船舶の操舵装置
【課題】船舶において船外機の転回位置を検出する転回角センサの異常を検出した場合、転舵不能にならず操船することができる操舵装置を提供する。
【解決手段】操船者が操舵方向を指示するハンドル1と、ハンドル1の操作角を検出する舵輪センサ2と、船外機4を転回させるアクチュエータ5と、アクチュエータ5による船外機の転回角を検出する転回角センサ6と、操作角に基づきアクチュエータ5を転回駆動する制御転回角を算出し、制御転回角と転回角との差異に従ってアクチュエータ5を転回駆動する制御装置8とを有し、制御装置8は、転回角センサ6の異常を検出した場合、制御転回角に応じて予め決められた所定時間、所定電流に基づき転回駆動を継続するものである。
【解決手段】操船者が操舵方向を指示するハンドル1と、ハンドル1の操作角を検出する舵輪センサ2と、船外機4を転回させるアクチュエータ5と、アクチュエータ5による船外機の転回角を検出する転回角センサ6と、操作角に基づきアクチュエータ5を転回駆動する制御転回角を算出し、制御転回角と転回角との差異に従ってアクチュエータ5を転回駆動する制御装置8とを有し、制御装置8は、転回角センサ6の異常を検出した場合、制御転回角に応じて予め決められた所定時間、所定電流に基づき転回駆動を継続するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船外機を電動モータにより転回制御する操舵装置に関するものであって、特に船外機の転回角度を検出する転回角センサに異常が発生した場合の対処機能を付加した操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から船舶用の操舵装置として、電動モータを用いた電動式操舵装置が特許文献1に記載されている。この特許文献1では、船外機を転回させるためのアクチュエータと、船外機の転回角を検出する転回角センサと、ハンドルの回転角度を検出する舵輪センサと、前記転回角センサと舵輪センサの信号に応じて、前記アクチュエータに制御信号を出力するアクチュエータ用コントローラからなり、ハンドルと船外機が電気的にのみ接続している。前記ハンドル操作量を基に転回角を決め、転回角の値だけアクチュエータを駆動して船外機を操船者の意図通りに転舵させることができる。
また、特許文献2のように、船外機1機に対して一つのアクチュエータ、一つのコントローラではなく、複数の船外機に対して2つ以上のアクチュエータ用コントローラ、又は一つのアクチュエータという構成も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−280579号公報
【特許文献2】特開2007−126023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような従来の操舵装置にあっては、転回角センサが故障するとアクチュエータ用コントローラは船外機の転回位置が不明となり、船外機の稼働限界位置まで達してもなおアクチュエータを駆動し続けてしまう可能性があり、引いてはアクチュエータの故障の原因になる。一方、アクチュエータを停止してしまうと、舵がきかなくなり、転舵できなくなってしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は前記のような問題点を解決することを課題とするものであって、転回角センサが故障しても、また、転回角センサの信号がアクチュエータ用コントローラに入力されない場合であっても、アクチュエータを故障させることなく、操船し続けることができる操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
またこの発明における操舵装置は、少なくとも1機以上の船外機が取り付けられた船舶において、操船者が操舵方向を指示するハンドルと、ハンドルの操作角を検出する舵輪センサと、船外機を転回させるアクチュエータと、アクチュエータによる船外機の転回角を検出する転回角センサと、操作角に基づきアクチュエータを転回駆動する制御転回角を算出し、制御転回角と転回角との差異に従ってアクチュエータを転回駆動する制御装置とを有し、この制御装置は、転回角センサの異常を検出した場合、制御転回角に応じて予め決められた所定時間、所定電流に基づき転回駆動を継続するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の操舵装置によれば、転回角センサの異常を検出した場合でもアクチュエータを故障させることなく、操舵を継続することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1における操舵装置のシステム構成図である。
【図2】転回角センサが正常時の制御のフローチャートである。
【図3】実施の形態1における制御のフローチャートである。
【図4】実施の形態1における制御のフローチャートである。
【図5】実施の形態1における制御のフローチャートである。
【図6】実施の形態2における操舵装置のシステム構成図である。
【図7】実施の形態2における制御のフローチャートである。
【図8】実施の形態3における制御のフローチャートである。
【図9】実施の形態4における制御のフローチャートである。
【図10】実施の形態5における操舵装置のシステム構成図である。
【図11】実施の形態5における制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
図1はこの発明のシステム構成図である。この発明の操舵装置は、動力源としての船外機(4)と、船体の運転席に設置されるハンドル(1)と、ハンドルの操作角を検出する舵輪センサ(2)と、船外機を転回させるアクチュエータ(5)と、アクチュエータにより制御された船外機の転回角を検出する転回角センサ(6)と、この転回角センサ信号と前記舵輪センサ信号とを入力し、前記操作角に応じて制御転回角を演算し、制御転回角と前記転回角の差異に基づき船外機(4)の転回角を制御するためにアクチュエータ(5)に駆動信号を出力する制御装置(8)から構成される。ここで制御装置(8)は、機能面、及び船舶への搭載場所から、操作角に応じた制御用の転回角を演算する制御転回角演算装置(3)と、アクチュエータ(5)に駆動信号を出力するコントローラ(7)とから成り立っている。船外機は1機のみならず、複数の船外機を備える船舶も存在する。またアクチュエータも1個で複数の船外機を駆動するタイプや、各船外機にそれぞれアクチュエータを備える構成も考えられる。さらにまた、制御装置、及び転回角センサも船外機、又はアクチュエータに対して複数設置される可能性もある。つまり、船外機(4)、アクチュエータ(5)、転回角センサ(6)、制御装置(8)は少なくとも1つは搭載され、船舶によっては複数搭載され、これらの個数の組合せは多岐にわたる。さらに制御転回角演算装置(3)とコントローラ(7)、又はコントローラ(7)同士は、いわゆるCANで接続されている場合もある。
【0010】
まず、転回角センサが正常な場合の動作を図2に基づき説明する。
S201で操船者がハンドル(1)を回すと、S202でハンドルの操作角を舵輪センサ(2)が検出し、S203で制御転回角演算装置(3)が操作角を舵輪センサ信号により受信する。この受信情報に基づいて、S204で制御転回角演算装置(3)が船外機(4)の転回すべき制御角度を演算し、S205でコントローラ(7)にその制御転回角信号を送信する。ここで、例えば制御転回角は絶対値でなくても、前回送信した制御転回角からの変化量で表してもよく、変化量が正の数あれば右舷側に船外機を転回させ、変化量が負の数であれば左舷側に船外機を転回させる。また、転回角センサは右舷の端が100%、左舷の端が−100%、中心点が0であるとする。
【0011】
S206でコントローラ(7)が制御転回角信号、及び転回角センサ(6)から現在転回角信号を受け取ると、S207で現在転回角に制御転回角を加算し、目標転回角を演算する。コントローラ(7)は、S208で目標転回角が−100〜100%の範囲になるようにクリップ処理を行う。S209で現在転回角と目標転回角の値が一致しているか調べる。目標転回角と現在転回角が一致していなければ(NO)、S210で現在転回角と目標転回角を比較する。現在転回角が目標転回角より大きければ(YES)、S211で左に転回させ、現在転回角が目標転回角より小さければ(NO)、S212で右に転回させる。目標転回角と現在の転回角が一致すると(YES)、S213でアクチュエータの駆動を停止する。このように、現在転回角と目標転回角の値が一致するまでアクチュエータを駆動し続けるフィードバック制御をコントローラ(7)が受け持っている。
