説明

臭気バリア性共押出多層フィルム、これを用いる包装材及び包装容器

【課題】 食品等の包装材に対して、外部からの揮発性成分等の侵食によって内容物の変質を防止するための加工が容易である臭気バリア性共押出多層フィルム、これを用いた包装材及び包装容器を提供すること。
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂を主成分とする表面樹脂層(A)と、酸変性ポリオレフィンを主成分とする接着樹脂層(B)と、臭気バリア性樹脂層(C)とが(A)/(B)/(C)/(B)/(A)の順に積層されてなる共押出多層フィルムであり、該樹脂層(C)が、非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体0〜55質量%とポリブチレンテレフタレートホモポリマー45〜100質量%との混合物もしくは単独樹脂、又は非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体0〜55質量%と、特定のポリブチレンテレフタレート系共重合体45〜100質量%との混合物もしくは単独樹脂を主成分とする共押出多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や雑貨等を充填する包装材に対して、保管時に外部からの揮発性成分等の侵食によって内容物の変質を防止するための加工が容易である臭気バリア性共押出多層フィルムと、これを用いた包装材及び包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や雑貨等を充填する包装材においては、紙基材にポリオレフィン系樹脂を積層してなるものが多く使用されてきた。この紙容器で包装された食品や雑貨等を長期で保管する場合には、内容物の状態を維持するために、空気中の酸素や、防虫剤・芳香剤・消臭剤等の臭気成分を遮断する必要がある。
【0003】
例えば、酸素バリア性を付与するために、ポリオレフィン系樹脂層が積層されてなる紙基材に対して、更に二軸延伸ポリビニルアルコール系フィルム層を、アンカーコート剤を用いて積層する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。本来ポリビニルアルコール系の樹脂には酸素バリア性があることにより、内容物の酸化劣化の防止という面では一定の効果が得られるものの、該特許文献1の方法では二軸延伸されたフィルムをアンカーコート剤を用いて積層するため、工程が複雑であり、又生産現場における臭気・VOC発生の問題もあり、生産性の面では劣るものである。
【0004】
又、防虫剤・芳香剤・消臭剤等の臭気成分の遮断に関しては、特定の物性値を有するポリエステルフィルムを積層する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
前記特許文献2においては、用いるポリエステルに含まれる触媒由来のチタンの含有率を調整する必要がある点において汎用性が低く、更にアンカーコート剤の塗布工程を必要とする点においては前記特許文献1と同様の問題点を有している。特にポリエステルフィルムに接着剤を塗布する場合には、乾燥後の面内屈折率差までをも調整する必要があり、工程管理上の困難性をも有しており、更なる改良が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−076336号公報
【特許文献2】特開2005−161536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、食品や雑貨等を充填する包装材に対して、保管時に外部からの揮発性成分等の侵食によって内容物の変質を防止するための加工が容易である臭気バリア性共押出多層フィルムと、これを用いた包装材及び包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、臭気バリア樹脂層に特定のポリエステル系樹脂混合物を使用した共押出多層フィルムを用いることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とする表面樹脂層(A)と、酸変性ポリオレフィン(b1)を主成分とする接着樹脂層(B)と、臭気バリア性樹脂層(C)とが(A)/(B)/(C)/(B)/(A)の順に積層されてなる共押出多層フィルムであって、該臭気バリア性樹脂層(C)が、非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)0〜55質量%とポリブチレンテレフタレートホモポリマー(c2)45〜100質量%との混合物もしくは単独樹脂、又は非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)0〜55質量%と、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸とを用いて得られるポリブチレンテレフタレート系共重合体(c3)45〜100質量%との混合物もしくは単独樹脂、を主成分とするものであることを特徴とする臭気バリア性共押出多層フィルムと、これをその他のシート状基材に押出ラミネート加工して得られる包装材、及びこれを製函・製袋してなる包装容器を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の臭気バリア性共押出多層フィルムは、防虫剤・消臭剤・芳香剤といった揮発薬剤成分を有するものと近い場所で保管される容器に使用される包装材に対して、これらの臭気を遮断する性能を付与することができ、該成分の透過を遮断し、内容物の変質・劣化を防止することができる。