説明

致死性細胞を検出する方法および組成物ならびにその使用

本発明は、癌の病因に関わらず、様々なタイプの癌患者における疾病状態および治療反応を観察するのに有用な、致死性細胞を同定および検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の病因に関わらず、様々なタイプの癌患者における疾病状態および治療反応を観察するのに有用な、致死性細胞を同定および検出するための方法および組成物、ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
HanahanおよびWeinbergは2000年(Cell、2000、100:57−70)に癌の特徴を列挙したが、従来の癌細胞の侵襲性行動に主に焦点を合わせたこの概念に基づく現在開発中の治療法は、過去50年間癌患者を治療し得ないことがしばしばあった。最近の研究では、治療不可能な腫瘍、癌細胞、およびマーカーは、時に疾患の最終生成物に過ぎないこともあるという課題に取り組んできた。骨髄由来の幹/前駆細胞(BMDSC)は、全身に散在しており、過剰創傷治癒と近似する腫瘍を発生させる間質へ様々な状態において継続的にリクルートされるという証拠が増加している。それは成長因子、ケモカイン、サイトカイン、および組織再生因子の一定の沈着を引き起こし、徐々に臓器微小環境を破壊し得る。結果的には臓器不全をもたらし、それと同時に宿主免疫抑制、抗アポトーシス、上皮組織の悪性形質転換、癌細胞の増殖、成長、浸潤、および転移拡散を促進する重大な段階につながる。しかしながら、治療不可能な癌の発症および進行において、線維芽細胞およびマクロファージなどの様々な種類の幹/前駆細胞および誘導体を含むBMDSCの議論中かつ逆説的な役割は、現在の癌問題の解決において大きな課題のままである。(Bingleら、J Pathol、2002、196:254−265;De WeverおよびMareel、J Pathol、2003、200:429−447;CondeelisおよびPollard、Cell、2006、124:263−266;DirekzeおよびAlison、Hematol Oncol、2006、24:189−195;Kaplanら、Trends Mol Med、2007、13:72−81;Karnoubら、Nature、2007、449:557−563;Lobergら、CA Cancer J Clin、2007、57:225−241;Massbergら、Cell、2007、131:994−1008;Biswasら、J Immunol、2008、180:2011−2017;Chantrainら、Cancer Microenviron、2008、1:23−35;Germanoら、Cytokine、2008、43:374−379;Lairdら、Cell、2008、132:612−630;Le BitouxおよびStamenkovic、Histochem Cell Biol、2008、130:1079−1090;Takaishiら、J Clin Oncol、2008、26:2876−2882;AggarwalおよびGehlot、Curr Opin Pharmacol、2009、9:1−19;Gondaら、Cell Cycle、2009、8:2005−2013;JoyceおよびPollard、Nat Rev Cancer、2009、9:239−252;Mishraら、Cancer Res、2009、69:1255−1258;PsailaおよびLyden、Nat Rev Cancer、2009、9:285−293)。過去50年間、従来の癌細胞に主に焦点を合わせた従前の分子腫瘍学研究の他に、細胞腫瘍学および臨床腫瘍学の研究、より詳細には全身腫瘍学の研究が同時に強調されるべく取り組まれてきた。
【0003】
プロリン指向性プロテインキナーゼF(PDPK F)/グリコーゲンシンターゼキナーゼ3α(GSK−3α)は、当初、特定のタンパク質ホスファターゼ活性化因子Aとして同定された(Vandenheedeら、J Biol Chem、1980、255:11768−11774;Yangら、J Biol Chem、1980、255:11759−11767;Woodgett、EMBO J、1990、9:2431−2438)。本研究所では、PDPK F/GSK−3αを、論争中である様々な種類の癌細胞の抗アポトーシス、抗分化、腫瘍形成、浸潤および化学療法剤耐性と関連する多基質/多機能PDPKとしてさらに特徴付けた(Leeら、J Cell Biochem、1995、58:474−480;Yangら、J Cell Biochem、1995、59:143−150;Yangら、J Cell Biochem、1996、61:238−245;Hsuら、Br J Cancer、2000、82:1480−1484;Hsuら、Cancer、2000、89:1004−1011;Yangら、Clin Cancer Res、2000、6:1024−1030;Hsuら、Cancer、2001、92:1753−1758;Hsuら、Int J Cancer、2001、91:650−653;Chungら、Cancer、2002、95:1840−1847;Hsuehら、Cancer、2002、95:775−783;FuおよびYang、Anticancer Res、2004、24:1489−1494;Yang、Curr Cancer Drug Targets、2004、4:591−596;Yang、Drug News Perspect、2005、18:432−436;Hsuら、J Clin Oncol、2006、24:3780−3788)。残念ながら、PDPK F/GSK−3αに関する以前の研究は、上述したように従来の癌細胞または前癌細胞に主として焦点を合わせた現在の主流の癌研究に主に関連したものであった。したがって、癌におけるこの信号伝達分子の影響は、未だ評価されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bingleら、J Pathol、2002、196:254−265
【非特許文献2】De WeverおよびMareel、J Pathol、2003、200:429−447
【非特許文献3】CondeelisおよびPollard、Cell、2006、124:263−266
【非特許文献4】DirekzeおよびAlison、Hematol Oncol、2006、24:189−195
【非特許文献5】Kaplanら、Trends Mol Med、2007、13:72−81
【非特許文献6】Karnoubら、Nature、2007、449:557−563
【非特許文献7】Lobergら、CA Cancer J Clin、2007、57:225−241
【非特許文献8】Massbergら、Cell、2007、131:994−1008
【非特許文献9】Biswasら、J Immunol、2008、180:2011−2017
【非特許文献10】Chantrainら、Cancer Microenviron、2008、1:23−35
【非特許文献11】Germanoら、Cytokine、2008、43:374−379
【非特許文献12】Lairdら、Cell、2008、132:612−630
【非特許文献13】Le BitouxおよびStamenkovic、Histochem Cell Biol、2008、130:1079−1090
【非特許文献14】Takaishiら、J Clin Oncol、2008、26:2876−2882
【非特許文献15】AggarwalおよびGehlot、Curr Opin Pharmacol、2009、9:1−19
【非特許文献16】Gondaら、Cell Cycle、2009、8:2005−2013
【非特許文献17】JoyceおよびPollard、Nat Rev Cancer、2009、9:239−252
【非特許文献18】Mishraら、Cancer Res、2009、69:1255−1258
【非特許文献19】PsailaおよびLyden、Nat Rev Cancer、2009、9:285−293
【非特許文献20】Vandenheedeら、J Biol Chem、1980、255:11768−11774
【非特許文献21】Yangら、J Biol Chem、1980、255:11759−11767
【非特許文献22】Woodgett、EMBO J、1990、9:2431−2438
【非特許文献23】Leeら、J Cell Biochem、1995、58:474−480
【非特許文献24】Yangら、J Cell Biochem、1995、59:143−150
【非特許文献25】Yangら、J Cell Biochem、1996、61:238−245
【非特許文献26】Hsuら、Br J Cancer、2000、82:1480−1484
【非特許文献27】Hsuら、Cancer、2000、89:1004−1011
【非特許文献28】Yangら、Clin Cancer Res、2000、6:1024−1030
【非特許文献29】Hsuら、Cancer、2001、92:1753−1758
【非特許文献30】Hsuら、Int J Cancer、2001、91:650−653
【非特許文献31】Chungら、Cancer、2002、95:1840−1847
【非特許文献32】Hsuehら、Cancer、2002、95:775−783
【非特許文献33】FuおよびYang、Anticancer Res、2004、24:1489−1494
【非特許文献34】Yang、Curr Cancer Drug Targets、2004、4:591−596
【非特許文献35】Yang、Drug News Perspect、2005、18:432−436
【非特許文献36】Hsuら、J Clin Oncol、2006、24:3780−3788
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の癌細胞に主として焦点を合わせた主流の癌研究に主に関連するPDPK F/GSK−3αにおける以前の研究とは対照的に、本発明は、特に骨髄由来の幹/前駆細胞(BMDSC)における信号伝達PDPKの役割を調査することにある。骨髄由来の幹/前駆細胞(BMDSC)は、上述したように過剰創傷治癒と近似する腫瘍を発生させる間質にリクルートされて存在し得る。このような新規手法を使用することによって、BMDSC内のPDPK F/GSK−3αの異常な発現が、様々な重要臓器に関連する各種腫瘍の疾病状態および治療反応の観察、ならびに疾患が治療可能か治療不可能かの決定において、決定因子かつ指令因子の役割を担っていることが立証された。癌患者はBMDSC内のPDPK F/GSK−3αの異常な発現と関連する場合、疾患の病因に関わらず、治療可能範囲を逸する傾向にある。したがって、BMDSCがPDPK F/GSK−3αの異常な発現と関連する場合、本発明において「致死性細胞」と総称する。従来の癌細胞に関する以前の研究とは対照的に、本発明は、癌の予防および治療のための一般的応用に向けた、新規に記載の侵襲性細胞である致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供する。例えば、早期癌患者は致死性細胞と関連しない場合、局所切除によって治療可能である傾向にある。それとは対照的に、早期癌患者は致死性細胞と関連する場合、外科手術では治療不可能な傾向にある。したがって、本発明は、より積極的かつ適切な治療に対する医師の判断を支援するために、治療反応を観察する方法および組成物を提供する。本明細書において提供される致死的細胞は、骨髄の内因的欠陥に起因する全身的免疫抑制、感染症、閉塞症、塞栓症、および多臓器不全に関連した全身性脱制御や造血、止血、恒常性、および免疫システムの失調を、かなり早期に検出するのに有用である普遍的に応用可能な予測因子として表される。より詳細には、致死性細胞は様々なタイプの癌患者において、疾病状態および治療反応を観察するための信頼性のある予測因子である。その一方で、PDPK F/GSK−3αは、薬剤スクリーニングを標的とした最も強いかつ理想的な候補物質として示される必要は必ずしもないであろう。しかしながら、この信号伝達分子を新規のプローブとして使用することで、本発明は治療反応および癌の進行を観察することにおいて決定的役割を担う致死的細胞を、検出かつ単離するための方法および組成物を提供する。したがって、本発明において示される致死的細胞は単離されると、癌の病因に関わらず、各種ヒト癌におけるより効果的かつ包括的な予防および治療に向けた治療的薬剤スクリーニングおよび評価のために、プロテオミクスおよびゲノミクスの網羅的発現特性を確立する方法および組成物、ならびにその使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本明細書における一態様では、致死性細胞を示す被験者の骨髄由来の幹/前駆細胞(BMDSC)における細胞発現特性の存在を検出する方法を提供する。該方法は、前記被験者から生物学的試料を採取し、前記試料中のBMDSC内のPDPK F/GSK−3αの発現を決定することを含む。前記被験者のBMDSC内のPDPK F/GSK−3αの異常な細胞内蓄積により、致死性細胞の存在が示唆される。いくつかの実施形態では、PDPK F/GSK−3αの発現は、PDPK F/GSK−3αに特異的な抗体を使用した免疫測定法などによって、PDPK F/GSK−3αのタンパク質レベルを測定して決定する。生物学的試料としては、骨髄、血液、組織、腫瘍、腹水、または胸水を使用することが可能である。
【0007】
本明細書における他の態様では、生物学的試料中の致死性細胞の存在を検出する診断キットを提供する。該キットは、前記試料中のPDPK F/GSK−3αの発現を検出するための少なくとも1つの試薬、および致死性細胞の存在を評価するための印刷指示書を含み、共に容器に梱包されている。さらなる検出試薬が含まれていても良い。
【0008】
さらに、本明細書における他の態様では、癌の病因に関わらず、様々なタイプの癌患者における治療反応および疾患の進行を観察する方法を提供する。該方法は、前記被験者から生物学的試料を採取し、前記試料におけるPDPK F/GSK−3αの発現を決定することを含む。前記被験者におけるPDPK F/GSK−3αの異常な細胞内蓄積により、癌患者の疾病状態および治療反応が予測される。いくつかの実施形態では、PDPK F/GSK−3αの発現は、PDPK F/GSK−3αに特異的な抗体を使用した免疫測定法などによって、PDPK F/GSK−3αのタンパク質レベルを測定して決定する。生物学的試料としては、骨髄、血液、組織、腫瘍、腹水、または胸水を使用することが可能である。
【0009】
必要であれば、PDPK F/GSK−3αの発現量の多い致死性細胞を検出するために、基本的にはMoioliら(PLoS ONE、3:e3922、2008)により記載されている特異的磁性ビーズまたはフローセルソーターを用いて細胞を単離することも可能である。
【0010】
さらに、本明細書における他の態様では、致死性細胞を標的にした潜在的薬剤として試験化合物をスクリーニングする方法を提供する。該方法は基本的に当業者に周知であり、かつ本発明の実施において使用される単離技術により致死性細胞を生物学的試料から採取し、試験化合物を生物学的試料と接触させ、かつ前記試料におけるPDPK F/GSK−3αの発現を決定することを含む。前記試料におけるPDPK F/GSK−3αの異常な細胞内蓄積の減少は、試験化合物が致死性細胞を標的とした潜在的薬剤であることを示唆している。いくつかの実施形態では、PDPK F/GSK−3αの発現は、PDPK F/GSK−3αに特異的な抗体を使用する免疫測定法などによって、PDPK F/GSK−3αのタンパク質レベルを測定して決定する。生物学的試料としては、骨髄、血液、組織、腫瘍、腹水、胸水、または細胞株を使用可能である。試験化合物は天然物または組み合わせ化学ライブラリーのメンバーにおける抽出物を含む。
【0011】
本発明の上記かつ他の目的および特徴は、添付の図面および実施例と共に以下の詳細な説明を読むことによってさらに十分に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、急性骨髄性白血病(AML)患者が彼らの骨髄において致死性細胞と関連する場合、肺炎の進行および/または骨髄移植不全を有する傾向があることを示している(A、B)。逆に、AML患者は致死性細胞と関連しない場合、治療または骨髄移植の後に良好な転帰を有する傾向がある(C)。
【図2A】図2Aは、致死性細胞に関連する肺癌患者の無病生存率(A)を示している。
【図2B】図2Bは、致死性細胞に関連する肺癌患者の全生存率(B)を示している。
【図3A】図3Aは、致死性細胞に関連する全病期(A)肺癌患者の無病生存率を示している。
【図3B】図3Bは、致死性細胞に関連する全病期(B)肺癌患者の全生存率を示している。
【図3C】図3Cは、致死性細胞に関連する第I期(C)における肺癌患者の無病生存率を示している。
【図3D】図3Dは、致死性細胞に関連する第I期(D)における肺癌患者の全生存率を示している。
【図4A】図4Aは、致死性細胞に関連する様々なタイプの癌患者における無病生存率(A)を示している。
【図4B】図4Bは、致死性細胞に関連する様々なタイプの癌患者における全生存率(B)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
開示を明確にするために、本発明の詳細な説明を以下のように細別して行うが、それにより限定されるものではない。
【0014】
A.定義
別に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解する意味と同じ意味に用いられる。本明細書において参照される全ての特許、出願、公開出願およびその他の刊行物、ならびにGenBank登録番号は、その全体が参照により援用される。この節に記載の定義が、本明細書において参照により援用される特許、出願、公開出願およびその他の刊行物に記載の定義に反しているかまたは一致しない場合には、この節に記載の定義は本明細書において参照により援用される定義よりも優先される。
