説明

船舶

【課題】 使用する電力を供給するための発電装置を備えていると共に、外部電源から電力の供給を受けることが可能な船舶において、電源の供給元を切り換える場合、切り換え作業が容易であると共に無停電で切り換えることができる船舶を提供する。
【解決手段】 自らが使用する電力を供給するための発電装置3を備えていると共に、外部電源Pから電力の供給を受けることが可能な船舶1において、回転することにより、上記外部電源Pから電力の供給を受けるためのケーブル21を巻き取りまたは延出することができるリール23と、上記発電装置3から受けている電力を上記ケーブル21を介して上記外部電源Pから受けるように切り換える場合、無停電で切り換えることが可能な電源切り換え手段51とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自らが使用する電力を供給するための発電装置を備えていると共に、外部電源から電力の供給を受けることが可能な船舶に係り、特に、外部電源と接続するためのケーブルを巻き付け収納可能なリールを備えていると共に、無停電で電源を切り換えることができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自らが使用する電力を供給するための発電装置を備えていると共に、陸上に設置されている外部電源(陸上電源)から電力の供給を受けることが可能な船舶が知られている。
【0003】
図2は、従来の船舶100の概略構成を示す図である。
【0004】
上記従来の船舶100は、発電装置102を備えており、この発電装置102は、遮断器104を介して、上記船舶100の他の装置に電力を供給するための主母線106に電気的に接続されるようになっている。
【0005】
上記従来の船舶100のたとえばアッパーデッキ108には、受電端子110が設けられており、この受電端子110と上記主母線106との間は、船内ケーブル112を介して互いに電気的に接続されるようになっている。また、上記船内ケーブル112の中間部には、遮断器114が設けられている。
【0006】
そして、陸上の電源設備から電力の供給を受ける場合には、上記従来の船舶100に設置された受電端子110と、岸壁に設置されている陸上の電源の端子116との間をケーブル118で互いに接続すると共に、上記遮断器104(主母線106と発電装置102との間の遮断器)の電路を開いて上記遮断器114(主母線106と外部電源との間の遮断器)の電路を閉じるようにしている。
【0007】
なお、上記従来の技術に関連する技術として、たとえば、特許文献1に記載の技術が知られている。
【特許文献1】特開2001―309553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、船舶で使用する電力量にもよるが、上記ケーブル118は一般的に径が大きく質量の大きいものが使用される。したがって、上記従来の船舶100では、船舶100または岸壁に用意されている上記ケーブル118を、船舶100または岸壁に設置されているクレーン(図示せず)を用いて配線しなければならず、上記ケーブル118を設置するために多くの工数がかかるという問題がある。
【0009】
また、上記ケーブル118の配線後、船舶100が使用する電源を、上記発電装置102から上記外部電源に切り換える場合、上記遮断器104の電路を開いてから上記遮断器114の電路を閉じるので、上記主母線106に電力が供給されない状態が発生し、上記船舶100内で一旦停電が発生するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、自らが使用する電力を供給するための発電装置を備えていると共に、外部電源から電力の供給を受けることが可能な船舶において、電源の供給元を切り換える場合、切り換え作業が容易であると共に無停電で切り換えることができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、使用する電力を供給するための発電装置を備えていると共に、外部電源から電力の供給を受けることが可能な船舶において、回転することにより、上記外部電源から電力の供給を受けるためのケーブルを巻き取りまたは延出することができるリールと、上記発電装置から受けている電力を上記ケーブルを介して上記外部電源から受けるように切り換える場合、無停電で切り換えることが可能な電源切り換え手段とを有する船舶である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の船舶において、上記電源切り換え手段は、上記発電装置が発電している発電周波数を、上記外部電源の電源周波数よりも低くしておいて、上記切り換えを行う手段である船舶である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