説明

良好な低温性能をもつ湿気硬化性ポリウレタン組成物

本発明は、少なくとも4000g/molの平均分子量を有する少なくとも1種のイソシアネート含有ポリウレタンポリマーPと、式(I)又は(II)の少なくとも1種のポリアルジミンALDとを含む一成分形湿気硬化性組成物に関し、イソシアネート基の含有量は、組成物中に存在するイソシアネート含有成分の合計量を基準にして3.5質量%以下である。本組成物は、シーラントとして特に適しており、良好な低温特性について注目すべきである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一成分形湿気硬化性ポリウレタン組成物の分野、並びにそれらの使用、より特にシーラントとしての使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
ビルディングにおけるシール、例えば、建築物又は土木工学技術における伸縮目地などのためのシーラントとしての一成分形湿気硬化性ポリマー組成物の使用が知られている。これらのシーラントは貯蔵時には安定であるべきであり、水分の影響下、より特には大気中の湿気の形態の水分の影響下で速やかに硬化し、それにより、適応に続いて、汚れ始めることなく及び/又は上塗り(オーバーコート)できるようになるべきである。さらに、そのようなシーラントは、可能な限り柔軟であるべきであり、言い換えれば、100%までの範囲の低伸度における伸び応力に関して低い値を有し、かつ同時に高い弾性を有しているべきであり、それは、シールをした複数の基材間の広がり及び変動を可逆的に、且つできるだけ小さな力で埋め合わせるためである。
【0003】
この用途に好ましいポリマー組成物は、フリーのイソシアネート基を含む一成分形ポリウレタン材料である。しかし、イソシアネート基の加水分解時に形成される二酸化炭素によって、そのような材料は硬化時に気泡を形成する傾向がある。さらに、低温においては、それらの伸び応力の増大があり、いくらかの場合にはかなりそのようであり、これは非常に望ましくなく、特に外装部分での適用の場合に望ましくない。
【0004】
気泡なしに硬化する一成分形ポリウレタン材料は公知である。それらは、例えば米国特許第3,420,800号、又は同4,853,454号に記載されている。これらのシステムは潜在性ポリアミン類を、例えばポリアルジミンの形態で含み、これは湿気硬化の結果として殆ど又は全く二酸化炭素の形成を伴わず、したがって、発泡を防止する。しかし、これらのシステムは、柔軟な建築用シーラントとしての用途に対しては大きすぎる伸び応力をもっている。
【0005】
柔軟性を有する、潜在性ポリアミン含有ポリウレタン材料は、例えば欧州特許公開公報第1329469号公報で知られている。短鎖のポリアルジミンと、低不飽和度をもつ長い線状ポリオキシアルキレンポリオールに基づくプレポリマーとを含む組成物が開示されている。このように、室温での伸び応力については、低い値が得られている。しかし、これらのシステムの伸び応力値は、低温では顕著に上昇しすぎる。
【0006】
長鎖のポリアルジミン類と、ポリウレタン材料におけるそれらの使用は、同様に、例えば、米国特許第4,983,659号明細書にRIMシステムとして;米国特許第4,990,548号明細書にポリウレタンフォームとして;あるいは、米国特許第5,466,771号明細書に二成分形コーティングとして記載されている。
【特許文献1】米国特許第3,420,800号明細書
【特許文献2】米国特許第4,853,454号明細書
【特許文献3】欧州特許公開第1329469号公報
【特許文献4】米国特許第4,983,659号明細書
【特許文献5】米国特許第4,990,548号明細書
【特許文献6】米国特許第5,466,771号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、柔軟なシーラントとしてその応用に関して以前から現在まで知られている一成分形ポリウレタン組成物を改良することである。これらのシーラントは、貯蔵時には安定であり、速やかに且つ気泡の形成をすることなく硬化し、それらが硬化した後は良好な弾性を示し、室温と−20℃の両方において可能な限り一貫して低い100%伸び応力を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一成分形湿気硬化性ポリウレタン組成物における潜在的硬化剤としての、請求項1記載の種類の特定のポリアルジミンの使用が、従来技術により公知の柔軟なシーラントに顕著な改善をもたらすことを発見した。より詳細には、室温から−20℃に冷却したときに、100%伸び応力にわずかな上昇しかない。言い換えれば、室温で測定した100%伸び時の応力と−20℃で測定した100%伸び時の応力とは、ほとんど同じである。
【0009】
〔好ましい態様の説明〕
本発明は、
a)イソシアネート基を含み、且つ少なくとも4000g/molの平均分子量を有する少なくとも1種のポリウレタンポリマーPと、
b)下記式(I)又は(II):
【化1】

[式中、Xは、脂肪族一級アミノ基を有し、且つ少なくとも180g/eq、好ましくは少なくとも220g/eqの平均アミン当量質量を有するn官能のポリアミンから、n個のアミノ基を除いた後の残基であり;
nは、2又は3であり、
及びYは、それぞれ互いに独立して、1〜12の炭素原子を有する一価の炭化水素基であるか、あるいは5〜8、好ましくは6の炭素原子を有する非置換又は置換された炭素環式環の一部である、4〜20の炭素原子を有する二価の炭化水素基を一緒になって形成しており、かつ、
は、適切な場合には少なくとも1つのヘテロ原子、より特にはエーテル、カルボニル、もしくはエステル基の形態の酸素を有していてもよい一価の炭化水素基であり;
は、5〜8、好ましくは6原子の環サイズを有する置換又は非置換のアリールもしくはヘテロアリール基であるか、あるいは、
【化2】

