説明

自転車用駐輪装置

【課題】 ロック装置に自転車の前輪タイヤを進入させると、必ず車輪検知体が前輪タイヤに押されて押圧回動されて、鉤型アーム体が前輪タイヤを確実にロックするように工夫した自転車用駐輪装置を提供する。
【解決手段】 自転車の前輪タイヤS2Aがロック装置20に嵌め込まれて車輪検知体25を押すと、一対の鉤型アーム体23,23が回動して前輪タイヤをロックする駐輪装置であって、車輪検知体25の上端部を鉤型アーム体23,23の動作面より上側に設けた回動支軸25Tによって回動自在に支持する。前輪タイヤが当たる車輪検知体25の車輪当接部25Xを、上記回動支軸25Tより下側に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用の駐輪場に実施して好適な個別ロック式の自転車用駐輪装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部および都市近郊の駅周辺部の放置自転車の問題が深刻であったが、徐々に駅前再開発に伴った駐輪施設の建設が促進され、大型の駐輪場が各自治体や民間業者によって整備されてきている。ところが、大型化に伴い駐輪場係員を多人数配備して不正使用を監視したり、不適切な利用を指導するために人件費がかかっている。また、往々にして朝の通勤ラッシュ時など、急いでいる利用者が自転車を勢いよく駐輪装置に進入させるため、駐輪装置の故障や破損が絶えず発生して、メンテナンス費用が嵩んでいるのも実情である。
【0003】
また、最近の自転車は通勤・通学用途に使用されるものであっても、通常の26インチ、28インチといった大きな車輪サイズの実用車ばかりではなく、20インチ以下の車輪サイズの折りたたみ式自転車なども普及しており、駐輪装置はこれらの色々なサイズの車輪タイヤに対して適切な駐輪及び確実なロックが可能なことが求められている。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に記載されているように、自転車の車輪の一部を挟み込んだ状態で閉じることができる一対の鉤型部材を、予め定められた高さで、水平方向から予め定められた仰角で上向きに傾斜して固定することにより、色々なサイズの車輪タイヤに対応できる構造の駐輪装置が提案された。
【特許文献1】特開2006−56396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載の自転車用駐輪装置には、以下に述べる如き問題点を有していた。
【0006】
(1) 特許文献1のような駐輪装置では、駐輪装置に自転車を進入させたままで車輪検知体(車輪検知スライダ)を作動させずに放置することが可能で、不正駐輪が容易に出来てしまう。
(2) 車輪タイヤを駐輪装置に押し込むように進入させても、車輪検知部表面とタイヤ外周との摩擦力が車輪検知部の動作を停止させるように作用するため、車輪検知をさせずにそのまま放置する不正駐輪が容易に出来てしまう。
(3) 勢いよく自転車を挿入したり、ブレーキを掛けながら自転車をロック装置に進入させた際に、タイヤのトレッドと車輪検知体が引っ掛かったまま押圧されるため、車輪検知体や支軸が変形・破損することがある。
(4) 特に小径車輪を有する自転車では車輪タイヤの大きさが小さい為、車輪レール(ガイド部材)を進行方向下向きの下降スロープをもたせて設置しても、車輪タイヤが自重でロック装置の車輪保持部に進行する分力が少なく、車輪検知体を押し込まない不正駐輪が容易に出来てしまう。
【0007】
次に、上記の各問題点を図面と共に更に詳しく説明する。
【0008】
<不正駐輪>
図9は通常の自転車BS1を、駐輪装置100の車輪保持部101に前輪タイヤ110を挿入しているが、車輪検知スライダ102に前輪タイヤ110の外周を押圧させずに放置した、不正な駐輪状態を示したものである。
図9では前輪タイヤ110の外周と車輪検知スライダ102との間に隙間がある状態を示しているが、前輪タイヤ110の外周を車輪検知スライダ102の検知面に当接させただけで押圧せずに放置する不正も可能である。
上記図9では、前輪タイヤ110が車輪レール120に載って車輪ガイド130或いはロック装置100の車輪保持部101に挿入されているため、図の状態で放置しても自転車BS1が転倒することもなく、一見すると適切に駐輪している状態と間違えることもある。