【0012】
次に、転回角センサの異常検出の方法について説明する。
転回角センサの異常は、コントローラ(7)で転回角センサ用の電源のオープンとショート、グランドのオープンとショート、信号のオープンとショートなどのハードウエア検出で行うことが可能である。また、転回角センサを複数設けている場合では、それらのセンサの信号特性の関係が所定値以内でない場合を検知し、異常と判定することができる。さらにコントローラがアクチュエータを駆動したにも係わらず、転回角センサの値が変化しない場合、異常と判定するソフトウエア検出で行うことができる。
【0013】
このようなシステムにおいて、転回角センサの異常を検出した場合は、実際のアクチュエータの位置と転回角センサの値が異なることになるため、アクチュエータが操船者の意思と違う方向に動き続けたり、アクチュエータがとまって動かなくなったりしてしまう可能性がある。そこで転回角センサの異常を検出した場合でも、アクチュエータが故障することなく、操舵装置が転回できる方法について説明を行う。
【0014】
転回角センサ(6)の異常をコントローラ(7)が検出した場合の対応方法について、図3のフローチャートに従って説明する。図3のフローチャートは、図2のS206とS207の間に挿入されているものとする。
S301でコントローラが転回角センサの異常の有無を検出し、異常がない場合(NO)図2のS207へ戻る。一方、転回角センサ異常を検出すると(YES)、S302でコントローラは、転回角センサ値の更新を中止する。正常動作時、コントローラは、転回角センサの現在値と過去の値を保持している。転回角センサの異常時、転回角センサ値の更新を中止することで、転回角センサの過去の値は、ほぼ正確な値として保持することができる。次に、S303でコントローラ同士は電気的に接続されていて、例えばCAN通信を使って正常な別の転回角センサがあるかどうか確認する。正常な転回角センサがある場合はS304へ進み、正常な転回角センサがない場合はS307へ進む。S304では、転回角センサの異常発生前のアクチュエータの制御が同調動作であったかを確認する。ここで同調動作とは、複数のアクチュエータがハンドル操作により、ほぼ同一角度で連動して転回されている状態を言う。同調動作であれば、S305で転回角センサ異常のアクチュエータは、正常な転回角センサの値に従って制御を行う。同調動作をしていれば、複数の船外機がほぼ同じ位置にあると考えられるため、正常な転回角センサに従うことで動作を保障することができる。
【0015】
一方、同調動作でない場合、例えば右旋回するために右舷の船外機を大きく転回させ、左舷の船外機をほとんど転回させない、また、直進であっても、左右の転回方向を逆方向に駆動する。さらには左右の船外機のプロペラの推進方向を逆として横移動を行う場合、船外機を逆方向転回する等々、運転モードによっては同調動作をしないことが起こる。この場合、S306で制限的動作を付加した特別な制御処理を行うが、この内容については後述する。また正常な転回角センサがない場合、S307で転回角センサも1個しかなく、かつ異常を検出した場合の特別処理を行うが、この内容についても後述する。
【0016】
次に前記S305の正常な別の転回角センサに依存した制御内容について、さらに詳細に図4に沿って説明する。転回角センサの異常を検出したコントローラ(7)は、S401で他の正常な転回角センサの現在転回角を受信する。S402で制御転回角がある閾値以内(−a<制御転回角<a)であるかどうかを判定する。これは、ハンドルの遊びの量に対するものであり、細かいハンドル操作は無視して船外機の転回に影響を与えないようにしている。閾値範囲内であれば、S403で船外機を駆動しないのでアクチュエータ転回停止信号を出力する。一方、閾値範囲外であれば、S404で前記制御転回角に他機の現在転回角を加算し目標転回角を演算する。その後転回角異常処理制御に入るが、この異常処理は2つのパターンに分離される。S405で現在の転回角を閾値bと比較する。ここで|b|>|a|であり、船外機がすでに左舷端付近又は右舷端付近に転回しているか否かをチェックしている。
【0017】
S405で閾値|b|以上であれば、S406で他機の転回角センサ値に従って転回駆動を継続し、この他機転回角センサによる追従制御は閾値b範囲内に入るまで続けられる。一方、S407では、前記追従制御が閾値b範囲内に入った、又は現在の転回角が閾値|b|以内である場合、他機の転回角センサ値を利用して同様なフィードバック制御を行うが、目標転回角を範囲b以内に制限を行って転回角が|b|を越えることがないようにアクチュエータを駆動制御する。つまり目標転回角クリップ処理により転回角センサ正常時よりも制御領域を制限したものとしている。これは、船外機によって取り付け位置、傾きが同じでなかったり、船外機、転回角センサに個体差があったりするため、転回角にずれが生じる可能性があり、範囲bに制限しているものである。S406、S407において、目標転回角と現在転回角が一致していない場合、S408で目標転回角が現在転回角より小さければ左に転回させ、目標転回角が現在転回角より大きければ右に転回させる。また、目標転回角と現在転回角が一致すれば、駆動を停止し処理は終了する。この一連の制御は、転回角センサの異常を検出した位置が閾値を超えた領域にいる場合には、閾値以内に入るまでは他機の転回角センサに従って通常と同様に転回制御を続け、一旦閾値以内に入ると閾値を越えることがないように制限した制御を行うものである。なお、S406の追従制御において、正常転回角センサ側であっても転回最端部に至ればアクチュエータの転回駆動は停止、又は電力低下を行うため、異常センサ側も最悪でもしばらく後には同様な停止、又は電力低下になる。しかしそれより先だって、例えば所定時間で区切って、所定時間内は正常転回角センサに追従制御を継続し、その後は再度範囲bに入るまで制御を停止、電力低減、又は中央位置戻り方向のみに制御することも可能である。
【0018】
次に図5により別の制御方法を説明する。図4と同一の符号は同等の処理を行っているものとする。S501aで目標転回角を演算する際に、制御転回角と他機の現在転回角を加算したものに係数K1(K1<1)を乗算することにより目標転回角自体を正常時に対し狭い範囲に制限する。その後、S408でこの目標転回角と他機の転回角との差に基づいて通常のフィードバック制御を継続する。ここでは、正常なものと異常な転回角センサ値のもので目標転回角が異なるため、異常なものは正常な転回角センサの前回値と今回値の偏差を用いて制御を行う。さらに目標転回角に制限を付する別の方法として、S501bのように制御転回角自体にK2(K2<1)を加味することも可能である。転回角を正常時に比較し小さい領域に制限して転回駆動を継続することができる。さらにまた、目標転回角自体に上限制限を付加することもできる。これらの制限付加方法の選択は、例えばフリーハンドル、つまりハンドルの操舵角に制限がなく何回でも同一方向に回転操舵可能な構造、逆に自動車のようにハンドル回転角に制限がある構造等、ハンドル構造に依存させることもできる。一方、この制限により他機の船外機と転回角に差異が発生することになり、この制限が操船者にとって違和感を覚えさせる可能性がある。そのため正常な船外機も同様な制限を付することにより、この違和感を解消させることもできる。
【0019】
転回角センサの異常が回復したと判断した場合は、通常の制御に戻すことは容易である。例えば、転回角センサの異常を検出したときに、転回角センサの前回値のみ更新を中止し、現在値は更新を続ける別の手段を備え、正常か異常かの判定は継続する。このように転回角センサが異常中であっても、正常と異常の判定し続けることで正常判定に戻った場合簡単に通常制御に戻すことができる。また、転回角センサの異常を検出したときに前回値を記憶し、更新は通常通り継続して正常と異常の判定を行う方法もある。
以上のように、転回角センサ異常が発生し、他機の正常なアクチュエータの転回角センサに従い転回制御を継続させるのみならず、転回角に制限を付することによりアクチュエータを故障させることなく、操船を続行できる効果を奏する。
【0020】
実施の形態2.
