説明

船型生成方法

【課題】 少ないパラメータを用いて人間の感覚に合うような形で船型を取り扱うことができる船型生成方法を提供する。
【解決手段】 生成したい船型の輪郭線を示す輪郭線データを作成するステップS13と、生成したい船型の形状の特徴を表す特徴曲線データを作成するステップS14と、生成したい船型の船体横断面におけるフレームラインを示すフレームラインデータを特徴曲線データに基づいて作成するステップS15と、輪郭線データとフレームラインデータとに基づいて、生成したい船型を示す船型データを生成するステップS16とを具備する。ここで、特徴曲線データは、変曲線と、頂線と、補助頂線と、変曲線、頂線及び補助頂線の曲線形状と、変曲線上の変曲点、頂線上の頂点及び補助頂線上の補助頂点の分布とを示すデータである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の初期計画における船型開発で用いられる船型生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の初期計画における主要目の検討は主として既存船のデータベースを用いて行われ、船型開発は主要目の類似した船型を出発点として行われている。一方、計算流体力学(CFD)によるシミュレーションを用いた計画及び設計では、主要目選定の段階から船型が定義されている必要があり、また、新型式船の計画時等では適当な母船型がない場合がある。このような場合には、船型の特徴を表現できる簡便な船型生成方法が有用である。
【0003】
しかしながら、線図生成に用いられているCADソフトの多くは、自由度の高いNURBS曲線により船型を表現しており、高い精度の線図を生成することができる反面、自由に動かせるコントロールポイントの数が多いため、簡便に新船型を生成することは難しいという問題がある。
【0004】
簡便に新船型を生成するためには、より少ないパラメータで船型の特徴を制御し、人間の感覚に合わせた船型の表現と操作を行う必要がある。下記の非特許文献1には、正弦関数と楕円を用いて船型を数式表示することにより、船型の特徴を少ないパラメータで表す方法が提案されている。
【非特許文献1】辻田他、「正弦関数と楕円による船型数式表示」、日本造船学会論文集、第174号、843頁から854頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、少ないパラメータを用いて人間の感覚に合うような形で船型を取り扱うことができる船型生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る船型生成方法は、生成したい船型の輪郭線を示す輪郭線データを作成するステップ(a)と、生成したい船型の形状の特徴を表す特徴曲線データを作成するステップ(b)であって、特徴曲線データが、変曲線と、頂線と、補助頂線と、変曲線、頂線及び補助頂線の曲線形状と、変曲線上の変曲点、頂線上の頂点及び補助頂線上の補助頂点の分布とを示すデータである、ステップ(b)と、生成したい船型の船体横断面におけるフレームラインを示すフレームラインデータを特徴曲線データに基づいて作成するステップ(c)と、輪郭線データとフレームラインデータとに基づいて、生成したい船型を示す船型データを生成するステップ(d)とを具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下に示すような効果が得られる。
(1)輪郭線と特徴曲線とで船型を表現するので、少ないパラメータを用いて人間の感覚に合うような形で船型を取り扱うことができる。
(2)輪郭線と特徴曲線とを用いて船型を表現するので、簡潔に船型を表現することができる。
(3)特徴曲線を制御して船型の変形を行うので、滑らかな曲面を持つ船型を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
本発明の第1の実施形態に係る船型生成方法は、船の形状を点列で表したオフセットデータや船の表面形状を表したサーフェースデータ等の母船型データが格納された母船型データベースを利用して船型を生成するときに用いられるものである。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係る船型生成方法においては、生成したい船型の要目データが入力される(ステップS11)。ここで、入力される要目データは、例えば、船の全長、垂線間長、型幅、型深さ、計画喫水、Cb(方形係数)及びLcb(浮心位置)等に関するデータである。
【0010】
続いて、各種の母船型データが格納された母船型データベースから、生成したい船型に似た形状及び要目の船型を示す母船型データが選出される(ステップS12)。その後、船体形状は船体の輪郭と船体表面の凹凸とにより構成されていると考え、船体の輪郭を示す輪郭線と、船体表面の凹凸を表すパラメータである特徴曲線とで船型を表現するために、選出された母船型データに基づいて、以下のようにして輪郭線データ及び特徴曲線データが作成される。
