説明

航空機ハンドラ

持ち上げ工具(100)は航空機の着陸装置に持ち上げ荷重を適用するための航空機ハンドラ(1)に関連する持ち上げ装置の一部分を形成する。持ち上げ装置は持ち上げのために着陸装置の車輪軸(300)の端部分に係合する一対の対向する持ち上げ工具(100)を有する。各持ち上げ工具(100)はその中に空洞(103)を備えた本体(101)を有し、空洞は、複数の軸方向に変位可能な緊密に詰め込まれたピン(105)で満たされ、空洞内への軸の一部分又はアダプタ手段の挿入を許容し、その部分を取り囲む他のピンは、使用時に支持を提供し、持ち上げ荷重を取り囲む本体(101)に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘリコプターを含む航空機の前輪又は後輪と一緒に使用する航空機ハンドラ(handler;操作器)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の航空機の自己推進ハンドラは典型的には四輪矩形本体を有し、本体は本体の前部に一対のジョーを有し、ジョーは典型的には前部の着陸装置である着陸装置の車輪(単数又は複数)のタイヤの両側に対してクランプを行い、例えばトウのような取り扱い操作を行うように車輪(単数又は複数)を地面から持ち上げることができる。タイヤ(単数又は複数)を介して航空機を持ち上げるためのクランプジョーの使用に伴う問題は、特定の航空機を持ち上げるために対をなすジーを特別に形状づけねばならないことである。
【0003】
更に、航空機のタイヤの形状はタイヤの圧力、温度及び天候のような異なるパラメータに応じて変化する。タイヤが平坦な場合は、持ち上げジョーは航空機を持ち上げて操作するために使用することができない。対をなすクランプジョーの製造は比較的高価である。クランプジョーの使用に関連する別の問題は、ハンドラが持ち上げ操作のための適正な位置にくる前に、着陸装置のまわりで操作を行う幾つかの試みを必要とすることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は持ち上げ及び(又は)トウ操作のために着陸装置に関して容易に整合する航空機ハンドラを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、持ち上げるべき対象物の一部分に係合するようになった持ち上げ工具が提供され、持ち上げ工具は使用時に対象物の一部分に係合する荷重支持表面を提供する複数の緊密に詰め込まれたピンで満たされた空洞を備えた本体を有し、ピンは、空洞内へのその一部分の挿入時に少なくとも幾つかのピンの制限された運動を許容するように空洞内で個々に軸方向に変位でき、他のピンはその一部分を取り囲んで、支持を提供し、持ち上げ荷重を取り囲んだ本体へ伝達する。
【0006】
軸方向に変位可能と言うことは、ピンの長手軸線に沿うことを意味する。ピンはその緊密な詰め込みを容易にする任意の適当な横断面を有することができ、円形断面、多角形好ましくは正方形又は六角形断面とすることができる。好ましくは、ピンは空洞の外方へ弾性的に偏倚され、実質上平坦な表面を一緒に形成する外端面を有する。最大の内方への変位時に任意の1つのピンは取り囲んだ隣接するピンにより少なくとも部分的に支持される。
【0007】
ピンの内端は空洞のベースに摺動自在に装着される。空洞のベースは、ピン及びベースが単一の副組立体として取り外し及び取り付けできるように、本体から離脱することができる。空洞は任意の形状とすることができ、好ましくは六角形の断面を有し、ピンは円形又は六角形の断面を有することができる。使用時に、六角形の空洞の2つの辺は実質上平行となり、円形のピンを使用した場合は、少なくとも他の辺は隣接するピンを収容するための湾曲した凹状のくぼみを具備することができる。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に従った一対の持ち上げ工具を有する持ち上げ装置が提供され、この装置は使用時に持ち上げるべき対象物の対向する端部分に係合する。装置は一対の持ち上げアームを備えた地面に立脚する本体を有し、アームはアームの末端を昇降させるように実質上水平な軸線のまわりで回転するように本体に枢着され、各アームはその末端に持ち上げ工具を具備し、2つのアームはまた互いに関する持ち上げ工具の進退運動のために水平軸線に垂直な第2の軸線のまわりで枢動する。
