説明

舗装用樹脂組成物、舗装用アスファルト組成物及びその製造方法

【課題】 本発明に係る舗装用樹脂組成物は、短時間で溶融し、かつ骨材への濡れ性及び接着性に優れ、さらに、夏期の路面の変形や冬期のひび割れ等の問題のない耐久性に優れた路面を与えることができる。
【解決手段】 酢酸ビニルの含有量が25〜45重量%であり、溶融温度が40〜100℃であってメルトフローレートが400g/10min以上のエチレン酢酸ビニル共重合体と、芳香族環由来の炭素の含有量(CA)が20〜40%の石油系プロセスオイルと、テレブロックポリマーとを少なくとも含むことを特徴とする舗装用樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性に優れ、特に低温での舗装強度に優れ、且つ、夏場の変形抵抗性にも優れた舗装用樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、歩道や広場、橋面などの舗装面を美観上から様々な色に着色する場合や、横断歩道やトンネル等のように交通安全対策上から着色する場合、あるいは、道路の分岐点やバスストップ等のように道路の機能を高める目的から着色する場合等、様々なケースでいわゆる着色舗装が成されている。
【0003】
一般的に、着色舗装には、有色骨材を用いるものと、結合材に顔料を使用するものとがある。
【0004】
前者においては、シリカサンドや石灰岩のような天然物や明色骨材と言われる人工のものがある。これらはいずれも白色であり、高価なものが多い。
【0005】
一方、後者においては、加熱アスファルト混合物に顔料を混合する方法があるが、そもそも加熱アスファルト自体が暗褐色を呈しているので、顔料を添加してもその顔料が持つ本来の色彩あるいは明るさを呈することは難しい。
【0006】
このような問題を解決する目的で、従来のアスファルトバインダーに石油系樹脂やエポキシ樹脂のような合成樹脂を添加してバインダー組成物の色を薄くすることで顔料等による着色を可能とすることができるが、十分とは言えない。
【0007】
また、石油系樹脂やスチレン系合成ポリマー、あるいはエチレン系コポリマーのような熱可塑性エラストマーと石油系重質油とを混合したいわゆる合成バインダーは、顔料等との混合によりきれいなカラー舗装用の混合物を得る事が可能となる。
【0008】
例えば、特許文献1(特開2000−230122号公報)には、天然アスファルトや石油アスファルトにSBSのような熱可塑性エラストマーや、相溶化剤として石油系オイルと相分離抑制剤として油性界面活性剤を混合した改質アスファルトに関して報告されている。ただ、耐久性、特に低温での強度向上は不十分であり、さらに、界面活性剤の使用に基づき発泡の問題や、舗装面における経時的なマイグレーションが生じたりして、必ずしも耐久性に優れた舗装を提供できるものではない。さらに、バインダー自体の透明性が不十分であり、顔料と混合した場合にクリヤーな発色は得られない。
【0009】
また、特許文献2(特開平4−359063号公報)には、芳香族系プロセスオイルにジシクロペンタジエン系石油樹脂、およびSBSやSISのようなテレブロックポリマーおよび酢酸ビニルの含有量が4〜20%のエチレン酢酸ビニル共重合体を混合した、着色舗装用結合材組成物に関して報告されている。ただし、このバインダーにおいても、アスファルト混合物の変形抵抗性は向上するが、耐久性、特に低温での強度向上は不十分である。
【0010】
また、特許文献3(特開平5−302072号公報)には、芳香族系重質鉱油と石油樹脂とSBS、SISのような熱可塑性エラストマーと、メルトフローレートが15〜400g/10minのエチレン酢酸ビニル共重合体と、ワックス性物質からなるバインダー組成物に関して報告がなされている。また、60℃粘度が高く、かつ高温粘度が高く、変形抵抗性に優れたアスファルト混合物を提供でき、また圧縮強度も向上すると報告されているが、逆に低温での強度に関しては十分なものとは言えない。
【0011】
【特許文献1】特開2000−230122号公報
【特許文献2】特開平4−359063号公報
【特許文献3】特開平5−302072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