【0011】
例えば、ステップS12で選出される母船型データがオフセットデータである場合には、このオフセットデータに基づいて、生成したい船型の外枠を決定する輪郭線を抽出して、抽出した輪郭線を示す輪郭線データが作成される(ステップS13)。輪郭線データは、例えば、図2に示すようなフォアプロファイルライン、デッキサイドライン、サイドフラットライン、ボトムフラットライン、トランサムエンドライン及びアフトプロファイルラインを示すデータである。
【0012】
また、上記のオフセットデータに基づいて、作成したい船型の形状の特徴を表す特徴曲線を以下のようにして抽出して、抽出した特徴曲線を示す特徴曲線データが作成される(ステップS14)。特徴曲線は、船体表面の凹凸の特徴を抽出した線であり、以下のようにそれぞれ定義される変曲線、頂線及び補助頂線からなる。
【0013】
(1)変曲線
船型の断面であるフレームラインFLをオフセットデータに基づいて抽出した後、抽出したフレームラインFLの曲率を求め、図3に示す3つの変曲点A1〜A3を抽出する。このようにして複数のフレームラインについて抽出した変曲点のうちの、異なるフレームライン上の対応する変曲点を船体の全長方向に沿って結んだ線を「変曲線」と定義する。したがって、変曲線は、船体表面の曲率の方向が変化する線に該当する。
【0014】
(2)頂線
オフセットデータに基づいて抽出したフレームラインFL上の隣接する2つの変曲点により区分される曲線上で、この2つの変曲点を結んだ線分からの距離が最大となる点である頂点を抽出する。図3に示す例では、フレームラインFL上の隣接する2つの変曲点A1及びA2により区分される曲線上で、この2つの変曲点A1及びA2を結んだ線分A1A2からの距離が最大となる点である頂点B1と、フレームラインFL上の隣接する2つの変曲点A2及びA3により区分される曲線上で、この2つの変曲点A2及びA3を結んだ線分A2A3からの距離が最大となる点である頂点B2とを抽出する。このようにして複数のフレームラインについて抽出した頂点のうちの、異なるフレームライン上の対応する頂点を船体の全長方向に沿って結んだ線を「頂線」と定義する。したがって、頂線は、船体表面の凸部では山の稜線に該当し、船体表面の凹部では谷底の連なりを示す線に該当する。
【0015】
(3)補助頂線
オフセットデータに基づいて抽出したフレームラインFL上の隣接する変曲点及び頂点を結ぶ曲線上で、この変曲点及びこの頂点を結んだ線分からの距離が最大となる点である補助頂点を抽出する。図3に示す例では、フレームラインFL上の隣接する変曲点A1及び頂点B1を結ぶ曲線上で、変曲点A1及び頂点B1を結んだ線分A1B1からの距離が最大となる点である補助頂点C1と、フレームラインFL上の隣接する変曲点A2及び頂点B1を結ぶ曲線上で、変曲点A2及び頂点B1を結んだ線分A2B1からの距離が最大となる点である補助頂点C2と、フレームラインFL上の隣接する変曲点A2及び頂点B2を結ぶ曲線上で、変曲点A2及び頂点B2を結んだ線分A2B2からの距離が最大となる点である補助頂点C3と、フレームラインFL上の隣接する変曲点A3及び頂点B2を結ぶ曲線上で、変曲点A3及び頂点B2を結んだ線分A3B2からの距離が最大となる点である補助頂点C4とを抽出する。このようにして複数のフレームラインについて抽出した補助頂点のうちの、異なるフレームライン上の対応する補助頂点を船体の全長方向に沿って結んだ線を「補助頂線」と定義する。
【0016】
特徴曲線データは、このように定義される変曲線、頂線、補助頂線、特徴曲線(変曲線、頂線及び補助頂線)の曲線形状、及び特徴点(変曲点、頂点及び補助頂点)の分布を示すデータである。
【0017】
続いて、オフセットデータから抽出したフレームライン上の隣接する2つの変曲点の間にある頂点及び補助頂点を3次スプライン補間して、この抽出したフレームラインを表現し直して、表現し直したフレームラインを示すフレームラインデータを作成する(ステップS15)。このとき、頂点における曲線の傾きが、隣接する2つの変曲点を結ぶ線分の傾きと同じになる条件を課すことにより、この頂点が新たなフレームライン上でも頂点となるようにする
【0018】
例えば、図3に示すフレームラインFLについては、隣接する2つの変曲点A1及びA2の間にある頂点B1と2つの補助頂点C1及びC2とを3次スプライン補間して得られる曲線と、隣接する2つの変曲点A2及びA3の間にある頂点B2と2つの補助頂点C3及びC4とを3次スプライン補間して得られる曲線とを結んだ曲線で表現し直して、新たなフレームラインとする。このとき、頂点B1における曲線の傾きが、隣接する2つの変曲点A1及びA2を結ぶ線分A1A2の傾きと同じになる条件を課すことにより、頂点B1が新たなフレームライン上でも頂点となるようにするとともに、頂点B2における曲線の傾きが、隣接する2つの変曲点A2及びA3を結ぶ線分A2A3の傾きと同じになる条件を課すことにより、頂点B2が新たなフレームライン上でも頂点となるようにする。
