説明

船舶操縦装置及び船舶操縦装置の製作方法

【課題】ラダートランクの製作費用を低減でき、設置工程が簡単になる船舶操縦装置及び当該船舶操縦装置の製作方法を提供する。
【解決手段】ラダートランク10の第1の部分12は収納シャフト11の壁17と第1の部分12との間に中間空間14が存在するように配置され、ラダートランク10の第2の部分13は収納シャフト11から突出し、中間空間14は少なくとも特定領域が連結手段15で充填され、連結手段15は把持高さ16にわたって第1の部分を把持する船舶操縦装置100と、製作費用を低減し、設置工程を簡単にするために、連結手段15は収納シャフト11の壁17に第1の部分12を連結し、第1の部分12の全周を取り囲むように配置され、少なくとも把持高さ16の下端部領域18と把持高さ16の上端部領域19とに配置され、把持高さ16と第2の部分13との間の長さ比は少なくとも1になるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラダートランク及び収納シャフトを含む船舶操縦装置に関する。
【0002】
さらに、本発明は、船舶用操縦装置の製作方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、貨物船やコンテナー船の大型ラダーをいわゆるラダートランクに装着することは、一般に相当な大きさの買い入れ部品又は造船所製作部品などの構造的な部品の形で完成させられる。そのため、ラダーシステムのラダートランクは、ラダーストック(rudder stock)を装着するためと、船舶に舵力(rudder force)を伝達するためとに使用される。ラダートランクにラダーストックを装着することは、平軸受ブッシングで構成される、いわゆるネック軸受を用いて行われる。このような軸受ブッシングは、一般にラダートランクの下部に挿入される。さらに、例えば、ラダートランクの上端部又はラダーエンジン内に配置される第2の軸受を設けることができる。ラダートランクは、生成されたラダーストックの力とモーメントを船舶内に導入するために船舶の既存の船尾構造物内に導入される。
【0004】
更に、潤滑剤の費用を最小化し、かつ環境を保護するためには、いわゆる海水潤滑を提供することが公知となっている。海水潤滑を提供することによって、グリース(grease)を使用することなくラダートランクの軸受ポイントを潤滑することが可能である。海水潤滑を通して浸透する海水が船舶内に進入できないように保証するために、ラダートランクは密封システムを含まなければならない。このような密封システムは、一般にラダーエンジンデッキの下側に配置され、そのため、ラダートランク側のラダーストックを密封する。ラダートランク自体も、海水が船尾内に流入することを防止するために水密方式で溶接される。
【0005】
従来の構造において、ラダートランクは、連続鋼管(steel tube)で構成される。一般に、鋼管又はラダートランクは、溶接によって船舶構造物に連結される。この場合は、十分な力の導入を保証するために多様な連結板とストラット(strut)がラダートランクに付着されなければならない。このような連結板は、造船所で船尾部に設けられる各装置、例えば、トランクの迅速な設置と正確な整列を保証するための連結板と正確に合致しなければならない。しかし、溶接中の高度の熱導入とそれによる溶接変形により、正確な位置が常に保証されない。さらに、構造物は、生成された舵力を船舶構造物内に確実に導入しなければならなく、大波、座礁などの外部から作用する力に対して十分な安全性を有していなければならない。
【0006】
ラダーシステムの他の構成要素に比べて、ラダートランクはその設置が船尾部の最初敷設と共に行われるので、比較的初期に組み立ての準備をしなければならない。さらに、大型貨物船又はコンテナー船用ラダートランクは非常に大きな重量と長さを有する。例えば、鋼材で製造されたトランク、又は、いわゆる大型コンテナー船用鋼材トランクは、10mを超える長さと約20トンの重量を有する。このような鋼材トランクの大きな長さと重量により、ラダートランクの製造は高い材料費を伴う。さらに、大きな寸法と重量により、高い輸送費と保管費を算定しなければならない。
【0007】
図1は、普通使用される従来技術として知られているラダートランク9を示す。図1に示すラダートランク9は、ラダーシステム用に設計されている。ラダートランク9の長さは、ラダーハブからラダーエンジンデッキまでの距離に対応するように定められる。一般に、ラダートランク9は、二つの別途の部品で製作される。ラダートランク9の上部の機能は、特に船舶、例えば、大型船を密封することである。
【0008】
複数の連結手段、例えば、ストラット及び/又は連結板25がラダートランク9に設けられる。連結手段は、船舶構造物又は船体(図示せず)、特に船尾構造物にラダートランク9を連結するために使用される。一般に、連結手段は船体又は船舶構造物の一部に溶接される。
【0009】
溶接によって船舶構造物に連結される普通の鋼材ラダートランクの他にも、溶接によって船舶構造物に連結されず、いわゆるトランク管内に挿入された後で鋳造又は接合されるラダートランクは特許文献1に既に開示されている。この場合は、ラダートランクが鋼材で製造されるのではなく、繊維複合材で製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第2033891(B1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、公知のラダートランクに比べてラダートランクの製作費用を低減でき、設置工程が簡単になる船舶操縦装置及び当該船舶操縦装置の製作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本目的は、請求項1に係る船舶操縦装置と請求項17の特徴部に係る船舶操縦装置の製作方法によって達成される。
【0013】