(式中、Rは水素原子であるか、又はアルコキシ基である。)
であるか、あるいは
少なくとも6つの炭素原子を有する置換又は非置換のアルケニル又はアリールアルケニル基である。]
の少なくとも1種のポリアルジミンALDとを含み、
そのイソシアネート基含有量が、組成物中に存在するイソシアネート基含有成分の合計量を基準にして、3.5質量%以下である、一成分形湿気硬化性組成物を提供する。
【0010】
この種の組成物は、硬化後、室温で測定した100%伸び応力(「σ100%(RT)」)と−20℃で測定した100%伸び応力(σ100%(−20℃)」)がほとんど同じであるという特性を有する。この組成物は、外装部分における建築構造物のシーリング接合部のための弾性シーラントとして特に適している。
【0011】
本明細書中で「ポリマー」の語は、化学的に均一である一方、重合度、分子量、及び鎖長に関して異なり、且つ重合反応(付加重合、重付加、又は重縮合)によって製造されている高分子の集合体を一方で包含する。他方、この用語は、重合反応による高分子のそのような集合体の誘導体、言い換えれば、例えば、存在する高分子上の官能基の付加又は置換などの反応によって得られ、且つ化学的に均一もしくは化学的に不均一であってよい化合物も包含する。この用語は、いわゆるプレポリマー、言い換えれば、その官能基が高分子の合成に関与する反応性オリゴマー予備付加体をさらに包含する。
【0012】
「ポリウレタンポリマー」の語は、ジイソシアネート重付加工程として公知の方法によって製造された全てのポリマーを包含する。これには、実質的に又は完全にウレタン基のないポリマーをも包含する。ポリウレタンポリマーの例には、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレア、ポリウレア、ポリエステルポリウレア、ポリイソシアヌレート、及びポリカルボジイミドがある。
【0013】
「ポリアミン」の語は、ここ及び以下では、脂肪族一級ジアミン又はトリアミン類、言い換えれば、脂肪族、脂環式、又はアリール脂肪族基(これらは適切であればヘテロ原子を含んでいてもよい)に結合した2つ又は3つの一級アミノ基を式上で含む化合物を特定する。したがって、これらは、例えば、ジアミノトルエンなどにおけるように、NH基が芳香族又はヘテロ芳香族基に直接結合している芳香族一級ポリアミンとは異なる。
【0014】
本明細書における「アミン当量質量」の語は、1モルの一級アミノ基を含むポリアミンの質量である。
【0015】
「伸び応力」(「σ」)の語は、伸長した状態において材料中に作用する応力である。「100%伸び応力」(「σ100%」)は、その長さを2倍に引き伸ばした材料中に作用する応力であり、「100%伸びにおける応力」ともいう。
【0016】
「平均分子量」の語、あるいは単に「分子量」の語は、分子混合物、より特にオリゴマー又はポリマーの混合物についていうのであって、純粋な分子についていうのでない場合は、本明細書中では分子量の平均M(数平均)である。
【0017】
本湿気硬化性組成物は、イソシアネート基を含み且つ少なくとも4000g/molの平均分子量を有する少なくとも1種のポリウレタンポリマーPを含む。このポリウレタンポリマーPは、より特に、少なくとも1種のポリイソシアネートと、少なくとも1種のポリオールとの反応によって得られ、NCO/OH比は2.5以下の値、より特には2.2以下の値である。
【0018】
この反応は、ポリオールとポリイソシアネートとを、通常の手法によって、例えば50℃〜100℃の温度で、適切な場合には適切な触媒の使用を伴って、反応させることによって行うことができ、ポリイソシアネートは、そのポリイソシアネート基がポリオールのヒドロキシル基に対して化学量論的に過剰に存在するように計量される。ポリイソシアネートは、NCO/OH比が2.5以下、好ましくは2.2以下となるように計量することが有利である。本明細書でNCO/OH比は、用いたヒドロキシル基の数に対する、用いたイソシアネート基の数の比を意味する。ポリオールの全てのヒドロキシル基が反応した後で、全ポリウレタンポリマーPを基準にして、0.5質量%〜3質量%のフリーイソシアネート含有量が残ることが好ましい。
【0019】
適切な場合には、ポリウレタンポリマーPは、可塑剤を用いて調製することができ、その用いる可塑剤はいかなるイソシアネート反応性基も含まない。
【0020】
ポリウレタンポリマーPを調製するために用いることのできるポリオールの例は、以下の市販されている一般的なポリオール、またはそれらの混合物である:
− ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエーテルポリオールまたはオリゴエーテロールともいわれ、これらはエチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−または2,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフランまたはこれらの混合物の重合生成物であり、2個以上の活性水素原子を有する出発分子、例えば、水、アンモニア、または2個以上のOHまたはNH基を有する化合物、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール異性体類及びトリプロピレングリコール異性体類、ブタンジオール異性体類、ペンタンジオール異性体類、ヘキサンジオール異性体類、へプタンジオール異性体類、オクタンジオール異性体類、ノナンジオール異性体類、デカンジオール異性体類、ウンデカンジオール異性体類、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、アニリン、および前記の化合物の混合物を用いて重合することができる。例えば、いわゆるダブルメタルシアン化物錯体触媒(DMC触媒)として知られているものを用いて調製された、不飽和度が低い(ASTM D−2849−69に規定されているようにして測定され、ポリオール1グラム当たりの不飽和度のミリ当量(meq/g))で記録される)ポリオキシアルキレンポリオールと、例えば、アニオン触媒(例えば、NaOH、KOH、CsOH、又はアルカリ金属アルコキシド等)を用いて調製された、高い不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオールの両方が使用できる。
【0021】
特に好適なものは、ポリオキシアルキレンジオール又はポリオキシアルキレントリオール、より特に、ポリオキシプロピレンジオール又はポリオキシプロピレントリオールである。
【0022】
特に好適なものは、0.02meq/g未満の不飽和度を有し、且つ1000〜30000g/モルの範囲の分子量を有するポリオキシアルキレンジオール又はポリオキシアルキレントリオール、並びに、分子量が400〜8000g/モルのポリオキシプロピレンジオール及びトリオールである。
【0023】
同様に、特に好適なものは、エチレンオキシド末端(「EOエンドキャップ」、エチレンオキシドエンドキャップ)ポリオキシプロピレンポリオールとして公知のものである。後者は、特別なポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンポリオールであり、これは例えば、純粋なポリオキシプロピレンポリオール、より特に、ポリオキシプロピレンジオールおよびポリオキシプロピレントリオールに、ポリプロポキシル化反応の終了後に、エチレンオキシドを用いたさらなるアルコキシル化を行うことによって得られ、これは、結果として、第一級ヒドロキシル基を含む。
【0024】
− スチレン-アクリロニトリル-グラフト化またはアクリロニトリル-メチルメタクリレート-グラフト化ポリエーテルポリオール。
【0025】
− ポリエステルポリオール、オリゴエステロールともいわれ、例えば、二価〜三価のアルコール(例えば、1,2−エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、または前記のアルコールの混合物)と、有機ジカルボン酸、またはそれらの無水物またはエステル(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびヘキサヒドロフタル酸、または前記の酸の混合物)とから調製されたもの、ならびにまた、例えば、ε−カプロラクトンなどのラクトンから形成されたポリエステルポリオール。
【0026】
− ポリカーボネートポリオール、例えば、上述したアルコール類(上記のポリエステルポリオールを合成するために用いられるもの)を、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、又はホスゲンと反応させることによって得られる種類のもの。
【0027】
− ポリアクリレートポリオールおよびポリメタクリレートポリオール。
【0028】
− ポリ炭化水素ポリオール、オリゴヒドロカルボノールともいわれ、例えば、クラトンポリマーズ(Kraton Polymers)社によって製造されている種類の、ポリヒドロキシ官能性エチレン−プロピレン、エチレン−ブチレン、またはエチレン−プロピレン−ジエンコポリマー、または、例えば、1,3−ブタジエンまたはジエン混合物などのジエンと、スチレン、アクリロニトリルまたはイソブチレンなどのビニルモノマーとのポリヒドロキシ官能性コポリマー、または、例えば、1,3−ブタジエンとアリルアルコールとの共重合によって調製される種類のポリヒドロキシ官能性ポリブタジエンポリオール。
【0029】
− ポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル/ポリブタジエンコポリマーであって、例えば、エポキシド類もしくはアミノアルコール類と、カルボキシル末端アクリロニトリル/ポリブタジエンコポリマー(Hanse Chemie社からHycar(登録商標)CTBNの名称で市販されている)とから調製できる種類のコポリマー。
【0030】
これらの記載したポリオール類は、好ましくは、250〜30000g/mol、より好ましくは1000〜30000g/molの平均分子量を有し、かつ、1.6〜3の範囲の平均OH官能基を有することが好ましい。
【0031】
これら上述のポリオールに加えて、少量の低分子量二価または多価アルコール、例えば1,2−エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール異性体類およびトリプロピレングリコール異性体類、ブタンジオール異性体類、ペンタンジオール異性体類、ヘキサンジオール異性体類、ヘプタンジオール異性体類、オクタンジオール異性体類、ノナンジオール異性体類、デカンジオール異性体類、ウンデカンジオール異性体類、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、脂肪アルコール二量体、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、糖アルコール、例えば、キシリトール、ソルビトールまたはマンニトール、スクロースなどの糖、その他の多官能性アルコール、前述の二価および多価アルコールの低分子量アルコキシル化生成物、ならびに前述のアルコールの混合物を、ポリウレタンポリマーPの調製に使用することができる。
【0032】
イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPを調製するためのポリイソシアネートとしては、例えば、以下の市販されている一般的なポリイソシアネートを用いることができる:
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよびリジンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−および1,4−ジイソシアネート及びこれらの異性体の所望の混合物、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(すなわち、イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、パーヒドロ−2,4’−および−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4−ジイソシアナト−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m−およびp−キシリレンジイソシアネート(m−およびp−XDI)、m−およびp−テトラメチル−1,3−および−1,4−キシリレンジイソシアネート(m−およびp−TMXDI)、ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ナフタレン)、2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート、これらの異性体の所望の混合物(TDI)、4,4’−、2,4’−および2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート並びにこれらの異性体の所望の混合物(MDI)、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ジイソシアナトベンゼン、ナフタレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル(TODI)、上述のイソシアネートのオリゴマーおよびポリマー、並びに上述のイソシアネートの所望の混合物。MDI、TDI、HDI、およびIPDIが好ましい。
【0033】
少なくとも4000g/molの平均分子量と、その調製について有利に認められる2.5以下のNCO/OH比とによって、本ポリウレタンポリマーPは比較的低いイソシアネート基含有量を有する。結果として、それは、弾性特性を有する一成分形湿気硬化性組成物に用いるのに適している。4000g/molより低い平均分子量を有するポリウレタンポリマーは、比較的高いイソシアネート基含有量を有する。同様に、2.5より大きなNCO/OH比で調製されたポリウレタンポリマーは、その相対的に高い未反応ポリイソシアネート含有量のために、相対的に高いイソシアネート基含有量を有する。
【0034】
ポリウレタン組成物中の高いイソシアネート基含有量は、湿気によるその硬化の後、組成物中の高い尿素基含有量をもたらす。このことは、しかし、100%伸び以下の範囲での伸び応力を、弾性シーラントとして用いるために好適な範囲を超えて上昇させる。顕著に高いNCO/OH比(例えば、ほぼ8の大きさの程度)で調製したポリウレタンポリマーは、例えば米国特許第4,983,659号明細書によってRIM組成物についての実施例2に記載されたとおり、硬化した状態で非常に高い伸び応力を有する。それらはしたがって、可撓性を有するシーラントとして用いるためには不適当である。
【0035】
典型的には、ポリウレタンポリマーPは、全ポリウレタン組成物を基準にして、10質量%〜80質量%、好ましくは15質量%〜50質量%で存在する。
【0036】
イソシアネート基を含むポリウレタンポリマーPの他に、一成分形湿気硬化性組成物は、下記式(I)又は(II)の少なくとも1種のポリアルジミンALDを含む。
【0037】
【化3】