【0009】
この様な不正を発見するために、駐輪場では常に係員が巡回しながらロック装置の施錠状態をチェックしており、図9の様な不正駐輪を見つけた場合には、自転車BS1をロック装置100に押し込んで車輪検知スライダ102を車輪検知ON状態にさせ、ロック装置100の鉤型アーム体103を施錠状態に移行させて自転車BS1を退出不可に保持させる。
【0010】
この様にして施錠された自転車BS1は、適切な解錠処理(通常は集中精算機により該当するロック装置100の番号を指定して駐輪料金を精算することで、施錠状態が解放される)により退出可能となる。また、ロック装置100の車輪検知スライダ102が車輪検知ON状態でないことをすぐに識別できるように、ロック装置100にLEDなどの表示手段を設け、自転車BS1が駐輪しているのにロック装置100が施錠されていない場合にLEDが点灯する(通常は点灯している。空車でも点灯なので、自転車が挿入されていて点灯している場合は施錠されていないことが解る)などの手段を講じることで、係員に識別しやすくすることもある。
【0011】
<通常の不正防止策、傾斜レール>
このような不正駐輪を防止する手段のうち、すでに実現されている手段として、車輪レール120を前輪タイヤ110の進入方向に対して下向きの下降スロープ121を持たせ、前輪タイヤ110の自重によりロック装置100の車輪保持部101内に転がり込む傾向を持たせる技術が一般的に採用されている。
【0012】
図10と図11に、この様な車輪レール120に下降スロープ121を設けた駐輪装置を示す。
即ち、図10には大径車輪の自転車BS1(28インチ)の駐輪状態を示し、図11には小径車輪の自転車BS2(16インチ)の駐輪状態を示す。大径車輪自転車BS1では、前輪タイヤ110の重さWLのうちの下降スロープ121に平行な方向の分力WLsinβが、車輪検知スライダ102を押圧する力となり、図10に示した位置で車輪検知スライダ102を押圧させない状態で自転車BS1を放置しようとしても、前輪タイヤ110が矢印WLsinβ方向に転がろうとして車輪検知スライダ102のタイヤ当接面を押圧し、車輪検知スライダ102が検知状態に移行することで、内部のスイッチが入り、鉤型アーム体103が前輪タイヤ110を退出不可状態に施錠保持する。
【0013】
<小径車輪自転車の問題点>
ところが、図11に示した小径車輪の自転車BS2の場合、前輪タイヤ111の重さWSが軽いために、下降スロープ121に平行な方向の分力WSsinβも小さくなり、前輪タイヤ111がWSsinβ方向に転がる力が小さくなるため、車輪検知スライダ102のタイヤ当接面を押圧する力が弱くなって車輪検知状態に移行しにくい問題がある。
【0014】
<摩擦力の問題点>
図12に示す様に、車輪検知スライダ102のタイヤ当接面と自転車のタイヤ外周部115の接触部分に生じる摩擦により、タイヤが転がり回転しながら車輪検知スライダ102を矢印N方向に押圧する力に比例して、接触部分に摩擦力μNが発生し、この摩擦力μNが車輪検知スライダ102の摺動部に負荷となって生じることで、車輪検知スライダ102の動作が妨げられる様に作用する問題がある。加えて、上記ロック装置100の構造に基づく摩擦係数が、上記車輪検知スライダ102の動作を妨げる問題もある。
【0015】
図13と図14に従来のロック装置100の構成例を示す。
図13は平断面図、図14はそのB−B線に沿った断面図であって、図中、103,103はロック装置100の内部に取付けられている前記左右の鉤型アーム体で、車輪保持部101(嵌込溝)内に嵌め込まれた自転車の前輪タイヤ110又は111(図10、図11参照)に押されて車輪検知スライダ102が図面上左方向に移動すると、左右の鉤型アーム体103,103が図13の仮想線に示す状態に閉回動して、前輪タイヤ110又は111を退出不可能な状態にロックするように構成されている。
【0016】
