説明

舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造、及びその連結方法

【課題】 隙間調整作業を容易に行うことができる舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造を提供する。
【解決手段】 シリンダブロック体連結構造1は、2つシリンダブロック2,2と2つ掃気管5,5と調整管ユニット10とを備えている。シリンダブロック2,2は、端面同士を互いにつき合わせて連結され、掃気管5が夫々固定されている。2つの掃気管5は、その間に調整管ユニット10が位置しており、この調整管ユニット10を挟んで締結されて連結されている。調整管ユニット10は、短管11を有している。短管11は、右側の掃気管5Rのフランジ8に固定され、左側の掃気管5Lのフランジ9との間に隙間Sをあけて配置されている。また、短管11の内周部には、可動フランジ14が左側の掃気管5Lに向かって突き出るように移動可能に設けられており、可動フランジ14が突き出ることで左側の掃気管5Lのフランジ9に付き合わされるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロック体の端面同士が互いにつき合わせて連結されていると共に、前記シリンダブロック体に固定されている掃気管同士が互いに連結されている舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造、及びその連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶大型ディーゼル機関は、全長及び全高が十数m〜数十mに及んでおり、運搬や組立等を考慮して主要構造部品をブロック毎に分けて製造して設置場所にてブロックを組合わせるような構造になっている。即ち、船舶大型ディーゼル機関は、シリンダブロック体分割型のディーゼル機関となっている。例えば、特許文献1に記載の舶用大型ディーゼル機関は、シリンダフレームと、掃気管とを備えている。シリンダフレームは、複数のシリンダブロック体によって構成され、これら複数のシリンダブロック体をフレームボックス上に直列的に並べることで構成されている。これら複数のシリンダブロック体は、その端面を隣接するシリンダブロック体の端面につき合せるように配置され、その端面同士が連結されている。また、各シリンダブロック体には、掃気管が設けられており、掃気管は、隣接する掃気管と開口端面同士をつき合わせるようにして連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−163912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような舶用大型ディーゼル機関は、シリンダブロック体の端面及び掃気管の開口端面の2箇所を結合面として有している。これらの結合面の間に隙間が形成されると耐振動性能及び掃気管内の圧力保持性能が低下するので、上述する2箇所の結合面をしっかりとつき合せることが重要である。そのため、シリンダブロック体及び掃気管は、隣接するシリンダブロック体の端面同士がつき合わさると同時に隣接する掃気管の開口端面同士もつき合わさるように設計されている。
【0005】
しかし、シリンダブロック体及び掃気管は、別体で構成され、且つ大型の構造部品であるので、各端面において補償できる位置精度に限度がある。それ故、フレームボックス上の所定位置に単に配置させてシリンダブロック体同士をつき合わせるだけでは、掃気管の開口端面の間に開口端面において必要なシール圧が得られなかったり、掃気管の開口端面の間に僅かな隙間が生じたりして、空気が漏れ出ることがある。そこで、隙間が生じないように、結合面同士の相対位置を予め測定し、結合面同士が当接するようにシリンダブロック体の位置を調整する隙間調整作業を事前に行っている。
【0006】
しかし、シリンダブロック体が大型構造物であるため、隙間調整作業には多くの時間がかかる上位置精度に限界がある。また、シリンダブロック体の位置の僅かなズレによって必要なシール圧が得られなかったり、前記僅かな隙間が生じたりして開口端面の間から空気が漏れ出ることがある。このように隙間調整作業は、非常に時間がかかり、且つ困難な作業である。
【0007】