【0038】
式(I)及び(II)中、nは2又は3であり、かつXは、脂肪族一級アミノ基を有し且つ少なくとも180g/eqの平均アミン当量質量を有するn官能のポリアミンからn個のアミノ基を除いた後の基を表す。
【0039】
好ましいXは炭化水素基を表し、この炭化水素基は任意選択で置換されていてもよく、かつ、任意選択でヘテロ原子、より特にエーテル酸素、三級アミン窒素、及びチオエーテルの硫黄の形態のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0040】
特に好ましくは、Xはポリオキシアルキレン基、より特に、ポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基を表し、これらの基のそれぞれは、別のオキシアルキレン基部分を含むこともできる。
【0041】
式(I)において、Y及びYは一方では互いに独立してそれぞれ1〜12の炭素原子を有する一価炭化水素基であることができる。
【0042】
他方、Y及びYは一緒になって4〜20の炭素原子を有する2価の炭化水素基であることができ、この基は5〜8、好ましくは6つの炭素原子を有する非置換の又は置換された炭素環式環の一部分である。
【0043】
は、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子、より特に、エーテル、カルボニル、又はエステル基の形態の酸素、を含む一価の炭化水素基を表す。
【0044】
特に、Yは第一に、分岐又は非分岐のアルキル、シクロアルキル、アルキレン、又はシクロアルキレン基であってよく、これらは任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子、特にエーテル酸素を含んでいてもよい。
【0045】
特に、さらに、Yは、置換又は非置換のアリール又はアリールアルキル基であることもできる。
【0046】
特に、Yは、最後に、式:
【化4】

(Rは、アリール、アリールアルキル、又はアルキル基を表し、各場合に置換又は非置換である。)
の基であることもできる。
【0047】
第一の好ましい態様では、Yは下記式(III):
【化5】

(式中、Rは、水素原子又はアルキル又はアリールアルキル基を表し、Rはアルキル又はアリールアルキル基を表す。)
を表す。
【0048】
第二の好ましい態様では、Yは下記式(IV):
【化6】

(式中、Rは上で定義したとおりであり、
は、水素原子又はアルキル又はアリールアルキル又はアリール基を表し、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を有していてもよく、特に少なくとも1つのエーテル酸素を有していてもよく、任意選択で少なくとも1つのカルボキシル基を有していてもよく、任意選択で少なくとも1つのエステル基を有していてもよく、あるいはRは一つ又は複数の不飽和結合を有する直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖を表す。)
を表す。
【0049】
式(II)中、Yは第一に、5〜8、好ましくは6つの原子の環サイズを有する、置換又は非置換のアリール又はヘテロアリール基であってよい。
【0050】
第二に、Yは式:
【化7】

(式中、Rは水素原子又はアルコキシ基である。)
を表すことができる。
【0051】
最後に、Yは、少なくとも6つの炭素原子を有する、置換又は非置換のアルケニル又はアリールアルケニル基を表すことができる。
【0052】
ポリアルジミンALDは、式(V)のポリアミンと、式(VI)又は(VII)のアルデヒドとの間の、水の脱離を伴う縮合反応によって得ることができ、X、n、及びY、Y、Y、及びYは上述した定義を有する。
【0053】
【化8】

【0054】
式(V)のポリアミンは、2又は3の脂肪族一級アミノ基と、少なくとも180g/eqの平均アミン当量質量とを有するポリアミンである。X基は、水の不存在下でイソシアネート基と反応性である残基をもたない;より特には、Xは、水酸基、二級アミノ基、尿素基、又は活性水素を含むその他の基を有しない。X基は、低温で結晶化の傾向をもつ基(例えば、ブロックで配列した、ポリオキシエチレン、ポリエステル、又はポリカーボネート基)を出来るだけ少なくしか有しないことが有利であり、なぜなら、これらの基は硬化した組成物の低温特性に悪影響を及ぼし得るからである。
【0055】
ポリアルジミンALDの調製のために式(V)のポリアミンを用いる結果として、記載したポリウレタン組成物は、柔軟性を有するだけでなく、シーラントに有利な低温特性によっても特徴づけられ、室温で測定した100%伸びにおけると応力と−20℃で測定した100%伸びにおける応力とが、ほとんど全く同じである。硬化した組成物において、用いたポリアミンのアミン当量質量は、硬化したポリマー中でのアミン−イソシアネート反応によって形成された尿素基間の距離を決める。ポリアミンのアミン当量質量が大きいほど、それら尿素基間の距離は長くなり、このことは所望の低温特性のために明らかに有利である。
【0056】
式(V)の好適なポリアミンは、例えば、ポリウレタンポリマーPの調製に関連して既に言及した種類のポリオールから出発して調製される。一方では、ポリオールのOH基は、アミノ化によって一級アミノ基に変換でき、あるいは、ポリオールは、例えばアクリロニトリルとのシアノエチル化と続く還元によってポリアミンに変換され、あるいは、ポリオールは過剰のジイソシアネートと反応させられて、次にその末端イソシアネート基がアミノ基に加水分解される。
【0057】
ポリエーテル親構造を有するポリアミン、特に、ポリオキシプロピレン親構造を有するものが好ましい。
【0058】
ポリエーテル親構造を有し、且つ少なくとも180g/eqのアミン当量質量を有する好適な市販されているポリアミンは、例えば、以下のものである:
− ポリオキシプロピレンジアミン類、例えば、ジェファーミン(Jeffamine(登録商標))D−200、D−2000、及びD−4000(Huntsman Chemicals社から)、ポリエーテラミン(Polyetheramin)D400、D2000(BASF社から)、及びPCアミン(PC Amine(登録商標))DA400及びDA2000(Nitroil社から);
− ポリオキシプロピレントリアミン類、例えば、ジェファーミン(Jeffamine(登録商標))T−3000及びT−5000(Huntsman Chemicals社から)、及びポリエーテラミン(Polyetheramin)T5000(BASF社から);
− ポリテトラヒドロフランジアミン類、例えば、ポリテトラヒドロフラナミン(Polytetrahydrofuranamin)1700(BASF社から);
− ポリテトラヒドロフランジオールのシアノエチル化によるジアミン類、例えば、ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン750、1000、及び2100(BASF社から);
− ポリオキシプロピレン-ポリテトラヒドロフランのブロックコポリマージアミン、例えば、ジェファーミン(Jeffamine(登録商標)XTJ−533、XTJ−536、及びXTJ−548(Huntsman Chemicals社から);
− ポリオキシ(1,2-ブチレン)ジアミン類、例えば、ジェファーミン(Jeffamine(登録商標))XTJ−523(Huntsman Chemicals社)。
【0059】
ポリアルジミンALDの調製のためには、式(VI)又は(VII)のアルデヒドが用いられる。これらのアルデヒドは、それらのY、Y、Y、及びY基が、水の不存在下でイソシアネート基と反応しうる基を含まないという性質を有する。特に、Y、Y、Y、及びYは、ヒドロキシル基、二級アミノ基、尿素基、又はその他の活性水素含有基を全く含まない。
【0060】
式(VI)の好適なアルデヒドは、三級脂肪族又は三級脂環式アルデヒド、例えば、ピバルアルデヒド(すなわち、2,2-ジメチルプロパナール)、2,2-ジメチルブタナール、2,2-ジエチルブタナール、1-メチルシクロペンタンカルボキシアルデヒド、1-メチルシクロヘキサンカルボキシアルデヒド;2-ヒドロキシ-2-メチルプロパナールとアルコール(例えば、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及び2-エチルヘキサノール)とから形成されたエーテル類;2-ホルミル-2-メチルプロピオン酸又は3-ホルミル-3-メチルブタン酸と、アルコール(例えば、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及び2-エチルヘキサノール)とから形成されたエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロパナールとカルボン酸(例えば、ブタン酸、イソブタン酸、及び2-エチルヘキサン酸)とから形成されたエステル類;及び、特に好適であるとして以下に記載する、2,2-ジ置換3-ヒドロキシプロパナール、-ブタナール、又は同様のより分子量の大きなアルデヒド、より特に、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロパナールのエーテル類及びエステル類、である。
【0061】
より特に好適な式(VI)のアルデヒドは、下記式(VIa)の化合物である。
【化9】

