説明

舌下神経を刺激して患者の舌の位置を調節するシステム

患者の舌の位置を調節するシステムは、少なくとも1つの電極を患者の舌下神経に取り付けることと、舌下神経内に配置された目標とされる少なくとも1つの遠心性運動線維に電極を通じて電気信号を印加して舌の少なくとも1つの筋肉を刺激することとを含む。システムは、複数の接点を使用して複数の遠心性運動線維を目標とすることと、複数の筋肉を刺激することとを含んでもよい。舌の位置を維持するための刺激負荷を各筋肉によって共有することができる。閉塞性睡眠時無呼吸を防止するために患者の舌の位置を調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年11月10日に出願され、「System For Stimulating A Hypoglossal Nerve For Controlling The Position Of A Patient’s Tongue」という名称を有し、参照によって本明細書に全体的に組み込まれる米国仮特許出願第61/259893号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、概して、舌下神経を刺激して患者の舌の位置を調節するシステムに関する。一実施形態では、舌下神経は閉塞性睡眠時無呼吸を防止するために刺激される。
【背景技術】
【0003】
睡眠時無呼吸は、睡眠時に呼吸が一時停止することを特徴とする睡眠障害である。睡眠時無呼吸に罹患した人は、夜間の睡眠時に何度も呼吸が停止する。一般に医学文献に中枢性睡眠時無呼吸および閉塞性睡眠時無呼吸として記載されている2種類の睡眠時無呼吸がある。中枢性睡眠時無呼吸は、呼吸に関与する筋肉を興奮させる適切な信号を生成する神経系の障害である。閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠時に上気道流路(UAW)が物理的に妨害される発作によって発症する。この物理的な妨害は、睡眠中の舌110の位置が変化し、それによって、咽喉または咽頭(図1、2A、および2B参照)の後方の軟部組織が閉塞することによって生じることが多い。
【0004】
OSAは、気道が完全に妨害されて呼吸が完全に停止する(無呼吸)かあるいは部分的に停止する(呼吸低下)ことを特徴とする。ヒトの気道(胸部レベル)は、軟部組織で覆われており、気道の壁が落ち込むと気道が閉塞され、酸素の吸入が不十分になり、それによって睡眠が中断される(発作または微小覚醒)。
【0005】
睡眠中には舌の筋肉が弛緩する。この弛緩状態では、舌はその正常な筋緊張形状および位置を変化させるのを妨げるのに十分な筋緊張ができなくなる可能性がある。舌および上気道の軟部組織の基部が落ち込むと、上気道流路が閉塞され、無呼吸事象が生じる(図2B)。上気道が閉塞すると、空気が肺に流入するのが妨げられ、血中酸素濃度が低下し、血圧が上昇し心臓が肥大する。このため、正常な開存性が回復されるまで上気道流路が反射的に強制的に開放され、正常な開存性が回復した後、次の無呼吸事象が生じるまで正常な呼吸が行われる。このような反射的で強制的な開放によって、患者は短時間の間覚醒する。
【0006】
OSAは、生命を脅かす恐れもある疾患であり、睡眠時無呼吸に罹患している患者の大部分において診断されないままでいることが多い。睡眠時無呼吸の重症度は、無呼吸および呼吸低下の発作が10秒以上続いた回数を睡眠時間で割ることによって求められる。この結果得られる数は無呼吸低呼吸指数またはAHIと呼ばれる。この指数が大きければ大きいほど状態は深刻である。指数が5から10の間は軽度であり、10から15の間は中等度であり、15を超えるとやや重度であり、30を超えると重度の睡眠時無呼吸を示す。
【0007】
現在の治療の選択肢としては、薬物療法から、非侵襲的手法、より侵襲的な外科手術までが含まれる。これらの例の多くでは、患者の承諾および治療順守が望まれるレベルよりもかなり低く、現在の解決手段は長期的な解決手段としては有効ではない。
【0008】
OSAに対する現在の治療の選択肢はすべての患者に対して一貫して有効であるわけではない。OSAの標準的な治療法は、Continuous Positive Airway Pressure(CPAP)療法であり、この場合、患者は、空気を鼻孔および口腔に送り込んで気道を開放したままにするためのマスクを着用する必要がある。不快感、およびくしゃみ、鼻汁、乾燥、皮膚炎、閉所恐怖症、パニック発作などの副作用のために患者の順守は不十分である。軟口蓋を構造的に支持するために軟口蓋に硬いインサートが埋め込まれる外科手術は、OSAの中等度症例に対するより侵襲的な治療である。他の治療はずっと侵襲的で思い切った治療であり、口蓋垂口蓋咽頭形成術および気管切開術が含まれる。しかし、外科的方法または機械的方法は、侵襲的であり患者に不快感を与える傾向があり、必ずしも効果的ではなく、その多くは患者が耐えられない方法である。
【0009】
神経を刺激して舌の位置を調節することは、これらの形態の治療に代わる有望な方法である。たとえば、舌下神経(XII)(図3)の刺激による咽頭拡張は、OSAに有効な治療方法であることが分かっている。睡眠中に、埋め込まれた電極を使用して神経を刺激し、舌を動かして気道を開放する。特に、内側XII神経枝(すなわち、オトガイ舌骨筋内の神経枝)は、UAW空気流抵抗が著しく低下したこと(すなわち、咽頭内径が大きくなったこと)を示している。実験によって、神経の電気的刺激がある状態(たとえば、UAWにおける妨害)を解消または軽減することが分かっているが、現在実施されている方法では通常、ある状態(たとえば、気道または胸壁の拡張が筋肉によって妨害されていること)を正確に検出し、筋肉または神経を選択的に刺激し、検出と刺激を結合する必要がある。このようなシステムは、呼吸の検出および/または無呼吸事象の検出を必須条件として使用して、舌の有用な動きのみを生じさせ、舌の筋肉を周期的に休ませ疲労を避けるように電気的刺激を制御し印加する。あるシステムでは、たとえば、電圧制御波形源が2つのカフ電極接点に多重化される。これらの接点に接続された生体信号増幅器は、呼吸パターンに基づいて刺激を制御する。他のシステムでは、微小刺激装置が、呼吸に同期させた埋め込まれた単一接点定電流刺激装置を使用して気道を開放したままに維持する。第3のシステムは、舌下神経の遠位部に取り付けられた単一のカフ電極を有する埋め込み可能なパルス発生装置(IPG)を使用し、刺激のタイミングが呼吸に合わせられる。この最後のシステムは、胸壁に取り付けられたリード線を使用し、胸壁の「生体インピーダンス」を調べることによって呼吸運動を検知する。他のシステムは、迷走神経電気記録図を監視して無呼吸事象を検出し、それに応じて舌下神経を刺激する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第12/572758号
【特許文献2】米国特許出願第61/136102号
【特許文献3】International Patent PCT/US2008/011599
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
呼吸および/または無呼吸事象の検出に依存しない、舌下神経を電気的に刺激して舌の位置を調節するシステムおよび方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のいくつかの実施形態による舌下神経を刺激して患者の舌の位置を調節するシステムは、少なくとも1つの電気信号のうちの1つを舌下神経内に配置された目標とされる少なくとも1つの遠心性運動線維のうちの1つに印加して舌の少なくとも1つの舌の筋肉を刺激するように構成された電極を含む。
【0013】
他の実施形態では、システムは、電極に結合された埋め込み可能なパルス発生装置(IPG)をさらに含む。他の実施形態では、システムは、IPGに結合された遠隔制御充電器を含む。一実施形態では、この遠隔制御装置はIPGに電力を供給する。他の実施形態では、この遠隔制御装置はIPGを再充電する。他の実施形態では、システムは、遠隔制御充電器を充電するように構成されたドッキングステーションを含む。一実施形態では、遠隔制御充電器は、コンピュータに結合されIPGをプログラムするように構成される。他の実施形態では、システムは、IPGの温度を測定するように構成されたセンサを含む。一実施形態では、電極は複数の接点を含む。一実施形態では、IPGは接点を複数の機能群のうちの1つに割り当てるようにプログラム可能である。一実施形態では、IPGは各機能群を順序付けるかあるいはインタリーブするようにプログラム可能である。一実施形態では、各機能群は、患者の気道を開放したままに維持し、第1の機能群は、第2の機能群とは異なる少なくとも1つまたは複数の筋肉を含む。一実施形態では、電極は少なくとも6つの接点を含む。一実施形態では、各接点は、それ自体の独立の電流源によって駆動される。
【0014】
他の実施形態では、システムは体内植込型医療用データ伝送システム(MICS)遠隔測定送受信機を含む。他の実施形態では、システムは誘導リンク遠隔測定送受信機を含む。他の実施形態では、システムは一次ブートローダを含む。他の実施形態では、システムは二次ブートローダを含む。一実施形態では、電極は、舌下神経の一部を覆うように構成されたカフハウジングを含む。一実施形態では、電気信号は、開ループシステムを介して舌下神経に印加される。一実施形態では、電極は複数の電流源によって駆動される。他の実施形態では、システムは事象ロギングメモリを含む。他の実施形態では、システムは、電極接点および患者の組織の少なくとも一方のインピーダンスを測定するように構成されたマルチプレクサを含む。一実施形態では、IPGは気密エンクロージャで覆われる。
【0015】
上記の概要と、舌下神経を刺激して患者の舌の位置を調節するシステムの例示的な実施形態についての以下の詳細な説明は、添付の図面と関連付けて読んだときによりよく理解されよう。しかし、本発明が図示の厳密な構成および手段に限定されないことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ヒトの気道の図である。
【図2A】開放されたヒトの気道の図である。
【図2B】無呼吸事象の間の閉鎖されたヒトの気道の図である。
【図3】ヒトの舌の図である。
【図4A】ヒトの舌下神経の断面図である。
【図4B】ヒトの舌神経の断面図である。
【図4C】ラットの舌下神経の断面図である。
【図5】最大随意収縮、50Hz電気刺激、および単収縮反応を示すヒトの四頭筋の例示的な1組の疲労曲線を示す図である。
【図6】患者の舌下神経に取り付けられた電極の例示的な図である。
【図7】電極の斜視図である。
【図8】複数の接点を示す電極の斜視図である。
【図9】例示的な刺激方式のグラフである。
【図10A】例示的なデューティサイクル刺激方式のグラフである。
【図10B】例示的なインタリーブ刺激方式のグラフである。
【図10C】例示的な同期刺激方式のグラフである。
【図10D】例示的な非同期またはランダム刺激方式のグラフである。
【図11】例示的な強さ-期間曲線である。
【図12】IPGのブロック図である。
【図13】エンクロージャおよびフィードスルーに取り付けられるヘッダおよびインラインコネクタを有するIPGの部分分解斜視図である。
【図14】IPG用の電池支持体の斜視図である。
【図15】チタン製エンクロージャに挿入されるIPG電子機器組立体の部分斜視図である。
【図16】IPGおよびシリコーン製ヘッダ構成要素、フィードスルーに取り付けられるコネクタ構成要素、コネクタ用のガイド、誘導充電コイル、アンテナコイル、磁石、応力除去装置を含むインラインコネクタ組立体の分解斜視図である。
【図17】IPG電源部の概略図である。
【図18】IPGマイクロコントローラ部およびログメモリの概略図である。
【図19】IPGパルス発生アナログ信号サンプリング回路の概略図である。
【図20】IPG体内植込型医療用データ伝送システム(MICS)遠隔測定部の概略図である。
【図21】IPG基板間接続および製造試験アダプタの概略図である。
【図22】遠隔制御充電器(RCC)フロントパネルキーボードおよびLEDの図である。
【図23】RCCのブロック図である。
【図24】RCCドッキングステーション部およびユニバーサルシリアルバス(USB)インタフェース部の概略図である。
【図25】RCC電源部の概略図である。
【図26】RCCマイクロコントローラ部の概略図である。
【図27】RCC MICS遠隔測定部の概略図である。
【図28】RCCキーボードLED部の概略図である。
【図29】充電器コイル(CC)のブロック図である。
【図30】オーラクリニカルマネージャ(aCM)患者マネージャ画面の図である。
【図31】aCM調節画面の図である。
【図32】aCM RCC機能画面の図である。
【図33】aCM手動パラメータ制御画面の図である。
【図34】aCM RCC USB通信画面の図である。
【図35】埋め込み利用モデルのブロック図である。
【図36】調節段階利用モデルのブロック図である。
【図37】患者利用モデルのブロック図である。
【図38】RCCのOn/Off Keyの流れ図である。
【図39】RCCのCharge Keyの流れ図である。
【図40】RCCのTest Keyの流れ図である。
【図41】RCCの一時停止Keyの流れ図である。
【図42】IPG一時停止プロセスの流れ図である。
【図43】IPG充電プロセスの流れ図である。
【図44】睡眠プロセスの流れ図である。
【図45】周波数ティックプロセスの流れ図である。
【図46】次群遅延ティックプロセスの流れ図である。
【図47】睡眠時間ティックプロセスの流れ図である。
【図48】群オン時間ティックプロセスの流れ図である。
【図49】インピーダンス測定プロセスの流れ図である。
【図50】二次ブートローダプロセスの流れ図である。
【図51】IPGメインアプリケーションプロセスの流れ図である。
【図52】2つの有効群による刺激方式の例示的な図である。
【図53】システム要素の代替実施形態の例示的な図である。
【図54】遠隔制御の代替実施形態を示す図である。
【図55】キーフォブ遠隔測定リレーを示す図である。
【図56】充電器および充電器コイルの代替実施形態を示す図である。
【図57】臨床医用の代替利用モデルを示す図である。
【図58】臨床医用の他の代替利用モデルを示す図である。
【図59】患者用の利用モデルを示す図である。
【図60】患者用の他の利用モデルを示す図である。
【図61】IPGを充電する際の患者用の利用モデルを示す図である。
【図62】IPGを充電する際の患者用の他の利用モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
引用によって本明細書に全体的に組み込まれる米国特許出願第12/572758号に記載された実施形態と同様に、本明細書で説明するシステムは、開ループ連続的に動作してOSAに罹患している患者の舌下神経(HGN)を刺激する。図3を参照すると、舌下神経(HGN)322は、主として運動神経であり、様々な外舌筋および内舌筋を活性化する。舌110は、静水力学的構造と呼ばれており、2つの骨表面間で力を発生させることなく比較的一定の体積内に拘束された筋肉である。象の鼻と同様に、舌は、その様々な筋肉要素を収縮させることによってその形状を変え、口腔-咽頭腔内で舌を突き出し後退させ、丸め、平らにし、上下させて、呼吸、発話、咀嚼、および飲み込みを助けることができる。
【0018】
舌筋は、固有の耐疲労特性を示しているという点で体内の他の筋肉とは異なる。舌は、骨格筋が電気的に刺激されたときに通常生じる位置および力の低下なしに長期間にわたる電気刺激によって人工的に活性化される。心筋、胃腸の筋肉、および人体内の他のいくつかの特定の筋肉と同様に、舌筋は、ほぼ一定の活性化に対して特に有利な特性を有し、したがって、HGN 322は、通常患者の覚醒時には存在するが眠りの最も深いレベルの間には存在しない睡眠中に筋肉の緊張、したがって位置および形状を維持する本明細書で説明する方法に適している。
【0019】
当技術分野で公知のように、強さ-期間等しきい値曲線に沿って神経線維を興奮させることができ、振幅が曲線よりも上に位置するかあるいは持続時間が曲線の右側に位置するかぎり神経線維が興奮させられる。例示的な強さ曲線が図11に示されている。曲線の各端部において、曲線の形状は漸近的であり、位相持続時間が限られていると、刺激電流の量をどれだけ増やしても反応がなく、他方の端部では、位相持続時間をどれだけ長くしても反応は生じない。本明細書で説明する発明は、神経線維の回復を調節する手段用に刺激振幅を使用するものであるが、電気的刺激によって神経線維を活性化するという同じ目的に位相持続時間および刺激振幅を含む多数の方法を利用できることを理解されたい。