【0015】
本明細書において使用される「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1以上」を意味する。
【0016】
本明細書において使用される用語「PDPK F/GSK−3α」は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3αとしても知られている、多基質/多機能プロリン指向性プロテインキナーゼFを指す(Woodgett、EMBO J、1990、9:2431−2438;Yang、Curr Cancer Drug Targets、2004、4:591−596)。該タンパク質に対するGenBank登録番号はAAD11986およびAAH27984である。
【0017】
本明細書において使用される「生物学的試料」とは、生物学的起源であるあらゆる試料を指し、骨髄、血液、組織、腫瘍、腹水、または胸水が挙げられる。
【0018】
本明細書において使用される用語「抗体」は、抗原エピトープに特異的に結合するよう必要な可変領域配列を含む単離または組換えの結合物質を指す。従って、抗体は所望の生物学的活性を示す、例えば標的の特異抗原に結合する、あらゆる抗体またはそのフラグメントである。したがって、最も広義の意味で使用され、具体的には、所望の生物学的活性、例えば、PDPK F/GSK−3αに特異的に結合する限り、モノクローナル抗体(全長のモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ナノボディ、ディアボディ、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ならびにこれらに限定されるものではないが、scFv、FabおよびFab2などの抗体フラグメントを網羅する。
【0019】
本明細書において使用される用語「致死性細胞」は、PDPK F/GSK−3αの異常な細胞内蓄積に関連するBMDSCを指す。
【0020】
別に指示されない限り、本明細書において使用される全ての用語は、本技術分野および本発明の実施において使用されるもの、当業者の知識内である生化学および臨床病理の従来技術におけるものと同じ意味を有する。
【0021】
B.致死性細胞を検出する方法およびキット、ならびにその使用
一態様では、PDPK F/GSK−3αの異常な細胞内蓄積に関連するBMDSCは、致死性細胞を同定および検出するための手段を提供する。他の態様では、生物学的試料における致死性細胞の同定は、癌の病因に関わらず、様々なタイプの癌患者における治療反応および疾病状態を観察するのに有用である。
【0022】
従って、一態様において、本明細書では、致死性細胞を示す被験者において細胞発現特性の存在を検出する方法を提供する。該方法は、前記被験者から生物学的試料を採取し、前記試料におけるBMDSC内のPDPK F/GSK−3αの発現を決定することを含み、前記被験者におけるBMDSC内のPDPK F/GSK−3αの異常な細胞内蓄積は、致死性細胞の存在を示唆している。いくつかの実施形態では、PDPK F/GSK−3αの発現は、PDPK F/GSK−3αに特異的な抗体を使用する免疫測定法などによりPDPK F/GSK−3αタンパク質レベルを測定して決定する。生物学的試料としては、骨髄、血液、組織、腫瘍、腹水、または胸水を使用することが可能である。
【0023】
他の態様において、本明細書では、生物学的試料中の致死性細胞の存在を検出するキットを提供する。該キットは、前記試料におけるBMDSC内のPDPK F/GSK−3αの発現を決定するための少なくとも1つの試薬および印刷指示書を含み、共に容器に梱包されている。
【0024】
他の態様において、本明細書では、致死性細胞を標的にした潜在的薬剤として試験化合物をスクリーニングする方法を提供する。該方法は基本的に当業者に周知であり、かつ本発明の実施において使用される単離技術によって致死性細胞を生物学的試料から採取し、試験化合物を生物学的試料と接触させ、かつ前記試料におけるPDPK F/GSK−3αの発現を決定することを含む。前記試料におけるPDPK F/GSK−3αの異常な細胞内蓄積の減少は、試験化合物が致死性細胞を標的とする潜在的薬剤であることを示唆している。いくつかの実施形態では、PDPK F/GSK−3αの発現は、PDPK F/GSK−3αに特異的な抗体を使用する免疫測定法などによって、PDPK F/GSK−3αタンパク質レベルを測定して決定する。生物学的試料としては、骨髄、血液、組織、腫瘍、腹水、胸水、または細胞株を使用できる。試験化合物は天然物または組合せ化学ライブラリーメンバーの抽出物を含む。
【0025】
BMDSC内におけるPDPK F/GSK−3αの異常発現の検出には、あらゆる適した方法が用いられ得る。発現は生物学的試料からのBMDSC内におけるタンパク質レベルを評価して決定することが可能である。例えば、PDPK F/GSK−3αに特異的な抗体を使用する免疫測定法を使用し得る。適した方法としては、限定されるものではないが、免疫組織化学的分析、免疫細胞化学的分析、およびフローサイトメトリー分析が挙げられる。免疫組織化学的染色法では、細胞試料を、通常、脱水固定により調製し、続いて結合した遺伝子産物に特異的な標識抗体と反応させる。標識剤は、通常、視覚的に検出可能な、酵素標識、蛍光標識、発光標識などである。
【0026】
1つの実施形態によれば、組織試料を被験者から採取し、該試料を包埋後、例えば、3〜5μmに薄切し、従来の標本化技術に従って固定、標本化、および乾燥する。固定化剤はホルマリンを含み得る。標本を作製するための包埋剤は、例えば、パラフィンを含んでいてもよい。試料をこの状態で保存することが可能である。脱パラフィンおよび脱水の後、試料をPDPK F/GSK−3αに特異的な抗体を含む免疫試薬と接触させる。抗体はポリクローナルまたはモノクローナル抗体を含み得る。抗体は完全抗体、またはPDPK F/GSK−3αタンパク質に特異的に結合可能なそのフラグメントを含み得る。好適なポリクローナル抗血清またはその他の抗体は、PDPK F/GSK−3αタンパク質、またはその適したフラグメントで好適な宿主動物に免疫を与えることによって調製し、本技術分野の当業者に周知の従来技術に従って、抗血清を採取、および精製し得る。PDPK F/GSK−3αと特異的に反応するモノクローナルまたはポリクローナル抗体は、本技術分野で周知の方法により作製し得る。例えば、HarlowおよびLane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratories;Goding(1986)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、第2版、Academic Press、New Yorkを参照のこと。また、組換え抗体は、限定されるものではないが、米国特許第4,816,567号明細書に記載の方法を含む、本技術分野で周知の方法によって製造され得るか、または市販品であってもよい。
【0027】
抗体は、直接的または間接的に適当な検出可能な標識を担持する。あるいは、検出可能な標識は、例えば、第1抗体に結合する抗ウサギIgGヤギ抗体などの第2抗体に結合させてもよい。多くの場合、ポリペプチドおよび抗体は、検出可能な信号を供給する物質に共有または非共有的に結合して標識される。適した標識としては、限定されるものではないが、放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光剤、化学発光剤、磁性粒子などが挙げられる。
【0028】
生物学的試料は任意の適した方法により被験者から採取可能である。生物学的試料としては、骨髄、血液、組織、腫瘍、腹水、または胸水を使用することが可能である。
【0029】
癌の病因に関わらず、様々なタイプの癌患者における治療反応および疾病状態を観察するキットは、本明細書において定義されるBMDSC内のPDPK F/GSK−3α発現の決定において有用な少なくとも1つの試薬、および生物学的試料中のBMDSCに致死性細胞が含有されているかどうかを評価するための印刷指示書を収納するサイズの少なくとも1つの容器を含み得る。本明細書において使用される用語「試薬」は、限定されるものではないが、PDPK F/GSK−3αの抗体、分析用の緩衝液および担体を含む、本明細書において提供されるあらゆる方法を実施するのに有用なあらゆる化合物、組成物、または生物学的試薬(すなわち、試料、一定量または「用量」の細胞、抗体など)を意味する。
【0030】
C.実施形態
具体的な実施形態において別に指示されない限り、全ての免疫組織化学的分析、免疫表現型分析、免疫細胞化学的分析、および統計的分析は、下記の方法に従った。
【0031】
抗PDPK F/GSK−3α特異抗体の産生、同定および特性解析。PDPK F/GSK−3αのカルボキシル末端領域のアミノ酸配列471位から483位に対応するペプチドQSTDATPTLTNSSを、ペプチド合成機(9050型、Milligen社、マサチューセッツ州ベドフォード所在)を用いて合成した。架橋剤としてグルタルアルデヒドを使用するReichlin(1980)に記載の手順に従い、ペプチドの牛血清アルブミンへの結合を促進するためにシステイン残基をNH2末端に追加した。親和性精製を行った抗体産物は、PDPK F/GSK−3αのC−末端ペプチドであるアミノ酸471−483によりブロックされ得ることが認められ、この抗PDPK F/GSK−3α抗体の免疫特異性が実証された。
【0032】
免疫組織化学的分析。腫瘍細胞が最大の大きさを示した腫瘍を含むホルマリン固定パラフィン包埋組織の組織切片(5μm)をキシレン中で脱蝋し、段階的濃度のエタノール中で再水和した。内因性ペルオキシダーゼを3%過酸化水素でブロックした後、牛血清アルブミンで5分間ブロッキングした。次いで、スライドをpH7.4の0.05Mトリス緩衝液で希釈した抗PDPK F/GSK−3α抗体(2μg/mL)と4℃で16時間インキュベートした。その後、超エンハンサー(Super Sensitive[商品名]、非ビオチン検出システム、[BioGenex社、カリフォルニア州サン・ラモン所在])と室温で20分間インキュベートし、続いて高分子−HRP(Super Sensitive[商品名])標識剤とさらに30分間インキュベートした。最後に、DAB(3−3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩)で免疫染色すると、赤色から茶色になった。酵素反応を終了させた後、スライドをDS−エンハンサー(Zymed社、カリフォルニア州サンフランシスコ所在)中、室温で5分間インキュベートして、2つの染色系の相互作用を阻止した。その後、スライドをCD34抗体と室温で1時間インキュベートした。洗浄後、スライドを抗マウスアルカリホスファターゼと室温で30分間インキュベートした。BCIP/NBT溶液を結合した抗体を可視化するために使用すると、青色になった。切片はメチルグリーン溶液で対比染色すると、緑色になった。PDPK F/GSK−3αとCD34との細胞共染色では、紫色から黒色を呈す。
【0033】
免疫細胞化学的分析。細胞をポリリシンコートスライド上で700rpm、室温で3分間細胞遠心分離する(Kubota 5200、日本)。染色前、細胞スポットを3.7%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、0.2%トリトンX−100で90秒間処理する。内因性ペルオキシダーゼを3%過酸化水素でブロックした後、牛血清アルブミンで10分間ブロッキングする。スライドをpH7.4の0.05Mトリス緩衝液で希釈した抗PDPK F/GSK−3α抗体(2μg/mL)と4℃で16時間インキュベートした後、超エンハンサー(Super Sensitive[商品名]、非ビオチン検出システム、[BioGenex社、カリフォルニア州サン・ラモン所在])と室温で20分インキュベートし、続いて高分子−HRP(Super Sensitive[商品名])標識剤とさらに30分間インキュベートする。最後に、DAB(3−3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩)で免疫染色すると、赤色から茶色になった。酵素反応を終了させた後、スライドをDS−エンハンサー(Zymed社、カリフォルニア州サンフランシスコ所在)中、室温で5分間インキュベートして、2つの染色系の相互作用を阻止した。その後、スライドをCD34抗体と室温で1時間インキュベートした。洗浄後、スライドを抗マウスアルカリホスファターゼと室温で30分間インキュベートした。BCIP/NBT溶液を結合抗体を可視化するために使用すると、青色になった。切片はメチルグリーン溶液で対比染色すると、緑色になった。PDPK F/GSK−3αとCD34との細胞共染色では、紫色から黒色を呈す。
【0034】
統計的分析。統計的分析では、試料を致死性細胞が存在するグループと存在しないグループに分けた。全生存率は診断の日時から死亡または最後の追跡調査の日時までで計算した。無病生存率は診断の日時から再発、転移、死亡、または最後の追跡調査の日時までで測定した。カプラン・マイヤー法を用いて生存確率を決定し、対数順位検定を用いてグループ間の生存曲線を比較した。コックス比例ハザード回帰モデルにより影響を分析した。ロジスティック回帰を用いて治療反応における致死性細胞の存在によるリスクを計算した。P<0.05を統計的に有意であるとした。
【0035】
本研究は、台湾国立科学委員会の承認を受けた調査プロジェクトおよび助成金の元に行われ、インフォームド・コンセントおよび協会の監視および倫理委員会により承認されている。
【0036】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
【実施例1】
【0037】
積極的治療を施した後でのBMDSC内におけるPDPK F/GSK−3αの異常発現と予後不良の急性骨髄性白血病(AML)患者との関連性。
PDPK F/GSK−3αの異常発現は、疾患が進行しているAML患者の骨髄において頻繁に検出することが可能である。免疫表現型分析により、CD34造血幹/前駆細胞はほとんど存在せず、PDPK F/GSK−3αの異常細胞内蓄積と関連するBMDSCと称されるCD34間葉幹/前駆細胞(Moioliら、PLoS ONE、2008、3:e3922)(図1AおよびB)が、予後不良のAML患者の骨髄において頻繁に検出され得る。このようなタイプの患者の75%超は、積極的治療を施した後でさえ死亡した。それとは極めて対照的に、骨髄においてこのような種類のBMDSCが存在しない(図1C)80%を超えるAML患者は治癒した。したがって、BMDSCがPDPK F/GSK−3αの異常細胞内蓄積と関連する場合、本発明の本文を通してBMDSCを「致死性細胞」と総称した。初期の独立コホート研究によって、図1AおよびBに示されるようにAML患者が致死性細胞と関連する場合、治療後に不良な転帰を有する傾向があることが明らかとなった。それとは極めて対照的に、図1Cに示されるようにAML患者は致死性細胞と関連しない場合、治療後に良好な転帰を有する傾向がある。したがって、本発明は致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供する。
【実施例2】
【0038】
肺癌患者は致死性細胞と関連する場合、非常に好ましくない転帰および乏しい治療反応を有する傾向がある。
肺癌は世界的に癌に関連した最大の死亡原因である。最近の治療法の進歩にも関わらず、肺癌患者の予後は未だ満足のいくものではない。患者の大多数は疾患を再発し、完全な腫瘍の切除後でさえ、結局は転移疾患により死亡する。これまでのところ、肺癌の腫瘍−結節−転移病期分類システムは、予後を予測するための指針として広く使用されている。しかしながら、同じ病期の肺癌患者、特に疾患の早期にある患者の予後は多様であり、各患者のための適切な治療法を確立するための計画はまだ考案されていない。したがって、最も不良転帰の危険性が高い同じ病期の範囲にある患者間でサブグループを同定するために、腫瘍の進行および転移に影響を及ぼし、かつ生物学的機能に関与するより信頼性のあるバイオマーカーを追求すべきである。
【0039】
156人の肺癌患者が致死性細胞研究に使用可能である完全な臨床病理学的データおよび検体を有していた。研究対象患者の臨床病理学的特性を表1にまとめた。23歳から82歳(平均62歳)の年齢範囲の156人の研究対象患者(男性100人および女性56人)のうちで、平均腫瘍サイズは3.9±2.3cm(平均±SD;中央値、3cm)であった。72人の患者(46.2%)は喫煙歴があった。組織型に関しては、117人の患者(75.0%)が腺癌、36人の患者(23.1%)が扁平上皮癌、および3人の患者(1.9%)が大細胞癌であった。分化の程度は、42人の患者(26.9%)を高分化、65人の患者(41.7%)を中分化、および49人の患者(31.4%)を低分化に段階付けた。病理学的T病期は、50人の患者(32.1%)をT1、59人の患者(37.8%)をT2、30人の患者(19.2%)をT3、および17人の患者(10.9%)をT4とした。29人の患者(18.6%)はN1レベルのリンパ節転移、21人の患者(13.5%)はN2レベル、および12人の患者(7.7%)はN3レベルにあった。その一方で、94人の患者(60.3%)はリンパ節転移していなかった。肺癌患者は、第I、II、III、およびIV期に、69人の患者(44.2%)、23人の患者(14.7%)、55人の患者(35.3%)、および9人の患者(5.8%)をそれぞれ分類した。156人の肺癌患者のうちで、5年無病生存率および全生存率は、それぞれ36.6%および45.3%であった。
肺癌患者特性
【0040】
【表1】

