説明

色予測装置、色予測方法、プログラム、テーブル作成装置、および、印刷システム

【課題】色予測の精度を高めるとともに、色予測の際のデバイスにかかる処理負荷を軽減することができる。
【解決手段】カラーマッチングにおいて印刷機が印刷する再現色を表わす予測反射率を算出する色予測装置において、当該印刷機が印刷媒体に印刷した印刷部分から測定される印刷反射率に基づき印刷光学濃度を算出する光学濃度算出部と、前記印刷光学濃度に基づき前記再現色の印刷光学濃度を算出して、当該再現色の印刷光学濃度に基づき前記再現色を表わす第1予測反射率を算出する光学濃度予測部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機が印刷する再現色のカラーマッチングにおいて、この再現色を予測する色予測装置、色予測方法、プログラム、テーブル作成装置、および、印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、カラーマッチングにおいて面積変調により再現色を調整する場合、与えられた網点面積率で各色が印刷される部分の色を予測する方法として、例えば、ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル( Yule−Nielsen Spectral Neugebauer Model )を利用する方法(例えば、特許文献1参照)や、分光拡張ノイゲバウアモデルを利用する方法(例えば、非特許文献1参照)などの技術が知られている。
ここでいう「分光拡張ノイゲバウアモデル」とは、ノイゲバウア原色と網点面積率を波長の関数となるように分光に拡張したモデルであって、以下、反射率ベース色予測モデルという。このモデルを説明する為に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色の一次色の原色に対して、網点を掛け合わせた際の分光反射率を予測する式をについて説明する。
【0003】
まず、マーレー・デービス(Murray−Davies)式を逆に解く事によって得られる式(1)に従って、原色の網点面積率に対する実効網点面積率が算出される。
【0004】
【数1】

【0005】
なお、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、用紙の分光反射率R(λ)は、実測値である。
上記の式(1)により、与えられた原色の網点面積率の設定に対し、各原色の分光実効網点面積率が得られる。これらの実効網点面積率は、光学ドットゲインや機械ドットゲインが含まれたものであり、ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルにおいて最適なn値を求めることに相当する。
なお、ここでいう「機械的ドットゲイン」とは、刷版や印刷機による印刷で網点が潰されて太ることで発生する実効網点面積率の誤差であり、印刷特性等に応じて印刷機ごとに異なるものである。また、ここでいう「光学的ドットゲイン」とは、印刷媒体表面に浸透した色材(例えば、インクやトナー)が乱反射して起こすことによって発生する実効網点面積率の誤差であり、印刷媒体の特性に応じて異なるものである。
【0006】
次にノイゲバウア原色の分光網点面積率を次式(2)より算出する。
【0007】
【数2】

【0008】
上記式(2)により算出されたノイゲバウア原色の分光網点面積率を用いて、次の式(3)より予測分光反射率を求める。
【0009】
【数3】

【0010】
この予測分光反射率から観察光源を定めて、三刺激値XYZやCIELab値等を算出することで、再現色の予測が可能である。
このように、上述の分光拡張ノイゲバウアモデルにおいて、光学ドットゲインや機械ドットゲインが含まれた実効網点面積率を用いて分光反射率を予測することにより、各色材単色の階調においては、内部散乱(印刷媒体内部での光の散乱)などの光の振る舞いを考慮した補正を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2007−516663号公報
【特許文献2】特表2007−96793号公報
【特許文献3】特表2006−295709号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】日本印刷学会誌 第42巻第5号(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、複数の色材が重なり合う部分について、この色材同士が互いに影響し合うことにより、各色材の単層部分における内部散乱とは異なる現象が生じる。
このため、内部散乱のない、或いは内部散乱の少ない印刷媒体においては、上述の方法を用いても色予測の精度をある程度確保できるものの、印刷機の印刷性能や用紙によっては内部散乱が大きくなることもある。この場合、色予測の精度が低減するという問題があった。
また、複数の色材が重なり合う部分毎に、色材同士が互いに影響し合う内部散乱を考慮した分光反射率を予測すると、その計算式が複雑化するため、計算を行うデバイスにかかる処理負荷が増大し、処理速度が低下する等の問題もある。
【0014】
本発明は、このような事情を考慮し、上記の問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、色予測の精度を高めるとともに、色予測の際のデバイスにかかる処理負荷を軽減することができる色予測装置、色予測方法、プログラム、テーブル作成装置、および、印刷システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記問題を解決するために、本発明に係る色予測装置は、カラーマッチングにおいて印刷機が印刷する再現色を表わす予測反射率を算出する色予測装置であって、当該印刷機が印刷媒体に印刷した印刷部分から測定される印刷反射率に基づき印刷光学濃度を算出する光学濃度算出部と、前記印刷光学濃度に基づき前記再現色の印刷光学濃度を算出して、当該再現色の印刷光学濃度に基づき前記再現色を表わす第1予測反射率を算出する光学濃度予測部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、上記問題を解決するために、本発明に係る色予測装置は、カラーマッチングにおいて印刷機が印刷する再現色を表わす予測反射率を算出する色予測装置であって、当該印刷機が印刷媒体に印刷した印刷部分の印刷反射率をクベルカ・ムンク式により算出し、当該印刷反射率に基づき印刷光学濃度を算出する光学濃度算出部と、前記印刷光学濃度に基づき前記再現色の印刷光学濃度を算出して、当該再現色の印刷光学濃度に基づき前記再現色を表わす第1予測反射率を算出する光学濃度予測部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上述の色予測装置において、前記印刷反射率に基づき前記再現色を表わす第2予測反射率を算出する反射率予測部と、前記第1予測反射率と前記第2予測反射率を混合して、前記再現色を表わす第3予測反射率を得る混合予測部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上述の色予測装置において、前記印刷機が複数の色を重ねて印刷媒体に印刷した混合色から測定される多次色反射率に対して、前記光学濃度予測部が算出する前記混合色を表わす前記第1予測反射率と、前記反射率予測部が算出する前記混合色を表わす前記第2予測反射率とを混合して算出される前記第3予測反射率を近似させる重み係数を算出する重み係数算出部をさらに備え、前記混合予測部が、前記重み係数算出部によって算出された重み係数に応じた混合比で、前記第1の予測反射率と前記第2の予測反射率を混合することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上述の色予測装置において、前記反射率および前記光学濃度が、分光に拡張されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上述の色予測装置が、前記印刷機と接続されており、当該印刷機が備える光学素子によって測定された前記印刷反射率を入力することを特徴とする。
【0021】
さらに、上記問題を解決するために、本発明に係る色予測方法は、カラーマッチングにおいて印刷機が印刷する再現色を表わす予測反射率を算出する色予測方法において、当該印刷機が印刷媒体に印刷した印刷部分から測定される印刷反射率に基づき印刷光学濃度を算出する工程と、前記印刷光学濃度に基づき前記再現色の印刷光学濃度を算出して、当該再現色の印刷光学濃度に基づき前記再現色を表わす第1予測反射率を算出する工程と、を備えることを特徴とする。
【0022】
また、上記問題を解決するために、本発明に係るプログラムは、カラーマッチングにおいて印刷機が印刷する再現色を表わす予測反射率を算出するコンピュータを、当該印刷機が印刷媒体に印刷した印刷部分から測定される印刷反射率に基づき印刷光学濃度を算出する光学濃度算出手段、前記印刷光学濃度に基づき前記再現色の印刷光学濃度を算出して、当該再現色の印刷光学濃度に基づき前記再現色を表わす第1予測反射率を算出する光学濃度予測手段、として機能させるためのプログラムであることを特徴とする。
【0023】
また、上記問題を解決するために、本発明に係るテーブル作成装置は、上述したいずれか一つの色予測装置と、実空間における被写体の反射率として推定される推定反射率を、前記被写体を含む画像に基づき、予め決められた階調値ごとに算出する反射率推定部と、前記色予測装置によって算出される前記第3予測反射率と前記推定反射率との差分が予め決められている収束条件を満たしているか否かを判定し、当該収束条件を満たしている前記推定反射率と前記第3予測反射率を最適値として出力する最適化計算部と、前記最適化計算部から最適値として入力する前記推定反射率の前記階調値と、前記最適化計算部から最適値として入力する前記第3予測反射率の網点面積率とを対応付けて階調値網点面積率テーブルに書き込む対応づけ部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、上述のテーブル作成装置において、前記最適化計算部が、前記収束条件を満たしていないと判定した場合、前記第3予測反射率を算出する際に設定される前記再現色を示す網点面積率を修正することを特徴とする。
【0025】
また、上記問題を解決するために、本発明に係る印刷システムは、上述したいずれか一つのテーブル作成装置と、前記被写体の画像を含む画像データを入力する画像入力装置と、前記階調値網点面積率テーブルを参照して、前記画像データの各画素の階調値と対応する網点面積率を出力する変換装置と、前記変換装置から入力する網点面積率に基づき前記被写体の画像を印刷する再現色出力装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、色予測の精度を高めるとともに、色予測の際のデバイスにかかる処理負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る色予測装置の一例を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る色予測装置における分光光学濃度算出分部について説明する図である。
【図3】第1実施形態に係る色予測装置における色予測方法の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る色予測による効果を説明するための実験データの一例を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る色予測装置の一例を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態に係る色予測装置における重み係数決定方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態に係る色予測装置における色予測方法の一例を示すフローチャートである。
【図8】第3実施形態に係る印刷システムの構成の一例を示す概略図である。
【図9】第3実施形態に係る印刷物分光反射率予測装置における分光光学濃度算出分部について説明する図である。
【図10】第3実施形態に係る印刷物分光反射率予測装置における分光光学濃度算出分部について説明する図である。
【図11】第3実施形態に係る印刷システムにおける階調値・網点面積率変換テーブルの作成方法の一例を示すフローチャートである。
【図12】第3実施形態に係る印刷システムにおける階調値・網点面積率変換テーブルを用いた印刷方法の一例を示すフローチャートである。
【図13】本発明に係る色予測による効果を説明するための実験データの他の例を示す図である。
【図14】本実施形態に係るテーブル作成装置によって作成される階調値・網点面積率変換テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明による一実施形態に係る色予測装置について、図面を参照して説明する。
この色予測装置は、印刷のためのカラーマッチングにおいて、印刷対象である入力画像データに表現されている色を印刷媒体(例えば、用紙)上に再現する再現色を表わす色予測テーブル(例えば、ICCプロファイル)を作成するものである。この色予測装置によって作成される色予測テーブルは、例えば、印刷機やカラーデジタル校正機、あるいはカラーインクジェットプリンタやカラーレーザプリンタ等における印刷のためのカラーマッチングに利用されるものであって、面積変調により再現色を調整するカラーマッチングに用いる印刷に適している。
なお、本実施形態において、色予測装置は、印刷機能を実現する印刷部を備える構成を例に、以下説明するが、本発明はこれに限られず、印刷機に接続される構成、あるいは、印刷機が色予測装置を内蔵する構成であってもよい。
この場合、印刷機は、色予測装置による色予測処理の実行に際して、予め決められているカラーパッチを印刷し、当該カラーパッチから各色の分光反射率を光学素子で測定して、色予測装置に出力する。この色予測装置は、この測定された分光反射率に基づき、以下に説明する色予測処理を行い、色予測テーブルを作成する。
【0029】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る色予測装置100の構成の一例を示す概略図である。
図1に示す通り、色予測装置100は、入力部11と、分光反射率データベース12と、光学濃度算出部13と、分光光学濃度データベース14と、分光光学濃度予測部15と、色予測テーブル作成部16と、出力部17と、印刷部18と、測定部19を備える。
【0030】
入力部11は、例えば、外部のコンピュータ等と接続されており、各原色の任意の網点面積率の設定値を入力する。具体的にいうと、入力部11は、例えば色予測テーブル等を作成するために設定される網点設定値(例えば、複数段階の網点面積率Y%を示す情報)と、カラーパッチを印刷するために設定される網点設定値(例えば、複数段階の網点面積率X%を示す情報)とを入力する。
【0031】
分光反射率データベース12は、原色分光反射率領域121とノイゲバウア原色分光反射率領域122とを含む。
この分光反射率データベース12は、測定されたカラーパッチの各原色の分光反射率を格納する。ここでは、原色のカラーパッチとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色を用いる例について、以下説明する。また、カラーパッチには、少なくとも、複数段階の網点面積率X%(i=C,M,Y)で各原色(C,M,Y)を印刷するパッチ部分と、網点面積率100%のノイゲバウア原色lを印刷するパッチ部分とを含む。
この複数段階の網点面積率X%で印刷されるパッチ部分は、各原色の一次色であって、カラーパッチを印刷するために設定される網点設定値であって、例えば5%間隔で設定される複数段階の網点面積率X%において印刷される。また、ノイゲバウア原色lは、各原色の一次色(l=C,M,Y)、二次色(l=CM,CY,MY)、三次色(l=CMY)の8色と、下地色(l=W)である。
このカラーパッチは、入力部11から入力するカラーパッチを印刷するために設定される網点設定値が印刷部18に入力されることにより、印刷部18によって印刷される。
印刷部18は、例えば、オフセット印刷等の有版印刷を行い、RIP(Raster Image Processor)処理やCTP(Computer To Plate)処理を含めた一連の印刷処理を行う。
【0032】
原色分光反射率領域121は、例えば、原色i(i=C,M,Y)の分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色i(i=C,M,Y)ベタの分光反射率Rt,i(λ)、および用紙の分光反射率R(λ)を格納する。なお、原色i(i=C,M,Y)の分光反射率Rmeasure,i(λ)は、カラーパッチを印刷するために設定される網点設定値に基づき、複数段階の網点面積率X%で原色CMYの一次色(C,M,Y)を印刷部18が印刷したカラーパッチの分光反射率を測定した実測値である。また、原色i(i=C,M,Y)ベタの分光反射率Rt,i(λ)は、網点面積率100%で原色iの一次色(C,M,Y)を印刷部18が印刷したカラーパッチの分光反射率を測定した実測値である。用紙の分光反射率R(λ)は、何も印刷されていない用紙部分の分光反射率を測定した実測値である。この原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、および用紙の分光反射率R(λ)は、印刷部18によってカラーパッチが印刷された用紙から、例えば、測定部19が測定した分光反射率である。
この測定部19は、例えば、光学素子を備え、カラーパッチが印刷された用紙から分光反射率を測定し、測定した分光反射率を分光反射率データベース12に格納する。
【0033】
ノイゲバウア原色分光反射率領域122は、ノイゲバウア原色lのベタの分光反射率Rt,l(λ)を格納する。この分光反射率Rt,l(λ)は、網点面積率100%でノイゲバウア原色l(l=C,M,Y,CM,MY,YC,CMY,W)を印刷部18が印刷したカラーパッチの分光反射率を測定した実測値である。このノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)は、印刷部18によってカラーパッチ印刷された用紙から、例えば、測定部19が測定した分光反射率である。
【0034】
光学濃度算出部13は、図2(a)に示す通り、分光反射率データベース12の原色分光反射率領域121から分光反射率を読み出し、下の式(4)に従って、この分光反射率に基づき分光光学濃度を算出し、分光光学濃度データベース14の原色分光光学濃度領域141に格納する。つまり、光学濃度算出部13は、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)に基づき原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)を算出する。また、光学濃度算出部13は、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)に基づき原色iベタの光学濃度Dt,i(λ)を算出する。さらに、光学濃度算出部13は、用紙の分光反射率R(λ)に基づき用紙の光学濃度D(λ)を算出する。
なお、上述の通り、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)は、カラーパッチが用紙に印刷される際の複数段階の網点面積率X%に応じて、複数段階の網点面積率X%に対応する分光反射率を含む。このため、原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)も、複数段階の網点面積率X%に対応する分光光学濃度を含む。
また、光学濃度算出部13は、図2(b)に示す通り、分光反射率データベース12のノイゲバウア原色分光反射率領域122からノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)を読み出し、下の式(4)に従って、この分光反射率Rt,l(λ)に基づきノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)を算出し、分光光学濃度データベース14のノイゲバウア原色分光光学濃度領域142に格納する。
なお、分光反射率R(λ)は、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、用紙の分光反射率R(λ)、ノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)の総称である。また、分光光学濃度D(λ)は、原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)、原色iベタの光学濃度Dt,i(λ)、用紙の光学濃度D(λ)、ノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)の総称である。
【0035】
【数4】