【0020】
神経線維は、電極接点に近い順に線維径に応じて優先的に活性化されるかあるいは回復させられる。一般に、線維が陰極接点に近いほど、その線維が活性化される可能性が高い(刺激システムの一般的な形態は、陰極接点を目標神経軸索の近くに配置するものであるが、他の刺激形態が存在し、これは当業者には明らかであろう)。線維の直径が大きいほどその神経が活性化される可能性が高い。神経束の距離およびサイズ分布は、時間が経過してもそれほど変化しない。したがって、線維が特定の振幅パルスによって活性化される回復特性も変化しない。印加される刺激が十分に高い周波数に維持される場合、神経線維が刺激されることによって活性化され回復させられた筋肉線維は最終的に疲労する。次いで、筋肉の力および/または位置が弛緩非活性状態に変化する。姿勢制御または四肢運動のための骨格筋の刺激は、刺激が連続的に維持される場合に、通常これらの筋肉を疲労させるとともに所望の機能を失わせることが予期される周波数で行われることが多い。刺激は、上述のように刺激振幅を変化させるか、あるいはパルスの位相持続時間を変化させることによって変調することができる。たとえば、脊髄を損傷したかあるいは他の神経機能障害を有する患者において、所望の機能作用が失われないように、骨格筋用途において疲労を回避するには多大な配慮および労力を要する。
【0021】
HGN 322のような末梢神経は、神経の遠位端でそれぞれ枝分かれする線維を主神経束内の線維束または細管としてグループ化することによって組織化されることが多い。このような末梢神経の断面図は、明確にこの構成を神経線維の別個の領域として示す。これらの束または線維束の近くに配置された刺激電極は、下流側の筋肉群への線維を優先的に活性化する。図4A、4B、および4Cは、ヒト舌下神経322(図4A)およびヒト舌神経(図4B)とラットの舌下神経(図4C)の組織構造を示している。ヒトの舌下神経とラットの舌下神経はどちらも、非束生であり、たいていの末梢神経に存在し、かつ引用によって本明細書に全体的に組み込まれる米国特許出願第12/572758号に記載されているようにヒト舌神経に存在する明確な組織構造がない。それにもかかわらず、神経は組織化されており、周囲に配置された電極を使用して、筋肉の所望の機能、移動、および運動のみに作用するように特定の神経線維、したがって筋肉群を対象とすることができる。
【0022】
疲労は、刺激デューティサイクルを使用し、すなわち、顕著な疲労が開始する前にある時間の間刺激し、次いで停止して筋肉を休ませ、その収縮能力を回復することによって最低限に抑えるかあるいは防止することができる。閉塞性睡眠時無呼吸の場合、これは最適ではない。というのは、電気刺激デューティサイクルのオフ期間の間刺激を印加しないと、舌が所望の位置を維持されなくなり、後退して咽喉の後部に接触し、無呼吸事象が生じるからである。これは、多くのOSA刺激システムがいつ刺激を印加すべきかおよびいつ刺激を停止すべきかを検出するセンサに依存する1つの理由である。やはり舌下神経の律動的な刺激を導入することによって呼吸事象が何らかの理由で自動的に刺激タイミングに同期するように、呼吸事象を検知するのを不要にする、デューティサイクルを使用して刺激を律動的に印加する方法が提案されてきる。これは立証されておらず、睡眠時に微小刺激装置を使用する研究によって、舌下神経の単一点刺激において有用な結果を実現するには呼吸事象に対する刺激のタイミングを手動で調節する必要があることが分かっている。
【0023】
筋肉疲労を最低限に抑えるかあるいは防止する他の方法は、1つまたは複数の独立の電流源を使用して所望の筋肉群の複数の部分を活性化する方法である。ある例示的な実施形態では、1つまたは複数の独立の電流源が、舌下神経322と相互作用する1つまたは複数の接点(図7および8に示されている例では764a、764b、764c、および764d)を駆動する。図7および8に示されているように、これらの接点は、任意に単一のカフ電極764に内蔵される。以下に詳しく論じるように、各接点を別個に作動することもあるいは他の接点と組み合わせて作動することもできる。
【0024】
ある実施形態では、各接点は1つまたは複数の機能群または筋肉群に割り当てられる。機能群を使用して、舌の所望の移動を生じさせる神経束内の線維の領域を選択することができる。したがって、舌を所望の位置に移動させる作用がある機能群から別の機能群に移り、したがって、単一の機能群が常に働く必要はなくなる。したがって、舌を移動させる作用が、刺激される複数の神経線維およびそれに関連する筋肉間で共有され、どの群も顕著な疲労が生じるほど活性化されず、そのオフ状態または非刺激状態の間、刺激から回復することができるため、疲労が防止されるかあるいは軽減する。ある例示的な実施形態では、各群は、顕著な疲労が始まる直前まで活性状態である。次いで、追加的な1つまたは複数の群が活性化されて上記の各群に代わり、上記の筋肉群線維は休む。一実施形態では、刺激が複数の接点に拡散され、各接点のデューティサイクルが重なり合う(図9)。
【0025】
筋肉の仕事負荷がこのようにある群から次の群に移されることを示す詳細な図が図52に示されている。患者が睡眠セッションを開始するから時間から、第1の群の刺激サイクルを経て、次のサイクルが開始するまでに生じる各事象の過程が示されている。睡眠セッションが開始した後、患者を眠りにつかせるための遅延が生じる。遅延の後、第1の群がそのしきい値振幅を使用して刺激を開始し、ランプの持続時間にわたって徐々に刺激を強め、刺激電流振幅がその目標レベルに達したときに、ランプが終了してプラトー期が開始する。このランプは、患者が、目標レベルの刺激が急激に開始されることによって眠りから覚醒されるのを防止するのを助けることができる。ランプアップが開始すると、次の群に対する遅延も開始し、群相互の調和を図ることができた。第1の群についてプラトー持続時間が完了した後、刺激がランプダウン持続時間にわたって徐々に低下していき、しきい値に達する。ランプダウン持続時間が終了した後、その群は非活性化され、第2の群はすでにその刺激サイクルを開始しているはずである。次の群の遅延が終了すると、この群がその刺激サイクルを開始し、その次の群がその遅延を開始する。第1の群および場合によっては第2の群において刺激が徐々に変化している間ずっと、周波数が開始周波数から目標周波数まで徐々に低下し、周波数が目標レベルに達し、睡眠治療が終了する。これによって、1つの刺激群から次の刺激群への遷移が円滑になり、周波数が目標周波数まで徐々に低下することによって、さらに患者が覚醒するのを防止し、患者の刺激を快適なものにすることができる。
【0026】
一実施形態では、刺激パルスは、単位時間当たりの全体的な収縮が限定されるかぎり、概ねランダムであってもあるいは準ランダムであってもよい(図10D)。
【0027】
疲労を軽減するかあるいは防止する他の方法は刺激周波数を低下させる方法である。神経の刺激が高速であるほど、神経が疲労するのも早くなる。各パルスによって収縮が生じ、各収縮にはある量の仕事が必要である。収縮が大きいほど筋肉の仕事量が増大し、筋肉が疲労する可能性が高くなる。刺激周波数を所望の反応を実現するのに十分な速度まで低下させると、筋肉収縮が生じる率が最低限に抑えられる。これによって、筋肉によって行われる仕事の量が最低限に抑えられ、筋肉の疲労が遅延されるかあるいは最低限に抑えられる。一実施形態では、刺激が複数の接点に拡散され、各接点が、他の接点から位相がずれた刺激周波数の概ね等しい一部を供給する(図10B)。この方法は、独立した各群について刺激速度を低下させるが、基本的に機能的刺激速度は作動している接点の速度の和になる。図10Aおよび10Bに示されているように、同じ有効な力または位置が維持されるが、図10Aでは、デューティサイクル法によって疲労が防止され、図10Bでは、3つの群が、図10Aにおける任意の1つの群の周波数の3分の1で動作し、したがって、筋肉の同じ力および位置を実現し疲労を同様に防止することによって疲労が防止される。骨格筋を活性化するのに使用された刺激周波数では、強縮を生じさせる周波数を使用することが必要になり、すなわち、ほぼ連続したレベルの力または位置を維持するのに十分な速度で各パルスを円滑に融合することが必要になることが多い。本来、舌を人工的に活性化する際には、患者が眠っているため、強縮は必要とされず、舌が活性化されている間の舌の見た目は、気道の開存性を維持することほど重要ではない。実験によって、重度のOSAの患者の気道の開存性を維持するには毎秒5パルスよりも低い周波数で刺激を加えるのが適切であることが分かっている。
【0028】
当技術分野では、疲労の問題のため、筋肉を連続的またはほぼ連続的に刺激することは妨げられる。しかし、本明細書の教示を考慮すると、舌110は耐疲労性筋肉である。ラットとヒトの両方の試験からこのことが確認されている。限られた動物実験において、ラットの舌筋を長期間にわたって舌の位置の目立った変化なしに非常に高い周波数で刺激できることが実証されている。ある研究では、咽喉の後部を開放するのに十分な程度に舌を移動させるのに適切な周波数である毎秒15パルス(pps)で刺激するのではなく、周波数100ppsの閾上レベルの刺激を印加した。結果として得られた舌の反応は、舌の位置の有意な変化を検出できるまでに1時間よりも長い間維持された。刺激周波数を15ppsに低下させた場合、舌の位置の変化が生じることが予測されるまでに5倍よりも長い間刺激を印加できる可能性が高い。ヒトの実験において、本明細書に開示される実施形態では、反無呼吸作用が低下するのが認められるまでに固定された1組の電極接点を有する患者が何時間にもわたって首尾よく刺激された。一実施形態では、ヒトの舌に対してより低い周波数および複数の接点を使用すると、反無呼吸作用が低下するまでに刺激を印加できる持続時間が延びる。
【0029】
したがって、舌および関連する後部咽頭組織が気道を開放するように常に駆動されていれば、無呼吸は生じないので無呼吸を検出する必要はない。例示的な実施形態では、呼吸とのタイミングを調節して刺激を加えたり、治療を開始する前に無呼吸事象を監視するのではなく、舌下神経を開ループシステムを介して所定の方法で刺激し、舌内の目標の筋肉を活性化して気道の開存性を維持する。気道の抵抗が低下し、かつ/あるいは舌が後退して咽喉の後部に接触するのを防止し、かつ/あるいは咽頭の順守を低減させれば、無呼吸が生じなくなるため無呼吸を監視する必要がなくなり、刺激のタイミングが呼吸に合わされることも刺激と呼吸の同期をとることも全くなく、刺激が睡眠期間全体にわたって連続的に維持されるため、換気タイミングを監視する必要もなくなる。
【0030】
舌を前方に口腔-咽頭接合部から離れる方向に移動させる突出筋肉を活性化するかあるいは咽頭壁の順守を低減させるように作用する後退筋肉を活性化することはどちらも、気道の閉塞を防止するうえで望ましい。特許文献には、作動筋と拮抗筋を同時に活性化して剛性を高め、関節または体節の位置を維持することが示されており、同様に、舌の突出筋肉と後退筋肉を同時に活性化することは、舌および咽頭壁の位置および剛性を望ましい作用を生じさせるように維持する効果を有するはずである。舌の形状を変化させる固有の筋肉を活性化することによっても望ましい動きを生じさせることができる。ただし、このような筋肉の作用を突出筋肉または後退筋肉に関して明確に定義することはできない。舌筋の有益な動きまたは作用を実現する任意の舌筋を活性化することが、本特許の方法によって示されるような目標とされる選択的な電気刺激方法の潜在的な目標であり、突出筋肉自体を活性化することだけが本明細書に記載された方法の単一の目標ではないことを理解されたい。
【0031】
舌は、耐疲労性筋肉であるため、本明細書で説明する技術を使用すれば、力または動きを失うことなく長期間にわたって刺激することができる。舌下神経を刺激することによって、通常の日中の舌筋緊張に類似した舌の活性化が睡眠時に髄節筋に復元される。舌が咽喉内に落ち込むことはなく、気道は開放されたままになり、患者は睡眠中に正常に呼吸することができる。連続的またはほぼ連続的に刺激することによって舌が所望の位置に維持され、気道の形状が整えられ、センサおよびセンサの判定に依存する複雑な閉ループ刺激方式が不要になる。舌筋は耐疲労性であるが、それでも一般に疲労の影響を受けやすい。したがって、本明細書で使用される方法は依然として、複数の群を利用して所望の機能を維持し、かつ周波数制御のような他の方法を利用して任意の単一の筋肉群の仕事負荷を最低限に抑えることによって治療効果を維持することに関する。
【0032】
神経刺激は末梢運動神経に対して実施されることが多い。末梢運動神経は、脊髄前角から始まり、束状に様々な筋肉群まで延びている。単一の運動神経束が多数の小ニューロン群を含んでよい。いくつかの小ニューロン群は、組織学的断面において容易に見られ、同じ筋肉内の筋肉線維群に連結されることが多い、線維束と呼ばれる別個の小束として組織化されている。このような小群では、小群を刺激した場合、通常、一緒に働く一群の筋肉が活性化されて所望の効果を実現する。
【0033】
舌下神経のような他の末梢神経は、線維束として組織化されない小束を有する。その代わり、このような小束は、神経のある程度制御されるが明確に定められていない領域を延びており、断面では容易に認識できない。このような小群は、様々な位置の複数の筋肉群に達することが多い。このような神経の一例には、舌のそれぞれの異なる部分に連結された複数の小群を有する舌下神経がある。ヒトの舌の神経構造についての詳細は、2008年10月9日に出願され、引用によって本明細書に全体的に組み込まれる米国特許出願第61/136102号で開示されている。
【0034】
ヒトの舌のすべての筋肉が気道の開放に関与しているわけではない。刺激された筋肉のいくつかは気道を遮断するように働く。上述の実施形態では、本明細書で説明する目標とされる選択的な電気刺激方法の目標となる神経だけが、舌を活性化し、それによって、気道の最適な開放を実現し、舌の不要な動きを抑制する筋肉を刺激する神経である。これに対して、神経全体を刺激すると、神経の中身全体が活性化され、収縮する筋肉の望ましい群と望ましくない群の両方への神経線維を含む神経束が同時に活性化される。このため、開放のレベルが最適でなくなるだけでなく、舌の望ましくない動きが生じる可能性がある。最適でない刺激方法に関するこの問題を解消する外科的な方法では、望ましい筋肉群のみを刺激する神経の遠位枝上に刺激電極が配置され、この作業は困難であり、場合によっては神経にとって危険である。
【0035】
このような場合、人工的な電気刺激によって束全体を活性化すると、刺激された神経群内の小群によって活性化されるすべての筋肉が活性化される。本発明において、例示的な実施形態では、神経束内の所望の特定の線維群のみを目標とするために、複数の神経電極接点および制御された複数の独立の電流源を使用して所望の小群のみを活性化する。これによって、舌の所望の位置を実現しない筋肉を刺激する可能性が最低限に抑えられるかあるいはなくなる。
【0036】
(茎突舌筋/舌下神経枝の近位側で頸神経ワナ枝の遠位側の)顎下腺の真下の領域内の舌下神経は非束生であり、すなわち、遠位方向において分離する様々な神経群は、束内で線維束として分離されず、舌下神経のすべての線維と一緒に存在する。しかし、米国特許出願第12/572758号で論じられているラット染料試験およびヒトの死体に関する試験に記載されているように、束の組織があり、線維が主として、束の内側領域に存在するオトガイ舌骨筋を刺激するように見える。ラット、すなわち、ヒトの舌下神経の非束生性を模倣するこれまでに識別されている動物モデルで行われた試験によって、神経全体の組織が明らかになっており、舌下神経におけるニューロンの亜集団に対する目標とされる活性化が可能であることが示されている。多極電極および複数の独立の電流源によるラットおよびヒトにおける刺激試験によってこのことが検証され、その結果、目標とされる刺激方法およびデバイスを使用して舌の異なる複数の動きおよび位置を実現することができた。この領域における舌下神経の周囲に電極接点を配置すると、舌筋に対する目標とされる選択的な活性化が実現された。刺激の結果として生じる気道の変化は、どの電極接点を作動させるかによって決まる。
【0037】
ある例示的なシステムでは、電極764は、舌下神経の周りの、長さが約1cmで直径が2.5mm〜4.5mmの神経束の所またはその近くに埋め込まれる。これは通常、下顎の後方および下方であり、顎下腺の真下であり、茎突舌筋/舌下神経枝の近位側で頸神経ワナ枝の遠位側である。この点で、様々な舌筋の主要な枝は電極部位の遠位側である。