これによると、上記で明示した船舶操縦装置は、ラダートランク及び収納シャフトを含む。ラダートランクの第1の部分、すなわち、上部は収納シャフト内に配置され、ラダートランクの第2の部分、すなわち、下部は収納シャフトから下方に突出する。「上部」又は「上側」及び「底部」又は「下側」という用語は、船舶に設置されるときのラダートランクの状態と関係を有する。この明細書では、ラダートランクはラダートランクの第1の部分又は上部と収納シャフトの壁との間に中間空間が存在するように配置される。中間空間は、少なくとも一定領域で連結手段によって充填される。連結手段は、把持高さにわたってラダートランクの第1の部分を把持する。この場合、連結手段は、ラダートランクの第1の部分の全周にわたってラバートランクの第1の部分又は上部を収納シャフトの壁に連結し、連結手段は少なくとも把持高さの下端部領域と上端部領域に配置される。したがって、「把持高さ」は、ラダートランクが収納シャフト内で把持される高さ又はラダートランクが収納シャフトの壁に連結される高さであると理解しなければならない。連結手段がラダートランクの全周にわたってラダートランクと収納シャフトとの間を連結するためには、中間空間がそれに合わせてラダートランクの全周を取り囲むように構成されなければならない。そのため、把持高さは、連結手段がラダートランクと収納シャフトの壁との間に設けられる最下部領域から、連結手段がラダートランクと収納シャフトの壁との間に設けられる最上部領域まで延長される。これと同時に、ラダートランクと収納シャフトの壁との間の連結手段がそれぞれ配置される最上端部と最下端部領域との間の中間空間は空いていたり、トランクと収納シャフトの壁との間に配置される連結手段が全くなかったり、その結果、自由空間を含むことができる。例えば、連結手段が二つの領域のみに、すなわち、把持高さの最下部領域と最上部領域のみに設けられ、自由空間が二つの領域の間に設けられることも実現可能である。把持高さの最下部領域は、例えば、収納シャフトが底部で終わったり終端されたり、ラダートランクが収納シャフトから下方に突出する領域である。把持高さの最上部領域は、例えば、収納シャフト内のラダートランクが上部で終わる領域である。したがって、把持高さの上部領域は装着状態の船舶操縦装置のラダーエンジンデッキの下側に位置する。例えば、ラダートランクは、収納シャフト内で収納シャフトの高さの1/2にわたって配置することができる。この場合、連結手段がラダートランクと収納シャフトの壁との間に配置される把持高さの最上部領域は、全体の収納シャフト高さの約1/2の地点に位置するようになる。しかし、ラダートランクは、より小さいか大きい高さにわたって収納シャフト内に配置することもできる。
【0014】
本発明によると、ラダートランクの第2の部分に対する把持高さの長さ比は、少なくとも1である。したがって、収納シャフトに把持されたり、連結手段によって収納シャフトの壁に連結されたりするラダートランクの領域は、少なくとも収納シャフトから下方に突出するラダートランクの部分だけ長い。望ましくは、把持高さは、少なくともラダートランクの下方突出部分の長さと同一であり、最大には3倍である。より望ましくは、ラダートランクの第2の部分に対する把持高さの比は1と2との間である。この場合、把持高さは、少なくともラダートランクの第2の部分だけ長いが、せいぜいラダートランクの第2の部分の長さの2倍である。
【0015】
特に、把持高さの下端部領域及び把持高さの上端部領域に連結手段を設けることと、収納シャフトから下方に突出するラダートランクの部分、すなわち、ラダートランクの第2の部分に対する把持の高さの本発明に係る長さ比とは、ラダートランクの製作費用が従来のラダートランクに比べて著しく低減されるという利点を有する。収納シャフトの壁にラダートランクを連結するための連結手段の他には、船舶構造物にラダートランクを連結するために如何なる装置も追加要求されない。収納シャフトは、この目的のために、造船所で本発明に係るラダートランクの寸法に基づいて設けられた船舶構造物又は船体内に予め設けられたり取り入れられたりする。さらに、これによって設置工程が簡単になる。例えば、公知のラダーシステムとは対照的に、本発明に係る装置では、ラダーシステムの設置時に、それ以上ラダーが初期に設けられる必要がない。本発明に係る装置の場合、例えば、ラダートランクの寸法と公差を提供し、船尾構造物を製作する時点で造船所で船尾部に収納シャフトを設けるだけでも十分である。実際のラダートランクの設置は、以下の本発明に係る装置によって行うことができる。
【0016】
連結手段は、望ましくは、接着剤接合のための手段を含む。その結果、ラダートランクは、収納シャフトの壁に接着剤で接合される。したがって、ラダートランクは、収納シャフトの壁と接着・連結される。連結手段は、接着性を有する任意の連結手段で構成することができる。この場合、連結手段は、樹脂又はエポキシ系鋳造材を含むことができる。例えば、連結手段は、エポキャスト(Epocast)のようなエポキシ樹脂又は、例えば、Belzona(登録商標)のような他の組み立て用接着剤を含むこともできる。連結手段は、樹脂と硬化剤とが混合されているのが望ましい。したがって、連結手段は2成分システムを含むことができる。連結手段は、Belzona(登録商標) 5811で構成されるのが特に望ましい。Belzona(登録商標)5811は十分に優れた接着性を有しており、Belzona(登録商標)5811を連結手段として使用すると、ラダートランクと収納シャフトの壁との間の隙間又は中間空間の密封が、特にこの中間空間の上端部及び下端部領域で行われるようになる。したがって、連結手段がこのような高い接着性を有しているので、本発明に係る装置は、ラダートランクと収納シャフトの壁との間の中間空間の領域で隙間腐食が発生するのを抑制し、その結果、連結手段は既に海水に対してシールとしての役割をするようになる。
【0017】
更に、連結手段は、全体の把持高さにわたって連続的に配置されるとこが望ましい。したがって、本実施例には、連結手段によって充填されていない把持高さの下端部領域と上端部領域との間に中間空間又は自由空間が設けられない。そのため、ラダートランクの第1の部分は、全体の把持高さにわたった連結手段によってラダートランクの第1の部分の全周にわたって完全に取り囲まれ、その結果、全体の把持高さにわたって収納シャフトの壁に完全に連結される。
【0018】