【0036】
図1に戻って、色予測装置100の構成についての説明を続ける。
分光光学濃度データベース14は、原色分光光学濃度領域141とノイゲバウア原色分光光学濃度領域142を含む。
原色分光光学濃度領域141は、原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)と、原色iベタの光学濃度Dt,i(λ)と、用紙の光学濃度D(λ)を格納する。
ノイゲバウア原色分光光学濃度領域142は、ノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)を格納する。
【0037】
分光光学濃度予測部15は、例えば、分光光学濃度を用いて展開した分光拡張ノイゲバウアモデル(以下、光学濃度ベース色予測モデル)であって、分光実効網点面積率算出部151と、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部152と、分光光学濃度算出部153と、分光反射率算出部154とを含む。
分光実効網点面積率算出部151は、分光光学濃度データベース14の原色分光光学濃度領域141を参照して、下に示す式(5)に従って、色予測テーブルを作成するために原色毎に設定される複数段階の網点面積率Y%における実効網点面積率beff,i(λ){i=C,M,Y}を原色CMYごとに算出する。この分光実効網点面積率算出部151は、複数段階の網点面積率Y%ごとに算出した実効網点面積率beff,i(λ){i=C,M,Y}を、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部152に出力する。
なお、原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)は、上述の通り、複数段階の網点面積率X%に対応する分光光学濃度を含む。よって、光学濃度Dmeasure,i(λ)と実効網点面積率beff,i(λ)における網点面積率X%とY%が一致しない場合、分光実効網点面積率算出部151は、近似曲線や線形補間等を用いて、不一致の部分を補間しつつ、実効網点面積率beff,i(λ)を算出する。
【0038】
【数5】

【0039】
ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部152は、分光実効網点面積率算出部151から入力される複数段階の網点面積率Y%に対応する実効網点面積率beff,i(λ){i=C,M,Y}に基づき、下に示す式(6)に従って、複数段階の網点面積率Y%に対応するノイゲバウア原色の分光網点面積率Fb,l(λ)を算出する。このノイゲバウア原色分光網点面積率算出部152は、算出した複数段階の網点面積率Y%に対応するノイゲバウア原色の分光網点面積率Fb,l(λ)を、分光光学濃度算出部153に出力する。
【0040】
【数6】

【0041】
分光光学濃度算出部153は、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部152から入力される複数段階の網点面積率Y%に対応するノイゲバウア原色の分光網点面積率Fb,l(λ)と、分光光学濃度データベース14のノイゲバウア原色分光光学濃度領域142から読み出したノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)に基づき、下に示す式(7)に従って、予測分光光学濃度D(λ)を算出する。この分光光学濃度算出部153は、算出した予測分光光学濃度D(λ)を分光反射率算出部154に出力する。
【0042】
【数7】

【0043】
分光反射率算出部154は、下に示す式(8)に従って、分光光学濃度算出部153から入力される予測分光光学濃度D(λ)に基づき予測分光反射率R(λ)を算出する。この分光反射率算出部154は、予想分光反射率R(λ)を色予測テーブル作成部16に出力する。
【0044】
【数8】

