説明

舗装方法

【課題】広い施工面での施工に適し、熟練した技術を要することなく迅速且つ仕上がり完成度の高い舗装面を形成可能な舗装方法を提供する。
【解決手段】樹脂を含浸させた不織布の表面に、直線状の縦合わせライン6、縦合わせライン6に直交する横合わせライン7、及び、縦合わせライン6と横合わせライン7との直交状態を確認するための斜め合わせライン8、が形成された略正方形の不陸調整層3を作製する不陸調整層作製工程と、目地層及び表層材を備える模様層4を作製する模様層作製工程と、不陸調整層3及び模様層4を施工現場へと搬入する搬入工程と、不陸調整層3を施工面の表面に連続的に敷き詰めて貼着する不陸調整層貼着工程と、不陸調整層3の表面に模様層4を連続的に敷き詰める模様層貼着工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装方法に関するものであり、特に樹脂モルタルを用いた塗り床を主眼とした舗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、景観を重視する道路環境における舗装方法として、合成樹脂を用いた塗り床工法が広く知られている。塗り床工法とは、合成樹脂を結合材とする樹脂モルタルを塗布することで舗装面を仕上げる工法であり、施工現場で液状の樹脂モルタルを塗布し、乾燥させて床面を仕上げる所謂「湿式工法」と、工場等で、予め単位部材として樹脂モルタルを塗布して仕上げた床材を施工現場へと搬入し、当該単位部材を敷き詰めることで床面を形成する「乾式工法」とが知られている。
【0003】
ところで、景観を重視する舗装面には、種々の模様や絵柄が描画されていることが多い。特に、碁盤目状の目地模様は、自然な石畳調の風合いを醸し出すものとして広く適用されている。所謂「湿式工法」において碁盤目状の目地模様を実現するには、例えば、予め碁盤目状の目地模様に形成された型枠や直線状の棒状の目地部材などを用い、これらの目地部材を施工面に貼着させてその上から樹脂モルタルを塗布し、樹脂モルタルが乾燥した後に型枠などを取り外す方法などが採用されている。このような方法を用いることで、型枠の無い部分だけに樹脂モルタルが塗布されるので、型枠と同形状の目地模様を有する舗装面を形成することが可能となる。
【0004】
しかし、前述の湿式工法では、施工現場(特に屋外の場合)の気候条件や温度・湿度の状況によって、出来上がる床面の品質が大きく左右されてしまうという問題がある。さらに、塗布した樹脂モルタルが完全に硬化するまで舗装面への歩行者の侵入を制限する必要があり、特に、何層も重ね塗りを必要とする場合は、施工期間が長大になり不便である。これに対し、「乾式工法」によれば、工場等のように品質管理が容易な場所において碁盤目状の目地模様を有する床材を作製することができ、均一で高品質な目地模様を有する舗装面を形成できるという利点を有している。また、施工現場においては、予め作製された床材を敷き詰めるだけで床面を形成することができるので、施工期間を短縮することができ、歩行者の通行を制限する期間を最小限にできるという優れた特徴を有している。
【0005】
このような乾式工法としては、例えば特許文献1に示すものが知られている。特許文献1では、樹脂を含浸させた不織布の表面にポリマーセメントからなる模様層を形成し、こうして形成された不織布と模様層との2層構造の化粧シートを現場へと搬入し、施工面に貼着する工法が開示されている。ここで、模様層として、碁盤目状の目地模様を有するものを適用することで、型枠を貼着したり、舗装面として塗布した樹脂モルタルが硬化するまで歩行者の侵入を制限するような必要も無く、均一な碁盤目状の目地模様を有する舗装面を迅速に施工できる可能性を有している。
【特許文献1】特開平7−171928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法によれば、大判で形成された2層構造の化粧シートを施工現場へと搬入し、施工面の大きさに合わせて切断する必要があるので、施工面が拡大すると搬入させる化粧シートも大型化した。つまり、搬入の途中で折れ曲がって亀裂が生じてしまう虞が増大し、大きな施工面での施工に向いていないという問題があった。また、化粧シート単体での目地模様の品質(目地模様が歪んだり、ずれたりしていないこと)は、工場生産であることによりある程度確保されるものの、施工面と化粧シートとの相対的な位置関係の調整は難しく、意匠性の確保が困難である虞があった。
【0007】
具体的には、例えば、施工面が湾曲している場合などは、そこに貼着させた化粧シートも歪んでしまい、施工面の湾曲に連れ添った形で目地模様が湾曲してしまう場合などが発生する(図9(a)参照)。また、駅のプラットフォームのように、直線状で長尺状の施工面に目地模様を形成する場合は、化粧シートに描画された目地模様とプラットフォームの長手方向との相対的な平行関係を維持する必要があり、例えばプラットフォームの端面と目地模様とが平行な位置関係に無い場合は、目地模様そのものが碁盤目状に整然と並んでいても、駅のプラットフォームに対して斜め方向に傾いた印象を歩行者に与えてしまう(図9(b)参照)。
【0008】
このように、目地模様が湾曲したり、施工面の基準方向に対して傾いてしまった場合には、施工をやり直す必要が生じ極めて非効率的であった。また、やり直しに時間を割かれると、施工期間が長大化し、乾式工法としてのメリットが充分に発揮できないという問題が生じた。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑み、広い施工面での施工に適し、熟練した技術を要することなく迅速且つ仕上がり完成度の高い舗装面を形成可能な舗装方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る舗装方法は、「メチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂を含浸させた不織布の表面に、直線状の縦合わせライン、該縦合わせラインに直交する横合わせライン、及び、前記縦合わせラインと前記横合わせラインとの直交状態を確認するための斜め合わせライン、が形成された略正方形の不陸調整層を作製する不陸調整層作製工程と、前記樹脂及び骨材からなる樹脂モルタルより構成される部材であって、前記不陸調整層の表面に貼着される目地層、及び、該目地層の表面に形成され該目地層の一部が視認可能に露出されることで形成される碁盤目状の目地模様を有して構成される表層材、を備える模様層を作製する模様層作製工程と、前記不陸調整層及び前記模様層を施工現場へと搬入する搬入工程と、施工面の表面に、前記碁盤目状の目地模様の基準となる基準線を描画する基準線墨出し工程と、該搬入工程により搬入された前記不陸調整層を、前記基準線に準じて、前記施工面の表面に連続的に敷き詰めて貼着する不陸調整層貼着工程と、前記縦合わせライン、前記横合わせライン、及び、前記斜め合わせラインが夫々直線状に整列していることを確認する配列確認工程と、該不陸調整層貼着工程において貼着された前記不陸調整層の表面に、前記搬入工程により搬入された前記模様層を、前記縦合わせライン及び前記横合わせラインに沿って連続的に敷き詰める工程であって、前記連続的に敷き詰められた隣接する不陸調整層同士の継ぎ目と、前記模様層同士の継ぎ目とが互いに重なり合わないように貼着させる模様層貼着工程とを具備する」ものである。
