臭気抑制材及び有機性廃棄物の臭気抑制方法
【課題】 家畜排泄物、生ゴミ、有機性汚泥、堆肥等の有機性廃棄物の臭気抑制を効果的に行う。
【解決手段】 本発明の臭気抑制材は、アルカリ化合物と非晶質鉄化合物を含有するものであり、有機性廃棄物に適量混入して置くことにより、腐植化過程で臭気抑制を効果的に行う。
【解決手段】 本発明の臭気抑制材は、アルカリ化合物と非晶質鉄化合物を含有するものであり、有機性廃棄物に適量混入して置くことにより、腐植化過程で臭気抑制を効果的に行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気抑制材及び有機性廃棄物の臭気抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動植物の遺体や糞尿、生ゴミ、有機性汚泥、堆肥などの有機物が発する臭いは強烈であり、腐敗が進むとさらに悪臭は強まり、公害問題ともなっているが、畜産農家等大量に発生する有機性廃棄物の臭気抑制のための効果的な方策は見出されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明者らは、家畜排泄物の腐植化を促進する材料の検討を行い、アルカリ化合物と鉄化合物を同時に家畜排泄物に混合することにより、腐植化を促進することができることを発見した。それと共に、当該腐植化促進材を家畜排泄物に添加、混入することによって短時間の内に強烈な臭気が抑制されることを発見した。
【0004】
本発明はこの技術的な発見に根ざし、有機性廃棄物の臭気を効果的に抑制できる臭気抑制材及び有機性廃棄物の臭気抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明の臭気抑制材は、アルカリ化合物と非晶質鉄化合物とを含有することを特徴とするものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の臭気抑制材において、前記アルカリ化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含み、水溶化した際にアルカリ性を示す化合物であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1の臭気抑制材において、前記アルカリ化合物は、カルシウム、マグネシウム、カリウム又はナトリウムのうちのいずれか1又は複数のものの炭酸塩、水酸化物若しくは酸化物のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とするものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1の臭気抑制材において、前記非晶質鉄化合物は、非晶質酸化鉄または非晶質水酸化鉄を含み、結晶質酸化鉄、結晶質水酸化鉄、二価又は三価の鉄塩、鉄錯化合物、鉄イオン、元素鉄のいずれかの単体、又はそれらの2種類以上との混合物であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の臭気抑制材において、前記アルカリ化合物および前記鉄化合物を、無機物または有機物を主たる基質とする担体に担持または含浸させたものである。
【0010】
請求項6の発明の有機性廃棄物の臭気抑制方法は、有機性廃棄物に対して、請求項1〜5のいずれかの臭気抑制材を添加して置くことにより、前記有機性廃棄物の臭気を抑制することを特徴とするものである。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6の臭気抑制方法において、前記有機性廃棄物は、動物の糞尿、生ゴミ、有機性汚泥、堆肥、動植物の遺体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アルカリ化合物と鉄化合物からなる臭気抑制材を家畜排泄物、生ゴミ、有機性汚泥、堆肥等の有機性廃棄物に混入することでその臭気を短時間の内に効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0014】
[腐植について]
「腐植」とは、「動植物の遺体が土壌中で微生物などによって分解された後、新たに合成(縮合、重合)されてできた分子量が数万から数十万程度の褐色か暗黒色の非結晶性有機物」といわれている。腐植は多様な物質の集合体であり、図1に示すように、有機物をピロリン酸ナトリウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ性物質で抽出することにより得られる物質をいう。この腐植物質は単位炭素当たりの黒色味の強い二次的高分子化合物であり、腐植化の進行に伴って単位炭素当たりの黒色味の強い二次的高分子化合物が形成され、腐植の色調が黄色、赤褐色、黒褐色へと変わる。このため、腐植化度を示すのに黒色化の度合いを用いる。
【0015】
本発明に記載の臭気抑制において対象となる有機性廃棄物には、動物の糞尿、生ゴミ、有機性汚泥、堆肥および動植物の遺体、ならびにこれらの有機物を含む液体が含まれる。有機物を含む液体としては、例えば糞尿スラリーなどのスラリー状物質、および堆肥製造時において余剰水分が滲出したレキ汁などがある。
【0016】
腐植化の進行度合いを評価するために、腐植化度、腐植酸含量および腐植酸の形態分析を行った。試料は105℃の乾燥機で48時間以上通風乾燥し、乾燥後の試料を粉砕して調製した。
【0017】
腐植酸含量は、農林水産省が定める「泥炭および腐植酸質資材の試験方法」に準じて測定した。
【0018】
腐植化度については、泥炭の分解度指標として用いられる方法に準じて、ピロリン酸ナトリウム抽出液の波長550nmにおける吸光度を測定した。
【0019】
腐植酸の形態分析では、試料から水酸化ナトリウム溶液ないしピロリン酸ナトリウム・水酸化ナトリウム混液を用いて腐植を抽出後、抽出液を酸性化して腐植酸(沈殿部)とフルボ酸を分離し、得られた腐植酸を水酸化ナトリウム溶液で再溶解した溶液について、有機炭素含量と波長400および600nmにおける吸光度を測定した。腐植酸の分類法に基づき、色調係数(ΔlogK)と相対色度(RF)を算出した。色調係数(ΔlogK)は、波長400nmにおける吸光度と波長600nmにおける吸光度との差から次式に示すようにして求められる。
ΔlogK=ΔlogK400−ΔlogK600
(ただし、K400およびK600はそれぞれ、波長400nmおよび600nmにおける吸光度を示す。)
また、RFは腐植酸液の波長600nmにおける吸光度とKMnO4消費量ないし有機炭素濃度から求めることができる。
【0020】
色調係数(ΔlogK)と相対色度(RF)を指標とする腐植化の進行度合いを図2に示す。このRFとΔlogKとの相関によって腐植酸を分類することが可能である。領域Aは高腐植化度領域、領域Rpは低腐植化度領域、B、Pは中間領域である。一般に、腐植化の進行(腐植酸の黒色化と安定化)に伴い、ΔlogKは小さくなり、RF値は大きくなる。土壌に本法を適用した場合、ΔlogKが0.7以下、RF値が80以上であればA型腐植酸に分類され、黒ボク土等の黒色土壌が含む腐植化が極めて進んだ腐植酸を意味する。
【0021】
そして図3に示すように、有機性廃棄物の腐植化前の物質、つまり非腐植物質は、腐植化過程においてRp−P−Aの経路で腐植化が進み、あるいはRp−B−Aの経路で腐植化が進む。
【0022】
腐植酸の形態においては、水酸化ナトリウムによる抽出では遊離型腐植酸、また、ピロリン酸ナトリウム抽出では遊離型に加え、アルミニウム水酸化物や鉄酸化物等と複合体を形成している結合型腐植酸を抽出することができる。