また、該多層フィルムの表面層はポリオレフィン樹脂層からなるため、ポリオレフィン系樹脂とヒートシール可能な樹脂層で被覆されている基材であれば、アンカーコート剤等の塗布の必要がなく、押出ラミネート等の容易な方法で積層させることが可能であり、VOC等の発生もなく、製造工程の簡略化が見込め、その応用範囲が広い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の多層フィルムは、表面樹脂層(A)と、接着樹脂層(B)と、臭気バリア性樹脂層(C)とが(A)/(B)/(C)/(B)/(A)の順に積層されてなる共押出多層フィルムである。尚、本願における「主成分とする」とのことは、各層の全体質量に対する特定の樹脂又は樹脂混合物の質量割合が65質量%以上、好ましくは80質量%以上であることをいうものである。
【0012】
本発明の共押出多層フィルムの表面樹脂層(A)は、ポリオレフィン系樹脂(a1)をその主成分とする。ポリオレフィン系樹脂(a1)として後述する接着樹脂層(B)、臭気バリア樹脂層(C)に用いる樹脂又は樹脂混合物と共押出が容易である点と、得られる多層フィルムを押出ラミネート等の簡便な手法でその他の基材へ容易にラミネートできる点から、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を単独、又は混合して用いることが好ましい。
【0013】
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0014】
また、これらのポリエチレン系樹脂は、MFR(190℃)が0.5〜30.0g/10分であるものが、押出成形が容易となることから好ましく、より好ましくはMFRが2.0〜15.0g/10分のものである。更に、これらのポリエチレン系樹脂が、融点が80〜135℃のものであれば、ラミネート時のフィルムの収縮が起こりにくく、包装適性が向上する。より好ましくは融点が90〜130℃のものである。
【0015】
前記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。これらのポリプロピレン系樹脂を樹脂層(A)として用いた場合には、フィルムの耐熱性が向上し、ラミネート時の加工強度を高くすることができるため、特に重量物の包装材用として好適に用いることが出来る。
【0016】
また、これらのポリプロピレン系樹脂は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が120〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が125〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば成膜性は良好である。
【0017】
本発明の多層フィルムにおいて、表面樹脂層(A)は、表面及び裏面の両表面であり、それぞれ同一の樹脂又は樹脂混合物を用いたものであって、表面と裏面とで異なる樹脂又は樹脂混合物を用いたものであっても良い。
【0018】
本発明の共押出多層フィルムの接着樹脂層(B)は、酸変性ポリオレフィン(b1)を主成分とするものであることを必須とする。
【0019】
前記酸変性ポリオレフィン(b1)は、ポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸またはその誘導体などをグラフト共重合してなる。かかるポリオレフィン系樹脂としては、前述の表面樹脂層(A)に用いるポリオレフィン系樹脂(a1)として挙げたポリエチレン系樹脂、ポリプロプレン系樹脂が挙げられる。また、エチレンと(メタ)アクリル酸メチルや酢酸ビニル等との共重合体でもよい。
【0020】
又、接着樹脂層(B)には表面樹脂層(A)や後述する臭気バリア性樹脂層(C)との層間接着強度を上げるために、粘着付与剤、反応触媒などを添加してもよく、粘着付与剤としては、天然樹脂や合成樹脂からなる常温で粘着性を有する樹脂が挙げられ、例えば、天然樹脂ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン、グリセルネステルロジン、ペンタエリスリトール等のロジン系樹脂;テルペン、芳香族テルペン、テルペンフェノール、水素添加テルペン等のテルペン系樹脂;脂肪族石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水素脂環式系石油樹脂;常温で液状のポリブタジエン、常温で液状のポリイソプレン、常温で液状のポリイソブチレン等が挙げられる。
【0021】
本発明の共押出多層フィルムの臭気バリア樹脂層(C)に用いる樹脂は、非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)0〜55質量%とポリブチレンテレフタレートホモポリマー(c2)45〜100質量%との混合物もしくは単独樹脂、又は非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)0〜55質量%と、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸とを用いて得られるポリブチレンテレフタレート系共重合体(c3)45〜100質量%との混合物もしくは単独樹脂を主成分とするものである。
【0022】