【0011】
ここで、「含浸」とは、繊維の内部全体に樹脂が浸透している状態だけではなく、繊維の表層付近にのみ樹脂が浸透している状態も含む。
【0012】
また、「不織布」とは、編み・織りなどの方法によらないで、繊維のままで布状にしたものを示し、例えば、ガラス繊維等の無機質繊維、綿等の天然繊維、及びレーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド等の合成樹脂繊維を機械的・化学的・加熱もしくは溶媒を用いるなどして結合させ、布状に形成したものが例示できる。
【0013】
さらに、「縦合わせライン」及び「横合わせライン」とは、模様層を貼着させる位置が判るものであれば良く、例えば墨汁、油性ペン、チョーク、ペンキ、その他公知の筆記用具で描画する方法や、彫刻、焼き入れ、適宜の目印部材を埋設する、等の方法が例示できる。要するに、模様層を貼着させる位置の目印として視認容易なものであれば、如何なるものであっても良い。
【0014】
また、「骨材」としては、粒径が5mm以下であれば特に限定されるものではないが、例えば、粉末状のセルベン、珪岩、炭酸カルシウム、チタン、寒水石、パーライト、バーミキュライト、スチレン樹脂発泡体、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウム、雲母が例示できる。
【0015】
さらに、「不陸調整層」とは、施工面の基盤上に存在する凹凸を吸収し、滑らかな表面を形成することのできる層である。また、「基準線に準じて」とは、不陸調整層の縦合わせライン等に沿って配置される模様層表面の、目地模様が所望の整列状態で形成されるように不陸調整層を並べていく状態を示す。つまり、正方形状の不陸調整層の四辺に対して、略平行な状態で縦合わせライン等が形成されている場合は、目地模様の延設方向に沿って当該四辺を平行に配置していけば良い。一方、正方形状の不陸調整層の四辺に対して、縦合わせライン等が斜めに傾いて形成されている場合には、その上に配置される模様層の目地模様が所望の整列状態となるように、不陸調整層の配置角度を調整して(傾けて)配置すると良い。配置する方法としては、基準線に沿って配置された不陸調整層を基点とし、その隣などに次々と連続的に他の不陸調整層を敷き詰めて貼着させる状態を示す。つまり、全ての不陸調整層を基準線に沿って配置する場合に加え、基準線に配置された不陸調整層を基点として他の不陸調整層を(基準線に沿って、ではなく)連続的に配置する場合も含む。
【0016】
また、「前記縦合わせライン及び前記横合わせラインに沿って連続的に敷き詰める」とは、一枚一枚の模様層と縦合わせライン及び横合わせラインに沿って敷き詰めていく状態を示す。さらに、「不陸調整層同士の継ぎ目と、模様層同士の継ぎ目とが互いに重なり合わないように」とは、不陸調整層同士の継ぎ目のほぼ真上、もしくはごく近辺に、連続的に模様層同士の継ぎ目が配置される状態を示し、不陸調整層同士の継ぎ目と模様層同士の継ぎ目とが一部だけ重なり合っている状態、例えば交差している状態などは含まない。
【0017】
従って、本発明の舗装方法によれば、大判の不織布に、メチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂(以下、単に「MMA樹脂」と称す)を含浸させる。そして、樹脂が略硬化した状態で、略正方形の単位形状に切断し、その表面に、模様層の貼着位置の目印となる縦合わせライン、横合わせライン、及び斜め合わせラインを形成する。ここで、「横合わせライン」とは、「縦合わせライン」に対して直交するラインであれば良く、不陸調整層の正方形の外形状と整合させる必要は無い。つまり、不陸調整層の四辺に対して平行に形成されても良いし、任意の角度に傾斜して設けられても構わない。ただし、不陸調整層の四辺と略平行な状態で形成すると、後述する「基準線墨出し工程」において基準線を描画する際に、基準線と碁盤目状の目地模様との相関関係が把握しやすく(碁盤目状の目地模様の延設方向と基準線の延設方向とを平行に揃えれば良く、傾斜状態を考慮する必要が無いから)、より好適である。こうして、不陸調整層を作製する(「不陸層作製工程」)。
【0018】
一方、MMA樹脂を一様に塗布して所望の単位形状の目地層を作成し、その表面に碁盤目状の目地模様を有する表層材を形成することで、模様層を作製する(「模様層作製工程」)。なお、目地模様は、碁盤目状に区切られた表層材の隙間から、その下地となる目地層が視認可能に露出することで形成されるものである。そして、作製された不陸調整層及び模様層を、施工現場へと搬入する(「搬入工程」)。
【0019】
施工現場では、施工面の基盤となる層(土、アスファルト、コンクリート等)に、所望の碁盤目状の目地模様の基準となる基準線を描画する(「基準線墨出し工程」)。そして、当該基準線に沿って、搬入された不陸調整層が連続的に敷き詰められる(「不陸調整層貼着工程」)。これにより、基盤となる層の表面に存在する細かな凹凸が埋め合わされ、滑らかな表面形状が形成される。そして、不陸調整層の表面に形成された縦合わせライン、横合わせライン、及び斜め合わせラインを通じて、作業者が、これらラインの整列状況を確認する(「配列確認工程」)。例えば、隣接する不陸調整層同士が歪んで配置されていたり、単位部材の不陸調整層の形状が歪んでいた場合には、縦合わせラインや横合わせラインが直線状に整列せずに歪んで配置されるので、歪み具合を目視で確認することが容易である。
【0020】
また、仮に縦合わせラインや横合わせラインが直線上に並んでいても、施工面に湾曲や段差があった場合は、その上に配置される模様層上の碁盤目状目地模様が微妙に歪む虞が生じる。しかし、本発明によれば、斜め合わせラインがさらに具備されているから、縦方向と横方向だけではなく、さらに斜め方向の整列具合も確認することができる。これにより、より正確に縦合わせラインや横合わせラインの整列状況を確認できると共に、施工面の段差や湾曲を簡易に発見することが可能となる。
【0021】
そして、不陸調整層の表上に、さらに模様層が連続的に敷き詰められて貼着され(「模様層貼着工程」)舗装面が完成する。ここで、連続する模様層同士の継ぎ目は、不陸調整層の継ぎ目に重ならない様に敷き詰められる。
【0022】
以上のように、本発明の舗装方法によれば、略正方形の単位形状に作製された複数の不陸調整層を連続的に敷き詰めていくことで不陸調整層を形成できるから、敷き詰める不陸調整の数を調整することで、施工面の大型化に容易に対応することができる。また、一枚あたりの不陸調整層の大きさを最適化させることで、より運搬しやすい大きさにすることができ、効率的である。
【0023】
