説明

船外機

【課題】簡単な構造で、燃料ポンプを断熱でき、しかも耐久性を向上することが可能である。
【解決手段】
カウル3内のエンジンルーム15に設置されるエンジン10に燃料を供給する燃料配管と、燃料配管の途中に配置される燃料ポンプを備え、燃料ポンプの駆動により燃料が燃料配管を通って船体側からエンジン10に供給される船外機1において、燃料ポンプを密閉容器58に収納し、密閉容器58をエンジンルーム15の底部に配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンに燃料を供給する燃料供給装置を備える船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機には船体側から燃料を燃料ポンプの駆動によりエンジに供給する燃料供給装置が備えられ、この燃料供給装置では、燃料タンクの燃料をエンジンに供給する燃料ポンプがカウル内に設けられており、カウル内の温度上昇により燃料ポンプが加熱して燃料が蒸散することを防ぐために、燃料ポンプに断熱材を巻いた構造が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11-91689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、船外機では波を被った時などにカウル内のエンジンルーム内に海水が浸入して底部に滞留することがあり、特許文献1の構造であると断熱材の隙間から燃料ポンプに海水がかかり腐食や固着を招く虞がある。また、断熱材そのものも劣化しやすくなる虞がある。
【0004】
この発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、燃料ポンプを断熱でき、しかも耐久性を向上することが可能な船外機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、
カウル内のエンジンルームに設置されるエンジンに燃料を供給する燃料配管と、前記燃料配管の途中に配置される燃料ポンプを備え、前記燃料ポンプの駆動により燃料が前記燃料配管を通って船体側から前記エンジンに供給される船外機において、
前記燃料ポンプを密閉容器に収納し、
前記密閉容器を前記エンジンルームの底部に配置したことを特徴とする船外機である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、
前記密閉容器は、前記カウル内において、前記エンジンのクランク軸に対してシリンダヘッドとは逆側に設置されることを特徴とする請求項1に記載の船外機である。
【0007】
請求項3に記載の発明は、
前記密閉容器は、前記カウル内において、少なくとも一部が前記エンジンのクランクケースよりも前方に設置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船外機である。
【0008】
請求項4に記載の発明は、
前記燃料ポンプは、略水平に設置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の船外機である。
【0009】
請求項5に記載の発明は、
前記燃料ポンプは、燃料を吐出する吐出口が船外機略後方に向くように配置することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の船外機である。
【0010】
請求項6に記載の発明は、
前記燃料ポンプは、電動ポンプであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の船外機である。
【0011】
請求項7に記載の発明は、
前記燃料ポンプは、燃料タンクからべ一パセパレータに燃料を送る1次ポンプであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の船外機である。
【0012】
請求項8に記載の発明は、
前記密閉容器には、少なくとも燃料の異物を除去するフィルタと、前記燃料配管内の圧力を一定に保つレギュレータが収納されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の船外機である。
【発明の効果】
【0013】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0014】