【0045】
色予測テーブル作成部16は、この予想分光反射率R(λ)に基づき、観測光源を定めて、三刺激値XYZやCIELab値等を算出し、再現色の予測を行う色予測テーブルを作成するとともに、色予測テーブルを逆変換して色分解テーブルを作成する。つまり、この色予測テーブル作成部16は、色予測処理の対象である入力データ(本実施例ではCMY値)の情報と、予測分光反射率R(λ)に基づき予測される再現色を表現する再現色情報とを対応付ける色予測テーブルを作成する。また、この色予測テーブル作成部16は、色予測テーブルから、XYZやCIELab値等の入力値と、これを再現する印刷網点面積率(本実施例ではCMY値)の出力値とを対応付ける色分解テーブルを作成し、色予測テーブルとともに出力部17に出力する。
なお、本実施例においては、この色予測テーブルと色分解テーブルを公知のICCプロファイルフォーマットで作成し、出力する。
【0046】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る色予測装置100による色予測方法の一例について説明する。図3は、本実施形態に係る色予測装置100による色予測方法の一例を示すフローチャートである。
【0047】
はじめに、色予測装置100は、以下の処理を実行しておく。
入力部11は、原色i毎に設定されるカラーパッチを印刷するための複数段階の網点面積率X%を入力して、印刷部18に出力する。この印刷部18が、複数段階の網点面積率X%で原色(C,M,Y)を用紙に印刷とともに、網点面積率100%でノイゲバウア原色(C,M,Y,CM,MY,YC,CMY,W)を用紙に印刷する。これにより、用紙には、色予測のためのカラーパッチが印刷される。
そして、測定部19が、光学素子を用いてカラーパッチが印刷された用紙からの反射光に基づき分光反射率を得る。この測定部19は、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、用紙の分光反射率R(λ)、およびノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)を測定する。そして、この測定部19は、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、および用紙の分光反射率R(λ)を分光反射率データベース12の原色分光反射率領域121に格納する。また、測定部19は、ノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)を、ノイゲバウア原色分光反射率領域122に格納する。
【0048】
そして、光学濃度算出部13は、分光反射率データベース12の原色分光反射率領域121から原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、および用紙の分光反射率R(λ)を読み出し、式(4)に従って、この分光反射率に基づき分光光学濃度を算出し、分光光学濃度データベース14の原色分光光学濃度領域141に、原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)、原色iべタの光学濃度Dt,i(λ)、および用紙の光学濃度D(λ)を格納する。
また、光学濃度算出部13は、分光反射率データベース12のノイゲバウア原色分光反射率領域122からノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)を読み出し、式(4)に従って、この分光反射率Rt,l(λ)に基づきノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)を算出し、分光光学濃度データベース14のノイゲバウア原色分光光学濃度領域142に格納する。
これにより、原色分光光学濃度領域141には、原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)、原色iべタの光学濃度Dt,i(λ)、および用紙の光学濃度D(λ)が格納され、かつ、ノイゲバウア原色分光光学濃度領域142には、ノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)が格納される。
【0049】
そして、入力部11は、図3に示す通り、色予測テーブルを作成するために設定される網点設定値(例えば、複数段階の網点面積率Y%を示す情報)を入力し、分光光学濃度予測部15の分光実効網点面積率算出部151に出力する(ステップST1)。
分光実効網点面積率算出部151は、分光光学濃度データベース14の原色分光光学濃度領域141から原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)、原色iベタの光学濃度Dt,i(λ)、および用紙の光学濃度D(λ)を読み出し、式(5)に従って、原色(C,M,Y)毎に設定された複数段階の網点面積率Y%における実効網点面積率beff,i(λ)を原色CMYごとに算出する(ステップST2)。
この分光実効網点面積率算出部151は、算出した複数段階の網点面積率Y%に対応する実効網点面積率beff,i(λ){i=C,M,Y}を、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部152に出力する。
【0050】
次いで、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部152は、分光実効網点面積率算出部151から入力される実効網点面積率beff,i(λ){i=C,M,Y}に基づき、式(6)に従って、複数段階の網点面積率Y%に対応するノイゲバウア原色の分光網点面積率Fb,l(λ){l=C,M,Y,CM,MY,YC,CMY,W}を算出する(ステップST3)。
このノイゲバウア原色分光網点面積率算出部152は、算出したノイゲバウア原色の分光網点面積率Fb,l(λ){l=C,M,Y,CM,MY,YC,CMY,W}を、分光光学濃度算出部153に出力する。
【0051】
そして、分光光学濃度算出部153は、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部152から入力されるノイゲバウア原色の分光網点面積率Fb,l(λ){l=C,M,Y,CM,MY,YC,CMY,W}と、分光光学濃度データベース14のノイゲバウア原色分光光学濃度領域142から読み出したノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ){l=C,M,Y,CM,MY,YC,CMY,W}に基づき、式(7)に従って、予測分光光学濃度D(λ)を算出する(ステップST4)。
この分光光学濃度算出部153は、算出した予測分光光学濃度D(λ)を分光反射率算出部154に出力する。
【0052】
次いで、分光反射率算出部154は、式(8)に従って、分光光学濃度算出部153から入力される予測分光光学濃度D(λ)に基づき予測分光反射率R(λ)を算出する(ステップST5)。
この分光反射率算出部154は、算出した予想分光反射率R(λ)を色予測テーブル作成部16に出力する。
【0053】
そして、色予測テーブル作成部16は、この予想分光反射率R(λ)に基づき、再現色を表現する三刺激値XYZやCIELab値等を算出し、色予測処理の対象である入力画像データにおける入力情報と、分光反射率R(λ)に基づき予測される再現色を表現する再現色情報とを対応付ける色予測テーブルを作成するとともに、色分解テーブルも作成し、出力部17に出力する。
【0054】
上述の通り、色予測装置100は、測定された分光反射率に基づき分光光学濃度を算出する。この後、この分光光学濃度に基づき、分光光学濃度予測部15が、予測分光光学濃度を算出する。そして、分光光学濃度予測部15が、予測分光光学濃度に基づき分光反射率を算出することで、予測分光反射率を得る。
このように、光学濃度ベース色予測モデルである分光光学濃度予測部15を用いて色予測を行うことで、用紙や印刷装置の特性によっては、色予測の精度を高めることができる。
【0055】
ここで、本実施形態に係る色予測による効果について、図4を参照して具体的に説明する。
図4は、本実施形態の入力部11で設定された網点設定値に基づき、印刷部18によって印刷された色を測定部19で測定して得られた分光反射率と、入力部11で設定された網点設定値における再現を分光光学濃度予測部15によって予測した分光反射率の差(RMSE)を示す図である。なお、図4は、この分光反射率の差RMSEを、印刷による内部散乱の影響が異なる用紙(コート紙1、コート紙2、銀蒸着用紙)ごとに示す。なお、この図4に示す値は、本発明に係る色予測装置100を用いて実験により得られたデータの一例である。
この実測と予測の分光反射率の差RMSEは、分光的な色の違いを示す量である。なお、銀蒸着用紙は、コート紙1やコート紙2に比べて、印刷による内部散乱の影響が非常に小さい。なお、コート紙1とコート紙2は、一般的な印刷機の印刷に利用される用紙である。
【0056】
図4に示す通り、各用紙において得られる実測の分光反射率と、分光光学濃度予測部15によって予測される分光反射率の差(RMSE)は、混合色予測モデルによるものがいずれの用紙においても少なくなっている。なお、分光光学濃度予測部15によって予測される分光反射率は、反射率ベース色予測モデル、光学濃度ベース色予測モデル、および混合色予測モデルをそれぞれ用いて分光光学濃度予測部15によって予測される分光反射率である。なお、反射率ベース色予測モデルや混合色予測モデルを用いる色予測は、後に説明する第2実施形態に係るものであって、詳細については後述する。
【0057】
反射率ベース色予測モデルと光学濃度ベース色予測モデルを比較すると、コート紙1やコート紙2においては、光学濃度ベース色予測モデルを用いた色予測の方が、反射率ベース色予測モデルを用いた色予測に比べて、その分光反射率の差(RMSE)が小さい。
一方、銀蒸着用紙においては、反射率ベース色予測モデルを用いた色予測の方が、光学濃度ベース色予測モデルを用いた色予測に比べて、その分光反射率の差(RMSE)が小さい。
つまり、銀蒸着用紙のように印刷による内部散乱の影響をほとんど受けない用紙の場合、反射率ベース色予測モデルを用いて色予測を行ってもその色予測の精度をある程度よくすることができる。一方、一般的な印刷用紙であるコート紙1やコート紙2では、銀蒸着用紙に比べて印刷による内部散乱の影響を大きく受けるため、色予測の精度が光学濃度ベース色予測モデルに比べて、反射率ベース色予測モデルの方が低くなることがわかる。
【0058】
従って、本実施形態のように、光学濃度ベース色予測モデルを用いて色予測を行うことで、用紙や印刷部19の特性によっては、色予測の精度を高めることができる。特に一般的な印刷用紙のように、印刷による内部散乱の影響を受ける用紙においては、光学濃度ベース色予測モデルを用いた色予測を行った方が、反射率ベース色予測モデルを用いて色予測を行うよりもその精度を高めることができるため、面積変調により再現色を調整する印刷機におけるカラーマッチングを精度良く行うことができる。
また、使用されるカラーパッチも、少なくとも、複数段階の網点面積率X%で各原色C,M,Yの一次色を印刷するパッチ部分と、網点面積率100%でノイゲバウア原色を印刷するパッチ部分を含むものであればよい。また、従来のように多次色で複数段階の網点面積率を表わす複雑な階調のカラーパッチを印刷しなくてもすむ。これにより、各階調に応じたカラーパッチの分光反射率を測定して、測定した分光反射率に基づき予測分光反射率を計算する等の複雑な処理が不要となり、色予測装置100に係る処理負荷を軽減し、処理速度を向上させることができる。
【0059】
[第2実施形態]
次に、図5〜7を参照して、第2実施形態に係る色予測装置200および色予測方法について説明する。
図5は、本実施形態に係る色予測装置200の構成の一例を示す概略図である。
図5に示す通り、色予測装置200は、入力部11と、分光反射率データベース12と、光学濃度算出部13と、分光光学濃度データベース14と、分光光学濃度予測部15と、色予測テーブル作成部16と、出力部17と、印刷部18と、測定部19と、分光反射率予測部21と、多次色分光反射率データベース22と、重み係数算出部23と、混合予測部24を備える。なお、上述の色予測装置100と同様の構成については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0060】
分光反射率予測部21は、例えば、分光拡張ノイゲバウアモデルであって、分光実効網点面積率算出部211と、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部212と、分光反射率算出部213とを含む。なお、分光反射率予測部21は、本明細書中における反射率ベース色予測モデルに相当する。
分光実効網点面積率算出部211は、分光反射率データベース12の原色分光反射率領域121を参照して、式(1)に従って、原色CMY毎に複数段階の網点面積率Y%に対応する実効網点面積率aeff,i(λ){i=C,M,Y}を算出する。この分光実効網点面積率算出部211は、算出した実効網点面積率aeff,i(λ){i=C,M,Y}を、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部212に出力する。これにより、分光実効網点面積率算出部211は、与えられた複数段階の網点面積率Y%の網点設定値に対し、各原色の分光実効網点面積率を得る。
【0061】
ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部212は、分光実効網点面積率算出部211から入力される複数段階の網点面積率Y%に対応する実効網点面積率aeff,i(λ){i=C,M,Y}に基づき、式(2)に従って、ノイゲバウア原色の分光網点面積率Fa,l(λ){l=C,M,Y,CM,MY,YC,CMY,W}を算出する。このノイゲバウア原色分光網点面積率算出部212は、算出したノイゲバウア原色の分光網点面積率Fa,l(λ)を、分光反射率算出部213に出力する。
【0062】
分光反射率算出部213は、ノイゲバウア原色分光反射率領域122から読み出したノイゲバウア原色lのベタの分光反射率Rt,l(λ)と、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部212から入力するノイゲバウア原色の分光網点面積率Fa,l(λ)に基づき、式(3)に従って、予測分光反射率R(λ)を算出する。
【0063】
多次色分光反射率データベース22は、網点面積率データ領域221を含む。
網点面積率データ領域221は、例えば、網点面積率50%の2次元データセットである網点面積率データを記憶する。この網点面積率データとは、分光反射率算出部213によって算出された予測分光反射率R(λ)と、分光反射率算出部154によって算出された予想分光反射率R(λ)を含む。なお、予測分光反射率R(λ)と予測分光反射率R(λ)は、分光光学濃度予測部15および分光反射率予測部21によって上述のようにして得られる予測分光反射率である。
測定分光反射率領域222は、測定部19によって測定された分光反射率の実測値を記憶する。この測定分光反射率領域222は、任意の網点面積率に対応する二次色k(k=YM,MC,CY)の測定分光反射率Rmeasure,k(λ)を格納する。この測定分光反射率Rmeasure,k(λ)は、各網点面積率である二次色(YM,MC,CY)のカラーパッチが印刷された用紙からの反射光を測定することで得られる分光反射率である。この測定分光反射率領域222は、例えば、網点面積率50%における二次色k(k=YM,MC,CY)の測定分光反射率Rmeasure,k(λ)を格納する。
【0064】
重み係数算出部23は、多次色分光反射率データベース22の網点面積率データ領域221から予測分光反射率R(λ)および予測分光反射率R(λ)を読み出し、式(9)に従って、この重み係数wにおける予測分光反射率R(λ)を算出する。
【0065】
【数9】