さらに、本発明によれば、不陸調整層に、模様層の貼着目印となる縦合わせラインや横合わせラインが形成されているから、不陸調整層を配置するだけで模様層の貼着位置を比較的正確に知ることができ、模様層を貼着させていく際の手間を大幅に削減することができる。また、不陸調整層には、縦合わせラインや横合わせラインに加えて、さらに斜め合わせラインが形成されているから、より正確に碁盤目状の目地模様の整列関係を確認することができる。具体的には、例えば施工面が湾曲していたり、段差があったような場合でも、斜め合わせラインを確認することで縦横の平行関係だけではなく、3次元的(盛り上がっていたり、段差が生じていたり等)な整列関係を確認することができるから、その上に貼着させる模様層(正確には、模様層に形成された目地模様)の配置位置の微調整がより正確且つ簡易に行うことができ、意匠性の高い舗装層を提供することが可能となる。
【0024】
また、従来の湿式工法においては、所望の目地模様を描画するためには、全ての目地ラインを墨出し工程が必要であった。ここで、「墨出し工程」とは、施工面(この場合、駅のプラットホーム)の延設方向に沿って、所望の目地模様が描けるように、模様層の貼着位置を不陸調整層の表面に直線状に描画していく工程であり、作業者が、目視で確認しながら一本一本描画していく必要があった。このため、施工面が比較的広く、大量の模様層を貼着させる必要が生じると、墨出し工程に要する作業時間と手間も増大し、工期短縮の足枷となっていた。
【0025】
これに対し、本発明の舗装方法によれば、基準線墨出し工程を具備しているから、基点となる不陸調整層を貼着させるための基準線の墨出しのみを行うだけで良い。そして、当該基準線に沿って不陸調整層を連続的に敷き詰めていくだけで、その表面に描画された縦合わせライン等も規則的に配置される。従って、作業者は、縦合わせライン等を目印にして模様層を貼着させていくことができ、墨出し工程に要する手間と時間を大幅に削減することが可能となる。
【0026】
なお、施工面の形状や、不陸調整層の敷き詰め方によっては、連続する縦合わせライン等が歪んでしまう場合も考え得る。このような場合には、施工現場にてガイドラインに修正を施す必要が生じる。このような場合には、本発明の構成に加え、さらに「配列確認工程の後、模様層貼着工程の前に、縦合わせライン、横合わせライン、または斜め合わせラインの整列状態を修正する墨出し修正工程」をさらに具備する構成としても良い。
【0027】
このような工程を具備することで、より美しい目地模様を有する舗装層を形成することができる。なお、修正用の墨出しに係る手間が増えてしまう側面は有するものの、最初から全てのガイドラインを施工現場で描画する従来の墨出し工程に比べれば、予め目印となるガイドライン(縦合わせライン等)が描画されていることにより、極めて少ない時間と手間でガイドラインを完成させることができ、従来の墨出し工程に係る作業量よりずっと少ない労力で美しい舗装層を作製することができる。
【0028】
また、本発明によれば、不陸調整層が予め工場等で作製され、硬化した状態で施工現場へと搬入されて配置されるため、不陸調整層の塗布及び硬化に要する時間が大幅に減縮される。また、工場等のように、気温や湿度、仕上がり完成度などがコントロール容易な場所において予め不陸調整層を作製できることにより、施工現場での気候条件等に左右されることがなく、また、連続的に敷き詰めていくという比較的簡単な方法を用いて、迅速に且つ高い完成度で不陸調整層を形成できる。
【0029】
また、模様層は、目地模様として露出する目地層と、表層を形成する表層材との2層構造になっている。従って、その下地を形成する不陸調整層が、薄手の不織布から構成されていることにより搬入工程においてひび割れなどを生じることがあった場合でも、目地層及び表層材とでひび割れた不陸調整層を被覆することができるので、舗装面の意匠性を低下させる虞が無い。これにより、極めて迅速且つ簡単に意匠性の高い舗装面を形成できる。また、所定形状の不陸調整層を敷き詰めることで不陸調整層全体を構成できることから、大判の不陸調整層を作製して施工面の形状に合わせて切断するような工程が必要なく、広い施工面にも好適に適用される。
【0030】
さらに、本発明によれば、連続して敷き詰められる不陸調整層と、その表面に敷き詰められる模様層との継ぎ目が互いに重なり合わないように配置されるので、熱等によって不陸調整層が膨張した場合でも、模様層に押さえつけられていることによってその継ぎ目が広がり難く、ひび割れし難い構成とすることができる。また、不陸調整層がひび割れし難いことにより、その表面に貼着された模様層もひび割れにしくく、耐久性の高い舗装面が提供できる。
【0031】
また、本発明によれば、不陸調整層、目地層、及び表層材にMMA樹脂を使用しているため、常温で重合反応が進行し、比較的迅速に硬化する。これにより、不陸調整層及び模様層作製する時間を短縮することができ、効果的である。また、互いに同じ樹脂(MMA樹脂)を使用していることから、密着性に優れ、施工後の剥離を起こしにくい。これにより、長寿命で経済的な舗装面を提供できる。
【0032】
なお、模様層に現れる目地模様としては、特に限定されるものではないが、隣接する模様層との境界部に目地部が直線状に配置されるような目地模様として形成すると、模様層同士の継ぎ目に目地模様が位置するので、継ぎ目が分かり難くなり、より自然な仕上がり舗装面とすることができ、より好適である。
【0033】
また、本発明の舗装方法において、「前記斜め合わせラインは、前記縦合わせライン及び前記横合わせラインよりも太い幅で形成されている」ものとすることができる。
【0034】
ところで、縦合わせライン、横合わせライン、及び斜め合わせラインは、少なくとも作業者が視認容易な程度の幅で形成される必要が当然にあるが、縦合わせライン及び横合わせラインが有する機能と、斜めラインが有する機能とには違いがあるため、必要とされる幅にも違いが生じる場合がある。具体的には、縦合わせライン及び横合わせラインは、その上に配置される模様層の貼着位置だし用ラインとして機能するものであるが、斜め合わせラインは、縦合わせライン及び横合わせラインの整列状況(ひいては、その上に配置される模様層の目地模様の整列状況)を確認するための確認ラインとして機能するものである。
【0035】
ここで、縦合わせライン及び横合わせラインがあまりに幅広であり、例えば目地ライン一本分の幅よりも広い幅で形成されていると、その幅のどこに模様層の端面等を合わせ込むかでばらつきが生じ、隣接する不陸調整層同士の貼着位置がずれてしまう虞がある。これにより、施工面全体での不陸調整層上の縦合わせライン及び横合わせラインが直線上に並ばず、歪んでしまう場合も考えられるが、本発明によれば、斜め合わせラインは、縦合わせライン及び横合わせラインよりも太い幅で形成されており、換言すれば、縦合わせライン及び横合わせラインは斜め合わせラインよりも細い幅で形成されているから、隣接する不陸調整層同士の貼着位置がずれにくく、より正確に多数の模様層を整列させることができる。