略語:CEA、癌胎児性抗原;pT、病理学的T病期;pN、病理学的N病期
連続変数の結果を平均±SDとして表す。
【0041】
本研究における患者特性は現在の疫学的状況に類似しており、それは独立コホート研究においてこれらの事例から得られた結果が世界的に肺癌に応用可能であることを示唆している。したがって、肺癌患者の疾病状態および治療反応の決定における「致死性細胞」の役割を評価するために、この代表的な研究対象集団を使用することを決定した。実施例1に記載した「致死性細胞」の予後的意義における単変量解析によって、肺癌患者は、腫瘍間質、および/または末梢血、および/または腹水、および/または胸水、および/または骨髄において致死性細胞と関連する場合、極めて不良な転帰を有する傾向があることが明らかとなった(P<0.001)。5年無病生存率は、致死性細胞を有する患者では8.8%であるのに対し、致死性細胞を有さない患者では68.4%であった(P<0.001、図2A;表2)。5年全生存率は、致死性細胞を有する患者では15.0%であるのに対し、陰性患者では80.3%であった(P<0.001、図2B;表2)。
156人の肺癌患者の無病生存率および全生存率に対する予後因子の単変量解析
【0042】
【表2】

略語:CEA、癌胎児性抗原;腫瘍浸潤の深度(pT)、病理学的T病期;リンパ節転移(pN)、病理学的N病期;NS、統計的に有意ではない
対数順位検定。
【0043】
致死性細胞の予後値のロバスト性を評価するために、コックス多変量比例ハザード回帰分析を実施し、交絡因子を制御するよう全変数を用いて無病生存率および全生存率に関連する危険性推定を導き出した。多変量解析(表3)は、致死性細胞およびリンパ節転移が、無病生存率および全生存率に対する唯一の2つの独立予後因子であることを示した。致死性細胞は、肺癌の進行および患者生存率に対する最も強い独立予後予測因子であることが分かった(無病生存率においてHR 5.575、95% CI 3.502−8.875、P<0.001、および全生存率においてHR 8.106、95%CI 4.741−13.859、P<0.001)。
156人の肺癌患者の無病生存率および全生存率に対する潜在的予後因子のコックス多変量回帰分析
【0044】
【表3】

略語:HR、ハザード比、95%CI、95%信頼区間
【0045】
さらに、92人の早期患者のうち、37人の患者(40.2%)は致死性細胞を示し、良好な転帰を有し得なかった(図3AおよびB)。致死性細胞を有する早期患者は、致死性細胞を有さない早期患者と比較して、6倍を超える再発の危険性および11倍を超える死亡の危険性を有していた(無病生存率においてHR6.202、95%CI 3.278−11.734、および全生存率においてHR11.112、95%CI 4.854−25.440、P<0.001;表4)。より具体的には、69人の第I期の患者のうち、46人の患者(66.7%)は致死性細胞を有しておらず、非常に良好な転帰を有していた。それとは極めて対照的に、残りの23人の第I期の患者(33.3%)は致死性細胞を示し、良好な転帰を有し得なかった(図3CおよびD)。第I期の肺癌患者は致死性細胞と関連する場合、同じ第I期の肺癌患者ではあるがいかなる致死性細胞も有さない患者と比較して、7.5倍を超える再発の危険性および10.5倍を超える死亡の危険性を有していた(無病生存率においてHR 7.736、95%CI 3.596−16.643、P<0.001、および全生存率においてHR 10.687、95%CI 4.247−26.893;P<0.001)。致死性細胞と関連する場合の進行期の肺癌患者のハザード比は、さらに35.2倍まで上昇した。詳細な結果を表4に示した。
156人の肺癌患者の無病生存率および全生存率に対する致死性細胞および独立予後因子のコックス回帰分析
【0046】
【表4】