【0066】
また、重み係数算出部23は、多次色分光反射率データベース22の測定分光反射率領域222から、測定分光反射率Rmeasure,k(λ)を読み出し、式(10)に従って、重み係数wにおける予測分光反射率R(λ)と測定分光反射率Rmeasure,k(λ)との差分RMSEを、二次色kごとに算出する。
【0067】
【数10】

【0068】
ただし、上記の式は分光反射率が380nmから730nmのデータの場合を想定し、nは分光反射率の波長の刻み数とする。
【0069】
さらに、重み係数算出部23は、重み係数wにおける予測分光反射率R(λ)と測定分光反射率Rmeasure,k(λ)との差分RMSEを、全ての二次色k(k=CM,MY,YC)について算出し、このRMSEの積算値ΣRMSEを得る。
この重み係数算出部23は、得た積算値ΣRMSEが収束条件を満たすか否かを判断し、収束条件を満たす場合、この時の重み係数wを最適値と決定する。一方、収束条件を満たさない場合、重み係数算出部23は、積算値ΣRMSEが収束する方向に、例えば逐次近似により重み係数wを修正する。
【0070】
混合予測部24は、重み係数算出部23によって算出される重み係数wを入力する。この混合予測部24は、分光反射率予測部21の分光反射率算出部213によって算出された予測分光反射率R(λ)、分光光学濃度予測部15の分光反射率算出部154によって算出された予測分光反射率R(λ)、および重み係数wに基づき、式(11)に従って、混合予測分光反射率R(λ)を算出する。
【0071】
【数11】