の船舶において、上記船舶に設置されている機器に電力を供給するために、上記船舶に設けられている主母線と、上記ケーブルと上記主母線とを互いに接続する船内ケーブルの中間部または端部に設けられた第1の遮断器と、上記発電装置と上記主母線とを互いに接続している電力供給線の中間部または端部に設けられた第2の遮断器とを有し、上記電源切り換え手段は、上記発電装置から受けている電力を上記ケーブルを介して上記外部電源から受けるように切り換える場合、上記発電装置の原動機の回転数をガバナで徐々に下げるように制御して、上記発電装置が発電している発電周波数を、上記外部電源の電源周波数よりも僅かに低くしておき、上記第1の遮断器の電路を閉じ、上記第1の遮断器の電路を閉じた後に、上記第2の遮断器の電路を開く手段である船舶である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、使用する電力を供給するための発電装置を備えていると共に、外部電源から電力の供給を受けることが可能な船舶において、回転することにより、上記外部電源から電力の供給を受けるためのケーブルを巻き取りまたは延出することができるリールと、上記ケーブルを介して上記外部電源から受けている電力を、上記発電装置から受けるように切り換える場合、無停電で切り換えることが可能な電源切り換え手段とを有する船舶である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の船舶において、上記電源切り換え手段は、上記発電装置が発電している発電周波数を、上記外部電源の電源周波数よりも高くしておいて、上記切り換えを行う手段である船舶である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の船舶において、上記船舶に設置されている機器に電力を供給するために、上記船舶に設けられている主母線と、上記ケーブルと上記主母線とを互いに接続する船内ケーブルの中間部または端部に設けられた第1の遮断器と、上記発電装置と上記主母線とを互いに接続している電力供給線の中間部または端部に設けられた第2の遮断器とを有し、上記電源切り換え手段は、上記ケーブルを介して上記外部電源から受けている電力を、上記発電装置から受けるように切り換える場合、上記発電装置の原動機の回転数をガバナで制御して、上記発電装置が発電している発電周波数を、上記外部電源の電源周波数よりも僅かに高くしておき、上記第2の遮断器の電路を閉じ、上記第2の遮断器の電路を閉じた後に、上記第1の遮断器の電路を開く手段である船舶である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の船舶において、信号線を介して上記外部電源の異常を検出可能な外部電源異常検出手段と、上記外部電源から電力の供給を受けている状態で、上記外部電源に異常が発生したことを検出した場合、上記発電装置の稼動を開始すると共に、上記ケーブルを介して上記外部電源から受けている電力を、上記発電装置から受けるように上記電源切り換え手段を制御する電源切り換え制御手段とを有する船舶である。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の船舶において、上記発電装置の異常を検出可能な発電装置異常検出手段と、上記異常を検出した場合、上記外部電源の保護回路を作動させるための信号を、信号線を介して上記外部電源に出力する異常信号出力手段とを有する船舶である。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項7または請求項8に記載の船舶において、上記信号線は、上記ケーブルと一体化されて設けられている船舶である。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の船舶において、上記リールからの上記ケーブルの延出量を検出可能なケーブル延出量検出手段と、上記ケーブルの延出量が所定の値を超えたことを検出した場合、上記リールのアクチュエータの回転を停止するリール制御手段とを有する船舶である。
【0021】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の船舶において、上記リールからの上記ケーブルの延出量を検出可能なケーブル延出量検出手段を有し、上記外部電源から電力の供給を受けているときに上記ケーブルの延出量が所定の値を超えたことを検出した場合、上記電源切り換え制御手段は、上記外部電源から受けている電力を、上記発電装置から受けるように切り換える手段である船舶である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、自らが使用する電力を供給するための発電装置を備えていると共に、外部電源から電力の供給を受けることが可能な船舶において、電源の供給元を切り換える場合、切り換え作業が容易であると共に無停電で切り換えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る船舶1の概略構成を示すと共に、上記船舶1が岸壁Qに接岸している状態を示す図である。なお、図1は、上記船舶1の前方向から後方向に向かって上記船舶1を眺めたものである。