略語:LN、リンパ節転移;HR、ハザード比、95%CI、95%信頼区間
【0047】
興味深いことに、術後補助療法を受けた74人の患者においても、致死性細胞は患者の転帰に著しく関与していた。補助療法に反応して、致死性細胞を有さない肺癌患者はより良好な転帰を有し、致死性細胞を有する患者は大多数が明らかに不良な転帰を有していた。5年生存率は、陽性患者では12.0%であるのに対し、陰性患者では54.2%であった(P<0.001)。ロジスティック回帰が適用されると、致死性細胞は単変量解析において補助療法反応の最も潜在的な予後予測因子であることが分かった(表5)。多変量解析は、致死性細胞(P=0.002)および病期(P=0.024)は、補助療法反応の独立予後予測因子であることを示した(表5)。肺癌患者における致死性細胞は、補助療法反応の最も強い独立予後指標であることがさらに同定された(OR 17.532、95%CI 2.977−103.133、P=0.002;表5)。
74人の肺癌患者の補助療法反応における潜在的予後因子および予測因子としての致死性細胞のロジスティック回帰分析
【0048】
【表5】

略語;AC、腺癌;LCC、大細胞癌;SCC、扁平上皮癌;腫瘍浸潤の深度(pT)、病理学的T病期;LN状態(pN)、リンパ節転移(病理学的N)病期;OR、オッズ比;95%CI、95%信頼区間;NS、統計的に有意ではない
【0049】
30%を超える第I期の肺癌患者は致死性細胞と関連し、治癒的切除および/または全身補助療法の後でさえも乏しい治療反応および好ましくない転帰を有することが分かった。その一方で、比較的大集団の進行期肺癌患者は致死性細胞と関連し、かつ外科手術後および全身補助療法の後でさえも極めて好ましくない転帰および乏しい治療反応を有する傾向があることが分かった。致死性細胞は、全病期における肺癌患者の治療可能な疾患または治療不可能な疾患の状態および全種類の治療反応の決定において、決定因子および指令因子の役割を明らかに担っている。したがって、本発明は肺癌患者において致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供するものである。より積極的かつ適切な治療が致死性細胞と関連するこれらの肺癌患者にとって確実に必要とされている。致死性細胞を標的とすることは、致死性細胞と関連する肺癌患者の治療において、従来型の侵襲性肺癌細胞を標的とするのと同様に不可欠かつ重要であるはずである。
【実施例3】
【0050】
胃癌患者は致死性細胞と関連する場合、非常に好ましくない転帰および乏しい治療反応を有する傾向がある。
胃癌は世界的に癌に関連した主な死亡原因の1つである。外科手術における技術の進歩および補助療法の使用にも関わらず、疾患の予後には憂鬱さが残る。患者の半分以上は治癒的切除を受けても、手術後数年のうちに時として全身転移を経験し得る。腫瘍−結節−転移病期分類システムに含まれる腫瘍浸潤の深度およびリンパ節転移は、予後を予測するための指針として広く使用されている。しかしながら、同じ病期の患者の予後は多様である。予後不良は効果的な救助治療法を欠いているために起こる。治療の指針として疾患の自然経過を予測し得る新たな生物学的マーカーを確立することが早急に必要とされている。
【0051】
本研究は、致死性細胞研究に使用可能である完全な臨床病理学的データおよび検体を有する全部で146人の胃癌患者を含むものであった(表6)。研究対象患者の臨床病理学的特性を表6にまとめた。25歳から86歳(平均61.4歳)の年齢範囲の146人の研究対象患者(男性94人および女性52人)のうちで、平均腫瘍サイズは4.5±2.7(平均±SD、中央値、4.0)であった。腫瘍は20人の患者(14%)において噴門部、48人の患者(33%)において胃体部、および78人の患者(53%)において幽門部に位置していた。リンパ管浸潤およびリンパ節転移は、それぞれ76人の患者(52%)および81人の患者(55%)において発見された。腫瘍細胞は、25人の患者(17%)において粘膜(pT1)、30人の患者(21%)において筋固有層または漿膜下組織(pT2)、83人の患者(57%)において漿膜(pT3)、および8人の患者(5%)において隣接臓器(pT4)に浸潤していた。胃癌患者は、第I、II、III、およびIV期に、45人の患者(31%)、25人の患者(17%)、58人の患者(40%)、および18人の患者(12%)をそれぞれ分類した。ローレン分類に基づく組織型は、48人の患者(33%)においてびまん型、76人の患者(52%)において腸型、および22人の患者(12%)において混合型であった。使用された外科手術法は、44人の患者(30%)において胃全摘術、96人の患者(66%)において胃亜全摘術、および6人の患者(4%)において噴門側胃切除術であった。術後の補助化学療法を44人の患者(30%)において実施した。5年の無病生存率および全生存率は、それぞれ47.7%および53.0%であった。
胃癌患者特性
【0052】
【表6】

連続変数の結果を平均±SDとして表す。
【0053】
本研究における患者特性は現在の疫学的状況に類似しており、それは独立コホート研究においてこれらの事例から得られた結果が世界的に胃癌に応用可能であることを示唆している。したがって、胃癌患者の疾病状態および治療反応の決定における致死性細胞の役割を評価するために、この代表的な研究集団を使用することを決定した。カプラン・マイヤー法を用いた致死性細胞の予後的意義における単変量解析によって、胃癌患者は致死性細胞と関連する場合、極めて不良な転帰を有する傾向があることが明らかになった(P<0.001)。5年無病生存率は、致死性細胞を有する患者では18.6%であるのに対し、致死性細胞を有さない患者では74.7%であった(P<0.001)。5年全生存率は、致死性細胞を有する患者では20.6%であるのに対し、陰性患者では82.7%であった(P<0.001)。多変量解析によって、致死性細胞(P<0.001)、リンパ管浸潤(P<0.001)、および漿膜浸潤(P=0.001)は、無病生存率の独立予後因子であることが示された。全生存率に関しては、致死性細胞(P<0.001)、リンパ管浸潤(P=0.002)、および漿膜浸潤(P=0.002)が独立予後因子であった。致死性細胞は、胃癌の進行および患者生存率に対する最も強い独立予後予測因子であることが分かった(無病生存率において、HR 3.740、95%CI 2.124−6.587、P<0.001、および全生存率において、HR 5.409、95%CI 2.858−10.238、P<0.001)。
【0054】
病期などのいくつかの因子は、以前の研究において予後因子として立証されてきた。しかしながら、同じ臨床病理学的病期の予後は、多様である。したがって、予後の不確定性を解決することに関心が高まっている。(表7)。76人の進行期胃癌患者のうち、50人の患者(65.8%)も致死性細胞を示し、非常に不良な予後を有していた(5年無病生存率は10.0%、および5年全生存率は10.6%;P<0.001)。それとは極めて対照的に、70人の早期患者のうち、20人の患者(28.6%)が意外にも致死性細胞を示し、かつ良好な転帰を有し得なかった(5年無病生存率は40.0%、および5年全生存率は45.0%;P<0.001)。致死性細胞を有する早期胃癌患者は致死性細胞を有さない早期患者と比較して、9倍を超える再発の危険性、かつ16倍を超える死亡の危険性を有していた(無病生存率においてHR 9.612、95%CI 3.419−27.021、および全生存率においてHR 16.540、95%CI 4.703−58.171;P<0.001)。致死性細胞と関連する場合の進行期の胃癌患者のハザード比は、40倍を超えるまでに上昇した。より詳細には、カプラン・マイヤー生存曲線および対数順位検定によって決定するところ、5年無病生存率は、早期胃癌患者が致死性細胞と関連する場合、同じ早期胃癌患者ではあるがいかなる致死性細胞も有さない患者の92.0%からわずか40.0%にまで劇的に低下した(P<0.001)。5年無病生存率は、進行期胃癌患者が致死性細胞と関連する場合、わずか10.0%にまでさらに劇的に低下した。詳細な結果を表7にまとめた。
146人の胃癌患者の無病生存率よび全生存率に対する致死性細胞および病期のカプラン・マイヤーおよびコックス回帰分析
【0055】
【表7】

略語:HR、ハザード比、95%CI、95%信頼区間
対数順位検定
【0056】
興味深いことに、術後補助化学療法を受けた44人の患者においても、致死性細胞は患者の転帰に著しく関与していた。補助化学療法に反応して、致死性細胞を有さない胃癌患者はより良好な転帰を有し、致死性細胞を有する患者は大多数が明らかに不良な転帰を有していた。5年生存率は、陽性患者では12.5%であるのに対し、陰性患者では50.0%であった(P<0.001)。ロジスティック回帰が適用されると、胃癌患者における致死性細胞は単変量解析および多変量解析の両方において、補助療法反応の最も強い独立予後指標としてさらに同定された(生存率に対するOR 34.575、95%CI 2.841−420.835、P=0.005)。
【0057】
致死性細胞は、全病期における胃癌患者の治療可能な疾患または治療不可能な疾患の状態および全種類の治療反応の決定において、決定因子および指令因子の役割を明らかに担っている。したがって、本発明は胃癌患者において致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供するものである。より積極的かつ適切な治療が致死性細胞と関連するこれらの胃癌患者にとって確実に必要とされている。致死性細胞を標的とすることは、致死性細胞と関連する胃癌患者の治療において、従来型の侵襲性胃癌細胞を標的とするのと同様に不可欠かつ重要であるはずである。
【実施例4】
【0058】
乳癌患者は致死性細胞と関連する場合、非常に好ましくない転帰および乏しい治療反応を有する傾向がある。
乳癌は女性の間で最もよく見られる癌であり、かつ癌による死亡原因の第2位である。患者の管理は現在のところ、臨床および病理学的特徴に基づいている。しかしながら、それらは疾患の多様性を部分的にのみ反映している。50%を超える不良な転帰を有する患者は、従来の予後マーカーでは同定不可能である。実際、約3分の1のリンパ節転移陰性患者、および60%のリンパ節転移陽性患者は、全身再発を経験している。文献では、いくつかのバイオマーカーが乳癌の予後において重要であることが示唆されている。しかしながら、補助療法が必要ない低リスクの患者、および全身再燃に対する高リスクのグループに対して、これらの因子は正確な予測のために十分ではない。個々の患者における進行の危険性を正確に予測することは不可能であるため、80%を超える乳癌患者は補助療法を受けているが、ごく一部のみが該療法から利益を得ることが可能である。したがって、疾患の進行に対する低リスクおよび高リスクのグループの同定を助けるため、かつどの患者が補助療法から利益を得ることが可能であるかを決定するために、より感度の高い予後予測因子が早急に必要とされている。それにより、癌専門医は個々の患者に治療計画を調整し、同時に患者の生活の質を維持することも可能である。
【0059】
167人の乳癌患者が致死性細胞研究に使用可能である完全な臨床病理学的データおよび検体を有していた。研究対象患者の臨床病理学的特性を表8にまとめた。27歳から80歳(平均49.1歳)の年齢範囲の167人の研究対象患者(全て女性)のうちで、平均腫瘍サイズは3.6±2.1(平均±SD;中央値、3.0cm)であった。腫瘍は、44人の患者(26%)において組織学的グレード1、72人の患者(43%)においてグレード2、および51人の患者(31%)においてグレード3であった。118人の患者(71%)はリンパ節転移していた。癌患者は、第I、II、III、およびIV期に、21人の患者(13%)、75人の患者(45%)、65人の患者(39%)、および6人の患者(3%)をそれぞれ分類した。PR陽性が70人の患者(42%)において検出され、一方で、ER陽性が94人の患者(56%)において検出された。追跡調査期間の間、30人の患者(18%)は局所領域の再発を経験し、かつ55人の患者(30.5%)は遠隔転移を経験した。167人の乳癌患者の5年生存率は、77.2%であった。
乳癌患者特性
【0060】
【表8】