【0072】
次に、図6を参照して、重み係数wの決定方法の一例について説明する。
図6に示す通り、重み係数wの初期値として、例えばw=0.5が設定されると(ステップST11)、この重み係数wの初期値0.5が入力部11を介して重み係数算出部23に入力する。
この重み係数算出部23は、多次色分光反射率データベース22の網点面積率データ領域221から、網点面積率50%に対応する二次色(例えば、YM)の予測分光反射率R(λ)と予測分光反射率R(λ)を読み出し、式(9)に従って、重み係数w=0.5における予測分光反射率RW,ym(λ)を求める(ステップST12)。
【0073】
次いで、重み係数算出部23は、多次色分光反射率データベース22の測定分光反射率領域222から、測定分光反射率Rmeasure,ym(λ)を読み出し、式(10)に従って、重み係数w=0.5における予測分光反射率RW,ym(λ)と測定分光反射率Rmeasure,ym(λ)との差分RMSEymを算出する(ステップST13)。
【0074】
そして、重み係数算出部23は、すべての二次色(CM,MY,YC)に対応する差分RMSEym、差分RMSEmc、差分RMSEcyを算出したか否かを判定する(ステップST14)。ここで、重み係数算出部23は、まだ差分RMSEymしか算出していないため(ステップST14−NO)、ステップST12に戻る。
【0075】
つまり、重み係数算出部23は、多次色分光反射率データベース22の網点面積率データ領域221から、網点面積率50%に対応する二次色(例えば、MC)の予測分光反射率R(λ)と予測分光反射率R(λ)を読み出し、式(9)に従って、重み係数w=0.5における予測分光反射率RW,mc(λ)を算出する(ステップST12)。次いで、重み係数算出部23は、多次色分光反射率データベース22の測定分光反射率領域222から、測定分光反射率Rmeasure,mc(λ)を読み出し、式(10)に従って、重み係数w=0.5における予測分光反射率RW,mc(λ)と測定分光反射率Rmeasure,mc(λ)との差分RMSEmcを算出する(ステップST13)。同様にして、予測分光反射率RW,cy(λ)と測定分光反射率Rmeasure,cy(λ)との差分RMSEcyを算出する。
そして、すべての二次色の組み合わせの差分RMSEym,差分RMSEmcおよび差分RMSEcyに基づき、これらの総和である積算値ΣRMSEを算出する(ステップST15)。
【0076】
次いで、重み係数算出部23は、積算値ΣRMSEが収束条件を満たすか否かを判断し(ステップST16)、収束条件を満たす場合、この時の重み係数w=0.5を最適値と決定する(ステップST16−OK)。
一方、収束条件を満たさない場合(ステップST16−NG)、重み係数算出部23は、積算値ΣRMSEが収束する方向に、例えば逐次近似により重み係数wを修正する(ステップST17)。
そして、重み係数算出部23は、差分RMSEおよび積算値ΣRMSEをリセットして(ステップST18)、修正された重み係数wに基づき、ステップST12〜l6を行う。
このようにして、重み係数算出部23は、重み係数wを決定して、混合予測部24に出力する。
【0077】
次に、図7を参照して、本実施形態に係る色予測装置200による色予測方法の一例について説明する。図7は、本実施形態に係る色予測装置200による色予測方法の一例を示すフローチャートである。なお、上述の色予測装置100による色予測方法と同様な工程については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0078】
図7に示す通り、入力部11が、原色毎に設定されるカラーパッチを印刷するための複数段階の網点面積率X%を印刷部18に出力すると、上述と同様にして測定部19により分光反射率が測定され、測定部19が原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、および用紙の分光反射率R(λ)を分光反射率データベース12の原色分光反射率領域121に格納し、かつ、ノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)をノイゲバウア原色分光反射率領域122に格納する。
また、光学濃度算出部13が、分光反射率データベース12から読み出した分光反射率を光学濃度に変換し、分光光学濃度データベース14の原色分光光学濃度領域141に、原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)、原色iベタの光学濃度Dt,i(λ)、および用紙の光学濃度D(λ)を格納し、かつ、ノイゲバウア原色分光光学濃度領域142に、ノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)を格納する。
【0079】
一方、入力部11は、色予測テーブルを作成するために設定される網点設定値(例えば、複数段階の網点面積率Y%を示す情報)を入力し、分光反射率予測部21の分光実効網点面積率算出部211に出力する。
そして、分光実効網点面積率算出部211は、分光反射率データベース12の原色分光反射率領域121から原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、および用紙の分光反射率R(λ)を読み出し、式(1)に従って、設定された網点面積率Y%における実効網点面積率aeff,i(λ)を原色CMYごとに算出する(ステップST22)。
この分光実効網点面積率算出部211は、算出した複数段階の網点面積率Y%に対応する実効網点面積率aeff,i(λ){i=C,M,Y}を、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部212に出力する。
【0080】
次いで、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部212は、分光実効網点面積率算出部211から入力される実効網点面積率aeff,i(λ){i=C,M,Y}に基づき、式(2)に従って、複数段階の網点面積率Y%に対応するノイゲバウア原色の分光網点面積率Fa,l(λ){l=C,M,Y,CM,MY,YC,CMY,W}を算出する(ステップST23)。
このノイゲバウア原色分光網点面積率算出部212は、算出したノイゲバウア原色の分光網点面積率Fa,l(λ){l=C,M,Y,CM,MY,YC,CMY,W}を、分光反射率算出部213に出力する。
【0081】
次いで、分光反射率算出部213は、ノイゲバウア原色分光反射率領域122から読み出したノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)と、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部212から入力するノイゲバウア原色の分光網点面積率Fa,l(λ)に基づき、式(3)に従って、予測分光反射率R(λ)を算出し、混合予測部24に出力する(ステップST24)。
一方、分光光学濃度予測部15は、上述した通り、予測分光反射率R(λ)を算出し、混合予測部24に出力する(ステップST2〜5)。
これにより、分光反射率予測部21によって算出された予測分光反射率R(λ)と、分光光学濃度予測部15によって算出された予測分光反射率R(λ)が、混合予測部24に入力する。
【0082】
また、重み係数算出部23は、上述した通り重み係数wを算出し、混合予測分部24に出力する。
これにより、混合予測部24は、予測分光反射率R(λ)に対して重み係数(1−w)の重み付けをする(ステップST25)とともに、予測分光反射率R(λ)に対して重み係数wの重み付けをして(ステップST26)、式(11)に従って、混合予測分光反射率R(λ)を算出する(ステップST27)。
【0083】
そして、色予測テーブル作成部16は、この混合予測分光反射率R(λ)に基づき、再現色を表現する三刺激値XYZやCIELab値等を算出し、色予測処理の対象である入力画像データにおける入力情報と、混合予測分光反射率R(λ)に基づき予測される再現色を表現する再現色情報とを対応付ける色予測テーブルを作成するとともに、色予測テーブルを逆変換して色分解テーブルを作成し、出力部17に出力する。
【0084】
上述の通り、色予測装置200は、印刷部19や用紙の特性に合わせて重み係数wの最適値を算出するとともに、分光反射率予測部21によって算出された予測分光反射率R(λ)と、分光光学濃度予測部15によって算出された予測分光反射率R(λ)を重み係数wに応じた割合で混合することにより、予測される分光反射率の最適化を図ることができる。つまり、分光反射率に比べて分光光学濃度に基づく分光光学濃度予測部15による色予測の方の精度が高い場合、混合予測分光反射率R(λ)に混合される予測分光反射率R(λ)の割合を多くする。一方、分光光学濃度に比べて分光反射率に基づく分光反射率予測部21による色予測の方の精度が高い場合、混合予測分光反射率R(λ)に混合される予測分光反射率R(λ)の割合を多くする。
これにより、色予測装置200は、用紙や印刷部19の特性に応じて、重み係数wを調整することにより、再現色を表わす分光反射率として予測される予測分光反射率として、最適な予測分光反射率を算出することができる。
【0085】
[第3実施形態]
次に、図8〜12を参照して、第3実施形態に係る印刷システムの一例について説明する。第3実施形態に係る印刷システムは、例えば、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、スキャナといったデジタル撮像機器で取得したデジタル画像を印刷する印刷システムにおいて、被写体の色を再現するためのカラーマッチングを実現するシステムである。
図8は、本発明の実施形態に係る印刷システムの構成の一例を示す概略図である。
図8に示す通り、本発明の実施形態に係る印刷システムは、LUT(Look Up Table)作成装置1000と、画像入力装置2000と、階調値・網点面積率変換装置3000と、再現色出力装置4000と、を備える。
本発明の実施形態に係る印刷システムは、LUT作成装置1000によって作成されるLUTを参照して、画像入力装置2000が入力する被写体を撮像したデジタル画像データに基づき、例えば再現色出力装置4000が被写体を印刷する。このLUT作成装置1000は、第1〜2実施形態において説明したような色予測装置100、200に相当する印刷物分光反射率予測装置1300を利用することにより、分光反射率に基づいた階調値と網点面積率を対応付けるLUTを作成する。これにより、再現色出力装置4000は、被写体から分光反射率を計測せずとも、被写体と分光反射率が近い色再現を実現する。
【0086】
図8に示す通り、LUT作成装置1000は、入力部1100と、分光反射率推定装置1200と、印刷物分光反射率予測装置1300と、最適化計算部(収束判定部)1400と、階調値・網点面積率対応づけ部1500と、LUTデータベース1600と、を含む。このLUT作成装置1000は、階調値を網点面積率に変換するLUTである階調値・網点面積率変換テーブルを作成する。この階調値・網点面積率変換テーブルは、デジタル画像データの色特性を表わす各画素の階調値を、再現色出力装置4000の印刷特性に応じた網点面積率に変換するための変換テーブルである。
この階調値・網点面積率変換テーブルの一例を図14に示す。図14は、本実施形態に係るLUT作成装置1000によって作成される階調値・網点面積率変換テーブルの一例を示す図である。
図14に示す通り、階調値・網点面積率変換テーブルは、分光反射率推定装置1200にて推定反射率の算出に用いたRGB階調値と、最適化計算部1400によって最適値と決定された混合予測分光反射率の網点面積率Yとを、それぞれ対応付けたテーブルである。
各階調値データKに対して、一意のRGB階調値が予め決められている。例えば、階調値データK=(R=0,G=0,B=0)、階調値データK=(R=0,G=0,B=15)、・・・、階調値データK=(R=255,G=255,B=255)と決められている。この各階調値データKに対するRGB階調値が、“変換元”のデータとして、互いに対応付けられている。
“変換先”のデータとしては、被写体と分光反射率が近い色再現を実現するための階調値データKと網点面積率Yが対応付けられている。
【0087】
入力部1100は、任意に用意したN個の階調値データKを入力する。例えば、R、G、Bの各チャンネルを20分割してできるN=20×20×20=8000個のRGB階調値データKを入力する。なお、階調値データKのうち、任意の階調値を階調値データK(j=1,2,・・・,N)と記す。
【0088】
分光反射率推定装置1200は、例えば、RGB階調値データから分光反射率を推定する。この分光反射率推定装置1200としては、例えば、特許文献2に示すような構成を利用することができる。この特許文献2で示される分光反射率推定方法は、分光反射率が異なる色票を配した標準板を色再現推定対象物と同一の画像入力条件で入力した際の色票の画像データを取得する。
例えば、分光反射率推定装置1200は、各色票に対応するセンサ応答値を画像データから抽出した従属変数と、各色票の分光反射率、分光反射率を特定次元の線形結合で表現する基底関数から作成した独立変数と、を用いて最適化法を施す。この分光反射率推定装置1200は、物体の分光反射率を特定次元の線形結合で表現する基底関数に対する係数を画像入力機器のセンサ応答値に変換するための変換係数を作成する。分光反射率推定装置1200は、前記変換係数と、物体の分光反射率を特定の次元の線形結合で表現するための基底関数とに基づき、センサ応答値に対応する分光反射率の候補を算出し、存在確率係数を最大とする分光反射率候補を最適化法により、推定される分光反射率R´(λ)(以下、推定分光反射率という)を階調値データKごとに決定する。この分光反射率推定装置1200は、決定した推定分光反射率R´(λ)を最適化計算部1400に出力する。
ただし、本発明に係る印刷システムの構築における分光反射率推定装置の構成、および方法は、分光反射率推定を行うことが可能であれば、特許文献2に限定されることを必要としない。
【0089】
印刷物分光反射率予測装置1300は、入力部131と、分光反射率データベース132と、光学濃度算出部133と、分光光学濃度データベース134と、分光反射率予測部135と、分光光学濃度予測部136と、印刷部137と、測定部138と、混合予測部139と、を含む。この印刷物分光反射率予測装置1300は、階調値・網点面積率変換テーブルを作成するために設定される網点面積率Y%に対応する混合予測分光反射率Rj,m(λ)を出力する。
【0090】
ここで、印刷物分光反射率予測装置1300を用いた、印刷物の分光反射率を予測する方法の一例について説明する。
カラーマッチングにおいて面積変調により出力色を調整する場合、与えられた網点面積率で各色が印刷される部分の網点面積率を予測する方法として、例えば、ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル( YULe−NieLsen SpecTRaL NeUGeBaUeR ModeL)を利用する方法や、分光拡張ノイゲバウアモデルを利用する方法(例えば、非特許文献1参照)などの技術が知られている。
【0091】
ここでいう「分光拡張ノイゲバウアモデル」とは、ノイゲバウア原色と網点面積率を波長の関数となるように分光に拡張したモデルである。このモデルを説明するために、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色の一次色の原色に対して、網点を掛け合わせた際の分光反射率を予測する式について説明する。
【0092】
まず、マーレー・デービス(Murray−Davies)式を逆に解く事によって得られる式(12)に従って、原色iの網点面積率Yに対する実効網点面積率aeff,i(λ)が算出される。
【0093】
【数12】