【0024】
船舶1は、自らが使用する電力を供給するために適数の発電装置3を備えていると共に、外部電源Pから電力の供給を受けることが可能なように構成されている。
【0025】
なお、上記船舶1として、電力の消費量が他の船舶に比べて多い客船や冷凍貨物を運搬するためのコンテナ船等を想定し、また、上記外部電源Pとして、たとえば、陸上に設置されている発電所の発電設備等を想定することにする。
【0026】
まず、上記発電装置3から上記船舶1に電力を供給するための各装置について説明する。
【0027】
上記発電装置3は発電機5を備え、この発電機5はディーゼルエンジン7等の原動機によって駆動し発電をすることができるようになっている。
【0028】
上記ディーゼルエンジン7には、ガバナ9が設けられており、このガバナ9は、制御装置11の制御の下、上記ディーゼルエンジン7の回転速度を調整することができるようになっている。上記ディーゼルエンジン7の回転速度を調整することによって、上記発電機5(発電装置3)から出力される電気の発電周波数や位相等を制御することができるようになっている。
【0029】
上記船舶1には、主母線13が設けられており、この主母線13を介して、上記船舶1に設置されている機器(たとえば、照明設備、冷凍設備)に電力を供給するようになっている。
【0030】
上記主母線13と上記発電装置3(発電機5)とを互いに接続している電力供給線15の中間部または端部には、たとえばVCB(Vacum Circuit Breaker)によって構成された遮断器17が設けられており、上記制御装置11の制御の下、上記遮断器17の電路を開閉することにより、上記発電機5から上記主母線13(上記船舶1)へ電力を供給し、また、電力の供給を停止することができるようになっている。
【0031】
次に、上記外部電源Pから上記船舶1に電力を供給するための各装置について説明する。
【0032】
岸壁Qの海に近い部位(たとえば、岸壁Qの上面であって海側の端部)には、外部電源Pの接続端子の例であるソケットP1が設置されている。このソケットP1は、岸壁Qの地中に配線されているケーブルP3を介して、上記外部電源Pに接続されている。
【0033】
ソケットP1やケーブルP3を上述したように設置することにより、コンテナ等の貨物を上記船舶1に搬出入するためのコンテナクレーンと上記ケーブルP3との干渉が発生せず、上記コンテナクレーンを岸壁Qに設置しやすくなる。
【0034】
上記船舶1には、電気モータ19等のアクチュエータで回転することによって、上記外部電源Pから電力の供給を受けるためのケーブル21を巻き取りまたは延出することができるリール23が設けられており、上記ケーブル21の先端部には、上記船舶1側の接続端子の例であるプラグ25が設けられている。
【0035】
上記リール23は、岸壁Qに接岸される側の舷であって、上記船舶1の上部側に設けられている。換言すれば、上記ケーブル21を上記リール23から延出することによって、上記ケーブル21の先端に設けられているプラグ25が、上記岸壁Qに設置されている外部電源PのソケットP1の設置箇所やこの近傍まで容易に到達するような位置に、上記リール23が設けられている。
【0036】
より詳しく説明すると、上記リール23の回転中心軸は、上記船舶1の前後方向に延伸していると共に、上記リール23が所定の方向に回転することにより、上記ケーブル21が、上記岸壁Q側の下方向に延出するようになっている。
【0037】
また、上記リール23の近傍であって、上記ケーブル21が延出する部位には、上記ケーブル21をスムーズに延出しまた巻き取ることができるようにするためのガイド部材27が設けられている。
【0038】
そして、上記リール23を回転してケーブル21を延出することにより、図1に二点鎖線で示すようにケーブル21が延出し、プラグ25がソケットP1のところまで到達するようになっている。
【0039】
プラグ25がソケットP1のところまで到達した後、オペレータが、上記プラグ25を上記ソケットP1に接続するようになっている。
【0040】
また、上記船舶1には、プラグ31を備えた受電パネル29が設けられており、上記リール23から延出している他のケーブル33の先端部に設けられているソケット35を上記プラグ31に接続することにより、上記外部電源Pから上記受電パネル29へ電力を供給することができるようになっている。
【0041】