【0038】
舌下神経遠心性線維に対する目標とされる選択的な刺激
一実施形態では、本発明は、動物における舌下神経遠心性線維に対する目標とされる選択的な刺激に関する。一実施形態では、本発明は、哺乳類における舌下神経遠心性線維に対する目標とされる選択的な刺激に関する。一実施形態では、本発明は、ラットにおける舌下神経遠心性線維に対する目標とされる選択的な刺激に関する。一実施形態では、本発明は、ヒトにおける舌下神経遠心性線維に対する目標とされる選択的な刺激に関する。
【0039】
一実施形態では、本発明は、プログラム可能な少なくとも1つの電極接点から放出される電気信号を介した舌下神経遠心性線維に対する目標とされる選択的な刺激に関する。一実施形態では、舌下神経遠心性線維に対する目標とされる選択的な刺激は複数の電極接点を介して行われる。一実施形態では、舌下神経遠心性線維に対する目標とされる選択的な刺激は複数の電流源によって駆動される。一実施形態では、複数の電極接点はそれぞれ接点自体の独立の電流源によって駆動される。
【0040】
一実施形態では、複数の電極接点はそれぞれ、有益な筋肉群を活性化し、常に少なくとも1つの群によって有益な機能が維持されるように交互に動作する。一実施形態では、複数の電極接点はそれぞれ、有益な筋肉群を活性化し、気道の開存性が維持されるように接点の動作をインタリーブする。一実施形態では、複数の電極接点はそれぞれ、有益な筋肉を活性化し、気道の開存性が維持されるように交互に動作する。一実施形態では、複数の電極接点はそれぞれ、有益な筋肉の1つを活性化し、気道の開存性が維持されるように接点の動作をインタリーブする。
【0041】
一実施形態では、この方法は、同側オトガイ舌骨筋を活性化することを含む。一実施形態では、この方法は、同側オトガイ舌骨筋の吻側区画または尾側区画あるいはその両方を活性化することを含む。一実施形態では、この方法は、同側オトガイ舌骨筋の少なくとも一方の区画または両方の区画を活性化するか、あるいは対側オトガイ舌骨筋の吻側区画も活性化して、(咽頭気道の)拡張を強化するとともに気道流路の開存性を高めることを含む。
【0042】
一実施形態では、変調電気信号は、円滑な強直性収縮を実現するのに十分な周波数を有する。一実施形態では、変調電気信号は刺激周波数が約10pps〜40ppsである。一実施形態では、変調電気信号は強度が約10マイクロアンペア(μA)〜約3000マイクロアンペア(μA)である。一実施形態では、変調電気信号は刺激パルス幅が約10マイクロ秒(μs)〜約1000マイクロ秒(μs)である。
【0043】
一実施形態では、舌下神経遠心性線維に対する目標とされる選択的な刺激は、少なくとも1つの舌筋を活性化する。一実施形態では、舌下神経遠心性線維に対する目標とされる選択的な刺激は、少なくとも1つの上気道流路散大筋を活性化する。一実施形態では、少なくとも1つの突出筋肉が活性化される。一実施形態では、少なくとも1つの突出筋肉と少なくとも1つの後退筋肉が交互に活性化される。一実施形態では、少なくとも1つの突出筋肉と少なくとも1つの後退筋肉が同時に活性化される。一実施形態では、活性化される少なくとも1つの突出筋肉400はオトガイ舌骨筋である。一実施形態では、有益な少なくとも1つの筋肉群が活性化される。一実施形態では、有益な少なくとも2つの筋肉群が活性化される。
【0044】
閉塞性睡眠時無呼吸を含む神経障害を治療する方法
一実施形態では、本発明は、プログラム可能な少なくとも1つの電極を患者の舌下神経自体322に取り付け、舌下神経自体322内に配置された運動神経遠心性線維にプログラム可能な電極764を通じて電気信号を選択的に印加して少なくとも1つの筋肉を選択的に刺激することによって、神経障害を治療、抑制、または防止する方法に関する。一実施形態では、電気信号は変調を行う。一実施形態では、神経障害を治療、抑制、または防止する方法は、基本的に後退筋肉運動神経遠心性線維を回復させることから成る。一実施形態では、この方法は、突出筋肉運動神経遠心性線維を回復させることを含む。一実施形態では、上述の比率のような比率で後退筋肉運動神経遠心性線維と突出筋肉運動神経遠心性線維を回復させて神経障害を治療することを含む。
【0045】
一実施形態では、本発明による治療、抑制、または防止に適した神経障害は、口腔筋機能障害、萎縮、衰弱、振戦、線維束性収縮、および筋炎から成る群から選択されるが、これらに限定されない。一実施形態では、神経障害は、閉塞性睡眠時無呼吸である。閉塞性睡眠時無呼吸の治療に加えて、この方法の潜在的な他の用途には、たとえば、いびきまたは呼吸低下の治療あるいは発作時の舌の拮抗筋運動活性化のために神経を補助的に刺激して気道を開放したままにすることが含まれる。患者の気道の開存性に関する他の健康問題も、本発明によって実現される方法を使用して治療することができる。
【0046】
一実施形態では、本発明は、プログラム可能な少なくとも1つの電極を患者の舌下神経自体322に取り付けるステップと、患者の舌下神経自体322内に配置された運動神経遠心性線維にプログラム可能な電極764を通じて電気信号を選択的に印加して少なくとも1つの筋肉を選択的に刺激するステップとを含む、閉塞性睡眠時無呼吸を治療、抑制、または防止する方法を実現する。一実施形態では、プログラム可能な少なくとも1つの電極764は、特定の運動神経遠心性線維に連続的で低レベルの電気刺激を加えて呼吸サイクル全体にわたって上気道流路の剛性を維持する。一実施形態では、プログラム可能な少なくとも1つの電極は、特定の運動神経遠心性線維に、気道を常に開放しておけるほど近い制御された所定の間隔で間欠的な電気刺激を加える。
【0047】
一実施形態では、閉塞性睡眠時無呼吸を治療、抑制、または防止する方法は、上気道流路内の1つまたは複数の筋肉を選択的に活性化して、閉塞性睡眠時無呼吸の重症度を効果的に低下させ気道開存性を向上させることを含む。一実施形態では、この方法は、オトガイ舌骨筋を活性化し、舌骨を前上方に移動させて上気道流路の開存性を高める、運動神経遠心性線維に対する目標とされる選択的な刺激を含む。一実施形態では、この方法は、やはり上気道流路の剛性を効果的に高めて気道が落ち込む可能性を低下させる、機能的に対抗する筋肉に対する目標とされる選択的な刺激を含む。
【0048】
一実施形態では、閉塞性睡眠時無呼吸を治療、抑制、または防止する方法は、基本的に突出筋肉運動神経遠心性線維を回復させることからなる。一実施形態では、この方法は、少なくとも1つの突出筋肉を活性化することを含む。一実施形態では、この方法は、舌下神経自体322内に配置され、オトガイ舌骨筋を活性化し、舌を突出させて上気道流路の開存性を高める突出運動神経遠心性線維に対する目標とされる選択的な刺激を含む。
【0049】
システムの要素
一実施形態では、OSAシステムは、HGN 322に対する、連続開ループによる目標とされる選択的な刺激を実現するように協働する埋め込まれた外部要素で構成されている。埋め込まれる要素(すなわち、患者に埋め込まれる要素)には、埋め込み可能なパルス発生装置1370(IPG)(図13〜16参照)とカフ電極764(図7参照)とを含めてよい。外部要素には、遠隔制御充電器2272(RCC)(図22参照)と、充電器コイル5374(CC)と、ケーブル5374aと、ドッキングステーション5378(DS)と、患者用の電源と、ノートブックコンピュータ5376と、臨床医のソフトウェアプログラミングシステムであるオーラクリニカルマネージャ(aCM)とを含めてもよい。IPG 1370は、HGN 322内の所望のニューロンを活性化するパルスの発生に関与することができ、患者の前胸部領域に埋め込まれる。カフ電極764は、インラインコネクタを介してIPG 1370に取り付けることができ、IPG 1370の胸部位置から顎下腺領域まで延び、HGN 322を覆っている。IPG 1370は、それぞれ、そのエンクロージャ内のフィードスルーを介してインラインコネクタに容量結合された、複数の、たとえば6つの独立の電流源を含んでよい。インラインコネクタは、カフ電極764近位コネクタのリング接点と嵌め合う6つのトロイダルばね接点を有してよい。カフ電極764の各リング接点は、カフ電極764組立体内のワイヤによって自動サイジングカフ内の接点に接続されてよい。各接点は、HGN 322の神経束の湾曲に整合するように形作られてよく、6つの接点は、神経周囲の6つのセクタがカフ接点と密に接触するようにカフ内に配置されている。IPG 1370は、睡眠治療セッションを開始し停止させ、IPG 1370およびカフ電極764のステータスに関する情報を供給するようにRCC 2272から指示されてよく、IPG 1370電池内にエネルギーを補充するようにCCと一緒に使用される。aCMは、臨床工学技士または臨床医によって、患者に治療を施す際に使用されるOSAシステムをプログラムするときに使用されてよい。
【0050】
埋め込み型パルス発生装置(IPG)
OSAシステム用の埋め込み可能なパルス発生装置1370(IPG)が図13に示されている。IPG 1370は、チタン製エンクロージャ内に収容され、二次リチウムイオン電池、プリント基板(PCB)組立体と、放射線不透過性マーカーと、支持構造とを含んでよい。IPG 1370は、気密エンクロージャによって覆うことができる。チタン材料は、従来能動型埋め込み医療機器を収納するのに使用されている金属に適合する材料であってよい。チタン製ケースの頂部は、2つのフィードスルー組立体が取り付けられたチタンプレートで密封されてよい。一方のフィードスルー組立体は4本のフィードスルーピンを含んでよく、このうちの2本のフィードスルーピンは、気密エンクロージャの外側およびヘッダ組立体の内側に配置された誘導充電コイルに使用されてよく、2本のフィードスルーピンは、同様に配置された体内植込型医療用データ伝送システム(MICS)遠隔測定コイルに使用されてよい。第2のフィードスルー組立体は、IPG 1370の出力パルス回路に接続されてよく、かつ最終的に、HGN 322に取り付けられるカフ電極764内に含められる6つの電極に接続される、6本のフィードスルーピンを含んでよい。IPG組立体1370の実施形態が、IPG 1370のハウジングから分離されたシリコーン製ヘッダおよびインラインコネクタを示す図13に示されている。図14は、IPG 1370エンクロージャ内部のリチウムイオン電池を保護するプラスチック製電池支持体を示している。図15は、基板がチタンヘッダプレートに固定され、電池支持フィードスルー組立体が、チタン製エンクロージャ内に下降させられ、エンクロージャをチタンヘッドプレートにレーザ溶接することによって完成された、基板を含む完成したIPG内部組立体を示している。図16は、誘導リンク充電コイルと、MICS遠隔測定コイルと、磁石と、シリコーン内側ヘッダ要素および外側ヘッダ要素と、フィードスルーピンと嵌め合う圧着端子と、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製ガイドと、インラインコネクタ組立体および応力除去装置とを含むヘッダ要素を示している。この構造の代替構造は、体積内にインラインコネクタの各要素が含まれているエポキシ製ヘッダを利用し、それによって、PEEK構成要素、圧着端子が不要になり、電極リード線の近位コネ
クタをIPGエポキシ製ヘッダ内に直接挿入するのが可能になる。
【0051】
図12のブロック図に示されているIPG 1370の各要素は、16ビットマイクロコントローラ、MICS遠隔測定送受信機、6チャネルカスタム特定用途向け集積回路(ASIC)電流源、シリアルEEPROM(SEEPROM、serial electrically erasable programmable read only memory)、誘導電力受信変調復調回路、電池充電回路、電源、およびアナログ信号取得支持回路で構成してよい。マイクロコントローラは、16ビット縮小命令セットコア(RISC)と、92Kバイトフラッシュメモリと、8KバイトRAMと、3チャネルDMAと、12ビットアナログデジタル変換器(A/D)およびデジタルアナログ変換器(D/A)と、10個のキャプチャおよび比較レジスタを有する16ビットタイマと、enhanced universal asynchronous receiver/transmitter (UART)をサポートする4つのuniversal serial communication interface (UCSI)と、Inter-Integrated Circuit (I2C) and Synchronous Peripheral Interface (SPI)と、プログラムの開発およびメモリプログラミングを可能にするJoint Test Action Group(JTAG)インタフェースを有する一次ブートストラップローダとを含む多数のリソースを含んでよい。
【0052】
フラッシュメモリは、較正情報、患者固有データ、および永久的な位置に維持する必要のある他の定数などの製造データと、二次ブートローダおよびアプリケーションコードとを含めるのに使用されてよい。一実施形態では、二次ブートローダは、IPG 1370が溶接され密閉された後(JTAGプログラミングはもはや不可能である)にフラッシュメモリへのコードおよびデータの転送を可能にするのに必要である。二次ブートローダは、その使用に関して予約された位置に格納されてよく、マイクロコントローラから見ると、実際には、電源オンリセット(POR)時(リセットベクトルがブートローダを指し示す)に作動してメインアプリケーションとなる。二次ブートローダは、システムを初期設定し、製造ソフトウェアローダコマンドに応答するまで有限期間にわたって待機することができ、コマンドが受信されない場合には、メインシステムアプリケーションにジャンプする。このアーキテクチャでは、JTAGインタフェースがもはやアクセス可能でなくなったときにデバイスのフラッシュメモリに変更を施す(IPG 1370デバイスファームウェアのフィールドアップグレード)ことができる。二次ブートローダプログラムの変更が必要な場合、実行時に、前の二次ブートローダによって占有されていた領域に新しいイメージを書き込むことができる極めて特殊なプログラムイメージを書き込むことができる。
【0053】
IPG 1370の概略図が図17〜21に示されている。まず、図17には、リチウム電池、充電コイル回路、電池モニタ回路、電池切り離し回路、リチウムイオン電池充電回路、Vcc調整回路、5V/10V/20V電源イネーブル回路、および定電圧回路が示されている。リセット可能なヒューズが電池を過放電しないように保護することができ、電池モニタ回路は、電池を不足電圧条件から保護することができる。3.1Vのとき、IC2モニタ回路は、電池をシステムVBatt信号から切り離すようにアナログスイッチIC1を駆動するオープンコレクタローレベルを生成することができる。マイクロコントローラ上のI/Oポートから信号S_Battを発して、プログラム制御下で電池の切り離しを可能にし、IPG 1370を、電池を枯渇させずに電力を長期間にわたって保管する低電力保管モードにすることができる。電池を切り離した後、充電コイルに電荷電場を印加したときに再接続を可能にすることができる。電荷電場は、ブリッジ整流されツェナー制限されてよく、電圧調整器IC5に電力を供給し、電圧調整器IC5が電池充電器IC6を駆動して電池に電力を補充し、かつシステム電力を供給する。電池電力と充電電力は、ダイオードD1およびD2によって互いに分離することができる。充電電力を印加し電池を再接続すると、マイクロコントローラはPORシーケンスに従い、後述の、マイクロコントローラの一次および二次ブートローダの実行を開始する。
【0054】
図18は、マイクロコントローラおよびログメモリ回路と、製造JTAG通信接続の実施形態を示している。マイクロコントローラは、I2Cインタフェースを使用してマイクロコントローラと相互作用するイベントログメモリを除いてすべてのシステムメモリを含んでよい。この非揮発性メモリは、システム動作時に生じた最新の事象のみを維持するリングバッファとして構成されてよい。任意に、マイクロコントローラのフラッシュメモリ空間内にログメモリを含めてもよい。
【0055】