【0019】
続いて、輪郭線データとフレームラインデータとに基づいて、輪郭線、フレームライン、変曲線、頂線、変曲点、頂点及び補助頂点を用いて表現された、生成したい船型の元となる船型データが生成される(ステップS16)。
【0020】
図4に、このようにして生成された船型の一例を示す。この例に示すように、本実施形態による船型生成方法によれば、輪郭線、フレームライン、変曲線、頂線、変曲点、頂点及び補助頂点を用いて船型を表現することができるため、船型を表現するためのパラメータの数を少なくすることができる。
【0021】
続いて、生成した船型データに基づいてハイドロ計算を行ってハイドロデータを得た後(ステップS17)、このハイドロデータで示される船型の要目(排水量、浸水面積、Cb、Lcb、メタセンタ高さ、Cp(柱形係数)カーブ等)及びこのハイドロデータでは示されない船型の要目(全長、垂線間長、型幅、型深さ)を、ステップS11において入力された要目と比較し、両者が一致するように輪郭線、特徴曲線及び特徴点の分布を制御して、船型を変形する(ステップS18)。このとき、輪郭線、特徴曲線及び特徴点の分布の制御は、手動で行っても良いし、最適化プログラムを用いて行っても良い。
【0022】
ここで、特徴曲線の制御による船型の変形は、最初に特徴曲線を変形させ、次にフレームラインを特徴点の移動に合わせて変形させることにより行う。このとき、変形後の船体形状が滑らかになるように、特徴曲線の滑らかさを維持する必要がある。そのために、例えば、頂線を移動して船型の変形を行う場合には、以下のようにして複数の頂点を移動することにより頂線を移動する。
【0023】
図5に示すように、元の頂線上の移動させない2つの頂点B11及びB20を端点E1及びE2として選出した後、端点E1及びE2の間にある任意の頂点B16を新しい頂線上の頂点B16’に移動する。その後、他の頂点B12〜C15及びB17〜C19を次のようにして移動する。頂点B17については、2つの端点E1及びE2を結んだ線分E1E2上に頂点B16及びB17を投影した点を、投影点F16及びF17とする。投影点F16及び端点E2間の距離L1と投影点F17及び端点E2間の距離L2との比L2/L1を求める。次式に示すように、頂点B17の移動ベクトルが頂点B16の移動ベクトルに比L2/L1を掛けた値となるように、頂点B17を移動する。
(頂点B17の移動ベクトル)=(頂点B16の移動ベクトル)×(L2/L1)
他の頂点B12〜C15及びB18、C19も同様にして移動することにより、端点E1及びE2を固定しつつ、頂線の滑らかさと頂点の間隔の変化の滑らかさとを維持しながら頂線を移動して、船型の変形を行うことができる。
【0024】
また、フレームライン上で頂点を移動して船型の変形を行う場合には、頂点を移動するとともに、隣接する2つの変曲点との位置関係を維持して補助頂点を移動する。例えば、図6に示すように、隣接する2つの変曲点A21及びA22を結ぶ変形前のフレームライン上にある頂点B21を、頂線の変形に伴う変形後のフレームライン上の新たな頂点B21’に移動する。その後、変形前のフレームライン上において頂点B21に隣接する2つの補助頂点C21及びC22を、以下のようにして変形後のフレームライン上の新たな補助頂点C21’及びC22’に移動する。
【0025】
補助頂点C22の線分A21A22と平行な方向への移動に関しては、2つの変曲点A21及びA22を結んだ線分A21A22に、頂点B21、新たな頂点B21’、補助頂点C22及び新たな補助頂点C22’を投影した点をそれぞれ、頂点投影点G21、新頂点投影点G21’、補助頂点投影点H22及び新補助頂点投影点H22’とする。(1)式に示すように、新補助頂点投影点H22’及び変曲点A22間の距離L1と新頂点投影点G21’及び変曲点A22間の距離L3との比L1/L3が、補助頂点投影点H22及び変曲点A22間の距離L2と頂点投影点G21及び変曲点A22間の距離L4との比L2/L4と等しくなるように、線分A21A22と平行な方向に補助頂点C22を移動する。
L1/L3=L2/L4 (1)
また、補助頂点C22の線分A21A22と垂直な方向への移動に関しては、(2)式に示すように、新たな補助頂点C22’及び線分A21A22間の距離L1’と新たな頂点B21’及び線分A21A22間の距離L3’との比L1’/L3’が、補助頂点C22及び線分A21A22間の距離L2’と頂点B21及び線分A21A22間の距離L4’との比L2’/L4’と等しくなるように、線分A21A22と垂直な方向に補助頂点C22を移動する。