上記ケーブル33は、リール23に巻かれるケーブル21とは異なる別のケーブルであり、リール23の回転によって、リール23から延出することがなく、また、リール23に巻き取られることがないようになっている。上記ケーブル21と上記他のケーブル33とは、リール23に設けられているスリップリング等を介して互いに導通している。
【0042】
また、上記プラグ31(上記各ケーブル21、33)と上記主母線13とを接続する船内ケーブル37の中間部であって上記受電パネル29の内部には、たとえばVCBで構成された遮断器39が設けられており、また、上記船内ケーブル37の中間部であって上記主母線13側には、遮断器41が上記遮断器39と直列に設けられている。
【0043】
そして、上記制御装置11の制御の下、上記各遮断器39、41の電路を開閉することにより、上記各ケーブル21、33等を介して、上記外部電源Pから上記主母線13(上記船舶1)へ電力を供給し、また、電力の供給を停止することができるようになっている。
【0044】
なお、上記各遮断器39、41を、上記船内ケーブル37の端部に設置してもよい。また、遮断器としてVCBを採用しているので、高い電圧(たとえば6600Vの電圧)であっても、確実に遮断することができる。
【0045】
さらに、図1では、各ケーブル21、33、船内ケーブル37が、1本しか示されていないが、船舶1での電力の使用量に応じて、各ケーブル21、33や船内ケーブル37を複数本並列して設け、これに応じて、リール23や各遮断器39、41を複数個設けてもよい。なおリール23を複数個設ける場合には、各リールの回転中心軸が互いに一致するように上記各リールを並べて設け、1つの電気モータ19で回転駆動するようにすれば、リールの構成を簡素化することができる。
【0046】
次に、上記リール23についてより詳しく説明する。
【0047】
上記リール23は、リモートコントロールによって回転駆動するようになっている。すなわち、モータコントローラ43の制御の下、リモートコントロールによって上記電気モータ19が回転駆動して、上記リール23が回転するようになっている。
【0048】
また、上記リール23には、上記リール23からの上記ケーブル21の延出量を検出可能なケーブル延出量検出手段45が設けられており、上記ケーブル21の延出量が所定の値を超えたことを検出した場合、上記モータコントローラ43の制御の下、上記リール23の電気モータ19の回転を停止するようになっている。
【0049】
次に、上記船舶1と上記外部電源Pとを互いにつないでいる信号線について説明する。
【0050】
上記信号線は、上記船舶1と上記外部電源Pとの間で情報を伝達するためのものであり、たとえば、光ファイバーで構成されている。
【0051】
また、上記信号線は、上記各ケーブル21、33、P1と一体化されて設けられている。すなわち、たとえば、上記各ケーブル21、33、P1の外皮の内部には、電力を供給するための電力供給線と上記光ファイバーとが互いに並進して設けられている。
【0052】
そして、上記プラグ25を上記ソケットP1に差し込んだときに、上記ケーブル21に設けられている信号線と、上記ケーブルP3に設けられている信号線とが互いに接続されるようになっている。
【0053】
また、上記プラグ31に上記ソケット35を差し込んだときにも、上記ケーブル33に設けられている信号線と、上記プラグ31に設けられている信号線とが互いに接続されるようになっている。
【0054】
上記信号線は、上記プラグ31の内側(上記受電パネル29の内部)では、電力供給線とは離れて配線されており、上記電力供給線は上述したように船内ケーブル37を構成し、遮断器39に接続されている。
【0055】
一方、上記離れて配線されている信号線は、光信号を電気的な信号にまた電気的な信号を光信号に変換可能な光変換器47に接続されており、この光変換器47は、PLC49を介して制御装置11に接続されている。そして、上記制御装置11と上記外部電源P(後述する保護回路や外部電源Pの制御装置)との間で、情報の交換ができるようになっている。
【0056】
次に、上記船舶1の電源の供給元を切り換える電源切り換え手段51について説明する。
【0057】
上記電源切り換え手段51は、上記船舶1が上記発電装置5から受けている電力を、上記各ケーブル21、33、37を介して上記船舶1が上記外部電源Pから受けるように切り換える場合、また、上記各ケーブル21、33、37を介して上記船舶1が上記外部電源Pから受けている電力を、上記船舶1が上記発電装置5から受けるように切り換える場合、無停電で切り換えることが可能な手段である。
【0058】
より詳しく説明すると、上記切り換え手段51は、たとえば、上記発電装置3の発電周波数を検出可能な発電周波数検出手段(図示せず)と、上記発電装置3が発電する電気の位相を検出可能な発電装置位相検出手段(図示せず)と、上記外部電源Pの位相を検出可能な外部電源位相検出手段(図示せず)と、上記外部電源の電源周波数を検出可能な外部電源周波数検出手段(図示せず)とを有する。