【0023】
[腐植化促進材および臭気抑制材]
このような腐植物質を製造するには、自然界で有機物質の分解生成を待っていたのではあまりにも長時間を要する。ところが本願発明者らは、フリーストール牛舎より排出された家畜排泄物に対して堆肥化資材として再生紙製造プラントの排水処理汚泥であるペーパースラッジを高温処理することで得られるペーパースラッジ炭化物(PSC)、商品名ブラックライト(登録商標、道栄紙業株式会社製)を添加して混合し、一定周期で、堆積物をよく撹拌して積みなおしを行う、いわゆる切り返し作業を行い、性質変化を観察していたところ、PSC混合直後に臭気が著しく軽減することを発見した。また、家畜排泄物の温度は堆積後からゆるやかに上昇すること、また第2回目の切り返し後にも同様の温度上昇傾向を見た。しかも、温度は堆積物の底部に近いほど高く、水分率が高く還元状態に近いところでも発熱反応が起きていることを観察した。これと共に、PSCの添加、混入によって有機性廃棄物が発していた強烈な臭気が短時間の内に抑制されることも発見した。
【0024】
この現象から、本願発明者らは、PSCに含有されている何らかの成分が家畜排泄物のような有機性廃棄物に対して有効な腐植化促進作用をもたらすと共に、臭気抑制作用をもたらしているのではないかと仮定し、PSCの含有成分を分析し、かつ、その中から腐植化促進作用、臭気抑制作用を示す物質の特定を行った。
【0025】
PSCに含有される成分の分析結果は、図4の表1に示すようなものであった。PSC中には元素分析結果から酸化物に換算するとアルカリ化合物として酸化カルシウムを重量比15〜20%含有し、鉄化合物として酸化鉄を7〜20%含有していることが判明した。さらに、PSC中のカルシウムは古紙原料に填料として使われていた微細な炭酸カルシウムを主体とし、ごく一部が炭化の際に生石灰に変化している。鉄化合物は排水処理過程で無機凝集剤として使われていたポリ硫酸第二鉄([Fe2(OH)n(SO4)3−n/2)]mを由来とするものであり、炭化の際にその半量が非晶質鉄となっている。また、酸化鉄、元素鉄を含む。
【0026】
上述した腐植化過程でアルカリ化合物と鉄化合物は次のように作用すると推測される。アルカリ化合物は有機性廃棄物中に含まれている腐植物質やタンニンやリグニンなどのポリフェノール類(一次的な腐植酸様物質)を溶出させる。次に溶出された腐植物質やポリフェノール類、有機性廃棄物中に存在している有機酸が、鉄化合物の触媒作用を受け重合や縮合などの化学反応を起こす。そしてこの化学反応の際に、鉄化合物やアルカリ化合物に含有されている鉄やカルシウム、マグネシウムなどの金属が腐植物質生成の際の架橋物質として作用する。しかもこれら一連の反応は温度の上昇によってより促進されるが、鉄化合物は温度上昇作用にも寄与する。すなわち、アルカリ化合物および鉄化合物、特に酸化鉄が酸素を供給することにより有機性廃棄物中の還元状態を抑制する。ここで供給された酸素は有機性廃棄物中の物質の酸化反応ならびに好気的微生物反応を促進し発熱するとともに、アルカリ化合物は有機性廃棄物に含まれる酸性物質と中和反応することにより発熱する。これらの発熱量は微量であるが、家畜排泄物堆積物のような有機性廃棄物の大量の堆積により、その表面が強力な断熱材となって畜熱効果を高める。以上の発熱反応により腐植化は促進されることになる。
【0027】
上述の発熱反応については次のようなメカニズムが推測される。
【0028】
スラリー状糞尿や高水分糞尿では、大気中からの酸素供給が極めて少ない状態であり、また、糞尿内部の溶存酸素は微生物反応等により消費されるために、好気的な発酵は起りにくいといえる。しかし、腐植化促進材として非晶質鉄酸化物、結晶質鉄酸化物を添加した場合には、これらの酸化鉄化合物により糞尿内部液中に酸素が供給され、この酸素を利用する酵素反応および微生物の代謝反応を引き起こすことが推察される。
【0029】
すなわち、糞尿内部の溶存酸素濃度が低いときには、微生物の一部が生産する酵素による触媒作用によって鉄酸化物は酸素を放出し、二価に還元される。放出された酸素は糞尿中のセルロースや易分解製有機物の好気的微生物分解に利用されて、二酸化炭素と水、そして熱が得られる。一方で、酸素を放出し還元された二価鉄イオン(還元性鉄イオン)は、硫化水素やメチルメルカプタンなどの硫黄系臭気物質と化合して悪臭の発生を抑制するとともに、この二価鉄イオンは腐植物質と安定的な複合体を形成し、二次的な腐植酸の生成と腐植化の進行を促進する。
【0030】
このメカニズムを糞尿スラリーや堆肥滲出液などの水溶性腐植物質を含む液に適用した場合には、二価ないし三価の鉄イオンは水溶性腐植酸と安定的な腐植酸を形成し、その一部は沈殿する。
【0031】
この腐植化作用と共に臭気抑制作用のメカニズムについても解析した。それは図5に示すものである。
【0032】
(i) アルカリ化合物が有機性廃棄物の臭気成分である揮発性脂肪酸(VFA)等の臭気物質を中和して不活化する。
【0033】
(ii) 鉄化合物はメチルメルカプタンや硫化水素などの臭気の原因物質となる硫黄系化合物と化学反応(化合および吸着)を起こして不活化する。
【0034】
(iii) 鉄化合物は還元状態で2価鉄となり、VFAおよびイオウ(S)化合物と錯体を形成することにより安定化する。またイオウ化合物と化合して沈殿することにより不活化する。
【0035】
(iv) アルカリ性化合物と鉄化合物が腐植物質の生成を促進する。生成された腐植物質は、その機能によりアンモニア、アミン系臭気等を吸着し臭気の発生を抑制する。
【0036】
(v) 腐植物質生成の過程でVFAおよびイオウ化合物やアンモニア、アミン類等の臭気発生成分が腐植物質に取り込まれることにより臭気が抑制される。
【0037】
このような考察から、腐植化促進材として、また臭気抑制材として有用な物質は、アルカリ化合物と鉄化合物を主成分とするもので、アルカリ化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含み、水溶化した際にアルカリ性を示す化合物であり、特にカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムのうちの1つ又は複数のものの炭酸塩、水酸化物若しくは酸化物の少なくとも1つを含むものが好ましく、他方、鉄化合物は、非晶質の鉄化合物を含み、結晶質酸化鉄、結晶質水酸化鉄、二価又は三価の鉄塩、鉄錯化合物、鉄イオン、元素鉄のいずれかの単体、又はそれらの2種類以上との混合物が好ましい。
【0038】
本発明の臭気抑制材は、アルカリ化合物および鉄化合物を、無機物または有機物を主たる基質とする担体に担持または含浸させたものであってもよい。また、本発明の臭気抑制材は、上記担体に担持または含浸させたものを乾燥、焼成、炭化させて用いてもよい。前記無機物には、例えばゼオライトまたは粘土などがあり、前記有機物には、例えば木材チップまたはおがくずなどがある。
【0039】
上記臭気抑制材の添加量は、有機性廃棄物に対して少量、例えば1wt%であっても効果があるが、より多い方が好ましい。
【0040】
本発明の臭気抑制は鉄化合物のみを含有する臭気抑制材によっても達成しうるが、本発明に記載の臭気抑制材は、鉄化合物のみならずアルカリ化合物をも含むことが好ましい。
【0041】
[実験例1](乳牛糞尿堆肥化試験)