図19は、パルス発生に使用される6チャネル電流ASICと、DC電流漏れを防止するのに使用される直列出力キャパシタの実施形態を示している。試験が完了した後PCBから取り外すことのできる製造試験負荷が示されている。電圧サンプルを取り出して電極/組織インピーダンスおよび順守電圧レベルを測定するのを可能にするアナログマルチプレクサが示されている。6チャネル電流ASICは、マイクロコントローラとのシフトレジスタインタフェースを備える6つの同一の電流源と、振幅設定値用のデータラッチと、オンチップ電流ミラー基準制御回路とで構成されている。各シフトレジスタは、個々に駆動されても、あるいは単一のデータ線から駆動できるようにデイジーチェーン接続されてもよい。クロック線、選択線、アドレス線、およびイネーブル線はすべて、電流源論理へのデータの転送の調和をとる。電流源は、基準電圧が10Vであり、グランドおよび20V電源を使用して二相電流を供給し、ソース電流およびシンク電流を発生させる。電流源は、8ビットデータ正符号ビットによる準対数方法を使用して、供給される電流のレベルを制御することができる。対数目盛は独自の電流ステップおよびオフセットを有する8つの線形セグメントによって近似することができ、その結果低振幅で非常に微細な電流ステップが得られ、電流がその最大レベルに達していくにつれてより粗いステップになっていく。
【0056】
図20は、IPG 1370のシリコーン製ヘッダ内に配置されたMICS遠隔測定回路およびループアンテナの実施形態を示している。MICS遠隔測定回路は、400MHz帯域を使用し、RF IDによるセキュアデータパケット、デバイスID、コマンド解析、および16ビット巡回冗長検査(CRC16)コードを使用してデータ転送プロセスにおけるエラーを検出することによってIPG 1370との間でデータを転送する。図21は、IPG 1370電子機器の2つのPCB組立体を、基板同士を試験に適したフラット設定で接続させるテストボードと一緒に互いに取り付けるのを可能にするコネクタを示している。
【0057】
遠隔制御充電器(RCC)
遠隔制御充電器2272(RCC)は、患者によって、患者のIPG 1370を動作させかつ無線で充電するのに使用でき、かつ医師および臨床工学技士によってIPG 170をプログラムするのに使用できる手持ちのデバイスである。RCC 2272は、この2つの役割を果たすために、2つのモードで動作することができる。一次モードでは、RCC 2272は膜スイッチパネル上のキー押下に応答し、要求された機能を実行し、結果をフロントパネルLED上に表示することができる。二次モードでは、RCC 2272はパススルー的に作用し、パーソナルコンピュータ(PC)とのUniversal Serial Bus (USB)接続を介してオーラクリニカルマネージャ(aCM)ソフトウェアからコマンドを受信し、そのようなコマンドをIPG 1370のMICS遠隔測定インタフェースを通じてIPG 1370に転送することができる。IPG 1370からの応答およびデータをRCC 2272によって受信しaCMに送り返すことができる。同様に、JTAGインタフェースを通じた接続が利用できないときにRCC 2272を製造プロセスで使用することができる。RCC 2272のキーボードおよびLEDユーザインタフェースを有するRCC 2272のフロントパネルが図22に示されている。
【0058】
一実施形態では、RCC 2272は、プラスチック製エンクロージャに収納され、1組の二次ニッケルメタルハライド(NiMH)AA電池またはアルカリAA電池と、プリント基板(PCB)組立体と、膜スイッチパネルと、LEDディスプレイとを含む。再充電可能電池が枯渇したか、あるいは外出時にアルカリAA電池を使用する場合には、患者が電池コンパートメントから再充電可能電池を交換することができる。電池コンパートメントの真上に、RCC 2272の内部充電回路との接続を可能にする金属接点がある。RCC 2272がドッキングステーション5378上に配置されると、これらの金属接点は、ドッキングステーション5378内にバネで留められた金属接点と揃うことができ、それによって、RCC 2272が患者によって使用されていないときにRRC 2272に電力を供給してRCC 2272を再充電することができる。
【0059】
RCC 2272は2つのコネクタを有してよく、一方のコネクタは、aCM PCとの接続に使用されるミニUSBコネクタであり、内部電池の充電を可能にする。第2のコネクタは、RCC 2272を充電器コイル(CC)に接続する4ピン円形コネクタである。CCは、RCC 2272から電力および制御信号を受信することができ、MICS遠隔測定リンクが機能しなくなった場合に二次誘導リンクチャネルが情報をIPG 1370に転送しかつIPG 1370から受信するのを可能にする。睡眠実験室試験時に第2の4ピンコネクタを使用して、どの刺激群が作用しているかを臨床医に示すこともできる。PSGの機器の様々な種類と相互作用する特殊なケーブルを設けてもよい。
【0060】
RCC要素は、図23のブロック図に示されており、16ビットマイクロコントローラと、MICS遠隔測定送受信機と、誘導電力インタフェース回路と、電池充電回路と、電源と、アナログ信号取得サポート回路とで構成してよい。マイクロコントローラは、16ビット縮小命令セットコア(RISC)と、92Kバイトフラッシュメモリと、8KバイトRAMと、3チャネルDMAと、12ビットA/DおよびD/Aと、10個のキャプチャおよび比較レジスタを有する16ビットタイマと、enhanced UARTをサポートする4つのUCSIポートと、I2CおよびSPIプロトコルと、プログラム開発およびメモリプログラミングを可能にするJTAGインタフェースを有する一次ブートストラップローダとを含む多数のリソースを有してよい。
【0061】
フラッシュメモリは、較正情報、患者固有データ、および永久的な位置に維持する必要のある他の定数などの製造データと、アプリケーションコードとを含めるのに使用されてよい。IPG 1370とは異なり、RCC 2272は、USBインタフェースまたはJTAGインタフェースを通じて新しいファームウェアにアップグレードすることができる。RCC 2272の例示的な概略図が図24〜28に示されている。RCC 2272のフラッシュメモリを使用して、IPG 1370と同様に事象を記録することができる。
【0062】
図24は、ドッキングステーション5378およびUSB接続部との接続を示している。ドッキングステーション5378は、USB壁取り付け充電器からの5VをRCC 2272本体の下側の金属接点に伝達することができる。この5V信号に対してヒューズを設け、信号がRCC 2272の内部回路要素に送信される前にツェナー保護することができる。USBコネクタも5V電力を供給するとともに、回路IC1、USB送受信機を通じたaCMとの通信リンクを実現することができる。ドッキングステーションは、それ自体の内部電源を有し、USBコネクタは家庭用電源との電源コード接続と置き換えられてもよい。
【0063】
図25は、通常NiMH電池またはアルカリ電池で構成される内部3AA電池パックとの接続を示している。NiMH電池は再充電可能であり、アルカリ電池は交換可能である。電池は、リセット可能なヒューズによって過放電しないように保護することができる。一実施形態では、図24からの電力を使用してNiMH充電器回路IC2に電力が供給される。前述の回路または電池からの電力によって、Vcc 3.3V調整器IC3は、マイクロコントローラおよびその他の論理用のシステム電力を供給することができる。一実施形態では、IPG 1370に電力を供給してIPG 1370の内部リチウムイオン電池を充電する充電コイルを動作させる6Vまたは8V電源を発生させるIC4に電力を供給してもよい。
【0064】
図26は、マイクロコントローラおよびJTAGプログラミングインタフェースの実施形態を示している。製造時のプログラミングおよび試験の後でJTAGインタフェースが失われることがあるIPG 1370とは異なり、RCC 2272は、完成した組立体においてもこのコネクタを保持する。図27は、MICS遠隔測定送受信機回路、およびRCC 2272のプラスチック製エンクロージャの内部に収納されたSMA型RFアンテナとの接続を示している。図28は、例示的なユーザインタフェース、すなわち、膜スイッチパネルおよびフロントパネルのマルチカラーLEDを示している。各LEDは、I2CインタフェースポートエキスパンダIC7によって駆動することができる。一実施形態では、各LEDからの光が、PCB上のLEDの位置から、透明なライトパイプを通して膜スイッチパネル内の窓に送られる。これと同じインタフェースから圧電ブザーを駆動して、ユーザに聞こえる音を発生させることができる。例示的な膜スイッチパネル図が図22に示されている。他の構成では、RCCは、LEDの代わりにあるいはLEDに加えてLCDディスプレイを備えてもよい。
【0065】
充電器コイル(CC)
充電器コイル5374a(CC)は、IPG 1370を充電する必要があるときに可撓性のケーブルによってRCC 2272に取り付けられる小形デバイスであってよい。CCの例示的なブロック図が図29に示されている。一実施形態では、CC組立体は、その動作に必要な電子機器を収納するPCBと、埋め込まれたコイル構造および取り付けられた誘導コイルのいずれかと、CCをIPG 1370に揃えて保持するのを助ける磁石とで構成される。IPG 1370は、IPG 1370のヘッダに配置された誘導ループコイルに同様の磁石を含んでよい。人工内耳と同様に、この簡単な整列固定方法では、患者に対する影響をできるだけ抑えてCCとIPG 1370との間で最適なエネルギー伝達が行われることを確実にする。
【0066】
ドッキングステーション(DS)
ドッキングステーション5378(DS)は、RCC 2272を使用しないときに配置し充電するのに好都合な場所を患者のナイトテーブル上に形成することができる。好都合な整列保持機能を有するため、患者は、1回の簡単な動作でRCC 2272をDS 5378に入れることができる。RCC 2272は、患者がIPG 1370を動作させたいときに使用できるように容易に取り外すことができる。一実施形態では、DS 5378は、RCC 2272内の一致する金属接点と嵌め合う接点を頂面上に有する。DS 5378は、壁取り付けUSB充電器に取り付けられるミニUSBコネクタを有してよい。患者の外出時に、充電器をDS 5378から取り外し、RCC 2272と一緒に持ち運んでRCC 2272を充電することができる。DS 5378は、標準的な壁プラグを使用して電力を得るそれ自体の一体型電源を有してよい。
【0067】
オーラクリニカルマネージャ(aCM)
オーラクリニカルマネージャ(aCM)は、パーソナルコンピュータ上で動作するソフトウェアアプリケーションである。一実施形態では、aCMは、臨床工学技士または臨床医によって、IPG 1370およびRCC 2272を特定の患者向けにプログラムし、刺激治療を患者に適合させ最適化するために使用される。aCMは標準的なPC上で動作することができる。
【0068】
メモリ、あるいはメモリ内の1つまたは複数の記憶デバイス(たとえば、1つまたは複数の非揮発性記憶デバイス)は、コンピュータ可読記憶媒体を含む。いくつかの実施形態では、メモリまたはメモリのコンピュータ可読記憶媒体は、プロセッサがRCC 2272、IPG 1370、および本明細書で説明する他のシステム構成要素を制御できるようにプログラム、モジュール、およびデータ構造、またはそれらのサブセットを記憶する。
【0069】
aCM機能をその利用モデルアプリケーションに沿って分割し、画面の左縁に沿って一連のタブ選択肢によって選択することができる。コンピュータにインターネット接続が確立されたときはいつでもコンピュータ上にローカルデータベースを自動的に維持し同期させることができる。データベースをホストデータベースと同期させることによって、すべての患者データがバックアップされ、患者が埋め込まれたシステムを利用したことが記録される。
【0070】
患者マネージャ画面
一実施形態では、第1の画面は患者マネージャ画面であり、図30に示されている。この画面によって、患者がまず、患者データベースに入り、患者の特定のOSA症例に関するデータが収集される。”Find Patient(患者を見つける)”を選択することによってデータベースにおいて存在する患者を見つけることができ、システムは、ユーザによる入力に類似した患者レコードを見つけることができる。レコードが表示された後、それを選択することができる。この画面上の患者についてレポートを生成することもでき、Internet ExplorerまたはSafariなどのブラウザでファイルを見ることができるようにHTMLフォーマットに設定することができる。
【0071】
OSAシステム構成要素を患者に発行することができ、OSAシステム構成要素の発行日および通し番号と関連する他の情報を患者データベースに入力することもできる。磨耗、損失、または故障などのためにシステムの要素を交換する際、新しい要素を同様にデータベースに入力することができる。患者に関するすべての情報が入力された後、ユーザは他の画面のいずれかを選択することができる。
【0072】
埋め込み/手術画面
埋め込み/手術画面は、臨床工学技士または臨床医によって、IPG 1370および電極を外科的に埋め込む際にOSAシステムを試験する場合に使用される一次画面であってよい。この画面は、手術室(OR)において、システム要素を試験し、電極インピーダンスが許容範囲内であり、かつ刺激に対するHGN 322の応答およびしきい値レベルが許容できるものであることを検証するために使用される。
【0073】
調節画面
調節画面は、例示的な実施形態が図31に示されており、臨床工学技士または臨床医によって、OSAシステムを患者に適合させるために使用される一次画面であってよい。手術から1週間以上経ってから、患者の主プログラミングセッションを行うためにaCMの調節画面を使用することができる。このセッションでは、睡眠実験に備えてすべての刺激パラメータを決定し、OSA状態についての治療を実施する際のシステムの動作を検証することができる。
【0074】
一実施形態では、調節画面は6つの部分に分割されている。最大の部分は振幅制御専用の部分であり、システムの6つの接点の各々についてしきい値電流振幅、目標電流振幅、および最大電流振幅が決定される。上向き矢印および下向き矢印を増分または減分させることによって振幅が変化する電流の量を設定し、しきい値レベル、目標レベル、および最大レベルをマーク付けし、有効化されたすべての接点をそのしきい値レベルまたは目標レベルに設定するのを可能にするConvenient Quick Setボタンを設けてもよい。一実施形態では、この領域の右隣に、イネーブルボックスを備える6つのスライダコントロールがあり、各接点を個別にあるいは他の接点に合わせて試験することができる。しきい値が観測されたとき、Set Thresholdボタンを選択すると、その接点に関する電流の値がスライダの下のThresholdボックスに転送され、スライダウィンドウ上のその電流レベルに色つきのバーマーカーが配置される。目標レベルが観測されたとき、Set Targetボタンを選択すると、その接点に関する電流の値がスライダの下のTargetボックスに転送され、スライダウィンドウ上のその電流レベルに別の色のバーマーカーが配置される。最大レベルが観測されたとき、Set Maxボタンを選択すると、その接点に関する電流の値がスライダの下のMaximumボックスに転送され、スライダウィンドウ上のその電流レベルにさらに別の色のバーマーカーが配置される。しきい値を1Hzで試験することができ、一方、目標レベルおよび最大レベルを15Hz(または1Hzよりも高い任意の他の所望の周波数)で選択することができる。各接点用の各スライダバーの下方に、プルダウンボックスによって選択される効果インジケータがあり、電極に印加された刺激の効果が示される(突出筋肉、後退筋肉、効果なしなど)。
【0075】
接点スライダコントロールのすぐ下の部分は、Contact Impedance部分であってよく、IPG 1370の不関電極に対する接点インピーダンスを迅速に要求し受信する方法を実現する。右側の1番上にStatusウィンドウがある。Statusウィンドウには、aCM-RCC USB通信ステータスを示すことができ、RCC 2272-IPG 1370 MICS遠隔測定通信ステータスを示すことができ、RCC 2272およびIPG 1370の電池レベルを示すことができる。一実施形態では、この真下にFrequencyウィンドウがあり、刺激周波数を増分または減分によって設定するか、あるいは迅速に1Hzまたは15Hz(秒当たりパルス数、すなわちppsと同じ)に設定することができ、その結果、上下ボタンの下に周波数が示される。一実施形態では、Frequencyウィンドウのすぐ下にSaving and Restoringウィンドウがある。このウィンドウは、プログラム設定および患者データをローカル患者データベースファイルに日時スタンプ付きのエントリとして保存し再呼び出しするのに使用することができる。ある患者について同じ日に複数のデータレコードを記憶することができ、これらのレコードには、レコードを迅速に見つけるための短いフィールドと、講じた措置についての臨床医の説明を保存するのを可能にするより詳細なレコードとが注釈として付加される。一実施形態では、最後のウィンドウはStimulation Controlウィンドウであり、刺激を開始し停止するのに使用される。