前記非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)としては、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするグリコール成分からなるポリエステル樹脂である。このポリエチレンテレフタレート系重合体は、共重合成分として、ジカルボン酸の一部をイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヒドロキシ安息香酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の一種または二種以上用いたものが挙げられる。また、グリコール成分の一部として、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリアルキレングリコール、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の一種又は二種以上を用いたものが挙げられる。また、三官能以上の化合物、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸等をポリマーが実質的に線状となる程度で使用しても構わない。
【0023】
本発明で用いられる非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)は、その固有粘度が0.7dl/g以上が好ましい。0.7dl/gよりも低いと、(A)層及び(B)層と共押出した時に合流部において、流動性が合致しにくいためフィルム表面に流れムラ外観不良の原因となることがある。
【0024】
この様な非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)の市販品としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートに1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したイーストマンケミカル製PETG等が挙げられる。
【0025】
尚、本願における「非晶性」とは、DSC(示差走査熱量測定)において23℃〜300℃の範囲で0.5J/g以上のピークを有さないことを言うものである。
【0026】
前記ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(c2)は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールを重縮合して合成されるポリエステルである。このポリブチレンテレフタレートホモポリマー(c2)は、その固有粘度が0.7dl/g以上が好ましい。0.7dl/gよりも低いと、(A)層及び(B)層と共押出した時に合流部において、流動性が合致しにくいことがありフィルム表面の外観不良の原因となる場合がある。
【0027】
この様なポリブチレンテレフタレートホモポリマー(c2)の市販品としては、例えば、三菱エンジニアリングプラスチック製NOVADURAN 5020(ホモポリブチレンテレフタレート樹脂、固有粘度1.20dl/g)、またはウィンテックポリマー株式会社製ジュラネックス500FP(ホモポリブチレンテレフタレート樹脂、固有粘度0.875dl/g)等が挙げられる。
【0028】
前記ジカルボン酸成分として、テレフタル酸とイソフタル酸とを用いて得られるポリブチレンテレフタレート系共重合体(c3)は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールとの重合体に、第三成分として、イソフタル酸を共重合したものである。その固有粘度が0.7dl/g以上が好ましい。0.7dl/gよりも低いと、(A)層及び(B)層と共押出した時に合流部において、流動性が合致しにくいことがありフィルム表面の外観不良の原因となる場合がある。
【0029】
このポリブチレンテレフタレート系共重合体(c3)の融点が170℃以上であるか、またはガラス転移点が25℃以上であることが好ましい。
【0030】
前記テレフタル酸とイソフタル酸とを用いて得られるポリブチレンテレフタレート系共重合体(c3)の市販品としては、例えば、ウィンテックポリマー株式会社製ジュラネックス400LP(固有粘度:0.765 融点:170℃ ガラス転移点:27℃)等が挙げられる。
【0031】
本発明において、臭気バリア性樹脂層(C)は、
(1)前記非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)0〜55質量%とポリブチレンテレフタレートホモポリマー(c2)45〜100質量%との混合物もしくは単独樹脂
(2)非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)0〜55質量%と、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸とを用いて得られるポリブチレンテレフタレート系共重合体(c3)45〜100質量%との混合物もしくは単独樹脂
を主成分とするものである。
【0032】
非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)の使用割合が55質量%を超えると、得られる多層フィルムの臭気バリア性に劣るため、臭気バリア性の多層フィルムとしての実用性にかけるものである。より好ましい混合比は、非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)40〜55質量%、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(c2)又はジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸とを用いて得られるポリブチレンテレフタレート系共重合体(c3)45〜60質量%である。