上記式中、Y、Y、R、及びRは既に記載した定義を有する。
【0062】
式(VIa)の化合物は、脂肪族、アリール脂肪族(araliphatic)、又は脂環式の2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒドと、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、又は脂肪アルコール)とのエーテル類を表す。前記の2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒドは、一級又は二級脂肪族アルデヒド、より特にはホルムアルデヒドと、二級脂肪族アルデヒド、二級アリール脂肪族アルデヒド、又は二級脂環式アルデヒド[例えば、2-メチルブチルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、2-メチルバレロアルデヒド、2-エチルカプロンアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,2,3,6-テトラヒドロベンズアルデヒド、2-メチル-3-フェニルプロピオンアルデヒド、2-フェニルプロピオンアルデヒド(ヒドロトロープアルデヒド(hydrotrope aldehyde)、又はジフェニルアセトアルデヒド]との間のアルドール反応、より特に交差アルドール反応で形成される種類のものである。 式(VIa)の化合物の例は、2,2-ジメチル-3-メトキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-エトキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-イソプロポキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-ブトキシプロパナール、及び2,2-ジメチル-3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロパナールである。
【0063】
より特に適した式(VI)のさらなるアルデヒドは、下記式(VIb):
【化10】

[式中、Y、Y、R、及びRは、既に記載した定義を有する。]
の化合物である。
【0064】
式(VIb)の化合物は、既に記載した2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒド類〔例えば、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロパナール、2-ヒドロキシメチル-2-メチルブタナール、2-ヒドロキシメチル-2-エチルブタナール、2-ヒドロキシメチル-2-メチルペンタナール、2-ヒドロキシメチル-2-エチルヘキサナール、1-ヒドロキシメチルシクロペンタンカルボキシアルデヒド、1-ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1-ヒドロキシメチルシクロヘキサ-3-エンカルボキシアルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-3-フェニルプロパナール、3-ヒドロキシ-2-メチル-2-フェニルプロパナール、及び3-ヒドロキシ-2,2-ジフェニルプロパナール〕と、脂肪族又は芳香族カルボン酸〔例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、2-エチルカプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及び安息香酸〕とのエステルを表す。式(VIb)の好ましい化合物は、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロパナールと上述したカルボン酸とのエステル類〔例えば、2,2-ジメチル-3-ホルミルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-アセトキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-イソブチロキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-(2-エチルヘキサノイルオキシ)プロパナール、2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-パルミトイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-ステアロイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-ベンゾイルオキシプロパナール、及びその他の2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒドの類似したエステル類〕である。
【0065】
式(VIb)のアルデヒドの一つの好ましい調製方法において、2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒド〔例は、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロパナールであり、これは例えば、ホルムアルデヒド(又は、パラホルムアルデヒド)とイソブチルアルデヒドとから、適切な場合は系内(in situ)で調製できる〕をカルボン酸と反応させて、対応するエステルを形成する。このエステル化は、例えば、Houben-Weyl, “Methoden der Organishen Chemie”, Vol. VIII, 第516〜528頁に記載されているように、公知の方法によって溶媒を用いることなく行うことができる。
【0066】
脂肪族又は脂環式ジカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、又はセバシン酸などを用いて、2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒドのエステル化を行うことによって、式(VIb)のアルデヒドを調製することもできる。このようにして、相当する三級脂肪族又は三級脂環式ジアルデヒドが得られる。
【0067】
一つの特に好ましい態様では、式(VI)のアルデヒドは無臭である。「無臭」の物質とは、多くの人が臭いを感じることができないほど、言い換えれば、鼻で知覚できないほど臭いが弱い物質を意味する。
【0068】
式(VI)の無臭アルデヒドは、特に、式(VIb)のアルデヒドであり、R基は、11〜30の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル鎖を表し、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子、特に、少なくとも1つのエーテル酸素を有していてもよく、あるいは、11〜30の炭素原子を有する一つ又は複数の不飽和結合をもつ直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖を表す。
【0069】
式(VIb)の無臭のアルデヒドの例は、上述した2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒドとカルボン酸とから形成されるエステル化生成物であり、カルボン酸は、例えば、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、天然オイル及び脂肪(例えば、なたね油、ヒマワリ油、亜麻仁油、オリーブ油、ココナツ油、アブラヤシ核油、アブラヤシ油など)の工業的加水分解による脂肪酸、これらの酸を含む脂肪酸の工業的混合物である。式(VIb)の好ましいアルデヒドは、2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-ミリストイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-パルミトイルオキシプロパナール、及び2,2-ジメチル-3-ステアロイルオキシプロパナールである。2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールが特に好ましい。
【0070】
本ポリウレタン組成物の硬化の過程で、ポリアルジミンALDを調製するために用いたアルデヒドが遊離する。多くのアルデヒド類は非常に強い臭気を有し、これがポリウレタン組成物の硬化の間、及びアルデヒドの揮発性に応じて硬化の後で、破壊的なものとして知覚されうる。硬化の過程で臭気を生じさせる組成物は、特に室内空間においては、非常に限定された有用性しかない。無臭のアルデヒドを用いた特に好ましい態様では、臭いなしに硬化するポリウレタン組成物が得られる。
【0071】
式(VII)の適切なアルデヒドは、芳香族アルデヒドであり、その例には、ベンズアルデヒド、2-及び3-及び4-トルアルデヒド、4-エチル-及び4-プロピル-及び4-イソプロピル-及び4-ブチルベンズアルデヒド、2,4-ジメチルベンズアルデヒド、2,4,5-トリメチルベンズアルデヒド、4-アセトキシベンズアルデヒド、4-アニスアルデヒド、4-エトキシベンズアルデヒド、ジ-及びトリアルコキシベンズアルデヒド異性体類、2-, 3-及び4-ニトロベンズアルデヒド、2-, 3-及び4-ホルミルピリジン、2-フルフルアルデヒド、2-チオフェンカルボアルデヒド、1-及び2-ナフチルアルデヒド、3-及び4-フェニルオキシベンズアルデヒド;キノリン-2-カルバルデヒド及びその3-, 4-, 5-, 6-, 7-, 及び8-位異性体類、並びにまた、アントラセン-9-カルバルデヒド、が含まれる。
【0072】
式(VII)の好適なアルデヒド類は、さらに、グリオキサール、グリオキサル酸エステル、例えば、メチルグリオキサレートなど、並びに桂皮アルデヒド及び置換された経皮アルデヒド類である。
【0073】
式(I)及び式(II)の両方のポリアルジミンALDは、それらが互変異性エナミン類を形成できないという特性を有しており、なぜなら、それらはイミノ基炭素原子のα位に位置する水素を含んでいないからである。イソシアネート基を含むポリウレタンポリマーPとともに、そのようなアルジミン類は、高い反応性の芳香族イソシアネート基(例えば、TDI及びMDIのイソシアネート基)の存在下でさえ、貯蔵可能な混合物を形成する。
【0074】
ポリアルジミンALDは、本ポリウレタン組成物中に、全てのフリーイソシアネート基を基準にして、化学量論又は化学量論よりも少ない量で存在し、特に、イソシアネート基1当量当たり、0.3〜1.0当量、好ましくは0.4〜0.9当量、より好ましくは0.5〜0.8当量で存在する。
【0075】
ポリアルジミンALDとしては、様々なポリアルジミン類の混合物を用いることもでき、混合物には、式(V)の様々なポリアミン類を用いて、式(VI)又は(VII)の異なる又は同じアルデヒドと反応させることによって調製した様々なポリアルジミン類の混合物が含まれる。式(V)のジアミン類及びトリアミン類の混合物を用いることによるポリアルジミン類ALDの混合物を用いることも全く有利でありうる。
【0076】
少なくとも1種のポリアルジミンALDに加えて、さらなるポリアルジミンを本組成物中に存在させることもできる。したがって、例えば、式(V)のポリアミンを、式(VI)又は(VII)のアルデヒドとジアルデヒドとを含む混合物と反応させることもできる。別の可能性は、式(VI)及び/又は(VII)のアルデヒドと並んでさらなるアルデヒドを含むアルデヒド混合物を用いることである。しかし、そのようなさらなるポリアミン類又はアルデヒド類は、それらの性質と量に関して、組成物の貯蔵安定性も低温特性も悪影響を受けないように選択することを確実にしなければならない。
【0077】
本ポリウレタン組成物は、少なくとも1種のフィラーFを含むことが有利である。フィラーFは、未硬化の組成物のレオロジー特性、特に加工特性だけでなく、硬化した組成物の機械特性及び表面の性質にも影響を及ぼす。適切なフィラーFは、有機及び無機のフィラーであり、例には天然、粉砕、又は沈降炭酸カルシウム(適切な場合にはステアレートでコーティングされているもの)、カーボンブラック、焼成カオリン、アルミナ、シリカ、PVC粉末又は中空ビーズである。好ましいフィラーは炭酸カルシウムである。
【0078】
フィラーFの適切な量はフィラーの粒径及び比重に左右される。例えば、0.07〜7μmの範囲の平均粒径を有する炭酸カルシウムの典型的な量は、ポリウレタン組成物を基準にして、10質量%〜70質量%、好ましくは20質量%〜60質量%の範囲である。