【0009】
本発明の第3の態様は航空機の着陸装置と一緒に使用し、上述の持ち上げ装置を有する航空機ハンドラを提供する。好ましくは、ハンドラは自己推進式のものであり、一対のアームを備えたほぼ「U」字状の地面に立脚する本体を有し、アームは、その一端におけるブリッジにより、各アームの自由端にそれぞれ位置する一対の駆動車輪にリンク接続され、少なくとも1つの車輪はブリッジに隣接して位置し、一対の持ち上げアームは本体の2つのアームに枢着され、駆動車輪間に位置する。同様の航空機ハンドラはGB−A−2391205(英国特許公開公報)に開示されている。
【特許文献1】GB−A−2391205。
【0010】
持ち上げアームは本体の2つのアーム間を延びるバー上に、又は代わりに、各アームにそれぞれ装着された一対の同軸のスタブ軸上に装着することができる。バー又はスタブ軸の両端は半径方向のラグと、持ち上げアームを昇降させるためにバー又はそれぞれのスタブ軸を回転させるように本体のそれぞれのアームとラグとの間で作用するアクチュエータとを具備する。
【0011】
別の実施の形態においては、バーは2つのスタブ軸間を延びることができる。持ち上げアームがそれぞれのスタブ軸(stub axles;短い軸)に直接装着されている場合、各持ち上げアームは各それぞれのスタブ軸の内端の直径方向の溝穴内で一方の直交軸線に回転的に固定保持され、溝穴に垂直な他方の直交軸線においてそれぞれのスタブ軸に枢着される。各持ち上げアームは好ましくは一対の実質上平行な支柱を有し、各支柱は一端で持ち上げ工具に枢着される。2つの支柱の他端はそれぞれのスタブ軸に枢着でき、これにより、持ち上げ工具がその昇降運動中に実質上水平を維持するのを保証する4バーの平行四辺形リンク機構を形成する。
【0012】
代わりの構成においては、持ち上げアームはバーに装着された副組立体の一部分を形成することができる。副組立体は、水平及び第2の軸線の双方に垂直な軸線に沿って、その中間地点でバーに枢着された支持支柱を有することができ、2つの持ち上げアームの支柱の他端は4バーの平行四辺形リンク機構の一部分を形成する支持支柱の両端に枢着されて、持ち上げ工具がその昇降運動中に支持支柱の面内に実質上留まることを保証する。アクチュエータはアームを互いに関して進退運動させるように作動できる。また、持ち上げ装置は更に、持ち上げるべき対象物に係合し、持ち上げ工具の空洞内に係合できるスピゴット(spigot;差込み)をその上に備えたアダプタ手段を有することができる。
【0013】
航空機の着陸装置に持ち上げ荷重を適用するために、アダプタ手段は、持ち上げ工具の空洞内に係合できるその一側における第1の同軸のスピゴットと、着陸装置のトウ地点で空洞に係合するようになったその他側における第2の同軸のスピゴットとを備えたディスクを有することができる。このようなトウ地点は航空機の車軸又は着陸装置の構造体の補強された区分の端部に設けることができる。
【0014】
本発明の更なる態様は対象物に持ち上げ荷重を適用する方法を提供し、この場合、本発明の第2の態様に係る持ち上げ装置は地面上で持ち上げられるべき対象物の対向する部分に係合させられ、対向する部分は持ち上げ工具のそれぞれの空洞内に収容され、取り囲むピン上で支持され、次いで、対象物に持ち上げ荷重を適用する。この方法の利点は、持ち上げ荷重を適用する対向する部分が互いに対して又は持ち上げ工具の空洞の中心に対して精確に整合する必要がないことである。その理由は、空洞内のピンが空洞内での任意の位置で持ち上げ部分を収容するように変位でき、取り囲んだ緊密に詰め込まれたピンが持ち上げ中に必要な支持を提供するからである。
