説明

航空機用エンジンアセンブリ

本発明は、ターボシャフトエンジン(2)と、エンジンストラットサスペンション(4)と、このエンジンストラットサスペンション(4)とターボシャフトエンジンとの間に介在させられた複数のエンジン取り付け具(6a,6b,8)とを具備してなる航空機用エンジンアセンブリ(1)に関する。本発明は、複数の取り付け具がターボシャフトエンジンの垂直方向(Z)に相互オフセット状態で配置された二つの前部取り付け具(6a,6b)を具備し、第1の前部取り付け具(6a)はターボシャフトエンジン(2)の横方向(Y)に沿って作用する力のみを確実に受け持つよう構成されており、一方、第2の前部取り付け具(6b)は横方向(Y)および垂直方向(Z)に沿って作用する力のみを確実に受け持つよう構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して言うと、ターボジェットのようなターボシャフトエンジンと、取り付けストラットと、当該取り付けストラットとターボジェットとの間に介在させられた複数のエンジンマウントとを具備してなるタイプの航空機用エンジンアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
公知の様式で、こうしたエンジンアセンブリの取り付けストラットが、当該アセンブリを備えた航空機のターボジェットと翼との間の連絡インターフェースを構成するために設けられている。これは、関連するエンジンによって生成される応力を、当該航空機の構造体に伝達することを可能とし、そしてさらにはエンジンと航空機との間で、燃料、電気システム、油圧および空気の配管を可能にする。
【0003】
応力の伝達を確実なものとするために、上記ストラットは例えば「枠体(ボックス)」型の、すなわちクロスリブを介在させたことによって一つに結合された桁材および側面パネルのアセンブリから形成された剛構造体を具備してなる。
【0004】
アセンブリシステムは、エンジンとストラットの剛構造体との間に介在させられるが、当該システムは、全体様式として複数のエンジンマウントを具備してなり、通常、これは、エンジンのファンケーシングと一体となった前部マウント(マウント群)および当該エンジンの噴射ケーシングと一体となった後部マウント(マウント群)とに分けられる。
【0005】
さらに、このアセンブリシステムは、エンジンによって生成されるスラスト応力を受けるための機構を具備してなる。従来技術においては、こうした機構は、たとえば、一方ではエンジンのファンケーシングの後部に対して、そして他方ではストラットの剛構造体に組み付けられたマウント、たとえば後部マウントに対して結合された、二つの横方向連結ロッドの形態をとる。
【0006】
参考までに、取り付けストラットは航空機の上記ストラットと翼との間に介在させられた第2のアセンブリシステムと関連付けられ、この第2のシステムは通常二つまたは三つのマウントからなることを強調する。
【0007】
最後に、ストラットは、システムの隔離および支持を確実なものとすると同時に空力フェアリングを支持する補助構造体を備える。
【0008】
従来の一般的形態では、ジェットエンジンと剛構造体との間に介在させられたアセンブリシステムは概して、ジェットエンジンの前後方向に沿って作用するモーメントを、当該ジェットエンジンの横方向に離間すると共にそれぞれ上記ジェットエンジンの垂直方向に沿って作用する応力を確実に受け持つことができるよう形成された二つの後部マウントあるいはハーフマウントが受け持つよう構成される。
【0009】
そうした構造では、横方向における二つの後部マウント間の間隔は、ストラットの剛構造体の幅によって明らかに制限されるが、この幅は、特にバイパスエアの擾乱に関する自明の理由から一般に狭いものである。
【0010】
その結果、後部マウントの狭い間隔によって、垂直方向に沿った応力(上記二つのマウントのそれぞれは前後方向に沿ったモーメントを確実に受け持つために、この応力を受ける必要がある)が必然的に非常に大きくなる。ゆえに、この観察に由来する主要な欠点は、上記後部マウントは当然のことながら複雑かつコストのかかる様式で設計される必要があるということである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって本発明の目的は、従来技術の実施形態に関する上記欠点を少なくとも部分的に克服する、航空機用のアセンブリを提供し、そしてさらにそうしたアセンブリを少なくとも一つ備えた航空機を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために本発明が対象とするのは、ジェットエンジン(ターボシャフトエンジン)と、取り付けストラットと、この取り付けストラットとジェットエンジンとの間に介在させられた複数のエンジンマウントとを具備してなる航空機用エンジンアセンブリであり、複数のエンジンマウントは、ジェットエンジンの横方向に沿って作用する応力を確実に受けるよう、それぞれ構成された二つの前部マウントを具備してなり、二つの前部マウントは、ジェットエンジンの垂直方向に互いに食い違い配置されている。