1日2回の除糞作業をしているフリーストール牛舎より排出された水分率85%の家畜排泄物25tに対し、堆肥化資材としてアルカリ化合物として炭酸カルシウムを乾燥重量比10〜20%含有し、鉄化合物を乾燥重量比5〜20%含有する腐植化促進材兼臭気抑制材を家畜排泄物の含水重量に対して2%、500kgを添加してよく混合した。なお、鉄化合物はその半量は非晶質形態であった。試験区と同等の排泄物を用いて対照区を設定した。臭気抑制材混合後は30日に一度、よく攪拌して積みなおしを行う、いわゆる切り返し作業を行った。
【0042】
臭気抑制材の混合直後に臭気が著しく軽減した。これは、臭気成分であるメチルメルカプタン、硫化水素などの硫黄系の臭気、および酪酸、イソ吉草酸、プロピオン酸などの揮発性脂肪酸系の臭気が腐植化促進材に含まれるアルカリ化合物によって中和されるとともに、鉄化合物による触媒作用により腐植物質と化合して取り込まれたことにより不活性となったためである。
【0043】
堆積時の温度(表面からの深度50cm)では、試験区では堆積後からゆるやかに上昇して、30日後の第1回切り返し時には約37℃に達した。一方で対照区では温度上昇がほとんど見られなかった。60日後の第2回切り返し時においても同様の傾向がみられた。試験区では温度が約40℃に達した。
【0044】
また温度は堆積物の底部に近いほど高く、水分率が高く還元状態に近いところでも発熱反応が起きていることから、腐植化促進材兼臭気抑制材に含有している鉄、特に酸化鉄成分による酸素供給が酸化反応による発熱を誘引するとともに、好気性微生物の活性を高めるものと考えられる。これらの発熱量は微量であるが、大量の堆積により家畜排泄物堆積物表面が強力な断熱材となっていることから畜熱効果が高かったと考えられる。
【0045】
90日後の第3回切り返しにおいては温度上昇は低く、むしろ低下傾向にあった。これは発熱に必要なアルカリ化合物、鉄化合物の消費によるものであると考えられる。
【0046】
[実験例2](乳牛糞尿堆肥化試験)
1日2回の除糞作業をしているフリーストール牛舎において、朝夕2回の除糞作業後に1日60kg/日・頭と想定した排泄糞尿総量の2%、1.2kg/日・頭に相当するPSCを散布した。散布されたPSCは、牛舎内の牛により攪拌されてよく糞尿に混合した。牛舎へのPSC散布は一週間毎に行った。
【0047】
上記の手順により、PSCを重量比2%含む牛糞尿25tをコンクリート製遮水床、屋根を有する構造の堆肥盤に堆積した。この時点での水分量は79.3%であった。また、同時にPSCを含まない同量の牛糞尿を堆積した対照区を設定した。対照区の水分量は83.7%であった。
【0048】
管理は1ヶ月毎に1度の切返し作業とし、堆積期間中の温度変化、および切返し時における臭気の状況を観察した。温度変化および臭気の状況の調査日は、8月10日、9月10日、10月13日および11月15日とした。臭気の変化は図9に、温度変化は図10に示した。なお、総合臭気の測定は、新コスモス電機製XP329IIIの臭気センサを使用した。そして表面臭気は堆積表面1cmの高さでの臭気、内部は30cm深度の臭気を示している。また、硫化水素、メチルメルカプタン、アンモニアは、ガステック社製の検知管を用いて測定した。
【0049】
腐植化促進の経過は、図6〜図8において堆積後1〜3ヶ月のサンプル写真にそれぞれ示す通りである。これらの写真において左側が試験区のサンプル(PSC区)、右側が対照区のサンプルである。図6〜図8から判るように、堆積後1〜3ヶ月ともPSC区(左側)は高い黒色度を示していた。堆積後2ヶ月目からは麦稈などの粗大有機物も柔らかくなり分解が進んでいるのが認められた。また、粗大有機物の柔軟化にともない空気層の少ない緻密な堆積状態となった。
【0050】
乳牛糞尿堆肥化試験の温度変化および臭気の状況の結果を以下に考察する。
【0051】
試験開始1ヶ月目の初回調査時(8月10日)にはPSC区の温度が43℃と高く、対照区では33℃と温度差が高いことから、ニオイセンサによる測定結果もPSC区の方が1.5倍程度高くなった。官能的にはPSC区はアンモニア臭気が強く感じられ、対照区では糞尿臭気が強く感じられた。これはPSC区が発酵による温度上昇を示しているからであり、アンモニアの揮発量が高かったことによるものと推察される。
【0052】
9月10日の調査では、明らかにPSC区の臭気が抑制されているのを切り返し作業中に実感することができた。ニオイセンサによる測定結果も、堆積物内部の臭気で対照区933に対し、PSC区404と半分以下の数値であった。検知管による硫化水素の測定では、対照区でわずかに検出された。アンモニアはPSC区が高かったが、これは発酵による易分解性有機物が無機化する際にアンモニアを生成し、揮発しているためと考えられる。
【0053】
10月13日の調査では、PSC区と対照区の温度が逆転し、対照区の方が高い(37℃)温度を示した。官能的にはPSC区ではほとんど不快な糞尿臭気は感じられなかったが、対照区は著しい糞尿臭気を放っており、アンモニアの刺激臭も強くなった。
【0054】
11月15日の調査では、PSC区、対照区双方とも、発酵温度の低下と外気温の低下の影響もあり、揮発性の悪臭はあまり感じられなかった。特にPSC区では、堆肥盤の雰囲気や堆積物表面の臭気はほぼ無臭に近い状態であった。内部の臭気は、対照区では10月13日測定時の臭気と同程度であるのに対し、PSC区では10月13日の測定値からほぼ半減し、対照区の1/3程度まで臭気が低下した。対照区内部では嫌気的な発酵が始まっており、内部から発生するガスの臭気は700〜800と極めて高かった。対照区における硫化水素臭気は、10月13日の測定値の10倍の8ppmとなった。PSC区では硫化水素は検出されなかった。またアンモニアは、両試験区とも10月13日の調査時よりも低下した。これは、発酵温度の低下と外気温の低下によるものと考えられる。
【0055】
両試験区における堆肥化および腐植化の状況は、明らかにPSC区の堆肥化が進行しており、腐植化の進行により黒色化したことが確認されている(図6から図8参照)。堆肥の植物に対する生長阻害性をみた幼植物(コマツナ)の栽培では、PSC区の糞尿で低い確率ながら発芽がみられ、腐植化の進行による生長阻害因子の抑制が示唆されている。
【0056】
今回の試験で供試した糞尿は水分率が80%と非常に高く、対照区でみられたようにほとんど堆肥化の進行がみられないとされてきた。しかし、PSCの添加により堆肥化のプロセスに好転的な反応が見られたことは、今後の糞尿の処理あるいは有効利用の観点からも非常に興味深い。
【0057】
[実験例3](豚糞尿堆肥化試験)
新鮮な豚糞に対しPSCを重量比2%の割合でよく混合した。この状態では水分含量が高いために流動性が高く堆積不可能であるため、1週間毎にモミ殻と容量比2:1で混合し、堆積可能な硬さに調整してから堆積ピットに入れた。管理上1ヶ月毎にピットを移動させているが、これを切り返しとした。堆積後の堆肥の水分量は約75〜80%であった。同時にPSCを混合しない対照区を設定した。堆積日は9月12日であり、調査日は9月15日、10月9日、11月6日、12月4日および1月17日とした。測定した臭気の変化は図11に、温度変化は図12に示した。
【0058】
豚糞尿堆肥化試験の温度変化および臭気の状況の結果を以下に考察する。
【0059】
豚糞は乳牛と比較して刺激臭が強く、堆積直後のニオイセンサのデータでは乳牛の7〜10倍の数値を示した。堆積後3日目にあたる9月15日の調査では両試験区とも著しい悪臭を放っていたが、ニオイセンサのデータにおいてはPSC区の臭気は対照区の臭気と比較して3割程度抑制されていた。また、PSC区は対照区において高濃度で検出されたメチルメルカプタンおよび硫化水素などの硫黄系臭気が検出されず、官能検査におけるニオイも硫黄系臭気とは異質なものであった。アンモニアはPSC区が100ppmであるのに対し、対照区では25ppmであった。調査日周辺の堆肥温度はPSC区のほうが対照区よりも高く、堆肥温度が堆肥化の進行に少なからず影響を及ぼしているものと考えられる。