そこで本発明は、隙間調整作業を容易に行うことができる舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造は、端面同士を互いにつき合わせて連結されるシリンダブロック体と、前記シリンダブロック体に個別に固定されている掃気管と、隣接する前記シリンダブロック体に夫々固定されている2つの掃気管の間に介在する調整管ユニットとを備え、前記2つの掃気管は、前記調整管ユニットを挟んで締結されて連結され、前記調整管ユニットは、前記2つの掃気管のうちの一方の前記掃気管の開口端部に固定され、他方の前記掃気管の開口端部との間に隙間をあけて配置されている調整管と、他方の前記掃気管の開口端部に向かって突き出るように移動可能に前記調整管の内周部に設けられ、突き出すことで前記他方の掃気管の開口端部につき合わされている隙間調整機構とを有するものである。
【0009】
本発明に従えば、2つの掃気管を調整管ユニットを介して強固に連結することができる、つまり2つの掃気管を剛結合することができる。これにより、2つの掃気管の間において機関振動が伝達されるようになるので、2つの掃気管が夫々別々に振動して振動過大となって損傷することを防ぐことができる。
【0010】
また、本発明では、調整管と他方の掃気管の開口端部との間に隙間ができるようになっているので、隙間調整機構を突き出ないように調整管内に入れておくことで端面同士を互いにつき合わせてシリンダブロック体を連結する際に調整管ユニットと他方の掃気管とが接触することを防ぐことができる。これにより、連結時に端面の位置合わせに集中することができ、位置合わせ作業を容易に行うことができる。
【0011】
更に、本発明では、シリンダブロック体の端面同士をつき合わせた後、隙間調整機構を他方の掃気管の開口端部に向かって突き出るように移動させて他方の掃気管の開口端部につき合わせることで、調整管と他方の掃気管の開口端部との間の隙間を埋めて2つの掃気管の間を封止することができる。即ち、シリンダブロック体及び排気管を含む構成全体でなく隙間調整機構だけを動かすだけで、調整管と他方の掃気管の開口端部との間の隙間を埋めて2つの掃気管の間を封止することができる。それ故、隙間調整機構を動かして調整管ユニットと他方の掃気管の開口端部とを突き合わせ、それらの間を封止する隙間調整作業を、容易に行うことができる。
【0012】
上記発明において、前記調整管ユニットは、前記一方の掃気管の開口端部に着脱可能に固定され、前記調整管ユニットは、シール部材によって前記隙間調整機構と前記調整管の内周部との間をシールしていることが好ましい。
【0013】
上記構成に従えば、隙間調整部材と調整管の内周部との間から掃気管内の流体が漏れることをシール部材によって防ぐことができる。また、シール部材が劣化したり損傷したりした場合、調整管を一方の掃気管から外し、更に調整管から隙間調整部材を外すことでシール部材を交換することができる。それ故、シール部材の交換を容易に行うことができる。
【0014】
上記発明において、前記隙間調整機構は、前記調整管の内周部にシールされた状態で設けられ、前記他方の掃気管の開口端部に向かって突き出るように移動可能であって、前記他方の掃気管の開口端部との間にガスケットが設けられて前記他方の掃気管につき合わされている可動部材と、前記他方の掃気管に向かって移動可能に前記調整管に設けられ、移動することで前記可動部材を前記他方の掃気管の開口端部に押付けるようになっている調整部材とを有することが好ましい。
【0015】
上記構成に従えば、調整部材を前進させることで、可動部材を他方の掃気管の開口端部に押付けることができ、ガスケットに必要なシール圧を確保することができる。このような簡単な作業でシール圧を確保することができるので、隙間調整作業を容易に行うことができる。
【0016】
上記発明において、前記可動部材は、円環状に形成され、前記調整部材は、前記可動部材の周方向において間隔をあけて複数設けられていることが好ましい。
【0017】
上記構成に従えば、調整部材の前進させる量を個別に調整することで他方の掃気管の開口端部の傾きに合わせて可動部材を傾斜させることができる。これにより、調整部材と他方の掃気管の開口端部との間に隙間ができすることを防ぐことができる。また、調整部材の押付力を個別に調整することもできるようになる。これにより、ガスケット全体に均一な押付力を作用させることができ、可動部材と他方の掃気管の開口端部との間のシール性を向上させることができる。
【0018】
上記発明の舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造の連結方法は、シリンダブロック体同士とが連結され、該シリンダブロック体に夫々設けられている掃気管同士が連結されている方法であって、2つの前記掃気管のうち一方の掃気管の開口端部に固定される調整管ユニットの調整管と他方の掃気管の開口端部とを間に隙間をあけつつ対向させ、且つ前記シリンダブロック体をその端面同士を互いにつき合わせて連結するシリンダブロック体連結工程と、前記調整管の内周部にシールされた状態で設けられた隙間調整機構を前記他方の掃気管に向かって突き出るように移動させて前記他方の掃気管の開口端部につき合わせる隙間調整工程と、前記2つの掃気管を前記調整管ユニットを介在させた状態で連結する連結工程とを有する方法である。