また、図13において104は、上記の如く閉回動する一方の鉤型アーム体103によってスイッチONする内部スイッチを示し、図14において105は、内部スイッチ104のスイッチONに従って作動されるソレノイドを示す。ソレノイド105は係止レバー106を図14の仮想線に示す位置に回動して、上記左右の鉤型アーム体103,103を閉じ状態(ロック状態)に維持したり、或いは、係止レバー106を図14の実線に示す位置に回動して、左右の鉤型アーム体103,103をバネ107の牽引力によって図13に示した開状態に回動して、前輪タイヤ(自転車)の退出を可能にする仕組みに成っている。
【0017】
以上の如く構成した従来のロック装置100において、図12に示すように車輪検知スライダ102の底面と、ロック装置100の筺体底面との摩擦係数μ′を先の摩擦力μNに乗じた負荷が、車輪検知スライダ102のスムーズな動作を妨げるように作用する問題がある。
【0018】
最悪の場合、タイヤ外周と車輪検知スライダ102の接触部の摩擦係数が大きい場合には(タイヤのトレッドが接触分引っ掛かった様な場合)μNが過大となり、車輪検知スライダ102の底面とロック装置100の筺体底面の摺動部で、その摩擦力による押しつけ力がさらに摺動摩擦を過大させ、人が後から自転車を押してアシストしても、食い込み状態になって車輪検知スライダ102が動作しないこともあって、駐輪に支障を来す場合もあった。
【0019】
本発明は上述した各問題点、即ち、不正駐輪の問題点、小径車輪自転車の問題点、及び、摩擦力の問題点を解決するために成されたものであって、その技術的課題は、ロック装置に自転車の前輪タイヤを進入させると、必ず車輪検知体が前輪タイヤに押されて押圧回動されて、鉤型アーム体が前輪タイヤを確実にロックするように工夫した自転車用駐輪装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(1) 上記の技術的課題を解決するために、本発明は前記請求項1に記載の如く、自転車の前輪タイヤがロック装置の所定位置に押し込まれて車輪検知体を押すと、一対の鉤型アーム体が閉状態に作動して前輪タイヤをロックするように構成した自転車用駐輪装置であって、上記車輪検知体の回動支軸を、上記ロック装置に設けられた前輪タイヤが嵌め込まれる嵌込溝の内奥壁面で、且つ、上記鉤型アーム体の動作面よりも上側部に設けて、上記前輪タイヤの検知時に前輪タイヤが当たる上記車輪検知体の当接部を、上記回動支軸よりも下側に設定すると共に、上記前輪タイヤが上記当接部を押して車輪検知体が押圧回動されると、上記一対の鉤型アーム体がこの車輪検知体に押されて閉状態に作動するように構成したことを特徴としている。
【0021】
(2) また、本発明は前記請求項2に記載の如く、前記車輪検知体の全体が、前輪タイヤを検知する前の待機時に、前記当接部を前記回動支軸よりも前輪タイヤが押し込まれて来る方向に向けて突出した上向き傾斜状態に弾発支持されていることを特徴としている。
【0022】
(3) また、本発明は前記請求項3に記載の如く、進入して来る前輪タイヤが前記車輪検知体の当接部に当接される高さ位置が、少なくとも進入して来る小径車輪自転車の車軸の進入軌跡延長線上か、又は、当該延長線よりも下側位置に設定されていることを特徴としている。
【0023】
(4) 更に、本発明は前記請求項4に記載の如く、前面部に前記前輪タイヤの嵌込溝を凹設した前記ロック装置全体の設置姿勢が、駐輪時の前輪タイヤの進行方向をガイドするガイド部材に対して、嵌込溝を凹設した前面部側が当該嵌込溝の奥側よりも高い上向きの仰角状に設定され、且つ、上記のガイド部材が前輪タイヤの進入方向に対して下向きの傾斜スロープを有していることを特徴としている。
【0024】
上記(1)で述べた請求項1に係る手段によれば、車輪検知体の回動支軸が、鉤型アーム体の動作面、及び、前輪タイヤが当たる当接部のいずれよりも上側部に設けられていて、車輪検知体の車輪当接部とタイヤ外周部の摩擦力が、車輪検知体を上記鉤型アーム体を閉作動させる方向に作用するため、タイヤ外周部と上記当接部との摩擦係数が高い場合であっても、適切に車輪検知体が動作して、鉤型アーム体を閉作動することを可能にする。
【0025】
上記(2)で述べた請求項2に係る手段によれば、上記の車輪検知体がその待機時において、上向き傾斜状態に弾発支持されていて、例えば小径車輪自転車の場合に、タイヤ外周部が車輪検知体の当接部に接触する時に、前輪タイヤの回転方向と、車輪検知体が押圧回動される方向との接線方向の差異が少なくなって転がり動作に近くなるため、摩擦力が車輪検知体の回動を助ける方向に作用して、車輪検知体が前輪タイヤを適切に検知することを可能にする。