【0060】
10月9日の調査では、堆積直後と比較して内部臭気が60%程度減少した。一度目の切り返しの後、両試験区とも温度が著しく上昇した。特にPSC区では65℃まで温度が上昇し、対照区と比較して6〜7℃高かった。一方、アンモニアは温度の低い対照区の方が高くなり、堆肥化の過程での反応プロセスの差異をうかがわせている。
【0061】
11月6日の調査では、PSC区の堆肥温度が70℃を超え、対照区との温度差が10℃以上となった。臭気は両試験区とも一定の割合で低下したが、アンモニアについては対照区が検知管の検出上限である200ppmを超えた数値であるのに対し、PSC区は10月9日の調査と比較してわずかに減少した。
【0062】
12月4日の調査では、PSC区の堆肥温度はほぼピークを超え、温度が低下に転じた。しかし、切り返し後には再び70℃以上まで上昇した。この時点で、PSC区の臭気は官能的には糞尿臭は感じられず、アンモニアの刺激臭のみが強く感じられた。PSC区のアンモニア濃度はさらに低下し100ppmとなったが、対照区の濃度は相変わらず200ppm以上を示していた。
【0063】
堆積後4ヶ月目にあたる1月17日の調査では、PSC区はほぼ完熟に近い堆肥となった。アンモニア濃度は36ppmと低く、対照区の200ppm超とは対称的な結果となった。ニオイセンサによる内部臭気のデータは260まで低下し、家畜舎の雰囲気に近づいた。対照区でも堆肥温度の上昇には減速感がみられるようになった。
【0064】
1月17日の時点での堆肥の分析結果を図13に示す。両試験区間の温度差により、PSC区は対照区と比較して著しく水分が低下し、堆肥に触れてもべたつくようなことがなかった。窒素の形態分析の結果、PSC区の硝酸態窒素が著しく高く検出された。一方、対照区も60℃以上に温度上昇し、従来の堆肥製造上の観点からみれば良好な発酵をしたともいえる。しかし、両試験区においてできた堆肥は、上記堆肥の分析の結果(図13)にみられるように全く異質なものであった。
【0065】
[実験例4](鶏糞尿堆肥化試験)
新鮮な鶏糞11.6tに対しPSCを重量比2.5%の割合で添加してよく混合した。同じ鶏糞を用いてPSCを混合しない対照区を設定した。管理は慣行に従い、原則的に切り返しは行わず、必要に応じて切り返しを行った。鶏糞の堆積日は9月12日、調査日は9月16日、10月9日、11月6日、12月4日および1月17日とした。測定した臭気の変化は図14に示す。
【0066】
牛糞や豚糞の場合と異なり、PSC区では堆肥温度の上昇がみられず、対照区でも堆積直後に温度上昇がみられただけで、両試験区とも堆肥温度は試験期間中低下傾向にあった。12月13日に一度切り返しを行ったが、両試験区とも再び温度が上昇することはなかった。
【0067】
臭気測定結果をみると、堆積直後(9月16日)の硫化水素およびメチルメルカプタンの臭気抑制効果が著しい。一方、ニオイセンサによる総合臭気の測定結果ではPSC区において高くなっており、著しい臭気抑制反応がPSC混合直後から起っているものと推測される。
【0068】
臭気測定結果では、試験期間中通じてPSC区におけるニオイセンサの数値は対照区の1/2程度であった。対照区では堆積後3ヶ月間に硫化水素の発生がみられたが、PSC区では低いレベルに抑制されていた。アンモニアは、堆積当初には対照区における値がPSC区における値を上回ったが、その後両試験区間で大きな差は見られなかった。
【0069】
実験例4で使用した鶏糞は敷料をほとんど含まず、水分量も比較的低めであり、鶏糞特有の粘ちょう性が高い性状であった。投入したPSCはよく混合されたが、鶏糞中で余剰水分を吸水し鶏糞そのものが固結して臭気抑制反応が制限されたものと考えられる。
【0070】
上記の実験例1〜4の結果から、PSCには家畜糞尿の悪臭を著しく抑制する働きがあることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、一般的な腐植の分別の説明図である。
【図2】図2は、色調係数(ΔlogK)と相対色度(RF)を指標とする腐植化の進行度合いの説明図である。
【図3】図3は、腐植化過程の説明図である。
【図4】図4は、PSCの分析結果を示す表1である。
【図5】図5は、本発明の腐植化促進兼臭気抑制材による腐植化促進作用と臭気抑制作用の説明図である。
【図6】図6は、実験例2における腐植化実験開始1ヶ月後の腐植化サンプル(左側)と非腐植化サンプル(右側)との対比写真である。
【図7】図7は、本発明の実験例2における腐植化実験開始2ヶ月後の腐植化サンプル(左側)と非腐植化サンプル(右側)との対比写真である。
【図8】図8は、本発明の実験例2における腐植化実験開始3ヶ月後の腐植化サンプル(左側)と非腐植化サンプル(右側)との対比写真である。
【図9】図9は、本発明の実験例2(乳牛糞尿堆肥化試験)における臭気測定結果を示す表である。
【図10】図10は、本発明の実験例2(乳牛糞尿堆肥化試験)における温度変化を示したグラフである。
【図11】図11は、本発明の実験例3(豚糞尿堆肥化試験)における臭気測定結果を示す表である。
【図12】図12は、本発明の実験例3(乳牛糞尿堆肥化試験)における温度変化を示したグラフである。
【図13】図13は、本発明の実験例3(乳牛糞尿堆肥化試験)における堆肥の分析結果を示す表である。
【図14】図14は、本発明の実験例4(鶏糞尿堆肥化試験)における臭気測定結果を示す表である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気抑制材及び有機性廃棄物の臭気抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動植物の遺体や糞尿、生ゴミ、有機性汚泥、堆肥などの有機物が発する臭いは強烈であり、腐敗が進むとさらに悪臭は強まり、公害問題ともなっているが、畜産農家等大量に発生する有機性廃棄物の臭気抑制のための効果的な方策は見出されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明者らは、家畜排泄物の腐植化を促進する材料の検討を行い、アルカリ化合物と鉄化合物を同時に家畜排泄物に混合することにより、腐植化を促進することができることを発見した。それと共に、当該腐植化促進材を家畜排泄物に添加、混入することによって短時間の内に強烈な臭気が抑制されることを発見した。
【0004】