【0079】
異なるフィラーFの混合物を用いることは完全に可能であり、有利でさえありうる。異なるタイプの炭酸カルシウムの混合物を用いることも有利でありうる。
【0080】
さらに、ポリウレタン組成物が少なくも1種の増粘剤Vを含むと有利である。増粘剤Vは、組成物中に存在するその他の成分、特にポリウレタンポリマーPと、そして適当な場合にはフィラーFと相互作用し、組成物の粘稠度(コンシステンシー)を変えうる。好ましくは、増粘剤Vは、組成物の粘稠度に影響を及ぼし、それにより構造粘度特性を有するペースト材料を与え、これは適用時に良好な加工特性を示す。ジョイントシーラントのための良好な加工特性には、未硬化の材料が包装容器(例えばカートリッジ)から容易に押出可能であり、次に良好な固さをもち、適用を中断した場合でも短い糸引きであり、そして次に所望の形状に容易に賦形できること(スムージングともいわれる)が含まれる。
【0081】
適切な増粘剤Vの例は、尿素化合物、ポリアミドワックス、ベントナイト、又はヒュームドシリカである。例えば尿素化合物の形態の増粘剤Vの典型的な使用量は、ポリウレタン組成物を基準にして、例えば、0.5〜10質量%の範囲にある。増粘剤Vは、例えば可塑剤中のペーストとして用いることもできる。
【0082】
組成物の粘稠度を最適化するために、2種以上の増粘剤Vの組み合わせを用いることも有利でありうる。
【0083】
少なくとも1種のポリウレタンポリマーP、少なくとも1種のポリアルジミンALD、適切な場合には少なくとも1種のフィラーF、そして適当な場合には少なくとも1種の増粘剤Vに対してさらに、上記一成分形湿気硬化性ポリウレタン組成物はさらなる成分を含むことができる。
【0084】
したがって、適切な場合、アルジミン基の加水分解及び/又はイソシアネート基の反応を促進する少なくとも1種の触媒Kを存在させることができる。
【0085】
ポリアルジミンALDの加水分解を促進する触媒Kの例は、有機カルボン酸(例えば、安息香酸又はサリチル酸)、有機カルボン酸無水物(例えば、無水フタル酸又は無水ヘキサヒドロフタル酸)、有機カルボン酸のシリルエステル、有機スルホン酸(例えば、p-トルエンスルホン酸又は4-ドデシルベンゼンスルホン酸)、スルホン酸エステル、その他の有機又は無機酸、あるいは前記の酸及び酸エステルの混合物、である。
【0086】
イソシアネート基と水との反応を促進する触媒Kは、例えば、有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジアセチルアセトナート)、有機ビスマス化合物もしくはビスマス錯体、又はアミノ基を含む化合物(例えば、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテルもしくは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、又はポリウレタン化学で典型的な、イソシアネート基の反応のためのその他の触媒である。
【0087】
上記ポリウレタン組成物は、2種以上の触媒K、特に、酸と有機金属化合物もしくは金属錯体との混合物、酸とアミノ基を含む化合物との混合物、又は酸、有機金属化合物もしくは金属錯体とアミノ基を含む化合物との混合物を含むことが有利でありうる。
【0088】
触媒Kの典型的な量は、一般に、全ポリウレタン組成物を基準にして0.005質量%〜2質量%であり、当業者にはどの触媒についてどの程度の量が目的に合うか明らかである。
【0089】
さらなる成分として、さらに、その他の成分の他に以下の助剤及び補助剤を存在させてもよい:
− 可塑剤。例は、有機カルボン酸又はそれらの無水物、例えば、フタレート類(例えば、ジオクチルフタレート、又はジイソデシルフタレート)、例えば、アジペート類(例えば、ジオクチルアジペート)、及びセバケート類、有機リン酸エステル及び有機スルホン酸エステル、又はポリブテン類;
− 溶媒。例は、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メシチルオキシド、並びに環状ケトン類(例えば、メチルシクロヘキサノン及びシクロヘキサノン);エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、又は酢酸ブチル、ギ酸エステル類、プロピオン酸エステル類、又はマロン酸エステル類);エーテル類(例えば、ケトンエーテル類、エステルエーテル類、及びジアルキルエーテル類、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、及びまたエチレングリコールジエチルエーテル);脂肪族及び芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン、及びまた様々な石油画分、例えば、ナフサ、揮発油、石油エーテル、もしくはベンジン);ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン);及びまた、N-アルキル化ラクタム類(例えば、N-メチルピロリドン、N-シクロヘキシルピロリドン、又はN-ドデシルピロリドン);
− 繊維。例えばポリエチレン繊維;
− 顔料。例えば二酸化チタン;
− さらなる触媒(ポリウレタン化学で一般的なもの);
− 反応性希釈剤及び架橋剤。例は、ポリイソシアネート(例えば、MDI、PMDI、TDI、HDI、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-又は1,4-ジイソシアネート、IPDI、パーヒドロ-2,4’-及び-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-及び1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、これらのポリイソシアネートのオリゴマー及びポリマー、より特に、記載したポリイソシアネート類のイソシアヌレート、カルボジイミド、ウレトンイミン、ビウレット、アロファネート、及びイミノオキサジアジンジオン、ポリイソシアネート類と短鎖ポリオール類との付加体、並びにアジピン酸ジヒドラジド及びその他のヒドラジド、である;
− 乾燥剤。例えば、p-トシルイソシアネート及びその他の反応性イソシアネート、オルトギ酸エステル、酸化カルシウム;ビニルトリメトキシシランもしくはその他の迅速加水分解性シラン類、例えば、シラン基のα位に官能基を有する有機アルコキシシラン類、又はモレキュラーシーブス;
− 接着促進剤。より特にシラン類、例えば、エポキシシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリロシラン、イソシアネートシラン、カルバメートシラン、S-(アルキルカルボニル)メルカプトシラン、及びアルジミノシラン、並びにまた、これらのシラン類のオリゴマー形態のもの;
− 熱、光、及びUV放射に対する安定剤;
− 難燃剤;
− 界面活性物質、例えば、湿潤剤、流動性制御剤、脱気剤、あるいは脱泡剤;
− 殺生物剤、例えば、殺藻剤、殺菌剤、かび生育防止剤。
並びに、一成分形ポリウレタン組成物に典型的に用いられるさらなる物質。
【0090】
ポリアルジミンALDだけでなく、存在する全てのフィラーF、存在する全ての増粘剤V、存在する全ての触媒K、及びまた、組成物中に存在する全てのさらなる成分も、貯蔵安定性を損なわないように注意を払うことが有利である。このことは、貯蔵中に、それらが架橋をもたらす反応、例えば、アルジミン基の加水分解又はイソシアネート基の架橋をもたらす反応を顕著に開始してはならないことを意味する。特に、このことは、これらの成分の全てが、いなかる水も含まない必要があること、あるいは多くても微量の水しか含まない必要があることを意味する。特定の成分を、組成物中に添加することによってそれらを組み込む前に、化学的又は物理的乾燥を受けさせることは理にかなったことでありうる。フィラーの乾燥のために特に適しているものは、ポリイソシアネート類、例えば、TDI、MDI、IPDI、HDI、及びそれらのオリゴマー形態である。フィラーは、湿気硬化性組成物に混合する前、あるいはその中(in situ)でそれらを用いて乾燥することができる。
【0091】
この一成分形湿気硬化性組成物はイソシアネート基を含む。それは、組成物中に存在するイソシアネート基含有成分の合計量を基準にして、3.5質量%以下、特に0.2〜3.5質量%のイソシアネート基含有量(NCO含有量)を有する。したがって、ポリウレタンポリマーPに加えて、組成物中に存在するさらなるイソシアネート基含有化合物(例えば、モノマー又はオリゴマーのジイソシアネート又はポリイソシアネート)がある場合、全NCO含有量は、ポリウレタンポリマーPとこれらのさらなるイソシアネート基含有化合物との合計質量を基準にして、多くても3.5質量%の量であるべきである。イソシアネート基含有成分の、3.5質量%以下、特に0.2質量%〜3.5質量%の範囲の低いNCO含有量によって、硬化した状態において本組成物は柔軟性を有する。本組成物がポリウレタンポリマーPに加えて、ポリウレタンポリマーPと合わせたNCO含有量が3.5質量%より高くなる状態にするのに充分なモノマー性又はオリゴマー性ジイソシアネート又はポリイソシアネートを含む場合には、硬化した状態における組成物は尿素基の割合が高くなりすぎる。硬化した組成物中の高すぎる割合の尿素基は、100%伸びまでの範囲での伸び応力を、柔軟なシーラント(弾性シーラント)として用いるために適切な範囲よりも高く上昇させる。
【0092】
本組成物は、本組成物中に存在するイソシアネート基含有成分の合計量を基準にして、0.5〜3.0質量%のNCO基を含むことが好ましい。
【0093】
説明した一成分形湿気硬化性組成物は、水分の不存在下で調製し、貯蔵する。それは貯蔵安定性があり、すなわち、水分の不存在下で、適切な容器又は設備(例えば、ドラム、パウチ、又はカートリッジ)中に数ヶ月から1年又はそれより長い期間、その使用に関連のあるような程度には、その適用特性又は硬化後のその特性の変化なしに貯蔵することができる。典型的には、貯蔵安定性は、粘度又は押出力の測定によって判断される。
【0094】
ポリアルジミンALDのアルジミノ基の特性は、水分との接触により加水分解性である。組成物中に存在するイソシアネート基は式(V)の遊離したポリアミンと形式上反応し、式(VI)又は(VII)の対応するアルデヒドの遊離を伴う。アルジミノ基に比べて過剰なイソシアネート基は存在する水と反応する。最終的には、これらの反応の結果として、組成物は硬化する。この過程は架橋ともいわれる。イソシアネート基と加水分解性ポリアルジミンALDとの反応は、ポリアミンを介して起こる必要は必ずしもない。ポリアミンを与えるためのポリアルジミンALDの加水分解の中間体との反応も可能であることが理解されよう。例えば、加水分解しつつあるポリアルジミンALDが、ヘミアミナールの形態で、イソシアネート基と直接反応することも考えられる。
【0095】
硬化反応に必要な水は、一つの場合には空気から来ることができ(大気湿分)、あるいは本組成物を、例えば塗布により(例えば平滑剤を用いて)、あるいは噴霧することにより、水を含む成分と接触させることができ、あるいは水を含む成分(例えば含水ペーストの形態で、これは例えばスタティックミキサーによって混合される)を適用時に組成物に添加することもできる。
【0096】
説明したポリウレタン組成物は、水分と接触して硬化する。スキン形成時間及び硬化速度は、適切であれば、触媒Kの混合によって調節できる。
【0097】
硬化した状態では、本組成物は柔軟性を有する。言い換えれば、一方で、それは100%伸度で低い応力、典型的には1MPa未満の応力をもち、他方では非常に大きな伸度、典型的には500%より大きな破断伸度と、典型的には70%より大きな良好な復元力を有する。しかし、顕著なことは、室温と低温、例えば−20℃との両方で、伸び応力がほとんど一貫して低いという事実である。室温と−20℃の間の100%伸びでの応力は、1.5未満の範囲の係数、すなわち(σ100%(−20℃)/σ100%(RT)<1.5)でしか変わらないことが好ましい。ポリウレタン組成物にとっては、このことは驚くべき低い数値である。イソシアネート基を含み且つ対応するポリアミンのアミン当量質量が180g/eqであるポリアルジミンを含む従来技術のポリウレタン組成物は、典型的には、2又は3の対応する係数を有する。
【0098】