略語:PR、プロゲステロン受容体;ER、エストロゲン受容体
連続変数の結果を平均±SDとして表す。
【0061】
本研究における患者特性は現在の疫学的状況に類似しており、それは独立コホート研究においてこれらの事例から得られた結果が世界的に乳癌に応用可能であることを示唆している。したがって、乳癌患者の疾病状態および治療反応の決定における致死性細胞の役割を評価するために、この代表的な研究集団を使用することを決定した。カプラン・マイヤー法を用いた致死性細胞の予後的意義における単変量解析によって、乳癌患者は致死性細胞と関連する場合、極めて不良な転帰を有する傾向があることが明らかになった(P<0.001)。5年生存率は、致死性細胞を有する患者では54.2%であるのに対し、致死性細胞を有さない患者では86.6%であった(P<0.001)。多変量解析によって、致死性細胞(P<0.001)、リンパ節転移(P=0.016)、腫瘍サイズ(P<0.001)、およびER状態(P=0.005)は、独立予後因子であることが示された。致死性細胞は乳癌患者の生存率に対する最も強い独立予後予測因子であることが分かった(HR 6.033、95%CI 3.324−10.950、P<0.001)。
【0062】
さらに、96人の早期乳癌患者のうち、73人の患者(76.0%)も致死性細胞を有しておらず、非常に良好な転帰を有していた(5年全生存は94.5%;P<0.001)。それとはきわめて対照的に、残りの23人の早期患者(24.0%)は意外にも致死性細胞を示し、良好な転帰を有し得なかった(全生存率は65.2%;P<0.001)。同様に、75人の第II期の患者のうち、56人の患者(74.7%)も致死性細胞を有さず、非常に良好な転帰を有していた(5年全生存率は94.6%;P<0.001)。それとは極めて対照的に、残りの19人の第II期の患者(25.3%)は致死性細胞を示し、良好な転帰を有し得なかった(5年全生存率は57.9%;P<0.001)。
【0063】
早期乳癌患者は致死性細胞と関連する場合、同じ早期乳癌患者ではあるがいかなる致死性細胞も有さない患者と比較して、13.5倍を超える死亡の危険性を有していた(HR 13.948、95%CI 5.047−56.548;P<0.001)。致死性細胞と関連する場合の進行期乳癌患者のハザード比は、コックスハザード回帰分析によって決定されるところ、19.434までも上昇した(95%CI 7.210−52.319;P<0.001)。より詳細には、第II期の乳癌患者は致死性細胞と関連する場合、同じ第II期の乳癌患者ではあるがいかなる致死性細胞も有さない患者と比較して、17倍を超える死亡の危険性を有していた(HR 17.076、95%CI 5.573−52.319;P<0.001)。多変量ロジスティック回帰分析によって、乳癌患者はいかなる致死性細胞とも関連しない場合、化学療法に反応した致死性細胞と関連する乳癌患者と比較すると、最大13.195倍の生存オッズ比(95%CI 4.674−311.249;P<0.001)を有し、化学療法に反応して、最も強い独立した役割を維持していることがさらに明らかとなった。より詳細には、ロジスティック回帰分析によって決定されるところ、化学療法に反応して、いかなる致死性細胞も関連しない場合の第II期の乳癌患者の生存オッズ比は、同じ第II期の乳癌患者ではあるが致死性細胞を有する患者と比較して、最大22.688倍まで上昇した(95%CI 4.841−106.315;P<0.001)。また、カプラン・マイヤー生存曲線および対数順位検定によって決定されるところ、5年生存率は、第II期の乳癌患者が致死性細胞を有する場合、同じ第II期の乳癌患者ではあるがいかなる致死性細胞も有さない患者の91.9%と比較して、わずか46.7%まで低下した。同様に、化学療法に反応して、いかなる致死性細胞とも関連しない場合の第III期の乳癌患者の生存オッズ比は、同じ第III期の乳癌患者ではあるが致死性細胞を有する患者と比較して最大5.815まで上昇し(95%CI 1.722−19.634)、致死性細胞を有する第III期の乳癌患者の5年生存率は、75%からわずか47.4%まで低下した。
【0064】
致死性細胞は、全病期における乳癌患者の治療可能な疾患または治療不可能な疾患の状態および全種類の治療反応の決定において、決定因子および指令因子の役割を明らかに担っている。したがって、本発明は乳癌患者において致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供するものである。より積極的かつ適切な治療が致死性細胞と関連するこれらの乳癌患者にとって確実に必要とされている。致死性細胞を標的とすることは、致死性細胞と関連する乳癌患者の治療において、従来型の侵襲性乳癌細胞を標的とするのと同様に不可欠かつ重要であるはずである。
【実施例5】
【0065】
前立腺癌患者は致死性細胞と関連する場合、好ましくない転帰および乏しい治療反応を有する傾向がある。
前立腺癌は、世界的に男性において最もよく見られる悪性腫瘍であり、かつ癌による死亡原因の第2位である。前立腺全摘出術(RP)または局所治療の放射線治療を含む潜在的治療法が使用可能であるにも関わらず、多くの患者が一次療法の後に疾病再発を経験する。臨床病期、グリーソングレード、および前立腺特異抗原(PSA)レベルが予後因子として報告されており、かつヒト血清、尿、および精液における多数の分子マーカーが説明されてきた。しかしながら、前立腺癌は異種疾患として表され、個々の患者において悪性腫瘍と「無痛性」腫瘍との間を区別することが不可能であり、患者に積極的治療を行うべきかどうかの決定はいまだ困難なままである。したがって、各個人に対して適切な治療法を採用するために前立腺癌の侵襲性を予測することが早急に必要とされている。{りんしょう びょうき}
【0066】
79人の患者が致死性細胞研究に使用可能である完全な臨床病理学的データおよび検体を有していた。研究対象患者の臨床病理学的特性を表9にまとめた。46歳から95歳(平均71歳)の年齢範囲の79人の研究対象患者のうち、平均前処理PSAレベルは50.6±75.4ng/mL(平均±SD;中央値、23.2ng/mL)であった。カットオフ値の7は、グリーソングレードの低および高の間を区別するために使用し、36人の患者(45.6%)および43人の患者(54.4%)においてそれぞれ見出した。患者は、第I、II、III、およびIV期に、9人の患者(11.4%)、36人の患者(45.6%)、10人の患者(12.7%)、および24人の患者(30.4%)をそれぞれ分類した。診断材料を、58人の患者(73.4%)の原発性腫瘍、および21人の患者(26.6%)の再発性腫瘍から採取した。TURPを21人の患者(26.6%)の治療に使用し、TURPにさらに放射線治療、化学療法、およびホルモン療法を含む混合治療を31人の患者(39.2%)の治療に使用し、RPを13人の患者(16.5%)の治療に使用し、かつPRにさらに放射線治療、化学療法、およびホルモン療法を含む混合治療を14人の患者(17.7%)の治療に使用した。追跡調査期間の間、30人の患者(38.0%)は疾病再発を経験した。79人の前立腺癌患者の5年生存率は77.0%であった。
前立腺癌患者特性
【0067】
【表9】

略語:PSA、前立腺特異抗原;TURP、経尿道的前立腺切除;RP、前立腺全摘出術
連続変数の結果を平均±SDとして表す。
【0068】
本研究における患者特性は現在の疫学的状況に類似しており、それは独立コホート研究においてこれらの事例から得られた結果が世界的に前立腺癌に応用可能であることを示唆している。したがって、前立腺癌患者の疾病状態および治療反応の決定における致死性細胞の役割を評価するために、この代表的な研究集団を使用することを決定した。カプラン・マイヤー法を用いた致死性細胞の予後的意義における単変量解析によって、前立腺癌患者は致死性細胞と関連する場合、不良な転帰を有する傾向があることが明らかになった(P<0.001)。5年生存率は、致死性細胞を有する患者では61.5%であるのに対し、致死性細胞を有さない患者では86.2%であった(P<0.001)。致死性細胞は、経尿道的前立腺切除を受けた前立腺癌患者の生存率に対する最も強い独立予後指標としてさらに同定された(HR 3.482、95%CI 1.347−9.000、P=0.010)。
【0069】
より詳細には、致死性細胞と関連している場合の早期前立腺癌患者の5年生存率は、97.1%(致死性細胞を有さない早期患者)からわずか72.7%まで劇的に低下した。同様に、致死性細胞と関連している場合の進行期前立腺癌患者の5年生存率は、70.8%(致死性細胞を有さない進行期患者)からわずか40.0%まで低下した(P<0.001;対数順位検定)。多変数コックス回帰分析によって、根治的前立腺全摘出術および/または放射線治療に反応して、致死性細胞を有する早期前立腺癌患者は、同じ早期前立腺癌患者ではあるがいかなる致死性細胞も有さない患者の6倍を超える不良な予後の危険性を有していること(HR6.178、95%CI 1.445−19.832;P=0.013)がさらに確認された。致死性細胞と関連する場合の進行期前立腺癌患者のハザード比は、局所前立腺全摘出術、放射線治療、および全身補助療法に反応して、24.340まで上昇した(95%CI 6.415−92.349;P<0.001)。多変量ロジスティック回帰分析によって、陰性致死性細胞は全身補助療法を受けた45人の患者の生存可能性の予測における最も強い独立予後予測因子としてさらに確立された(OR9.600、95%CI 1.566−58.863;P=0.015)。興味深いことに、致死性細胞および高PSAの両方と関連する前立腺癌患者は、致死性細胞を有さず、かつ低PSAを有するこれらの前立腺癌患者と比較して、24倍を超える不良転帰の危険性を有していた。同様に、致死性細胞および高グリーソングレードの両方と関連する前立腺癌患者は、致死性細胞を有さず、かつ低グリーソングレードを有するこれらの前立腺癌患者と比較して、18倍を超える不良転帰の危険性を有していた(HR18.214、95%CI 3.872−85.690;P<0.001)。
【0070】
致死性細胞は、全病期における前立腺癌患者の治療可能な疾患または治療不可能な疾患の状態および全種類の治療反応の決定において、決定因子および指令因子の役割を明らかに担っている。したがって、本発明は前立腺癌患者において致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供するものである。より積極的および適切な治療が、致死性細胞と関連するこれらの前立腺癌患者にとって確実に必要とされている。致死性細胞を標的とすることは、致死性細胞と関連する前立腺癌患者の治療において、従来型の侵襲性前立腺癌細胞を標的とするのと同様に不可欠かつ重要であるはずである。
【実施例6】
【0071】
早期子宮頸癌患者は致死性細胞と関連する場合、好ましくない転帰および乏しい治療反応を有する傾向がある。
子宮頸癌は世界的に女性の間で2番目に最もよく見られる悪性腫瘍である。パパニコロースミアスクリーニングプログラムの利用可能性の増加によって、その早期に疾患の診断が頻繁に行われている。外科手術が早期子宮頸癌患者のための治療の中心として表される。結節状態は補助療法のために重要であるが、それは臨床転帰を十分に説明しない。実際、リンパ節転移を有さない10−15%の患者は腫瘍を再発し、リンパ節転移を有する約半分の患者は補助療法後に治癒しない。治療抵抗および疾患の再発は、確実に予測されなければならない。したがって、再発の危険性における患者のサブグループを定義することを助けるため、かつ各患者に対する新たな治療計画を個々に調整するために、腫瘍の侵襲性に厳密に関連したより正確な予後バイオマーカーが必要とされている。
【0072】
本研究は、致死性細胞研究に使用可能である完全な臨床病理学的データおよび検体を有する全部で146人の早期子宮頸癌患者を含むものであった(表10)。14人の患者(9.6%)は第IA期疾患を有し、112人の患者(76.7%)は第IB期を有し、かつ20人の患者(13.7%)は第IIA期を有していた。研究対象患者の臨床病理学的特性を表10にまとめた。22歳から86歳(平均50歳)の年齢範囲の146人の研究対象子宮頸癌患者のうちで、平均腫瘍サイズは2.4±1.4(平均±SD、中央値、2.0cm)であった。124の腫瘍(84.9%)は扁平上皮癌であったが、14の腫瘍(9.6%.)は腺癌、および8の腫瘍(5.5%)は腺扁平上皮組織型を示した。リンパ管およびリンパ節の転移は、43人の患者(29.5%)および28人の患者(19.2%)においてそれぞれ発見された。子宮頸癌試料における分化の程度は、58人の患者(39.7%)をグレード1、60人の患者(41.1%)をグレード2、および28人の患者(19.2%)をグレード3に段階付けた。59人の患者(40.4%)は術後に補助療法を受けた(43人の患者は放射線療法を受け、12人の患者は放射線療法および化学療法の両方を受け、および4人の患者は化学療法のみを受けた)。146人の子宮頸癌患者における5年の無病生存率および全生存率は、それぞれ79.5%および85.6%であった。
子宮頸癌患者特性
【0073】
【表10】