【0026】
上記(3)で述べた請求項3に係る手段によれば、例えば小径車輪自転車の場合に、ブレーキを掛けながら進入したり、或いは、ガイド部材等の上を滑らせたりして、前輪タイヤを転がすことなく進入させた場合であっても、前輪タイヤの外周部が前記車輪検知体の当接部に引っ掛かったりして、車輪検知体を支持する支軸等に過大な負荷を加えることもなく、従って、変形や破損による故障の心配が少ない機械的に丈夫な構造の駐輪装置を提供することを可能にする。
【0027】
上記(4)で述べた請求項4に係る手段によれば、前記(2)で述べた手段と相俟って、摩擦力が適切に車輪検知体の回動を助けるため、下向き傾斜のスロープに従って前輪タイヤをロック装置の嵌込溝内に必然的に進入させて、車輪検知体を確実に押圧回動せしめることができる。従って、前輪タイヤをガイド部材に沿って進入(前進)させるだけで、必ず車輪検知体が押されて鉤型アーム体が前輪タイヤをロックするため、前輪タイヤを非ロックの状態で駐輪させる不正駐輪を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上述べた次第で、本発明に係る自転車用駐輪装置によれば、上述した不正駐輪の問題、小径車輪自転車による駐輪の問題、及び、前輪タイヤと車輪検知体との摩擦力の問題を全て解決して、係員が常時監視して廻る手間と人件費を節減できると共に、破損や故障が少なくてメンテナンス費用が安くて済む経済性と、大径車輪或いは小径車輪に関係無く、各種の自転車を確実に駐輪させることができる機能性とを備えた、優れた構造の駐輪装置を提供できる利点を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、上述した本発明に係る自転車用駐輪装置の実施の形態を図面と共に説明すると、図1は本発明の実施例に係る自転車用駐輪装置1の外観図、図2はその側面図を示したものであって、通常は、スペース効率を考えて、図示の如く駐輪装置1の高さを高低2通りに構成したものを組み合わせて、それを横方向に多数連設して使用しているが、図示したものは実施の一例であって、同じ高さに作った多数台の駐輪装置1を横方向に並べて構成してもよく、その選択は任意とする。
【0030】
上記の各図において、夫々符号10で全体的に示したのは、最下部の入口10Hから斜め上方に傾斜する上昇スロープ部10Aと、この上昇スロープ部10Aの頂点より斜め下方に傾斜する下降スロープ部10Bとを一体に連設した、全体が略へ字状に構成されたガイドレール部であって、これ等各ガイドレール部10は、上記の各図に記載の如く、駐輪させる自転車の前輪タイヤをガイドできるように、左右平行な間隔をあけて並設した金属製ガイドレール11,12の間に、金属製のタイヤガイド板13,14を架設、溶接することによって構成されている。尚、ガイドレール11,12の材料としては、丸棒、角棒、六角棒、或いは、それらの中空パイプ材が使用される。
【0031】
2と3は、駐輪場の路面上に前後に間隔をあけて敷設したベース材、4と5は後部側のベース材3に設けた高低2段の支持台で、上記略へ字状に形成したガイドレール部10…は、各上昇スロープ部10Aの入口10H…の部分を前部側のベース材2に固定し、各下降スロープ部10Bの後端部側タイヤガイド板14の部分を、夫々取付部材15A,15Bを介して上記後部側ベース材3側に固定することによって、その略へ字形状と、各間隔が保たれる仕組みに成っている。
【0032】
更に図中、10Cは上記各ガイドレール部10を構成する左右のガイドレール11,12を、下降スロープ部10Bの途中から斜め上方に向けて屈曲することによって構成した連架部で、後端部側タイヤガイド板14が架設されていない底抜け状態のこの連架部10Cの間隔には、図7並びに図8に示すように、駐輪時に自転車の前輪タイヤの前部下側部分が嵌め込まれる仕組みに成っている。
【0033】