【0015】
本発明の更に別の態様はまた、航空機の着陸装置に持ち上げ荷重を適用する方法を提供し、この方法では、アダプタ手段は航空機の着陸装置のトウ地点の各側でそれぞれ挿入され、本発明の第3の態様に係る航空機ハンドラは、2つの持ち上げ工具の各々が持ち上げ荷重を提供するそれぞれのアダプタ手段に係合するように、作動する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面の図1ないし図3を参照すると、航空機の着陸装置特に前部の着陸装置と共働して使用し、特にヘリコプターの前輪と一緒に使用するようになった航空機ハンドラが示される。ハンドラは自己推進式のもので、3.5ないし5.5トンの最大持ち上げ荷重を与えることができる。ハンドラはその内容を本説明の中に組み込む上記GB−A−2391205に記載されたハンドラに類似する。
【0017】
ハンドラ10は、ブリッジ14によりリンク接続された2つのアーム12、13を有する、平面図で実質上「U」字形上即ち馬蹄形状の本体、即ちシャシー11を有する。本体10は、車輪15、16、17、18の上に立脚し、車輪15、16は各それぞれのアーム12、13の端部分に位置し、車輪17、18はブリッジ14の各側にそれぞれ位置する。ブリッジ14はアーム12、13よりも低く、約360mmであるアームの高さに比べて約220mmの高さを有する。前方のアーム12、13は、ハンドラが中心線CLと後述する持ち上げアーム51の回転軸線との交差部から始まるピッチ円内に実質上存在するように、傾斜又は面取りされる。ハンドルのプロフィールを小さなピッチ円内に維持させることにより、航空機の下でさえの機動性を許容する。
【0018】
シャシーの各アーム12、13は2つの部分から形成され、これらの部分はそれぞれ、ブリッジ14に隣接する上方に向いた前部のコンパートメント32、33及びそれぞれのアームの高さに実質上等しい高さを有する隆起した平坦な端部分34、35である。各前部のコンパートメント32、33はハンドラ10のための電力を提供する複数の電池36を収容する。ブリッジ14は中空であり、電池36を再充電するための電池充電器38及び一対の相互リンク接続されたプログラム可能なマイクロプロセッサユニット37、39を収容する。
【0019】
アーム13の前部コンパートメント33はまた電池のための絶縁体41、マイクロプロセッサに電力を供給するためのDC/DCコンバータ40及びハンドラに電力を供給するためのメインパワー接点スイッチを収容する。アーム12の前部コンパートメント32はまた電動液圧ポンプ42及び関連する制御弁43を収容し、ポンプ42は電池36により給電される。コンパートメント32、33は図13に示すような着脱自在の蓋136により覆うことができる。
【0020】
車輪17、18は、ハンドラ10の前部に位置し、車輪18は旋回キャスター車輪であり、車輪17は上記GB−A−2391205号明細書に記載された方法と同様の方法で操舵を行うための回転可能な板23に装着された操舵可能な車輪である。随意には、両方の車輪17、18は操舵可能とすることができる。
【0021】
車輪15、16は、車輪と同軸に配置された車輪内駆動モータ26により駆動される駆動車輪である。各駆動モータ26は歯車箱を介してそれぞれの車輪を駆動するDC(直流)パワーユニットである。また、電磁ブレーキユニット27が車輪と同軸にそれぞれのモータ26上に装着される。ハンドラを運動させるための駆動モータ26及びブレーキ27の作動はマイクロプロセッサユニット37、39により制御される。車輪は固定され、ハンドラは異なる回転速度で2つの車輪を駆動する上記モータにより及び(又は)操舵可能な車輪(単数又は複数)17、18により操舵される。
【0022】