次に転回角センサに異常を検出し、正常な転回角センサがない場合、例えば小型船舶のようにアクチュエータ、転回角センサが各々1個のみ設置されている場合の対応方法について説明する。図6にシステム構成を示したが、この船舶のコントローラ(7)にはアクチュエータを駆動している電流を検出する駆動電流検出手段(9)を有している。駆動電流検出手段(9)は、アクチュエータ(5)を転回駆動するために左、右それぞれの向きの電流検出ができる必要がある。
【0021】
前記駆動電流検出手段(9)を用いて転回を継続する方法について、図7に沿って説明する。S701で閾値の範囲内(制御転回角>a)であれば、S702で所定時間右に転回する。S703で閾値の範囲内(制御転回角<−a)であれば、S704で所定時間左に転回する。この閾値aは、実施の形態1で記載したハンドルの遊びの量であり、一定角以上の値とすれば、細かいハンドル操作は無視して船外機の転回に影響を与えないようにすることができる。
【0022】
次に、S705でアクチュエータの駆動電流を検出する。S706で閾値|c|より駆動電流が大きいか小さいかを判定する。電流値が閾値|c|より小さければ、そのまま駆動を継続する。電流値が閾値|c|より大きければ、船外機が駆動範囲の境界にあり、それ以上転回すると操舵装置が故障すると判断し、S707でアクチュエータの駆動を停止する。またS707の駆動停止は急激に停止するのではなく、徐々に電流を減らしながら停止することも可能である。
【0023】
前記S702、又はS704における所定時間は、実験等で予め決められた時間である。また流す電流値も可変することも可能である。時間・電流の可変のトリガとなるものは、制御転回角の大きさ、又は早さに依存し、電流値が大きければより早く転回するため、所定時間を短くし、逆に電流値が小さければ所定時間を長めに修正することができる。
前記閾値a、cについては一定値である必要はなく、例えば船速に依存して変化させ、船速が速ければ速いほど、大きな値とすることも可能である。
【0024】
実施の形態3.
次にさらに別の方法として、推定転回角を使用する方法について説明する。転回角推定手段は、コントローラ(7)に配置されているものとし、具体的方法を図8に沿って説明する。
S801で目標転回角を算出する。その方法は、制御転回角に推定した転回角を加算する。転回角センサの異常を検出した最初の制御では、実施の形態1の図3、S302における正常な過去の転回角を代用する。その後は後述する推定転回角を使用する。
【0025】
次にS802で船外機の転回限界角度を制限する。左の限界角度をleft_deg、右の限界角度をright_degとした。つまり、S802では、目標転回角が船外機の転回限界角度以内であるか判定する。もし、船外機の転回限界角度を越えていれば、船外機の転回限界角度が目標転回角になるように処理する。S803で左舷側、右舷側のどちら側の限界角度を超えているか判定する。左舷側の限界角度を超えていれば、S804で目標転回角を左舷側の限界角度であるleft_degに設定する。右舷側の限界角度を超えていれば、S805で目標転回角を右舷側の限界角度であるright_degに設定する。
【0026】
S806で制御転回角からアクチュエータの駆動時間を決定する。また駆動電流も制御することも可能である。前記実施の形態2に記載した時間・電流の可変方法とは別に、このアクチュエータ駆動電流値は、船速、トリム角、シフト位置などから決定することにより、推定転回角と実際の船外機の転回角度が近い精度の高い制御が可能となる。例えば、船速、トリム角、目標転回角、現在転回角に応じて変化する係数を設定し、電流値にその係数を掛けることで補正を行う。例えば、船速の係数は、船速が速くなるほど、電流値が増加するように設定する。トリム角の係数は、トリム角が小さいほど電流値が増加するように設定する。これらの関係をマップにより記憶しておき、制御する時点の船舶の操船状況に応じて時間・電流を可変することもできる。これらは船外機の場合、船速、トリム角により、船外機が受ける負荷が変わり、転回させるときの必要な電流値が変化するためである。また、船外機が複数設置される場合は、プロペラの回転方向を逆にする場合もある。プロペラの回転方向により船外機を転回させるときに船外機が受ける負荷の大きさが左右で異なる。そのため、船外機の設置位置でも転回させるときの電流を変化させることも可能である。同様に、前進、後進でもプロペラの回転は逆になるため、シフト位置でも電流値変化させることも可能である。この決定した値で、S807で船外機を転回駆動する。
【0027】
S808で前記駆動時間が経ったならば、推定転回角を目標転回角として更新する。これにより転回角センサ異常の初回以外はこの推定転回角をS801で使用することができる。この推定転回角はあくまでも推定値であるため、実転回角と誤差が生じ、この誤差は小さくなることもあるが、大きくなることも起こる。例えば、所定以上の船速があるにもかかわらず左右どちらにも駆動していない状況が継続した場合、推定転回角を中心、0にリセットすることにより、推定転回角が実転回角と等しくなり誤差を抑制することが可能となり、結果転回制御の精度を向上できる。
【0028】
転回角推定方法は、実施の形態1における目標転回角とのフィードバック制御とは異なり、いわゆるオープン制御となっている。この制御により図3におけるS306、S307の異常時処理1、2に使用できる。また、S306の非同調処理においては、船外機同士の干渉防止の目的で、推定転回角の算出のための前記マップをさらに転回角が小さい方向に制限したものとすることにより、非同調制御の転回角を制限した転回制御を行うことも可能である。さらに非同調処理においては、S804、S805における目標転回角の制限値left_deg、又はright_degを異なる値とすることも可能である。例えば、操船者の操舵方向に対して反対方向の制限値を小さい値とすることが考えられる。単に制限値を小さい値とする場合のみならず、船外機の転回方向が他の船外機と逆方向の場合、船外機同士の干渉の防止のために、船外機同士が近づく方向の制限値は小さく、離れる方向の制限値は大きくすることも可能である。また三機以上の船外機を搭載している場合、中側に搭載された船外機が干渉しないように制限値を小さくしすぎないようにすることも可能である。この方法では、船舶の操船応答性を高くできる。さらに図2のS208のクリップ値と比較し、前記制限値left_deg、及びright_degを小さい値にすることもできる。
【0029】
さらにまた、転回角センサ異常を検出したときに、非同調制御であれば、同調制御に変更することもできる。操船者の意図しないところで船外機が転回しても安全な状態であれば、例えば、ニュートラルかつアイドル状態、異常検出と同時に自動的に異常前の正常な値を利用して船外機をほぼ正確な位置に転回させることができる。ここで動かす船外機は転回角センサが異常な船外機でも、正常な船外機でもどの船外機でもよい。また、転回すると安全でないような場合は安全な状態になるまで待ち、同調動作に戻すことも可能である。また、操船中に船外機同士がほぼ同じ位置になった場合に、同調動作に戻すこともできる。同調動作に戻れば、図3のS305のように他機の正常な転回角センサに従うように処理してもよい。
【0030】
実施の形態4.