【0059】
そして、上記発電装置3から受けている電力を上記各ケーブル21、33、37を介して上記外部電源Pから受けるように切り換える場合、上記発電周波数検出手段で検出した上記発電装置3の発電周波数と、上記外部電源周波数検出手段で検出した上記外部電源Pの電源周波数とを上記制御装置11で比較しつつ、上記発電装置3のディーゼルエンジン7の回転数を上記ガバナ9で徐々に下げるように制御して、上記発電装置3が発電している発電周波数が、上記外部電源Pの電源周波数よりも僅かに低くなるようにする。
【0060】
上述のように、上記発電装置3が発電している発電周波数を上記外部電源Pの電源周波数よりも僅かに低くしておいて、開いていた上記各遮断器39、41の電路を閉じ(電力が上記外部電源Pから主母線13へ供給されるように閉じ)、上記各遮断器39、41の電路を閉じた後に、閉じていた上記遮断器17の電路を開いて(電力が上記発電装置3から上記主母線13へ供給されないように開いて)、切り換えを行うようになっている。
【0061】
上記切り換え後、上記発電装置3(ディーゼルエンジン7)の稼動を停止するようになっている。
【0062】
一方、上記各ケーブル21、33、37を介して上記外部電源Pから受けている電力を、上記発電装置3から受けるように切り換える場合、上記発電装置3の稼動を開始し、上記発電周波数検出手段で検出した上記発電装置3の発電周波数と、上記外部電源周波数検出手段で検出した上記外部電源Pの電源周波数とを上記制御装置11で比較しつつ、上記発電装置3のディーゼルエンジン7の回転数を上記ガバナ9で制御して、上記発電装置3が発電している発電周波数が、上記外部電源Pの電源周波数よりも僅かに高くなるようにする。
【0063】
上述のように、上記発電装置3が発電している発電周波数を上記外部電源Pの電源周波数よりも僅かに高くしておいて、開いていた上記遮断器17の電路を閉じ、上記遮断器17の電路を閉じた後に、閉じていた上記各遮断器39、41の電路を開いて、切り換えを行うようになっている。
【0064】
さらに、上記発電装置位相検出手段で検出した上記発電装置3の位相と、上記外部電源位相検出手段で検出した上記外部電源Pの位相とを上記制御装置11で比較しつつ、上記各位相が互いに一致したときに上記各切り換えを行えば、船舶1の供給される電力の波形が乱れないように、一層スムーズな切り換えを行うことができる。
【0065】
また、上記発電装置3の電圧と上記外部電源Pの電圧とが互いにほぼ一致したときに上記各切り換えを行えば、より一層スムーズな切り換えを行うことができる。
【0066】
なお、上記外部電源Pの電源周波数が既知であるならば、上記外部電源周波数検出手段を削除してもよい。
【0067】
次に、外部電源P等で異常が発生したときの制御について説明する。
【0068】
上記船舶1のたとえば上記制御装置11には、上記各ケーブル21、33、P3に設けられている信号線を介して上記外部電源Pの異常を検出可能な外部電源異常検出手段(図示せず)が設けられており、上記外部電源Pから電力の供給を受けている状態で、上記外部電源Pに異常が発生したことを検出した場合、上記発電装置3の稼動を開始すると共に、上記各ケーブル21、33、37を介して上記外部電源Pから受けている電力を、上記発電装置3から受けるように上記電源切り換え手段51を制御する電源切り換え制御手段(図示せず)が設けられている。
【0069】
また、上記船舶1のたとえば上記制御装置11には、上記発電装置3の異常を検出可能な発電装置異常検出手段(図示せず)が設けられており、上記異常を検出した場合、上記外部電源Pの保護回路(図示せず)を作動させるための信号を、上記信号線を介して上記外部電源Pに出力する異常信号出力手段(図示せず)が設けられている。
【0070】
さらに、上記外部電源Pから電力の供給を受けているときに上記ケーブル21の延出量が所定の値を超えたことを、上記ケーブル延出量検出手段45が検出した場合、上記電源切り換え手段51は、上記外部電源Pから受けている電力を、上記発電装置3から受けるように切り換えるようになっている。
【0071】
次に、上記船舶1の電源を、発電装置3から外部電源Pへ切り換える場合の動作について説明する。
【0072】
船舶1が岸壁Qに接岸した直後の状態から説明する。
【0073】
まず、オペレータが、リモートコントロールによって、上記リール23を回転させ、プラグ25がソケットP1のところに届くまで、ケーブル21を延出させ、プラグ25をソケットP1に差し込む。
【0074】
続いて、上記制御装置11が、上記発電装置3のディーゼルエンジン7の回転数を徐々に下げるように制御して、上記発電装置3の発電周波数が、上記外部電源Pの電源周波数よりも僅かに低くなるようにしておいて、開いていた上記各遮断器39、41の電路を閉じ、この閉じた後に、閉じていた上記遮断器17の電路を開く。