【0076】
PSG画面
PSG画面は、睡眠実験室試験時に、好ましくは、各刺激パラメータを5%分散させるのを容易に操作できるようにし、試験中のIPG 1370のステータスの監視を可能にするのに使用することができる。IPG 1370は独立に動作するため、特定の時間にどの刺激群が作用しているかを判別するのは容易ではない。どの刺激群が作用しているかを特定し、この情報をPSG試験時に明らかになるデータに関連付け、その群の刺激レベルが適切であるかそれとも調整が必要であるかを検証すると有利である。通常、IPG 1370は、確認された送信側から受信されたコマンドにのみ反応する。PSG設定では、IPG 1370は、刺激群を変更したこと、チャネルのランプアップまたはランプダウンが行われたこと、刺激群を遅延させたこと、および刺激群がプラトー期にあることを示すメッセージを送信するのを可能にすることができる。この情報はRCC 2272に送信され、RCC 2272は、その4ピンコネクタを使用して、PSGシステムによって監視できる信号を生成し、IPG 1370の活動を示す情報をすべての他のPSG測定値と一緒に記録するのを可能にすることができる。また、aCMは、RCC 2272とのUSB接続を使用して、IPG 1370のステータスを周期的に問い合わせ、その情報をPSG画面内のある位置に表示することができる。
【0077】
手動パラメータ制御画面
手動パラメータ制御画面は、例示的な実施形態が図32に示されており、通常デフォルト値から変化しないが、ある条件の下では変更してもよいパラメータを設定するのに使用することができる。一実施形態では、この画面は2つの主要部分、すなわち、刺激パラメータおよびログが表示される部分と、ステータスおよびデータの転送動作が実行される他の部分とに分割される。左側の1番上の部分は、Startup Delay(またはSleep Session Delay)、Pause DelayなどのGlobal IPG Parametersを設定し表示するのに使用することができ、一方、右隣の部分は、Group Parameters部である。各群は最小で1つ、最大で6つの電極接点で構成することができる。各群は、デフォルトでは1つの接点で構成され、第1の群が接点1を含み、第2の群が接点2を含み、他の群についても同様である。複数の接点が1つの群に属する状況では、各群の寄与率が各群のそれぞれの位置に入力される。これによって、電流の分布が調節され、したがって、カフ電極764の2つ以上の接点間に神経活性化の場が設定される。Global IPG Parametersウィンドウの下にElectrodeウィンドウが位置してよく、接点を作動させた場合、その接点が生じさせる効果と同様にその電流設定値を表示することができる。この部分の各フィールドには手動入力が可能であるが、振幅を変更すると、最も近い実際の振幅に補正される。このことは、IPG 1370の電流源が線形ではなく対数的性質を有し、したがって、振幅を手動で選択するのは見た目ほど容易ではないために必要になることがある。調節画面の増分減分機能は、電流源のこの非線形性を自動的に有効化し、IPG 1370の較正データを使用して実際の電流を表示する。
【0078】
右側の主要部分は、やはりStatus Windowを含むとともに、RCC 2272とIPG 1370との通信およびファイル操作を制御する2つの部分を含んでよい。Communication部では、刺激パラメータをIPG 1370から読み取るかあるいはIPG 1370に送信することができる。File Operation部では、刺激パラメータをデータベース内のレコードから読み取るかあるいはそのようなレコードに書き込むことができる。IPG 1370事象ログをIPG 1370から取り込んでファイルに保存することもできる。一実施形態では、手動パラメータ制御画面の1番下の部分に、電極インピーダンス、電池充電動作、電池利用プロファイル、期待される事象と期待されない(しかし予測される)事象との両方についてのIPG事象を含む、IPG 1370によって収集された様々なログを表示することができる。
【0079】
RCC機能画面
RCC機能画面は、例示的な実施形態が図33に示されており、RCC 2272がaCMに接続されておりパススルーモードである間にaCMがRCC 2272の動作を完全にシミュレートするのを可能にすることができる。LEDのインジケータおよびRCC 2272スイッチのボタンのような、画面上の、クリックできる領域は、aCMが接続されていない場合と同様にシステムの完全な動作を可能にする。このことは、aCMユーザが(OR、睡眠実験室、または他の遠くの位置で生じると考えられるように)RCC 2272から離れた位置に配置されているときに有用であると考えられる。
【0080】
RCC USB通信画面
RCC USB通信画面は、図34に例示的な実施形態が示されており、通常、工学技士のみが使用できるように有効化される特殊な画面であってよい。RCC USB通信画面は、aCMとRCC 2272との通信およびRCC 2272とIPG 1370との通信を完全に観測するのを可能にすることができる。一実施形態では、手動での遠隔測定コマンドの構築と、コマンドパケットに含めるべきCRCコードの算出がサポートされる。aCMに対するポート操作もこの画面に表示可能であり制御可能である。これは、あるPCプラットフォームおよびWindows(登録商標)バージョンがUSBデバイスと一緒に使用され、USBケーブルを接続したり切り離したりすると、ユーザに明らかな理由を示さずにポートの割り当てが行われるときに特に有用であると考えられる。
【0081】
システムの動作
一実施形態では、システムの動作には5つの動作段階、すなわち、製造段階、埋め込み段階、調節段階、PSG段階、フォローアップ段階、および患者利用段階が含まれる。製造段階の間に、IPG 1370およびRCC 2272をプログラムし、試験し、較正することが可能であり、かつ出荷して埋め込むことができるように保管しておくことが可能である。IPG 1370(単体化して気密エンクロージャに封入する前)およびRCC 2272のPCB組立体のJTAGインタフェースは、完全なプログラミングおよび試験を行うのを可能にすることができる。IPGを単体化して封入した後、PCB組立体は、前述の二次ブートローダを使用してIPG 1370のプログラムコンテントを変更することが必要になる場合がある。一実施形態では、IPG 1370をプログラミングし試験した後、電池が回路から切り離され、IPG電池に接続されたままになる有効構成要素が1つだけ、すなわち電池監視回路だけになるため電流消費量が非常に少ない低電力消費量モードにすることができる。これによって、IPG 1370を完全に充電し、次いでその電池から切り離し、電池エネルギーをほとんど失わずに長期間にわたって保管しておくことを可能にすることができる。プログラミング環境では、JTAGインタフェースを有するコンピュータを様々な組立体に接続し、各デバイスにコードをプログラムすることができる。封入されたIPG 1370において、プログラミングシステムは、保管されているRCC 2272を利用してコマンドをMICS遠隔測定帯域を介してIPG 1370に転送することができる。
【0082】
埋め込み段階は、一例が図35に示されており、患者に電極およびIPG 1370が外科的に埋め込まれるときに実施される。この環境では、IPG 1370および電極が、手術室の滅菌野内で使用できるように準備された滅菌パッケージに含めることができる。手術の前に、RCC 2272を手術台上の患者の隣に置くことができ、長いUSBミニBケーブルをRCC 2272に接続して滅菌野の境界と交差させ、臨床工学技士およびaCMまで延ばすことができる。埋め込みの間に、IPG 1370および電極をカフ電極764の6つの接点すべてに対するインピーダンスおよびしきい値刺激レベルについて簡単に試験することができる。
【0083】
調節段階は、一例が図36に示されているが、システムの主プログラミング段階であってよい。この段階では、すべての接点を試験して、たとえば、そのしきい値刺激レベル、目標刺激レベル、および最大刺激レベルを求め、各電極接点の作用によって何が生じるかを判定し、接点対または三接点などが保証される場合はそれを試験し、かつ患者利用段階で使用できる群を割り当てることができる。フォローアップ段階は、基本的に調節段階と同様である。ただし、刺激の効果を向上させるか、あるいは接点もしくはワイヤの故障または他の原因による補正を軽減することができるように既存の刺激パラメータに変更を施すことができる。患者利用段階は、一例が図37に示されているが、システムの主な使用段階であってよく、OSAシステムの刺激治療およびメンテナンスを包含する。OSAシステムの詳細な動作について以下に詳しく説明する。
【0084】
On/Offボタンの押下
RCC 2272のOn/Offボタンを使用して睡眠治療セッションを開始または停止することができる。On/Offキー操作に関連する手順が図38に示されている。一実施形態では、患者はRCC 2272をドッキングステーション5378から取り外し、On/Offキーを押す。RCC 2272は、低電力消費量モードになっている可能性があるが、作動して、RCC 2272に割り当てられているIPG 1370の探索を開始する。RCC 2272は、そのMICS遠隔測定チャネルを通じて一定期間の間遠隔測定要求を送信することができる。この時間窓の終了時に、RCC 2272のIPG 1370が見つかっていない場合、RCC 2272はビープ音を発生させ、RCC 2272のIPG 1370にリンクできなかったことを示し、睡眠治療セッションを終了する。
【0085】
RC 2272は、IPG 1370にリンクできる場合、IPG電池の荷電状態、電極インピーダンス情報と、エラーフラグおよび関連するその他の情報を含む、IPG 1370のステータス情報を送信することをIPG 1370に求める要求を、睡眠治療セッションを開始する前に送信することができる。RCC 2272は、IPG 1370のステータスを示すLEDを設定することができる。電池に睡眠セッションを開始するのに十分な電荷があり、動作するようにプログラムされたすべての電極が動作限界内にある場合、IPG 1370に睡眠治療セッションを開始するように指示することができる。IPG 1370は、睡眠セッションの持続時間を含むデータパケットをRCC 2272に送信することができ、RCC 2272は、このデータパケットを使用して、IPG 1370のステータスを示すRCC 2272のフロントパネル上のインジケータLEDを調節することができる。RCC 2272は、次に患者がキーを押すまで低電力モードで待機する。IPG 1370は、後述の睡眠治療プロセスに取り掛かることができる。
【0086】
Chargeボタンの押下
Charge Keyは、IPG 1370を充電するプロセスを開始することができ、一例が図39に示されている。このプロセスでは、患者は、RCC 2272に充電器コイル(CC)を接続することができ、CCをIPG 1370上に配置してエネルギーをRCC 2272からIPG 1370に伝達する。RCC 2272は、コネクタ内のループバック接続のためにあるいは電流消費量を監視することによって、CCが取り付けられたことを検出することができる。一実施形態では、CCはIPG 1370上の所定の位置に配置される。これは、どちらのデバイスも、CCをIPG 1370上に最適に保持し揃えるのを助けることのできる磁石を含んでよいからである。RCC 2272は、CCの電流消費量を監視することによって、コイルがIPG 1370上にどの程度揃っているかを判定することができる。電流を監視するこれと同じ方法とCCの電流を変更することとによって、一次MICS遠隔測定チャネルに関する問題が生じた場合に二次遠隔測定チャネルを利用することができる。
【0087】
充電プロセスにおける事象の例示的なシーケンスは以下の通りであってよい。患者がChargeボタンを押し、RCC 2272がその低電力モードを終了する。充電プロセスがすでに実施されている場合、患者の意図は充電プロセスを終了することであると推定することができる。RCC 2272は充電プロセスを停止し、CCを無効化し、IPG 1370とのMICS通信リンクを確立することができる。RCC 2272は次いで、充電終了コマンドをIPG 1370に送信し、充電LEDをオフにし、IPG 1370ステータスを要求することができる。RCC 2272は次に、IPG電池ステータスを表示し、インピーダンスデータを評価することができる。インピーダンスが許容できるインピーダンスである(電流制御パルスを発生させるための許容範囲内)場合、充電プロセスが終了することができる。インピーダンスが許容範囲内ではない場合、オン/オフLEDを赤色に設定することができ、RCC 2272は、ビープ音を発生させることができ、充電プロセスが終了することができる。充電プロセスがまだ設定されていない場合、RCC 2272は、充電LEDを緑色に設定し、後述のIPG充電プロセスを開始することができる。
【0088】
Testボタンの押下
Testボタンは、睡眠セッション中に印加される刺激を表す短い刺激セッションを患者に施すプロセスを開始することができる。睡眠セッション時の刺激は実際には、患者が覚醒している間は刺激パルスの供給を開始することができないので、患者が、刺激システムが実際に期待通りに動作することを検証するか、あるいは睡眠治療の間刺激パラメータが快適に働くことを検証することが望ましい場合がある。試験プロセスは、刺激期間の持続時間、オン時間およびオフ時間、ならびにすべての群についてのランプ時間を除いて睡眠治療セッションと同一であってよい。一実施形態では、刺激は、試験プロセスが開始された直後に開始され、すべての群がそのランプアップ期、プラトー期、およびランプダウン期を経た後、あるいは試験ボタンが再び押されて試験プロセスがただちに停止されたときに終了する。試験プロセスにおける事象のシーケンスが図40に示されている。試験キーが押された後、RCC 2272は低電力モードを終了し、IPG 1370を探す。RCC 2272は、IPG 1370を見つけられない場合、ビープ音を発生させ、そのLEDを設定し、試験セッションが中止する。IPG 1370が見つかった場合、RCC 2272はIPG 1370のステータスを要求することができる。RCC 2272は次いで、IPG 1370の電池ステータスLEDを適切に設定することができる。電池が十分に充電された場合、RCC 2272は動作を継続し、電池が十分に充電されない場合、試験プロセスを中止することができる。インピーダンスが各有効群についての許容限界内である場合、IPG 1370に試験コマンドを送信することができ、許容限界内ではない場合、RCC 2272はビープ音を発生させ、試験LEDを赤色に設定し、試験セッションを終了することができる。
【0089】
Pauseボタンの押下
Pauseボタンは、患者が覚醒してトイレに行くことなどができるように短期間の間刺激セッションを停止させることができる。例示的な一時停止プロセスが図41に概略的に示されている。このキーは、睡眠治療セッションの間のみ有効化することができ、IPG 1370がこのモードでない場合には無視することができる。例示的なRCC 2272一時停止プロセスは以下のように行うことができる。患者がPause キーを押す。IPG 1370が睡眠セッション中でない場合、RCC 2272はビープ音を発生させ、LEDをオフにし、低電力モードに戻る。IPG 1370が睡眠セッション中である場合、RCC 2272はIPG 1370にリンクすることを試み、IPG 1370のステータスを要求する。IPG 1370がまだ一時停止されていない場合、RCC 2272はIPG 1370に一時停止コマンドを送信し、一時停止LEDを緑色に設定し、低電力モードに戻る。IPG 1370がすでに一時停止モードである場合、RCC 2272はIPG電池を確認することができる。電池が消耗している場合、RCC 2272は睡眠セッションを終了し、IPG LEDを赤色に設定し、低電力モードに戻ることができる。電池が満杯である場合、RCC 2272はIPG LEDを緑色に設定することができ、電池が満杯ではない場合、RCC 2272は電池LEDを琥珀色に設定することができる。RCC 2272は次に、インピーダンスを検査することができる。インピーダンスがOKではない場合、RCC 2272はオン/オフLEDを赤色に設定し、ビープ音を発生させ、低電力モードに戻ることができる。インピーダンスがOKである場合、RCC 2272は一時停止LEDをオフにすることができる。RCC 2272は次に、睡眠持続時間が終了したかどうかを検査することができる。睡眠持続時間が終了している場合、RCC 2272はオン/オフLEDをオフに設定し、睡眠セッションを終了することができる。睡眠セッションが終了していない場合、RCC 2272は一時停止を終了するコマンドをIPG 1370に送信することができ、かつ低電力モードに戻ることができる。