上記図7において、BS1は車輪サイズが通常の26インチ又は28インチの車輪を有する大径車輪の自転車で、S1Aはその前輪タイヤ(前車輪)を示し、S1Bはリム、S1Cは自転車BS1の前フォーク、S1Nはこの前フォークS1Cに前輪タイヤS1Aを取付けるハブ軸(図示省略)の締付用ナットを示す。
【0034】
また、図8において、BS2は車輪サイズが例えば16インチの車輪を有する小径車輪の自転車、S2Aはその前輪タイヤ(前車輪)を示し、S2Bはリム、S2Cは自転車BS2の前フォーク、S2Nはこの前フォークS2Cに前輪タイヤS2Aを取付けるハブ軸(図示省略)の締付用ナットである。
【0035】
更に図1と図2及び図7と図8において、10Dは上記連架部10Cを構成する左右のガイドレール11,12の上端部を、間隔を保ちながら更に上方に向けて垂直方向に延長することによって構成したオーバーラン規制ガイド部、10Eは垂直方向に延長する左右のガイドレール11,12を逆U字状に屈曲して連設形成した上端折り返し部であって、このオーバーラン規制ガイド部10Dにおける上記上端折り返し部10Eから、後述するロック装置20(具体的にはロック装置20の車輪検知体25の上端部)に至るまでの間隔距離(長さ寸法)が、少なくとも駐輪対象とする自転車の前輪タイヤの標準寸法(26インチ又は28インチ)よりも短く形成されていて、斯かる間隔内を自転車の26インチ又は28インチのタイヤが通過(オーバーラン)しないように構成されている。
【0036】
また、上記オーバーラン規制ガイド部10Dを構成する左右のガイドレール11,12の間隔は、前記大径及び小径の前輪タイヤS1A、S2Aは挿通可能であるが、少なくとも小径の前輪タイヤS2Aのハブ軸の両端部に取付けた締付用ナットS2N、S2Nを含んだ全体の長さ寸法よりも狭く造られていて、このガイドレール11,12の間隔を小径の前輪タイヤS2Aが通過(オーバーラン)できないように構成されている。
【0037】
次に、符号20で示したのは前記支持台4及び5の上端部で、且つ、上記オーバーラン規制ガイド部10Dの下側部分に、仰向けに傾斜させて設けたロック装置であって、このロック装置20は、図3に示した上蓋ケース体を外した平断面図と、図4に示した図3のA−A線に沿った断面図の記載から明らかな如く、前面部に駐輪する自転車の前輪タイヤが嵌め込まれる嵌込溝22を凹設したケース体21と、このケース体21の内部に左右から上記嵌込溝22に嵌め込まれた前輪タイヤを挟み込んだ状態にロックすることができるように取付けた一対の鉤型アーム体23,23と、上記嵌込溝22に嵌め込まれた前輪タイヤに押されて図面上左方向に回動する車輪検知体25を備えている。
【0038】
上記の車輪検知体25は、上記図3並びに図4に示す如く、背面の上側部に設けた回動支軸25Tを、上記嵌込溝22の奥壁で、上記鉤型アーム体23,23の動作面よりも上側部に水平に、且つ、回動自在に架設すると共に、前面に設けたタイヤ外周との車輪当接部25Xを、上記回動支軸25Tよりも下方に設けられている。尚、上記の回動支軸25Tは上記嵌込溝22の奥壁と車輪検知体25の背面との間に設けられたヒンジ部25Sによって構成されており、車輪検知体25は後述する一対の鉤型アーム体23,23の突起23B,23Bに付勢され、略上向きの傾斜状態で待機している。
【0039】
上記一対の鉤型アーム体23,23は、中央部の内側に検知用の突起23B,23Bが突設されていて、進入して来る前輪タイヤS1A又はS2Aに押されて車輪検知体25が回動支軸25Tを支点にして図面上左方向(図4において時計回転方向)に押動されると、上記突起23B,23Bがこの車輪検知体25に押されて、鉤型アーム体23,23をスプリング26を伸張しながら支軸24,24を中心に図3の2点鎖線の位置に閉じ回動して、先端の鉤型ロック部23A,23Aが前輪タイヤS1A又はS2Aを嵌込溝22内にロックすると共に、スイッチ28が一方の鉤型アーム体23の根端部に押されてスイッチONされる。すると、ケース体21内に取付けたソレノイド29が消勢(OFF)され、係止レバー27を図4の2点鎖線に示す位置に回動して、両鉤型アーム体23,23の根端部間に介在するため、それ以後の鉤型アーム体23,23の開放回動を規制して、ロック状態が維持される仕組みに成っている。
【0040】