さらに別の方法として、コントローラが転回角センサの異常を検出すると、転回位置を複数段階で制御し、予め決められたアクチュエータ駆動時間に依存する方法について図9を用いて説明する。例えば最も簡単な3段階で制御するときの船外機の制御領域の例では、max_deg=100%、mid_deg=20%とする。転回角センサ前回値から船外機位置を判定するフローを図9(a)に示す。−100≦転回角センサ前回値≦−20の領域であるかを判定し、この領域内であれば船外機位置act_pos=0とする。S901の領域でなければ、S903で−20<転回角センサ前回値<20の領域であるかを判定し、この領域内であればact_pos=1とする。S901、S903共に当てはまらなければ、20≦転回角センサ前回値≦100の領域であるため、act_pos=2とする。
【0031】
船外機位置判定後、操船者がハンドルを操作したときの3段階制御時の処理例を図9(b)に示す。
まず、S911で操船者が一定角度(閾値e)以上ハンドルを操作したかを判定する。この処理では、船外機を複数段階で制御するため、ハンドルを細かく動かしても船外機が動いてしまわないように閾値を設けるものである。閾値eは、実施の形態2の閾値cのように可変の値に設定することもできる。S911でハンドル操作が所定角度以上あれば、S912に移り、act_pos=0であるか判定する。act_pos=0であれば、最も左舷側に船外機が向いていることになるので、その位置から右舷側へのみ転回可能としこの位置から左舷側へは転回しない。S913で右舷側への転回であれば、所定時間右に転回する。S914の転回により、船外機の位置が左舷側から中央付近へ転回されたため、S915でact_posを0から1に更新する。逆にS916でact_pos=2であれば、最も右舷側に船外機が向いていることになるので、その位置から左舷側へのみ転回可能としこの位置から右舷側へは転回しない。S917で左舷側への転回要求であれば、所定時間左に転回する。S918の転回により、船外機の位置が右舷側から中央付近へ転回されたため、S919でact_posを2から1に更新する。S912、S916のどちらでもない場合、act_pos=1であるため、S920に進む。船外機が、中央位置にあることになるので、左右どちらでも転回可能とする。どちら向きに動かすかは、制御転回角に従う(S921、S923)。所定時間転回した後は、船外機の位置act_posを更新する(S922、S924)。
【0032】
転回時間は、予め制御の段数、駆動電流等により、アクチュエータ駆動時間を設定しておく。制御段数が多い、また、船外機の転回領域の広さが異なる設定をした場合には、位置によって転回時間を可変にすることもできる。また、制御段数を増やした場合、制御転回角の閾値を二つ以上持たせ、閾値の大きさにより、数領域分を一度に転回させても良い。精度を高めるため、安全性を高めるために、エンジンの点火や噴射や吸入空気量を制御するエンジン制御コントローラを備え、エンジン制御コントローラとコントローラがCANで通信可能なシステムにおいて、転回角センサが故障すると燃料噴射量や吸入空気量を減らすことで、船速を制限する処理を加えてもよい。
【0033】
実施の形態5.
また、別の方法としてアクチュエータがモータであり、船外機自体の転回角ではなくモータ転回角を検知するモータ角センサを有しているシステム構成を図10に示す。図において、10はアクチュエータモータのモータ角センサであり、モータ角演算手段(11)をコントローラ(7)が有している。モータ角演算手段(11)は、モータ角センサ(10)の信号により、モータを右回転、又は左回転したときのモータの転回角を演算し、この転回角は船外機の転回角に相当するものである。
【0034】
前記モータ角演算手段(11)を用いて転回を継続する方法について、図11に沿って説明する。ここで、モータ角演算手段によって演算される転回角を演算転回角とする。演算転回角は、実施の形態3と同様に、転回角センサの異常を検出した最初の制御では、実施の形態1の図3、S302における正常な過去の転回角を代用する。その後は後述する演算転回角を使用する。
【0035】
S1101で演算転回角に制御転回角を加算し、目標転回角を演算する。コントローラ(7)は、S1102で予め設定された目標転回角の範囲内に収まるようにクリップ処理を行う。S1103で目標転回角と演算転回角が一致しているかを調べる。目標転回角と演算転回角が一致していなければ(NO)、S1105で演算転回角と目標転回角を比較する。演算転回角が目標転回角より大きければ(YES)、S1106で左に転回させ、演算転回角が目標転回角より小さければ(NO)、S1107で右に転回させる。S1106、S1107で転回させると、コントローラ(7)は、S1108でモータ角センサ(10)の信号より、演算転回角を算出し、フィードバック制御を行う。そして、目標転回角と演算転回角が一致すると(YES)、S1104でアクチュエータの駆動を停止する。
【0036】
以上のように、船外機自体の転回角を検出する代わりに、アクチュエータの駆動に基づき転回角に代用する方法であっても同様な効果を奏することができる。この発明は、前記の各実施の形態に限定されるものではなく、これらの実施の形態の可能な組合せを含むことは云うまでもない。操船者の指示である舵輪センサ信号から制御用の転回角を算出する制御角演算装置(3)と、この制御転回角と転回角センサとの差異に応じてアクチュエータを駆動するコントローラ(7)を分離して記載したが、これら手段を1つの制御装置として構成することも可能である。また、制御転回角に閾値を設けてハンドルの遊びを設定する処理は、センサの正常、異常に関係なく、どの実施の形態に対しても有効である。
【0037】
この発明の操舵装置において、転回角センサ異常を検出した場合、非同調制御を中止し同調制御に変更することもできる、また、この異常が回復したと判断した場合は、通常の制御に戻すことは容易である。
【0038】
この発明の操舵装置は、転回角センサの異常を検出した場合であっても船外機を操船者の意思に沿った転回駆動を行うことができ、操船し続けることが可能である。また船外機・転回角センサの個数に関係なく、転回駆動を継続できる。
【0039】
この発明の操舵装置において、転回角センサは実施の形態5のようなモータ角センサでもよく、転回角センサはアクチュエータの位置が分かるようなセンサであれば、すべての実施の形態が実現可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 ハンドル、2 舵輪センサ、3 制御角演算装置、4 船外機、5 アクチュエータ、6 転回角センサ、7 コントローラ、8 制御装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、船外機を電動モータにより転回制御する操舵装置に関するものであって、特に船外機の転回角度を検出する転回角センサに異常が発生した場合の対処機能を付加した操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から船舶用の操舵装置として、電動モータを用いた電動式操舵装置が特許文献1に記載されている。この特許文献1では、船外機を転回させるためのアクチュエータと、船外機の転回角を検出する転回角センサと、ハンドルの回転角度を検出する舵輪センサと、前記転回角センサと舵輪センサの信号に応じて、前記アクチュエータに制御信号を出力するアクチュエータ用コントローラからなり、ハンドルと船外機が電気的にのみ接続している。前記ハンドル操作量を基に転回角を決め、転回角の値だけアクチュエータを駆動して船外機を操船者の意図通りに転舵させることができる。
また、特許文献2のように、船外機1機に対して一つのアクチュエータ、一つのコントローラではなく、複数の船外機に対して2つ以上のアクチュエータ用コントローラ、又は一つのアクチュエータという構成も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−280579号公報