【0036】
一方、斜め合わせラインは、不陸調整層の整列状況を確認する機能を主に有しているから、なるべく視認が容易な程度に幅広であることが望ましい。そこで、本発明では、斜め合わせラインは、縦合わせライン及び横合わせラインよりも太い幅で形成されている。このように最適化することで、縦合わせライン及び横合わせラインと、斜め合わせラインとの差異を明確化し、より紛らわしくないように、つまり確認が容易となるよう配慮している。
【0037】
また、本発明の舗装方法において、「略正方形の前記不陸調整層には、少なくとも対角線上に位置する二つの頂点に、前記縦合わせラインと前記横合わせラインとの直交状態を確認するための斜め確認用マーカーがさらに形成されている」ものとすることができる。
【0038】
ここで、「斜め確認用マーカー」とは、不陸調整層の頂点のうち、対向する2点に少なくとも設けられるものであって、4つの頂点全てに形成されても良いし、いずれか一組の2点に設けられても構わない。形状または形態としては、不陸調整層の頂点の位置が分かるものであれば良く、頂点を塗りつぶしたり、鋲や目印部材を埋め込んだり、彫刻するなどしてマーキングするものが例示できる。ただし、「斜め合わせライン」との差異が明確に分かるものであることが好ましい。
【0039】
従って、本発明の舗装方法によれば、縦合わせラインと横合わせラインとの直交状態を確認するための斜め確認用マーカーがさらに形成されている。これにより、縦合わせラインと横合わせラインとの直交状態の確認作業を、より確実で簡易なものとすることができる。さらに、斜め合わせラインとの機能の違いとしては、連続する不陸調整層同士の継ぎ目を容易に確認できる点にある。
【発明の効果】
【0040】
このように、本発明の舗装方法によれば、略正方形の単位形状に作製された複数の不陸調整層を連続的に敷き詰めていくことで、広い施工面での全不陸調整層を形成できるから、敷き詰める単位形状の不陸調整層の数を調整することで、施工面の大型化に容易に対応することができる。また、不陸調整層に、模様層の貼着目印となる縦合わせライン、横合わせライン、及び斜め合わせラインが形成されているから、不陸調整層を配置するだけで模様層の貼着位置を比較的正確に知ることができ、模様層を貼着させていく際の手間を大幅に削減することができる。これにより、美しい碁盤目状の目地模様を有する舗装層が簡易に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の一実施形態である舗装方法について、図1乃至図8に基づき説明する。図1は本発明の舗装方法によって作製された舗装面の断面を模式的に表した断面模式図であり、図2は不陸調整層の斜視図であり、図3は模様層の斜視図であり、図4は型枠の斜視図であり、図5は模様層の作製工程を説明する説明図であり、図6は不陸調整層貼着工程を示す説明図であり、図7は模様層貼着工程を示す説明図であり、図8は不陸調整層と模様層との継ぎ目を示す断面図である。
【0042】
本実施形態の舗装方法によって作製された舗装面1は、図1に示すように、駅のプラットホームなどの施工面2の表面に配置された不陸調整層3と、不陸調整層3の表面に配置された模様層4とを有して構成されている。また、模様層4の表面には、保護層5が形成されている。
【0043】
不陸調整層3は、施工面2の表面にある細かな凹凸を埋め合わせ、滑らかな表面を形成する層であり、公知の不織布にメチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂(以下、単に「MMA樹脂」と云う)を含浸させることで形成される。ここで、公知の不織布としては、例えばガラス繊維、綿、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド等の各種の繊維を編み・織りなどの方法によらないで繊維のままで結合させ布状にしたものを示し、材質及び結合の方法は特に限定されるものではない。また、本例の不陸調整層3に使用されるMMA樹脂には、軟質のものが選択されている。これにより、施工面2の表面に存在する凹凸に対する追従性がよく、好適に不陸処理可能であると共に、運搬時にひび割れなどを起こし難いという作用効果を有している。
【0044】
不陸調整層3の形状としては、連続して隙間無く敷き詰めることが容易な幾何学的形状であれば良く、本例においては、図2に示すような約600mm四方の正方形状のものが使用されている。厚みとしては、使用される不織布の材質や、施工面2の表面状態によって適宜に選択され得るものであり特に限定されるものではない。なお、図1に示す断面模式図では、舗装面1の断面状態を説明するために各層の厚みを模式的に示しており、縮尺等は図面の状態に特定されるものではなく任意に選択される。
【0045】
また、不陸調整層3の表面には、後述する模様層4を貼着させる際の目印となる縦合わせライン6と、縦合わせライン6に直交するよう形成された横合わせライン7、及び、縦合わせライン6と横合わせライン7との直交状態を確認する斜め合わせライン8が形成されている。
【0046】
ここで、「縦合わせライン6と横合わせライン7との直交状態を確認する」ように斜め合わせライン8を形成する方法として、本例では、まず、約600mm四方の正方形状の不陸調整層3に対して、一辺の略中央付近(端面から約300mmの位置)に縦合わせライン6を形成する。そして、当該縦合わせライン6と直交するように、且つ、他辺の略中央付近(端面から約300mmの位置)に横合わせライン7を形成する。夫々のラインを上述のように形成することで、不陸調整層3のほぼ中央付近で縦合わせライン6と横合わせライン7とが交差する。そして、不陸調整層3の任意の頂点(例えば頂点9a)から、これに対向する頂点9bへと向けて斜め合わせライン8を描画することで、縦合わせライン6と横合わせライン7との交差点を通る斜め合わせライン8が形成できる。不陸調整層3は略正方形状だから、斜め合わせライン8は、縦合わせライン6及び横合わせライン7に対して略45度傾斜した状態で形成されている。
【0047】
なお、縦合わせライン6、横合わせライン7、及び斜め合わせライン8の形成方法としては、例えば墨汁、油性ペン、チョーク、ペンキ、その他公知の筆記用具で描画する方法や、彫刻、焼き入れ、適宜の目印部材を埋設する、等の方法が例示できる。要するに、模様層4を貼着させる位置の目印として視認容易なものであれば、如何なるものであっても良い。また、縦合わせライン6と横合わせライン7とは略等しい幅W1で形成されており、斜め合わせライン8の幅W2は、W1よりも太く形成されている。
【0048】
さらに、不陸調整層3には、互いに対向する頂点9a,9bとは別の頂点10に、斜め確認用マーカー11がさらに形成されている。斜め確認用マーカー11は、さらに詳細には一点鎖線円で示すように、不陸調整層3の表面に形成された斜め確認用表面マーカー11aと、頂点10が位置する端面に形成された斜め確認用端面マーカー11bとを有して構成されている。斜め確認用マーカー11、斜め確認用表面マーカー11a、及び斜め確認用端面マーカー11bの形成方法としては、縦合わせライン6等と同様の方法が採用可能であるため説明は省略する。