特に図3を参照すると、持ち上げアーム51は互いに対向して2つのシャシーアーム12、13間に位置し、回転可能な状態でそれぞれのアーム12又は13に装着されたスタブ軸52にそれぞれ枢着される。2つのスタブ軸52は同軸であり、水平軸線のまわりで回転し、それぞれの持ち上げアーム51は一方の直交軸線において回転的に固定保持される。それぞれのスタブ軸52の外端はそれぞれのコンパートメント32、33内に位置していて、コンパートメント内に位置しかつそれぞれのアーム12又は13上のブラケット58とそれぞれのラグ56との間を延びるそれぞれの液圧アクチュエータ57に各々接続されたそれぞれの半径方向のラグ56を具備する。2つのアクチュエータ57の作動により、2つのスタブ軸52を回転させ、持ち上げアーム51を昇降させる。アクチュエータ57はアーム51を上昇させるように延びる。
【0023】
2つのスタブ軸52は、ハンドラ10の重心に実質上位置する。2つの持ち上げアーム51は各々一対の実質上平行な支柱61、62を有し、これらの支柱は各それぞれのスタブ軸52の内端における直径方向の溝穴73内に位置する。2つの支柱61、62は溝穴73の側部により回転軸線において回転的に固定保持され、溝穴73に垂直なピン63、64により他方の直交軸線においてその一端でそれぞれのスタブ軸52に枢着される。2つの支柱61、62の他端はピン65、66により持ち上げ工具100に枢着される。枢着ピン65、66はピン63、64及びそれぞれのスタブ軸52に実質上平行であり、支柱61、62及び持ち上げ工具100は、使用時に持ち上げ工具100を実質上水平に保持する4バーの平行四辺形リンク機構を形成する。
【0024】
アクチュエータ68は、互いに一層近づくか又は更に離れるように持ち上げ工具100を移動させるために支持アーム51の外側支柱62間で作動できる。これも示されるが代わりの構成においては、一対のアクチュエータ67はシャシー11のアンカー69とそれぞれの外側支柱62との間で作用することができる。液圧アクチュエータ57、67、68は液圧ホース(図示せず)により制御弁43に接続され、制御弁はマイクロプロセッサ37、39を介して作動される。液圧装置はハンドラ10により提供される最大持ち上げ荷重を制限する圧力逃がし弁(図示せず)を具備する。2つのアクチュエータ57、67内で作用する液圧圧力は適当な手段により同等化させるべきである。
【0025】
ここでまた図6ないし9を参照すると、各持ち上げ工具100は、例えば溶接によりその外側の円筒状表面に固定された半径方向のフランジ102を備えた円筒状の本体101を有する。持ち上げ工具はフランジ102により支柱61、62に固定される。持ち上げ工具は持ち上げアーム51に取り付けられたものとして示され、また、後述するようにアダプタ120に対して離脱した状態で示される。
【0026】
本体101は、その中に形成された空洞103を有し、空洞は、この実施の形態では、主要な本体から離脱できるベース104を有する。空洞103は例えば円形又は多角形(例えばこの例では六角形)のような任意の適当な横断面形状を有することができる。空洞103は各々隣のものと接触する緊密に詰め込まれたピン105のアレイを収容する。ピン105は空洞103の軸線に沿って延び、大きな直径のヘッド106と小さな直径のステム107とを有する。ピンのステム107はベース104のそれぞれの開口108を摺動自在に貫通する。ステム107の外端は、各ステム107のまわりで同軸的に位置しかつベース104とそれぞれのピンヘッド106との間で作用するコイルバネ109により与えられる偏倚荷重の下で空洞103の口部の方へのピンの運動を制限する当接部118を具備する。各ピン105は、荷重の下で、空洞103の内方へ個々に変位することができる。
【0027】
ピン105は、緊密な詰め込み構成を許容する任意の適当な横断面形状を有することができる。この実施の形態においては、六角形の空洞は約90mm隔てた平坦部を有し、約8mmの直径の140個の円形断面のピン105を収容し、これらのピンは緊密に詰め込まれた六角形のアレイとして形成される。空洞103は隣接するピンを収容するように形状づけられたくぼみ(この例では湾曲した凹状のくぼみ)を有する辺110を具備するように形成することができる。ピンのアレイは13個の水平な列と14個の対角線的な列とを有する。