【特許文献2】特開2007−126023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような従来の操舵装置にあっては、転回角センサが故障するとアクチュエータ用コントローラは船外機の転回位置が不明となり、船外機の稼働限界位置まで達してもなおアクチュエータを駆動し続けてしまう可能性があり、引いてはアクチュエータの故障の原因になる。一方、アクチュエータを停止してしまうと、舵がきかなくなり、転舵できなくなってしまうという問題点があった。
【0005】
この発明は前記のような問題点を解決することを課題とするものであって、転回角センサが故障しても、また、転回角センサの信号がアクチュエータ用コントローラに入力されない場合であっても、アクチュエータを故障させることなく、操船し続けることができる操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
またこの発明における操舵装置は、少なくとも1機以上の船外機が取り付けられた船舶において、操船者が操舵方向を指示するハンドルと、ハンドルの操作角を検出する舵輪センサと、船外機を転回させるアクチュエータと、アクチュエータによる船外機の転回角を検出する転回角センサと、操作角に基づきアクチュエータを転回駆動する制御転回角を算出し、制御転回角と転回角との差異に従ってアクチュエータを転回駆動する制御装置とを有し、この制御装置は、転回角センサの異常を検出した場合、制御転回角に応じて予め決められた所定時間、所定電流に基づき転回駆動を継続するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の操舵装置によれば、転回角センサの異常を検出した場合でもアクチュエータを故障させることなく、操舵を継続することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1における操舵装置のシステム構成図である。
【図2】転回角センサが正常時の制御のフローチャートである。
【図3】実施の形態1における制御のフローチャートである。
【図4】実施の形態1における制御のフローチャートである。
【図5】実施の形態1における制御のフローチャートである。
【図6】実施の形態2における操舵装置のシステム構成図である。
【図7】実施の形態2における制御のフローチャートである。
【図8】実施の形態3における制御のフローチャートである。
【図9】実施の形態4における制御のフローチャートである。
【図10】実施の形態5における操舵装置のシステム構成図である。
【図11】実施の形態5における制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
図1はこの発明のシステム構成図である。この発明の操舵装置は、動力源としての船外機(4)と、船体の運転席に設置されるハンドル(1)と、ハンドルの操作角を検出する舵輪センサ(2)と、船外機を転回させるアクチュエータ(5)と、アクチュエータにより制御された船外機の転回角を検出する転回角センサ(6)と、この転回角センサ信号と前記舵輪センサ信号とを入力し、前記操作角に応じて制御転回角を演算し、制御転回角と前記転回角の差異に基づき船外機(4)の転回角を制御するためにアクチュエータ(5)に駆動信号を出力する制御装置(8)から構成される。ここで制御装置(8)は、機能面、及び船舶への搭載場所から、操作角に応じた制御用の転回角を演算する制御転回角演算装置(3)と、アクチュエータ(5)に駆動信号を出力するコントローラ(7)とから成り立っている。船外機は1機のみならず、複数の船外機を備える船舶も存在する。またアクチュエータも1個で複数の船外機を駆動するタイプや、各船外機にそれぞれアクチュエータを備える構成も考えられる。さらにまた、制御装置、及び転回角センサも船外機、又はアクチュエータに対して複数設置される可能性もある。つまり、船外機(4)、アクチュエータ(5)、転回角センサ(6)、制御装置(8)は少なくとも1つは搭載され、船舶によっては複数搭載され、これらの個数の組合せは多岐にわたる。さらに制御転回角演算装置(3)とコントローラ(7)、又はコントローラ(7)同士は、いわゆるCANで接続されている場合もある。
【0010】
まず、転回角センサが正常な場合の動作を図2に基づき説明する。
S201で操船者がハンドル(1)を回すと、S202でハンドルの操作角を舵輪センサ(2)が検出し、S203で制御転回角演算装置(3)が操作角を舵輪センサ信号により受信する。この受信情報に基づいて、S204で制御転回角演算装置(3)が船外機(4)の転回すべき制御角度を演算し、S205でコントローラ(7)にその制御転回角信号を送信する。ここで、例えば制御転回角は絶対値でなくても、前回送信した制御転回角からの変化量で表してもよく、変化量が正の数あれば右舷側に船外機を転回させ、変化量が負の数であれば左舷側に船外機を転回させる。また、転回角センサは右舷の端が100%、左舷の端が−100%、中心点が0であるとする。
【0011】
S206でコントローラ(7)が制御転回角信号、及び転回角センサ(6)から現在転回角信号を受け取ると、S207で現在転回角に制御転回角を加算し、目標転回角を演算する。コントローラ(7)は、S208で目標転回角が−100〜100%の範囲になるようにクリップ処理を行う。S209で現在転回角と目標転回角の値が一致しているか調べる。目標転回角と現在転回角が一致していなければ(NO)、S210で現在転回角と目標転回角を比較する。現在転回角が目標転回角より大きければ(YES)、S211で左に転回させ、現在転回角が目標転回角より小さければ(NO)、S212で右に転回させる。目標転回角と現在の転回角が一致すると(YES)、S213でアクチュエータの駆動を停止する。このように、現在転回角と目標転回角の値が一致するまでアクチュエータを駆動し続けるフィードバック制御をコントローラ(7)が受け持っている。
【0012】
次に、転回角センサの異常検出の方法について説明する。
転回角センサの異常は、コントローラ(7)で転回角センサ用の電源のオープンとショート、グランドのオープンとショート、信号のオープンとショートなどのハードウエア検出で行うことが可能である。また、転回角センサを複数設けている場合では、それらのセンサの信号特性の関係が所定値以内でない場合を検知し、異常と判定することができる。さらにコントローラがアクチュエータを駆動したにも係わらず、転回角センサの値が変化しない場合、異常と判定するソフトウエア検出で行うことができる。
【0013】
このようなシステムにおいて、転回角センサの異常を検出した場合は、実際のアクチュエータの位置と転回角センサの値が異なることになるため、アクチュエータが操船者の意思と違う方向に動き続けたり、アクチュエータがとまって動かなくなったりしてしまう可能性がある。そこで転回角センサの異常を検出した場合でも、アクチュエータが故障することなく、操舵装置が転回できる方法について説明を行う。
【0014】
転回角センサ(6)の異常をコントローラ(7)が検出した場合の対応方法について、図3のフローチャートに従って説明する。図3のフローチャートは、図2のS206とS207の間に挿入されているものとする。
S301でコントローラが転回角センサの異常の有無を検出し、異常がない場合(NO)図2のS207へ戻る。一方、転回角センサ異常を検出すると(YES)、S302でコントローラは、転回角センサ値の更新を中止する。正常動作時、コントローラは、転回角センサの現在値と過去の値を保持している。転回角センサの異常時、転回角センサ値の更新を中止することで、転回角センサの過去の値は、ほぼ正確な値として保持することができる。次に、S303でコントローラ同士は電気的に接続されていて、例えばCAN通信を使って正常な別の転回角センサがあるかどうか確認する。正常な転回角センサがある場合はS304へ進み、正常な転回角センサがない場合はS307へ進む。S304では、転回角センサの異常発生前のアクチュエータの制御が同調動作であったかを確認する。ここで同調動作とは、複数のアクチュエータがハンドル操作により、ほぼ同一角度で連動して転回されている状態を言う。同調動作であれば、S305で転回角センサ異常のアクチュエータは、正常な転回角センサの値に従って制御を行う。同調動作をしていれば、複数の船外機がほぼ同じ位置にあると考えられるため、正常な転回角センサに従うことで動作を保障することができる。