【0019】
上記構成に従えば、調整管と他方の掃気管の開口端部との間に隙間ができるようになっているので、端面同士を互いにつき合わせてシリンダブロック体を連結する際に調整管ユニットと他方の掃気管とが接触することを防ぐことができる。これにより、連結時に端面の位置合わせに集中することができ、シリンダブロック体の位置合わせ作業を容易に行うことができる。
【0020】
また、本発明では、端面同士をつき合わせた後、隙間調整機構を他方の前記掃気管の開口端部に向かって突き出るように移動させて他方の掃気管の開口端部につき合わせることで、調整管と他方の掃気管の開口端部との間に隙間を埋めて他方の掃気管の開口端部と隙間調整機構との間を封止することができる。即ち、シリンダブロック体及び排気管を含む構成全体でなく隙間調整機構だけを動かすだけで、調整管と他方の掃気管の開口端部との間に隙間を埋めて他方の掃気管の開口端部と隙間調整機構との間を封止することができる。それ故、隙間調整機構を動かして調整管ユニットと他方の掃気管の開口端部とを突き合わせ、それらの間を封止する隙間調整作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造及びシリンダブロック体連結方法における隙間調整作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るシリンダブロック体連結構造を示す斜視図である。
【図2】図1のシリンダブロック体連結構造における1つのブロックを取り出して示す斜視図である。
【図3】図2のシリンダブロック体連結構造の調整管ユニットを側方からみた側面図である。
【図4】調整管ユニットを図3に示す切断線A−Aで切断して拡大して見た部分断面図である。
【図5】調整管ユニットを図3に示す切断線B−Bで切断して拡大して見た部分断面図である。
【図6】シリンダブロック体同士、及び掃気管同士を夫々連結する際の連結方法の手順を示すフローチャートである。
【図7】掃気管と調整管ユニットとが隙間をあけて配置されている状態を示す断面図である。
【図8】可動フランジが掃気管につき合された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、前述する図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るシリンダブロック体連結構造1について説明する。なお、実施形態における上下左右前後等の方向の概念は、説明の便宜上使用するものであって、シリンダブロック体連結構造1に関して、それらの構成の配置及び向き等をその方向に限定することを示唆するものではない。また、以下に説明するシリンダブロック体連結構造1は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0024】
[シリンダブロック体連結構造]
船舶では、動力源として例えばディーゼル機関が用いられており、ディーゼル機関は、船舶の大きさや積載可能な重量に応じて構成されている。それ故、タンカーやコンテナ船などの大型の船舶では、全長及び全高が十数m〜数十mに及ぶ大型のディーゼル機関が採用されている。このような大型構造物であるディーゼル機関は、組み上がった状態で運搬したりまた船体に取付けたりすることは難しいので、複数の構造部材に分割されるようになっている。このような分割される構造として、例えば、シリンダブロック体連結構造1がある。以下では、ディーゼル機関に備わるシリンダブロック体連結構造1の構成について説明する。
【0025】
シリンダブロック体連結構造1は、図1に示すように複数のシリンダブロック体2,2を有しており、各シリンダブロック体2は、複数のシリンダ3を一体化して構成されており、左右方向に長尺の直方体状になっている。なお、本実施形態では、2つのシリンダブロック体2,2を有し、各シリンダブロック体2は、2つのシリンダ3によって構成されている。シリンダ3は、左右方向に一列に並んでおり、2つのシリンダブロック体2は、シリンダ3が左右方向に並ぶようにフレームボックス4上に左右方向に配置されている。
【0026】