本発明はこの技術的な発見に根ざし、有機性廃棄物の臭気を効果的に抑制できる臭気抑制材及び有機性廃棄物の臭気抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明の臭気抑制材は、アルカリ化合物と非晶質鉄化合物とを含有することを特徴とするものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の臭気抑制材において、前記アルカリ化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含み、水溶化した際にアルカリ性を示す化合物であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1の臭気抑制材において、前記アルカリ化合物は、カルシウム、マグネシウム、カリウム又はナトリウムのうちのいずれか1又は複数のものの炭酸塩、水酸化物若しくは酸化物のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とするものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1の臭気抑制材において、前記非晶質鉄化合物は、非晶質酸化鉄または非晶質水酸化鉄を含み、結晶質酸化鉄、結晶質水酸化鉄、二価又は三価の鉄塩、鉄錯化合物、鉄イオン、元素鉄のいずれかの単体、又はそれらの2種類以上との混合物であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の臭気抑制材において、前記アルカリ化合物および前記鉄化合物を、無機物または有機物を主たる基質とする担体に担持または含浸させたものである。
【0010】
請求項6の発明の有機性廃棄物の臭気抑制方法は、有機性廃棄物に対して、請求項1〜5のいずれかの臭気抑制材を添加して置くことにより、前記有機性廃棄物の臭気を抑制することを特徴とするものである。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6の臭気抑制方法において、前記有機性廃棄物は、動物の糞尿、生ゴミ、有機性汚泥、堆肥、動植物の遺体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アルカリ化合物と鉄化合物からなる臭気抑制材を家畜排泄物、生ゴミ、有機性汚泥、堆肥等の有機性廃棄物に混入することでその臭気を短時間の内に効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0014】
[腐植について]
「腐植」とは、「動植物の遺体が土壌中で微生物などによって分解された後、新たに合成(縮合、重合)されてできた分子量が数万から数十万程度の褐色か暗黒色の非結晶性有機物」といわれている。腐植は多様な物質の集合体であり、図1に示すように、有機物をピロリン酸ナトリウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ性物質で抽出することにより得られる物質をいう。この腐植物質は単位炭素当たりの黒色味の強い二次的高分子化合物であり、腐植化の進行に伴って単位炭素当たりの黒色味の強い二次的高分子化合物が形成され、腐植の色調が黄色、赤褐色、黒褐色へと変わる。このため、腐植化度を示すのに黒色化の度合いを用いる。
【0015】
本発明に記載の臭気抑制において対象となる有機性廃棄物には、動物の糞尿、生ゴミ、有機性汚泥、堆肥および動植物の遺体、ならびにこれらの有機物を含む液体が含まれる。有機物を含む液体としては、例えば糞尿スラリーなどのスラリー状物質、および堆肥製造時において余剰水分が滲出したレキ汁などがある。
【0016】
腐植化の進行度合いを評価するために、腐植化度、腐植酸含量および腐植酸の形態分析を行った。試料は105℃の乾燥機で48時間以上通風乾燥し、乾燥後の試料を粉砕して調製した。
【0017】
腐植酸含量は、農林水産省が定める「泥炭および腐植酸質資材の試験方法」に準じて測定した。
【0018】
腐植化度については、泥炭の分解度指標として用いられる方法に準じて、ピロリン酸ナトリウム抽出液の波長550nmにおける吸光度を測定した。
【0019】
腐植酸の形態分析では、試料から水酸化ナトリウム溶液ないしピロリン酸ナトリウム・水酸化ナトリウム混液を用いて腐植を抽出後、抽出液を酸性化して腐植酸(沈殿部)とフルボ酸を分離し、得られた腐植酸を水酸化ナトリウム溶液で再溶解した溶液について、有機炭素含量と波長400および600nmにおける吸光度を測定した。腐植酸の分類法に基づき、色調係数(ΔlogK)と相対色度(RF)を算出した。色調係数(ΔlogK)は、波長400nmにおける吸光度と波長600nmにおける吸光度との差から次式に示すようにして求められる。
ΔlogK=ΔlogK400−ΔlogK600
(ただし、K400およびK600はそれぞれ、波長400nmおよび600nmにおける吸光度を示す。)
また、RFは腐植酸液の波長600nmにおける吸光度とKMnO4消費量ないし有機炭素濃度から求めることができる。
【0020】
色調係数(ΔlogK)と相対色度(RF)を指標とする腐植化の進行度合いを図2に示す。このRFとΔlogKとの相関によって腐植酸を分類することが可能である。領域Aは高腐植化度領域、領域Rpは低腐植化度領域、B、Pは中間領域である。一般に、腐植化の進行(腐植酸の黒色化と安定化)に伴い、ΔlogKは小さくなり、RF値は大きくなる。土壌に本法を適用した場合、ΔlogKが0.7以下、RF値が80以上であればA型腐植酸に分類され、黒ボク土等の黒色土壌が含む腐植化が極めて進んだ腐植酸を意味する。
【0021】
そして図3に示すように、有機性廃棄物の腐植化前の物質、つまり非腐植物質は、腐植化過程においてRp−P−Aの経路で腐植化が進み、あるいはRp−B−Aの経路で腐植化が進む。
【0022】
腐植酸の形態においては、水酸化ナトリウムによる抽出では遊離型腐植酸、また、ピロリン酸ナトリウム抽出では遊離型に加え、アルミニウム水酸化物や鉄酸化物等と複合体を形成している結合型腐植酸を抽出することができる。
【0023】
[腐植化促進材および臭気抑制材]
このような腐植物質を製造するには、自然界で有機物質の分解生成を待っていたのではあまりにも長時間を要する。ところが本願発明者らは、フリーストール牛舎より排出された家畜排泄物に対して堆肥化資材として再生紙製造プラントの排水処理汚泥であるペーパースラッジを高温処理することで得られるペーパースラッジ炭化物(PSC)、商品名ブラックライト(登録商標、道栄紙業株式会社製)を添加して混合し、一定周期で、堆積物をよく撹拌して積みなおしを行う、いわゆる切り返し作業を行い、性質変化を観察していたところ、PSC混合直後に臭気が著しく軽減することを発見した。また、家畜排泄物の温度は堆積後からゆるやかに上昇すること、また第2回目の切り返し後にも同様の温度上昇傾向を見た。しかも、温度は堆積物の底部に近いほど高く、水分率が高く還元状態に近いところでも発熱反応が起きていることを観察した。これと共に、PSCの添加、混入によって有機性廃棄物が発していた強烈な臭気が短時間の内に抑制されることも発見した。
【0024】
この現象から、本願発明者らは、PSCに含有されている何らかの成分が家畜排泄物のような有機性廃棄物に対して有効な腐植化促進作用をもたらすと共に、臭気抑制作用をもたらしているのではないかと仮定し、PSCの含有成分を分析し、かつ、その中から腐植化促進作用、臭気抑制作用を示す物質の特定を行った。
【0025】
PSCに含有される成分の分析結果は、図4の表1に示すようなものであった。PSC中には元素分析結果から酸化物に換算するとアルカリ化合物として酸化カルシウムを重量比15〜20%含有し、鉄化合物として酸化鉄を7〜20%含有していることが判明した。さらに、PSC中のカルシウムは古紙原料に填料として使われていた微細な炭酸カルシウムを主体とし、ごく一部が炭化の際に生石灰に変化している。鉄化合物は排水処理過程で無機凝集剤として使われていたポリ硫酸第二鉄([Fe2(OH)n(SO4)3−n/2)]mを由来とするものであり、炭化の際にその半量が非晶質鉄となっている。また、酸化鉄、元素鉄を含む。
【0026】