【0090】
IPG一時停止プロセス
IPG 1370一時停止プロセスは、RCC 2272からコマンドを受けたときに行うことができ、一例が図42に示されている。例示的なIPG一時停止プロセスは以下のように進行することができる。IPG 1370は、睡眠セッション中でない場合、低電力モードに戻ることができる。IPG 1370は、一時停止モードでない場合、一時停止モードに入り、刺激を中断し、IPG 1370の低電力モードに戻ることができる。IPG 1370は、一時停止モードである場合、いくつかの条件が満たされた場合に、刺激モードに戻り始める。まず、IPG 1370は、電池が消耗しているかどうかを検査し、電池が消耗している場合、RCC 2272にステータス情報を送信し、睡眠セッションを終了することができる。電池が消耗していない場合、IPG 1370はインピーダンスを検査することができる。インピーダンスが許容範囲内ではない場合、IPG 1370は、RCC 2272にステータス情報を送信し、睡眠セッションを終了することができる。インピーダンスが許容範囲内である場合、IPG 1370は、Unpause遅延(睡眠セッション遅延と同様であるが、たいていの患者は睡眠セッションの開始時よりも早く眠りにつくため通常睡眠セッション遅延よりも短い遅延)をロードし、遅延が完了するのを待ち、次いで第1の群の刺激についての設定を開始することができる。これには、立ち上げ周波数遅延、立ち上げ周波数持続時間、群1のランプアップ持続時間、群1のオン時間、次の群の遅延時間、振幅しきい値、周波数ランプの有効化、ランプの有効化、プラトー期の無効化、ランプダウンの無効化、および刺激の有効化を含めることができる。IPG 1370は次いで、低電力待機状態に戻ることができる。
【0091】
IPG充電プロセス
IPG充電プロセスは、上述のようにRCC 2272によって開始することができ、一例が図43に示されている。一実施形態では、IPG 1370とCCが結合され、RCC 2272はMICS遠隔測定が可能なほど近い位置にあり、RCC 2272は完全に充電され、電力をIPG 1370に伝達することができ、関連する他のすべてのシステムが動作可能である。RCC 2272とIPG 1370は、CCがRCC 2272に取り付けられており、CCがIPG 1370上に適切に揃えられていることを検査する責任を共有することができる。すべての構成要素が所定の位置に配置されると、RCC 2272はCCを有効化することができる。RCC 2272は次いで、IPG電池の荷電状態に基づいて充電持続時間を選択することができる。電池電圧があるレベルよりも低い場合、RCC 2272は充電持続時間を30分に設定することができる。電池電圧がわずかに高いレベルよりも低い場合、RCC 2272は充電時間を20分に設定することができる。それ以外の場合、RCC 2272は充電持続時間を10分に設定することができる。RCC 2272は次いで、充電持続時間が終了するのを待ち、その後、CCを無効化し、IPG 1370にステータスを要求し、ステータスに応じてRCC 2272のLEDを設定することができる。電池が満杯である場合、RCC 2272はビープ音を発生させ、充電LEDを10秒間だけ緑色に設定し、充電プロセスを終了することができる。電池が満杯ではない場合、RCC 2272はIPG 1370の温度を検査することができる。IPG 1370の温度が検査され、充電プロセスおよび再充電可能な電池の化学的性質に及ぼす可能性のある影響のために、場合によっては危険または有害な条件が存在するかどうかが確認される。IPG 1370の温度が許容できる温度である場合、RCC 2272は再び充電持続時間を選択し、充電プロセスを継続することができる。温度が許容できない温度である場合、RCC 2272はビープ音を発生させ、充電LEDを10秒間だけ赤色に設定し、充電プロセスを終了することができる。一定の持続時間の終了時に、RCC 2272は、IPG電池の荷電状態にかかわらず充電セッションを終了することができる。
【0092】
睡眠セッションプロセス
例示的な睡眠セッションプロセスが図44に示されている。IPG 1370は、睡眠持続時間カウンタをロードし、立ち上げ遅延をロードし、次いで立ち上げ遅延が完了するのを待つ。IPG 1370は次いで、第1の刺激群を準備することができる。次に、立ち上げ周波数をロードすることができ、立ち上げ周波数持続時間をロードすることができ、第1の群のランプ持続時間をロードすることができ、第1の群のオン時間をロードすることができ、次の群の遅延をロードすることができ、振幅しきい値をロードすることができ、周波数ランプを有効化することができ、ランプアップを有効化することができ、プラトー期を無効化することができ、ランプダウンを無効化することができ、IPG 1370は次いで、低電力待機状態に戻ることができる。
【0093】
周波数ティックプロセス
周波数ティックプロセスは、刺激パルスの供給の調和を図る主要事象であってよい。周波数ティック割り込みプロセスは、刺激時に発生する周波数パルスを表すため、この事象に関連するタイマ割り込みは、すべての有効接点についての1組のパルスの供給、およびある群についてのある段階から別の段階への進行、または群同士の間の遷移をトリガする事象であってよい。通常、ある群がプラトーレベルまたは目標レベルにあるときにはその群だけが有効であるが、ランプアップ時およびランプダウン時には、プログラミングプロセスの趣旨に応じて2つ以上の群が有効であることが予期される。
【0094】
周波数ティックプロセスは図45に示されている。IPG 1370はまず、周波数ランプが有効であるかどうかを確認する。有効である場合、IPG 1370は周波数ティック割り込みを生成するのに使用されるタイマ値に任意の必要な変更を施し、それによって周波数を調整することができ、次いで周波数ランプダウンを減分することができる。IPG 1370は次いで、周波数ランプ持続時間が零であるかどうかを確認する。周波数ランプ持続時間が零である場合、IPG 1370は周波数ランプを無効化することができる。IPG 1370は次に、現在の有効群に対する処理を開始することができる。IPG 1370はまず、ランプアップが有効であるかどうかを確認する。ランプアップが有効である場合、IPG 1370は群振幅レベルに任意の必要な調整を施すことができる。IPG 1370は次にランプ持続時間を減分し、ランプアップ持続時間が零であるかどうかを確認することができる。ランプアップ持続時間が零である場合、IPG 1370はランプアップ期を無効化することができ、かつプラトー期を有効化することができる。次に、IPG 1370は、プラトー期が有効であるかどうかを確認する。プラトー期が有効である場合、IPG 1370は振幅を目標レベルに設定し、プラトー持続時間を減分し、プラトー持続時間が終了しているかどうかを確認することができる。プラトー持続時間が終了している場合、IPG 1370はプラトー期を無効化し、ランプダウン期を有効化することができる。次に、IPG 1370は、ランプダウン期が有効であるかどうかを確認することができる。ランプダウンが有効である場合、IPG 1370は必要に応じて振幅を調整し、ランプダウン持続時間を減分し、ランプダウン持続時間が零であるかどうかを確認することができる。ランプダウン持続時間が零である場合、IPG 1370はランプダウン期を無効化し、その群を無効化することができる。
【0095】
次に、IPG 1370は、電池が十分に充電されているかどうかを確認することができる。電池が十分に充電されていない場合、IPG 1370は睡眠セッションを終了し、低電力モードに戻ることができる。次に、IPG 1370はインピーダンスを検査することができる。インピーダンスが許容限界内でない場合、IPG 1370は睡眠セッションを終了して低電力モードに戻ることができる。次に、IPG 1370は、有効群のパルスを発生させることができる。次に、IPG 1370は、有効な群が他にあるかどうかを確認することができ、ある場合は、上記に指摘したようにその群を対象とした処理を開始する。ない場合、IPG 1370は低電力モードに戻ることができる。
【0096】
次群ティックプロセス
次群ティックプロセスは、図46に示されており、刺激プロセスにおける次の群の活性化に関与する。Next Group Delay Tickに関連するタイマ割り込みが生じると、IPG 1370は次群遅延カウンタを減分し、この遅延カウンタが零であるかどうかを確認することができる。遅延カウンタが零である場合、IPG 1370は次の群を活性化し、ランプアップ持続時間をロードし、その群のオン時間をロードし、次の群の遅延をロードし、振幅しきい値をロードし、次に低電力モードに戻ることができる。カウンタが零でない場合、IPG 1370は単に低電力モードに戻ることができる。
【0097】
睡眠持続時間ティックプロセス
睡眠持続時間ティックプロセスは、図47に示されており、睡眠治療の持続時間の調節に関与する。治療の終了は、現在の有効群のランプダウンに一致してもしなくてもよい。このプロセスでは、睡眠持続時間に割り当てられたタイマ割り込み時に、持続時間を減分することができ、持続時間が零である場合、睡眠セッションを終了することができ、IPG 1370は低電力モードに戻ることができる。持続時間が零でない場合、IPG 1370は単に低電力モードに戻ることができる。睡眠治療セッションの開始時にIPG 1370によってRCC 2272に睡眠持続時間を送信できることを想起されたい。RCC 2272は、この値の独自のコピーを独立にカウントダウンすることができ、このカウントが零に達したときに、それに応じてRCC 2272のLEDを設定することができる。治療セッションの終了時には、IPG 1370とRCC 2272との間で通信を行う必要がない場合もある。
【0098】
群オン時間ティックプロセス
群オン時間ティックプロセスは、図48に示されており、群オン時間カウンタに関連するタイマ割り込みが生じたときに行われる。この事象が生じたときに、群オン時間を減分することができ、カウンタ値が零に達した場合、その群を無効化することができる。これは、どちらのプロセスも群の持続時間を調節できるという点で周波数ティックに対する冗長プロセスであるが、ランプアップ期、プラトー期、およびランプダウン期とは異なる特定のオン時間が望ましいいくつかの例で使用することができる。
【0099】
インピーダンス測定プロセス
インピーダンス測定プロセスは図49に示されている。基準に対する接点の両端間の電圧を測定し、刺激パルスが発生した電流を知ることによって、すべての有効接点についてインピーダンスを規則的に測定することができ、接点のインピーダンスを算出することができる。許容限界外の刺激群に関与するようにプログラムされた接点上でインピーダンスが検出されると、その点から前方への刺激を中断することができる。患者が刺激を開始できないことを通知したときに、患者に医師のアドバイスを受けるように指示することができ、医師は、可能なら他の接点を使用するようにIPG 1370を再プログラムするか、あるいは再置換手術を計画して問題を解決することができる。測定プロセスに関連するエラーフラグを更新し、刺激プロセスに関する限界外インピーダンスを検出するのに利用することができる。
【0100】
インピーダンス測定プロセスでは、まずいくつかの項目を初期設定することができる。第1に、チャネル(接点)の総数をロードし、サンプルカウントをロードし、サンプルアキュムレータをクリアし、サンプルレートを設定し、インピーダンスエラーフラグをクリアすることができる。次に、サンプリングプロセスが開始することができる。第1の接点のインピーダンスを読み取りアキュムレータに加算することができる。これは、最後のサンプルが読み取られるまで繰り返すことができる。次に、平均値を算出して接点用のインピーダンスアレイに記憶することができる。チャネル/接点が有効である場合、インピーダンスの妥当性を検査することができる。インピーダンスが必要な限界の範囲外である場合、インピーダンスエラーフラグとそのチャネルのビット値との論理和を求めることができる。それが最後のチャネルではない場合、サンプルカウントをリロードし、アキュムレータをクリアすることができ、次のチャネル/接点に対してプロセスが開始する。直前に試験した接点/チャネルが最後のチャネル/接点である場合、インピーダンスデータおよびエラーフラグを記憶し、インピーダンスデータをRCC 2272に報告することができ、IPG 1370は低電力モードに入ることができる。
【0101】
ブートローダプロセス
ブートローダプロセス(二次ブートローダを意味し、マイクロコントローラの一次ブートローダについて論じるわけではない)が図50に示されており、このプロセスは、IPG 1370プロセッサのデフォルトプログラムであってよく、すなわち、ブートローダプロセスは、IPG 1370のマイクロコントローラのリセットベクトルに関連するプログラムである。このブートローダは、マイクロコントローラのマスク読み取り専用メモリ(ROM)ブートローダが、マイクロコントローラのフラッシュメモリをデバッグまたはプログラムするうえでJTAGインタフェースまたは同様のインタフェースしかサポートできず、PCB組立体をIPG 1370ケース内に溶接するときに、IPG 1370を再プログラムするにはこの二次ブートローダプロセス以外に方法がないために必要になることがある。
【0102】
電池をIPG 1370の主回路から切り離すようにIPG 1370に命令することによって、IPG 1370を電源オフ状態にすることができる。このコマンドが実行された後、電力を供給されるIPG 1370回路の唯一の部分は電池モニタであってよい。このモードを使用して、IPG 1370を顧客への出荷待ちの間保管モードで保管することができる。充電器誘導電力を印加することによってIPG 1370の保管モードを終了することができる。これによって、プロセッサに電力を供給することができ、プロセッサは、そのパワーオンリセット(POR)シーケンスによってブートローダにベクトルを向けることができる。ブートローダは、マイクロコントローラおよびIPG 1370リソースを初期設定し、ブートローダがそれを実行した事象を記録し、MICS遠隔測定チャネルをオープンし、ブートメッセージタイムアウトカウンタをロードし、RCC 2272からの着信メッセージを待つことができる。タイムアウトカウンタが零に達するまでにメッセージが受信されなかった場合、ブートローダは、妥当なアプリケーションイメージがあるかどうかを確認することができる。妥当なアプリケーションイメージがない場合、ブートローダは電池を切り離し、保管モードに戻ることができる。妥当なアプリケーションイメージが利用可能である場合、ブートローダはそのアプリケーションを呼び出すことができる。呼び出し命令を使用すると、アプリケーションからのリターンが生じる恐れなしにプログラムメモリ内の任意の空間にジャンプすることを可能にすることができる。
【0103】
メインアプリケーションプロセス
メインアプリケーションが図51に示されている。メインアプリケーションは、ブートローダによって呼び出すことができ、システムリソースの初期設定、RCC 2272遠隔測定コマンドの実行、およびシステム動作の監視に関与することができる。メインアプリケーションは、電力投入に続いてシステムを初期設定し、「メインアプリケーション開始」事象を記録し、MICSウェイクアップ割り込みを有効化し、低電力モードに入ることができる。IPG 1370は、MICSウェイクアップ割り込みを受信すると、RCC 2272コマンドを実行し、MICSタイムアウトウィンドウ値をロードし、他のコマンドを待つ。タイムアウトが零に達すると、メインアプリケーションはMICSウェイクアップ割り込みを再有効化することができ、次いで低電力モードに戻ることができる。アプリケーションは、患者に好都合なように、できるだけ長い時間を低電力モードに費やして電池エネルギーを節約することができる。すべてのプロセスは、基本的に割り込み機構の必要に応じて行うことができる。IPG 1370の動作を順序正しく制御するように各割り込み、したがって各プロセスを必要に応じて優先順位付けしマスクまたは有効化することができる。このことは、刺激中に遠隔測定を行うなどの並列動作を可能にし、RCC 2272およびaCMによって刺激の変更を命令することができるようにするうえで極めて重要である。この割り込み並列システム構成がない場合、患者または臨床医には動作能力が欠落していたり遅延が生じているように見える恐れがある、ある種の事象における許容できないレイテンシが生じる可能性がある。