シリンダ3内には、ピストン(図示せず)が上下方向に移動可能に設けられており、フレームボックス4内には、左右方向に延在するクランク軸(図示せず)が回転可能に支持されている。ピストンは、このクランク軸に設けられており、このピストンが上下方向に運動することでクランク軸が回転力を出力するようになっている。また、各シリンダブロック体2には、シリンダ3内に空気を充填するための掃気管5が設けられている。各掃気管5は、略同様の構成を有しており、以下では、一方の掃気管5だけを説明し他方の説明を省略する場合がある。
【0027】
掃気管5は、図2に示すように分岐部分6と、主管部分7とを有している。分岐部分6は、大略円管であり、シリンダ3毎に設けられている。分岐部分6は、シリンダ3の前面に固定され、シリンダ3の前端面に形成されるポート3bを介してシリンダ3内に連通している。この分岐部分6は、シリンダ3の前面から前方に突出するように延在しており、その前端部が主管部分7に連結されている。主管部分7は、左右方向に延在する大略円管であり、分岐部分6より大径になっている。分岐部分6は、その中が主管部分7内と連通するように主管部分7の周面に結合されている。これにより、主管部分7に導かれる空気が分岐部分6を通ってシリンダボア3aに充填されるようになっている。
【0028】
また、主管部分7の左右両端部の内周部分には、図4及び5に示すように大略円環状のフランジ8,9が夫々設けられている。フランジ8,9は、主管部分7の内周部に嵌まり込んでそこに溶接されて固定されている。フランジ8,9は、主管部分7の内周部から半径方向内方に突出する内向きフランジ部を構成しており、また掃気管5の左右の開口端部を構成している。
【0029】
このように構成されるシリンダブロック体連結構造1では、左側のシリンダブロック体2の右端面2aを右側のシリンダブロック体の左端面2bに対向させるようにして2つのシリンダブロック体2,2が一列に並べられている。互いに対向する左右の端面2a,2bは、互いにつき合わされており、この左右の端面2a,2bを基準にしてボルト等の締結部材(図示せず)によって2つのシリンダブロック体2,2が結合されている。他方、2つの掃気管5,5は、空間をあけて配置されており、この空間に調整管ユニット10を介在させて互いに連結されている。なお、以下では、説明の便宜上、左側に配置されている掃気管5の符号を5Lと称し、右側に配置されている掃気管5の符号を5Rと称する場合がある。
【0030】
調整管ユニット10は、短管11を有している。調整管である短管11は、軸線方向に短尺の管体12を有しており、その外周部には、掃気管5内の油などを抜くためのドレン12aが形成されている。また、管体12の右端部には、大略円環状の固定フランジ13が設けられている。固定フランジ13は、管体12の内周部に嵌まり込でそこに溶接されて固定されており、管体12の内周部から半径方向内方に突出する内向きフランジを構成している。この固定フランジ13は、右側の掃気管5Rの左端部にあるフランジ8に対向している。これら2つのフランジ8,13は、その間にガスケット31を介在させ、ボルト及びナットで構成される締結部材18によって複数個所で締結されている。
【0031】
また、固定フランジ13には、複数の貫通ねじ孔13aが形成されている。貫通ねじ孔13aは、固定フランジ13の軸線方向、つまり左右方向に固定フランジ13を貫通しており、周方向に間隔をあけて位置している。この貫通ねじ孔13aには、ジャッキボルト15が挿入されて螺合されている。調整部材であるジャッキボルト15は、左右方向に延びる大略筒状の部材であり、その左側部分が貫通ねじ孔13aより突出している。この左側部分の外周部は、左側面視で大略六角形に形成されており、この左側部分にスパナ等の工具を掛けて軸線周りに回転させることができるようになっている。ジャッキボルト15は、それを回転させるとジャッキボルト15の突出量xを調整することができるようになっており、その左端部で可動フランジ14を当接支持している。
【0032】
可動フランジ14は、大略円環状の部材であり、管体12の内周部に左右方向に移動可能に嵌まり込んでいる。可動フランジ14の外周部には、大略円環状のシール部材32、例えばOリングが設けられており、このシール部材32によって可動フランジ14と管体12との間が封止されている。このように構成される可動フランジ14は、ジャッキボルト15を回して突出させることで管体12の左端部から押し出されるようになっている。つまり、ジャッキボルト15を回すことで可動フランジ14の突出量を調整できるようになっており、可動フランジ14とジャッキボルト15とによって隙間調整機構16が構成されている。
【0033】