上述した腐植化過程でアルカリ化合物と鉄化合物は次のように作用すると推測される。アルカリ化合物は有機性廃棄物中に含まれている腐植物質やタンニンやリグニンなどのポリフェノール類(一次的な腐植酸様物質)を溶出させる。次に溶出された腐植物質やポリフェノール類、有機性廃棄物中に存在している有機酸が、鉄化合物の触媒作用を受け重合や縮合などの化学反応を起こす。そしてこの化学反応の際に、鉄化合物やアルカリ化合物に含有されている鉄やカルシウム、マグネシウムなどの金属が腐植物質生成の際の架橋物質として作用する。しかもこれら一連の反応は温度の上昇によってより促進されるが、鉄化合物は温度上昇作用にも寄与する。すなわち、アルカリ化合物および鉄化合物、特に酸化鉄が酸素を供給することにより有機性廃棄物中の還元状態を抑制する。ここで供給された酸素は有機性廃棄物中の物質の酸化反応ならびに好気的微生物反応を促進し発熱するとともに、アルカリ化合物は有機性廃棄物に含まれる酸性物質と中和反応することにより発熱する。これらの発熱量は微量であるが、家畜排泄物堆積物のような有機性廃棄物の大量の堆積により、その表面が強力な断熱材となって畜熱効果を高める。以上の発熱反応により腐植化は促進されることになる。
【0027】
上述の発熱反応については次のようなメカニズムが推測される。
【0028】
スラリー状糞尿や高水分糞尿では、大気中からの酸素供給が極めて少ない状態であり、また、糞尿内部の溶存酸素は微生物反応等により消費されるために、好気的な発酵は起りにくいといえる。しかし、腐植化促進材として非晶質鉄酸化物、結晶質鉄酸化物を添加した場合には、これらの酸化鉄化合物により糞尿内部液中に酸素が供給され、この酸素を利用する酵素反応および微生物の代謝反応を引き起こすことが推察される。
【0029】
すなわち、糞尿内部の溶存酸素濃度が低いときには、微生物の一部が生産する酵素による触媒作用によって鉄酸化物は酸素を放出し、二価に還元される。放出された酸素は糞尿中のセルロースや易分解製有機物の好気的微生物分解に利用されて、二酸化炭素と水、そして熱が得られる。一方で、酸素を放出し還元された二価鉄イオン(還元性鉄イオン)は、硫化水素やメチルメルカプタンなどの硫黄系臭気物質と化合して悪臭の発生を抑制するとともに、この二価鉄イオンは腐植物質と安定的な複合体を形成し、二次的な腐植酸の生成と腐植化の進行を促進する。
【0030】
このメカニズムを糞尿スラリーや堆肥滲出液などの水溶性腐植物質を含む液に適用した場合には、二価ないし三価の鉄イオンは水溶性腐植酸と安定的な腐植酸を形成し、その一部は沈殿する。
【0031】
この腐植化作用と共に臭気抑制作用のメカニズムについても解析した。それは図5に示すものである。
【0032】
(i) アルカリ化合物が有機性廃棄物の臭気成分である揮発性脂肪酸(VFA)等の臭気物質を中和して不活化する。
【0033】
(ii) 鉄化合物はメチルメルカプタンや硫化水素などの臭気の原因物質となる硫黄系化合物と化学反応(化合および吸着)を起こして不活化する。
【0034】
(iii) 鉄化合物は還元状態で2価鉄となり、VFAおよびイオウ(S)化合物と錯体を形成することにより安定化する。またイオウ化合物と化合して沈殿することにより不活化する。
【0035】
(iv) アルカリ性化合物と鉄化合物が腐植物質の生成を促進する。生成された腐植物質は、その機能によりアンモニア、アミン系臭気等を吸着し臭気の発生を抑制する。
【0036】
(v) 腐植物質生成の過程でVFAおよびイオウ化合物やアンモニア、アミン類等の臭気発生成分が腐植物質に取り込まれることにより臭気が抑制される。
【0037】
このような考察から、腐植化促進材として、また臭気抑制材として有用な物質は、アルカリ化合物と鉄化合物を主成分とするもので、アルカリ化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含み、水溶化した際にアルカリ性を示す化合物であり、特にカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムのうちの1つ又は複数のものの炭酸塩、水酸化物若しくは酸化物の少なくとも1つを含むものが好ましく、他方、鉄化合物は、非晶質の鉄化合物を含み、結晶質酸化鉄、結晶質水酸化鉄、二価又は三価の鉄塩、鉄錯化合物、鉄イオン、元素鉄のいずれかの単体、又はそれらの2種類以上との混合物が好ましい。
【0038】
本発明の臭気抑制材は、アルカリ化合物および鉄化合物を、無機物または有機物を主たる基質とする担体に担持または含浸させたものであってもよい。また、本発明の臭気抑制材は、上記担体に担持または含浸させたものを乾燥、焼成、炭化させて用いてもよい。前記無機物には、例えばゼオライトまたは粘土などがあり、前記有機物には、例えば木材チップまたはおがくずなどがある。
【0039】
上記臭気抑制材の添加量は、有機性廃棄物に対して少量、例えば1wt%であっても効果があるが、より多い方が好ましい。
【0040】
本発明の臭気抑制は鉄化合物のみを含有する臭気抑制材によっても達成しうるが、本発明に記載の臭気抑制材は、鉄化合物のみならずアルカリ化合物をも含むことが好ましい。
【0041】
[実験例1](乳牛糞尿堆肥化試験)
1日2回の除糞作業をしているフリーストール牛舎より排出された水分率85%の家畜排泄物25tに対し、堆肥化資材としてアルカリ化合物として炭酸カルシウムを乾燥重量比10〜20%含有し、鉄化合物を乾燥重量比5〜20%含有する腐植化促進材兼臭気抑制材を家畜排泄物の含水重量に対して2%、500kgを添加してよく混合した。なお、鉄化合物はその半量は非晶質形態であった。試験区と同等の排泄物を用いて対照区を設定した。臭気抑制材混合後は30日に一度、よく攪拌して積みなおしを行う、いわゆる切り返し作業を行った。
【0042】
臭気抑制材の混合直後に臭気が著しく軽減した。これは、臭気成分であるメチルメルカプタン、硫化水素などの硫黄系の臭気、および酪酸、イソ吉草酸、プロピオン酸などの揮発性脂肪酸系の臭気が腐植化促進材に含まれるアルカリ化合物によって中和されるとともに、鉄化合物による触媒作用により腐植物質と化合して取り込まれたことにより不活性となったためである。
【0043】
堆積時の温度(表面からの深度50cm)では、試験区では堆積後からゆるやかに上昇して、30日後の第1回切り返し時には約37℃に達した。一方で対照区では温度上昇がほとんど見られなかった。60日後の第2回切り返し時においても同様の傾向がみられた。試験区では温度が約40℃に達した。
【0044】
また温度は堆積物の底部に近いほど高く、水分率が高く還元状態に近いところでも発熱反応が起きていることから、腐植化促進材兼臭気抑制材に含有している鉄、特に酸化鉄成分による酸素供給が酸化反応による発熱を誘引するとともに、好気性微生物の活性を高めるものと考えられる。これらの発熱量は微量であるが、大量の堆積により家畜排泄物堆積物表面が強力な断熱材となっていることから畜熱効果が高かったと考えられる。
【0045】
90日後の第3回切り返しにおいては温度上昇は低く、むしろ低下傾向にあった。これは発熱に必要なアルカリ化合物、鉄化合物の消費によるものであると考えられる。
【0046】
[実験例2](乳牛糞尿堆肥化試験)
1日2回の除糞作業をしているフリーストール牛舎において、朝夕2回の除糞作業後に1日60kg/日・頭と想定した排泄糞尿総量の2%、1.2kg/日・頭に相当するPSCを散布した。散布されたPSCは、牛舎内の牛により攪拌されてよく糞尿に混合した。牛舎へのPSC散布は一週間毎に行った。
【0047】
上記の手順により、PSCを重量比2%含む牛糞尿25tをコンクリート製遮水床、屋根を有する構造の堆肥盤に堆積した。この時点での水分量は79.3%であった。また、同時にPSCを含まない同量の牛糞尿を堆積した対照区を設定した。対照区の水分量は83.7%であった。