【0049】
模様層4は、図1及び図3に示すように、目地層12と表層材13からなる層とを有して構成されている。目地層12は、表層材13の下層に位置する層であり、目地部14の色合いを表現する層としての機能を有している。目地層12に用いられる材質としては樹脂モルタルが適用されている。樹脂モルタルとは、結合材に樹脂を用い、且つ粒径が5mm以下の骨材のみを用いたものであり、水を結合剤とする一般的なセメントコンクリートに比べて、機械的強度、耐水性、耐磨耗性、電気絶縁性、及び耐薬品性などに優れる。本実施形態の目地層12に用いられる樹脂モルタルの結合材としては、特にMMA樹脂が適用されている。骨材としては、粒径が5mm以下であれば特に限定されるものではないが、例えば、粉末状のセルベン、珪岩、炭酸カルシウム、チタン、寒水石、パーライト、バーミキュライト、スチレン樹脂発泡体、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウムが例示できる。さらに、目地層12には、目地部14の色を表現するための顔料が配合されている。
【0050】
表層材13は、模様層4を主に構成する層であり、目地層12と同様のMMA樹脂モルタルが適用されている。なお、MMA樹脂とは、メチルメタクリレートモノマーを主成分とするアクリル樹脂であり、速硬性・低温硬化性に優れ、硬化後の経時変化が少ない等の特長を有するものである。また、本実施形態の表層材13には、表層材13の表面に膜を形成することで大気中の酸素を遮断し、MMA樹脂の重合反応を阻害しないよう防護する機能を有するワックスが配合されている。ワックスとしては、特に限定されるものではないが、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸が例示できる。また、表層材13には、MMA樹脂の硬化反応を触発させるための硬化剤(ベンゾイルパーオキサイド等)や、硬化促進剤(アミン系硬化促進剤等)がさらに添加されている。
【0051】
また、表層材13は矩形状に区切られており、その下地に位置する目地層12が視認可能に露出することで、碁盤目状の目地部14を形成している。
【0052】
保護層5(図1参照)は、表層材13の表面及び目地部14を被覆する層であり、透過性を有する樹脂であれば如何なるものであっても良い。例えば、アクリル系樹脂エマルジョンを主成分とする公知のスキン系樹脂や、アクリル系樹脂(表層材13等に使用されている本実施形態のMMA樹脂であっても良い)などが適用される。
【0053】
ところで、本実施形態の舗装方法によれば、模様層4を作製するために、図4に示すような型枠15が用いられている。型枠15は、内部にMMA樹脂モルタルを充填させて模様層4を作製する際の型枠材として機能するものであり、材質としては、ステンレス等の適宜の金属、木材、セラミックスなどが例示できる。形状としては、底面が目地層12と略等しい形状の平板状を呈し、その周辺の三方向は底面から垂設された板状の支持部材17によって囲まれている。上面は開放されており、支持部材17には、後述する目地部材16を係止することが可能な目地固定部18が設けられている。本例の型枠15の支持部材17は、高さが約10mm、幅が約600mmであり、目地固定部18は、支持部材17の上端側から高さ約2mm、幅10mm(目地部材16の形状と略等しい形状)の切れ込みが設けられることで形成されている。
【0054】
また、本実施形態の舗装方法によれば、模様層4を作製するために、図5に示すような目地部材16が用いられている。目地部材16は、目地部14を形成するための部材であり、詳細は図略しているが、ポリウレタンからなる発泡樹脂体の裏面側に、ゴム系粘着剤による粘着層が備えられ、表面側には、水分や樹脂モルタルが浸透し難いようにポリエチレンテレフタレートからなる保護シートが備えられている。形状は、厚みが約2mm、幅が約10mmの帯状の物体であり、適宜の長さ(例えば数十メートル程度)のものが所定の長さに切断され、目地層12上に貼着されることで目地部材16として機能するものである。
【0055】
次に、本発明の舗装方法について説明する。不陸調整層作製工程では、図2に示すような不陸調整層3を作製する。まず、工場等の作製現場において、公知の不織布にMMA樹脂を含浸させ、硬化するまで待機する。そして、所定形状(本実施形態では約600mm角の略正方形)に切断する。
【0056】
そして、約600mmの正方形状に切断された不織布の表面に、縦合わせライン6及び横合わせライン7を形成する。縦合わせライン6及び横合わせライン7の形成方法としては、例えば墨汁、油性ペン、チョーク、ペンキ、その他公知の筆記用具で描画する方法や、彫刻、焼き入れ、適宜の目印部材を埋設する、等の方法が例示できるが、本例では、公知の油性インクを用いて描画する方法を採用している。縦合わせライン6は、正方形状の不織布のうち、任意の一辺の略中央付近(頂点から約300mmの距離)から、これに対応する他辺の略中央付近へと(つまり、不織布を略半分に分けるように)描画される。そして、横合わせライン7は、当該縦合わせライン6と略垂直に交わるように、且つ、不織布を略半分に分けるように描画されている。このように形成することにより、縦合わせライン6と横合わせライン7とは、正方形状の不織布の略中央付近で交差するように十字に形成される。縦合わせライン6及び横合わせライン7は、略同じ幅で形成されており、作業者が容易に視診することが可能であって且つ目地部14一本分の幅の略半分以下の幅W1で形成されている。
【0057】
ここで、「目地部14」が、本発明の「目地ライン」に相当する。
【0058】
そして、正方形状の不織布の任意の頂点9aから、これに対向する頂点9bへと向けて、斜め合わせライン8が形成される。斜め合わせライン8を形成する方法としては、前述した縦合わせライン6及び横合わせライン7と同様のものが採用されている。また、斜め合わせライン8の幅W2は、幅W1よりも太く且つ目地部14一本分の幅以下で形成されている。ここで、不織布は略正方形状であるから、頂点9aから頂点9bへと斜め合わせライン8を描画すると、縦合わせライン6及び横合わせライン7と、斜め合わせライン8とは互いに不織布の略中央付近で交差する。このように形成することで、縦合わせライン6と横合わせライン7とは不可避的に略垂直に交差する。また、斜め合わせライン8は、縦合わせライン6及び横合わせライン7に対して略45度に傾斜した状態で形成される。
【0059】
不陸調整層作製工程では、前述までの不織布の表面に、さらに斜め確認用マーカー11(以下、単に「マーカー11」と称す)を形成する。マーカー11は、図2に示すように、頂点9a,9bとは別の対向する頂点10に一対で形成されている。形成方法は縦合わせライン6等と同様であるため説明を省略する。マーカー11の形状としては特に限定されるものではなく、頂点10の位置が確認できるものであればどのようなものでも構わないが、本例では、マーカー11の形状が比較的シンプルで形成が簡単で、また、配列確認工程(後述する)の際に連続するマーカー11の整列状況が確認しやすい略三角形状を採用している。