説明したポリウレタン組成物についての低温でのこの一貫した低い伸び応力は、建築構造物の外装部分の可動接合部のための弾性シーラントの分野での一歩前進を意味する。いわゆる可動接合部(可動ジョイント)は、剛性構造物、例えば、コンクリート、石、プラスチック、及び金属などの、互いに対する動きを可能にするために、適当な位置に適当な幅で存在する接合部(ジョイント)である。特に低温では、材料は収縮し、接合部は結果として開く。低温では、したがって、その接合部をシールするシーラントは伸びる。接合部を耐久的にシールするためには、シーラントは100%までの伸びの範囲で高すぎる伸び応力を有するべきではない。建築物のジョイントシーラントへの具体的要求は、規格、例えばISO規格11600中に規定されており、そこでは弾性シーラントについて、室温及び−20℃での100%までの低い伸びの範囲での応力が高すぎてはならないことが規定されている。低温及び室温での実質的に一定の低い伸び応力の結果として、説明した組成物は、ISO11600に従うシーラントを配合することを極めて簡単にする。
【0099】
硬化した状態では、説明した一成分形湿気硬化性組成物は、耐老化性である。言い換えれば、老化後の機械特性は、加速方法で行われた老化後でさえ、その使用に関わる程度には変化しない。特に、本組成物の100%伸び応力は、材料をISO8339方法B(言い換えれば、70℃での乾燥加熱と室温での蒸留水への浸漬との交互のサイクル、あるいは70℃での乾燥加熱と室温での飽和水酸化カルシウム水溶液中への浸漬との間の対応するサイクル)における前処理を行った場合にわずかしか変化しない。
【0100】
適用、特にシーラントとしての適用において、本組成物は、2つの基材S1及びS2の間に適用し、次に硬化を行う。典型的には、シーラントは接合部(ジョイント)中に注入する。
【0101】
基材S1は、基材S2と同じでも、あるいは異なっていてもよい。
【0102】
適した基材S1又はS2は、例えば、無機基材(例えば、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、煉瓦、タイル、石膏、及び天然石、例えば、花崗岩又は大理石);金属又は合金(例えば、アルミニウム、スチール、非鉄金属、亜鉛メッキ金属);有機基材(例えば、木材、プラスチック、例えば、PVC、ポリカーボネート、PMMA、ポリエステル、エポキシ樹脂);コーティングした基材(例えば、粉体塗装した金属又は合金);及びインク及び塗料(を施した基材)、である。
【0103】
基材は、必要な場合、シーラントの適用の前に前処理してもよい。そのような前処理には、特に、物理的及び/又は化学的清浄化工程が含まれ、例は、研磨、サンドブラスト、ブラシがけなど、あるいは洗浄剤又は溶媒での処理、あるいは接着促進剤、接着促進剤溶液、又はプライマーの適用、である。
【0104】
本発明の組成物を用いた基材S1とS2とのシーリングは、シールされた物品(物)を作り出す。この種の物は建造構造物、特に建築又は土木工学における建造構造物、又はその一部、例えば窓又は床などであってよく、あるいはこの種の物品は輸送手段、特に陸上輸送手段又は水用輸送手段、又はそれらの一部であってよい。
【0105】
記載した組成物は、構造粘度特性を有するペースト粘稠性を有することが好ましい。この種のペースト状シーラントは、適切な道具を用いて基材S1とS2との間に適用される。ペースト状シーラントの適切な適用方法は、例えば、市販の通常のカートリッジからの適用であり、カートリッジは好ましくは手で操作される。圧縮空気による市販の通常のカートリッジからの適用、又は搬送ポンプもしくは押出機によってドラム又はペール缶から、適切な場合には適用のためのロボットによる適用も同様に可能である。
【実施例】
【0106】
〔試験方法の説明〕
粘度は、温度調節されたコーン/プレート粘度計、フィジカ(Physica)UM(コーン直径20mm、コーン角度1°、コーンチップ/プレート距離0.05mm、剪断速度10〜1000s−1)で測定した。
【0107】
ポリアミンのアミン当量質量、及び調製したポリアルジミンのアルジミノ基含有量(「アミン含有量」)は、滴定法(氷酢酸中0.1N HClOを用い、クリスタルバイオレットに対して)によって測定した。アルジミノ基含有量は、mmol NH/g単位のアミン含有量として示す。
【0108】
スキンタイム(べたつきがなくなるまでの時間、タックフリータイム)は、23℃且つ50%相対湿度で測定した。
【0109】
ショアA硬度は、DIN53505に準拠して測定した。
【0110】
引張強度及び破断伸びは、標準条件下(23±1℃、50±5%相対湿度)で14日間硬化させた、2mmの厚さをもつフィルムについて、DIN53405に準拠して測定した(引張速度:200mm/分)。
【0111】
100%伸び時の応力は、DIN EN 28339に準拠して測定し、「σ100%(−20℃)」(−20℃で測定した)及び「σ100%(RT)」(室温、23℃で測定した)として特定した。試験体の作製においては、接着表面をシーカ(Sika(登録商標))Primer-3を用いて前処理した。引張試験の前に、試験体は標準条件下で14日間貯蔵した。
【0112】
〔用いた原料〕
アクレイム(Acclaim(登録商標))4200N: バイエル社;低モノオールのポリオキシプロピレンジオール、平均分子量約4000g/mol、OH価 28mgKOH/g、水含有量0.02%
【0113】
ボラノール(Voranol(登録商標))CP4755: Dow Chemical;エチレンオキシド末端封止したポリオキシプロピレントリオール、平均分子量約4700g/mol、OH価 35mgKOH/g、水含有量0.02%
【0114】
デスモジュール(Desmodur(登録商標))T−80P: バイエル社;2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(80:20比)、NCO当量質量87g/eq
【0115】
ジェフキャット(Jeffcat(登録商標))TD−33A: Huntsman社;ジプロピレングリコール中の33%の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
【0116】
ジェファーミン(Jeffamin(登録商標))D−230: Huntsman社;α,ω−ポリオキシプロピレンジアミン、アミン当量質量119g/eq
【0117】
ジェファーミン(Jeffamin(登録商標))D−400: Huntsman社;α,ω−ポリオキシプロピレンジアミン、アミン当量質量221g/eq
【0118】
ジェファーミン(Jeffamin(登録商標))D−2000: Huntsman社;α,ω−ポリオキシプロピレンジアミン、アミン当量質量980g/eq
【0119】
ジェファーミン(Jeffamin(登録商標))T−5000: Huntsman社;ポリオキシプロピレントリアミン、アミン当量質量1870g/eq
【0120】
ジェニオシル(Geniosil(登録商標))GF80: Wacker社;(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン
【0121】
a)ポリウレタンポリマーの調製
〔ポリマーP1〕
水分の不存在下で、1000gのアクレイム(Acclaim(登録商標))4200Nポリオール、500gのボラノール(Voranol(登録商標)CP4755、124.3gのデスモジュール(Desmodur(登録商標)T−80P)、及び1.5gのジェフキャット(Jeffcat(登録商標))TD−33Aを、混合物のイソシアネート含有量が1.5%の一定値になるまで80℃で撹拌した。得られたポリマーを室温に冷却し、湿気の不存在下で貯蔵した。20℃で20Pa.sの粘度を有していた。
【0122】
〔ポリマーP2〕
水分の不存在下で、1000gのアクレイム(Acclaim(登録商標))4200Nポリオール、2000gのボラノール(Voranol(登録商標)CP4755、385gのイソデシルフタレート、461.4gの4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(125.6g/eqのNCO当量質量を有する)、及び0.35gのジェフキャット(Jeffcat(登録商標))TD−33Aを、混合物のイソシアネート含有量が2.0%の一定値になるまで80℃で撹拌した。得られたポリマーを室温に冷却し、湿気の不存在下で貯蔵した。20℃で57Pa.sの粘度を有していた。
【0123】
b)ポリアルジミンの調製
〔ポリアルジミンALD1(比較)〕
丸底フラスコに窒素雰囲気下で230.34g(2.17mol)のベンズアルデヒドを添加した。激しく撹拌しながら、250.00g(2.10molのNH)のJeffamine(登録商標)D−230を滴下ロートからゆっくり添加した。その後、80℃で揮発成分を減圧下で完全に留去した。これによって439.6gの黄色反応生成物が得られ、室温で液状であり、アミン含有量として測定して4.77mmolのNH/gのアルジミン含有量を有していた。
【0124】
〔ポリアルジミンALD2〕
丸底フラスコに窒素雰囲気下で123.34g(1.16mol)のベンズアルデヒドを添加した。激しく撹拌しながら、250.00g(1.13molのNH)のJeffamine(登録商標)D−400を滴下ロートからゆっくり添加した。その後、80℃で揮発成分を減圧下で完全に留去した。これによって350.9gの黄色反応生成物が得られ、室温で液状であり、アミン含有量として測定して3.20mmolのNH/gのアルジミン含有量を有していた。
【0125】
〔ポリアルジミンALD3〕
丸底フラスコに窒素雰囲気下で27.87g(0.263mol)のベンズアルデヒドを添加した。激しく撹拌しながら、250.00g(0.255molのNH)のJeffamine(登録商標)D−2000を滴下ロートからゆっくり添加した。その後、80℃で揮発成分を減圧下で完全に留去した。これによって272.3gの黄色反応生成物が得られ、室温で液状であり、アミン含有量として測定して0.93mmolのNH/gのアルジミン含有量を有していた。
【0126】
〔ポリアルジミンALD4〕
丸底フラスコに窒素雰囲気下で76.23g(0.268mol)の2,2−ジメチル−3−ラウロイルオキシプロパナールを添加した。激しく撹拌しながら、250.00g(0.255molのNH)のJeffamine(登録商標)D−2000を滴下ロートからゆっくり添加した。その後、80℃で揮発成分を減圧下で完全に留去した。これによって321.2gの黄色反応生成物が得られ、室温で液状であり、アミン含有量として測定して0.79mmolのNH/gのアルジミン含有量を有していた。
【0127】
〔ポリアルジミンALD5〕
丸底フラスコに窒素雰囲気下で63.91g(0.225mol)の2,2−ジメチル−3−ラウロイルオキシプロパナールを添加した。激しく撹拌しながら、400.00g(0.214molのNH)のJeffamine(登録商標)T−5000を滴下ロートからゆっくり添加した。その後、80℃で揮発成分を減圧下で完全に留去した。これによって459.43gの黄色反応生成物が得られ、室温で液状であり、アミン含有量として測定して0.46mmolのNH/gのアルジミン含有量を有していた。
【0128】
c)尿素増粘剤ペーストの調製
真空混合機に1000gのジイソデシルフタレートと160gの4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを添加し、この最初の仕込み物を穏やかに加熱した。次に激しく撹拌しながら、90gのモノブチルアミンをゆっくり滴下して添加した。形成した白色ペーストをさらに1時間、減圧下で且つ冷却しながら撹拌した。この尿素増粘剤ペーストは、80質量%のジイソデシルフタレート中に20質量%の尿素増粘剤を含んでいる。
【0129】
d)シーラント組成物の調製
真空混合機で、表1に示した例1〜6の原料を、それぞれ均一なペーストに加工し、これを水分の不存在下で貯蔵した。例1〜6の結果は同様に表1に示す。
【0130】
e)例1〜6の結果の議論
例1は比較例である。例1は、Jeffamin(登録商標)D−230から誘導されたポリアルジミンALD1(これは本発明のポリアルジミンではない)を含み、これは119g/eqのアミン当量質量を有する。室温で測定した値は、柔軟性を有する材料に合致するが、室温と−20℃との間での100%伸びにおける応力の増大は1.88の係数を有し、大きすぎる。
【0131】
例2〜6は本発明の例であり、望ましい低温特性を示す。室温と−20℃との間での100%伸びにおける応力の数値は互いに非常に近い。−20℃と室温との間の伸び応力の値の比は、例1の場合よりも顕著に低い。
【0132】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)イソシアネート基を含み、且つ少なくとも4000g/molの平均分子量を有する少なくとも1種のポリウレタンポリマーPと、
b)下記式(I)又は(II):
【化1】