さらに第1の前部マウントは、ジェットエンジンの横方向に沿って作用する応力のみを確実に受けるよう構成されており、これに対して第2の前部マウントは、横方向および垂直方向に沿って作用する応力のみを確実に受けるよう構成されている。
【0013】
言い換えれば、本発明によるエンジンアセンブリは、ジェットエンジン(ターボシャフトエンジン)の前後方向に沿って作用するモーメントをもはや後部マウントによって受けることはなく、高さ方向に互い違いに配置されかつ横方向に沿って作用する応力を確実に受け持つことができる前部マウントを介在させることによって受けるよう構成されている。
【0014】
だが、前部マウントはジェットエンジン(ターボシャフトエンジン)のファンケーシングまたは噴射ケーシングと無差別的に一体化可能であるので、たとえば、その一方をファンケーシングに取り付け、他方を噴射ケーシングに取り付けることによって、両者を垂直方向にかなりの程度互いに離間させることが明らかに可能である。
【0015】
この大きな間隔は、エンジンマウントの構造をかなりの程度簡素化できるという利点を有する。これは、前後方向に沿ったモーメントに関連して、それが受け持たねばならない応力は、従来技術の一般的な解決策(ここでは上記モーメントは噴射ケーシングと一体化された二つの後部マウントによって確実に受けるようになっているが、これらは明らかに、そうした間隔まで互いに離間させることはできない)に見出されるものと比較して、当然ながら低減されるという事実に起因する。
【0016】
二つの前部マウントはいずれも、本発明の範囲を逸脱することなく、異なる高さでファンケーシングに配置できることを強調しておく。
【0017】
さらに、二つの前部マウントが、前後方向に沿って作用するモーメントを確実に受け持つために、ジェットエンジン(ターボシャフトエンジン)の垂直方向に互いに関して食い違い様式で配置される場合、これは、二つの前部マウントがまた前後方向(長さ方向)および/または横方向に互いに関して食い違い配置可能であるという事実を除外するものではないことを強調しておく。
【0018】
好ましくは、二つの前部マウントは、ジェットエンジン(ターボシャフトエンジン)のファンケーシングの環状周縁部と一体となった第1の前部マウントと、このジェットエンジンの噴射ケーシングと一体となった第2の前部マウントとから構成される。この好ましい構造では、効果的に、二つの前部マウント間の、垂直方向に沿った間隔を容易に得ることができるが、これは、従来技術に見出されかつ取り付けストラットの剛構造体の幅に制限される間隔と非常によく比較される。
【0019】
上述したように、第1の前部マウントは、ジェットエンジン(ターボシャフトエンジン)の横方向に沿って作用する応力のみを確実に受け持つよう構成され、その一方で、第2の前部マウントは、横方向および垂直方向に沿って作用する応力のみを確実に受け持つよう構成される。この場合、複数のエンジンマウントはまた、ジェットエンジン(ターボシャフトエンジン)の前後方向に沿ってだけでなく、横方向および垂直方向に作用する応力を確実に受け持つよう構成された後部マウントを具備してなることができる。
【0020】
好ましくは、複数のエンジンマウントのそれぞれは、ジェットエンジン(ターボシャフトエンジン)の前後方向および当該エンジンの垂直方向によって規定される平面と交差する。ゆえに、上記平面上にエンジンマウントの全てが集まっており、したがってマウントは横方向には互いに離間していないという事実によって、横方向に沿った取り付けストラットの幅を実質的に減少させることが可能となるのは明らかである。ゆえに、注目される幅の縮小によって、有利なことには、取り付けストラットによって生じる、ターボファン環状ダクトにおけるバイパスエアの擾乱を低減することが可能となる。
【0021】
選択的に、取り付けストラットは、実質的にジェットエンジン(ターボシャフトエンジン)の前後方向に沿って延在する中央枠体(中央ボックス)と共に、この中央枠体と一体であってかつ実質的に垂直方向に沿って延在する前部枠体(前部ボックス)を具備してなる剛構造体からなる。