連続変数の結果を平均±SDとして表す。
【0074】
本研究における患者特性は現在の疫学的状況に類似しており、それは独立コホート研究においてこれらの事例から得られた結果が世界的に早期子宮頸癌に応用可能であることを示唆している。したがって、早期子宮頸癌患者の疾病状態および治療反応の決定において致死性細胞の役割を評価するために、この代表的な研究集団を使用することを決定した。カプラン・マイヤー法を用いた致死性細胞の予後的意義における単変量解析によって、早期子宮頸癌患者は致死性細胞と関連する場合、不良な転帰を有する傾向があることが明らかになった(P<0.001)。5年無病生存率は、致死性細胞を有する患者では42.1%であるのに対し、致死性細胞を有さない患者では84.5%であった(P<0.001)。5年全生存率は、致死性細胞を有する患者では41.2%であるのに対し、陰性患者では91.5%であった(P<0.001)。多変量解析によって、致死性細胞(P<0.001)およびリンパ節転移(P<0.001)は、無病生存率に対する独立予後因子であることが示された。全生存率に関しても、致死性細胞(P<0.001)およびリンパ節転移(P<0.001)は、唯一の2つの独立予後因子であった。致死性細胞は、早期子宮頸癌の進行および患者生存率に対する最も強い独立予後予測因子であることが分かった(無病生存率において、HR 8.533、95%CI 3.794−19.190、P<0.010、全生存率において、HR 9.678、95%CI 3.997−23.434、P<0.001)。
【0075】
術後の補助療法を受けた59人の患者のうちで、致死性細胞は患者の転帰と著しく関連していた。補助療法に反応して、致死性細胞を有さない早期子宮頸癌患者はより良好な転帰を有しており、致死性細胞を有する患者は明らかに不良な転帰を有していた。5年生存率は、致死性細胞を有する患者では14.3%であるのに対し、致死性細胞を有さないこれらの患者では80.8%であった(P<0.001)。ロジスティック回帰が適用されると、致死性細胞(P=0.008)、グレード(P=0.045)、およびリンパ節転移(P=0.015)は、単変量解析において治療反応の潜在的予後予測因子であった。多変量解析によって、致死性細胞(P=0.006)およびリンパ節転移(P=0.034)は、補助療法に反応する独立予後予測因子であることが示された。早期子宮頸癌における致死性細胞は、補助療法反応における最も強い独立予後指標であると同定された(OR 34.636、95%CI 2.786−430.543、P=0.006)。
【0076】
致死性細胞は、子宮頸癌患者の治療可能な疾患または治療不可能な疾患の状態および全種類の治療反応の決定において、決定因子および指令因子の役割を明らかに担っている。したがって、本発明は子宮頸癌患者において致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供するものである。より積極的かつ適切な治療が致死性細胞と関連するこれらの早期子宮頸癌患者にとって確実に必要とされている。致死性細胞を標的とすることは、致死性細胞と関連する早期子宮頸癌患者の治療において、従来型の侵襲性早期子宮頸癌細胞を標的とするのと同様に不可欠かつ重要であるはずである。
【実施例7】
【0077】
結腸直腸癌患者は致死性細胞と関連する場合、好ましくない転帰および乏しい治療反応を有する傾向がある。
結腸直腸癌は世界で2番目に多い癌であり、癌に関連した死亡の3番目に多い原因である。結腸直腸癌の分子病態論に関する大きな進歩が達成されてきているにも関わらず、治療選択肢は未だ満足のいくものではない。診断による腫瘍病期は、未だ最も重要な予後の臨床病理学指標である。しかしながら、同じ病理学的病期を有する患者は、様々な生存転帰を示し得る。例えば、第II−III期の患者の予後決定における不正確さは、40%にもなり得る。これは正しい補助療法プロトコルの選択において大変な困難をもたらし、多くの患者において過剰治療または過少治療ももたらし得る。したがって、転帰をより良く予測し、かつリスクに適合した治療のための新たな計画を保障する。
【0078】
74人の患者が致死性細胞研究に使用可能である完全な臨床病理学的データおよび検体を有していた。研究対象患者の臨床病理学的特性を表11にまとめた。27歳から97歳(平均63歳)の年齢範囲の74人の結腸直腸癌の研究対象患者(男性37人おは、よび女性37人)のうちで、平均腫瘍サイズは5.0±2.8cm(平均±SD;中央値、4.5cm)であり、腫瘍の原発部位は、59人の患者(79.7%)において結腸、および15人の患者(20.3%)において直腸と分類した。結腸直腸癌試料における分化の程度は、7人の患者(9.5%)を高分化、61人の患者(82.4%)を中分化、および6人の患者(8.1%)を低分化に段階付けた。癌患者は、第I、II、III、およびIV期に、9人の患者(12.2%)、40人の患者(54.1%)、18人の患者(24.3%)、および7人の患者(9.5%)をそれぞれ分類した。浸潤の深度は、T1、T2、T3、およびT4に、2人の患者(2.7%)、8人の患者(10.8%)、13人の患者(17.6%)、および51人の患者(68.9%)をそれぞれ評価して記録した。50人の患者(67.6%)は陽性病理学的N病期を有する一方で、24人の患者(32.4%)は陽性病理学的N病期を有していなかった。74人の患者のうち35人の患者(47.3%)が補助療法を受けた。追跡調査の期限である2005年までに、50人の患者(67.6%)は生存しており、24人の患者(32.4%)は病死した。74人の結腸直腸癌患者の5年の無病生存率および全生存率は、それぞれ67.5%および70.2%であった。
結腸直腸癌患者特性
【0079】
【表11】

連続変数の結果を平均±SDとして表す。
【0080】
本研究における患者特性は現在の疫学的状況に類似しており、それは独立コホート研究においてこれらの事例から得られた結果が世界的に結腸直腸癌に応用可能であることを示唆している。したがって、結腸直腸癌患者の疾病状態および治療反応の決定における致死性細胞の役割を評価するために、この代表的な研究集団を使用することを決定した。カプラン・マイヤー法を用いた致死性細胞の予後的意義における単変量解析によって、結腸直腸癌患者は致死性細胞と関連する場合、不良な転帰を有する傾向があることが明らかになった(P<0.001)。5年無病生存率は、致死性細胞を有する患者では42.3%であるのに対し、陰性患者では81.2%であった(P<0.001)。5年全生存率は、致死性細胞を有する患者では46.2%であるのに対し、陰性患者では83.2%であった(P<0.001)。多変量解析によって、致死性細胞(P=0.003)およびリンパ節転移(P=0.040)は、無病生存率に対する独立予後因子であることが示された。また、全生存率についても、致死性細胞(P=0.005)およびリンパ節転移(P=0.024)は、唯一の独立予後因子であった。致死性細胞は、結腸直腸癌の進行および患者生存率に対する最も強い独立予後予測因子であることが分かった(無病生存率において、HR 4.279、95%CI 1.647−11.114、P=0.003、全生存率において、HR 4.306、95%CI 1.557−11.909、P=0.005)。
【0081】
より詳細には、第II−III期の結腸直腸癌患者は致死性細胞と関連する場合、補助化学療法の後に不良な転帰を有する傾向がある。カプラン・マイヤー生存曲線および対数順位検定によって決定されるところ、補助化学療法に反応して、5年生存率は致死性細胞を有する第II−III期の結腸直腸癌患者において、同じ第II−III期の結腸直腸癌患者ではあるがいかなる致死性細胞も有さない患者の77.3%と比較すると、わずか38.5%(P<0.001)まで低下した。ロジスティック回帰分析により、補助化学療法に反応して、いかなる致死性細胞も有さない第II−III期の結腸直腸癌患者の生存オッズ比は、同じ第II−III期の結腸直腸癌患者ではあるが致死性細胞を有する患者と比較して、最大5.440まで上昇することがさらに明らかになった(95%CI 1.217−24.321;P=0.027)。
【0082】
致死性細胞は、全病期における結腸直腸癌患者の治療可能な疾患または治療不可能な疾患の状態および全種類の治療反応の決定において、決定因子および指令因子の役割を明らかに担っている。したがって、本発明は結腸直腸癌患者において致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供するものである。より積極的および適切な治療が、致死性細胞と関連するこれらの結腸直腸癌患者にとって確実に必要とされている。致死性細胞を標的とすることは、致死性細胞と関連する結腸直腸癌患者の治療において、従来型の侵襲性結腸直腸癌細胞を標的とするのと同様に不可欠かつ重要であるはずである。
【実施例8】
【0083】
膵臓癌患者は致死性細胞と関連する場合、非常に好ましくない転帰および乏しい治療反応を有する傾向がある。
膵臓癌は癌による死亡原因の第4位であり、あらゆる固形癌の中で最も低い生存率を有する。それの遅い発見、急速な進行、ならびに化学療法および放射線療法に対する抵抗によって、膵臓癌は極めて致命的な新生物である。潜在的治癒切除を受けたこれらの患者において、5年生存率はわずか20%である。その早期に診断を行うことは必ずしも容易ではないため、長年にわたる多数の調査により膵臓癌の正確なマーカーを発見するよう努められてきた。現在の標準血清マーカー、sialylated Lewis(a)血液型抗原CA19−9は、広く使用されているが、極めて悪性の挙動を有する患者を確実に区別することは不可能である。したがって、新規のスクリーニング、早期診断、および治療計画を開発するために、膵臓癌の分子的病因に対するより良い理解を促進し、かつ潜在的標的を提供するよう、多基質/多機能シグナル分子が大いに必要とされている。
【0084】
本研究は、致死性細胞研究に使用可能である完全な臨床病理学的データおよび検体を有する全部で74人の膵臓癌患者を含むものであった。研究対象患者の臨床病理学的特性を表12にまとめた。36歳から80歳(平均61.8歳)の年齢範囲の74人の研究対象患者(男性48人および女性26人)のうちで、平均腫瘍サイズは4.4±1.9(平均±SD、中央値、4.0)であった。腫瘍は、56人の患者(75.7%)において膵頭部、および18人の患者において膵体部または膵尾部に位置していた。リンパ管浸潤およびリンパ節転移は、35人の患者(47.3%)および39人の患者(52.7%)においてそれぞれ発見された。2002年の病期分類システムによれば、腫瘍浸潤の深度は、17人の患者(23.0%)においてpT2、43人の患者(51.4%)においてpT3、および13人の患者(24.3%)においてpT4であった。2002年の病期分類システムによれば、患者は、第I期に10人の患者(13.5%)、第II期に40人の患者(54.1%)、第3期に11人の患者(14.9%)、および第IV期に13人の患者(17.6%)が分類された。神経周囲の浸潤は40人の患者(54.1%)において観察された。腫瘍分化度は、18人の患者(24.3%)を高分化、38人の患者(51.4%)を中分化、および18人の患者(24.3%)を低分化に段階付けた。補助療法を27人の患者(36.5%)において実施した。2年の無病生存率および全生存率は、それぞれ18.6%および28.9%であった。
膵臓癌患者特性
【0085】
【表12】