請求項1に記載の発明では、燃料ポンプを密閉容器に収納し、密閉容器をエンジンルームの底部に配置したから、エンジンルーム内に水が浸入して滞留したとしても、燃料ポンプは水に濡れることはなく、燃料ポンプが海水により腐食したり固着することを防ぐことができる。また、密閉容器によりエンジンの熱が燃料ポンプに伝わりにくくなり、燃料ポンプが加熱されることを抑制できる。また、エンジンルーム内では、エンジンの吸気取り入れ口に向かってエンジンにより加熱された空気も流れるが、その流れの影響を受けない位置であるから燃料ポンプが加熱されることを抑制できる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、密閉容器が、カウル内において、エンジンのクランク軸に対してシリンダヘッドとは逆側に設置され、密閉容器を排気側から離間させられるので、密閉容器を効率よく冷却できる。
【0016】
請求項3に記載の発明では、密閉容器は、カウル内において、少なくとも一部がエンジンのクランクケースよりも前方に設置され、作業者が船体側からカウルをはずして密閉容器を装着しやすく、組立が簡単となり、密閉容器の交換やメンテナンス作業も向上する。
【0017】
請求項4に記載の発明では、燃料ポンプを略水平とすることで、燃料ポンプ全体が低位置となり、燃料ポンプが加熱されることをさらに抑制できる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、燃料ポンプの燃料を吐出する吐出口が船外機略後方に向くように配置することで、船舶の係留時など船外機をチルトアップした時に、吐出口が高い位置になって燃料ポンプ内に蒸散ガスが滞留しないから、チルトアップ放置時の燃料戻りを軽減できる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、燃料ポンプは、電動ポンプであり、エンジンの動力を利用する必要がなくなるので、燃料ポンプのレイアウトの自由度が向上する。
【0020】
請求項7に記載の発明では、燃料ポンプが燃料タンクからべ一パセパレータに燃料を送る1次ポンプであり、1次ポンプは、船体側の燃料タンクとべ一パセパレータの間にあればよいので、レイアウトの自由度が向上する。
【0021】
請求項8に記載の発明では、密閉容器には、少なくともフィルタとレギュレータが収納されることで、燃料ポンプとフィルタとレギュレータの温度上昇を抑制できる。また、
周辺部品であるフィルタとレギュレータを1つの密閉容器に収納することで、燃料ポンプとフィルタとレギュレータを1ユニットとしてサブ組みすることができ、組立工数が減る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の船外機の実施の形態について説明するが、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。この実施の形態では、船外機の前側を船体側とし、船外機の後側を船体側に対して反対側を示し、鉛直方向を上下方向とする。
【0023】
図1は船外機の側面図、図2は船外機のエンジンの配置を示す側面図、図3は船外機のエンジンの配置を示す平面図、図4は船外機のエンジンの配置を示す前面図、図5は密閉容器、べ一パセパレータ及びキャニスタの配置を示す図、図6は図5のV−V線に沿う断面図である。
【0024】
図1に示すように、船外機1は推進ユニット2を有し、そのハウジング部分がカウル3とアッパーケース4とロアーケース5により構成されていて、上方のカウル3にはクランク軸10aを縦置きにしたエンジン10が収納され、下方のロアーケース5にはエンジン10によって回転駆動されるプロペラ6が設けられている。エンジン10は、クランク軸10aを船体側にし、気筒10bを船体側に対して反対側にして配置されている。中央のアッパーケース4からロアーケース5にはエンジン10からの動力伝達機構11や排気通路など(図示せず)が収納されていて、エンジン10によって動力伝達機構11を介してプロペラ6が回転駆動される。動力伝達機構11はドライブ軸12、シフト切換機構13及びプロペラ軸14などから構成される。
【0025】