【0094】
なお、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、用紙の分光反射率R(λ)は、実測値である。
上記の式(13)により、与えられた原色iの網点面積率Y%の設定に対し、各原色iの分光実効網点面積率aeff,i(λ){i=C,M,Y}が得られる。これらの実効網点面積率aeff,i(λ)は、光学ドットゲインや機械ドットゲインが含まれたものであり、ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルにおいて最適なn値を求めることに相当する。
なお、ここでいう「機械的ドットゲイン」とは、刷版や印刷機による印刷で網点が潰されて太ることで発生する実効網点面積率の誤差であり、印刷特性等に応じて印刷機ごとに異なるものである。また、ここでいう「光学的ドットゲイン」とは、印刷媒体表面に浸透した色材(例えば、インクやトナー)が乱反射して起こすことによって発生する実効網点面積率の誤差であり、印刷媒体の特性に応じて異なるものである。
【0095】
次に、ノイゲバウア原色lの分光網点面積率Fa,l(λ){l=C,M,Y,CM,MY,YC,CMY,W}を次式(13)より算出する。
【0096】
【数13】

【0097】
上記式(13)により算出されたノイゲバウア原色lの分光網点面積率Fa,l(λ){l=C,M,Y,CM,MY,YC,CMY,W}を用いて、次の式(14)より予測分光反射率R(λ)を求める。
【0098】
【数14】

【0099】
印刷物分光反射率予測装置1300は、印刷物の分光反射率の予測の精度を高めるとともに、印刷物の分光反射率の予測の際のデバイスにかかる処理負荷を軽減することができる分光反射率予測方法を使用している。
【0100】
入力部131は、最適化計算部1400と接続されており、最適化計算部1400から出力される網点面積率を入力する。最適化計算部14から初期情報が送られてくるときは、任意の網点面積率を入力する。この入力部131は、例えば、外部のコンピュータ等と接続されており、各原色iの任意の網点面積率の設定値を入力する。具体的にいうと、入力部11は、例えば階調値・網点面積率変換テーブルを作成するために設定される網点設定値(例えば、複数段階の網点面積率Y%を示す情報)と、カラーパッチを印刷するために設定される網点設定値(例えば、複数段階の網点面積率X%を示す情報)とを入力する。
【0101】
分光反射率データベース132は、原色分光反射率領域1321とノイゲバウア原色分光反射率領域1322とを含む。
この分光反射率データベース132は、測定されたカラーパッチの各原色iの分光反射率を格納する。ここでは、原色iのカラーパッチとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色を用いる例について、以下説明する。また、カラーパッチには、少なくとも、複数段階の網点面積率X%(i=C、M、Y)で各原色i(i=C、M、Y)が印刷されるパッチ部分と、網点面積率100%のノイゲバウア原色lが印刷されるパッチ部分とを含む。
この複数段階の網点面積率X%で印刷されるパッチ部分は、各原色iの一次色であって、カラーパッチを印刷するために設定される網点面積率であって、例えば5%間隔で設定される複数段階の網点面積率X%において印刷される。また、ノイゲバウア原色lは、各原色iの一次色(l=C、M、Y)、二次色(l=CM、CY、MY)、三次色(l=CMY)の8色と、下地色(l=W)である。
このカラーパッチは、入力部131から入力するカラーパッチを印刷するために設定される網点面積率X%が印刷部137に入力されることにより、印刷部137によって印刷媒体に印刷媒体に印刷される。
印刷部137は、例えば、オフセット印刷等の有版印刷を行い、RIP(Raster Image Processor)処理やCTP(Computer To Plate)処理を含めた一連の印刷処理を行う。
【0102】
この原色分光反射率領域1321は、例えば、原色i(i=C、M、Y)の分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色i(i=C、M、Y)ベタの分光反射率Rt,i(λ)、および用紙の分光反射率R(λ)を格納する。なお、原色i(i=C、M、Y)の分光反射率Rmeasure,i(λ)は、カラーパッチを印刷するために設定される網点面積率X%に基づき、複数段階の網点面積率X%で原色i(i=C、M、Y)の一次色(C、M、Y)を印刷部137が印刷媒体に印刷したカラーパッチの分光反射率を測定した実測値である。また、原色i(i=C、M、Y)ベタの分光反射率Rt,i(λ)は、網点面積率100%で原色iの一次色(C、M、Y)を印刷部137が印刷媒体に印刷したカラーパッチの分光反射率を測定した実測値である。印刷媒体である用紙の分光反射率R(λ)は、何も印刷されていない用紙部分の分光反射率を測定した実測値である。この原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、および印刷媒体である用紙の分光反射率R(λ)は、印刷部137によって印刷媒体に印刷されたカラーパッチに基づき、例えば、測定部138が測定した分光反射率である。
この測定部138は、光学素子を備え、カラーパッチの分光反射率を測定し、測定した分光反射率を分光反射率データベース132に格納する。
【0103】
ノイゲバウア原色分光反射率領域1322は、ノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)を格納する。この分光反射率Rt,l(λ)は、網点面積率100%でノイゲバウア原色l(l=C、M、Y、CM、MY、YC、CMY、W)を印刷部137が印刷媒体に印刷したカラーパッチの分光反射率を測定した実測値である。このノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)は、印刷部137によって印刷されたカラーパッチに基づき、例えば、測定部138が測定した分光反射率である。
【0104】
光学濃度算出部133は、図9に示す通り、分光反射率データベース132の原色分光反射率領域1321から分光反射率を読み出し、下の式(15)に従って、この分光反射率R(λ)に基づき分光光学濃度D(λ)を算出し、分光光学濃度データベース134の原色分光光学濃度領域1341に格納する。つまり、光学濃度算出部133は、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)に基づき原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)を算出する。また、光学濃度算出部133は、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)に基づき原色iベタの光学濃度Dt,i(λ)を算出する。さらに、光学濃度算出部133は、用紙の分光反射率R(λ)に基づき用紙の光学濃度D(λ)を算出する。
なお、上述の通り、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)は、カラーパッチが印刷された複数段階の網点面積率X%に応じて、複数段階の網点面積率X%に対応する分光反射率を含む。このため、原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)も、複数段階の網点面積率X%に対応する分光光学濃度を含む。
また、光学濃度算出部133は、図10に示す通り、分光反射率データベース132のノイゲバウア原色分光反射率領域1322からノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)を読み出し、下の式(15)に従って、この分光反射率Rt,l(λ)に基づきノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)を算出し、分光光学濃度データベース134のノイゲバウア原色分光光学濃度領域1342に格納する。
【0105】
なお、分光反射率R(λ)は、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、用紙の分光反射率R(λ)、ノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)の総称である。また、分光光学濃度D(λ)は、原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)、原色iベタの光学濃度Dt,i(λ)、用紙の光学濃度D(λ)、ノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)の総称である。
【0106】
【数15】

【0107】
図8に戻って、印刷物分光反射率予測装置1300の構成についての説明を続ける。
分光光学濃度データベース134は、原色分光光学濃度領域1341とノイゲバウア原色分光光学濃度領域1342を含む。
原色分光光学濃度領域1341は、原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)と、原色iベタの光学濃度Dt,i(λ)と、印刷媒体である用紙の光学濃度D(λ)を格納する。
ノイゲバウア原色分光光学濃度領域1342は、ノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)を格納する。
【0108】
分光反射率予測部135は、例えば、分光拡張ノイゲバウアモデルであって、分光実効網点面積率算出部1351と、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1352と、分光反射率算出部1353とを含む。
分光実効網点面積率算出部1351は、分光反射率データベース132の原色分光反射率領域1321を参照して、式(12)に従って、原色CMY毎に複数段階の網点面積率Y%に対応する実効網点面積率aeff,i(λ){i=C、M、Y}を算出する。この分光実効網点面積率算出部1351は、算出した実効網点面積率aeff,i(λ){i=C、M、Y}を、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1352に出力する。これにより、分光実効網点面積率算出部1351は、与えられた複数段階の網点面積率Y%の網点面積率に対し、各原色iの分光実効網点面積率を得る。
【0109】
ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1352は、分光実効網点面積率算出部1351から入力される複数段階の網点面積率Y%に対応する実効網点面積率aeff,i(λ){i=C、M、Y}に基づき、式(13)に従って、ノイゲバウア原色の分光網点面積率Fa,l(λ){l=C、M、Y、CM、MY、YC、CMY、W}を算出する。このノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1352は、算出したノイゲバウア原色lの分光網点面積率Fa,l(λ)を、分光反射率算出部1353に出力する。
【0110】
分光反射率算出部1353は、ノイゲバウア原色分光反射率領域1322から読み出したノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)と、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1352から入力するノイゲバウア原色lの分光網点面積率Fa,l(λ)に基づき、式(14)に従って、予測分光反射率R(λ)を算出する。この分光反射率算出部1353は、予想分光反射率R(λ)を混合予測部139に出力する。
【0111】
分光光学濃度予測部136は、例えば、分光光学濃度を用いて展開した分光拡張ノイゲバウアモデル(光学濃度ベース網点面積率予測モデル)であって、分光実効網点面積率算出部1361と、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1362と、分光光学濃度算出部1363と、分光反射率算出部1364とを含む。
分光実効網点面積率算出部1361は、分光光学濃度データベース134の原色分光光学濃度領域1341を参照して、下に示す式(16)に従って、原色毎に設定される複数段階の網点面積率Y%における実効網点面積率beff,i(λ){i=C、M、Y}を原色CMYごとに算出する。この分光実効網点面積率算出部1361は、複数段階の網点面積率Y%ごとに算出した実効網点面積率beff,i(λ){i=C、M、Y}を、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1362に出力する。
なお、原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)は、上述の通り、複数段階の網点面積率X%に対応する分光光学濃度を含む。よって、光学濃度Dmeasure,i(λ)と実効網点面積率beff,i(λ)における網点面積率X%とY%が一致しない場合、分光実効網点面積率算出部1361は、近似曲線や線形補間等を用いて、不一致の部分を補間しつつ、実効網点面積率beff,i(λ)を算出する。
【0112】
【数16】