連続変数の結果を平均±SDとして表す。
【0086】
本研究における患者特性は現在の疫学的状況に類似しており、それは独立コホート研究においてこれらの事例から得られた結果が世界的に膵臓癌に応用可能であることを示唆している。したがって、膵臓癌患者の疾病状態および治療反応の決定における致死性細胞の役割を評価するために、この代表的な研究集団を使用することを決定した。カプラン・マイヤー法を用いた致死性細胞の予後的意義における単変量解析によって、膵臓癌患者は致死性細胞と関連する場合、極めて不良な転帰を有する傾向があることが明らかになった(P<0.001)。2年無病生存率は、致死性細胞を有する患者では5.5%であるのに対し、致死性細胞を有さない患者では51.5%であった(P<0.001)。2年全生存率は、致死性細胞を有する患者では13.3%であるのに対し、陰性患者では67.6%であった(P<0.001)。多変量解析によって、致死性細胞(P=0.001)、腫瘍位置(P=0.004)、リンパ節転移(P=0.018)、およびCA19−9(P=0.041)は、無病生存率に対する独立予後因子であることが示された。全生存率については、致死性細胞(P=0.001)、腫瘍位置(P=0.001)、およびCA19−9(P=0.012)が独立予後因子であった。致死性細胞は、膵臓癌の進行および患者生存率に対する最も強い独立予後予測因子であることが分かった(無病生存率において、HR 4.309、95%CI 1.890−9.821、P=0.001、および全生存率において、HR 4.844、95%CI 1.831−12.816、P=0.001)。
【0087】
より詳細には、58%を超える早期膵臓癌患者が致死性細胞を示し、かつ良好な転帰を有し得なかった(2年無病生存率においては17.1%対70.0%、および2年全生存率においては15.6%対80.0%;P<0.001)。早期膵臓癌患者は致死性細胞と関連する場合、同じ早期膵臓癌患者ではあるがいかなる致死性細胞も有さない患者と比較して、潜在的治療処理の後でさえ明らかにはっきりとした不良な転帰を有していた。ロジスティック回帰分析によって、膵臓癌患者は致死性細胞と関連する場合、補助療法への乏しい反応を有する傾向があることがさらに明らかになった。補助療法に反応して、膵臓癌患者の2年生存率が12.5%であるのに対し、致死性細胞が陰性の膵臓癌患者では66.7%であり、致死性細胞陰性の患者のオッズ比は陽性患者の14倍を超えた(OR14.250、95%CI1.162−174.801;P=0.038)。
【0088】
致死性細胞は、全病期における膵臓癌患者の治療可能な疾患または治療不可能な疾患の状態および全種類の治療反応の決定において、決定因子および指令因子の役割を明らかに担っている。したがって、本発明は膵臓癌患者において致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供するものである。より積極的かつ適切な治療が致死性細胞と関連するこれらの膵臓癌患者にとって確実に必要とされている。致死性細胞を標的とすることは、致死性細胞と関連する膵臓癌患者の治療において、従来型の侵襲性膵臓癌細胞を標的とするのと同様に不可欠かつ重要であるはずである。
【実施例9】
【0089】
胆管癌患者は致死性細胞と関連する場合、非常に好ましくない転帰および乏しい治療反応を有する傾向がある。
胆管癌は2番目に多い原発性の肝臓腫瘍である。過去30年にわたって世界的に胆管の発生が上昇している。外科手術が依然として治療の可能性をもたらす唯一の治療介入のままである。残念ながら、胆管癌患者の予後は、外科治療および内科治療における最近の進歩にも関わらず、通常不満を感じるものである。リンパ節転移および組織学的グレードなどのいくつかの因子が予後因子として立証されてきた。しかしながら、同様の臨床病理学的病期における予後は多様である。したがって、最適な医学的管理のために、特に侵襲性疾患の患者の不良転帰を予測するより信頼性のあるバイオマーカーを開発するため、胆管癌に関与する分子および細胞の過程におけるより良い理解を得ることに強い関心がある。しかしながら、胆管癌の腫瘍侵襲性および進行に関する分子および細胞の作用機構は非常に不明確なままであり、さらに確立される必要がある。
【0090】
121人の早期胆管癌患者は、致死性細胞研究に使用可能である完全な臨床病理学的データおよび検体を有していた。研究対象患者の臨床病理学的特性を表13にまとめた。25歳から89歳(平均63.2歳)の年齢範囲の121人の胆管癌の研究対象患者(男性52人および女性69人)のうちで、平均腫瘍サイズは3.4±1.9cm(平均±SD;中央値、3cm)であった。胆道系における腫瘍の位置によって、腫瘍は、56人の患者(46.3%)および65人の患者(53.7%)において、それぞれ肝内および肝外の種類に分類した。分化の程度は、36人の患者(29.7%)を高分化、59人の患者(48.8%)を中分化、および26人の患者(21.5%)を低分化に段階付けた。腫瘍は、43人の患者(35.5%)において胆管(T1)、25人の患者(20.7%)において胆管の壁を越えて浸潤(T2)、および53人の患者(43.8%)において肝臓、胆嚢、膵臓および/または門脈または肝動脈の片側分枝に浸潤(T3)に限局した。91人の患者(75.2%)はリンパ節転移していなかった。早期胆管癌患者は、第IおよびII期に、58人の患者(47.9%)、および63人の患者(52.1%)をそれぞれ分類した。121人の早期胆管癌患者の5年生存率は32.7%であった。
胆管癌患者特性
【0091】
【表13】

連続変数の結果を平均±SDとして表す。
【0092】
本研究における患者特性は現在の疫学的状況に類似しており、それは独立コホート研究においてこれらの事例から得られた結果が世界的に胆管癌に応用可能であることを示唆している。したがって、胆管癌患者の疾病状態および治療反応の決定における致死性細胞の役割を評価するために、この代表的な研究集団を使用することを決定した。カプラン・マイヤー生存曲線および対数順位検定によって、121人中75人(62.0%)の早期胆管癌患者は致死性細胞を示し、非常に不良な転帰を有することが明らかになった。致死性細胞と関連する場合の早期胆管癌患者の5年生存率は、同じ早期胆管癌患者ではあるがいかなる致死性細胞も有さない患者の65%を超える値から、20%未満まで低下した(P<0.001、対数順位検定)。平均生存期間は、致死性細胞を有する患者において14か月であったが、致死性細胞を有さない患者までは届かなかった(P<0.001)。コックス回帰分析によって、早期胆管癌患者は致死性細胞と関連する場合、同じ早期胆管癌患者ではあるがいかなる致死性細胞も有さない患者と比較すると、3倍を超える予後不良の危険性を有していた(ハザード比 3.262、95%CI 1.806−5.889;P<0.001)。さらに、別の29人の進行期胆管癌患者が致死性細胞の研究に使用可能である完全な臨床病理学的データおよび検体を有していた。興味深いことに、29人の進行期患者のうち、25人の患者(86.2%)もまた致死性細胞を示し、非常に不良な転帰を有していた。致死性細胞と関連する進行期胆管癌患者の2年生存率は5%未満であり、平均生存期間は7.2か月であった。
【0093】
致死性細胞は、全病期における胆管癌患者の治療可能疾患または治療不可能疾患の状態および全種類の治療反応の決定において、決定因子および指令因子の役割を明らかに担っている。したがって、本発明は胆管癌患者において致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供するものである。より積極的かつ適切な治療が致死性細胞と関連するこれらの胆管癌患者にとって確実に必要とされている。致死性細胞を標的とすることは、致死性細胞と関連する胆管癌患者の治療において、従来型の侵襲性胆管癌細胞を標的とするのと同様に不可欠かつ重要であるはずである。
【実施例10】
【0094】
腎癌患者は致死性細胞と関連する場合、非常に好ましくない転帰および乏しい治療反応を有する傾向がある。
腎癌は男性における全悪性腫瘍の3%を占め、前立腺癌および膀胱癌に次いで3番目に多い泌尿器癌である。これまで、腫瘍の病期およびグレードは、腎癌患者の主要な予後パラメータであると考えられてきた。しかしながら、多くの場合、これらのパラメータは腎癌の臨床的挙動を予測するのに不十分であった。また、最近の研究で、腫瘍が限局する場合の再発を予測するために病期単独を信頼することは不可能であることが立証された。そのため、腎臓の切除が腎癌の主な治療法であるが、早期および限局した癌の約70%のみに効果がある。したがって、腫瘍進行の危険性が高い患者を同定するために、さらなる予後因子が必要とされている。
【0095】
88人の腎癌患者は、致死性細胞研究に使用可能である完全な臨床病理学的データおよび検体を有していた。研究対象患者の臨床病理学的特性を表14にまとめた。31歳から73歳(平均59歳)の範囲の男性52人および女性36人は、本研究において腎摘出術を受けた。腫瘍の平均サイズは7.0±4.7cmであった。検査を受けた88個の腫瘍の間で、71個の腫瘍(80.7%)は従来型(明細胞癌)、5個の腫瘍(5.7%)は乳頭状腎細胞癌、4個の腫瘍(4.5%)は混合型腎癌、1個の腫瘍(1.1%)は集合管癌、および7個の腫瘍(7.9%)は未分類腎細胞癌であった。グレード分布を以下に示す:29個(33.0%)がグレード1、32個(36.4%)がグレード2、16個(18.2%)がグレード3、および11個(12.5%)がグレード4。腫瘍病期を、腫瘍−結節−転移(TNM)分類に従って定義した。59個の腫瘍(67.0%)は腎臓に限局され(第I−II期)、かつ21個の腫瘍(23.9%)は腎臓の外部に拡張していた(第III−IV期)。外科手術の際、4人の患者は遠隔転移していた。生存期間は外科手術の日から死亡日または追跡調査の最終日までで計算した。88人の患者の5年の無病生存率および全生存率は、それぞれ63.5%および79.5%であった。
腎癌患者特性
【0096】
【表14】