エンジンルーム15を形成するカウル3はトップカウル3aとボトムカウル3bとにより構成され、トップカウル3aの後側部に形成されたエンジン10の空気取り入れ口3a1からエンジンルーム15内に空気が取り入れられる。アッパーケース4の上端には、エキゾーストガイド16が配設され、このエキゾーストガイド16の上面にエンジン10が固定されている。
【0026】
アッパーケース4の上部には、エキゾーストガイド16の周囲を覆うようにエプロン17が装着されている。エンジン10を上方から覆うトップカウル3aは、エキゾーストガイド16に固着されたボトムカウル3bに対して、上方から開閉自在に装着されて、着脱自在に連結されている。
【0027】
この船外機1は船体20の後端部に取付けられるが、船体20の後尾板20aにはクランプブラケット21が固定され、このクランプブラケット21にはスイベルブラケット22がチルト軸23によって回動自在に枢着され、このスイベルブラケット22には推進ユニット2が操舵軸24回りに回動自在に枢着されている。
【0028】
図2乃至図6に示すように、エンジン10は、4サイクルV型8気筒エンジンであり、船外機1は後尾板20aに、クランク軸10aが縦向きとなる航走時状態と略横向きとなる格納時位置との間で揺動可能に搭載される。エンジン10のシリンダブロック30の前側合面にはクランクケース31が接続され、このクランクケース31にはさらにクランクケースカバー31aが接続されている。シリンダブロック30の後側合面にはシリンダヘッド32が接続され、シリンダヘッド32のカム室側開口はヘッドカバー33で覆われている。エンジン10は航走時状態では、ヘッドカバー33及びシリンダヘッド32が船体前後方向後向きとなる。
【0029】
シリンダブロック30には、左,右気筒10bが、これらの軸線がVバンクをなすように、かつクランク軸10a方向に偏位するように形成されている。シリンダヘッド32には、気筒当たり吸気弁開口32a及び排気弁開口32bが形成され、それぞれの吸気弁開口32a及び排気弁開口32bはVバンク内の燃焼室32dに連通している。
【0030】
また、排気弁開口32bは排気ポート32cによりVバンク内に導出され、各バンク毎の排気マニホールド34に集合するように連通されており、排気ガスは排気マニホールド34によりエンジン下方の水中に排出される。なお、図2においては吸気マニホールド36は省略している。
【0031】
吸気弁開口32aは、吸気ポート32eによりシリンダヘッド32の側壁に導出されており、吸気ポート32eの外部接続開口32fには吸気マニホールド36が接続されている。このようにして、吸気ポート32e及び吸気マニホールド36により、吸気弁開口32aから略円弧状をなすように船体前方に屈曲する屈曲部39が形成され、さらに屈曲部39に続いてサージタンク200が接続され、これによりにより前方に延びる吸気通路Aが構成されている。サージタンク200にはスロットルバルブ(図示せず)を内蔵するスロットルボディ37が接続され、スロットルボディ37の上流側には吸気サイレンサ38が接続されている。
【0032】
シリンダヘッド32の各気筒における吸気ポート32e部分に燃料噴射弁40が挿入配置されている。燃料噴射弁40の噴射ノズルは燃焼室32dに臨んでおり、筒状の燃料供給レール41がクランク軸10a方向に向けて、かつシリンダヘッド32の外方に位置するよう配設されている。
【0033】
燃料噴射弁40に燃料を供給するための燃料供給装置50は、主として、以下のように構成されている。エンジン10の側壁前部に燃料フィルタ57、密閉容器58内に内蔵された燃料供給用の低圧の1次ポンプ52、ベーパセパレータ53が取り付けられている。
【0034】
この燃料供給装置50では、船体側に搭載された燃料タンク55内の燃料が低圧の1次ポンプ52の駆動により低圧の燃料配管54a、燃料フィルタ57、低圧の燃料配管54b、1次ポンプ52を介してベーパセパレータ53に供給される。1次ポンプ52の吐出口52aから吐出された燃料の余剰分はリターン通路52bにより1次ポンプ52の吸込口52c側に戻される。
【0035】
1次ポンプ52の駆動により燃料が燃料配管56を介して高圧の2次ポンプ42に供給され、この2次ポンプ42で昇圧された燃料が高圧の燃料配管43及び左,右分岐ホース44を介して左,右の燃料供給レール41の上端部に供給される。そして、燃料噴射弁40の噴射ノズルが開とされている期間、燃料が燃焼室32d内に噴射供給される。
【0036】