【0022】
この場合、二つの前部マウントを一体様式で、一方が他方の上に位置するよう前部枠体上で組み立てることが可能である。
【0023】
好ましくは、ジェットエンジン(ターボシャフトエンジン)の横方向に沿って作用する応力のみを確実に受けるよう構成された第1の前部マウントは、垂直方向に沿って平行に配置された二つのボールジョイント軸を介在させたことによって、取り付けストラットと一体となった第1のブラケットに組み付けられた中間ブラケットを具備してなり、さらに第1の前部マウントは、ジェットエンジンの前後方向に沿って配置されかつ中間ブラケットと一体となったスラグを具備してなり、スラグは、ジェットエンジンと一体となった第2のブラケットに、前後方向に遊びが存在する状態で取り付けられている。
【0024】
本発明のさらなる目的は、上述したようなエンジンアセンブリを少なくとも一つ具備してなる航空機である。
【0025】
本発明のその他の利点ならびに特徴は、以下の詳細な非限定的説明によって、より明瞭なものとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して説明する。
【0027】
図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態による航空機用エンジンアセンブリ1が示されているが、このアセンブリ1は航空機(図示せず)の翼の下に取り付けられるものである。
【0028】
全般的な様式に関して、エンジンアセンブリ1は、以下の説明ではターボジェット2であると見なされるジェットエンジン(ターボシャフトエンジン)2と、取り付けストラット4と、このストラット4の下方でのジェットエンジン2の取り付け状態を確実なものとするための複数のエンジンマウント6a,6b,8を具備してなる。参考までに、アセンブリ1はナセル(図示せず)内に収容されるようになっており、しかも取り付けストラット4は、航空機の翼の下での上記アセンブリ1の吊り下げ状態を確実なものとすることを可能とするその他一連のマウント(図示せず)を具備してなることを強調しておく。
【0029】
以下の説明を通じて、慣習により、Xはジェットエンジン2の長さ方向軸線5と平行なジェットエンジン2の前後方向を、Yはジェットエンジン2の横方向(左右方向)を、そしてZは垂直すなわち高さ方向を意味すると理解される(これら三つの方向は互いに直交している)。
【0030】
さらに、「前」および「後」との用語は、ジェットエンジン2によって加えられるスラストの結果として航空機が前進する方向(この方向は矢印7によって概略的に示す)と関連付けて解釈すべきである。
【0031】
図1では、ただ一つの取り付けストラット4の剛構造体10が示されていることが分かるであろう。上記ストラット4を形成しているその他の図示していない要素、たとえばシステムの隔離および支持を確実なものとすると同時に空力フェアリングを支持する補助構造体は、従来のものと同一あるいは類似の一般的な要素であり、当業者には公知である。したがって、それについて詳しい説明は省略する。
【0032】
同様に、アセンブリ1は、ジェットエンジン2によって生じるスラスト応力を受けるための機構(図示せず)を備えるが、これは既存のものと同一あるいは類似しており、したがってこれ以上は説明しない。
【0033】
ジェットエンジン2は、前部には、ターボファンの環状ダクト14を画定している、大きな寸法のファンケーシング12を有し、しかも後部付近には、ジェットエンジンのコアを取り囲む、小さな寸法の噴射ケーシング16を具備してなる。ケーシング12および16は、明らかに、一般的な従来公知の様式で互いに一体となっている。
【0034】
図1から分かるであろうように、本発明の特徴は、複数のエンジンマウント6a,8b,8が、横方向Yに沿って作用する応力を確実に受け持つようそれぞれ設計された二つの前部マウント6a,6bを具備してなるという事実と、この二つの前部マウント6a,6bが垂直方向Zに互いに関して食い違い状態で配置されているという事実とが組み合わされたことにある。
【0035】
さらに正確に言うと、図1に概略的に示すように、一方で、第1の前部マウント6aはストラット4の剛構造体10の前部と一体となっており、他方で、ファンケーシング12の環状周縁部18と、好ましくはこの部分18の後部において一体となっている。
【0036】
さらに、第1の前部エンジンマウント6aは環状周縁部18の最も高い部分に取り付けられており、必然的に、前後方向軸線5およびZ方向によって規定される仮想面(図示せず)と交差する。この点に関して、いま言及した仮想面は、第1の前部マウント6aに関して対称面であることに留意されたい。