ラダートランクの第1の部分と収納シャフトの壁との間の中間空間は、少なくとも把持高さの1/2にわたって一定の隙間を有することも望ましい。ラダートランクの第1の部分と収納シャフトの壁との間の中間空間は、少なくとも把持高さの2/3にわたって一定の隙間を有するのが特に望ましく、少なくとも把持高さの3/4にわたって一定の隙間を有するのが更に望ましい。原則的に、収納シャフト又は収納シャフトの壁は任意の可能な形態のシャフトであり得る。例えば、収納シャフトはリフトシャフトの形態で構成することができ、その結果、互いに所定角度をなす少なくとも4個の壁又は面で形成することができる。しかし、収納シャフトは少なくとも全体のクランプ高さにわたって円筒状を有するのが望ましい。したがって、収納シャフトは把持高さの各領域で円状断面を有するのが望ましい。把持高さの領域で円筒状を有する収納シャフトの実施例により、ラダートランクの第1の部分と収納シャフトの壁との間の中間空間の隙間は少なくとも把持高さの1/2にわたって一定であるだけでなく、一方では、全面的に、すなわち、ラダートランクの全周にわたって一定である。ラダートランクの第1の部分と収納シャフトの壁との間の中間空間の隙間は、例えば、2mmと50mmとの間である。隙間は、望ましくは5mmと30mmとの間であり、10mmと20mmとの間が特に望ましい。比較的小さい隙間及び把持高さのほとんどにわたって一定の隙間は、必要な連結手段の量が比較的少なく維持されるという利点を有する。
【0019】
最大の曲げモーメントがスケグ(skeg)の底部領域、すなわち、スケグの下端部又は収納シャフトの下端部領域に発生するので、把持高さの下端部領域に成形部(shaping)を提供することが望ましい。したがって、把持高さの下端部領域の中間空間は、把持高さの上端部領域でより大きい隙間を有する。そのため、ラダートランクの第1の部分と収納シャフトの壁との間の中間空間は、把持高さの少なくとも75%にわたって一定の隙間を有することが望ましく、把持高さの少なくとも90%にわたって一定の隙間を有することが特に好ましく、把持高さの下端部領域のみでより大きい隙間を有する。隙間は、上部から底部側に見ると、把持高さの下端部領域で増加するのが更に望ましい。最も簡単な収納シャフトの可能な構成を達成するために、把持高さの下端部領域の隙間は上部から底部側に見ると線形に増加する。したがって、収納シャフトの下端部領域の収納シャフトの壁は、外側に傾斜したりラダートランクから遠ざかったりする。したがって、少なくとも把持高さの下部領域では収納シャフトが逆漏斗(inverted funnel)形状を有する。通常、把持高さの下端部領域での隙間は15mmと100mmとの間である。把持高さの下端部領域での中間空間の隙間は把持高さの上端部領域での中間空間の隙間より大きいので、応力ピークを防止することができる。
【0020】
より望ましくは、把持高さの上端部領域でのラダートランクの壁の厚さは、把持高さの下端部領域でのラダートランクの壁の厚さより薄い。ラダートランクの外径は、全体の把持高さにわたって実質的に一定であるのが望ましい。したがって、把持高さの上端部領域でのラダートランクの内径は、把持高さの下端部領域でのラダートランクの内径より大きいのが望ましい。これによって、ラダートランクの壁の厚さはテーパー状を有し、ラダートランクの壁の厚さのテーパーリングは底部から上部側に向かい、底部から上部側に見ると、ラダートランクの内径の連続的な拡大によって達成される。これは、ラダートランクの製作に使用される材料を節約できるという利点を有する。さらに、上端部領域でのラダートランクの壁の厚さのテーパーリングにより、ラダートランクは、従来のラダートランク又は壁の厚さが一定であるラダートランクに比べて重量が軽い。力の最大導入、特に最大の曲げモーメントが発生する部分は把持高さの下端部領域で発生するにもかかわらず、ラダートランクは当該領域で十分に厚い壁の厚さを確保することができることが保証される。ラダートランクの壁の厚さのテーパーリングは、ラダートランクの外径に変化を与えず、内径を拡大するので、ラダートランクの第1の部分と収納シャフトの壁との間の中間空間の隙間は、ラダートランクのテーパーリングにもかかわらず、比較的簡単な方法で一定に維持することができる。
【0021】
ラダートランクは、船舶に又は収納シャフト内に又は収納シャフトの壁にラダートランクを連結するために、ラダートランクから外側に突出する任意の締結手段、特に、締結板、締結リブ又はストラットを有していないことがより望ましい。したがって、従来技術として公知のラダートランクとは対照的に、本発明に係るラダートランクは、板やリブ又はその他の外側突出締結手段を有していない。したがって、ラダートランクは、管のみ、望ましくは、鋼管のみで構成される。このような簡単な構造は、公知のラダートランクではできない。
【0022】
収納シャフトは、少なくとも把持高さの全領域で実質的に管又は管型方式で構成されることが望ましい。したがって、把持高さ領域のラダートランクは、管、すなわち、収納シャフト又は管型収納シャフト内に配置される。把持高さ領域の外側、特に把持高さよりも上側領域では、収納シャフトが任意の形状を有することができる。例えば、把持高さより上側の領域では、収納シャフトは、矩形状又は互いに所定の角度をなして配置される少なくとも4個の面で形成することができる。さらに、収納シャフトが当該領域で任意の形状を有する中空体で形成されることも可能である。
【0023】
収納シャフト又は収納シャフトの壁は、船体又は船舶構造物に堅固に連結されることが望ましく、溶接されることが望ましい。そのため、収納シャフトは、船尾部を製作する間、船体内の適切な位置に予め設けられる。収納シャフトは、独立した構成要素で製作した後、船体に挿入して連結したり、その代わりに船体又は板やストラットを通して船尾部の船体の板又はストラットを特殊に成形したりすることによって形成することができる。収納シャフトの壁は、当該方法によって船体に接続され、そして、接続手段によって収納シャフトが水密性になることが望ましい。
【0024】
少なくとも一つの密封手段は、ラダートランクの第1の部分、すなわち、収納シャフト内に配置されるラダートランクの部分と把持高さの下端部領域の収納シャフトの壁との間に設けられることがより望ましい。望ましくは、密封手段は連結手段の下側の把持高さの下端部領域に配置される。連結手段は、便宜上、密封手段に直接隣接する。密封手段の他側面又は連結手段と対向しない面は、スケグの底部又はスケグの下端部や船体の下端部で終端される。しかし、密封手段はスケグの下端部又は船体の下端部の下側に配置することもできる。密封手段は、把持高さの下部領域に位置した収納シャフトの成形部領域に配置されることが特に望ましい。
【0025】