また、可動フランジ14は、左側の掃気管5Lの右端部にあるフランジ9に対向しており、その間にガスケット33を介在させた状態で複数本のボルト19によって締結されている。このボルト19は、締結部材18と左側面視で略同じ締結位置にて可動フランジ14とフランジ9とを締結している。そして、ジャッキボルト15は、これらの締結位置と左側面視で異なる箇所に位置している。
【0034】
各ジャッキボルト15は、内孔15aを有しており、可動フランジ14には、各ジャッキボルト15の内孔15aに対応する位置に連通孔14aがそれぞれ形成されている。また、フランジ9には、連通孔14aに連通する挿通孔9aが夫々形成され、フランジ8には、貫通ねじ孔13aに連通する挿通孔8aが夫々形成されている。これら挿通孔9a、連通孔14a、内孔15a、貫通ねじ孔13a及び挿通孔8aは、一直線上に並んで繋がっており、通し孔20を形成している。即ち、フランジ9、調整管ユニット10及びフランジ8には、複数の通し孔20がそれらを貫通するように形成されている。この通し孔20には、押しボルト21が夫々挿通されている。押しボルト21は、その基端側に頭部21aを有しており、この頭部21aがフランジ9から左側に突き出ている。押しボルト21の先端部は、フランジ8から右側に突き出ており、ナット22が螺合されている。ナット22を回すことでナット22がフランジ8に当接し、ナット22と押しボルト21の頭部21aとによってフランジ8,9が調整管ユニット10を介して締結されている。即ち、調整管ユニット10を介して2つの掃気管5,5が連結されている。
【0035】
また、可動フランジ14と固定フランジ13との間には、図5に示すように複数ヶ所の連結部材23が架設されている。この連結部材23は、大略板状の部材であり、その左右両端部に厚み方向に貫通する長孔23a,23bが形成されている。長孔は、左右方向に延在しており、そこにボルト23c,23dを通して可動フランジ14及び固定フランジ13に螺合することで連結部材23が可動フランジ14及び固定フランジ13に架設されるようになっている。これにより、可動フランジ14の左右方向の移動を許容しつつ、締付前に調整管ユニット10から可動フランジ14が外れて落ちることを防ぐことができる。
【0036】
このようにして構成されるシリンダブロック体連結構造1は、調整管ユニット10を間に挟んだ2つの掃気管5,5が調整管ユニット10を介して押しボルト21によって締結されているので、2つの掃気管5,5が強固に連結される、つまり2つの掃気管5,5が剛結合される。これにより、2つの掃気管5,5の間における機関振動が調整管ユニット10を介して伝達され、2つの掃気管5,5が夫々別々に振動して振動過大となって損傷することを防ぐことができる。
【0037】
[連結方法]
以下では、シリンダブロック体2,2同士を連結すると共に、掃気管5,5同士を連結する連結方法について、図6を参照しながら説明する。まず、連結される前のシリンダブロック体2,2及び掃気管5,5の状態について説明すると、シリンダブロック体2には、掃気管5が予め組みつけられ、右側の掃気管5Rの左端部には、調整管ユニット10がボルト18により締結されている。また、調整管ユニット10では、可動フランジ14が管体12から落ちないように連結部材23で固定フランジ13に固定され、ジャッキボルト15の突出量xを調整して可動フランジ14が管体12の左端から突き出ないようになっている(図7参照)。このような状態のシリンダブロック体2及び掃気管5が準備されると、連結方法が始まり、ステップS1に移行する。
【0038】
移動工程であるステップS1では、シリンダブロック体2をクレーン等で1つずつ吊り上げ、船体内の機関室に設けられているフレームボックス4上の所定位置に夫々移動させる。シリンダブロック体2を移動させると、ステップS2に移行する。位置調整工程であるステップS2では、左側のシリンダブロック体2の右端面2aと右側のシリンダブロック体2の左端面2bとが対向し且つそれらの間に隙間が空かないようにすべく2つのシリンダブロック体2,2の位置を微調整する。このような微調整を行なうことで、2つのシリンダブロック体2,2がフレームボックス4上に左右方向に一列に並べられる。この際、調整管ユニット10は、左側の掃気管5Lに隙間Sをあけて対向する(図7参照)。このように調整管ユニット10と左側の掃気管5Lとの間に隙間Sをあけておくことで、微調整する際に調整管ユニット10と左側の掃気管5Lとが接触することを防ぐことができる。これにより、連結時に端面2a,2bの位置合わせに集中することができ、位置合わせ作業を容易に行うことができる。前述するように2つのシリンダブロック体2,2が一列に並べられ、且つ調整管ユニット10と掃気管5とが隙間Sをあけて対向すると、ステップS3に移行する。
【0039】