【0113】
ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1362は、分光実効網点面積率算出部1361から入力される複数段階の網点面積率Y%に対応する実効網点面積率beff,i(λ){i=C、M、Y}に基づき、下に示す式(17)に従って、複数段階の網点面積率Y%に対応するノイゲバウア原色の分光網点面積率Fb,l(λ)を算出する。このノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1362は、算出した複数段階の網点面積率Y%に対応するノイゲバウア原色の分光網点面積率Fb,l(λ)を、分光光学濃度算出部1363に出力する。
【0114】
【数17】

【0115】
分光光学濃度算出部1363は、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1362から入力される複数段階の網点面積率Y%に対応するノイゲバウア原色の分光網点面積率Fb,l(λ)と、分光光学濃度データベース134のノイゲバウア原色分光光学濃度領域1342から読み出したノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)に基づき、下に示す式(18)に従って、予測分光光学濃度D(λ)を算出する。この分光光学濃度算出部1363は、算出した予測分光光学濃度D(λ)を分光反射率算出部1364に出力する。
【0116】
【数18】

【0117】
分光反射率算出部1364は、下に示す式(19)に従って、分光光学濃度算出部1363から入力される予測分光光学濃度D(λ)に基づき予測分光反射率Rj,D(λ)を算出する。この分光反射率算出部1364は、予想分光反射率Rj,D(λ)を混合予測部139に出力する。
【0118】
【数19】

【0119】
混合予測部139は、分光反射率予測部135の分光反射率算出部1353によって算出された予測分光反射率R(λ)、分光光学濃度予測部136の分光反射率算出部1364によって算出された予測分光反射率Rj,D(λ)、および重み係数wに基づき、下に示す式(20)に従って、混合予測分光反射率Rj,m(λ)を算出する。この混合予測部139は、混合予測分光反射率Rj,m(λ)を最適化計算部14に出力する。重み係数wは、例えば、経験的にw=0.5とするなどして人が決定し、予め設定値として設定してする。
【0120】
【数20】