密封手段は、海水及びその他の物体が流入しないように収納シャフトを下側から保護する役割をする。さらに、密封手段は、ラダートランクの第1の部分と収納シャフトの壁との間の中間空間内に連結手段を導入する過程で連結手段が少しでも漏れたり流出したりすることを防止する役割をする。
【0026】
密封手段は、連結手段と同様に接着剤接合手段を含むことが特に望ましい。したがって、密封手段は、例えば、海水の流入や連結手段の漏れを防止する役割をするだけでなく、把持高さの下端部領域に位置した収納シャフトの壁にラダートランクを連結したり、接着剤で接合したりする役割をする。したがって、本実施例において、密封手段は把持高さの領域に配置される。最大の力又は曲げモーメントが特に把持高さの下端部領域で発生するので、当該領域での密封手段はさらに安定性を高め、生成された力を船体に伝達する役割をする。したがって、連結手段も密封手段として設けることができる。このとき、密封手段は連結手段と類似する特性、特に接着性を有する。しかし、一般に多少薄い液体状の連結手段に比べて、密封手段は粘性か、連結手段より急速な硬化性を有することが望ましい。
【0027】
ラダートランクと収納シャフトの壁とは両方とも鋼を含んでいることが望ましく、鋼で構成されることが特に望ましい。原則的に、ラダートランクと収納シャフトの壁とはそれぞれ異なる材料で構成することができる。例えば、ラダートランクは、繊維複合材で構成され、収納シャフトの壁は鋼を含んでいたり、鋼又は他の適切な材料で構成されたりすることが実現可能である。
【0028】
船舶操縦装置を製作するための本発明に係る方法は次の段階を含む。
【0029】
1.ラダートランクの第1の部分は収納シャフト内に配置され、ラダートランクの第2の部分は収納シャフトから突出するように収納シャフト内にラダートランクを挿入する段階。
【0030】
2.中間空間がラダートランクの第1の部分と収納シャフトの壁との間で延長され、中間空間がトランクの第1の部分の全周を取り囲むようにラダートランクを整列する段階。
【0031】
3.連結手段が重力に逆らって導入されるように、そして、連結手段が把持高さにわたって収納シャフトの壁にラダートランクの第1の部分を完全に、すなわち、トランクの第1の部分の全周にわたって連結し、連結手段が少なくとも把持高さの下端部領域と上端部領域に配置されるように連結手段を中間空間内に導入する段階。
【0032】
収納シャフトにラダートランクを挿入した後、ラダートランクは測定装置と整列装置とによって収納シャフト内に整列される。整列工程中にラダートランクを自由に移動できるように、ラダートランクは、例えば、鋼ケーブル又はチェーンにつるされる。測定装置は、例えば、レーザー光学整列システムや他の測定システムを含む。実際の整列のためには、例えば、整列目的のために船舶構造物に連結したり、又はスケグの底部の下側、スケグの下端部の下側、又は船舶底部の下側の船体に連結できる調節ユニットが使用されたりする。このような調節ユニットは、例えば、ねじ式ボルトがその内部にねじ固定される鋼材ブロックで構成することができる。ラダートランクは、このねじを回すことによって望ましい方向に移動する。さらに、いわゆるリフティングアイ(lifting eye)は、例えば、ラダートランクの下端部に、すなわち、収納シャフトから下方に突出するラダートランクの部分であるラダートランクの第2の部分の下端部に設けることができる。このリフティングアイは、鋼ケーブル又は類似する装置によって船体の他のリフティングアイに締結することができる。ラダートランクは、調節ユニットによってX及びY方向に配置又は整列することができる。鋼ケーブル又はラダートランクの下端部のリフティングアイの助けにより、設置高さとラダートランクの角度又はラダートランク及び収納シャフトの壁の間の角度とは、当該ケーブルを拡張又は縮小することによって調節することができる。これら二つの整列装置の助けにより、中間空間の隙間が把持高さにわたって実質的に一定になるように収納シャフト内にラダートランクを整列することが可能である。整列装置、すなわち、スカイ(sky)底部の調節ユニット及びリフティングアイは両方とも組み立て後に除去される。
【0033】
整列工程を終了した後、連結手段がラダートランク又はラダートランクの第1の部分と収納シャフトの壁との間の中間空間に重力に逆らって導入される。例えば、連結手段は把持高さの下部領域の中間空間内に導入され、中間空間で上昇する円柱又は底部から上部に向かって中間空間内に導入される連結手段はモニタリングされる。導入工程は、連結手段が予め定められた把持高さの上側の全体の中間空間を充填したときに停止する。代案として、連結手段は、把持高さの下部領域と把持高さの上部領域とに別途に導入することができる。
【0034】
望ましくは、連結手段を導入する前に、ラダートランクの第1の部分と収納シャフトの壁との間の空間が少なくとも一つの密封手段によって把持高さの下端部領域で密封される。連結手段の導入工程中、連結手段は導入中に液体又は粘液状態であるので、把持高さの下端部領域の密封手段は、連結手段が導入中にラダートランクと収納シャフトの壁との間の中間空間から流出することなく密封手段によって下側から確固に保有され、その結果、連結手段が上方に上昇できるように保証する役割をする。密封手段は、例えば、密封リング又はこれと類似するものであり得る。代案として、密封手段は、接着性を有する高粘性連結手段によって形成することができる。これは、本実施例では、密封手段が把持高さの下端部領域の追加的な連結手段としての役割を同時に行い、その結果、連結手段の導入工程後に再び除去される必要がないという利点を有する。特に望ましくは、密封手段は、連結手段と同一又は非常に類似する特性を有することが特に望ましい。便宜上、連結手段とは対照的に、密封手段は、より堅固であるかより粘性の高い特性を有し、連結手段より速く硬化される。
【0035】
より望ましくは、連結手段の導入前に、収納シャフトの壁に開口が設けられるが、当該の開口は把持高さの下側の1/3の地点に配置される。この場合、開口は、例えば、外部から収納シャフト内に開けることができる。開口を介して連結手段を導入した後、収納シャフトの当該開口は再び閉鎖される。代案として、開口は密封手段の領域に設けることもできる。密封手段に直接開口を設けることも可能である。
【0036】
望ましくは、連結手段は、ポンピング工程によってラダートランクの第1の部分と収納シャフトの壁との間の中間空間内にポンピングすることができる。そのため、連結手段は、底部から上部側にラダートランクの第1の部分と収納シャフトの壁との間の中間空間内にポンピングされる。