第1連結工程であるステップS3では、端面同士がつき合わされた2つのシリンダブロック体2,2を締結して結合する。結合すると、ステップS4に移行する。隙間調整工程であるステップS4では、可動フランジ14を動かして調整管ユニット10と左側の掃気管5Lと間の隙間Sを埋める(図8参照)。具体的に説明すると、まず、フランジ9の可動フランジ14に対向する面にガスケット33を取付ける。なお、ガスケットを取付ける面は、可動フランジ14側であってもよい。そして、ジャッキボルト15を回して突き出させて可動フランジ14全体をフランジ9の方へと移動させ、可動フランジ14をガスケット33を介してフランジ9に押付ける。これにより、調整管ユニット10と左側の掃気管5Lと間の隙間Sを埋められ、且つガスケット33に必要なシール圧を与えることができるので、可動フランジ14とフランジ9との間が封止される。このように、シリンダブロック体2及び掃気管5を含む構成全体ではなく可動フランジ14だけを動かすことで、隙間Sを埋めて調整管ユニット10とフランジ9との間を封止することができる。それ故、可動フランジ14を動かして調整管ユニット10とフランジ9とを突き合わせ、それらの間を封止する隙間調整作業を容易に行うことができる。
【0040】
また、移動させる際、各箇所に配置されているジャッキボルト15の突出量xを個別に調整することで可動フランジ14の傾きをフランジ9の傾きに合わせることができ、可動フランジ14全体をフランジ9に押付けることができる。これにより、可動フランジ14とフランジ9との間に形成される隙間がなくすことができる。また、ジャッキボルト15の押付力を個別に調整することでフランジ9に対する可動フランジ14の押圧力が全領域において略均一にすることができ、ガスケットのシール性を向上させることができる。このような隙間調整が終了すると、ステップS5に移行する。
【0041】
締結工程であるステップS5では、可動フランジ14とフランジ9とを締結する。ここでは、可動フランジ14側からボルト19を挿入してフランジ9に螺合する。これにより、可動フランジ14とフランジ9とが仮止めされる。仮止めされると、ステップS6に移行する。
【0042】
第2連結工程であるステップS6では、押しボルト21によって2つの掃気管5,5を調整管ユニット10を介して連結する。押しボルト21は、フランジ9側から通し孔20に挿入され、頭部21aがフランジ9に当接するまで押込まれる。そうすることで押しボルト21の先端部がフランジ8から突き出る。突き出た先端部にナット22を螺合させ、このナット22と頭部21aとによってフランジ9、調整管ユニット10及びフランジ8を挟持する。全ての通し孔20に対して同様の作業を行うことで、調整管ユニット10を介して2つの掃気管5,5を結合される。これにより、シリンダブロック体連結構造1が組み上がり、シリンダブロック体2,2及び掃気管5,5の連結方法が終了する。
【0043】
<シール部材の交換>
シリンダブロック体連結構造1では、調整管ユニット10のシール部材32が劣化したり損傷したりした場合、シール部材32を交換することができるようになっている。具体的には、まず、押しボルト21からナット22を外し、落下防止の為の複数本(例えば、4本程度)のボルト21を除いて通し孔20から押しボルト21を抜く。次に、ジャッキボルト15を回し、ジャッキボルト15を固定フランジ13側へと隙間S分だけ後退させる。全てのジャッキボルト15を後退させた後、可動フランジ14とフランジ9とを締結するボルト19を外し、側面視で同じ位置に位置する締結部材18も外す。外されたボルト19及び締結部材18が挿入されていた孔に1本の送り用ボルト(図示せず)を挿入する。
【0044】
送り用ボルトは、可動フランジ14に螺合しており、全ての前記孔に送り用ボルトを挿入して全ての送り用ボルトを一斉に回すと、可動フランジ14が固定フランジ13の方へと引っ込むようになっている。全ての前記孔に送り用ボルトを挿入してからそれを回し、可動フランジ14全体を短管11内に引っ込める。引っ込めた後、送り用ボルトを前記孔から抜いて複数本のジャッキボルト15を更にねじ込むことで調整管ユニット10を右側の掃気管5Rから外す。次に右側の掃気管5Rから外した後、調整管ユニット10の短管11から可動フランジ14を外しシール部材32を交換する。このように、調整管ユニット10が右側の掃気管5Rから着脱可能になっているので、シール部材32の交換を容易に行なうことができる。
【0045】
<その他の構成>
本実施形態では、調整管ユニット10において短管11を採用しているが、短い管である必要はなく、その長さは問わない。また、可動フランジ14の位置をジャッキボルト15により調整しているが油圧シリンダ等のアクチュエータによって動かすようにしてもよい。
