの内周面側で前記軸方向他端側から前記軸方向一端側に前記コイルボビンの軸方向に直線状に延びる第2挿入部と、前記コイルボビンの径方向に沿って直線状に延びて前記第2磁極部と前記第2挿入部とを連結する第2連結部と、を有し、コイルボビンに対して放射状に配置される複数の第2ヨークを備え、
前記複数の第1ヨークの前記第1挿入部の前記軸方向他端側の端部はそれぞれ、隣り合う2つの前記第2ヨークの前記第2挿入部の前記軸方向一端側の端部に当接される、自転車用発電ハブの固定子。
【請求項2】
前記第1ヨークは、複数の板状部材を前記コイルボビンの周方向に積層することによって構成される、請求項1に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項3】
前記第2ヨークは、複数の板状部材を前記コイルボビンの周方向に積層することによって構成される、請求項1または2に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項4】
前記第1ヨークの前記第1磁極部は、前記コイルボビンの軸方向に沿って直線状に延びる、請求項1から3のいずれかに記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項5】
前記第2ヨークの前記第2磁極部は、前記コイルボビンの軸方向に沿って直線状に延びる、請求項1から4のいずれかに記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項6】
前記複数の第1ヨークの前記第1連結部と、前記第2ヨークの前記第2連結部とは、前記コイルボビンに当接し、前記コイルボビンの周方向に位置決めされる、請求項1から5のいずれかに記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項7】
前記コイルボビンを挿通し、前記コイルボビンの軸方向に延びる溝を有するハブ軸、および
前記コイルボビンと前記ハブ軸とを相対的に回転不能に連結する連結部材とをさらに備え、
前記連結部材は、前記ハブ軸の前記溝に係合する突起と、隣り合う2つの前記第1ヨークおよび隣り合う2つの前記第2ヨークの少なくともいずれかの一方の間に配置される突出部を有する、請求項6に記載の自転車用発電ハブの固定子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載される自転車用発電ハブの固定子を備える、自転車用発電ハブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−46538(P2013−46538A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184384(P2011−184384)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】