【0015】
一方、同調動作でない場合、例えば右旋回するために右舷の船外機を大きく転回させ、左舷の船外機をほとんど転回させない、また、直進であっても、左右の転回方向を逆方向に駆動する。さらには左右の船外機のプロペラの推進方向を逆として横移動を行う場合、船外機を逆方向転回する等々、運転モードによっては同調動作をしないことが起こる。この場合、S306で制限的動作を付加した特別な制御処理を行うが、この内容については後述する。また正常な転回角センサがない場合、S307で転回角センサも1個しかなく、かつ異常を検出した場合の特別処理を行うが、この内容についても後述する。
【0016】
次に前記S305の正常な別の転回角センサに依存した制御内容について、さらに詳細に図4に沿って説明する。転回角センサの異常を検出したコントローラ(7)は、S401で他の正常な転回角センサの現在転回角を受信する。S402で制御転回角がある閾値以内(−a<制御転回角<a)であるかどうかを判定する。これは、ハンドルの遊びの量に対するものであり、細かいハンドル操作は無視して船外機の転回に影響を与えないようにしている。閾値範囲内であれば、S403で船外機を駆動しないのでアクチュエータ転回停止信号を出力する。一方、閾値範囲外であれば、S404で前記制御転回角に他機の現在転回角を加算し目標転回角を演算する。その後転回角異常処理制御に入るが、この異常処理は2つのパターンに分離される。S405で現在の転回角を閾値bと比較する。ここで|b|>|a|であり、船外機がすでに左舷端付近又は右舷端付近に転回しているか否かをチェックしている。
【0017】
S405で閾値|b|以上であれば、S406で他機の転回角センサ値に従って転回駆動を継続し、この他機転回角センサによる追従制御は閾値b範囲内に入るまで続けられる。一方、S407では、前記追従制御が閾値b範囲内に入った、又は現在の転回角が閾値|b|以内である場合、他機の転回角センサ値を利用して同様なフィードバック制御を行うが、目標転回角を範囲b以内に制限を行って転回角が|b|を越えることがないようにアクチュエータを駆動制御する。つまり目標転回角クリップ処理により転回角センサ正常時よりも制御領域を制限したものとしている。これは、船外機によって取り付け位置、傾きが同じでなかったり、船外機、転回角センサに個体差があったりするため、転回角にずれが生じる可能性があり、範囲bに制限しているものである。S406、S407において、目標転回角と現在転回角が一致していない場合、S408で目標転回角が現在転回角より小さければ左に転回させ、目標転回角が現在転回角より大きければ右に転回させる。また、目標転回角と現在転回角が一致すれば、駆動を停止し処理は終了する。この一連の制御は、転回角センサの異常を検出した位置が閾値を超えた領域にいる場合には、閾値以内に入るまでは他機の転回角センサに従って通常と同様に転回制御を続け、一旦閾値以内に入ると閾値を越えることがないように制限した制御を行うものである。なお、S406の追従制御において、正常転回角センサ側であっても転回最端部に至ればアクチュエータの転回駆動は停止、又は電力低下を行うため、異常センサ側も最悪でもしばらく後には同様な停止、又は電力低下になる。しかしそれより先だって、例えば所定時間で区切って、所定時間内は正常転回角センサに追従制御を継続し、その後は再度範囲bに入るまで制御を停止、電力低減、又は中央位置戻り方向のみに制御することも可能である。
【0018】
次に図5により別の制御方法を説明する。図4と同一の符号は同等の処理を行っているものとする。S501aで目標転回角を演算する際に、制御転回角と他機の現在転回角を加算したものに係数K1(K1<1)を乗算することにより目標転回角自体を正常時に対し狭い範囲に制限する。その後、S408でこの目標転回角と他機の転回角との差に基づいて通常のフィードバック制御を継続する。ここでは、正常なものと異常な転回角センサ値のもので目標転回角が異なるため、異常なものは正常な転回角センサの前回値と今回値の偏差を用いて制御を行う。さらに目標転回角に制限を付する別の方法として、S501bのように制御転回角自体にK2(K2<1)を加味することも可能である。転回角を正常時に比較し小さい領域に制限して転回駆動を継続することができる。さらにまた、目標転回角自体に上限制限を付加することもできる。これらの制限付加方法の選択は、例えばフリーハンドル、つまりハンドルの操舵角に制限がなく何回でも同一方向に回転操舵可能な構造、逆に自動車のようにハンドル回転角に制限がある構造等、ハンドル構造に依存させることもできる。一方、この制限により他機の船外機と転回角に差異が発生することになり、この制限が操船者にとって違和感を覚えさせる可能性がある。そのため正常な船外機も同様な制限を付することにより、この違和感を解消させることもできる。
【0019】
転回角センサの異常が回復したと判断した場合は、通常の制御に戻すことは容易である。例えば、転回角センサの異常を検出したときに、転回角センサの前回値のみ更新を中止し、現在値は更新を続ける別の手段を備え、正常か異常かの判定は継続する。このように転回角センサが異常中であっても、正常と異常の判定し続けることで正常判定に戻った場合簡単に通常制御に戻すことができる。また、転回角センサの異常を検出したときに前回値を記憶し、更新は通常通り継続して正常と異常の判定を行う方法もある。
以上のように、転回角センサ異常が発生し、他機の正常なアクチュエータの転回角センサに従い転回制御を継続させるのみならず、転回角に制限を付することによりアクチュエータを故障させることなく、操船を続行できる効果を奏する。
【0020】
実施の形態2.
次に転回角センサに異常を検出し、正常な転回角センサがない場合、例えば小型船舶のようにアクチュエータ、転回角センサが各々1個のみ設置されている場合の対応方法について説明する。図6にシステム構成を示したが、この船舶のコントローラ(7)にはアクチュエータを駆動している電流を検出する駆動電流検出手段(9)を有している。駆動電流検出手段(9)は、アクチュエータ(5)を転回駆動するために左、右それぞれの向きの電流検出ができる必要がある。
【0021】
前記駆動電流検出手段(9)を用いて転回を継続する方法について、図7に沿って説明する。S701で閾値の範囲内(制御転回角>a)であれば、S702で所定時間右に転回する。S703で閾値の範囲内(制御転回角<−a)であれば、S704で所定時間左に転回する。この閾値aは、実施の形態1で記載したハンドルの遊びの量であり、一定角以上の値とすれば、細かいハンドル操作は無視して船外機の転回に影響を与えないようにすることができる。
【0022】
次に、S705でアクチュエータの駆動電流を検出する。S706で閾値|c|より駆動電流が大きいか小さいかを判定する。電流値が閾値|c|より小さければ、そのまま駆動を継続する。電流値が閾値|c|より大きければ、船外機が駆動範囲の境界にあり、それ以上転回すると操舵装置が故障すると判断し、S707でアクチュエータの駆動を停止する。またS707の駆動停止は急激に停止するのではなく、徐々に電流を減らしながら停止することも可能である。
【0023】
前記S702、又はS704における所定時間は、実験等で予め決められた時間である。また流す電流値も可変することも可能である。時間・電流の可変のトリガとなるものは、制御転回角の大きさ、又は早さに依存し、電流値が大きければより早く転回するため、所定時間を短くし、逆に電流値が小さければ所定時間を長めに修正することができる。
前記閾値a、cについては一定値である必要はなく、例えば船速に依存して変化させ、船速が速ければ速いほど、大きな値とすることも可能である。
【0024】
実施の形態3.