長期貯蔵において相分離を起こさず、変形抵抗性にも優れ、さらに低温での舗装強度を向上させることができる舗装用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0014】
即ち、本発明は、酢酸ビニルの含有量が25〜45重量%であって溶融温度が40〜100℃であってメルトフローレートが400g/10min以上であるエチレン酢酸ビニル共重合体と、芳香族環由来の炭素の含有量(CA)が20〜40重量%である石油系プロセスオイルと、テレブロックポリマーとを少なくとも含むことを特徴とする舗装用樹脂組成物である(本発明1)。
【0015】
また、本発明は、エチレン酢酸ビニル共重合体の含有量が2〜30重量%、石油系プロセスオイルの含有量が20〜80重量%、テレブロックポリマーの含有量が2〜20重量%である本発明1記載の舗装用樹脂組成物である(本発明2)。
【0016】
また、本発明は、テレブロックポリマーが、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)及び/又はスチレン−イソブチレン−スチレン(SIS)である本発明1の舗装用樹脂組成物である(本発明3)。
【0017】
また、本発明は、軟化点が80〜110℃であって酸価が0.5mgKOH/g以下である芳香族系石油樹脂を20重量%未満添加した本発明1の舗装用樹脂組成物である(本発明4)。
【0018】
また、本発明は、酸価が1.0〜70mgKOH/gであるポリオレフィン系ワックスを0〜10重量%添加した本発明1の舗装用樹脂組成物である(本発明5)。
【0019】
また、本発明は、ポリオレフィン系ワックスが、酸化ポリエチレンであることを特徴とする本発明4の舗装用樹脂組成物である(本発明6)。
【0020】
また、本発明は、形状がペレット状である本発明1〜6のいずれかに記載の舗装用樹脂組成物である(本発明7)。
【0021】
また、本発明は、本発明1乃至7のいずれかに記載の舗装用樹脂組成物3〜10重量%と骨材97〜90重量%とからなることを特徴とする舗装用アスファルト組成物である(本発明8)。
【0022】
また、本発明は、舗装用樹脂組成物と骨材とを150〜200℃で混合してなることを特徴とする本発明8記載の舗装用アスファルト組成物である(本発明9)。
【0023】
また、本発明は、本発明7のペレット状の舗装用樹脂組成物と骨材とを計量機を通さずに直接ミキサーに投入し、150〜200℃で混合することを特徴とする舗装用アスファルト組成物の製造方法(本発明10)。
【0024】
また、本発明は、骨材を予め160〜220℃に加熱することを特徴とする本発明10の舗装用アスファルト組成物の製造方法である(本発明11)。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る舗装用樹脂組成物は、短時間で溶融し、かつ骨材への濡れ性及び接着性に優れ、夏期の路面の変形や冬期のひび割れが抑制され、殊に、特に低温での舗装強度に優れるという耐久性に優れた路面を与えることができる。
【0026】
さらに、ペレット状の樹脂組成物は、保存中あるいは運搬中にお互いに付着したりミキサーに付着したりせず、短時間で溶融するようにチップ状の形状を持っており、また、顔料と当該樹脂組成物の混合物においては、顔料を投入時の粉塵等の問題のない作業性の良い舗装用材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の構成をより詳しく説明すれば、次の通りである。
【0028】
本発明に係る舗装用樹脂組成物は、少なくとも、エチレン酢酸ビニル共重合体、石油系プロセスオイル及びテレブロックポリマーからなる。
【0029】
本発明におけるエチレン酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルの含有量が25重量%以上45重量%以下である。酢酸ビニルの含有量が25重量%未満の場合には、得られた樹脂組成物の柔軟性が不十分となり、舗装後の路面のひび割れの原因となる。特に、冬場において顕著となる。一方、酢酸ビニルの含有量が45重量%を越える場合には、舗装用樹脂組成物のバインダーとしての軟化点が低下し、変形抵抗性が低下し、夏場の轍の原因となる。好ましくは酢酸ビニルの含有量が27重量%〜45重量%であり、より好ましくは30重量%〜42重量%である