次に、図5及び図6に基づいて、密閉容器58、べ一パセパレータ53及びキャニスタ60の構成、配置などについて詳細に説明する。密閉容器58は、樹脂で形成された本体容器58aと蓋容器58bからなる。この本体容器58aと蓋容器58bはOリング90を介してボルト58cによる締め付けてシールする構造であり、本体容器58aと蓋容器58bは着脱自在になっている。
【0037】
燃料ポンプを構成する1次ポンプ52は、密閉容器58の中央部に配置され、この1次ポンプ52の吐出口52aから燃料が吐出され、この吐出側にはフィルタ91を備えられている。フィルタ91でろ過された燃料は、燃料配管56を介してべ一パセパレータ53に圧送され、フィルタ91は少なくとも燃料の異物を除去する。リターン通路52bは、密閉容器58の側壁に沿って配置され、このリターン通路52bにはレギュレータ92が配置されている。レギュレータ92は、燃料配管内の圧力を一定に保ち、このレギュレータ92の圧力調整で1次ポンプ52から吐出された燃料の余剰分を再び1次ポンプ52の吸込口52c側に戻す。
【0038】
図2、図4及び図5に示すように、密閉容器58の本体容器58aには、左右の前後に取付部58a1が形成されている。この前側の取付部58a1はボトムカウル3bの取付ボス3b3にボルト58dにより締め付け固定され、後側の取付部58a2はボトムカウル3bの取付ボス3b4にボルト58eにより締め付け固定され、密閉容器58がエンジンルーム15の底部に配置されている。このように、密閉容器58はカウル3内において、ボトムカウル3bにエンジン10のクランク軸10aに対してシリンダヘッド32とは逆側、すなわちエンジン10の船体側に設置されている。また、密閉容器58は、カウル3内において、エンジン10のクランクケース31の左側で少なくとも一部がクランクケース31よりも前方に設置され、作業者が船体側からカウル3を構成するトップカウル3aをボトムカウル3bからはずして密閉容器58を装着しやすく、組立が簡単となり、密閉容器58の交換やメンテナンス作業も向上する。
【0039】
また、ボトムカウル3bの周囲より中央部が低くなる分、取付ボス3b3より取付ボス3b4を高くして、密閉容器58がボトムカウル3bに略水平に設置されており、これにより密閉容器58の内部に収納された1次ポンプ52は略水平に設置されている。また、1次ポンプ52の後側に吐出口52aが設けられ、前側に燃料配管54bが蓋容器58bを貫通して吸込口52cに接続され、燃料を吐出する吐出口52aが船外機略後方に向くように配置されている。この1次ポンプ52として、電動ポンプが用いられ、エンジン10の動力を利用する必要がなくなるので、1次ポンプ52のレイアウトの自由度が向上する。
【0040】
このように、燃料ポンプを構成する1次ポンプ52を密閉容器58に収納し、密閉容器58をエンジンルーム15の底部に配置したから、エンジンルーム15内に水が浸入して滞留したとしても、1次ポンプ52は水に濡れることはなく、1次ポンプ52が海水により腐食したり固着することを防ぐことができ、耐久性が向上する。また、密閉容器58によりエンジン10の熱が1次ポンプ52に伝わりにくくなり、1次ポンプ52が加熱されることを抑制でき、しかも密閉容器58をエンジンルーム15の底部に配置したことで、仮にエンジンルーム15内に水が滞留しても密閉容器58が水により冷却されるので1次ポンプ52を冷却することができる。エンジンルーム15内では、エンジン10の空気取り入れ口3a1から空気Xが吸気サイレンサ38に向かって流れ、エンジン10により加熱された空気Yも流れるが、その流れの影響を受けない位置であるから1次ポンプ52が加熱されることを抑制できる。また、1次ポンプ52を略水平とすることで、ポンプ全体が低位置となり、1次ポンプ52が加熱されることをさらに抑制できる。また、1次ポンプ52の燃料を吐出する吐出口52aが船外機略後方に向くように配置することで、船舶の係留時など船外機1をチルトアップした時に、吐出口が高い位置になって1次ポンプ52内に蒸散ガスが滞留しないので、チルトアップ放置時の燃料戻りを軽減できる。
【0041】