【0046】
本実施形態では、船舶のディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造1に適用されているが、必ずしもこのような構成に限定されない。プラント設備等に備わる掃気管が設けられたシリンダブロック体に適用してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、シリンダブロック体連結構造1が適用されるディーゼル機関の気筒数が4気筒であるが、4気筒に限らず、5気筒以上であってもよい。また、3つ以上のシリンダブロック体2を組合わせて構成する場合、掃気管5のうち左側に別の掃気管5が連結されるものに対して調整管ユニット10が取付けられる。これにより、3つ以上のシリンダブロック体2を連結することができるようになる。
【符号の説明】
【0048】
1 シリンダブロック体連結構造
2 シリンダブロック体
2a 右端面
2b 左端面
5 掃気管
8 フランジ
9 フランジ
10 調整管ユニット
11 短管
14 可動フランジ
15 ジャッキボルト
16 隙間調整機構
31 ガスケット
32 シール部材
33 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面同士を互いにつき合わせて連結されるシリンダブロック体と、
前記シリンダブロック体に個別に固定されている掃気管と、
隣接する前記シリンダブロック体に夫々固定されている2つの掃気管の間に介在する調整管ユニットとを備え、
前記2つの掃気管は、前記調整管ユニットを挟んで締結されて連結され、
前記調整管ユニットは、
前記2つの掃気管のうちの一方の前記掃気管の開口端部に固定され、他方の前記掃気管の開口端部との間に隙間をあけて配置されている調整管と、
他方の前記掃気管の開口端部に向かって突き出るように移動可能に前記調整管の内周部に設けられ、突き出すことで前記他方の掃気管の開口端部につき合わされている隙間調整機構とを有する、舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造。
【請求項2】
前記調整管ユニットは、前記一方の掃気管の開口端部に着脱可能に固定され、
前記調整管ユニットは、シール部材によって前記隙間調整機構と前記調整管の内周部との間をシールしている、請求項1に記載の舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造。
【請求項3】
前記隙間調整機構は、
前記調整管の内周部にシールされた状態で設けられ、前記他方の掃気管の開口端部に向かって突き出るように移動可能であって、前記他方の掃気管の開口端部との間にガスケットが設けられて前記他方の掃気管につき合わされている可動部材と、
前記他方の掃気管に向かって移動可能に前記調整管に設けられ、移動することで前記可動部材を前記他方の掃気管の開口端部に押付けるようになっている調整部材とを有する、請求項1又は2に記載の舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造。
【請求項4】
前記可動部材は、円環状に形成され、
前記調整部材は、前記可動部材の周方向において間隔あけて複数設けられている、請求項3に記載の舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造。
【請求項5】
シリンダブロック体同士とが連結され、該シリンダブロック体に夫々設けられている掃気管同士が連結されている舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造の連結方法であって、
2つの前記掃気管のうち一方の掃気管の開口端部に固定される調整管ユニットの調整管と他方の掃気管の開口端部とを間に隙間をあけつつ対向させ、且つ前記シリンダブロック体をその端面同士を互いにつき合わせて連結するシリンダブロック体連結工程と、
前記調整管の内周部にシールされた状態で設けられた隙間調整機構を前記他方の掃気管に向かって突き出るように移動させて前記他方の掃気管の開口端部につき合わせる隙間調整工程と、
前記2つの掃気管を前記調整管ユニットを介在させた状態で連結する連結工程とを有する、舶用ディーゼル機関のシリンダブロック体連結構造の連結方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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