【0030】
本発明におけるエチレン酢酸ビニル共重合体の溶融温度は40℃以上100℃以下である。エチレン酢酸ビニル共重合体の溶融温度が40℃未満の場合には、舗装用樹脂組成物のバインダーとしての軟化点が低下し、変形抵抗性が低下し、夏場の轍の原因となる。一方、溶融温度が100℃を越える場合には、溶融させて骨材と混合する温度及び時間が長く必要であり、作業性に問題を生じる。エチレン酢酸ビニル共重合体の溶融温度は好ましくは50℃以上90℃以下である。
【0031】
本発明におけるエチレン酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N、JIS K6924−1に基づく表記)は400g/10min以上である。エチレン酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが400g/10min未満の場合には、溶融させて骨材と混合する温度及び時間が長く必要であり、作業性に問題を生じる。さらに、テレブロックボリマー、石油系プロセスオイルとの相溶性に問題を生じ、長期貯蔵時の相分離の現象を起こす原因となる。一方、エチレン酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが3000g/10minを越える場合には、舗装後の路面のひび割れの原因となることがある。エチレン酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートは好ましくは420〜2000g/10minである。
【0032】
本発明におけるエチレン酢酸ビニル共重合体の舗装用樹脂組成物(全バインダー組成)中における比率は2重量%〜30重量%が好ましい。エチレン酢酸ビニル共重合体の比率が2重量%未満の場合には、望ましい強度が得られない。一方、エチレン酢酸ビニル共重合体の比率が30重量%を越える場合には、変形抵抗性が低下する。エチレン−酢酸ビニル共重合体の比率は、より好ましくは5〜30重量%であり、より好ましくは10〜28重量%である。
【0033】
石油系プロセスオイルとしては、引火点が260℃以上のものが好ましい。石油系プロセスオイルとしては潤滑油、重質鉱油等を用いることができる。
【0034】
本発明においては、芳香族環由来の炭素の含有量(全炭素中の芳香族環由来の炭素含有量:CA)が20重量%以上40%重量以下の石油系プロセスオイルを用いる。芳香族環由来の炭素の含有量が20重量%未満では、テレブロックコポリマーとの相溶性が不十分であり、一方、芳香族環由来の炭素の含有量が40重量%を越えるとエチレン−酢酸ビニル共重合体との相溶性が不十分となる。石油系プロセスオイルにおける芳香族環由来の炭素の含有量(CA)は、23〜40重量%が好ましく、より好ましくは25〜38重量%が好ましい。
【0035】
石油系プロセスオイルの舗装用樹脂組成物(全バインダー組成)中における比率は、20重量%〜80重量%が好ましい。石油系プロセスオイルの比率が20重量%未満では、舗装用樹脂組成物のバインダーとしての粘度が高くなりすぎて、作業性に問題を生じる。一方、80重量%を越える場合には、強度面で問題を生じる。石油系プロセスオイルの比率はより好ましくは30〜70重量%である。
【0036】
本発明におけるテレブロックポリマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソブチレン−スチレン(SIS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)のようなブロックコポリマーが好ましい。スチレンの比率が15〜30重量%で、平均分子量は10,000〜300,000が好ましい。
【0037】