【0075】
次に、上記船舶1の電源を、外部電源Pから発電装置3へ切り換える場合の動作について説明する。
【0076】
まず、上記制御装置11が、上記発電装置3を稼動させ、上記発電装置3のディーゼルエンジン7の回転数を制御し、上記発電装置3が発電している発電周波数が、上記外部電源Pの電源周波数よりも僅かに高くなるようにしておいて、開いていた上記遮断器17の電路を閉じ、上記閉じた後に、閉じていた上記各遮断器39、41電路を開く。
【0077】
続いて、オペレータが、プラグ25をソケットP1から抜き取り、リモートコントロールによって、上記リール23を回転させ、ケーブル21を巻き取る。
【0078】
船舶1によれば、電気モータ19で回転することにより、上記外部電源Pから電力の供給を受けるためのケーブル21を巻き取りまたは延出することができるリール23と、上記発電装置3から受けている電力を上記ケーブル21を介して上記外部電源Pから受けるように切り換える場合、無停電で切り換えることが可能な電源切り換え手段51とを備えているので、従来のように別途ケーブルを用意しこのケーブルを船舶や岸壁に設置されているクレーン(図示せず)を用いて配線する必要がなく、上記リール23からケーブル21を延出して岸壁Qに設けられている外部電源端子P1に接続すればよいので、ケーブル21の設置(配線)作業が簡素になり、ケーブル21の設置を容易に行うことができると共に、無停電で船舶1の電源の供給元を切り換えることができる。
【0079】
また、上記ケーブル21を介して上記外部電源Pから受けている電力を、上記発電装置3から受けるように切り換える場合も同様に、上記ケーブル21の撤去を容易に行うことができると共に、無停電で船舶1の電源の供給元を切り換えることができる。
【0080】
すなわち、船舶1によれば、電源の供給元を切り換える場合、切り換え作業が容易であると共に無停電で切り換えることができる。
【0081】
また、電源の供給元を無停電で切り換えることができるので、上記切り換え時においても、上記船舶1内で使用している電気機器を支障なくそのまま継続して使用することができる。
【0082】
さらに、上記リール23を、岸壁Qに接岸される側の舷であって、上記船舶1の上部側に設けてあるので、すなわち、上記ケーブル21を上記リール23から延出することによって、上記ケーブル21の先端のプラグ25が、上記岸壁Qに設置されている外部電源PのソケットP1のところまで容易に到達するような位置に上記リール23を設けてあるので、上記ケーブル21の設置作業が簡単になっている。また、従来のように、岸壁や船舶にケーブルを設置するためのクレーンを別途設ける必要がなくなる。
【0083】
さらに、上記外部電源Pから電力の供給を受けていない場合には、上記ケーブル21をリール23で巻き取り収納しておくことができるので、ケーブル21が邪魔にならず、また、上記外部電源Pから電力の供給を受けようとする場合即座に上記ケーブル21を延出させることができる。
【0084】
なお、船舶1が港に停泊しているとき(船舶1が岸壁Qの接岸しているとき)、陸上の外部電源Pから電力の供給を受けることができるので、船舶1の発電装置3を稼動する必要がなく、上記発電装置3から騒音や排気ガスが出てくることがなく、港周辺の環境悪化を防止することができる。
【0085】
また、船舶1によれば、上記発電装置3の発電周波数を、上記外部電源Pの電源周波数よりも低くしておいて上記切り換えを行うので、上記発電装置3から上記外部電源Pへの電流の逆流を防ぐことができる。
【0086】
さらに、船舶1によれば、上記発電装置3から受けている電力を上記ケーブル21を介して上記外部電源Pから受けるように切り換える場合、上記発電装置3のディーゼルエンジン7の回転数を徐々に下げるように制御して、上記外部電源Pの電源周波数よりも、上記発電装置3の発電周波数を僅かに低くしておくので、上記発電装置3から上記主母線13に供給している電源の周波数が急激に変化することがなく、したがって、上記主母線13やこれに接続されている他の装置に過電流が流れることを防止することができる。
【0087】
また、船舶1によれば、上記外部電源Pから電力の供給を受けている状態で、上記外部電源Pに異常が発生したことを検出した場合、上記発電装置3の稼動を開始すると共に、上記外部電源Pから受けている電力を、上記発電装置3から受けるように自動的に切り換えるので、上記外部電源Pに異常が発生し電力の供給が不可能になっても、船舶1での停電を防止することができる。
【0088】
また、船舶1によれば、上記発電装置3の異常を検出した場合、上記外部電源Pの保護回路を作動させるための信号を上記外部電源Pに出力するので、上記発電装置3の異常による上記外部電源Pでの故障や不具合の発生を未然に防ぐことができる。