【0037】
以下で詳しく説明するように、上記第1のマウントは、ジェットエンジンのY方向に沿って作用する応力のみを確実に受けるよう、そしてX方向およびZ方向に沿って作用する応力は受けないよう構成されていることに留意されたい。
【0038】
さらに第2の前部マウント6bは、それによって第1の前部マウント6aの下方に位置するよう、一方ではストラット4の剛構造体10の前部と、そして他方では噴射ケーシング16と一体である。さらに第2の前部エンジンマウント6bは、噴射ケーシング16の環状部分の最も高い位置に取り付けられている。この点に関して、図示した好ましい実施形態では、二つの前部マウント6a,6bはもっぱらZ方向に互いに食い違い配置されており、X方向およびY方向にはそうなっていないことに留意されたい。だが、本発明の範囲から逸脱することなく、そうした食い違い配置を実現することは明らかに可能であろう。
【0039】
さらに、第2のマウント6bのこの特別な配置は、それがまた、上述した、前後方向軸線5およびZ方向によって規定される仮想面と交差することを意味するが、この仮想面はまた、この第2の前部マウント6bに関する対称面をなしている。
【0040】
図1に矢印で概略的に示すように、第2の前部マウント6bは、ジェットエンジンのY方向に沿ってかつZ方向に沿って作用する応力のみを確実に受けるが、X方向に沿って作用する応力は受け持たないように構成されている。
【0041】
複数のエンジンマウント6a,6b,8はさらに、ただ一つの後部マウント8を具備してなり、このマウント8には、たとえばアセンブリ1のスラスト応力を受けるための機構を取り付けることができる。後部マウント8は、一方では、噴射ケーシング16の後部と、好ましくは当該ケーシング16の後端の高さにおいて、そして他方では、ストラット4の剛構造体10と、好ましくはX方向で考えた上記ストラットの実質的に中央部分の高さにおいて一体となっている。
【0042】
第2の前部マウント6bと同様に、後部マウント8は、シャックルおよびブラケットからなるアセンブリに関連するもののような、当業者には公知の何らかの形式に従って形成される。だが、この後部マウント8はその一部に関して、X方向、Y方向およびZ方向の三方向に沿って作用する応力を確実に受け持つよう構成される。
【0043】
したがって、いま説明した複数のエンジンマウントを用いて、X方向に沿って作用する応力は後部マウント8が受け、Y方向に沿って作用する応力は三つのマウント6a,6b,8が受け、そしてZ方向に沿って作用する応力は第1の前部マウント6aおよび後部マウント8を介在させることによって受けることになる。
【0044】
さらに、X方向に沿って作用するモーメントは二つの前部マウント6a,6bが協働で受け持ち、Y方向に沿って作用するモーメントは第2の前部マウント6bおよび後部マウント8が協働で受け持ち、そしてZ方向に沿って作用するモーメントは三つのエンジンマウント6a,6b,8が協働で受け持つ。
【0045】
図1および図2を併せて参照すると、提示された好ましい実施形態では、取り付けストラット4の剛構造体10は、実質的にX方向に沿って延在する中央枠体20と共に、この中央枠体20と一体であってかつ実質的に垂直方向Zに沿って延在する前部枠体22を具備してなることが分かる。
【0046】
さらに正確に言うと、前部枠体22の後部に配置された中央枠体20は、好ましくはYZ平面内に配置されたクロスリブ28を介在させることによって下側桁材24および上側桁材26を組み立て一つに接合することにより形成される。桁材24および26は、その一部に関して、XY平面に沿って、あるいは当該平面に対して僅かに傾斜した平面にさえ沿って配置されている。実例として、そして図2から明らかであるように、上側桁材26はXY平面内に効果的に配置されており、一方、下側桁材24の前側部分は後方に行くにしたがって低くなるよう僅かに傾斜しており、そして下側桁材24の後側部分は後方に行くにしたがって高くなるよう僅かに傾斜している。この点に関して、後部マウント8が剛構造体10に組み付けられるのは、下側桁材24の前側部分と後側部分(両者はいずれもY方向に対して平行である)との間の接合部の高さにおいてである。
【0047】
下側桁材24および上側桁材26はそれぞれ単一部材として形成されてもよく、あるいはこれに代えて、互いに堅固に取り付けられた桁材のいくつかの部分のアセンブリからなっていてもよいことを強調しておく。
【0048】
さらに、中央枠体20は好ましくは、二つの側壁30,32によって両側で横方向に閉塞されるが、この側壁30,32のそれぞれは全体がXZ平面内で延在している。