テレブロックポリマーの舗装用樹脂組成物(全バインダー組成)中における比率は、2.0重量%〜20重量%が好ましい。2重量%未満では、変形抵抗性が低下し、一方、20重量%を越える場合には、舗装用樹脂組成物のバインダーとしての粘度が高くなりすぎて、作業性に問題を生じる。さらに、軟化点が高くなりすぎることと、低温での強度が低下する。テレブロックポリマーの舗装用樹脂組成物(全バインダー組成)中における比率はより好ましくは2.0〜18重量%であり、更により好ましくは2.0〜15重量%である。
【0038】
本発明における芳香族系石油樹脂としては、軟化点が80℃〜110℃が好ましい。80℃未満の場合には、軟化点が低くなり変形抵抗性が低下する。一方、110℃を越える場合には、溶融させて骨材と混合する温度及び時間が長く必要であり、作業性に問題を生じる。芳香族系石油樹脂の軟化点は、更に好ましくは、80〜100℃である。
【0039】
本発明における芳香族系石油樹脂としては、160℃での溶融粘度が100〜1000cpsの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、100〜800cpsである。100cps未満の場合には、舗装した路面の耐久性に問題を生じる。一方、1000cpsを越える場合には、骨材への濡れ性及び接着性が悪く、舗装した路面の耐久性に問題を生じる。
【0040】
本発明における芳香族系石油樹脂としては、C9留分を原料とした芳香族系石油樹脂で、軟化点が80℃〜110℃、酸価が0.5mgKOH/g以下のものが好ましい。また、フェノールやカテコール等で変性されたもの等を用いることができる。
【0041】
本発明における芳香族系石油樹脂の舗装用樹脂組成物(全バインダー組成)中における比率は20重量%未満が好ましい。20重量%以上の場合には、低温での強度が低下する。
【0042】
ポリオレフィン系ワックスとしては、酸価が1.0〜70mgKOH/gである酸化ポリエチレン系ワックスが好ましい。
【0043】
ポリオレフィン系ワックスの舗装用樹脂組成物(全バインダー組成)中における比率は、0重量%〜10重量%が好ましい。10重量%を越える場合には、低温での強度が低下する。
【0044】
本発明におけるポリオレフィン系ワックスとしては、酸化ポリエチレン、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、変性ポリオレフィンワックス等を用いることができ、これらは単独で、または必要に応じて、2種以上組み合わせて用いられるが、舗装後の路面のひび割れ等が起こり難く耐久性の高い点で、特に酸化ポリエチレンが好ましい。
【0045】
本発明において、必要に応じて顔料を添加してもよい。顔料は、無機顔料または有機顔料のいずれでも限定されるものではない。特に、耐熱性や耐候性の面から、無機顔料が好ましい。
【0046】
無機顔料としては、黄色含水酸化鉄(ゲーサイト)、赤色酸化鉄(ベンガラ)、緑色酸化クロム、白色酸化チタン等が使用できる。また、耐熱性を向上した顔料を用いることもできる。更に、炭酸カルシウム、タルク、クレイ等の体質顔料を使用することもできる。これらを2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0047】
また、フェライト等の磁性粒子を用いることにより、磁気誘導等の磁性に基づく機能を付与することができる。
【0048】
顔料の含有量は、通常、樹脂組成物100重量部に対し5〜50重量部が好ましい。5重量部未満では顔料を添加する効果が十分でなく、一方、50重量部を越えると骨材への濡れ性が不十分となり、骨材との接着性に問題を生じることがある。
【0049】
また、ペレット状の舗装用樹脂組成物同士の付着を一層防止する目的で、上記の無機顔料や炭酸カルシウムやクレイ、タルク、ケイ砂、ベントナイト等の安価な鉱物、あるいは、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム等の滑材を添加することもできる。これらの付着防止用の粉末は、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。より効果的には、得られたペレット状の舗装用樹脂組成物の表面に付着させることであり、例えば、押し出し機からでてきたストランドに振り掛けた後、必要な大きさの小塊状にしたり、あるいは小塊状にした後に振り掛けたりするような方法が有効である。