【0033】
本発明の臭気バリア性共押出多層フィルムは、全フィルム厚さが15〜150μmのものが好ましく、特に取り扱いが容易である点からは30〜60μmのものが好ましい。全フィルムの厚さがこの範囲であれば、フィルムが成膜しやすく、ハンドリング性が良好となる。また、臭気バリア性の観点から当該バリア性樹脂層(C)の厚さは、1〜75μmが好ましく、特には5〜25μmの範囲であることが好ましく、フィルム全厚に対しては5〜50%の範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明の臭気バリア性共押出多層フィルムの製造方法としては、共押出積層法であれば特に限定されるものではないが、例えば、複数の押出機を用いて各樹脂層に用いる樹脂又は樹脂混合物を溶融し、マルチマニフォールドダイス法、フィードブロック法等の共押出法により溶融状態で積層した後、インフレーション、T−ダイ・チルロール法等の方法を用いてフィルム状に加工する方法が挙げられる。T−ダイ・チルロール法の場合、ゴムタッチロールやスチールベルト等とチルロール間で、溶融積層されたフィルムをニップして冷却してもよい。
【0035】
さらに、本発明の臭気バリア性共押出多層フィルムは、少なくとも1軸方向に延伸されていてもよい。延伸方法としては、縦あるいは横方向の1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸、あるいはチューブラー法2軸延伸等の種々の方法を採用することができる。また、延伸工程はインラインでもあっても、オフラインであってもよい。1軸延伸の延伸方法としては、近接ロール延伸法でも圧延法でもよい。1軸延伸の延伸倍率としては、縦あるいは横方向に1.1〜80倍が好ましく、より好ましくは3〜30倍である。一方、2軸延伸の延伸倍率としては、面積比で1.2〜70倍が好ましく、より好ましくは縦4〜6倍、横5〜9倍、面積比で20〜54倍である。
【0036】
本発明の臭気バリア性共押出多層フィルムには、表面樹脂層(A)、接着樹脂層(B)、臭気バリア樹脂層(C)のいずれか、あるいは2層以上の樹脂層に、他の熱可塑性樹脂、耐熱安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で添加しても良い。
【0037】
また、本発明の臭気バリア性包装材は、前述の臭気バリア性共押出多層フィルム(I)をその他の基材上にラミネートしてなるものである。特に、表面がポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂層で被覆されたシート状基材(II)であることが、押出ラミネート法によって容易に積層できる点から好ましい。
【0038】
具体的には、本発明の臭気バリア性共押出多層フィルムとの接着強度を容易に調製でき、且つ本願の特性を充分に発揮できる点から、紙基材上にポリオレフィン系樹脂層が積層されてなるものシート状基材を用いることが好ましい。
【0039】
この様にして得られる本発明の臭気バリア性共押出多層フィルム、および臭気バリア性共押出多層フィルムをラミネートした臭気バリア性包装材は、特にその用途が特定されるものではなく、例えば、各種食品や雑貨用の包装袋、或は、食品や雑貨用の箱等の包装容器として好適に用いることができる。なかでも、臭気バリア性包装材の臭気バリア性共押出多層フィルム(I)側が内側になるように製函又は製袋して包装容器としたものであることが好ましく、用途としては、室温で長期保管される即席めん等の容器として好適に用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
【0041】
フィルムの性能に関しては以下のようにして評価を行なった。
(1)臭気バリア性の評価
得られたフィルムを7cm角に2枚切り出して重ね合わせ、3辺を精密ヒートシーラー(テスター産業製)を用いて、温度140℃、圧力0.2MPaで幅10mmのシールバーにより、1.0秒間ヒートシールして袋を作成した。この袋にp−ジクロロベンゼン0.1gを入れて袋上部を同様にヒートシールし、内容面積が5cm×5cmとなるようにした。この小袋を100mlのマヨネーズ瓶にいれて漏れの無い様にキャップをし、23℃、50%RHの恒温室に放置し、翌日以降のマヨネーズ瓶内にp−ジクロロベンゼンの臭気を感じるまでの日数を確認した。
【0042】
(2)工程数の評価
製函するための積層体が完成するまでの工程について、以下の工程数をカウントした。
2−1.紙の製造
2−2.PE押出
2−3.印刷
2−4.アンカーコート
2−5.フィルム成膜
【0043】
実施例1
表面樹脂層(A)として直鎖状低密度ポリエチレン〔密度0.93g/cm3、メルトフローレート6g/10min;以下LLDPEという〕を用い、接着樹脂層(B)として酸変性量が2.9質量%で、密度が0.89g/cm3の酸変性エチレン−プロピレン−ブテン共重合体〔以下接着性樹脂という〕を用い、臭気バリア性樹脂層(C)として、ポリブチレンテレフタレート共重合体〔ウィンテックポリマー(株)製ジュラネックス400LP;以下PBT共重合体という〕を用い、表面樹脂層(A)用押出機(口径50mm)と接着樹脂層(B)用押出機(口径40mm)と臭気バリア性樹脂層(C)用押出機(口径40mm)のそれぞれに樹脂を供給し、共押出法により押出温度230℃でTダイから(A)/(B)/(C)/(B)/(A)層の厚さが10μm/5μm/20μm/5μm/10μmになるように押出し、30℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、ロールに巻き取り、35℃の熟成室で48時間熟成させて、全厚が50μmの本発明の共押出多層フィルムを得た。