【0028】
図示しない別の実施の形態においては、使用時に実質上水平な上方及び下方の辺110A、110Bを形成するこれらの辺は平坦とすることができる。ベース104及びピン105は、円形の本体101に対してユニットとして着脱できる副組立体を形成することができる。ピンのヘッド106は、ピン105Aが図7に示すような完全に引き戻された状態にあるときに、そのヘッド106Aが取り囲むピンのヘッド106により支持されるのに十分なほどの軸方向長さを有する。ピン105は、それぞれの端面112を有し、これらの端面は空洞103の口部を横切る平坦な表面を形成するようにすべて互いに整合する。
【0029】
ある応用においては、その例を図4、5に示すアダプタ120と組み合わせて持ち上げ工具100を使用する必要があることがある。このアダプタ120は基本的にはその片側で同軸の六角形スタッド210を有し、反対側で同軸の段付き直径の円筒状スタッド202を有するスチールディスク200である。スタッド202はディスクに隣接するその大径部分203と、その外方の小径部分204とを有する。使用において、小径部分204は例えば前輪軸300(図3参照)のような航空機の着陸装置のトウ地点の穴内に挿入される。大径部分1203は軸の端面に当接し、ディスク200がトウ地点から離間するのを保証する。トウ地点として車輪軸302を使用した場合、これは車輪の軸受に側荷重が作用するのを阻止する。
【0030】
スタッド201、202の寸法は、トウ地点の寸法及び持ち上げるべき荷重により決定される。3.5トンの持ち上げを提供するため、スタッド部分204は18mmの直径とすることができ、六角形のスタッドは約25mm隔てた平坦部とすることができる。異なる航空機又は他の持ち上げ応用に対して異なるアダプタが必要になることがある。アダプタは持ち上げ工程中にアダプタが脱落するのを阻止する手段を具備することができる。例えば、スタッド202を磁化することができ、または、小径部分がバネ負荷式の半径方向のグリップを具備することができる。使用において、一対のアダプタ120の小径部分204は航空機の前輪302の軸300の両端の盲穴301内に挿入され、磁気により適所に保持される。
【0031】
ハンドラ10は、駆動車輪15、16の速度、操舵可能な車輪17の角度及び持ち上げアーム51の作動を制御するマイクロプロセッサ37、39により制御される。使用において、ハンドラは航空機のノーズ部の下で遠隔ハンドセットを使用する操作者により操作され、持ち上げアーム51は持ち上げ工具100を2つのアダプタ120に係合させるように作動される。
【0032】
持ち上げ工具100は、閉じられ、六角形のスタッド201は2つの対向する持ち上げ工具100の空洞103内に受け入れられる。スタッド201に接触するピン105は、ピンのヘッド106がそのバネ上に着地するまで、空洞内に押し込まれる。他の取り囲みピンは外方へ十分に偏倚されたままである。空洞103が約90mm隔てたその平坦部を有し、スタッド201が約25mm隔てたその平坦部を有するので、空洞の軸線はスタッド201の軸線及び航空機の軸と整合しないこと明らかである。更に、2つの持ち上げ工具100は互いに完全に整合する必要はない。
【0033】
初期の持ち上げ荷重が持ち上げアームを介して適用されたときに、持ち上げ工具100は、軽い荷重が緊密に詰め込まれたピン105を介して持ち上げ工具の本体101からスタッド201へ伝達されるまで、取り囲んだピンとスタッド201との間のいかなる遊びをも吸収するように上昇する。
【0034】
増大した持ち上げ荷重は、緊密に詰め込まれたピン105を介してスタッド201に伝達され、アダプタ120を介して航空機の着陸装置に伝達される。スタッド201をじかに取り囲むピンは持ち上げ工具の本体101から航空機のトウ地点へ持ち上げ荷重を伝達する荷重支持表面を提供する。持ち上げ荷重は、ハンドラ10上に下向きの反力を生じさせ、ハンドラの車輪と地面との間の牽引力を増大させる。必ずしも必要ではないが、持ち上げ荷重は前輪302を地面から上昇させることができる。次いで、操作者の制御の下で必要なように、自己推進式のハンドラ10を使用して航空機を操作することができる。