【0050】
これら付着防止用の粉末の添加量は、通常、舗装用樹脂組成物100重量部に対し0.1〜5重量部である。
【0051】
顔料の場合には、特に問題はないが、滑材を使用する場合にはできるだけ使用量は少なくした方が好ましい。従って、5重量部以下が好ましい。一方、0.1重量部未満では十分な添加効果が得られない。
【0052】
次に、本発明に係る舗装用樹脂組成物の製造方法について述べる。
【0053】
本発明における舗装用樹脂組成物は、エチレン酢酸ビニル共重合体、テレブロックコポリマー及び石油系プロセスオイル、更に、必要により、芳香族系石油樹脂及びその他の添加物をそれぞれ所望の比率で混合して、均一な組成のバインダーを得られるものであり、従来、公知の方法を用いればよい。
【0054】
あるいは、同じく各原料を混合したものを押し出し成形機にて、100〜200℃に加熱して混練する。工業的には、一軸や二軸の押出し機で混練し、冷却した後、ペレタイザーにより望ましい大きさに粉砕して、ペレット状のものを調製することができる。
【0055】
ペレットの大きさは、2mm〜30mm程度の大きさである。2mm未満では樹脂組成物同士の付着が起こりやすくなり、一方、30mmを越えては骨材と混合して合材を作製する際に、やや溶解作業時間が長くかかるという問題が生じる。
【0056】
本発明に係る舗装用アスファルト組成物は、上記舗装用樹脂組成物3〜10重量%と骨材97〜90重量%とからなる。舗装用樹脂組成物の量が3重量%未満では舗装用アスファルト組成物の強度が弱く、ひび割れ等を生じやすく、一方、10重量%を越えると夏場の舗装面のわだち掘れなどの問題が生じやすくなる。
【0057】
舗装用アスファルト組成物の好ましい調製方法は、包装形態の舗装用樹脂組成物を計量機を通さずに直接ミキサーに投入して150〜200℃、より好ましくは150〜180℃で骨材と混合する方法である。150℃未満では得られたアスファルト組成物を用いて施工する際の作業性が低下するという問題が生じる場合があり、一方、200℃を越えると樹脂の一部劣化や顔料の変色等の問題が生じる場合がある。
混合時間は30〜60秒程度である。30秒未満では混合が不十分となる場合があり、一方、60秒を越えても効果に変わりがなく、却って作業性が低下する。この場合、骨材は予め160〜220℃に加熱してミキサーに投入することにより、舗装用樹脂組成物が短時間で溶融し、骨材を十分に濡らすことができる。160℃未満又は220℃を越えると、上記好ましい混合温度に調節することが困難となる。
【0058】
また、舗装用樹脂組成物が顔料を含有する場合には、顔料だけをミキサーに投入する必要がなく、従って、顔料の粉塵に起因する健康上及び環境への悪影響がないので、顔料を含有する舗装用樹脂組成物を用いるのが好ましい。
【0059】
本発明においては、特定のエチレン酢酸ビニル共重合体と石油系プロセスオイルとテレブロックコポリマーとの組成とすることによって、短時間で溶融し、かつ骨材への濡れ性及び接着性に優れ、さらに、夏期の路面の変形や冬期のひび割れ等の問題のない耐久性に優れた路面を与えることができる。
【0060】
また、ペレット状の舗装用樹脂組成物では、保存中あるいは運搬中にお互いに付着したりミキサーに付着したりせず、短時間で溶融させることができる。
【0061】
さらに、本発明のペレット状の小塊状の舗装用樹脂組成物は所定容量のポリ袋などに包装できるので、包装形態から直接ミキサーに投入することにより同時に計量されるので、計量機を通す必要がなく、従って、計量機や配管等の洗浄が不要で作業性が高められる。
更に、顔料を含有する該樹脂組成物においては、別途顔料をミキサーに投入する必要がないので、粉塵に起因する健康上や環境上の問題がなく、作業性の良好な舗装用樹脂組成物を提供することができる。
【0062】
<作用>
まず、本発明において重要な点は、特定のエチレン酢酸ビニル共重合体と石油系プロセスオイルとテレブロックコポリマーとからなる組成物であり、短時間で溶融し、かつ骨材への濡れ性及び接着性に優れ、さらに、夏期の路面の変形や冬期のひび割れ等の問題のない耐久性に優れた路面を与えることができる点である。また、長期貯蔵においても、相分離が起こらず組成の均一性が維持できる点である。