L1’/L3’=L2’/L4’ (2)
補助頂点C21も同様にして移動することにより、フレームラインの滑らかさを維持しながらフレームラインを移動して、船型の変形を行うことができる。
【0026】
さらに、特徴曲線上の特徴点(変曲点、頂点及び補助頂点)の間隔の比は特徴曲線上における船体表面の勾配を表しているので、この間隔を詰めることにより勾配を急にし、また、この間隔を広げることにより勾配を緩やかにすることができる。したがって、特徴曲線上の特徴点の分布を変えることにより勾配を変えて、船型を変形する。
【0027】
図7に、ステップS17において生成された船型データ(図4参照)に対して、以上のようにして船首尾の頂線を制御して、船首部の容積を増し、船尾部の容積を減らす操作を行い、Cbをほぼ一定に保ったまま、Lcbが前方にくるように船型を変形した一例を示す。変形前のCb及びLcbは0.591及び1.47%Lpp(Aft)であるのに対して、変形後のCb及びLcbは0.591及び1.18%Lpp(Aft)である。
【0028】
また、図8の(a)に、変形前の船型の船体表面をバトックラインで表した一例を示し、図8の(b)に、変形後の船型の船体表面をバトックラインで表した一例を示す。この図より、特徴曲線を適切に制御することにより、変形後の船体表面が滑らかな曲面となっていることが分かる。
【0029】
以上のようにして、入力した要目に合致するように変形した船型が完成すると、この完成した船型を示す船型データ及びこの完成した船型のハイドロデータが出力される(ステップS19)。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態に係る船型生成方法について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。本実施形態に係る船型生成方法は、母船型データが格納された母船型データベースと、Cpカーブデータ、輪郭線データ、船体横断面データ及び特徴曲線データがそれぞれ格納されたデータベースとを備えておらず、輪郭線等をカーブエディタでスクラッチするときに用いられるものである。
【0031】
本実施形態に係る船型生成方法では、生成したい船型の要目データが入力される(ステップS21)。その後、カーブエディタを用いて、生成したい船型に適切であると思われるCpカーブを示すCpカーブデータを作成して、Cpカーブを設定する(ステップS22)。また、カーブエディタを用いて、生成したい船型の形状の輪郭線を示す輪郭線データを作成して、生成したい船型の外枠を示す輪郭線を設定する(ステップS23)。さらに、カーブエディタを用いて、生成したい船型の形状の船体横断面データを作成して、生成したい船型の船首、船尾及び船体中央部等の主要な横断面形状を示す船体横断面を設定する(ステップS24)。さらにまた、カーブエディタを用いて、生成したい船型の形状の特徴を表す特徴曲線を示す特徴曲線データを作成するとともに、生成したい船型の特徴に合うように特徴点の分布を決定して、生成したい船型の起伏を示す特徴曲線を設定する(ステップS25)。
【0032】
続いて、船体横断面データ及び特徴曲線データに基づいて、船体横断面におけるフレームラインを示すフレームラインデータを作成する(ステップS26)。このとき、フレームラインデータは、上述した第1の実施形態による船型生成方法と同様にして作成される。
【0033】
続いて、輪郭線データとフレームラインデータとに基づいて、生成したい船型の元になる船型データが生成される(ステップS27)。
【0034】
続いて、生成した船型データを用いてハイドロ計算を行ってハイドロデータを得た後(ステップS28)、このハイドロデータで示される船型の要目(排水量、浸水面積、Cb、Lcb、メタセンタ高さ、Cpカーブ等)及びこのハイドロデータでは示されない船型の要目(全長、垂線間長、型幅、型深さ)を、ステップS21において入力された要目と比較し、両者が一致するように輪郭線、特徴曲線及び特徴点の分布を制御して、船型を変形する(ステップS29)。このとき、輪郭線、特徴曲線及び特徴点の分布の制御は、手動で行っても良いし、最適化プログラムを用いて行っても良い。また、特徴曲線の制御による船型の変形は、上述した第1の実施形態による船型生成方法と同様にして行われる。
【0035】
以上のようにして、入力した要目に合致するように変形した船型が完成すると、この完成した船型を示す船型データ及びこの完成した船型のハイドロデータが出力される(ステップS30)。
【0036】