【0060】
マーカー11は、より詳細には図2の一点鎖線円部に示すように、不織布の表面に形成された斜め確認用マーカー11a(以下、単に「マーカー11a」と称す)と、頂点10が位置する端面に形成された斜め確認用マーカー11b(以下、単に「マーカー11b」と称す)とを有して構成されている。なお、図2では図示された片側の端面のみにマーカーbが記載されているが、これに略垂直な方向の図略された側の端面にも同様のマーカー11bが形成されている。
【0061】
続いて、模様層作製工程では、図5(a)に示すように、型枠15に本例のMMA樹脂モルタルを充填させ、表面が滑らかで均一な厚みとなるようにコテなどで表面を均していく。本例の型枠15の支持部材17には、その上端部に、厚さ約2mmの切れ込み部として設けられた目地固定部18を有している。従って、目地固定部18の底辺付近を目印としてMMA樹脂モルタルを充填させていくことで、全体として約8mmの厚みを有する目地層12が形成される。なお、目地固定部18及び目地層12の厚みとしては、この値に限定されるものではなく、施工面2の状態や運搬事情によって適宜に変更可能である。例えば、目地層12や後述する表層材13の厚みを薄くすれば、一枚あたりの模様層4の重量が軽くなるため、一度に大量の模様層4を運搬できるため好適である。また、目地層12や後述する表層材13の厚みを厚くすれば、運搬途中にこれらの層がひび割れたり欠けたりする虞が軽減するという作用効果を奏する。
【0062】
次に、図5(b)に示すように、略硬化した状態(少なくとも表面が変形しない程度に硬化した状態)の目地層12の表面に、目地部材16を貼着させていく(目地部材貼着工程)。具体的には、棒状の目地部材16を目地固定部18に係止し、目地部材16の粘着層を目地層12の表面に押し付け、直線状に目地部材16を配置していく。
【0063】
なお、略正方形状の目地層12のうち、周辺の2辺に目地部材16を貼着させ、他の2辺は開放した(目地部材16を貼り付けない)状態で形成することで、目地部14を有する周辺20a(図3参照)と、目地部14を有さない周辺20b(図3参照)とが存在するよう構成している。このように構成すると、連続的に複数の模様層4を敷き詰めていく際に、目地部14を有する周辺20aと有さない他の模様層4の周辺20bとを隣接させて配置し、目地部14の継ぎ目を分かり難くすることができ、自然で連続的なものとして構成することができる。
【0064】
次に、図5(c)に示すように、目地部材16が貼着された状態で、目地層12の表面に、表層材13となるMMA樹脂モルタルを塗布していく。そして、目地部材16の厚みと略等しくなるように、表面を滑らかに均していく。このように形成することで、目地部材16の厚み(本例では約2mm)と略等しい表層材13が形成できる。この時、支持部材17の厚みは目地層12及び表層材13の厚みを重畳したものと略等しく形成されているので、支持部材17の上端部に沿ってコテなどを滑らせていくことにより、より簡易に平滑な表層材13が形成できる。
【0065】
そして、図5(d)に示すように、塗布したMMA樹脂モルタルが略硬化した状態で、目地部材16を目地層12上より剥がしていく。これにより、貼着させた目地部材16の形状と略等しい目地部14を有する模様層4が完成する(図5(e)参照)。
【0066】
続いて、搬入工程では、不陸調整層3及び模様層4を別体として施工現場へと搬入する。なお、模様層4は、型枠15から離型させて施工現場へと搬入しても良いし、型枠15から離型させない状態(図5(e))状態で施工現場へと搬入しても良い。型枠15から離型させて施工現場へと搬入すると、施工段階で離型させる手間が省けるので、現場での施工に要する時間を短くすることができる。一方、離型させずに施工現場へと搬入すると、運搬途中で模様層4が折れ曲がったり欠けたりして意匠性が低下するのを防止することができる。
【0067】
そして、施工現場において、施工面2上に、舗装面1上に現れる目地模様の基準となる基準線21を描画する「基準線墨出し工程」を行う。基準線墨出し工程では、図6に示すように、施工面2の表面上に基準線21を描画する。なお、施工面2としては、本例では、笠石22及び点字ブロック23が設置された長尺状の駅のプラットホームを例示している。また、基準線21を描画する方法としては特に限定するものではないが、本例では、笠石22や点字ブロック23に略平行(及び垂直)となるような(つまり、笠石22や点字ブロック23の延設方向に沿った)基準線21を描画する方法を例示している。より詳細には、点字ブロック23の任意の一端部に、墨汁を浸したタコ糸を固定し、該タコ糸を点字ブロック23の延設方向に沿って伸ばしていく。そして、所望の施工範囲分だけタコ糸を伸ばしていき、糸をピンと張った状態で他端側に糸を押し付けて爪弾き、糸を施工面2に押し付ける。すると、糸に染み込んだ墨汁が施工面2上に落ち、直線状の基準線21が描画される。
【0068】
次に、「不陸調整層貼着工程」では、同図6に示すように、基準線21に準じて、不陸調整層3を連続的に敷き詰めていく。まず、基準線21に沿って一枚の不陸調整層3を貼着させる。貼着させる方法としては、工場での作製段階において不陸調整層3の裏面側に適宜の粘着層を設けたり、施工現場で接着剤を塗布したり、若しくは施工面2上に樹脂モルタルなどを塗布して不陸調整層3を載置させ貼着させる等の方法が挙げられる。
【0069】
そして、基準線21に沿って貼着された不陸調整層3に準じて、他の不陸調整層3を連続的に敷き詰めていく。ここで、「準じて」とは、基準線21に沿って貼着された不陸調整層3に対して、隙間なく連続的に他の不陸調整層3を貼着させていく状態を示す。不陸調整層3は略正方形状に切りそろえられているから、このように基準線21に沿って貼着された不陸調整層3に準じて他の不陸調整層3を次々と貼着していくことで、一本の基準線21に対して略並行に多数の不陸調整層3を整列させることが、比較的簡易に実現できる。
【0070】
次に、「配列確認工程」に移行する。配列確認工程では、図7に示すように、不陸調整層3に形成された縦合わせライン6、横合わせライン7、斜め合わせライン8、及びマーカー11(以下、これらを総称して「ライン等」と称す)を用いて、不陸調整層3の整列状況を確認する。より詳細には、作業者が出来るだけ不陸調整層3の表面に近い位置(つまり、低い位置)まで目線を落として、施工面2の一端側から他端側までのライン等を目視し、連続する不陸調整層3同士のライン等が夫々一直線上に連続的に連なっているか否かを確認する。このように確認することで、比較的大面積の施工面2に貼着された多数の不陸調整層3同士が整然と碁盤目状に整列しているかどうかが簡易且つ確実に確認できる。
【0071】