【0104】
システムプログラミング
例示的な実施形態のシステムプログラミングおよび刺激は、呼吸のタイミングを考慮に入れる必要がない。神経束に電気刺激を印加する際、束内のどの線維が興奮させられるかを決定する基本的に2つの要因がある。第1の要因は、線維から接点までの距離であり、線維が接点に近いほど電流勾配が大きくなり、かつ線維が興奮させられる可能性が高くなる。第2の要因は、膜の両端間の電圧の変化、したがって、活動電位を発生させるしきい値に達する可能性を決定する線維の直径であり、直径が大きいほど線維が興奮させられる可能性が高くなる。十分な持続時間を有する特定の電流振幅では、刺激からある距離または直径内のすべての線維が興奮させられる。電流振幅が大きくなるにつれて興奮させられる線維が多くなっていく。各線維が筋肉線維に関連付けられている(両方の線維を合わせて運動単位と呼ぶ)ため、興奮する神経線維が多くなるにつれて収縮する筋肉線維が多くなり、刺激電流が大きくなるかあるいは位相持続時間が長くなるにつれて力発生または位置が徐々に変化していく。この力が最初に発生する点は運動しきい値と呼ばれ、すべての線維が完全に回復する点が最大刺激レベルである。この最大レベルが実現される前に、この作用によって得られる患者の快適さを超えることが多く、しきい値レベルと、患者にとって不快ではないレベルで力および位置の有用なレベルが得られるレベルを求めることが重要である。最適または最良の力または位置が得られる点が目標レベルである。
【0105】
ある例示的な実施形態において、システムプログラミングでは、神経(たとえば、舌下神経)内に配置された遠心性運動線維に少なくとも1つの電極が動作可能に接続される。この接続が物理的な接続である必要はない。この接続は、目標の神経の目標の遠心性運動線維を刺激するのに十分な、当業者に公知の任意の接続であってよい。電極が目標の神経に動作可能に接続された後、2つ以上の電極接点が作動させられその適用可能な刺激しきい値(すなわち、所望の反応が実現されるしきい値)が求められる。患者に快適な刺激レベルを測定することもできる。各接点は、気道の開存性を維持するうえで有利な舌の動きを可能にする機能群に割り当てられてもよい。
【0106】
ある例示的な実施形態では、少なくとも2つの機能群を使用して神経に刺激が加えられる。機能群は、開いた気道を維持する舌の動きを生じさせる刺激を加える1つまたは複数の電極接点(たとえば、図7および8に示されている接点764a、764b、764c、および764d)と定義される。各機能群は、単一の接点を有しても、あるいは複数の接点を有してもよい。たとえば、2つの接点を有する機能群を使用して隣接する2つの接点間に位置する一群の神経線維を興奮させることができる。機能群からの刺激を加える方法の非制限的な例には、引用によって全体的に組み込まれるInternational Patent PCT/US2008/011599に記載された電界または電流操作がある。例示的な他の実施形態では、隣接する2つ以上の接点を使用して刺激野を集中させ、興奮させる神経の面積を、パルス発生装置ケースを復帰接点として使用して単一の接点によって実現できる面積よりも狭い面積に限定することができる。例示的な他の実施形態では、2つ以上の隣接しない接点を一緒に使用して、単一の接点のみで生じさせることのできる反応よりも良好な有用な反応を生じさせることができる。以下の表は、1番から6番までの6つの接点を有する実施形態の機能群の様々な例示的な組み合わせを示している。単一の接点は、複数の機能群の一員であってよい。たとえば、接点2は2つの異なる群、すなわち、接点1および2で構成された1つの群と接点2および3で構成された別の群であってよい。例示的な接点群を以下に示す。
【0107】
a.単一接点群:1、2、3、4、5、6
【0108】
b.二接点群:1と2、2と3、3と4、4と5、5と6、6と1
【0109】
c.三接点群:1と2と3、2と3と4、3と4と5、4と5と6、5と6と1、6と1と2
【0110】
d.非隣接接点群:1と3、2と4、3と5、4と6、5と1、1と3と5、2と4と6、3と5と1、4と6と1、1と2と4など
【0111】
図9は、例示的な刺激方式を示している。図52は、ある有効群から次の有効群への刺激の遷移としてより詳細な図を示している。図9に示されているように、機能群を使用して負荷の共有、振幅のランプ処理、および刺激の開始の遅延を実施して目標の神経(たとえば、舌下神経)への刺激の印加を最適化することができる。図9の例示的な方式では、患者が睡眠セッションを開始した後に刺激を遅延させ、それによって、刺激が開始する前に患者が眠りにつくことができる。各機能群からの刺激は順に強くなっていき、舌が顕著な疲労を生じさせずに持続可能な期間にわたって所望の位置に保持され、その後、次の群が関連する筋肉線維を弛緩させるのを開始し、前の群が関連する筋肉線維を弛緩させるのを停止する。これによって、疲労が防止され、舌の所望の位置が常に維持される。
【0112】
2つ以上の電極接点をプログラミングする際の残りの作業は、電極接点を選択して機能群に割り当てることである。刺激の間、一度にオンになる機能群は1つだけであるか、あるいは単一の機能群が、互いに重複する異なる位相を有する間隔でオンになるが、1つの群が複数の接点を含む。複数の接点を有することの影響も試験して、2つ接点または群を同時にオンにした場合の感覚によって患者が不快感を抱くことのないようにすべきである。単一の接点によって気道が適切に開放される場合、表面上、同じ目標遠心性線維に別の接点を付加する理由はほとんどない。2つの接点を使用したときに気道が適切に開放される場合、この接点対を試験して同じ群に割り当てるべきである。
【0113】
ある実施形態では、少なくとも2つの機能群が定められ、したがって、舌の位置を維持する負荷が共有され、疲労が始まるまでの時間が延びるかあるいは疲労が完全に防止される。刺激は第1の群から開始し、振幅が目標振幅まで大きくなっていき、目標レベルに所定の時間の間留まり、次いで次の群に代わるかあるいは次の群と重複する。これは、1つまたは複数の機能群によって繰り返される。このパターンは、第1の機能群から繰り返すことができるが、毎回同じ機能群から開始する必要はない。ある例示的な実施形態では、各群を、前の群がまだオンである間に振幅が大きくなるようにプログラムすることができ、第1の群は、次の群の目標レベルで終了するようにプログラムされる。これによって、プログラムされる群同士の間で共有される連続した一定の刺激レベルが維持される。このサイクルは、睡眠セッションが終了するまで繰り返される。
【0114】
筋肉の緊張および位置を維持する負荷はすべての機能群によって共有される。一実施形態では、各接点は、互いに異なるかあるいは重複した間隔でパルスを受ける(図10Aおよび10B)。このことは、目標の筋肉群を休めることと刺激することを交互に行い、それによって、舌が無呼吸または呼吸低下を生じさせる可能性のある位置に落ち込むのを防止することによって疲労を防止するかあるいは最低限に抑える。1つの群がオンのままであるようにプログラムされる所定の時間は、選択された刺激周波数で舌を観察し、結果的に実行される位置制御が疲労によって低下するまでに結果的に生じる収縮をどのくらいの間維持できるかを判定することによって求めることができる。
【0115】
他の実施形態では、各接点は、周波数が総目標周波数(後述)の一部であり、他の接点と位相が異なるパルスを受ける(図10B)。たとえば、目標周波数が30ppsである場合、各接点は、図9に示されているように30ppsの間隔でパルスを受けるのではなく、10ppsのパルスを受け、他の接点は各パルス間でインタリーブされる。このような実施形態では、各パルスは互いに位相が異なり、したがって、各接点は、順次ほぼ連続的なパターンのパルスを受け、接点の刺激負荷を共有する。各接点に負荷を拡散させることによって、疲労を生じさせたり位置決めに悪影響を与えたりすることなしにあるいは実質的に疲労を生じさせたり位置決めに悪影響を与えたりすることなしにほぼ一定の筋肉刺激を可能にするずっと低い周波数を使用することができる。
【0116】
複数の機能群を食い違い構成またはインタリーブ構成で使用することによって、舌を連続的またはほぼ連続的に刺激することができ、各機能群がその神経群を刺激するのが刺激サイクルの一部の間であるにもかかわらず舌が所望の位置に維持される。この例示的な方法は、複数の機能群間で負荷を共有し、各群が1つまたは複数の所望の舌筋を活性化することによって、連続的またはほぼ連続的な刺激を維持する。この方法は、群のランプが睡眠セッションに対して一度行われ、かつ刺激レベルがその目標レベルに維持され、刺激制御の複雑さが低下するという追加的な特徴を有する。
【0117】
刺激のランプ動作
図9および52は例示的な刺激ランプを示している。ある例示的な実施形態では、患者の快適さを最高にしかつ/あるいは覚醒を防止するために刺激ランプが使用される。患者が覚醒している場合、顕著で円滑な収縮を生じさせる刺激が重要である。しかし、閉塞性睡眠時無呼吸に罹患している睡眠中の患者を治療する際、患者を覚醒せずにこの疾患を治療するのに必要な最小の収縮を実現することが重要である。収縮は、無呼吸事象が生じるのを防止するのに十分な程度に舌を前方に移動させるかあるいは無呼吸事象が生じるのを防止するのに十分な気道(咽頭壁)の緊張/剛性を実現するだけでよく、場合によっては肉眼で見えなくてもよい。
【0118】
電気パルスを神経に印加することによる感覚と、それに伴う舌の随意運動は、よく言っても不自然である。ある例示的な実施形態では、目標は感覚を患者に許容できるレベルまで抑えることである。ある例示的な実施形態では、患者が目標刺激レベルまで癒されるように刺激が徐々に強められる。刺激はしきい値レベルから開始し、刺激の大きさは目標レベルまで徐々に大きくなっていく。当業者に知られているように、しきい値レベルと目標レベルを調節するように刺激の大きさまたは位相持続時間を変調することができる。
【0119】
刺激をランプなしでただちに印加した場合、刺激によって患者が覚醒し、無呼吸事象の場合と同様に患者の睡眠が悪影響を受ける。したがって、本発明の例示的な実施形態は、刺激の開始時に振幅強度ランプ法を使用してこの問題に対処する。このランプの持続時間は数秒であることが多く、したがって、変化は徐々に生じ、患者は組織への刺激の印加に適応することができる。
【0120】
ある例示的な実施形態では、約5秒〜10秒の振幅ランプが選択される(すなわち、刺激は5秒〜10秒で所望のレベルに達する)。刺激は、しきい値振幅から開始され、目標振幅に達して、舌の顕著な動きが観察されるまで徐々に強くなる。顕著な動きは、気道の抵抗を低下させるかあるいは気道の気流を増大するか、あるいは舌筋の緊張を維持する少なくとも1回の動きと定義される。舌の動きおよび気道に対する舌の影響は、鼻孔内に配置された内視鏡を用いるか、蛍光透視を使用するか、あるいは口腔の前部および舌の全体的な位置を観察することによって観察することができる。本発明の範囲から逸脱せずに、当業者に知られている他の観察方法を使用することができる。これは、睡眠セッション中に舌に影響を与えるように構成されたプログラムされた刺激プロトコルにこの接点を含めることが決定された場合に使用される動作点または目標の刺激レベルである。
【0121】
周波数調整
患者の知覚される快適さに影響を与える他の要因は、パルス波形の周波数である。約1pps〜3ppsのような非常に低い周波数の刺激は、筋肉の明確な単収縮または短時間の収縮として振幅しきい値を容易に識別するのを可能にする。このような単収縮または収縮は、容易に識別可能であり、患者によって感じることができることが多い。周波数を十分に高くすると、単収縮(強縮と呼ばれる)と単収縮同士の間の弛緩が融合して、筋肉が円滑に収縮する。このため、患者にとってより快適な感覚が得られることが極めて多く、一般に、周波数が高くなると患者はより快適になる。しかし、ある周波数を超えると、場合によっては、筋肉の収縮回数の増加に関連する仕事のレベルに関連して、不快な感覚になる。この快適レベルは、実験によって求めなければならず、患者ごとに異なる。次に、振幅を目標振幅まで高め、舌を上述のように十分に位置決めする。
【0122】
遅延刺激開始
ある実施形態では、患者が眠りについた後まで刺激が遅延される。睡眠実験室内の患者を監視し、かつ/あるいは患者の配偶者に尋ねることによって、刺激の開始を遅延させるのにどのくらいの時間が必要であるかを判定することができる。ある実施形態では、この遅延がIPG 1370にプログラムされる。患者がデバイスの睡眠セッションを開始すると、IPG 1370は、舌下神経に刺激を印加する前に、プログラムされた遅延期間が完了するのを待つ。刺激の開始に対する遅延は、患者の睡眠サイクルにおいて睡眠無呼吸が出現し始める時点に関連付けられてもよい。最も深い睡眠段階(眼の急速な動きまたはREM)まで無呼吸が出現し始めない場合、患者が眠り始める時点をかなり過ぎて、無呼吸が明らかになる時点の直前まで刺激の開始を遅延させると有利である場合がある。この場合、刺激を所定の期間にわたってかつ/あるいはIPG 1370が停止されるまで印加することができる。一実施形態では、IPG 1370はRCC 2272を介して作動させられ停止される。
【0123】
刺激の開始を遅延させることと、周波数および/または振幅変調を使用して刺激を所望の刺激まで徐々に強めるかあるいは弱めることはすべて、患者を睡眠の途中で覚醒させる可能性を低下させ、緊張性刺激が成功する可能性を高める。ある治療方法では、電気刺激によって活性化される動きに対する感受性の強い患者に睡眠薬を処方することによって、治療が成功する可能性を高めることができる。
【0124】
例示的な実施形態では、最初に1ppsから3ppsの間の低い刺激周波数を設定することによって刺激振幅しきい値が求められる。200μs陰極位相持続時間、50μs位相間間隔、および800μs陽極位相持続時間のような典型的な波形が選択され(この場合、陽極位相振幅は陰極位相振幅の振幅の4分の1である)、波形振幅は、約0μAから、舌筋が各パルスによって単収縮するのが観測できるレベルまたは患者が脈動を感じ始めるレベルまで徐々に大きくされる。これは、電気刺激が、神経束内の線維を興奮させるのに十分な刺激になる点である。この設定値はしきい値振幅と呼ばれ、刺激が停止される。
【0125】
最初の刺激にどんな周波数を使用すべきかを確認するために各接点をさらに試験することができる。経験および文献による証拠は、周波数が高いほど電気刺激に対する患者の感覚が快適なものになることを示唆している。刺激が快適になるほど患者が覚醒する可能性は低くなる。例示的なこれらの実施形態では、刺激は目標周波数よりも高い周波数から開始し、好ましい目標周波数まで徐々に低くなる。好ましい周波数は、所望の刺激反応を生じさせる患者に快適な周波数である。一実施形態では、1つまたは複数の接点がそれぞれの異なる間隔で目標周波数を実現する(図9および10A)。他の実施形態では、概して、目標周波数は接点数で割り、各接点に拡散させるかあるいはインタリーブする(図10C)。
【0126】
接点刺激パラメータを目標刺激について求められたパラメータに設定し、通常5秒〜10秒の振幅ランプを含めることによって、開始周波数が求められる。刺激が開始され、周波数が徐々に高められ、患者の快適感が検査される。快適さを維持するために周波数が高くなるとともに振幅を小さくすることが必要になる場合があるが、そうする場合、小さくした振幅で目標周波数を再び検査し、依然としてその目標周波数によって機能的な動きが生じることを検証すべきである。
【0127】
すべての接点が評価された後、すべての接点周波数のうちで最も低いより高い共通の周波数を選択すべきである。周波数は、気道の気流を増大させるかあるいは気道の抵抗を低下させる反応を生じさせる最低接点周波数に設定される。最低周波数を使用すると、疲労が生じるまでの時間が延びる。この周波数は、セッションの開始時からの遅延が完了した後に使用すべき立ち上げ周波数として使用される。
【0128】