[式中、Xは、脂肪族一級アミノ基を有し、且つ少なくとも180g/eq、好ましくは少なくとも220g/eqの平均アミン当量質量を有するn官能のポリアミンから、n個のアミノ基を除いた後の残基であり;
nは、2又は3であり、
及びYは、それぞれ互いに独立して、1〜12の炭素原子を有する一価の炭化水素基であるか、あるいは5〜8、好ましくは6の炭素原子を有する非置換又は置換された炭素環式環の一部である、4〜20の炭素原子を有する二価の炭化水素基を一緒になって形成しており、かつ、
は、適切な場合には少なくとも1つのヘテロ原子、より特にはエーテル、カルボニル、もしくはエステル基の形態の酸素を有していてもよい一価の炭化水素基であり;
は、5〜8、好ましくは6原子の環サイズを有する置換又は非置換のアリールもしくはヘテロアリール基であるか、あるいは、
【化2】

(式中、Rは水素原子であるか、又はアルコキシ基である。)
であるか、あるいは
少なくとも6つの炭素原子を有する置換又は非置換のアルケニル又はアリールアルケニル基である。]
の少なくとも1種のポリアルジミンALDとを含み、
そのイソシアネート基含有量が、組成物中に存在するイソシアネート基含有成分の合計量を基準にして3.5質量%以下である、一成分形湿気硬化性組成物。
【請求項2】
が下記式(III):
【化3】