上記のロック状態を解錠するには、駐輪場内に設けた駐輪料金精算機(図示省略)にコインを投入して、当該駐輪装置1の番号を入力すれば、前記ソレノイド29を励磁(ON)して係止レバー27を図4の実線に示す位置に回動するため、両鉤型アーム体23,23がスプリング26の牽引力によって図3の実線に示す位置に開放回動して、前輪タイヤS1A又はS2Aに対するロックを解くことができると共に、ロックが解かれた前輪タイヤS1A又はS2Aを嵌込溝22から引き出すと、車輪検知体25がスプリング26に付勢された一対の鉤型アーム体23,23の突起23B,23Bから受ける弾発力によって図4に示した当初の傾斜状態(待機状態)に復帰回動する。
【0041】
尚、本実施例のソレノイド29はプランジャー部の解放状態と吸引状態を選択的に動作できるラッチ式ソレノイドを想定しているが、通常の通電により吸引し非通電状態で開放されるソレノイドとスプリングを組み合わせたり、ロータリー式ソレノイドを使用することも可能である。
【0042】
次に、図5は本発明を構成する各部材の位置関係を説明した構成図であって、図中、想定する小さい車輪半径をRS、大きい車輪半径をRLとし、夫々RS=16インチ車輪で約200mm、RL=26インチ車輪で約330mmと想定している。また、想定される最大の車輪の半径として、RMax=28インチで355mmを想定している。更に、図5においては、高い位置に設けたロック装置20の位置関係を記したが、低い位置のロック装置20においても下降スロープ部10Bから鉤型アーム体23の先端の鉤型ロック部23Aまでの高さHや、下降スロープ部10Bとロック装置20のなす仰角α、下降スロープ部10Bの傾斜角度βなどは、全て同じである。
【0043】
また、本発明においては、前述した特許文献1に記載の駐輪装置100とは異なり、上述した下降スロープ部10Bから鉤型アーム体23の先端の鉤型ロック部23Aまでの高さHを、小径車輪半径RSよりも大きく設定している。具体的には、上記のHは240mmであり、好ましくは230〜250mmが最適である。
【0044】
図6は、本発明の実施例における車輪検知体25が、小径車輪自転車BS2(図8参照)の前輪タイヤS2Aによって及ぼされる力の関係を示したものであって、図面において、小径の前輪タイヤS2Aは矢印で示した転がり回転方向(反時計回転方向)に回転しながら車輪検知体25の車輪当接部25Xに当接して、当接点には摩擦力μNが図示の如くタイヤ円周接線上で斜め下方に発生する。
【0045】
前述した従来例(図13、図14参照)とは異なり、本発明の実施例では車輪検知体25は車輪当接部25Xよりも上側位置に回動支軸25Tから成るヒンジ部25Sが設けられているため、前輪タイヤS2Aの当接によって図6において時計回転方向に回転させようとする押圧力が加わる。上記の摩擦力μNも車輪検知体25に対しては同様にその回動支軸25Tを中心に時計回転方向に回転する作用が加わるため、車輪当接部25Xにおける摩擦力μNが車輪検知体25の動作の負荷になることがなく、前輪タイヤS2Aのトレッドが可成り凹凸しているものであっても、適切に車輪検知体25を感知状態に回動させることができる。
【0046】
また、図4に記載されているように、車輪検知体25の待機時の姿勢は、スプリング26の弾発力によって一対の鉤型アーム体23,23の突起23B,23Bによって付勢されて上向き傾斜状態に弾支されており、且つ、ロック装置20の全体も図6に示すように嵌込溝22が凹設されているケース体21の前面部分を、ガイドレール部10の下降スロープ部10Bの傾斜角度βよりも更にαだけ大きく傾けた状態に取付けられているため、小径の前輪タイヤS2Aの場合であっても、車輪当接部25Xに加わる摩擦力μNの方向が、車輪検知体25の回動を助ける方向に作用して、車輪検知体25による前輪タイヤS2Aの検知を円滑に、且つ、確実に行うことができる。
【0047】
更に本発明では、車輪検知体25の車輪当接部25Xが、小径車輪自転車BS2における前輪タイヤS2Aの車軸高さとほぼ同等の高さ位置HOにあるか、又は、この車軸高さよりも下側に位置しているため、勢いよく前輪タイヤS1A又はS2Aをロック装置20の嵌込溝22内に進入させた時や、ブレーキを掛けたまま前輪タイヤS1A又はS2Aを回転せずに上記嵌込溝22に進入させた場合であっても、車輪検知体25が前輪タイヤS1A又はS2Aを適切に検知して、これ等前輪タイヤを確実にロックすることができる。