ここで、仮に、施工面2が湾曲していたり、不陸調整層作製工程や不陸調整層貼着工程において不備が生じていた場合は、多数の不陸調整層3同士の縦合わせライン6同士、横合わせライン7同士、斜め合わせライン8同士、または(及び)マーカー11が不連続に歪んで配列されるので、すぐに前記湾曲の状況や不備の状態などが認知できる。この場合は、新たに修正用の縦合わせライン6や横合わせライン7等を描画しなおしたり(「修正墨出し工程」)、不陸調整層貼着工程をやり直すなどして、夫々のライン等が整列するよう修正を加えても良い。
【0072】
ところで、施工面2に段差があった場合、例えば隣接する不陸調整層3同士の貼着高さ位置に差があった場合は、以下の問題が考えられる。すなわち、低い位置に貼着された不陸調整層3側から高い位置に貼着された不陸調整層3のマーカー11を目視確認すると、低い位置からは高い位置に貼着された不陸調整層3表面のマーカー11a(図2参照。以下同じ)が確認できず、高い位置に貼着された方の不陸調整層3の端面側のみが見えてしまう場合が考え得る。この時、マーカー11aのみであったとすると、譬え不陸調整層3同士の縦横の整列状況が整っていたとしても、マーカー11aが途切れて見えてしまうことにより、整列状況が確認できない場合が発生し得る。これに対し、本発明では、不陸調整層3がさらにマーカー11b(図2参照。以下同じ)を有して構成されていることにより、端面側からも不陸調整層3の貼着位置を確認できる目印が形成される。これにより、施工面2に段差がある場合でも斜めの整列状況を確認することができるから、さらに簡易且つ確実に不陸調整層3の整列状況を確認することができる。また、斜め合わせライン8は、比較的太い幅W2を有して構成されているから、作業者が確認作業を行いやすく一層効果的である。
【0073】
次に、模様層貼着工程では、不陸調整層3に形成された縦合わせライン6及び横合わせライン7に沿って、模様層4を貼着させていく(図7参照)。不陸調整層3と模様層4との接着方法としては、不陸調整層3と施工面2との接着方法で述べた方法と同じ方法を適用することができる。つまり、模様層4の裏面側に公知の粘着層を設けても良く、施工現場で模様層4の裏面側に樹脂モルタル等を塗りつけても良く、不陸調整層3の表面に樹脂モルタル等を塗布しても良い。但し、縦合わせライン6及び横合わせライン7を完全に視認不可能に遮蔽しない色や塗布方法であることが好ましい。この時、縦合わせライン6及び横合わせライン7は、不陸調整層3の略中央付近に描画されているので、図8に示すように、不陸調整層3の継ぎ目24と模様層4の継ぎ目25とが連続して重なり合わないよう配置される。また、模様層4の周辺の一辺側に目地部14が設けられ、これに対向する他辺側には目地部14が配置されないよう構成されていることにより、隣接する模様層4同士の継ぎ目24を目地部14の境界部に配置することができる。従って、継ぎ目24を目立ち難くすることができ効果的である。なお、「継ぎ目24」が本発明の「不陸調整層同士の継ぎ目」に、「継ぎ目25」が「模様層同士の継ぎ目」に、夫々相当する。
【0074】
本発明によれば、縦合わせライン6及び横合わせライン7が整然と整列しているから、それに沿って貼着することで、極めて簡単に模様層4を整列させることができる。そして、これに伴って、模様層4に形成された目地部14も碁盤目状に美しく整列させることが可能となる。
【0075】
続いて、保護層塗布工程に移行する。保護層塗布工程では、不陸調整層3上に貼着された模様層4の表面に、透明な樹脂を塗布していき、硬化させる。これにより、模様層4の表面に保護層5が形成され、舗装面1が完成する(図1参照)。このように、模様層4の表面に保護層5を形成することで、模様層4に奥行きのある透明感を付加させ意匠性を向上させることができると共に、傷や汚れ、紫外線による変色から模様層4を保護することができ、経済的な舗装面1を提供できる。
【0076】
以上のように、本発明の舗装方法によれば、不陸調整層3に縦合わせライン6、横合わせライン7、斜め合わせライン8、及びマーカー11が形成されているから、複数の不陸調整層3を簡単且つ確実に整列させることができ、施工に要する時間を短縮できる、また、縦合わせライン6、横合わせライン7、斜め合わせライン8、及びマーカー11を用いて整列状況を確認できることから、それらに準じて貼着される模様層4を正確に整列させることができ、模様層4に表現された目地部14を整列させて美しい舗装面1を提供できる。
【0077】
特に、本例によれば、縦合わせライン6及び横合わせライン7に加えて斜め合わせライン8が設けられているから、縦及び横方向のみならず、斜め方向からも不陸調整層3の整列状況を確認できる。さらに、斜め確認用マーカー11が設けられているから、さらに整列状況を確実に確認することができ、より美しい舗装層1の提供に資する。
【0078】
また、本例によれば、マーカー11aだけではなくマーカー11bが備えられているから、施工面2に段差や湾曲がある場合でも、より簡単に不陸調整層3の整列状況を確認できる。これにより、模様層4を簡単に整列させることができるから、多数の模様層4に描画された目地部14を整然且つ確実に整列させることができ、一層効果的である。
【0079】
また、縦合わせライン6及び横合わせライン7は、視認可能でありながら比較的細い幅、すなわち目地部14一本分の幅W1の半分以下の幅に最適化されている。これにより、模様層4の端面等をどこに合わせ込むかでばらつきが生じ難く、より正確に多数の模様層を4整列させることができる。一方、斜め合わせライン8は、縦合わせライン6及び横合わせライン7の幅W1より広い幅W2で最適化されているから、縦合わせライン6や横合わせライン7に対して差別化され、紛らわしくなく、配列状況の確認がよりスムーズに行われる。これにより、一層簡単に意匠性の高い舗装面1を提供できる。
【0080】
また、本例によれば、プライマーや下塗り組成物を塗布する工程が必要無く、不陸調整層3を貼着させるだけで、滑らかな表面を形成できる。これにより、施工現場で液状の樹脂モルタル等を塗布して不陸調整層を形成する場合に比べて、硬化に要する時間を削減することができる。また、気温や湿度が制御しやすい工場等において不陸調整層3を作製する方法であるため、比較的熟練した技術を要することなく均一な品質の不陸調整層3を形成することができる。
【0081】
また、目地部14を通して目地層12が視認可能に露出することで模様層4が形成されていることにより、目地部14から不陸調整層3が露出しない。これにより、仮に施工面2や不陸調整層3にひび割れや欠陥などが生じていても、舗装面1上には現れないため、意匠性の高い舗装面1を提供できる。
【0082】
さらに、本例によれば、不陸調整層3に軟性の樹脂モルタルが適用されていることにより、不陸調整層3を折り曲げて搬入することが容易となっている。これにより、必要に応じて折畳んだり、ロール上に折り曲げて搬入することも可能となり、運搬が楽になるため効果的である。また、不陸調整層3が600mm四方の単位部材として構成されている場合は、連続的に敷き詰めるだけで施工面2の形状や大きさに対応することができ、より複雑な地形の施工面2や広い施工面2の舗装に好適に適用される。