連続変数の結果を平均±SDとして表す。
【0097】
本研究における患者特性は現在の疫学的状況に類似しており、それは独立コホート研究においてこれらの事例から得られた結果が世界的に腎癌に応用可能であることを示唆している。したがって、腎癌患者の疾病状態および治療反応の決定における致死性細胞の役割を評価するために、この代表的な研究集団を使用することを決定した。カプラン・マイヤー法を用いた致死性細胞の予後的意義における単変量解析によって、腎癌患者は致死性細胞と関連する場合、不良な転帰を有する傾向があることが明らかになった(P<0.001)。5年無病生存率は、致死性細胞を有する患者では30.0%であるのに対し、致死性細胞を有さない患者では79.3%であった(P<0.001)。5年全生存率は、致死性細胞を有する患者では53.3%であるのに対し、陰性患者では93.1%であった(P<0.001)。多変量解析によって、致死性細胞(P<0.001)、およびリンパ節転移(P<0.001)は、無病生存率に対する独立予後因子であることが示された。全生存率についても、致死性細胞(P<0.001)、およびリンパ節転移(P=0.001)は、唯一の独立予後因子であった。致死性細胞は、腎癌の進行および患者生存率に対する最も強い独立予後予測因子であることが分かった(無病生存率において、HR 4.307、95%CI 2.068−8.969、P<0.001、全生存率において、HR 8.359、95%CI 2.659−26.272;P<0.001)。
【0098】
より詳細には、カプラン・マイヤー生存曲線および対数順位検定によって決定されるところ、5年無病生存率は、早期腎癌患者が致死性細胞と関連する場合、同じ早期腎癌患者ではあるが致死性細胞を有さない患者の86.4%から、わずか40.0%まで低下した(P<0.001)。進行期腎癌患者では、致死性細胞陽性患者の5年無病生存率がわずか20%であるのに対し、致死性細胞陰性患者では54.5%であった。コックスハザード回帰分析によって、早期腎癌患者は、同じ早期腎癌患者ではあるがいかなる致死性細胞も有さない患者と比較して、3.5を超える再発の危険性を有しており(HR 3.547、95%CI 1.493−8.424;P=0.004)、かつ進行期腎癌患者のハザード比は8.974まで増加する(95%CI 3.667−21.961 ;P<0.001)ことが明らかとなった。また、ロジスティック回帰分析によって、腎癌患者は致死性細胞と関連しない場合、外科手術および補助療法に反応して、生存オッズ比は8.320(95%CI 1.972−35.009;P=0.004)を維持することが確認された。
【0099】
致死性細胞は、全病期における腎癌患者の治療可能な疾患または治療不可能な疾患の状態、および全種類の治療反応の決定において、決定因子および指令因子の役割を明らかに担っている。したがって、本発明は腎癌患者において致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供するものである。より積極的かつ適切な治療が致死性細胞と関連するこれらの膵臓癌患者にとって確実に必要とされている。致死性細胞を標的とすることは、致死性細胞と関連する腎癌患者の治療において、従来型の侵襲性腎癌細胞を標的とするのと同様に不可欠かつ重要であるはずである。
【実施例11】
【0100】
脳腫瘍患者は致死性細胞と関連する場合、非常に好ましくない転帰および乏しい治療反応を有する傾向がある。
脳腫瘍は中枢神経系において最もよく見られる腫瘍であり、異なる形態から構成されている。脳腫瘍の分子、生化学、および形態学的特徴に関する増大する情報量にも関わらず、それらの治療において効果は依然限られたものである。これまでのところ、年齢および組織学的グレードのみが生存率の独立予測因子として際立っている。各腫瘍グレードの範囲内において、各腫瘍グレードは単一の病理学的疾患単位ではなく可変悪性度を有する腫瘍範囲を包含するため、臨床経過はやはり変化する。したがって、新規の生物学的マーカーを同定することは、より効果的な治療手段を開発し、治療反応を予測し、かつ生存率を向上させるために極めて重要である。
【0101】
81人の脳腫瘍患者は、致死性細胞研究に使用可能である完全な臨床病理学的データおよび検体を有していた。研究対象患者の臨床病理学的特性を表15にまとめた。3歳から77歳(平均42歳)の年齢範囲の研究対象の81人の患者(男性41人および女性40人)のうちで、平均腫瘍サイズは4.7±2.3cm(平均±SD;中央値、4.0cm)であった。腫瘍試料を世界保健機構基準を使用して段階付けた。28個の腫瘍(35%)を低悪性度星細胞腫(グレード2)、14個の腫瘍(17%)を未分化または乏突起星細胞腫(グレード3)、および39個の腫瘍(48%)を多形性膠芽腫(グレード4)に分類した。50人の患者(61.7%)は術後に照射および/または化学療法を受けた。81人の患者の5年の無病生存率および全生存率は、それぞれ28.2%および40.6%であった。
脳腫瘍患者特性
【0102】
【表15】

略語:グレード3、未分化または乏突起星細胞腫;グレード4、多形性膠芽腫
連続変数の結果を平均±SDとして表す。
【0103】
本研究における患者特性は現在の疫学的状況に類似しており、それは独立コホート研究においてこれらの事例から得られた結果が世界的に脳腫瘍に応用可能であることを示唆している。したがって、脳腫瘍患者の疾病状態および治療反応の決定における致死性細胞の役割を評価するために、この代表的な研究集団を使用することを決定した。カプラン・マイヤー法を用いた致死性細胞の予後的意義における単変量解析によって、脳腫瘍患者は致死性細胞と関連する場合、非常に不良な転帰を有する傾向があることが明らかになった(P<0.001)。5年無病生存率は、致死性細胞を有する患者では11.1%であるのに対し、致死性細胞を有さない患者では41.9%であった(P<0.001)。5年全生存率は、致死性細胞を有する患者では16.7%であるのに対し、陰性患者では59.6%であった(P<0.001)。コックス単変量比例ハザード回帰分析によって、致死性細胞、年齢、および多形性膠芽腫が、疾病再発および死亡率の高い危険性と著しく関連していることが明らかとなった(P<0.001)。脳腫瘍患者における致死性細胞は、無病生存率(HR 3.014、95%CI 1.777−5.113、P<0.001)および全生存率(HR 4.531、95%CI 2.463−8.336、P<0.001)に対する非常に強力な予後指標としてさらに同定された。
【0104】
興味深いことに、術後補助化学療法を受けた50人の患者のうちで、致死性細胞はまた患者の転帰に著しく関与していた。補助化学療法に反応して、致死性細胞を有さない脳腫瘍患者はより良好な転帰を有し、致死性細胞を有する患者は大多数が明らかに不良な転帰を有していた。陽性患者の5年生存率は10.0%であるのに対し、陰性患者では53.2%であった(P<0.001)。ロジスティック回帰が適用されると、致死性細胞、年齢、および組織学が、単変量解析において補助療法反応の潜在的予後予測因子であった。致死性細胞は、どの脳腫瘍患者が補助療法からの利益を得るか決定に対して、最も強い独立予後指標としてさらに同定された(OR 8.081、95%CI 1.141−57.213、P=0.036)。
【0105】
致死性細胞は、全病期における脳腫瘍患者の治療可能な疾患また治療不可能な疾患の状態および全種類の治療反応の決定において、決定因子および指令因子の役割を明らかに担っている。したがって、本発明は脳腫瘍患者において致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供するものである。より積極的かつ適切な治療が致死性細胞と関連するこれらの脳腫瘍患者にとって確実に必要とされている。致死性細胞を標的とすることは、致死性細胞と関連する脳腫瘍患者の治療において、従来型の侵襲性脳腫瘍細胞を標的とするのと同様に不可欠かつ重要であるはずである。
【実施例12】
【0106】
癌患者は致死性細胞と関連する場合、積極的治療の後でさえも非常に好ましくない転帰を有する傾向がある。
1948人の様々なタイプの癌患者は、致死性細胞研究に使用可能である完全な臨床病理学的なデータおよび検体を有していた。1歳から97歳(平均±SD、56.4±14.8)の年齢範囲の1948人の研究対象患者(男性997人および女性951人)のうち、癌の種類は、55人の患者において膀胱癌、186人の患者において乳癌、85人の患者において脳腫瘍、161人の患者において子宮頸癌、161人の患者において胆管癌、93人の患者において結腸直腸癌、30人の患者において子宮内膜癌、38人の患者において食道癌、143人の患者において肝癌、152人の患者において胃癌、169人の患者において肺癌、92人の患者において上咽頭癌、134人患者において口腔癌、61人の患者において卵巣癌、127人の患者において膵臓癌、83人の患者において前立腺癌、93人の患者において腎癌、および85人の患者においてリンパ腫であった。患者を2006年4月まで観察した。約43.6%の癌患者(1948人中850人)は致死性細胞を示した(表16)。カプラン・マイヤー法によって、癌患者は、腫瘍間質、および/または末梢血、および/または腹水、および/または胸水、および/または骨髄において致死性細胞と関連する場合、非常に不良な転帰を有する傾向があることが明らかになった(P<0.001)。5年無病生存率は、致死性細胞を有する患者では17.1%であるのに対し、致死性細胞を有さないそれらの患者では74.7%であった(P<0.001、図4A)。5年全生存率は、致死性細胞を有する患者では25.0%であるのに対し、致死性細胞を有さない患者では84.1%であった(P<0.001、図4B)。癌の病因に関わらず、大多数の癌患者は致死性細胞と関連する場合、外科手術、化学療法、放射線療法、およびホルモン療法を含む積極的治療の後でさえ、不良な転帰を生じる傾向がある。
【0107】
致死性細胞は、全病期における癌患者の治療可能な疾患また治療不可能な疾患の状態および全種類の治療反応の決定において、決定因子および指令因子の役割を明らかに担っている。したがって、本発明は様々なタイプの癌患者において致死性細胞を検出する方法および組成物、ならびにその使用を提供するものである。より積極的かつ適切な治療が致死性細胞と関連するこれらの癌患者にとって確実に必要とされている。致死性細胞を標的とすることは、致死性細胞と関連する癌患者の治療において、従来型の侵襲性癌細胞を標的とするのと同様に不可欠かつ重要であるはずである。
患者特性
【0108】
【表16】

【0109】
興味深いことに、早期癌患者の比較的大集団はすでに致死性細胞と関連しており、かつ潜在的治療処理の後でさえ、良好な転帰を有し得ないことが分かった。一方で、進行期癌患者の比較的大集団は、いかなる致死性細胞も有しておらず、致死性細胞を有する同じ進行期の癌患者と比較して、治療の後にかなり良好な転帰を有することが分かった。したがって、致死性細胞および癌細胞の発症経路と病期は明らかに異なる。
【0110】
結論として、本発明において示される致死性細胞を標的とすることは、様々なタイプの癌患者の治療において、従来型の癌細胞を標的とすることと同様に等しく不可欠かつ重要であるはずである。より積極的かつ適切な治療が致死性細胞と関連するこれらの癌患者を治療するために必要とされている。
【図1(A)】

【図1(B)】

【図1(C)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
致死性細胞の存在を被験者において検出する方法であって、該方法は、
前記被験者から生物学的試料を採取し、
前記試料において、BMDSC内におけるPDPK F/GSK−3αの発現特性を決定することを含み、
前記BMDSC内におけるPDPK F/GSK−3αの異常な細胞内蓄積により、前記致死性細胞の存在が示唆される検出方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、前記PDPK F/GSK−3αの発現は、該PDPK F/GSK−3αのタンパク質レベルを評価することによって決定する方法。
【請求項3】
請求項2の方法であって、前記PDPK F/GSK−3αタンパク質の発現は、該PDPK F/GSK−3αに特異的な抗体を使用した免疫測定法により決定する方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、前記PDPK Fの異常な細胞内蓄積は、細胞質および細胞核の両方での発現レベルである方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、前記生物学的試料は、骨髄、末梢血、組織、腫瘍、腹水、または胸水である方法。
【請求項6】
請求項1の方法であって、前記BMDSCは、造血幹/前駆細胞および間葉幹/前駆細胞から成る群より選択される方法。
【請求項7】
癌患者の疾病状態および治療反応を観察する方法であって、該方法は、
前記被験者から生物学的試料を採取し、
前記試料中のBMDSC内におけるPDPK F/GSK−3αの発現特性を決定することを含み、
前記BMDSC内におけるPDPK F/GSK−3αの異常な細胞内蓄積により、前記癌患者の疾病状態および治療反応が予測される観察方法。
【請求項8】
請求項7の方法であって、前記治療反応は、外科手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法などから成る群より選択される方法。
【請求項9】
請求項7の方法であって、前記癌患者は、膀胱、胸、脳、胆管、子宮頸部、結腸直腸、子宮内膜、食道、胃、肝臓、肺、上咽頭、口腔、卵巣、膵臓、前立腺、および腎臓の癌、白血病、ならびにリンパ腫から成る群より選択される方法。
【請求項10】
致死性細胞を生物学試料において検出するキットであって、
BMDSC特異抗体、
PDPK F/GSK−3α特異抗体、および
補助試薬を含み、
前記PDPK F/GSK−3αのタンパク質発現レベルを評価することが可能なキット。
【請求項11】
試験化合物を、致死性細胞を標的とした潜在的薬剤としてスクリーニングする方法であって、該方法は、
前記試験化合物を前記致死性細胞と接触させ、
前記試料におけるPDPK F/GSK−3αの発現を決定することを含み、
前記試料におけるPDPK F/GSK−3αの異常な細胞内蓄積の減少は、前記試験化合物が前記致死性細胞を標的とした潜在的薬剤であることを示唆しているスクリーニング方法。
【請求項12】
請求項11の方法であって、前記試験化合物は天然物の抽出物を含む方法。
【請求項13】
請求項11の方法であって、前記試験化合物は組み合わせ化学ライブラリーのメンバーを含む方法。

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate


【公表番号】特表2013−504039(P2013−504039A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527193(P2012−527193)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/CN2010/076527
【国際公開番号】WO2011/026429
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(511180123)ナショナル・チン・フア・ユニバーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL TSING HUA UNIVERSITY
【Fターム(参考)】