【0037】
以下では、特に望ましい実施例を例に挙げて、添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来技術のラダートランクの斜視図である。
【図2】本発明に係る操縦装置の断面図である。
【図3】連結手段が全体の把持高さにわたって連続的に配置されることを示し、本発明に係る操縦装置の一部領域の断面図である。
【図4】連結手段が把持高さの上端部領域と把持高さの下端部領域に配置されることを示し、本発明に係る操縦装置の一部領域の追加断面図である。
【図5】バンドを備えた遺失防止装置が設けられたことを示し、本発明に係る操縦装置の一部領域の追加断面図である。
【図6】ラダートランクと収納シャフトとの間の隙間が把持高さの下端部領域で増加することを示し、本発明に係る操縦装置の一部領域の追加断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図2は、本発明に係る船舶操縦装置100の断面図である。従来技術で公知となった図1に示すラダートランク10とは対照的に、本発明に係る操縦装置100のラダートランク10は、管のみ、特に鋼管のみで構成される。図1に示すラダートランク9と比べると、ラダートランク10は連結手段、特に、例えば、締結板、連結板25、締結リブ又はストラットのような外側に突出した連結手段を有していない。本発明に係る船舶操縦装置100のラダートランク10は、第1の部分12、すなわち、ラダートランク10の上部が収納シャフト11内に収納されるように配置される。第2の部分13、すなわち、ラダートランク10の下部は収納シャフト11から下方に突出する。収納シャフト11は任意の形状を有することができる。収納シャフト11は、図2に示すように、実質的に円状断面を有し、円筒状又は円筒状と類似する形状を有するように構成されることが望ましい。収納シャフト11は、上部から底部側にラダーエンジンデッキ26から船尾構造物27を通して船尾構造物の下縁部又はスケグ29の下縁部まで延長される。したがって、収納シャフト11は、上部から底部側に船尾構造物27を通して延長されるが、スケグ28は船尾構造物27の一部として示されている。ラダーシステムの要件に応じて、ラダートランク10は所定高さで収納シャフト11内に導入される。本発明に係る船舶操縦装置100のラダートランク10は、従来技術で公知となったラダートランク10のように、ラダーエンジンデッキ26側の上部まで配置される必要がない。例えば、図2に示すように、ラダートランク10は、第1の部分12が収納シャフト11のスケグ28領域のみに収納されるように配置することができる。したがって、ラダーエンジンデッキ26側の上部にまで至る収納シャフト11内のラダートランク10上の部分は空いていたり、収納シャフト11内のラダートランク上にはラダートランク10が配置されなかったりする。
【0040】
図2に示すラダートランク10は連結手段15によって接着される。このために、連結手段15は、例えば、エポキシ系鋳造材がラダートランク10と収納シャフト11との間の中間空間14に配置される。図2に示すように、連結手段15はラダートランク10の第1の部分12の全周の周囲に、そして、ラダートランク10の第1の部分12の全体高さにわたって配置することができる。しかし、ラダートランク10の第1の部分12の高さの一部のみに連結手段15を配置することも実現可能である。連結手段15がラダートランク15と収納シャフト11の壁17との間の中間空間14に配置される高さ(図2の例示的な実施例では、ラダートランク10の第1の部分12の長さに対応する)は把持高さ16と同一である。図2に示すように、連結手段15が全体の把持高さ16にわたって配置され、その結果、ラダートランク10が全体の把持高さ16にわたって収納シャフト11の壁17に接着・連結されるので、全体の把持高さ16にわたって均一な応力配分が行われ、ほぼ100%の圧力ばめ(force fit)が接合対象部分の間で行われる。ラダートランク10の第2の部分13、すなわち、収納シャフト11から下方に突出する部分に対する把持高さ16の長さ比は少なくとも1である。これは、把持高さ16が少なくともラダートランク10の第2の部分13だけ長いことを意味する。しかし、ラダーシステムの要件によっては、把持高さ16がラダートランク10の第2の部分13より相当長い場合もある。例えば、把持高さ16はラダートランク10の第2の部分13の長さの倍数になり得る。例えば、把持高さ16は収納シャフト11から下方に突出するラダートランク10の部分13の長さの2倍、又は、3倍から4倍にすることも実現可能である。
【0041】
図面には一定の比例で示されていないが、把持高さ16がラダートランク10の第2の部分13よりと長いことは図2に明らかに示されている。
【0042】
本発明に係る船舶操縦装置の収納シャフト11は、造船所で製作することができ、船尾構造物27に備えたり、例えば溶接によって船尾構造物に作り付けられたりすることができる。本発明に係る船舶操縦装置のラダートランク10が、図1に例示する従来技術で公知となったラダートランクのように必ず全体長さ又はラダーエンジンデッキ26とラダーハブとの間の全体距離にわたって配置される必要がないので、より短い長さとより少ない重量を有するラダートランク10を製作することができる。従って、ラダートランク10の材料、輸送、及び取り扱いのための費用を相当節約することができる。本発明に係る船舶操縦装置100のラダートランク10は、船舶との連結のための締結板やリブ、連結板25又はストラットを有しておらず、収納シャフト11に接着剤で接合されるので、本発明に係る船舶操縦装置100の製作及び設置費用を著しく低減させることができる。
【0043】
図3〜図5は、本発明に係る多様な船舶操縦装置100の同一の部分領域の断面図である。特に、図3〜図5は、ラダートランク10の第1の部分12が収納シャフト11内に収納されるように配置されている領域を示す。
【0044】