【0083】
また、不陸調整層3の表面に、模様層4の貼着位置の目印となるガイドライン8が描画されているから、不陸調整層3を貼着させるだけで模様層4の貼着位置が分かる。そして、ガイドライン8に沿って模様層4を貼着させていくだけで、模様層4に表現された目地部14が整然とした状態で配列されるので、極めて簡易に美しい碁盤目状の目地模様を有する舗装面1を提供できる。
【0084】
さらに、本例の舗装方法によれば、模様層4を作製する型枠15に目地固定部18が設けられているから、目地部材16を貼着する位置が判りやすく、且つ貼着後にずれ難い構成とすることができる。これにより、模様層作製工程にかかる時間を削減できると共に、模様層4の完成度を向上させることができる。また、比較的熟練の技術を要することなく意匠性の高い模様層4を作製できることにより、経済的な舗装方法を提供できる。
【0085】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0086】
上記実施形態では、斜め合わせライン8及び斜め確認用マーカー11の双方を具備する不陸調整層3を例示したが、この構成に限定されるものではない。すなわち、斜め合わせライン8か斜め確認用マーカー11の何れか一方のみを具備する不陸調整層3としても良い。本例のように、斜め合わせライン8及び斜め確認用マーカー11の双方を具備すると、縦方向や横方向のみならず斜め方向での整列状況をより強固に確認できるため、より確実に美しい碁盤目状の目地模様を有する舗装面1を提供できる。一方、斜め合わせライン8か斜め確認用マーカー11の何れか一方のみを具備する不陸調整層3とすると、不陸調整層3の作製にかかる手間が削減されるため、より低コストな舗装方法の提供に資する。
【0087】
また、上記実施形態では、大判の不織布にMMA樹脂を含浸させ、硬化した後に所定の単位形状に切断する場合を例示したが、この方法に限定されるものではない。例えば、所定の単位形状に切断した不織布に樹脂を含浸させ、不陸調整層3を得る方法であってもよい。この方法によれば、樹脂が染み込んで硬化した不織布を切断する際に、切断の衝撃で不陸調整層3にひび割れ等が生じる虞がない。また、柔らかい布(不織布)の段階で切断できることにより、切断に要する手間を削減することができる。但し、本例のように、MMA樹脂を染み込ませた後に切断する方法を採用すると、樹脂が硬化する段階で不織布が縮んでしまったり、反って形状が変形してしまう虞が少ないため、より好適である。
【0088】
さらに、上記実施形態では、型枠15に目地層12となるMMA樹脂モルタルを充填させる方法を例示したが、この工程において、型枠15に公知の離型紙を敷き詰めてから樹脂モルタルを充填させる方法としても良い。また、離型紙に替えて、液状若しくは固形の離型剤を型枠15に塗布する方法であっても良い。このような方法を採用することで、模様層4を型枠15から剥離させる際に、模様層4の型枠15に対する癒着やそれに伴う変形等を防止することができ、スムーズに剥離できるため好適である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の舗装方法によって作製された舗装面の断面を模式的に表した断面模式図である。
【図2】不陸調整層の斜視図である。
【図3】模様層の斜視図である。
【図4】型枠の斜視図である。
【図5】模様層の作製工程を説明する説明図である。
【図6】不陸調整層貼着工程を示す説明図である。
【図7】模様層貼着工程を示す説明図である。
【図8】不陸調整層と模様層の接合部を示す断面模式図である。
【図9】従来の舗装方法の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0090】
2 施工面
3 不陸調整層
4 模様層
6 縦合わせライン
7 横合わせライン
8 斜め合わせライン
W1 幅(目地ライン一本分の幅の略半分以下の幅)
W2 幅(目地ライン一本分の幅以下)
11 斜め確認用マーカー
12 目地層
13 表層材
14 目地部(目地ライン)
21 基準線
24 継ぎ目(不陸調整層同士の継ぎ目)
25 継ぎ目(模様層同士の継ぎ目)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂を含浸させた不織布の表面に、直線状の縦合わせライン、該縦合わせラインに直交する横合わせライン、及び、前記縦合わせラインと前記横合わせラインとの直交状態を確認するための斜め合わせライン、が形成された略正方形の不陸調整層を作製する不陸調整層作製工程と、
前記樹脂及び骨材からなる樹脂モルタルより構成される部材であって、前記不陸調整層の表面に貼着される目地層、及び、該目地層の表面に形成され該目地層の一部が視認可能に露出されることで形成される碁盤目状の目地模様を有して構成される表層材、を備える模様層を作製する模様層作製工程と、
前記不陸調整層及び前記模様層を施工現場へと搬入する搬入工程と、
施工面の表面に、前記碁盤目状の目地模様の基準となる基準線を描画する基準線墨出し工程と、
該搬入工程により搬入された前記不陸調整層を、前記基準線に準じて、前記施工面の表面に連続的に敷き詰めて貼着する不陸調整層貼着工程と、
前記縦合わせライン、前記横合わせライン、及び、前記斜め合わせラインが夫々直線状に整列していることを確認する配列確認工程と、
該不陸調整層貼着工程において貼着された前記不陸調整層の表面に、前記搬入工程により搬入された前記模様層を、前記縦合わせライン及び前記横合わせラインに沿って連続的に敷き詰める工程であって、前記連続的に敷き詰められた隣接する不陸調整層同士の継ぎ目と、前記模様層同士の継ぎ目とが互いに重なり合わないように貼着させる模様層貼着工程と
を具備することを特徴とする舗装方法。
【請求項2】
前記斜め合わせラインは、前記縦合わせライン及び前記横合わせラインよりも太い幅で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の舗装方法。
【請求項3】
略正方形の前記不陸調整層には、少なくとも対角線上に位置する二つの頂点に、前記縦合わせラインと前記横合わせラインとの直交状態を確認するための斜め確認用マーカーがさらに形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の舗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−309038(P2007−309038A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141287(P2006−141287)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(391034488)イビケン株式会社 (29)
【Fターム(参考)】