【0063】
さらに、必要に応じて、特定の石油樹脂やポリオレフィン系ワックスを添加することで、強度等の物性向上や、ペレット化を容易にさせうる効果が得られる点である。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて、更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
【0065】
樹脂組成物の評価は、JIS K2207「石油アスファルト」に記載されている方法に依った。
すなわち、軟化点、針入度、伸度および溶融性の各項目について、測定した。
【0066】
低温性は、各樹脂組成物5gをアルミホイル上に載せた状態で、130℃のホットプレート上で加熱溶融したものを、4℃の低温庫に一晩放置した後、手で割れるか否かを試験した。
割れない ; ○
割れる ; ×
【0067】
また、骨材との混合物に関しては、マーシャル安定度試験、水浸マーシャル安定度試験について評価を行った。
マーシャル安定度試験は「舗装試験法便覧」に記載されている方法に依った。
【0068】
試験供試体の調製条件は次の通りで行った。
骨材として6号砕石48%、荒砂23%、細砂23%および上記で得られた樹脂組成物6%からなる混合物を150〜160℃で混合し、130〜140℃で締め固めを行った。締め固め回数は両面それぞれ50回行った。
【0069】
上記の調製条件によって得られた供試体をそのままマーシャル安定度試験を行うのに加えて、60℃の恒温水槽中で2日間浸漬した後、マーシャル安定度試験を行った。
さらに、次式により残留安定度を算出した。
残留安定度(%)=[60℃・48時間水浸後の安定度/安定度]×100
【0070】
次に、6号砕石80.3%、粗骨材11.7%、石粉3.2%及び上記で得られた樹脂組成物4.8%からなる混合物を150〜160℃で混合し、130〜140℃で締め固めを行なった。締め固め回数は両面それぞれ50回行なった。
【0071】
上記によって得られた供試体を−20℃に放置し、ロサンゼルス試験機(粗骨材のすり減り試験法に規定する機械)を用いて、剛球を使用しないでドラムを300回転させ、試験後の損失量を測定した。(カンタブロ試験)
【0072】
実施例1
エチレン−酢酸ビニル共重合体としてウルトラセン726(商品名;(株)東ソー製;酢酸ビニル含有量31重量%、メルトフローレイト700g/10min)210g、テレブロックポリマーとしてアサプレンT−411(商品名;旭化成工業(株)製:SBS,スチレン比率;30%,メルトフローレート;<1g/10min)100gおよび石油系プロセスオイルとしてリフレッシュスーパーE(商品名;昭和シェル石油(株)製)690gを攪拌機付きの反応容器を用いて混合し、樹脂組成物(A)を得た。
得られた樹脂組成物(A)は、軟化点58.5℃、針入度48、伸度68cmであった。
【0073】
実施例2、4、比較例1〜4
エチレン−酢酸ビニル共重合体の種類及び量、テレブロックポリマーの種類及び量、石油系プロセスオイルの種類及び量、芳香族系石油樹脂の種類及び量、さらには、ポリオレフィン系ワックスの種類及び量を種々変化させた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物の調製を行った。
【0074】
実施例3
実施例1と同様にして種々の樹脂を混合した後、180℃で樹脂を溶融させた後、5℃程度まで冷却し、5mm×20mmのチップ状に切断した。
【0075】
実勢例5
実施例3と同様にして種々の樹脂を混合した後、180℃で樹脂を溶融させた後、5℃程度まで冷却し、5mm×10mmのチップ状に切断した
【0076】
各種原料の諸特性を表1に、このときの製造条件を表2に及び得られた樹脂組成物の諸特性を表3に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
表3に示すとおり、本発明に係る舗装用樹脂組成物は、溶融性や低温での耐折性に優れることが明らかとなった。
【0081】
<水浸マーシャル安定度試験>
骨材として6号砕石48%、荒砂23%、細砂23%及び上記で得られた各樹脂組成物6%からなる混合物を150〜160℃で混合し、130〜140℃で締め固めを行った。締め固め回数は両面それぞれ50回行った。