図3は、ラダートランク10が収納シャフト11内の連結手段15によってラダートランクの第1の部分の全周にわたって締結され、全体の把持高さ16にわたって連続的に締結されているか、収納シャフト11の壁17に連結されていることを示す。図3に示す変形例において、第1の部分12、すなわち、収納シャフト11の内部に配置されたラダートランク10の部分は、把持高さ16、すなわち、ラダートランク10が収納シャフト11に接着された高さに対応する。しかし、ラダートランク10の第1の部分12が把持高さ16より長いことも実現可能である。この場合、ラダートランク10と収納シャフト11の壁との間の中間空間14内の連結手段15の上部領域は、ラダートランク10の上部端35で正確に終端されない。そのため、ラダートランク10は、把持高さ16が船尾構造物27の下縁部又はスケグ28の下縁部29から始まってラダートランク10の第1の部分12の上縁部まで到逹しない、収納シャフト11内の一部分とともに自由に配列することができる。連結手段15をポンピングイン(pumping in)する間、ポンピング―イン工程が適切に停止され、連結手段15がラダートランク管内に流入しないように、把持高さ16の上端部領域のラダートランク10と収納シャフト11の壁11との間の中間空間14は常時モニターされる。例えば、連結手段15は、それが把持高さ16の上部領域に設けられたベントホールから出現するまで、下側から上昇する方式で中間空間14内にポンピングされる。
【0045】
図4は、連結手段15がラダートランク10と収納シャフト11の壁17との間に配置される方法と関連した他の変形例を示す。図4に示すように、連結手段15は少なくとも把持高さ16の下端部領域と上端部領域に配置される。この場合、図3に示す変形例とは異なり、把持高さ16の下端部領域に配置される連結手段15と把持高さ16の上端部領域に配置される連結手段15との間に自由中間空間又は自由空間31が形成される。それぞれの場合、把持高さ16は、収納シャフト11内部のラダートランク10が収納シャフト11の壁17に連結される全体高さを含むように定められる。そのため、把持高さ16は、連結手段15間の可能な自由空間31を含む。したがって、図3と図4の把持高さ16は同一である。連結手段15をポンピング―インする間、ポンピング―イン工程が適切に停止され、連結手段15がラダートランク管内に流入しないように把持高さ16の上端部領域に位置した収納シャフト11の壁11とラダートランク10との間の中間空間14は常時モニターされる。例えば、連結手段15は、それが把持高さ16の上部領域に設けられたベントホールから出現するまで、下側から上昇する方式で中間空間14内にポンピングされる。
【0046】
図5は、収納シャフト11内のラダートランク10の接着剤接合の他の変形例を示す。図5に示す変形例では、遺失防止装置36が設けられる。把持高さ16の上端部領域で、収納シャフト11はリセス37又はより大きい直径部を有する。さらに、図5に示すように、ラダートランク10の上部領域は外側に傾斜したり折り曲げられたりすることができる。このような遺失防止装置36を設けることによって、ラダートランク10と収納シャフト11の壁17との間の中間空間14の底部から上部側に連結手段15をポンピング―インするとき、把持高さ16の上部領域の連結手段15はラダートランク10の上縁部35上に溢れて流れることを防止することができる。連結手段15をポンピング―インする間、ポンピング―イン工程が適切に停止され、連結手段15がラダートランク管内に流入しないように把持高さ16の上端部領域に位置した収納シャフト11の壁11とラダートランク10との間の中間空間14は常時モニターされる。例えば、連結手段15は、それが把持高さ16の上部領域に設けられたベントホールから出現するまで、下側から上昇する方式で中間空間14内にポンピングされる。図5に例示するような遺失防止装置36を備えることによって、連結手段15が定められた把持高さ16を過度に速く超えることを防止する可能性も提供される。
【0047】
図6は、本発明に係る船舶操縦装置100の一部の他の断面図である。特に、図6は、把持高さ16の下端部領域又は把持高さ16の下端部領域に位置した収納シャフト11の他の可能な構成を示す。収納シャフト11の構成は、力とモーメントが船舶又は大型船の周辺構造物に最適に伝達されるように設計されなければならない。連結手段15の組成物の他にも、ラダートランク10と収納シャフト11の壁17との間の中間空間14の隙間が重要なパラメーターである。隙間は、一般に装置、例えば、ラダーシステムの要件と使用材料とによって変わる。ラダートランク10と収納シャフト11の壁17との間の中間空間14の隙間は、一定であることが望ましい。さらに、主に使用される連結手段15の量に左右される連結手段15の費用が低く維持されるように、隙間は大きすぎてはならない。
【0048】
例えば、ラダートランクの長さが約5mで、把持高さ16が全体のラダートランク長さの少なくとも1/2である場合、隙間は10mmと20mmとの間の範囲であり得ることが試験を通して確認された。また、試験の結果、特に少なくとも15mmの隙間が装置の要件を充足させるのに十分であることが確認された。把持高さ16の相当な領域にわたって一定の隙間を使用すると、地点ごとに最小隙間が確保されることはもちろん、個々の地点での過度に大きい隙間が防止されるという利点を有する。個々の地点の隙間が特に大きい場合は、要求される連結手段15の量とこれによる連結手段15の費用とが不要に増加するようになる。さらに、一定でない隙間の場合は、連結手段15の必要量の事前算定が複雑になり得る。
【0049】
最大の力、例えば、最大の曲げモーメントが把持高さ16の下端部領域、例えば、スケグ底部又はスケグ28の下縁部29領域に発生するので、当該領域には、図6に示すように、より大きい隙間を設けることが有利である。例えば、成形部34は収納シャフト11の下部領域に設けることができる。したがって、当該領域は、上側に配置される領域に比べてより大きい隙間を有し、連結手段15を収容するためのより大きい空間を提供する。把持高さ16の下端部領域に位置した収納シャフト11の壁17とラダートランク10との間の中間空間14により大きい隙間を設けることによって、応力ピークを防止又は低減させることができる。
【0050】
把持高さ16の下端部領域に位置した収納シャフト11の成形部34は、多様な方式で構成することができる。図6に示すように、把持高さ16の下端部領域の隙間は上部から底部側に見ると増加する。望ましくは、図6に示すように、収納シャフト11の壁17は、把持高さ16の下端部領域で斜めに構成されたり、隙間が上部から底部側に見ると線形に増加するように外側に向かって傾斜したりするように構成される。