また、密閉容器58が、カウル3内において、ボトムカウル3bに取り付けられ、エンジン10のクランク軸に対してシリンダヘッド32とは逆側に設置されており、密閉容器58を排気側から離間させられるので、密閉容器58を効率よく冷却できる。また、カウル3内において、密閉容器58がエンジン10の船体側に設置されており、作業者が船体側からトップカウル3aをボトムカウル3bからはずし、さらに密閉容器58の本体容器58aから蓋容器58bをはずして1次ポンプ52を装着しやすく、組立が簡単となり、1次ポンプ52の交換やメンテナンス作業も向上する。また、密閉容器58には、少なくともフィルタ91とレギュレータ92が収納されることで、1次ポンプ52とフィルタ91とレギュレータ92の温度上昇を抑制できる。また、周辺部品であるフィルタ91とレギュレータ92を1つの密閉容器58に収納することで、1次ポンプ52とフィルタ91とレギュレータ92を1ユニットとしてサブ組みすることができ、組立工数が減る。さらに、燃料ポンプが燃料タンク55からべ一パセパレータ53に燃料を送る1次ポンプ52であり、1次ポンプ52は、船体側の燃料タンク55とべ一パセパレータ53の間にあればよいので、レイアウトの自由度が向上する。
【0042】
そして、ベーパセパレータ53にはキャニスタ60が取付け固定されている。このキャニスタ60は、ベーパセパレータ53に連通接続されたケース60a内に活性炭等の吸着活性剤60bを充填してなるものである。ペーパセパレータ53内のベーパはキャニスタ60内に進入し、ここでベーパ中の燃料が吸着される。なお、燃料が吸着分離された空気は排出管61を通ってカウル3内に放出されるようになっている。キャニスタ60は、左側の最下端の吸気マニホールド36の下方に位置し、ベーパセパレータ53及びキャニスタ60は、図2及び図4に示すように、シリンダブロック30の左側にVバンクによって形成されるデットスペースK1に配置され、コンパクトな配置になっている。また、キャニスタ60を左側の最下端の吸気マニホールド36の下方に配置することで、燃料系構成部品による占有範囲を抑え、トップカウル3aの横幅が大きくなることを回避できカウル3の小型化が可能になる。
【0043】
また、燃料フィルタ57はトップカウル3aとボトムカウル3bとにより構成されるカウル3内において、エンジン10のクランク軸10aに対してシリンダヘッド32とは逆側に設置され、エンジン10の船体側に設置されてサージタンク200の船体側に位置している。燃料フィルタ57は、カウル3内に開口するトップカウル3aに形成されたエンジン10の空気取り入れ口3a1よりも下方に位置し、トップカウル3aの下開口部3a2の近傍に位置している。
【0044】
この燃料フィルタ57は、本体部57aと、キャップ部57bと、フィルタ部57cとを有し、本体部57aをブラケット59に締め付け固定している。ブラケット59は、サージタンク200の船体側に固定されている。本体部57aの凹み部57a4には雌ネジが形成され、キャップ部57bの取付部57b1が雄ネジが形成され、ネジ構造によって着脱自在になっている。本体部57aには供給開口57a2と、排出開口57a3が形成され、供給開口57a2には低圧の燃料配管54aが接続され、排出開口57a3には低圧の燃料配管54bが接続されている。
【0045】
この燃料フィルタ57は、少なくとも断熱材からなる断熱部70で覆われており、断熱部70は、燃料フィルタ57の形状に適合する形状に形成されている。断熱部70が本体部57aを覆う部分70aと、キャップ部57bを覆う部分70bとの複数の部分からなり、この複数の部分により燃料フィルタ57を被覆している。この断熱部70が発砲ゴムであり、本体部57aを覆う部分70aが本体部57aの外形形状に適用するように予め形成され、キャップ部57bを覆う部分70bがキャップ部57bの外形形状に適合するように予め形成されている。
【0046】
燃料フィルタ57を、少なくとも断熱材からなる断熱部70で覆うことで、燃料フィルタ57がエンジン10の熱により加熱されるのを防止でき、燃料の蒸散を防ぐことができる。また、断熱部70は、燃料フィルタ57の形状に適合する形状であり、断熱部70がフィルタ形状に適合しているので、燃料フィルタ57と断熱部70の間に隙間ができにくく断熱効率が向上する。また、断熱部70は複数の部分からなり、複数の部分により燃料フィルタ57を被覆することで、本体部57aを覆う部分70aが本体部57aに、またキャップ部57bを覆う部分70bがキャップ部57bに別々にして容易に装着することができる。また、本体部57aからキャップ部57bを取り外してフィルタ部57cを清掃したり、フィルタ部57cを新たなものと交換する場合でも断熱部70を燃料フィルタ57に装着しやすくなり、組立が簡単となり、交換やメンテナンス作業も向上する。