【0049】
前部枠体22の上側部分は、中央枠体20の前方延長部分に配置されている。
【0050】
すなわち、実質的にZ方向に沿って延在する前部枠体22は前部桁材34および後部桁材36を有し、両者はいずれもY方向と平行であって、かつ好ましくはXY平面内に配置されるクロスリブ38を介在させることによって互いに連結されている。この点に関して、最も高い位置にあるクロスリブ38は中央枠体20の上側桁材26の前方端部から構成され、この前方端部はまた前部枠体22の上部を確実に閉塞していることに留意されたい。同様に、2番目に高い位置にあるクロスリブ38は、中央枠体20の下側桁材24の前方端部によって構成されている。
【0051】
好ましいことに前部枠体22は、中央枠体20の側面をも確実に閉塞している、二つの側壁30,32によって、両側で横方向に閉塞されている。
【0052】
このように、全体としてとらえた剛構造体10と同様、二つの側壁30,32はそれぞれ「L」字形の全体形状を有するが、このL字の基底部は実質的にZ方向に沿って配置されている。
【0053】
代替形態の取り付けストラット4の剛構造体10を示す図3からわかるように、前部枠体22は前方に行くにしたがってY方向に僅かに幅狭となるよう形成されてもよいことに留意されたい。さらに、前部桁材34は後方に向かって開いた概ね「C」字形の断面を有していてもよく、その場合、このC字形の二つのブランチは、それぞれ上側桁材26の二つの縁部と当接しかつそれと連続した状態で配置されるよう接合され、その幅狭な前部形状は当該二つの縁部のそれぞれを傾斜させることによって得ることができる。さらに、それゆえ、C字形のブランチのそれぞれはまた、やはり前部桁材34と側壁30,32との間の空力的連続性が得られるように、二つの側壁30,32の一方の延長部分に配置される。
【0054】
前部における、この種の狭くかつ丸みを帯びたレイアウトによって、ターボファンの環状ダクト14を通って流れるバイパスエアの擾乱は、有利なことには、かなりの程度低減される。
【0055】
ストラット4の剛構造体10に関して、図2から最も明瞭に分かるように、一方では、第1の前部マウント6aは好ましくは前部桁材34の上側部分(これはYZ平面内に配置されている)と一体であり、他方では、第2の前部マウント6bは好ましくは最も下方のクロスリブ38(これは前部枠体22の下部閉塞状態を確実なものとする)と一体であることに留意されたい。
【0056】
ここで、図4ないし図6を参照して、第1の前部マウント6a(これはもっぱらY方向に沿って作用する応力を受けることができる)について説明する。
【0057】
前部マウント6aはまず第1のブラケット40を有するが、これはいくつかの金属製部品のアセンブリから形成可能であり、それは前部枠体22の前部桁材34と、さらに大まかに言うとストラット4の剛構造体10と一体である。
【0058】
第1のブラケット40はジェットエンジン2の前後方向軸線5を通る仮想垂直面に関して対称性を有すると共に、特に、当該平面の両側にそれぞれ配置された2対のヘッド44を具備してなる。
【0059】
ヘッド44の各対は、上側ヘッド42aおよびZ方向に当該ヘッドから離間した下側ヘッド42bを具備してなるが、これら二つのヘッド42a,42bのそれぞれは二重であってもよく、それらはXY平面内に配置される。さらに、上側ヘッド42aはZ方向に沿って配置された貫通孔44aを有し、同様に、下側ヘッド42bはやはりZ方向に沿って配置されると共に孔44aと向き合うよう配置された貫通孔44bを有する。
【0060】
中間ブラケット46(これは好ましくは図6から分かるようにXY平面内で延在する概ね「V」字形状を備える)は、Z方向に沿ってそれぞれ配置された二つのボールジョイント軸48を介在させることによって、第1のブラケット40に対して連結されている。
【0061】
さらに正確に言うと、V字形中間ブラケット46の二つの端部のそれぞれは、二つのボールジョント軸48の一方によって、2対のヘッド44の一方に取り付けられており、必然的に当該軸は上記仮想面に関して対称に配置される。この点に関して、上記仮想面はまた中間ブラケット46に関しても対称面をなしていることを強調しておく。
【0062】
ゆえに、2対のヘッド44それぞれの高さにおいて、軸48は、上側ヘッド42aの孔44a、中間ブラケット46の関係する端部に形成された貫通孔50、そして最後に下側ヘッド42bの孔44bと連続的に交差している。さらに上述した貫通孔50は、図5から分かるように、軸48のボールジョイント52と協働するよう構成されている。