【0051】
接着剤接合のためにラダートランク10と収納シャフト11の壁との間の中間空間14内に導入される連結手段15は、把持高さ16の下端部領域18、特に成形部34の領域でそれぞれ異なる特性を有することができる。例えば、それぞれ異なる特性を有する連結手段15と密封手段22とをラダートランク10と収納シャフト11の壁17との間の中間空間14に提供することが可能である。特に、粘性性及び/又は急速硬化性を有する密封手段22は、中間空間14の下部終端領域、すなわち、船舶構造物又はスケグ底部の下縁部29領域に位置した把持高さ16の下端部領域18に配置することができる。このような粘性及び/又は急速硬化性を有する密封手段22は、残余連結手段15を中間空間14内に導入する前に船舶構造物又はスケグ底部の下縁部29領域の隙間を閉鎖するために提供される。密封手段22が硬化された後、残余連結手段15は、ラダートランク10と収納シャフト11の壁17との間の中間空間14内にポンピングされる。事前に提供される粘性又は急速硬化密封手段22により、収納シャフト11は下部領域で予め密封され、ポンピング―イン工程中に残余連結手段15が漏れることを防止する。また、密封のために提供される密封手段22は、密封用として使用できるだけでなく、接着性も有することができ、その結果、収納シャフト11の壁17にラダートランク10を接合するために使用することもできる。これは、如何なる代案の密封手段も提供される必要がなく、密封手段22がラダートランク10と収納シャフト11の壁17との間の当該領域での非ポジティブ結合(nonpositive fit)も保証し、その結果、力又は曲げモーメントの伝達のためにも使用できるという利点を有する。接着効果を有していない代案の密封手段は、例えば、密封手段22の代わりに収納シャフト11の成形部34の領域又はスケグの下縁部29の下側に配列されるゴムシールがあり得る。
【0052】
図6は、把持高さ16,16aが、ラダートランク10が収納シャフト11の壁17に連結される高さを含むことを示している。密封手段22が接合性も有する場合、把持高さ16は、全体高さ、すなわち、連結手段15と密封手段22とが配置される高さを含む。代案の密封手段、すなわち、接合性又は接着性のない密封手段を使用するとき、把持高さ16aは密封手段22の高さを除いて連結手段15が配置される高さのみを含む。図6は、本発明に係る船舶操縦装置100の一部のみを示しているので、その全体長さでない把持高さ16,16aの下端部領域のみを示している。
【0053】
さらに、図6は、開口23,23aを提供するための二つの実施例を示す。両方の実施例において、開口23,23aは、把持高さ16,16aの下側の1/3の地点に設けられる。一実施例において、開口23aは、収納シャフト11の壁17に設けられる。第2の実施例において、開口23は密封手段22に設けられる。開口23,23aの配列は、密封手段が接合性又は接着性をさらに有するかどうかとは関係がない。通常、一つの開口23又は23aのみがポンピング―イン工程のために設けられる。
【符号の説明】
【0054】
100:船舶操縦装置、10:ラダートランク、11:収納シャフト、12:ラダートランクの第1の部分、13:ラダートランクの第2の部分、14:ラダートランクと収納シャフトの壁との間の中間空間、15:連結手段、16:把持高さ、16a:把持高さ、17:収納シャフトの壁、18:把持高さの下端部領域、19:把持高さの上端部領域、20:ラダートランクの外径、21:ラダートランクの内径、22:密封手段、23:開口、23a:開口、24:ラダートランクの壁の厚さ、25:連結手段、26:ラダーエンジンデッキ、27:船尾構造物、船体、28:スケグ、29:スケグの下縁部、30:密封板、31:自由空間、32:ラダートランクの第2の部分の長さ、33:ラダートランクシャフト、34:収納シャフトの成形部、35:ラダートランクの上縁部、36:遺失防止装置、37:収納シャフトのリセス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラダートランク(10)及び収納シャフト(11)を含み、前記ラダートランク(10)の第1の部分(12)は前記収納シャフト(12)の壁(17)と前記ラダートランク(10)の前記第1の部分(12)との間に中間空間(14)が存在するように前記収納シャフト(11)内に配置され、前記ラダートランク(10)の第2の部分(13)は前記収納シャフト(11)から突出し、前記中間空間(14)は少なくとも特定領域が連結手段(15)で充填され、前記連結手段(15)は把持高さ(16,16a)にわたって前記ラダートランク(10)の前記第1の部分を把持する船舶操縦装置(100)であって、
前記連結手段(15)は前記収納シャフト(11)の前記壁(17)に前記ラダートランク(10)の前記第1の部分(12)を連結し、前記連結手段(15)は前記ラダートランク(10)の前記第1の部分(12)の全周を取り囲むように配置され、前記連結手段(15)は少なくとも前記把持高さ(16,16a)の下端部領域(18)と前記把持高さ(16,16a)の上端部領域(19)とに配置され、前記把持高さ(16,16a)と前記ラダートランク(10)の前記第2の部分(13)との間の長さ比は少なくとも1、望ましくは1と3との間、特に望ましくは1と2との間であることを特徴とする船舶操縦装置。
【請求項2】
前記連結手段(15)は接着剤接合のための手段を含み、及び/又は前記連結手段(15)は全体の前記把持高さ(16,16a)にわたって連続的に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の船舶操縦装置。
【請求項3】
前記ラダートランク(10)の前記第1の部分(12)と前記収納シャフト(11)の前記壁(17)との間の前記中間空間(14)は、少なくとも前記把持高さ(16,16a)の1/2、望ましくは少なくとも前記把持高さ(16,16a)の2/3、特に望ましくは前記把持高さ(16,16a)の3/4にわたって一定の隙間を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の船舶操縦装置。
【請求項4】