【0047】
また、これらの作業時には、燃料フィルタ57は、カウル3内において、エンジン10の船体側に設置されており、作業者が船体側からトップカウル3aをボトムカウル3bからはずして装着しやすく、組立が簡単となり、燃料フィルタ57の交換やメンテナンス作業も向上する。
【0048】
また、燃料フィルタ57は、カウル3内において、エンジン10のクランク軸10aに対してシリンダヘッド32とは逆側に設置されており、シリンダヘッド32から延出する排気マニホールド34から燃料フィルタ57を離間させることができ、燃料フィルタ57の加熱をより抑制できる。
【0049】
また、燃料フィルタ57は、カウル3内に開口するエンジン10の空気取り入れ口3a1よりも下方に位置しており、カウル3内のエンジンルーム15では、エンジン10の空気取り入れ口3a1に向かってエンジン10により加熱された空気Yも流れるが、その流れの影響を受けない位置であるから燃料フィルタ57が加熱されることをより抑制できる。
【0050】
この燃料フィルタ57に接続される燃料配管54の少なくとも一部、燃料配管54a,54bも断熱部71,72で覆われている。この燃料配管54aは、ボトムカウル3bの右前側3b11から貫通してボトムカウル3bの右内側に延び、サージタンク200の近傍でサージタンク200の下方を通過するように屈曲して燃料フィルタ57の下方から曲げて立ち上げ、燃料フィルタ57の左側から供給開口57a2に接続されている。燃料配管54bは、燃料フィルタ57の右側の排出開口57a3に接続され、燃料フィルタ57の右側から燃料フィルタ57に沿って下方に延び、燃料フィルタ57の下方を通過して左側に延びて密閉容器58内に内蔵された1次ポンプ52に接続されている。
【0051】
図2及び図4に示すように、船体側に搭載された燃料タンク55内の燃料を供給する低圧の燃料配管54a、燃料フィルタ57から1次ポンプ52までの低圧の燃料配管54bが燃料フィルタ57に周りやサージタンク200の下方のデッドスペースK2を利用して配管され、船体側に搭載された燃料タンク55内の燃料を供給する低圧の燃料配管54a、燃料フィルタ57から1次ポンプ52までの低圧の燃料配管54bが断熱部71,72で覆われ、燃料フィルタ57だけでなく、燃料配管54の少なくとも一部も燃料の加熱をより抑制できる。特に、燃料配管54の低圧の1次ポンプ52までが断熱部71,72で覆われており、燃料フィルタ57だけでなく、燃料配管54a,54bが低圧の1次ポンプ52の駆動により負圧になり蒸散しやすくなる部分であり、この燃料配管54a,54bを断熱部71,72により覆うことで燃料の加熱をより抑制できる。
【0052】
この断熱部70、断熱部71,72も発砲ゴムであり、カウル3内は水が入りやすいが、水が入ったとしても断熱性や耐久性を損なうことがなく、しかも安価に製作でき、装着しやすく、組立が簡単となり、交換やメンテナンス作業も向上する。
【0053】
次に、他の実施の形態を図7及び図8に基づいて説明する。図7は密閉容器の断面図、図8は図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。この実施の形態では、密閉容器58に内蔵された1次ポンプ52、フィルタ91、レギュレータ92、リターン通路52bなどの構成は、図1乃至図6に示す実施の形態と同じ構成であるから、同じ符号を付して説明を省略する。
【0054】
この実施の形態の密閉容器58は、本体容器58aの内側に断熱材99aを設け、蓋容器58bの内側に断熱材99bを設けたものであり、密閉容器58は断熱材99a,99bで1次ポンプ52、レギュレータ92、フィルタ91、リターン通路52bを断熱することでエンジン熱が燃料へ伝達することを防ぐことができる。断熱材99a,99bとして、例えば発砲ゴム、発砲ウレタンなどを用いることができる。
【0055】