【0048】
管理は1ヶ月毎に1度の切返し作業とし、堆積期間中の温度変化、および切返し時における臭気の状況を観察した。温度変化および臭気の状況の調査日は、8月10日、9月10日、10月13日および11月15日とした。臭気の変化は図9に、温度変化は図10に示した。なお、総合臭気の測定は、新コスモス電機製XP329IIIの臭気センサを使用した。そして表面臭気は堆積表面1cmの高さでの臭気、内部は30cm深度の臭気を示している。また、硫化水素、メチルメルカプタン、アンモニアは、ガステック社製の検知管を用いて測定した。
【0049】
腐植化促進の経過は、図6〜図8において堆積後1〜3ヶ月のサンプル写真にそれぞれ示す通りである。これらの写真において左側が試験区のサンプル(PSC区)、右側が対照区のサンプルである。図6〜図8から判るように、堆積後1〜3ヶ月ともPSC区(左側)は高い黒色度を示していた。堆積後2ヶ月目からは麦稈などの粗大有機物も柔らかくなり分解が進んでいるのが認められた。また、粗大有機物の柔軟化にともない空気層の少ない緻密な堆積状態となった。
【0050】
乳牛糞尿堆肥化試験の温度変化および臭気の状況の結果を以下に考察する。
【0051】
試験開始1ヶ月目の初回調査時(8月10日)にはPSC区の温度が43℃と高く、対照区では33℃と温度差が高いことから、ニオイセンサによる測定結果もPSC区の方が1.5倍程度高くなった。官能的にはPSC区はアンモニア臭気が強く感じられ、対照区では糞尿臭気が強く感じられた。これはPSC区が発酵による温度上昇を示しているからであり、アンモニアの揮発量が高かったことによるものと推察される。
【0052】
9月10日の調査では、明らかにPSC区の臭気が抑制されているのを切り返し作業中に実感することができた。ニオイセンサによる測定結果も、堆積物内部の臭気で対照区933に対し、PSC区404と半分以下の数値であった。検知管による硫化水素の測定では、対照区でわずかに検出された。アンモニアはPSC区が高かったが、これは発酵による易分解性有機物が無機化する際にアンモニアを生成し、揮発しているためと考えられる。
【0053】
10月13日の調査では、PSC区と対照区の温度が逆転し、対照区の方が高い(37℃)温度を示した。官能的にはPSC区ではほとんど不快な糞尿臭気は感じられなかったが、対照区は著しい糞尿臭気を放っており、アンモニアの刺激臭も強くなった。
【0054】
11月15日の調査では、PSC区、対照区双方とも、発酵温度の低下と外気温の低下の影響もあり、揮発性の悪臭はあまり感じられなかった。特にPSC区では、堆肥盤の雰囲気や堆積物表面の臭気はほぼ無臭に近い状態であった。内部の臭気は、対照区では10月13日測定時の臭気と同程度であるのに対し、PSC区では10月13日の測定値からほぼ半減し、対照区の1/3程度まで臭気が低下した。対照区内部では嫌気的な発酵が始まっており、内部から発生するガスの臭気は700〜800と極めて高かった。対照区における硫化水素臭気は、10月13日の測定値の10倍の8ppmとなった。PSC区では硫化水素は検出されなかった。またアンモニアは、両試験区とも10月13日の調査時よりも低下した。これは、発酵温度の低下と外気温の低下によるものと考えられる。
【0055】
両試験区における堆肥化および腐植化の状況は、明らかにPSC区の堆肥化が進行しており、腐植化の進行により黒色化したことが確認されている(図6から図8参照)。堆肥の植物に対する生長阻害性をみた幼植物(コマツナ)の栽培では、PSC区の糞尿で低い確率ながら発芽がみられ、腐植化の進行による生長阻害因子の抑制が示唆されている。
【0056】
今回の試験で供試した糞尿は水分率が80%と非常に高く、対照区でみられたようにほとんど堆肥化の進行がみられないとされてきた。しかし、PSCの添加により堆肥化のプロセスに好転的な反応が見られたことは、今後の糞尿の処理あるいは有効利用の観点からも非常に興味深い。
【0057】
[実験例3](豚糞尿堆肥化試験)
新鮮な豚糞に対しPSCを重量比2%の割合でよく混合した。この状態では水分含量が高いために流動性が高く堆積不可能であるため、1週間毎にモミ殻と容量比2:1で混合し、堆積可能な硬さに調整してから堆積ピットに入れた。管理上1ヶ月毎にピットを移動させているが、これを切り返しとした。堆積後の堆肥の水分量は約75〜80%であった。同時にPSCを混合しない対照区を設定した。堆積日は9月12日であり、調査日は9月15日、10月9日、11月6日、12月4日および1月17日とした。測定した臭気の変化は図11に、温度変化は図12に示した。
【0058】
豚糞尿堆肥化試験の温度変化および臭気の状況の結果を以下に考察する。
【0059】
豚糞は乳牛と比較して刺激臭が強く、堆積直後のニオイセンサのデータでは乳牛の7〜10倍の数値を示した。堆積後3日目にあたる9月15日の調査では両試験区とも著しい悪臭を放っていたが、ニオイセンサのデータにおいてはPSC区の臭気は対照区の臭気と比較して3割程度抑制されていた。また、PSC区は対照区において高濃度で検出されたメチルメルカプタンおよび硫化水素などの硫黄系臭気が検出されず、官能検査におけるニオイも硫黄系臭気とは異質なものであった。アンモニアはPSC区が100ppmであるのに対し、対照区では25ppmであった。調査日周辺の堆肥温度はPSC区のほうが対照区よりも高く、堆肥温度が堆肥化の進行に少なからず影響を及ぼしているものと考えられる。
【0060】
10月9日の調査では、堆積直後と比較して内部臭気が60%程度減少した。一度目の切り返しの後、両試験区とも温度が著しく上昇した。特にPSC区では65℃まで温度が上昇し、対照区と比較して6〜7℃高かった。一方、アンモニアは温度の低い対照区の方が高くなり、堆肥化の過程での反応プロセスの差異をうかがわせている。
【0061】
11月6日の調査では、PSC区の堆肥温度が70℃を超え、対照区との温度差が10℃以上となった。臭気は両試験区とも一定の割合で低下したが、アンモニアについては対照区が検知管の検出上限である200ppmを超えた数値であるのに対し、PSC区は10月9日の調査と比較してわずかに減少した。
【0062】
12月4日の調査では、PSC区の堆肥温度はほぼピークを超え、温度が低下に転じた。しかし、切り返し後には再び70℃以上まで上昇した。この時点で、PSC区の臭気は官能的には糞尿臭は感じられず、アンモニアの刺激臭のみが強く感じられた。PSC区のアンモニア濃度はさらに低下し100ppmとなったが、対照区の濃度は相変わらず200ppm以上を示していた。
【0063】
堆積後4ヶ月目にあたる1月17日の調査では、PSC区はほぼ完熟に近い堆肥となった。アンモニア濃度は36ppmと低く、対照区の200ppm超とは対称的な結果となった。ニオイセンサによる内部臭気のデータは260まで低下し、家畜舎の雰囲気に近づいた。対照区でも堆肥温度の上昇には減速感がみられるようになった。
【0064】
1月17日の時点での堆肥の分析結果を図13に示す。両試験区間の温度差により、PSC区は対照区と比較して著しく水分が低下し、堆肥に触れてもべたつくようなことがなかった。窒素の形態分析の結果、PSC区の硝酸態窒素が著しく高く検出された。一方、対照区も60℃以上に温度上昇し、従来の堆肥製造上の観点からみれば良好な発酵をしたともいえる。しかし、両試験区においてできた堆肥は、上記堆肥の分析の結果(図13)にみられるように全く異質なものであった。
【0065】
[実験例4](鶏糞尿堆肥化試験)