【0035】
図示しない他の実施の形態においては、ピン105は実質的に連続するアレイとなった緊密な詰め込みを許容する正方形又は六角形のような他の横断面を有することができる。空洞103の横断面はピンの選択された形状に適合するように他の形状とすることができる。アダプタ120は他の形状とすることができ、六角形のスタッド201は、アダプタを少なくとも2つの異なる形式の航空機に利用できるようにするように代わりの寸法のトウ地点に適合させるように寸法決めできる円筒状のスタッドと交換することができる。
【0036】
更に別の実施の形態においては、上記GB2391205号明細書に開示されているように、駆動車輪15、16及びモータ26は副組立体として各アームのそれぞれの隆起した端部分34又は35の下に回転自在に装着された円形の板即ちターンテーブルに装着される。ターンテーブルはマイクロプロセッサユニット37、38の制御の下に直流電気モータにより回転させることができる。ハンドラ10はまた、ハンドラが使用中であることを表示する音響アラーム及び暗闇でのハンドラの作動のためのライトを具備する。
【0037】
ここで図13を参照すると、持ち上げ装置220を除いて、先に述べたハンドラ10と実質上同様の航空機のハンドラ210を示す。持ち上げ装置220はシャシーのアーム12、13上の2つの対向するスタブ軸52間に装着される副組立体として形成される。図10−13を参照すると、持ち上げ装置は水平軸線のまわりで回転運動するようにスタブ軸52の溝穴73に係合できる平坦な端部分222を備えたバー221を有する。
【0038】
先に述べたように、持ち上げ工具はフランジ102によりそれぞれの持ち上げアーム51の末端に装着され、各々は2つの支柱61、62からなる。2つの支柱61、62は細長い支持支柱224のそれぞれの端部分に形成した溝穴223内に位置する。2つの支柱61、62は溝穴223の側部により一方の回転軸線において回転的に固定保持され、溝穴223に垂直なピン225、226により他方の直交軸線において支持支柱に枢着される。枢着ピン225、226はピン65、66及び支持支柱224のそれぞれの端部分に実質上平行であり、支柱61、62及び持ち上げ工具100は、使用時に支持支柱と実質上同じ面内に持ち上げ工具100を保持する4バーの平行四辺形リンク機構を形成する。
【0039】
一対の液圧アクチュエータ267はアンカー269と各持ち上げアーム51のそれぞれの外側支柱62との間で作動できる。液圧アクチュエータ267は液圧ホース(図示せず)により制御弁43に接続され、制御弁は先に述べたようにマイクロプロセッサ37、39を介して作動され、2つのアクチュエータ267内で作用する液圧圧力は適当な手段により同等化させるべきである。
【0040】
支持支柱224は、中間地点で、これまた中間位置でバー221に固定されたピン227に枢着される。支柱224はピン227の端部に固定された板228によりピン227上で保持され、アンカー269はこの板上に装着される。支持支柱224は各回転方向において典型的には7.5°であるピン227のまわりでの回転を制限できる。
【0041】
回転は支持支柱224の対をなすフランジ232、233間で相互係合するバー221上のフランジ231により制限される。対をなす対向するバネ234はフランジ231とフランジ232、233との間に位置していて、支持支柱を中立の水平状態へ弾性的に偏倚する。バー221のまわりでの支柱224の回転は、車輪が地面上で立っているときに、軸の方位が水平ではない場合に、ハンドラが前輪を昇降させるのを許容する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る航空機ハンドラの平面図である。