次にさらに別の方法として、推定転回角を使用する方法について説明する。転回角推定手段は、コントローラ(7)に配置されているものとし、具体的方法を図8に沿って説明する。
S801で目標転回角を算出する。その方法は、制御転回角に推定した転回角を加算する。転回角センサの異常を検出した最初の制御では、実施の形態1の図3、S302における正常な過去の転回角を代用する。その後は後述する推定転回角を使用する。
【0025】
次にS802で船外機の転回限界角度を制限する。左の限界角度をleft_deg、右の限界角度をright_degとした。つまり、S802では、目標転回角が船外機の転回限界角度以内であるか判定する。もし、船外機の転回限界角度を越えていれば、船外機の転回限界角度が目標転回角になるように処理する。S803で左舷側、右舷側のどちら側の限界角度を超えているか判定する。左舷側の限界角度を超えていれば、S804で目標転回角を左舷側の限界角度であるleft_degに設定する。右舷側の限界角度を超えていれば、S805で目標転回角を右舷側の限界角度であるright_degに設定する。
【0026】
S806で制御転回角からアクチュエータの駆動時間を決定する。また駆動電流も制御することも可能である。前記実施の形態2に記載した時間・電流の可変方法とは別に、このアクチュエータ駆動電流値は、船速、トリム角、シフト位置などから決定することにより、推定転回角と実際の船外機の転回角度が近い精度の高い制御が可能となる。例えば、船速、トリム角、目標転回角、現在転回角に応じて変化する係数を設定し、電流値にその係数を掛けることで補正を行う。例えば、船速の係数は、船速が速くなるほど、電流値が増加するように設定する。トリム角の係数は、トリム角が小さいほど電流値が増加するように設定する。これらの関係をマップにより記憶しておき、制御する時点の船舶の操船状況に応じて時間・電流を可変することもできる。これらは船外機の場合、船速、トリム角により、船外機が受ける負荷が変わり、転回させるときの必要な電流値が変化するためである。また、船外機が複数設置される場合は、プロペラの回転方向を逆にする場合もある。プロペラの回転方向により船外機を転回させるときに船外機が受ける負荷の大きさが左右で異なる。そのため、船外機の設置位置でも転回させるときの電流を変化させることも可能である。同様に、前進、後進でもプロペラの回転は逆になるため、シフト位置でも電流値変化させることも可能である。この決定した値で、S807で船外機を転回駆動する。
【0027】
S808で前記駆動時間が経ったならば、推定転回角を目標転回角として更新する。これにより転回角センサ異常の初回以外はこの推定転回角をS801で使用することができる。この推定転回角はあくまでも推定値であるため、実転回角と誤差が生じ、この誤差は小さくなることもあるが、大きくなることも起こる。例えば、所定以上の船速があるにもかかわらず左右どちらにも駆動していない状況が継続した場合、推定転回角を中心、0にリセットすることにより、推定転回角が実転回角と等しくなり誤差を抑制することが可能となり、結果転回制御の精度を向上できる。
【0028】
転回角推定方法は、実施の形態1における目標転回角とのフィードバック制御とは異なり、いわゆるオープン制御となっている。この制御により図3におけるS306、S307の異常時処理1、2に使用できる。また、S306の非同調処理においては、船外機同士の干渉防止の目的で、推定転回角の算出のための前記マップをさらに転回角が小さい方向に制限したものとすることにより、非同調制御の転回角を制限した転回制御を行うことも可能である。さらに非同調処理においては、S804、S805における目標転回角の制限値left_deg、又はright_degを異なる値とすることも可能である。例えば、操船者の操舵方向に対して反対方向の制限値を小さい値とすることが考えられる。単に制限値を小さい値とする場合のみならず、船外機の転回方向が他の船外機と逆方向の場合、船外機同士の干渉の防止のために、船外機同士が近づく方向の制限値は小さく、離れる方向の制限値は大きくすることも可能である。また三機以上の船外機を搭載している場合、中側に搭載された船外機が干渉しないように制限値を小さくしすぎないようにすることも可能である。この方法では、船舶の操船応答性を高くできる。さらに図2のS208のクリップ値と比較し、前記制限値left_deg、及びright_degを小さい値にすることもできる。
【0029】
さらにまた、転回角センサ異常を検出したときに、非同調制御であれば、同調制御に変更することもできる。操船者の意図しないところで船外機が転回しても安全な状態であれば、例えば、ニュートラルかつアイドル状態、異常検出と同時に自動的に異常前の正常な値を利用して船外機をほぼ正確な位置に転回させることができる。ここで動かす船外機は転回角センサが異常な船外機でも、正常な船外機でもどの船外機でもよい。また、転回すると安全でないような場合は安全な状態になるまで待ち、同調動作に戻すことも可能である。また、操船中に船外機同士がほぼ同じ位置になった場合に、同調動作に戻すこともできる。同調動作に戻れば、図3のS305のように他機の正常な転回角センサに従うように処理してもよい。
【0030】
実施の形態4.
さらに別の方法として、コントローラが転回角センサの異常を検出すると、転回位置を複数段階で制御し、予め決められたアクチュエータ駆動時間に依存する方法について図9を用いて説明する。例えば最も簡単な3段階で制御するときの船外機の制御領域の例では、max_deg=100%、mid_deg=20%とする。転回角センサ前回値から船外機位置を判定するフローを図9(a)に示す。−100≦転回角センサ前回値≦−20の領域であるかを判定し、この領域内であれば船外機位置act_pos=0とする。S901の領域でなければ、S903で−20<転回角センサ前回値<20の領域であるかを判定し、この領域内であればact_pos=1とする。S901、S903共に当てはまらなければ、20≦転回角センサ前回値≦100の領域であるため、act_pos=2とする。
【0031】
船外機位置判定後、操船者がハンドルを操作したときの3段階制御時の処理例を図9(b)に示す。
まず、S911で操船者が一定角度(閾値e)以上ハンドルを操作したかを判定する。この処理では、船外機を複数段階で制御するため、ハンドルを細かく動かしても船外機が動いてしまわないように閾値を設けるものである。閾値eは、実施の形態2の閾値cのように可変の値に設定することもできる。S911でハンドル操作が所定角度以上あれば、S912に移り、act_pos=0であるか判定する。act_pos=0であれば、最も左舷側に船外機が向いていることになるので、その位置から右舷側へのみ転回可能としこの位置から左舷側へは転回しない。S913で右舷側への転回であれば、所定時間右に転回する。S914の転回により、船外機の位置が左舷側から中央付近へ転回されたため、S915でact_posを0から1に更新する。逆にS916でact_pos=2であれば、最も右舷側に船外機が向いていることになるので、その位置から左舷側へのみ転回可能としこの位置から右舷側へは転回しない。S917で左舷側への転回要求であれば、所定時間左に転回する。S918の転回により、船外機の位置が右舷側から中央付近へ転回されたため、S919でact_posを2から1に更新する。S912、S916のどちらでもない場合、act_pos=1であるため、S920に進む。船外機が、中央位置にあることになるので、左右どちらでも転回可能とする。どちら向きに動かすかは、制御転回角に従う(S921、S923)。所定時間転回した後は、船外機の位置act_posを更新する(S922、S924)。
【0032】
転回時間は、予め制御の段数、駆動電流等により、アクチュエータ駆動時間を設定しておく。制御段数が多い、また、船外機の転回領域の広さが異なる設定をした場合には、位置によって転回時間を可変にすることもできる。また、制御段数を増やした場合、制御転回角の閾値を二つ以上持たせ、閾値の大きさにより、数領域分を一度に転回させても良い。精度を高めるため、安全性を高めるために、エンジンの点火や噴射や吸入空気量を制御するエンジン制御コントローラを備え、エンジン制御コントローラとコントローラがCANで通信可能なシステムにおいて、転回角センサが故障すると燃料噴射量や吸入空気量を減らすことで、船速を制限する処理を加えてもよい。
【0033】
実施の形態5.