新鮮な鶏糞11.6tに対しPSCを重量比2.5%の割合で添加してよく混合した。同じ鶏糞を用いてPSCを混合しない対照区を設定した。管理は慣行に従い、原則的に切り返しは行わず、必要に応じて切り返しを行った。鶏糞の堆積日は9月12日、調査日は9月16日、10月9日、11月6日、12月4日および1月17日とした。測定した臭気の変化は図14に示す。
【0066】
牛糞や豚糞の場合と異なり、PSC区では堆肥温度の上昇がみられず、対照区でも堆積直後に温度上昇がみられただけで、両試験区とも堆肥温度は試験期間中低下傾向にあった。12月13日に一度切り返しを行ったが、両試験区とも再び温度が上昇することはなかった。
【0067】
臭気測定結果をみると、堆積直後(9月16日)の硫化水素およびメチルメルカプタンの臭気抑制効果が著しい。一方、ニオイセンサによる総合臭気の測定結果ではPSC区において高くなっており、著しい臭気抑制反応がPSC混合直後から起っているものと推測される。
【0068】
臭気測定結果では、試験期間中通じてPSC区におけるニオイセンサの数値は対照区の1/2程度であった。対照区では堆積後3ヶ月間に硫化水素の発生がみられたが、PSC区では低いレベルに抑制されていた。アンモニアは、堆積当初には対照区における値がPSC区における値を上回ったが、その後両試験区間で大きな差は見られなかった。
【0069】
実験例4で使用した鶏糞は敷料をほとんど含まず、水分量も比較的低めであり、鶏糞特有の粘ちょう性が高い性状であった。投入したPSCはよく混合されたが、鶏糞中で余剰水分を吸水し鶏糞そのものが固結して臭気抑制反応が制限されたものと考えられる。
【0070】
上記の実験例1〜4の結果から、PSCには家畜糞尿の悪臭を著しく抑制する働きがあることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、一般的な腐植の分別の説明図である。
【図2】図2は、色調係数(ΔlogK)と相対色度(RF)を指標とする腐植化の進行度合いの説明図である。
【図3】図3は、腐植化過程の説明図である。
【図4】図4は、PSCの分析結果を示す表1である。
【図5】図5は、本発明の腐植化促進兼臭気抑制材による腐植化促進作用と臭気抑制作用の説明図である。
【図6】図6は、実験例2における腐植化実験開始1ヶ月後の腐植化サンプル(左側)と非腐植化サンプル(右側)との対比写真である。
【図7】図7は、本発明の実験例2における腐植化実験開始2ヶ月後の腐植化サンプル(左側)と非腐植化サンプル(右側)との対比写真である。
【図8】図8は、本発明の実験例2における腐植化実験開始3ヶ月後の腐植化サンプル(左側)と非腐植化サンプル(右側)との対比写真である。
【図9】図9は、本発明の実験例2(乳牛糞尿堆肥化試験)における臭気測定結果を示す表である。
【図10】図10は、本発明の実験例2(乳牛糞尿堆肥化試験)における温度変化を示したグラフである。
【図11】図11は、本発明の実験例3(豚糞尿堆肥化試験)における臭気測定結果を示す表である。
【図12】図12は、本発明の実験例3(乳牛糞尿堆肥化試験)における温度変化を示したグラフである。
【図13】図13は、本発明の実験例3(乳牛糞尿堆肥化試験)における堆肥の分析結果を示す表である。
【図14】図14は、本発明の実験例4(鶏糞尿堆肥化試験)における臭気測定結果を示す表である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ化合物と非晶質鉄化合物とを含有することを特徴とする臭気抑制材。
【請求項2】
前記アルカリ化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含み、水溶化した際にアルカリ性を示す化合物であることを特徴とする請求項1に記載の臭気抑制材。
【請求項3】
前記アルカリ化合物は、カルシウム、マグネシウム、カリウム又はナトリウムのいずれか1又は複数の炭酸塩、水酸化物、酸化物のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の臭気抑制材。
【請求項4】
前記非晶質鉄化合物は、非晶質酸化鉄または非晶質水酸化鉄を含み、結晶質酸化鉄、結晶質水酸化鉄、二価又は三価の鉄塩、鉄錯化合物、鉄イオン、元素鉄のいずれかの単体、又はそれらの2種類以上との混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の臭気抑制材。
【請求項5】
前記アルカリ化合物および前記非晶質鉄化合物を、無機物または有機物を主たる基質とする担体に担持または含浸させた、請求項1〜4のいずれかに記載の臭気抑制材。
【請求項6】
有機性廃棄物に対して、請求項1〜5のいずれかの臭気抑制材を添加して置くことにより、前記有機性廃棄物の臭気を抑制することを特徴とする有機性廃棄物の臭気抑制方法。
【請求項7】
前記有機性廃棄物は、動物の糞尿、生ゴミ、有機性汚泥、堆肥、動植物の遺体であることを特徴とする請求項6に記載の有機性廃棄物の臭気抑制方法。
【請求項1】
アルカリ化合物と非晶質鉄化合物とを含有することを特徴とする臭気抑制材。
【請求項2】
前記アルカリ化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含み、水溶化した際にアルカリ性を示す化合物であることを特徴とする請求項1に記載の臭気抑制材。
【請求項3】
前記アルカリ化合物は、カルシウム、マグネシウム、カリウム又はナトリウムのいずれか1又は複数の炭酸塩、水酸化物、酸化物のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の臭気抑制材。
【請求項4】
前記非晶質鉄化合物は、非晶質酸化鉄または非晶質水酸化鉄を含み、結晶質酸化鉄、結晶質水酸化鉄、二価又は三価の鉄塩、鉄錯化合物、鉄イオン、元素鉄のいずれかの単体、又はそれらの2種類以上との混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の臭気抑制材。
【請求項5】
前記アルカリ化合物および前記非晶質鉄化合物を、無機物または有機物を主たる基質とする担体に担持または含浸させた、請求項1〜4のいずれかに記載の臭気抑制材。
【請求項6】
有機性廃棄物に対して、請求項1〜5のいずれかの臭気抑制材を添加して置くことにより、前記有機性廃棄物の臭気を抑制することを特徴とする有機性廃棄物の臭気抑制方法。
【請求項7】
前記有機性廃棄物は、動物の糞尿、生ゴミ、有機性汚泥、堆肥、動植物の遺体であることを特徴とする請求項6に記載の有機性廃棄物の臭気抑制方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2006−150335(P2006−150335A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89347(P2005−89347)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(504407930)株式会社リープス (4)
【出願人】(504300088)国立大学法人帯広畜産大学 (96)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(504407930)株式会社リープス (4)
【出願人】(504300088)国立大学法人帯広畜産大学 (96)
【Fターム(参考)】
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