次に、本発明の第3の実施形態に係る船型生成方法について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。本実施形態に係る船型生成方法は、母船型データが格納された母船型データベースは備えていないが、Cpカーブデータ、輪郭線データ、船体横断面データ及び特徴曲線データがそれぞれ格納されたデータベースを備えているときに用いられるものである。
【0037】
本実施形態に係る船型生成方法では、生成したい船型の要目データが入力される(ステップS31)。その後、各種のCpカーブデータが格納されたCpカーブデータベースから、生成したい船型に最も適切である思われるCpカーブを示すCpカーブデータを選定して、Cpカーブを設定する(ステップS32)。このとき、入力された要目データを参照してCpカーブデータを修正する必要があると判断した場合には、カーブエディタを用いてこの選定したCpカーブデータを修正する。
【0038】
続いて、各種の輪郭線データが格納された輪郭線データベースから、生成したい船型の輪郭線に似た輪郭線データを選定して、生成したい船型の外枠を示す輪郭線を設定する(ステップS33)。このとき、入力された要目データを参照して輪郭線を修正する必要があると判断した場合には、カーブエディタを用いてこの選定した輪郭線データを修正する。
【0039】
続いて、各種の船体横断面データが格納された船体横断面データベースから、生成したい船型の船体横断面に似た船体横断面データを選定して、生成したい船型の船首、船尾及び船体中央部等の主要な横断面形状を示す船体横断面を設定する(ステップS34)。このとき、入力された要目データを参照して船体横断面を修正する必要があると判断した場合には、カーブエディタを用いてこの選定した船体横断面データを修正する。
【0040】
続いて、各種の特徴曲線データが格納された特徴曲線データベースから、生成したい船型に似た形状の特徴を表した特徴曲線データを選定するとともに、生成したい船型の特徴に合うように特徴点の分布を決定して、生成したい船型の起伏を示す特徴曲線を設定する(ステップS35)。ここで、特徴曲線データベースに格納されている特徴曲線データは、上述した第1の実施形態による船型生成方法と同様にして予め作成されたものである。また、入力された要目データを参照して特徴曲線を修正する必要があると判断した場合には、カーブエディタを用いてこの選定した特徴曲線データを修正する。
【0041】
続いて、船体横断面データ及び特徴曲線データに基づいて、船体横断面におけるフレームラインを示すフレームラインデータを作成する(ステップS36)。このとき、フレームラインデータは、上述した第1の実施形態による船型生成方法と同様にして作成される。
【0042】
続いて、輪郭線データとフレームラインデータとに基づいて、生成したい船型の元になる船型データが生成される(ステップS37)。
【0043】
続いて、生成した船型データを用いてハイドロ計算を行ってハイドロデータを得た後(ステップS38)、このハイドロデータで示される船型の要目(排水量、浸水面積、Cb、Lcb、メタセンタ高さ、Cpカーブ等)及びこのハイドロデータでは示されない船型の要目(全長、垂線間長、型幅、型深さ)を、ステップS31において入力された要目と比較し、両者が一致するように輪郭線、特徴曲線及び特徴点の分布を制御して、船型を変形する(ステップS39)。このとき、輪郭線、特徴曲線及び特徴点の分布の制御は、手動で行っても良いし、最適化プログラムを用いて行っても良い。また、特徴曲線の制御による船型の変形は、上述した第1の実施形態による船型生成方法と同様にして行われる。
【0044】
以上のようにして、入力した要目に合致するように変形した船型が完成すると、この完成した船型を示す船型データ及びこの完成した船型のハイドロデータが出力される(ステップS40)。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、船舶の初期計画における船型開発に用いられる船型生成方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る船型生成方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】船体の輪郭線及び特徴曲線を説明するための図である。
【図3】フレームラインの特徴点を説明するための図である。
【図4】生成された船型の一例を示す図である。
【図5】頂線を移動して船型の変形を行う場合の一例を示す図である。
【図6】フレームライン上で頂点を移動して船型の変形を行う場合の一例を示す図である。
【図7】変形後の船型の一例を示す図である。
【図8】変形前後の船型の船体表面をバトックラインで表した一例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る船型生成方法を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る船型生成方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