(式中、Rは、水素原子又はアルキル又はアリールアルキル基であり、Rはアルキル又はアリールアルキル基である。)
を表すことを特徴とする、請求項1に記載の一成分形湿気硬化性組成物。
【請求項3】
が下記式(IV):
【化4】

(式中、Rは、水素原子又はアルキル又はアリールアルキル基であり、
は、水素又はアルキル又はアリールアルキル又はアリール基であり、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を有していてもよく、特に少なくとも1つのエーテル酸素を有していてもよく、任意選択で少なくとも1つのカルボキシル基を有していてもよく、任意選択で少なくとも1つのエステル基を有していてもよく、あるいは一つ又は複数の不飽和結合を有する直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖である。)
であることを特徴とする、請求項1に記載の一成分形湿気硬化性組成物。
【請求項4】
式(I)又は(II)のXがポリオキシアルキレン基、より特に、ポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基であり、これらの基のそれぞれは、別のオキシアルキレン基部分を含むこともできることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の一成分形湿気硬化性組成物。
【請求項5】
前記ポリウレタンポリマーPが、少なくとも1種のポリイソシアネートと、少なくとも1種のポリオールとの反応によって得られ、NCO/OH比が2.5以下の値、より特には2.2以下の値であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオールが、ポリオキシアルキレンポリオール、特にポリオキシプロピレンジオール又はポリオキシプロピレントリオール、又はエチレンオキシドで末端封止したポリオキシプロピレンポリオールであることを特徴とする、請求項5に記載の一成分形湿気硬化性組成物。
【請求項7】
前記ポリオールが、1000〜30000g/モルの分子量を有し、且つ0.02meq/g未満の不飽和度を有することを特徴とする、請求項5又は6に記載の一成分形湿気硬化性組成物。
【請求項8】
前記ポリウレタンポリマーPは、全ポリウレタン組成物を基準にして、10質量%〜80質量%、好ましくは15質量%〜50質量%で存在することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の一成分形湿気硬化性組成物。
【請求項9】
前記ポリアルジミンALDが、組成物中のイソシアネート基1当量当たり、0.3〜1.0当量、好ましくは0.4〜0.9当量、より好ましくは0.5〜0.8当量で存在することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の一成分形湿気硬化性組成物。
【請求項10】
少なくとも1種のフィラーF、特に炭酸カルシウムをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の一成分形湿気硬化性組成物。
【請求項11】
少なくも1種の増粘剤Vをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の一成分形湿気硬化性組成物。
【請求項12】
前記アルジミン基の加水分解及び/又は前記イソシアネート基の反応を促進する少なくとも1種の触媒Kをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の一成分形湿気硬化性組成物。
【請求項13】
シーラントとしての、請求項1〜12のいずれか一項に記載の一成分形湿気硬化性組成物の使用。
【請求項14】
以下のステップ:
(i)請求項1〜12のいずれか一項に記載の一成分形湿気硬化性組成物を2つの基材S1及びS2の間に適用するステップ、
(ii)前記組成物を水分と接触させるステップ、
を含み、前記基材S1及びS2は同じでも、あるいは互いに異なるものであってよい、シーリング方法。
【請求項15】
前記基材S1及びS2の少なくとも1つが、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、煉瓦、タイル、石膏、天然石(例えば、花崗岩又は大理石);金属又は合金(例えば、アルミニウム、スチール、非鉄金属、亜鉛メッキ金属);木材、プラスチック(例えば、PVC、ポリカーボネート、PMMA、ポリエステル、エポキシ樹脂);粉体塗装、インク、及び塗料(特に自動車の仕上げ面)であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のシーリング方法を用いて製造されたシールされた物品。
【請求項17】
前記物品が、建造構造物、特に建築又は土木工学における建造構造物、又はその一部、あるいは陸上輸送手段又は水用輸送手段、又はそれらの一部であることを特徴とする、請求項16に記載のシールされた物品。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の一成分形湿気硬化性組成物中に存在させることによる式(I)又は(II)のポリアルジミンALDのシーラントにおける使用。
【請求項19】
−20℃における100%伸び応力と23℃における100%伸び応力との比(σ100%(−20℃)/σ100%(RT))が1.5未満の値であることによって、硬化したポリウレタン組成物の低温特性を向上させるための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の一成分形湿気硬化性組成物中に存在させることによる式(I)又は(II)のポリアルジミンALDの使用。

【公表番号】特表2009−530431(P2009−530431A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558807(P2008−558807)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052352
【国際公開番号】WO2007/104761
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】