【0089】
さらに、船舶1によれば、上記信号線は、上記ケーブルと一体化されて設けられているので、ケーブル21を設置するときに上記信号線も設置することができ、上記信号線の設置を別途行う必要がなくなる。
【0090】
また、上記リール23のケーブル21の先端部のプラグ25を上記岸壁に設けられている外部電源PのソケットP1に接続したときに、上記信号線も接続されるようになっているので、上記信号線の接続を別途行う必要が無くなり、信号線の接続を忘れる事態を回避することができる。
【0091】
また、船舶1によれば、上記ケーブル21の延出量が所定の値を超えたことを検出した場合、上記リール23の電気モータ19の回転を停止するので、ケーブル21の延出量過多による上記ケーブル21の破損を未然に防止することができる。
【0092】
また、上記ケーブル21の設置(リール23からの延出)や撤去(リール23への巻取り)作業をしやすくするために、リモコン操作で上記リール23を駆動するようにしてあるので、換言すれば、上記リール23から離れた位置でオペレータが上記リール23を操作する場合があるので、上記リール23からの上記ケーブル21の延出量をオペレータが随時確認することは困難である。
【0093】
しかし、上述したように、上記ケーブル21の延出量が所定の値を超えたことを検出した場合、上記リール23の電気モータ19の回転を停止するので、オペレータにとってケーブル21の延出状態が見えにくくてもオペレータの誤操作による上記ケーブル21の破損を未然に防ぐことができる。
【0094】
また、船舶1によれば、上記外部電源Pから電力の供給を受けているときに上記ケーブル21の延出量が所定の値を超えたことを検出した場合、上記電源切り換え制御手段51は、上記外部電源Pから受けている電力を、上記発電機3から受けるように切り換える。
【0095】
したがって、何らかの要因で、上記外部電源Pから電力の供給を受けているときに、上記船舶1が岸壁Qから所定の距離よりも離れて、たとえば、ケーブル21先端のプラグ25が岸壁QのソケットP1からはずれる事態が発生しても、上記船舶1への電力の供給を無停電切り換えにて継続して行うことができる。
{倉貫様へ; を削除する旨の御支持でしたが、 を削除しますと、 部との整合性がとれなくなるので、残しました。 高島}
なお、上記記外部電源Pから電力の供給を受けているときに上記ケーブル21の延出量が所定の値を超えたことを検出した場合、上記制御装置11の制御の下、警報装置を用いて警報を出すと共に主遮断機を遮断してもよい。
【0096】
さらに、上記外部電源Pから電力の供給を受けているときに上記ケーブル21の延出量が所定の値を超えたことを検出した場合、上記信号線を介して、上記外部電源Pの保護回路を作動させるための信号を上記制御装置11から上記外部電源Pに出力するようにしてもよい。そして、上記外部電源Pの保護回路を作動させて、上記外部電源Pからの電力の供給を停止するようにすれば、もしケーブル21が断線してもケーブル21の断線による不具合が上記外部電源Pおいて発生するおそれを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施形態に係る船舶の概略構成を示すと共に、上記船舶が岸壁に接岸している状態を示す図である。
【図2】従来の船舶の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1 船舶
3 発電装置
7 ディーゼルエンジン
9 ガバナ
13 主母線
15 電力供給線
17、39、41 遮断器
19 電気モータ
21、33 ケーブル
23 リール
37 船内ケーブル
45 ケーブル延出量検出手段
51 電源切り換え手段
P 外部電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用する電力を供給するための発電装置を備えていると共に、外部電源から電力の供給を受けることが可能な船舶において、
回転することにより、上記外部電源から電力の供給を受けるためのケーブルを巻き取りまたは延出することができるリールと;
上記発電装置から受けている電力を上記ケーブルを介して上記外部電源から受けるように切り換える場合、無停電で切り換えることが可能な電源切り換え手段と;
を有することを特徴とする船舶。
【請求項2】
請求項1に記載の船舶において、
上記電源切り換え手段は、上記発電装置が発電している発電周波数を、上記外部電源の電源周波数よりも低くしておいて、上記切り換えを行う手段であることを特徴とする船舶。
【請求項3】
請求項2に記載の船舶において、
上記船舶に設置されている機器に電力を供給するために、上記船舶に設けられている主母線と;
上記ケーブルと上記主母線とを互いに接続する船内ケーブルの中間部または端部に設けられた第1の遮断器と;