【0044】
実施例2
臭気バリア性樹脂層(C)として、ポリブチレンテレフタレート〔ウィンテックポリマー(株)製ジュラネックス500FP;以下PBTという〕を用いた以外は実施例1と同様にして実施例2の共押出多層フィルムを得た。
【0045】
実施例3
臭気バリア性樹脂層(C)として、PBT共重合体45質量部と、非晶性ポリエチレンテレフタレート共重合体〔イーストマンケミカル製PETG6763;以下PETGという〕55質量部との混合物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例3の共押出多層フィルムを得た。
【0046】
実施例4
臭気バリア性樹脂層(C)として、PBT共重合体60質量部と、PETG40質量部との混合物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例4の共押出多層フィルムを得た。
【0047】
実施例5
臭気バリア性樹脂層(C)として、PBT45質量部と、PETG55質量部との混合物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例5の共押出多層フィルムを得た。
【0048】
実施例6
臭気バリア性樹脂層(C)として、PBT60質量部と、PETG40質量部との混合物を用いた以外は実施例1と同様にして実施例6の共押出多層フィルムを得た。
【0049】
実施例7
臭気バリア性樹脂層(C)として、PBT45質量部と、PETG55質量部との混合物を用い、(A)/(B)/(C)/(B)/(A)層の厚さが15μm/5μm/10μm/5μm/15μmになるように押出した以外は実施例1と同様にして実施例7の共押出多層フィルムを得た。
【0050】
実施例8
臭気バリア性樹脂層(C)として、PBT共重合体45質量部と、PETG55質量部との混合物を用い、(A)/(B)/(C)/(B)/(A)層の厚さが15μm/5μm/10μm/5μm/15μmになるように押出した以外は実施例1と同様にして実施例8の共押出多層フィルムを得た。
【0051】
比較例1
膜厚12μmの2軸延伸ポリエステルフィルムと膜厚30μmのポリエチレンフィルムをウレタン系接着剤を使用してラミネートしてラミネートフィルムを得た。
【0052】
比較例2
バリア層を持たないものとして膜厚50μmのポリエチレンフィルムを使用した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とする表面樹脂層(A)と、酸変性ポリオレフィン(b1)を主成分とする接着樹脂層(B)と、臭気バリア性樹脂層(C)とが(A)/(B)/(C)/(B)/(A)の順に積層されてなる共押出多層フィルムであって、
該臭気バリア性樹脂層(C)が、
非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)0〜55質量%とポリブチレンテレフタレートホモポリマー(c2)45〜100質量%との混合物もしくは単独樹脂、又は
非晶性ポリエチレンテレフタレート系重合体(c1)0〜55質量%と、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸とを用いて得られるポリブチレンテレフタレート系共重合体(c3)45〜100質量%との混合物もしくは単独樹脂、を主成分とするものであることを特徴とする臭気バリア性共押出多層フィルム。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂(a1)が、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂である請求項1記載の臭気バリア性共押出多層フィルム。
【請求項3】
前記酸変性ポリオレフィン(b1)が無水マレイン酸変性ポリオレフィンである請求項1又は2記載の臭気バリア性共押出多層フィルム。
【請求項4】
臭気バリア性共押出多層フィルムの全厚が15〜150μmであり、且つ前記臭気バリア性樹脂層(C)の厚さが全厚の5〜50%である請求項1〜3の何れか1項記載の臭気バリア性共押出多層フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載の臭気バリア性共押出多層フィルム(I)を、表面がポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂層で被覆されたシート状基材(II)に押出ラミネートすることによって得られることを特徴とする臭気バリア性包装材。
【請求項6】
前記シート状基材(II)が、紙基材上にポリオレフィン系樹脂層が積層されてなるものである請求項5記載の臭気バリア性包装材。
【請求項7】
請求項5又は6で得られる臭気バリア性包装材の臭気バリア性共押出多層フィルム(I)側が内側になるように製函又は製袋してなることを特徴とする臭気バリア性包装容器。
【請求項8】
食品用である請求項7記載の臭気バリア性包装容器。

【公開番号】特開2012−11741(P2012−11741A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152864(P2010−152864)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】