S11〜S19、S21〜S30、S31〜S40 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成したい船型の輪郭線を示す輪郭線データを作成するステップ(a)と、
生成したい船型の形状の特徴を表す特徴曲線データを作成するステップ(b)であって、特徴曲線データが、変曲線と、頂線と、補助頂線と、変曲線、頂線及び補助頂線の曲線形状と、変曲線上の変曲点、頂線上の頂点及び補助頂線上の補助頂点の分布とを示すデータである、ステップ(b)と、
生成したい船型の船体横断面におけるフレームラインを示すフレームラインデータを特徴曲線データに基づいて作成するステップ(c)と、
輪郭線データとフレームラインデータとに基づいて、生成したい船型を示す船型データを生成するステップ(d)と、
を具備する船型生成方法。
【請求項2】
前記フレームラインが、少なくとも、2つの変曲点と、2つの変曲点間の頂点と、2つの変曲点の一方と頂点との間の補助頂点と、2つの変曲点の他方と頂点との間の他の補助頂点とで表現される、請求項1記載の船型生成方法。
【請求項3】
前記フレームラインデータが、母船型データから抽出したフレームライン上の隣接する2つの変曲点の間にある頂点及び補助頂点を、頂点における曲線の傾きが2つの変曲点を結ぶ線分の傾きと同じになるように3次スプライン補間して、前記抽出したフレームラインを表現し直して作成される、請求項1又は2記載の船型生成方法。
【請求項4】
頂線を変形させた後、頂線の変形に伴う頂点及び補助頂点の移動に合わせてフレームラインを変形させて、ステップ(d)で生成された船型データが示す船型を変形するステップ(e)を更に具備する請求項1〜3いずれかに記載の船型生成方法。
【請求項5】
ステップ(e)が、
頂線上の移動させない第1及び第2の頂点をそれぞれ、第1及び第2の端点とし、
第1及び第2の端点間にある第3の頂点を変形後の頂線上の対応する頂点に移動し、
第3の頂点と、第1及び第2の端点間にある第4の頂点とを、第1及び第2の端点を結んだ線分上に投影した点をそれぞれ、第1及び第2の投影点とし、
第1の投影点及び第2の端点間の距離と第2の投影点及び第2の端点間の距離との比を求め、
第4の頂点の移動ベクトルが第3の頂点の移動ベクトルに前記比を掛けた値となるように第4の頂点を移動して、頂線を変形することを含む、
請求項4記載の船型生成方法。
【請求項6】
ステップ(e)が、
フレームライン上の隣接する第1及び第2の変曲点間にある頂点を、頂線の変形に伴う変形後のフレームライン上の新たな頂点に移動し、
第1及び第2の変曲点を結んだ線分に、頂点、新たな頂点、頂点に隣接する補助頂点、及び補助頂点を変形後のフレームライン上に移動したときの新たな補助頂点を投影した点をそれぞれ、頂点投影点、新頂点投影点、補助頂点投影点及び新補助頂点投影点としたときに、新補助頂点投影点及び第1の変曲点間の距離と新頂点投影点及び第1の変曲点間の距離との比が、補助頂点投影点及び第1の変曲点間の距離と頂点投影点及び第1の変曲点間の距離との比と等しくなるように、前記線分と平行な方向に補助頂点を移動し、また、新たな補助頂点及び前記線分間の距離と新たな頂点及び前記線分間の距離との比が、補助頂点及び前記線分間の距離と頂点及び前記線分間の距離との比と等しくなるように、前記線分と垂直な方向に補助頂点を移動して、フレームラインを変形することを含む、
請求項4又は5記載の船型生成方法。
【請求項7】
変曲線上の変曲点、頂線上の頂点及び補助頂線上の補助頂点の分布を変えて、ステップ(d)で生成された船型データが示す船型を変形するステップ(f)を更に具備する請求項1〜6いずれかに記載の船型生成方法。
【請求項8】
ステップ(a)が、カーブエディタを用いて輪郭線データを作成することを含み、
ステップ(b)が、カーブエディタを用いて特徴曲線データを作成することを含む、
請求項1〜7いずれかに記載の船型生成方法。
【請求項9】
ステップ(a)が、各種の輪郭線データが格納された輪郭線データベースから輪郭線データを選定することを含み、
ステップ(b)が、各種の特徴曲線データが格納された特徴曲線データベースから特徴曲線データを選定することを含む、
請求項1〜7いずれかに記載の船型生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−79247(P2006−79247A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260809(P2004−260809)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】