上記発電装置と上記主母線とを互いに接続している電力供給線の中間部または端部に設けられた第2の遮断器と;
を有し、上記電源切り換え手段は、上記発電装置から受けている電力を上記ケーブルを介して上記外部電源から受けるように切り換える場合、上記発電装置の原動機の回転数をガバナで徐々に下げるように制御して、上記発電装置が発電している発電周波数を、上記外部電源の電源周波数よりも僅かに低くしておき、上記第1の遮断器の電路を閉じ、上記第1の遮断器の電路を閉じた後に、上記第2の遮断器の電路を開く手段であることを特徴とする船舶。
【請求項4】
使用する電力を供給するための発電装置を備えていると共に、外部電源から電力の供給を受けることが可能な船舶において、
回転することにより、上記外部電源から電力の供給を受けるためのケーブルを巻き取りまたは延出することができるリールと;
上記ケーブルを介して上記外部電源から受けている電力を、上記発電装置から受けるように切り換える場合、無停電で切り換えることが可能な電源切り換え手段と;
を有することを特徴とする船舶。
【請求項5】
請求項4に記載の船舶において、
上記電源切り換え手段は、上記発電装置が発電している発電周波数を、上記外部電源の電源周波数よりも高くしておいて、上記切り換えを行う手段であることを特徴とする船舶。
【請求項6】
請求項5に記載の船舶において、
上記船舶に設置されている機器に電力を供給するために、上記船舶に設けられている主母線と;
上記ケーブルと上記主母線とを互いに接続する船内ケーブルの中間部または端部に設けられた第1の遮断器と;
上記発電装置と上記主母線とを互いに接続している電力供給線の中間部または端部に設けられた第2の遮断器と;
を有し、上記電源切り換え手段は、上記ケーブルを介して上記外部電源から受けている電力を、上記発電装置から受けるように切り換える場合、上記発電装置の原動機の回転数をガバナで制御して、上記発電装置が発電している発電周波数を、上記外部電源の電源周波数よりも僅かに高くしておき、上記第2の遮断器の電路を閉じ、上記第2の遮断器の電路を閉じた後に、上記第1の遮断器の電路を開く手段であることを特徴とする船舶。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の船舶において、
信号線を介して上記外部電源の異常を検出可能な外部電源異常検出手段と;
上記外部電源から電力の供給を受けている状態で、上記外部電源に異常が発生したことを検出した場合、上記発電装置の稼動を開始すると共に、上記ケーブルを介して上記外部電源から受けている電力を、上記発電装置から受けるように上記電源切り換え手段を制御する電源切り換え制御手段と;
を有することを特徴とする船舶。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の船舶において、
上記発電装置の異常を検出可能な発電装置異常検出手段と;
上記異常を検出した場合、上記外部電源の保護回路を作動させるための信号を、信号線を介して上記外部電源に出力する異常信号出力手段と;
を有することを特徴とする船舶。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の船舶において、
上記信号線は、上記ケーブルと一体化されて設けられていることを特徴とする船舶。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の船舶において、
上記リールからの上記ケーブルの延出量を検出可能なケーブル延出量検出手段と;
上記ケーブルの延出量が所定の値を超えたことを検出した場合、上記リールのアクチュエータの回転を停止するリール制御手段と;
を有することを特徴とする船舶。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の船舶において、
上記リールからの上記ケーブルの延出量を検出可能なケーブル延出量検出手段を有し、
上記外部電源から電力の供給を受けているときに上記ケーブルの延出量が所定の値を超えたことを検出した場合、上記電源切り換え制御手段は、上記外部電源から受けている電力を、上記発電装置から受けるように切り換える手段であることを特徴とする船舶。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−27536(P2006−27536A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212163(P2004−212163)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(000180966)寺崎電気産業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】