例示的な使用方法
以下の節では、患者がシステムを使用する例示的な方法について説明する。この方法では、患者は遠隔制御充電器2272(RCC)を使用してシステムを動作させ維持する。この実施形態では、この遠隔制御装置と充電器の組み合わせは、RCC 2272の内部電池を充電するミニUSBコネクタを有する。任意に、RCC 2272は患者のナイトテーブルに維持される受け台に位置してよい。受け台は、RCC電池を充電するためにコードレス電話のようにRCC 2272に接続されるバネで留められた接点を有する。受け台は、ミニUSBコネクタを使用して壁取り付け電源に取り付けることもできる。
【0129】
患者は、睡眠セッションを開始するために、RCC 2272を使用して埋め込み可能なパルス発生装置(IPG)を作動させる。ある実施形態では、患者はまずRCC 2272を作動させ、RCC 2272はIPG 1370との通信を試みる。RCC 2272は、IPG 1370と通信できない場合、(たとえば、ビープ音を3回鳴らし、LEDを照明することによって)RCC 2272がIPG 1370と通信できなかったことを患者に示す。これは、IPG 1370の電池が消耗しており、IPG 1370を充電する必要があるか、あるいはRCC 2272がIPG 1370と通信できるほど近くに位置していないことを意味する可能性がある。IPG 1370を充電する必要がある場合、患者は充電コイルおよびケーブルをRCC 2272に取り付け、コイルをIPG 1370上に配置し、RCC 2272上の充電スイッチを押し、IPG 1370の電池が刺激を加えるのに十分なエネルギーを有するまで、完全に枯渇したIPG 1370の場合は最長で2時間から3時間にわたってIPG 1370を充電する。
【0130】
IPG 1370が通信するのに十分なエネルギーを有し、RCC 2272の範囲内に位置する場合、RCC 2272は刺激ステータスおよび電池レベルを取得する。これが正常な睡眠セッションの開始であると仮定すると、IPG 1370は「刺激オフ」状態になっている。RCC 2272は次に、電池LEDを満杯の場合には緑色状態、中程度の場合には琥珀色状態、消耗している場合には赤色状態に示すことによって電池ステータスを報告する。電池レベルが満杯または中程度である場合、IPG 1370は睡眠セッションを開始するように指示され、IPG 1370オン/オフLEDは緑色に設定される。電池が消耗している場合、IPG 1370はオフのままになるように指示され、IPGオン/オフLEDは赤色に設定される。患者は次いで、IPG 1370を1回または複数回の睡眠セッションに使用できるように充電することができる。
【0131】
睡眠セッションが開始した後、IPG 1370は、刺激を開始する前に患者を眠りにつかせる立ち上げ遅延期間を開始する。この遅延の終了時に、第1の機能群による刺激が開始し、振幅がしきい値から目標振幅まで大きくなり、その後、目標振幅がオン時間持続時間の残りの部分の間保持される。インタリーブまたは食い違いモードでは、すべての群が、その個々のランプアップパラメータを利用して同時に開始し、次いで睡眠期間の持続時間にわたって刺激レベルを目標レベルに維持する。刺激の開始時に、刺激周波数が、プログラミング時に決定された立ち上げ周波数に設定される。この周波数は、目標周波数に至るまで、プログラムされた持続時間にわたって低下させられ、その後目標周波数が使用される。
【0132】
代替実施形態
図53〜62は、上述のシステム要素の代替要素とみなすことのできるOSAシステムの代替実施形態を示している。図53は、上述の要素の代わりにかつ/あるいは上述の要素に加えて使用できる様々な要素、すなわち、ユーザインタフェースを有しても有さなくてもよい小形充電器と、ユーザインタフェースを有しても有さなくてもよいキーフォブ5380と、OSA用途用の有用な無線インタフェースおよびユーザインタフェースを実現することのできる、ハンドヘルドコンピュータ、スマートフォン5382、または同様の市販のデバイスのような市販のデバイスを利用することができる遠隔制御装置とを示している。
【0133】
図54は、遠隔制御装置として働くことのできる例示的な一対のデバイスを示している。左側のデバイスはApple iPod(登録商標) Touch 5382aであり、右側のデバイスはBlackberry(登録商標) Smartphone 5382bである。どちらのデバイスも優れたインタフェースを有し、様々なOSAシステム要素との通信を可能にする無線技術をサポートし、OSAシステムを使用できる患者の多くによって容易に入手可能で理解可能である。
【0134】
図55は、遠隔制御装置とIPG 1370との間の通信ブリッジを形成するのに使用できるキーフォブ遠隔測定リレーを示している。Bluetooth(登録商標)またはWi-Fiのような標準的な無線技術を、IPG 1370との通信用のMICS遠隔測定と一緒に、キーフォブリレー内で実現することができる。キーフォブリレーは、IPG 1370および遠隔制御装置の遠隔測定範囲内、たとえば、患者のポケット内に位置すればよい。キーフォブ5380はリレーデバイスでありさえすればよいので、電流消費量はかなり少なくてよく、キーフォブ5380は、かなり長い期間が経過してから充電するだけでよい小形リチウム一次コインセル電池で動作することができる。キーフォブ5380はリレーとして働くに過ぎないので、(キーボードまたはLEDディスプレイのような)ユーザインタフェースがなくてもよいが、必要に応じてキーボードとLEDディスプレイのいずれかまたは両方を追加してもよい。あるいは、遠隔制御装置は、ハードウェアリレー機能を挿入するのを可能にしてMICS遠隔測定を遠隔制御装置から直接IPGに施してもよい。
【0135】
図56は、例示的な充電器および充電器コイルを示している。この要素は、キーボードまたはLEDディスプレイのようなユーザインタフェースを有さなくてもよいが、必要に応じてキーボードやLEDディスプレイを追加してもよい。
【0136】
図57は、臨床医によって、OSAシステムをプログラムするかOSAシステムに問い合わせをする際に使用される代替実施形態用の考えられる利用モデルを示している。aCMは、前述のaCMと同様であってよく、Bluetooth(登録商標)またはWi-Fiのような無線インタフェースを使用して充電器と通信することができる。この場合、充電器は、MICS遠隔測定を使用してIPG 1370と通信することができ、また、何らかの理由でこのような通信が可能でない場合には、充電器コイル(CC)をバックアップ遠隔測定チャネルとして使用することができる。あるいは、図58に示されているように、aCMはキーフォブリレーを通じてIPG 1370と通常することができる。Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、または何らかの他の業界標準無線インタフェースをaCMとキーフォブ5380との間で使用することによって、また、MICS遠隔測定をキーフォブリレーとIPG 1370との間で使用することによって、通信を実現し、OSAシステムにおいてIPG 1370をプログラムするかあるいはIPG 1370に問い合わせることができる。あるいは、aCMコンピュータは、ハードウェアリレー機能を挿入するのを可能にしてMICS遠隔測定をaCMから直接IPGに施してもよい。
【0137】
図58は、iPhone(登録商標)(またはSmartPhone)5382を遠隔制御装置として使用してOSAシステムにおけるルーチン動作を実行することを示している。遠隔制御装置は、MICS遠隔測定を介してIPG 1370との通信を中継するキーフォブ5380と通信する。図60は、MICS遠隔測定を実現し、あるいは何らかの理由でMICS遠隔測定が機能しない場合には二次誘導リンク遠隔測定を実現することによって、充電器遠隔測定コイルがキーフォブ5380に代わることができることを示している。
【0138】
図59は、簡略化された充電器および充電器コイルを使用してIPG 1370を充電することを示している。充電器は通常、受け台またはドッキングステーション5378上に配置され、充電器自体の内部電源、場合によってはリチウムポリマー電池を再充電する。充電器の内部のマイクロコントローラは、患者が充電器をその受け台から取り外したことを検出し、IPG 1370の自動的な探索を開始することができる。IPG 1370が見つかり、充電器コイルがIPG 1370上に配置されていると判定すると、充電器は次に、前述のようにIPG 1370を充電することができる。充電器は、受け台またはドッキングステーション5378から取り外されてからたとえば5分以内にIPG 1370を見つけられなかった場合、膜スイッチパネルまたは他のユーザインタフェースを有する場合には、充電プロセスを開始または停止することを求める命令を独立に受けることができる。この場合も、他の構成では、図62に示されているように、遠隔制御装置を使用して充電器と通信し充電プロセスの開始および/または停止を実行することができる。
【0139】
OSA治療を可能にし、OSAシステムの動作を維持し、日常的な使用、OSA睡眠治療のプログラミングおよび維持に関して患者および臨床医に情報を供給するOSAシステムのこれらの実施形態および他の多数の実施形態を実現できることを理解されたい。
【0140】
当業者には、本発明の広義の概念から逸脱せずに、上記に示し説明した例示的な実施形態に変更を施せることを理解されたい。したがって、本発明が図示し説明した例示的な実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲内の変形実施形態を対象とするものであることを理解されたい。たとえば、例示的な実施形態の特定の特徴が請求される発明の一部であってもそうでなくてもよく、かつ開示された実施形態同士を組み合わせることができるように、論理的に可能であり適切であれば、本明細書のあらゆる文の最初に「実施形態は」などを挿入することができる。本明細書で具体的な記載がないかぎり、「a」、「an」、および「the」は1つの要素に限定されず、その代わりに「少なくとも1つ」を意味するものと解釈すべきである。
【0141】
また、上記の方法が、本明細書に記載された各ステップの特定の順序に依存しない程度に、各ステップの特定の順序を特許請求の範囲に対する制限として解釈しないようにすべきである。本発明の方法に関する請求項は、記載された順序での各ステップの実施に限定されるべきではなく、当業者には、各ステップが、変形されてよく、それにもかかわらず本発明の趣旨および範囲内であることが容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0142】
764 接点
1370 埋め込み可能なパルス発生装置
2272 遠隔制御充電器
5374 充電器コイル
5374a ケーブル
5376 ノートブックコンピュータ
5378 ドッキングステーション
5380 キーフォブ
5382 スマートフォン
5382a Apple iPod(登録商標) Touch
5382b Blackberry(登録商標) Smartphone
IC2 NiMH充電器回路
IC3 Vcc3.3Vレギュレータ
IC7 I2Cインタフェースポートエキスパンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の舌の位置を調節するのに使用されるシステムであって、
少なくとも1つの電気信号のうちの1つを舌下神経内に配置された目標とされる少なくとも1つの遠心性運動線維のうちの1つに印加して舌の少なくとも1つの筋肉を刺激するように構成された電極を備えるシステム。
【請求項2】
前記電極に結合された埋め込み可能なパルス発生装置(IPG)をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記IPGに結合された遠隔制御充電器をさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記遠隔制御装置はIPGに電力を供給する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記遠隔制御装置はIPGを再充電する、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記遠隔制御充電器を充電するように構成されたドッキングステーションをさらに備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記遠隔制御充電器は、コンピュータに結合され、前記IPGをプログラムするように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
前記電極は複数の接点を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記IPGは、前記接点を複数の機能群のうちの1つに割り当てるようにプログラム可能である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記IPGは、前記機能群を順序付けるかあるいはインタリーブするようにプログラム可能である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
各機能群は、前記患者の気道を開放したままに維持し、第1の機能群は、第2の機能群とは異なる少なくとも1つまたは複数の筋肉を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記IPGは、気密エンクロージャによって覆われる、請求項2に記載のシステム。
【請求項13】
前記IPGの温度を測定するように構成されたセンサをさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項14】
前記電極は複数の接点を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記電極は6つの接点を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記各接点は、それ自体の独立の電流源によって駆動される、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
一次ブートローダをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
二次ブートローダをさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
体内植込型医療用データ伝送システム(MICS)遠隔測定送受信機をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
誘導リンク遠隔測定送受信機をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記電極は、前記舌下神経の一部を覆うように構成されたカフハウジングを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記電気信号は、開ループシステムを介して前記舌下神経に印加される、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記電極は複数の電流源によって駆動される、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
事象ロギングメモリをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
電極接点および患者の組織の少なくとも一方のインピーダンスを測定するように構成されたマルチプレクサをさらに備える、請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【公表番号】特表2013−509943(P2013−509943A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537866(P2012−537866)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/036070
【国際公開番号】WO2011/059531
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(510098227)イムセラ・メディカル・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】