【0063】
このように、二つの軸48を設けたことにより、Z方向に沿って配置されると共に上記仮想垂直面に関して対称に配置された二つのボールジョイントリンケージを得ることが可能となることを理解されたい。
【0064】
中間ブラケット46を構成しているV字形の二つのブランチの結合部の高さにおいて、前部マウント6aは、X方向に沿って配置されると共にこの中間ブラケット46と一体となったスラグ56を具備してなり、このスラグ56は仮想垂直面と直径方向に沿って交差する。スラグ56と中間ブラケット46とから構成されるアセンブリは、それゆえ「Y」字形状を有し、その下側ブランチはX方向に沿って前方に向って配置されている。
【0065】
スラグ56は、ジェットエンジン2と一体となった第2のブラケット58に、X方向に遊びが存在するよう組み付けられており、さらに正確に言うと、ファンケーシング12の環状周縁部18の上側部分に組み付けられている。
【0066】
言い換えれば、スラグ56と第2のブラケット58との間に形成される機械的リンク機構は「モノボール」型のものであり、すなわちそれは、それ自身に関して、Y方向およびZ方向に沿って作用する応力を受け持つことを可能とし、その一方でX方向の遊びをもたらす。したがってスラグ56は、必要ならば、その中をスラグが通ると共に第2のブラケット58のヘッド60(YZ平面内に配置され、二重にされてもよい)に形成された孔(図示せず)に対して、X方向に極めて制限された状態でスライド可能である。
【0067】
それゆえ、X方向に沿った遊びを備えたモノボールリンク機構とZ方向に沿って配置された二つのボールジョイントとの組み合わせから、ジェットエンジン2のY方向に沿って作用する応力をもっぱら受けるための第1の前部マウント6aがもたらされる。
【0068】
単に実例としてしかも決して限定することなく今説明した航空機用のエンジンアセンブリ1に対して、さまざまな変更を施し得ることは当業者には明白である。この点に関して、特に、エンジンアセンブリ1を、それを航空機の翼の下に吊り下げるのに適した形態で示したが、このアセンブリ1はまたそれを翼の上に組み付けることを可能とするその他の形態とすることができる点にも留意すべきである。
【0069】
さらに、マウント6a,6b,8について、やはり、二つの前部マウント6a,6bがそれぞれ、少なくとも、ジェットエンジン(ターボシャフトエンジン)2のY方向に沿って作用する応力を確実に受けるよう構成されるならば、その他の構造を採用することも当然考えられる。実例として言うと、第2の前部マウント6bはX方向、Y方向およびZ方向の三つの方向に沿って作用する応力を確実に受けるよう構成でき、この場合には必然的に、後部マウント8は、ジェットエンジン(ターボジェット)のY方向およびZ方向に沿って作用する応力のみを確実に受け持ち、X方向に沿って作用する応力は受け持たないよう構成されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の好ましい実施形態による、航空機用エンジンアセンブリの斜視図である。
【図2】図1に示すエンジンアセンブリの側面図である。
【図3】図1および図2のエンジンアセンブリの平面図であり、取り付けストラットは代替形態のものである。
【図4】図1ないし図3のエンジンアセンブリの第1の前部エンジンマウントの拡大斜視図であり、これはジェットエンジンのファンケーシングと取り付けストラットの剛構造体との間に介在させられている。
【図5】図4に示す第1の前部エンジンマウントの側面図である。
【図6】図4および図5に示す第1の前部エンジンマウントの平面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 エンジンアセンブリ
2 ジェットエンジン
4 取り付けストラット
6a,6b,8 エンジンマウント
10 剛構造体
12 ファンケーシング
14 環状ダクト
16 噴射ケーシング
18 環状周縁部
20 中央枠体
22 前部枠体
24 下側桁材
26 上側桁材
28 クロスリブ
30,32 側壁
34 前部桁材
36 後部桁材
38 クロスリブ
40 第1のブラケット
42a 上側ヘッド
42b 下側ヘッド
44 ヘッド
44a,44b 貫通孔
46 中間ブラケット
48 ボールジョイント軸
50 貫通孔
52 ボールジョイント
56 スラグ
58 第2のブラケット
60 ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェットエンジン(2)と、
取り付けストラット(4)と、