得られた混合物の特性を表4に示す。
【0082】
<低温カンタブロ試験>
6号砕石80.3%、粗骨材11.7%、石粉3.2%及び上記で得られた各樹脂組成物4.8%からなる混合物を150〜160℃で混合し、130〜140℃で締め固めを行なった。締め固め回数は両面それぞれ50回行なった。
【0083】
上記によって得られた供試体を−20℃に放置し、ロサンゼルス試験機(粗骨材のすり減り試験法に規定する機械)を用いて、剛球を使用しないでドラムを300回転させ、試験後の損失量を測定した(カンタブロ試験)。
得られた混合物の特性を表5に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
表5の結果から、本発明に係る舗装用樹脂組成物は、低温カンタブロ試験において、損失量が30%以下と小さく、比較例に比べて優れた特性を有することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る舗装用樹脂組成物は、短時間で溶融し、かつ骨材への濡れ性及び接着性に優れ、さらに、夏期の路面の変形や冬期のひび割れ等の問題のない耐久性に優れた路面を与えることができる。
【0088】
さらに、樹脂組成物として、保存中あるいは運搬中にお互いに付着したりミキサーに付着したりせず、短時間で溶融するようにチップ状の形状を持っており、また、顔料と当該樹脂組成物の混合物においては、顔料を投入時の粉塵等の問題のない作業性の良いペレット状の舗装用材料も提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ビニルの含有量が25〜45重量%であって溶融温度が40〜100℃であってメルトフローレートが400g/10min以上であるエチレン酢酸ビニル共重合体と、芳香族環由来の炭素の含有量(CA)が20〜40%である石油系プロセスオイルと、テレブロックポリマーとを少なくとも含むことを特徴とする舗装用樹脂組成物。
【請求項2】
エチレン酢酸ビニル共重合体の含有量が2〜30重量%、石油系プロセスオイルの含有量が20〜80重量%、テレブロックポリマーの含有量が2〜20重量%である請求項1記載の舗装用樹脂組成物。
【請求項3】
テレブロックポリマーが、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)及び/又はスチレン−イソブチレン−スチレン(SIS)である請求項1記載の舗装用樹脂組成物。
【請求項4】
軟化点が80〜110℃であって酸価が0.5mgKOH/g以下である芳香族系石油樹脂を20重量%未満添加した請求項1記載の舗装用樹脂組成物。
【請求項5】
酸価が1.0〜70mgKOH/gであるポリオレフィン系ワックスを0〜10重量%添加した請求項1記載の舗装用樹脂組成物。
【請求項6】
ポリオレフィン系ワックスが、酸化ポリエチレンであることを特徴とする請求項5記載の舗装用樹脂組成物。
【請求項7】
形状がペレット状である請求項1〜6のいずれかに記載の舗装用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の舗装用樹脂組成物3〜10重量%と骨材97〜90重量%とからなる舗装用アスファルト組成物。
【請求項9】
舗装用樹脂組成物と骨材とを150〜200℃で混合してなることを特徴とする請求項8記載の舗装用アスファルト組成物。
【請求項10】
請求項7記載のペレット状の舗装用樹脂組成物と骨材とを計量機を通さずに直接ミキサーに投入し、150〜200℃で混合することを特徴とする舗装用アスファルト組成物の製造方法。
【請求項11】
骨材を予め160〜220℃に加熱することを特徴とする請求項10記載の舗装用アスファルト組成物の製造方法。


【公開番号】特開2009−114440(P2009−114440A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269033(P2008−269033)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】