また、別の方法としてアクチュエータがモータであり、船外機自体の転回角ではなくモータ転回角を検知するモータ角センサを有しているシステム構成を図10に示す。図において、10はアクチュエータモータのモータ角センサであり、モータ角演算手段(11)をコントローラ(7)が有している。モータ角演算手段(11)は、モータ角センサ(10)の信号により、モータを右回転、又は左回転したときのモータの転回角を演算し、この転回角は船外機の転回角に相当するものである。
【0034】
前記モータ角演算手段(11)を用いて転回を継続する方法について、図11に沿って説明する。ここで、モータ角演算手段によって演算される転回角を演算転回角とする。演算転回角は、実施の形態3と同様に、転回角センサの異常を検出した最初の制御では、実施の形態1の図3、S302における正常な過去の転回角を代用する。その後は後述する演算転回角を使用する。
【0035】
S1101で演算転回角に制御転回角を加算し、目標転回角を演算する。コントローラ(7)は、S1102で予め設定された目標転回角の範囲内に収まるようにクリップ処理を行う。S1103で目標転回角と演算転回角が一致しているかを調べる。目標転回角と演算転回角が一致していなければ(NO)、S1105で演算転回角と目標転回角を比較する。演算転回角が目標転回角より大きければ(YES)、S1106で左に転回させ、演算転回角が目標転回角より小さければ(NO)、S1107で右に転回させる。S1106、S1107で転回させると、コントローラ(7)は、S1108でモータ角センサ(10)の信号より、演算転回角を算出し、フィードバック制御を行う。そして、目標転回角と演算転回角が一致すると(YES)、S1104でアクチュエータの駆動を停止する。
【0036】
以上のように、船外機自体の転回角を検出する代わりに、アクチュエータの駆動に基づき転回角に代用する方法であっても同様な効果を奏することができる。この発明は、前記の各実施の形態に限定されるものではなく、これらの実施の形態の可能な組合せを含むことは云うまでもない。操船者の指示である舵輪センサ信号から制御用の転回角を算出する制御角演算装置(3)と、この制御転回角と転回角センサとの差異に応じてアクチュエータを駆動するコントローラ(7)を分離して記載したが、これら手段を1つの制御装置として構成することも可能である。また、制御転回角に閾値を設けてハンドルの遊びを設定する処理は、センサの正常、異常に関係なく、どの実施の形態に対しても有効である。
【0037】
この発明の操舵装置において、転回角センサ異常を検出した場合、非同調制御を中止し同調制御に変更することもできる、また、この異常が回復したと判断した場合は、通常の制御に戻すことは容易である。
【0038】
この発明の操舵装置は、転回角センサの異常を検出した場合であっても船外機を操船者の意思に沿った転回駆動を行うことができ、操船し続けることが可能である。また船外機・転回角センサの個数に関係なく、転回駆動を継続できる。
【0039】
この発明の操舵装置において、転回角センサは実施の形態5のようなモータ角センサでもよく、転回角センサはアクチュエータの位置が分かるようなセンサであれば、すべての実施の形態が実現可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 ハンドル、2 舵輪センサ、3 制御角演算装置、4 船外機、5 アクチュエータ、6 転回角センサ、7 コントローラ、8 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1機以上の船外機が取り付けられた船舶において、操船者が操舵方向を指示するハンドルと、このハンドルの操作角を検出する舵輪センサと、前記船外機を転回させるアクチュエータと、このアクチュエータによる前記船外機の転回角を検出する転回角センサと、前記操作角に基づき前記アクチュエータを転回駆動する制御転回角を算出し、この制御転回角と前記転回角との差異に従って前記アクチュエータを転回駆動する制御装置とを有し、この制御装置は、前記転回角センサの異常を検出した場合、前記制御転回角に応じて予め決められた所定時間、所定電流に基づき転回駆動を継続することを特徴とする操舵装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記アクチュエータの駆動電流を検出する駆動電流検出手段を有し、この駆動電流が所定値より小さい範囲では転回駆動を継続し、駆動電流が所定値より大きい場合は、転回駆動を停止することを特徴とする請求項1記載の操舵装置。
【請求項3】
前記制御装置は、現在転回角に制御転回角を加味することにより目標転回角を算出し、前記転回角センサの異常を検出した場合、前記目標転回角に対して制限を付加するとともに、前記制御転回角から前記アクチュエータの駆動電流、又は駆動時間を決定し転回制御を行い、前記目標転回角を推定転回角と同じと判断し、次回の制御では推定転回角に前記制御転回角を加算することにより目標転回角とする転回角推定手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の操舵装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記転回角センサの異常を検出した場合、転回角を複数の段階に区切り、この段階毎に予め決められた駆動時間、駆動電流に従って駆動制御を継続することを特徴とする請求項1記載の操舵装置。
【請求項1】
少なくとも1機以上の船外機が取り付けられた船舶において、操船者が操舵方向を指示するハンドルと、このハンドルの操作角を検出する舵輪センサと、前記船外機を転回させるアクチュエータと、このアクチュエータによる前記船外機の転回角を検出する転回角センサと、前記操作角に基づき前記アクチュエータを転回駆動する制御転回角を算出し、この制御転回角と前記転回角との差異に従って前記アクチュエータを転回駆動する制御装置とを有し、この制御装置は、前記転回角センサの異常を検出した場合、前記制御転回角に応じて予め決められた所定時間、所定電流に基づき転回駆動を継続することを特徴とする操舵装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記アクチュエータの駆動電流を検出する駆動電流検出手段を有し、この駆動電流が所定値より小さい範囲では転回駆動を継続し、駆動電流が所定値より大きい場合は、転回駆動を停止することを特徴とする請求項1記載の操舵装置。
【請求項3】
前記制御装置は、現在転回角に制御転回角を加味することにより目標転回角を算出し、前記転回角センサの異常を検出した場合、前記目標転回角に対して制限を付加するとともに、前記制御転回角から前記アクチュエータの駆動電流、又は駆動時間を決定し転回制御を行い、前記目標転回角を推定転回角と同じと判断し、次回の制御では推定転回角に前記制御転回角を加算することにより目標転回角とする転回角推定手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の操舵装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記転回角センサの異常を検出した場合、転回角を複数の段階に区切り、この段階毎に予め決められた駆動時間、駆動電流に従って駆動制御を継続することを特徴とする請求項1記載の操舵装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−101795(P2012−101795A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−10254(P2012−10254)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【分割の表示】特願2009−278423(P2009−278423)の分割
【原出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【分割の表示】特願2009−278423(P2009−278423)の分割
【原出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
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