この実施の形態は、例えば大型の船外機でエンジン熱によりカウル3内の温度が密閉容器58の内部の温度より高くなる場合や湖など波が小さい水面を航走する船外機でカウル内に水が滞留しにくく水により冷却されることが少ない場合などに好ましく適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明は、エンジンに燃料を供給する燃料供給装置を備える船外機に適用でき、簡単な構造で、燃料ポンプを断熱でき、しかも耐久性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】船外機の側面図である。
【図2】船外機のエンジンの配置を示す側面図である。
【図3】船外機のエンジンの配置を示す平面図である。
【図4】船外機のエンジンの配置を示す前面図である。
【図5】密閉容器、べ一パセパレータ及びキャニスタの配置を示す図である。
【図6】図5のV−V線に沿う断面図である。
【図7】密閉容器の断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 船外機
2 推進ユニット
3 カウル
3a1 空気取り入れ口
4 アッパーケース
5 ロアーケース
10 エンジン
10a クランク軸
10b 気筒
11 動力伝達機構
12 ドライブ軸
13 シフト切換機構
14 プロペラ軸
15 エンジンルーム
16 エキゾーストガイド
20 船体
20a 後尾板
21 クランプブラケット
22 スイベルブラケット
30 シリンダブロック
31 クランクケース
32 シリンダヘッド
33 ヘッドカバー
36 吸気マニホールド
37 スロットルボディ
38 吸気サイレンサ
40 燃料噴射弁
41 燃料供給レール
42 高圧の2次ポンプ
43 高圧の燃料配管
44 左,右分岐ホース
50 燃料供給装置
52 低圧の1次ポンプ
52a 吐出口
52b リターン通路
52b1 リターン通路52b内の燃料流れの下流側
52b2 リターン通路52b内の燃料流れの上流側
52c 吸込口
53 ベーパセパレータ
54a、54b 低圧の燃料配管
55 燃料タンク
56 燃料配管
57 燃料フィルタ
58 密閉容器
58a 本体容器
58b 蓋容器
60 キャニスタ
91 フィルタ
92 レギュレータ
200 サージタンク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウル内のエンジンルームに設置されるエンジンに燃料を供給する燃料配管と、前
記燃料配管の途中に配置される燃料ポンプを備え、前記燃料ポンプの駆動により燃
料が前記燃料配管を通って船体側から前記エンジンに供給される船外機において、
前記燃料ポンプを密閉容器に収納し、
前記密閉容器を前記エンジンルームの底部に配置したことを特徴とする船外機。
【請求項2】
前記密閉容器は、前記カウル内において、前記エンジンのクランク軸に対してシリンダヘッドとは逆側に設置されることを特徴とする請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記密閉容器は、前記カウル内において、少なくとも一部が前記エンジンのクランクケースよりも前方に設置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船外機。
【請求項4】
前記燃料ポンプは、略水平に設置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項5】
前記燃料ポンプは、燃料を吐出する吐出口が船外機略後方に向くように配置することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項6】
前記燃料ポンプは、電動ポンプであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項7】
前記燃料ポンプは、燃料タンクからべ一パセパレータに燃料を送る1次ポンプであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項8】
前記密閉容器には、少なくとも燃料の異物を除去するフィルタと、前記燃料配管内の圧力を一定に保つレギュレータが収納されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の船外機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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