【0048】
仮に、車輪当接部25Xが前輪タイヤの車軸の高さHOよりも高い位置にある場合は、前輪タイヤS1A又はS2Aが回転せずに車輪当接部25Xを押圧した場合には、回動支軸25T(ヒンジ部25S)に過大な負荷が掛かることになり、最悪の場合は車輪検知体25の変形や破損、或いは、上記回動支軸25Tの破損を招く可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る自転車用駐輪装置の全体を説明した斜視図。
【図2】図1に示した自転車用駐輪装置の側面図。
【図3】上蓋を取り外したロック装置の平断面図。
【図4】図3のA−A線に沿った断面図。
【図5】本発明を構成する各部材の位置関係を説明した説明図。
【図6】本発明の実施例における駐輪装置と自転車の前輪タイヤとの関係を示した図。
【図7】大径車輪自転車の駐輪状態を示した側面図。
【図8】小径車輪自転車の駐輪状態を示した側面図。
【図9】従来の大径車輪自転車の通常駐輪の状態を説明した側面図。
【図10】従来の大径車輪自転車の他の実施例に係る通常駐輪の状態を説明した側面図。
【図11】従来の小径車輪自転車の通常駐輪の状態を説明した側面図。
【図12】従来例における駐輪装置と自転車前輪との関係を示した図。
【図13】従来のロック装置の平断面図。
【図14】図13のB−B線に沿った従来例の断面図。
【符号の説明】
【0050】
1 駐輪装置
10 ガイドレール部
10A 上昇スロープ部
10B 下降スロープ部
10C 連架部
10H 入口部
10D オーバーラン規制ガイド部
10E 上端折り返し部
11,12 ガイドレール
13,14 タイヤガイド板
20 ロック装置
21 ケース体
22 嵌込溝
23 鉤型アーム体
25 車輪検知体
25X 車輪当接部
25T 回動支軸
26 スプリング
BS1 大径車輪自転車
S1A 前輪タイヤ
BS2 小径車輪自転車
S2A 前輪タイヤ
S2B リム
S2C 前フォーク
S2N ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の前輪タイヤがロック装置の所定位置に押し込まれて車輪検知体を押すと、一対の鉤型アーム体が閉状態に作動して前輪タイヤをロックするように構成した自転車用駐輪装置であって、
上記車輪検知体の回動支軸を、上記ロック装置に設けられた前輪タイヤが嵌め込まれる嵌込溝の内奥壁面で、且つ、上記鉤型アーム体の動作面よりも上側部に設けて、上記前輪タイヤの検知時に前輪タイヤが当たる上記車輪検知体の当接部を、上記回動支軸よりも下側に設定すると共に、上記前輪タイヤが上記当接部を押して車輪検知体が押圧回動されると、上記一対の鉤型アーム体がこの車輪検知体に押されて閉状態に作動するように構成したことを特徴とする自転車用駐輪装置。
【請求項2】
前記車輪検知体の全体が、前輪タイヤを検知する前の待機時に、前記当接部を前記回動支軸よりも前輪タイヤが押し込まれて来る方向に向けて突出した上向き傾斜状態に弾発支持されていることを特徴とする請求項1に記載の自転車用駐輪装置。
【請求項3】
進入して来る前輪タイヤが前記車輪検知体の当接部に当接される高さ位置が、少なくとも進入して来る小径車輪自転車の車軸の進入軌跡延長線上か、又は、当該延長線よりも下側位置に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自転車用駐輪装置。
【請求項4】
前面部に前記前輪タイヤの嵌込溝を凹設した前記ロック装置全体の設置姿勢が、駐輪時の前輪タイヤの進行方向をガイドするガイド部材に対して、嵌込溝を凹設した前面部側が当該嵌込溝の奥側よりも高い上向きの仰角状に設定され、且つ、上記のガイド部材が前輪タイヤの進入方向に対して下向きの傾斜スロープを有していることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の自転車用駐輪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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