前記取り付けストラット(4)と前記ジェットエンジン(2)との間に介在させられた複数のエンジンマウント(6a,6b,6c)と、を具備してなる航空機用のエンジンアセンブリ(1)であって、
前記複数のエンジンマウント(6a,6b,8)は、前記ジェットエンジン(2)の横方向(Y)に沿って作用する応力を確実に受けるよう、それぞれ構成された二つの前部マウント(6a,6b)を具備してなり、
前記二つの前部マウント(6a,6b)は、前記ジェットエンジン(2)の垂直方向(Z)に、互いに食い違い配置されており、
前記第1の前部マウント(6a)は、前記ジェットエンジン(2)の横方向(Y)に沿って作用する応力のみを確実に受けるよう構成されており、その一方で、前記第2の前部マウント(6b)は、横方向(Y)および垂直方向(Z)に沿って作用する応力のみを確実に受けるよう構成されていることを特徴とする航空機用エンジンアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記二つの前部マウント(6a,6b)は、
前記ジェットエンジン(2)のファンケーシング(12)の環状周縁部(18)と一体となった第1の前部マウント(6a)と、
前記ジェットエンジン(2)の噴射ケーシング(16)と一体となった第2の前部マウント(6b)と、からなることを特徴とする請求項1に記載の航空機用アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記複数のマウント(6a,6b,8)は、前記ジェットエンジン(2)の前後方向(X)に沿ってだけでなく、横方向(Y)および垂直方向(Z)に沿って作用する応力を確実に受けるよう構成された後部マウント(8)を、さらに具備してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の航空機用アセンブリ(1)。
【請求項4】
前記複数のエンジンマウント(6a,6b,8)のそれぞれは、前記ジェットエンジン(2)の前後方向軸線(5)および前記エンジンの垂直方向(Z)によって規定される平面と交差するようになっていることを特徴とする請求項3に記載の航空機用アセンブリ(1)。
【請求項5】
前記取り付けストラット(4)は、実質的に前記ジェットエンジン(2)の前後方向(X)に沿って延在する中央枠体(20)と、前記中央枠体(20)と一体であってかつ実質的に垂直方向(Z)に沿って延在する前部枠体(22)とを具備してなる剛構造体(10)からなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の航空機用アセンブリ(1)。
【請求項6】
前記二つの前部マウント(6a,6b)は、前記前部枠体(22)に、一方が他方の上方に位置するよう、一体的に取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載の航空機用アセンブリ(1)。
【請求項7】
前記ジェットエンジン(2)の横方向(Y)に沿って作用する応力のみを確実に受けるよう構成された前記第1の前部マウント(6a)は、
垂直方向(Z)に沿って平行に配置された二つのボールジョイント軸(48)を介在させることによって、前記取り付けストラット(4)と一体となった第1のブラケット(40)に組み付けられた中間ブラケット(46)と、
前記ジェットエンジン(2)の前後方向(X)に沿って配置されかつ前記中間ブラケット(46)と一体となったスラグ(56)と、を具備してなり、
前記スラグ(56)は、前記ジェットエンジン(2)と一体となった第2のブラケット(58)に、前後方向(X)に遊びが存在する状態で取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の航空機用アセンブリ(1)。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のエンジンアセンブリ(1)を少なくとも一つ具備してなることを特徴とする航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−509319(P2008−509319A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524381(P2007−524381)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050638
【国際公開番号】WO2006/021722
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)