【図2】図1のハンドラの中心線CLにおける断面図である。
【図3】図1の部分拡大図である。
【図4】図1に示すようなハンドラと一緒に使用するアダプタを示す図である。
【図5】アダプタの第2の図である。
【図6】ハンドラと一緒に使用する持ち上げ工具の本体の前面図である。
【図7】図6のVII−VII線における持ち上げ工具の断面図である。
【図8】持ち上げ工具の後面図である。
【図9】ピンの側立面図である。
【図10】本発明に係る別の持ち上げ装置の斜視図である。
【図11】図10の装置の平面図である。
【図12】図10の装置の側面図である。
【図13】図10の持ち上げ装置を組み込んだ航空機ハンドラの斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
持ち上げるべき対象物の一部分に係合する持ち上げ工具であって、使用時に対象物の一部分に係合する荷重支持表面を提供する複数の緊密に詰め込まれたピンで満たされた空洞を備えた本体を有し、前記ピンが空洞内で軸方向に個々に変位可能であり、空洞内への上記一部分の挿入時に少なくとも幾つかのピンの制限された運動を許容すると共に、上記一部分を取り囲む他のピンが支持を提供し、持ち上げ荷重を取り囲んだ本体へ伝達することを特徴とする工具。
【請求項2】
前記ピンが円形の横断面を有することを特徴とする請求項1の工具。
【請求項3】
前記ピンが空洞の外方へ弾性的に偏倚され、実質上連続する平坦な表面を一緒に形成する外端面を有することを特徴とする請求項1又は2の工具。
【請求項4】
いずれの1つのピンも、最大の内方変位時に、取り囲んだ隣接するピンにより少なくとも部分的に支持されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの工具。
【請求項5】
前記ピンの内端が空洞のベースに摺動自在に装着されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの工具。
【請求項6】
前記空洞のベースは、ピン及びベースが単一の副組立体として取り外し及び取り付けできるように、本体から離脱できることを特徴とする請求項5の工具。
【請求項7】
前記空洞が六角形の断面を有し、ピンが円形であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの工具。
【請求項8】
使用時に、六角形の辺のうちの2つが実質上水平になることを特徴とする請求項7の工具。
【請求項9】
前記空洞の少なくとも他の辺が隣接するピンを各々収容する湾曲した凹状のくぼみを具備することを特徴とする請求項2に従属した場合の請求項8、又は、請求項2に従属した場合の請求項3ないし8のいずれかの工具。
【請求項10】
持ち上げ装置であって、
請求項1ないし9のいずれかの一対の持ち上げ工具を有し、使用時に、持ち上げるべき対象物の対向する端部分に係合することを特徴とする装置。
【請求項11】
一対の持ち上げアームを具備した地面に立脚する本体を有し、アームがその自由端において持ち上げ工具を各々有するアームの末端を昇降させるように実質上水平な軸線のまわりで回転するように装置の本体に枢着され、2つのアームがまた持ち上げ工具を互いに対して進退運動させるように水平な軸線に垂直な第2の軸線のまわりで枢動することを特徴とする請求項10の装置。
【請求項12】
前記持ち上げるべき対象物に係合し、持ち上げ工具の空洞内に係合できるスピゴットをその上に備えたアダプタ手段を更に有することを特徴とする請求項10又は11の装置。
【請求項13】
航空機の着陸装置に持ち上げ荷重を適用するための航空機ハンドラであって、請求項10ないし12のいずれかの持ち上げ工具を含むことを特徴とするハンドラ。
【請求項14】