前記把持高さ(16,16a)の前記下端部領域(18)の前記中間空間(14)は、前記把持高さ(16,16a)の前記上端部領域(19)の場合より大きい隙間を有し、及び/又は前記把持高さ(16,16a)の前記下端部領域(18)の隙間は、前記上端部領域(19)から前記下端部領域(18)の方向に見ると、望ましくは線形に増加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の船舶操縦装置。
【請求項5】
前記ラダートランク(10)は壁の厚さ(24)を有し、前記把持高さ(16,16a)の前記上端部領域(19)の壁の厚さ(24)は、前記把持高さ(16,16a)の前記下端部領域(18)の場合より薄い厚さを有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の船舶操縦装置。
【請求項6】
前記ラダートランク(10)は外径(20)を有し、前記外径(20)は実質的に一定であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の船舶操縦装置。
【請求項7】
前記ラダートランク(10)は内径(21)を有し、前記把持高さ(16,16a)の前記上端部領域(12)の前記内径(21)は、前記把持高さ(16,16a)の前記下端部領域(18)の場合より大きいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の船舶操縦装置。
【請求項8】
前記ラダートランク(10)は、船舶又は前記収納シャフト(11)に前記ラダートランク(10)を連結するためのものであって、前記ラダートランク(10)から外側に突出する締結手段、特に、締結板、連結板(25)又は締結リブを備えないことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の船舶操縦装置。
【請求項9】
前記収納シャフト(11)は、少なくとも前記把持高さ(16、16a)の全体領域に実質的に管又は管型方式で構成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の船舶操縦装置。
【請求項10】
前記収納シャフト(17)の前記壁(17)は船体に堅固に連結され、望ましくは、溶接されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の船舶操縦装置。
【請求項11】
前記収納シャフト(11)の前記壁(17)は、前記収納シャフト(11)が水密性になる方式で船体に連結され、前記連結手段(15)によって前記ラダートランク(10)に連結されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の船舶操縦装置。
【請求項12】
少なくとも一つの密封手段(22)が前記把持高さ(16)の前記下端部領域(18)に位置した前記収納シャフト(11)の前記壁(17)と前記ラダートランク(10)の前記第1の部分(12)との間に配置され、前記密封手段は望ましくは接着剤接合手段を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の船舶操縦装置。
【請求項13】
前記ラダートランク(10)と前記収納シャフト(11)の前記壁(17)は鋼又は鋼材を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の船舶操縦装置。
【請求項14】
船舶操縦装置(100)の製作方法であって、
a)ラダートランクの第1の部分(12)は収納シャフト(11)内に配置され、前記ラダートランクの第2の部分(13)は前記収納シャフト(11)から突出するように前記収納シャフト(11)内に前記ラダートランク(10)を挿入する段階、
b)中間空間(14)が前記ラダートランクの前記第1の部分(12)と前記収納シャフト(11)の前記壁(17)との間で延長され、前記中間空間(14)が前記トランクの前記第1の部分(12)の全周を取り囲むように前記ラダートランク(10)を整列する段階、及び
c)連結手段(15)が重力に逆らって導入され、前記連結手段(15)が把持高さ(16,16a)にわたって前記収納シャフト(11)の前記壁(17)に前記ラダートランクの前記第1の部分(12)を完全に、すなわち、前記トランクの前記第1の部分(12)の全周にわたって連結し、前記連結手段(15)が少なくとも前記把持高さの下端部領域(18)と上端部領域(19)とに配置されるように前記連結手段(15)を前記中間空間(14)内に導入する段階を含むことを特徴とする船舶操縦装置の製作方法。
【請求項15】
前記連結手段(15)の導入前に、前記ラダートランク(10)の前記第1の部分(12)と前記収納シャフト(11)の前記壁(17)との間の前記中間空間(14)は、少なくとも一つの密封手段(22)によって前記把持高さ(16)の前記下端部領域(18)で密封されることを特徴とする、請求項14に記載の船舶操縦装置の製作方法。
【請求項16】
前記連結手段(15)の導入前に、開口(23,23a)が前記収納シャフト(11)の前記壁(17)又は前記密封手段(22)に設けられ、前記開口(23,23a)は前記把持高さ(16,16a)の下側の1/3の地点に配置され、前記開口(23,23a)は望ましくは前記連結手段(15)の導入後に閉鎖されることを特徴とする、請求項14又は15に記載の船舶操縦装置の製作方法。
【請求項17】
前記連結手段(15)は、前記中間空間(14)内にポンピングされることによって導入されることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の船舶操縦装置の製作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−86796(P2013−86796A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−229156(P2012−229156)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【出願人】(509255794)ベッカー マリン システムズ ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー (10)
【氏名又は名称原語表記】becker marine systems GembH&Co.KG
【住所又は居所原語表記】Neulander Kamp 321079 Hamburg Germany