前記ハンドラが自己推進形式のものであり、一対のアームを備えたほぼ「U」字形状の地面に立脚するシャシーを有し、アームが、各アームの自由端にそれぞれ位置する一対の駆動車輪に対して、その一端におけるブリッジにより、リンク接続され、少なくとも1つの車輪がブリッジに隣接して位置し、一対の持ち上げアームが本体の2つのアームに枢着され、駆動車輪間に位置することを特徴とする請求項13のハンドラ。
【請求項15】
前記持ち上げアームがシャシーの各アームにそれぞれ装着された一対の同軸のスタブ軸に装着され、スタブ軸の外端が半径方向のラグを具備し、アクチュエータが持ち上げアームを昇降させるためにスタブ軸を回転させるようにシャシーとラグとの間で作用することを特徴とする請求項14のハンドラ。
【請求項16】
各持ち上げアームが各それぞれのスタブ軸の内端の直径方向の溝穴において一方の直交軸に回転的に固定保持され、他方の直交軸において溝穴に垂直なそれぞれのスタブ軸に枢着されることを特徴とする請求項15のハンドラ。
【請求項17】
各持ち上げアームが一対の実質上平行な支柱を有し、各支柱が一端でスタブ軸に枢着され、他端で持ち上げ工具に枢着され、それによって、4バーの平行四辺形リンク機構を形成することを特徴とする請求項14ないし16のいずれかのハンドラ。
【請求項18】
2つの持ち上げアームが2つのスタブ軸間を延び、これに回転的に固定されたバー上に装着された副組立体の一部分を形成することを特徴とする請求項15のハンドラ。
【請求項19】
前記副組立体が、水平及び第2の軸線の双方に垂直な軸線に沿って、その中間地点でバーに枢着された支持支柱を有し、2つの持ち上げアームの支柱の他端は、持ち上げ工具がその持ち上げ及び下降運動中に支持支柱の面内に実質上留まるのを保証する4バーの平行四辺形リンク機構の一部分を形成する支持支柱の両端に枢着されることを特徴とする請求項18のハンドラ。
【請求項20】
前記支持支柱がバーに関する回転運動を制限できることを特徴とする請求項19のハンドラ。
【請求項21】
前記支持支柱が水平状態に弾性的に偏倚されることを特徴とする請求項20のハンドラ。
【請求項22】
少なくとも1つの更なるアクチュエータが互いに関して進退するようにアームを移動させるために作動できることを特徴とする請求項15ないし21のいずれかのハンドラ。
【請求項23】
前記アダプタ手段がディスクを有し、ディスクが持ち上げ工具の空洞内で係合できる、ディスクの片側での第1の同軸のスピゴットと、着陸装置上のトウ地点で空洞に係合するようになった、ディスクの他側での第2の同軸のスピゴットとを有することを特徴とする請求項12に従属する場合の請求項13ないし22のいずれかのハンドラ。
【請求項24】
対象物に持ち上げ荷重を適用する方法であって、
請求項10又は11に係る持ち上げ装置が対象物に隣接する位置へ操作され、持ち上げ工具が地面上にあるときの持ち上げるべき対象物の対向する部分に係合させられ、対向する部分が持ち上げ工具のそれぞれの空洞内に収容され、次いで、対象物に持ち上げ荷重を適用することを特徴とする方法。
【請求項25】
航空機の着陸装置に持ち上げ荷重を適用する方法であって、
請求項13ないし23に係るハンドラが着陸装置に隣接するように操作され、アダプタ手段が航空機の着陸装置上のトウ地点の各側にそれぞれ取り付けられ、ハンドラは、2つの持ち上げ工具の各々が着陸装置に持ち上げ荷重を適用するようにそれぞれのアダプタ手段に係合するように、作動させられることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−522998(P2007−522998A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553639(P2006−553639)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000375
【国際公開番号】WO2005/080197
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(503183835)ダグラス・イクイップメント・リミテッド (1)