【0121】
最適化計算部1400は、分光反射率推定装置1200から入力される推定分光反射率R´(λ)と混合予測部139から入力される混合予測分光反射率Rj,m(λ)との差分を算出し、収束判定を行う。収束条件を満たしていれば、入力部131から取得した、網点面積率Yを階調値・網点面積率対応づけ部1500へと出力する。収束条件を満たしていなければ、網点面積率を逐次近似最適化手法で更新し、入力部131へと出力する。
【0122】
階調値・網点面積率対応づけ部1500は、最適化計算部1400から入力される網点面積率Yと、階調値データKとを対応づけて、LUTデータベース1600における階調値・網点面積率変換テーブルに書き込む。
【0123】
LUTデータベース1600は、階調値データKと網点面積率Yとを対応付ける階調値・網点面積率変換テーブルを保存するデータベースである。
【0124】
画像入力装置2000は、例えば、外部のコンピュータ等と接続されており、被写体の画像を含むデジタル画像データを入力する。この画像入力装置2000は、分光反射率推定対象となる被写体の画像を含む画像データの各画素の階調値を、赤(R),緑(G),青(B)の3チャンネルの光センサが検出した電位信号を処理して取得する。
【0125】
階調値・網点面積率変換装置3000は、階調値・網点面積率変換テーブルを用いて、デジタル画像データの各画素pの階調値kを、再現色(出力色)を表わす網点面積率Yに変換する。
【0126】
再現色出力装置4000は、階調値・網点面積率変換装置3000から入力する網点面積率Yに基づき、例えば、被写体の画像を媒体上に印刷する。
【0127】
次に、図11、12を参照して、本発明の実施形態に係る印刷システムの構成の一例について説明する。図11は、本発明の実施形態に係る印刷システムにおける階調値・網点面積率変換テーブルの作成方法の一例を示すフローチャートである。図12は、本発明の実施形態に係る印刷システムにおける被写体の分光反射率を近似再現する印刷方法の一例を示すフローチャートである。なお、階調値・網点面積率変換テーブルの作成とデジタル画像の印刷は同一のフロー上にはないため、本発明の実施形態に係る印刷システムの処理を説明するフローチャートを図11と図12に分けて説明する。
【0128】
はじめに、図11に示すフローチャートについて説明する。なお、図11に示すフローチャートでは、LUT作成装置1000が階調値・網点面積率変換テーブルをICCプロファイルフォーマットで作成してLUTデータベース1600に保存するまでの処理の一例について説明する。
【0129】
入力部1100は、N個の階調値データKを入力する。例えば、R、G、Bの各チャンネルを20分割してできるN=20×20×20=8000個のRGB階調値を示す階調値データKを入力する(ステップST31)。
【0130】
入力部1100は、ステップST31で取得した階調値データKの中から、階調値データKを選択し、分光反射率推定装置12に出力する。ただし、j=1,2,・・・,Nであり、初期値としてj=1を与える。つまり、入力部1100は、階調値データK、K、K、・・・、Kを、順次選択し、分光反射率推定装置1200に出力する(ステップST32)。
【0131】
分光反射率推定装置1200は、入力部1100から入力する階調値データKに対応する推定分光反射率R´(λ)を算出し、最適化計算部14に出力する(ステップST33)。なお、分光反射率推定装置1200によって算出される推定分光反射率R´(λ)は、被写体が撮影される際の環境の情報によって推定される数値である。つまり、画像入力装置2000によって取得されるデジタル画像データが撮影される環境は、この推定分光反射率R´(λ)の算出に用いた環境と似ていることが好ましい。
【0132】
次に、ステップST34〜44で印刷部137の印刷による予測分光反射率R(λ)および予測分光反射率R(λ)を算出する為に用いる分光反射率データベース132および分光光学濃度データベース134の作成方法の一例について説明する。なお、ここでステップST34〜44において説明する分光反射率データベース132および分光光学濃度データベース134の作成に関しては、図11に示す階調値・網点面積率変換テーブルの作成フローとは独立して行っても構わない。つまり、図11に示す階調値・網点面積率変換テーブルの作成フローは、ステップST34〜44の処理を含まず、後述するステップST45において、別フローにおいて算出された混合予測分光反射率Rj,m(λ)を入力するものであってもよい。
【0133】
まず、入力部131が、原色i毎に設定されるカラーパッチを印刷するための複数段階の網点面積率X%を印刷部137に出力する。この印刷部137がこの複数段階の網点面積率X%で原色(C、M、Y)のパッチ部を印刷するとともに、網点面積率100%でノイゲバウア原色(C、M、Y、CM、MY、YC、CMY、W)のパッチ部を印刷する。これにより、網点面積率予測のためのカラーパッチを得る。
そして、測定部138が、光学素子を用いてカラーパッチの反射光から分光反射率を得る。この測定部138は、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、用紙の分光反射率R(λ)、およびノイゲバウア原色Lベタの分光反射率Rt,l(λ)を測定する。そして、この測定部138は、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、および用紙の分光反射率R(λ)を分光反射率データベース132の原色分光反射率領域1321に格納する。また、測定部138は、ノイゲバウア原色Lベタの分光反射率Rt,l(λ)を、ノイゲバウア原色分光反射率領域1322に格納する。
【0134】
そして、光学濃度算出部133は、分光反射率データベース132の原色分光反射率領域1321から原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、および用紙の分光反射率R(λ)を読み出し、上述の式(15)に従って、これら分光反射率R(λ)に基づき分光光学濃度D(λ)を算出する。そして、光学濃度算出部133は、算出した原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)、原色iべタの光学濃度Dt,i(λ)、および用紙の光学濃度D(λ)を、分光光学濃度データベース134の原色分光光学濃度領域1341に格納する。
また、光学濃度算出部133は、分光反射率データベース132のノイゲバウア原色分光反射率領域1322からノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)を読み出し、式(15)に従って、この分光反射率Rt,l(λ)に基づきノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)を算出する。そして、光学濃度算出部133は、算出したノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)を、分光光学濃度データベース134のノイゲバウア原色分光光学濃度領域1342に格納する。
これにより、原色分光光学濃度領域1341には、原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)、原色iべタの光学濃度Dt,i(λ)、および印刷媒体である用紙の光学濃度D(λ)が格納され、かつ、ノイゲバウア原色分光光学濃度領域1342には、ノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ)が格納される。
【0135】
再び、図11に示すフローチャートに沿って、ステップST34以降の階調値・網点面積率変換テーブルの作成フローの続きについて説明する。
入力部131は、階調値・網点面積率変換テーブルを作成するために設定される網点設定値(例えば、複数段階の網点面積率Y%を示す情報)を入力し、分光反射率予測部135の分光実効網点面積率算出部1351と、分光光学濃度予測部136の分光実効網点面積率算出部1361に出力する(ステップST34)。
ここで、入力部131に与える網点面積率Yの初期値は、例えば任意の初期値データセットから選択し、初期値以外は最適化計算部1400において逐次更新される網点面積率である。
【0136】
そして、分光実効網点面積率算出部1351は、分光反射率データベース132の原色分光反射率領域1321から原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、および用紙の分光反射率R(λ)を読み出し、式(12)に従って、設定された網点面積率Y%における実効網点面積率aeff,i(λ)を原色CMYごとに算出する(ステップST35)。
この分光実効網点面積率算出部1351は、算出した複数段階の網点面積率Y%に対応する実効網点面積率aeff,i(λ){i=C、M、Y}を、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1352に出力する。
【0137】
次いで、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1352は、分光実効網点面積率算出部1351から入力される実効網点面積率aeff,i(λ){i=C、M、Y}に基づき、式(13)に従って、複数段階の網点面積率Y%に対応するノイゲバウア原色lの分光網点面積率Fa,l(λ){l=C、M、Y、CM、MY、YC、CMY、W}を算出する(ステップST36)。
このノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1352は、算出したノイゲバウア原色lの分光網点面積率Fa,l(λ){l=C、M、Y、CM、MY、YC、CMY、W}を、分光反射率算出部1353に出力する。
【0138】
そして、分光反射率算出部1353は、ノイゲバウア原色分光反射率領域1322から読み出したノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)と、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1352から入力するノイゲバウア原色lの分光網点面積率Fa,l(λ)に基づき、式(14)に従って、予測分光反射率R(λ)を算出し、混合予測部139に出力する(ステップST37)。
【0139】
ここで、上述した重み係数算出部23(図示せず)が事前に算出した重み係数wが混合予測分部139のメモリ内に保存されている。
混合予測部139は、自身のメモリ内から重み係数wを示す情報を読み出し、予測分光反射率R(λ)に対して重み係数(1−w)を重み付けして、(1−w)・R(λ)を算出する(ステップST38)。この混合予測部139は、算出した(1−w)・R(λ)を、自身のメモリ内に保存する。
【0140】
分光実効網点面積率算出部1361は、分光光学濃度データベース134の原色分光光学濃度領域1341から原色iの光学濃度Dmeasure,i(λ)、原色iベタの光学濃度Dt,i(λ)、および用紙の光学濃度D(λ)を読み出し、式(16)に従って、原色(C、M、Y)毎に設定された複数段階の網点面積率Y%における実効網点面積率beff,i(λ)を原色CMYごとに算出する(ステップST39)。
この分光実効網点面積率算出部1361は、算出した複数段階の網点面積率Y%に対応する実効網点面積率beff,i(λ){i=C、M、Y}を、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1362に出力する。
【0141】
ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1362は、分光実効網点面積率算出部1361から入力される実効網点面積率beff,i(λ){i=C、M、Y}に基づき、式(17)に従って、複数段階の網点面積率Y%に対応するノイゲバウア原色の分光網点面積率Fb,l(λ){L=C、M、Y、CM、MY、YC、CMY、W}を算出する(ステップST40)。
このノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1362は、算出したノイゲバウア原色の分光網点面積率Fb,l(λ){l=C、M、Y、CM、MY、YC、CMY、W}を、分光光学濃度算出部1363に出力する。
【0142】
分光光学濃度算出部1363は、ノイゲバウア原色分光網点面積率算出部1362から入力されるノイゲバウア原色の分光網点面積率Fb,l(λ){l=C、M、Y、CM、MY、YC、CMY、W}と、分光光学濃度データベース134のノイゲバウア原色分光光学濃度領域1342から読み出したノイゲバウア原色lベタの分光光学濃度Dt,l(λ){L=C、M、Y、CM、MY、YC、CMY、W}に基づき、式(18)に従って、予測分光光学濃度Dj(λ)を算出する(ステップST41)。
この分光光学濃度算出部1363は、算出した予測分光光学濃度Dj(λ)を分光反射率算出部1364に出力する。
【0143】
分光反射率算出部1364は、式(19)に従って、分光光学濃度算出部1363から入力される予測分光光学濃度Dj(λ)に基づき予測分光反射率Rj,D(λ)を算出する。この分光反射率算出部1364は、算出した予想分光反射率Rj,D(λ)を混合予測部139に出力する(ステップST42)。
【0144】
混合予測部139は、自身のメモリ内から重み係数wを示す情報を読み出し、予測分光反射率Rj,D(λ)に対して重み係数wを重み付けして、w・Rj,D(λ)を算出する(ステップST43)。この混合予測部139は、算出したw・Rj,D(λ)を、自身のメモリ内に保存する。
【0145】
混合予測部139は、自身のメモリ内から、ステップST38で重み付けされた予測分光反射率(1−w)・R(λ)と、ステップST43で重み付けされた予測分光反射率w・Rj,D(λ)とを読み出し、式(20)に従って、混合予測分光反射率Rj,m(λ)を算出する(ステップST44)。
この混合予測部139は、算出した予測混合分光反射率Rj,m(λ)を最適化計算部1400に出力する。
【0146】
最適化計算部1400は、ステップST33において分光反射率推定装置12が算出した推定分光反射率R´(λ)についての収束判定を行う。
例えば、収束の判定条件は、E<Ej,0(E=|Rj,m(λ)−R´(λ)|、Ej,0は収束条件)とする。この収束条件Ej,0は、予め決められている。なお、収束条件Ej,0は、階調データKごとに異なる値であってもよく、同じ値であってもよい。
この場合、最適化計算部1400は、混合予測部139から入力する混合予測分光反射率Rj,m(λ)と分光反射率推定装置1200から入力する推定分光反射率R´(λ)との差分の絶対値Eを、階調データKごとに算出する。
なお、本発明はこれに限られず、例えば、色差を用いた判定条件を適用するものであってもよい。色差を用いることで、混合予測分光反射率Rj,m(λ)と推定分光反射率R´(λ)との値が大きく異なる場合でも、収束の判定を行うことが可能となる。
【0147】
最適化計算部1400は、階調値データKに対応する“混合予測分光反射率Rj,m(λ)と推定分光反射率R´(λ)との差分の絶対値E”と“収束条件Ej,0”とを比較して、差分の絶対値Eが収束条件Ej,0未満であれば、収束していると判定する。言い換えると、最適化計算部1400は、収束条件を満たす場合、分光反射率推定装置1200によって算出された階調値データKに対応する推定分光反射率R´(λ)が最適値と決定する。
そして、最適化計算部1400は、収束している判定した場合、この推定分光反射率R´(λ)に対応する階調値データKと、階調値・網点面積率変換テーブルを作成するために設定される網点面積率Yとを、階調値・網点面積率対応づけ部1500に出力する。
【0148】
次いで、階調値・網点面積率対応づけ部1500は、入力する階調値データKと、網点面積率Yとを対応付けて、LUTデータベース1600内の階調値・網点面積率変換テーブルに書き込み、LUTデータベース1600に保存する(ステップST46)。
そして、階調値・網点面積率対応づけ部1500は、すべての階調値データKに対して、網点設定値Yが対応付けられたか否かを判定する(ステップST47)。
階調値データKまで網点設定値Yが対応付けられた場合(j=N)、階調値・網点面積率対応づけ部15は、階調値・網点面積率変換テーブルの作成処理を終了する。j=Nでない場合(例えばj<N)、階調値・網点面積率対応づけ部1500は、ステップST32に戻って、処理を繰り返す。この場合、LUT作成装置1000は、階調値データKをカウントアップする(j←j+1)。
【0149】
一方、ステップST45において、差分の絶対値Eが収束条件Ej,0以上であれば、最適化計算部1400は、収束条件を充たしていないと判定する。
この場合、最適化計算部1400は、各原色iの網点面積率Y%を修正する。最適化計算部1400は、各原色iの網点面積率Y%の修正方法として、例えば、共役勾配法やSimpLex法といった逐次近似最適化手法を用いて、修正後の網点面積率Y%を入力部131に出力する。そして、LUT作成装置1000は、ステップST34に戻って、修正後の網点面積率Y%について、ステップST34〜45の処理を繰り返す。
【0150】
以上、説明した階調値・網点面積率変換テーブルの作成方法によって、被写体の分光反射率を印刷で近似再現する為の階調値・網点面積率変換テーブルが作成される。ここで説明した方法によると、従来技術のように非常に多くのカラーパッチを用いることなく、少数のカラーパッチの印刷および測定にて、或いは公知の印刷の分光反射率予測モデルと比べて高精度に、LUTの作成が可能となる。
また、階調値・網点面積率変換テーブルの作成時と同一の画像入力条件(撮影光源やカメラの感度特性などを指す)で被写体を撮影することで、図12で説明する方法によって、簡便に被写体の分光反射率を印刷で近似再現することが可能となる。
【0151】
次に、図12を参照して、本実施形態に係る階調値・網点面積率変換テーブルを用いた印刷方法の一例について説明する。図12は、本実施形態に係る階調値・網点面積率変換テーブルを用いた印刷方法の一例を示すフローチャートである。
画像入力装置2000は、デジタル撮像機器を用いて、被写体を含むデジタル画像データを取得する(ステップST51)。例えば、画像入力装置2000は、カメラが被写体を撮影することにより生成されるデジタル画像データをカメラから取得する。なお、画像入力装置2000がカメラ等であって、自身で撮影してデジタル画像データを取得するものであってもよい。
この画像入力装置2000は、取得したデジタル画像データの各画素の階調値を示す階調値情報を階調値・網点面積率変換装置3000に出力する。例えば、画像入力装置2000は、画素数p(p=x×y)のデジタル画像データを画像処理して、各画素の階調値を示す階調値データKj,p(p=1,2,・・・x×y)を算出し、この階調値データKj,pを示す階調値情報を階調値・網点面積率変換装置3000に出力する。
【0152】
次いで、階調値・網点面積率変換装置3000は、LUTデータベース1600に保存されている階調値・網点面積率変換テーブルを参照し、取得したデジタル画像データの各画素pの階調値データKj,pを対応する網点面積率Y%の値に変換する。つまり、階調値・網点面積率変換装置3000は、階調値・網点面積率変換テーブルにおいて、階調値データKj,pと対応づけられている網点面積率Y%を画素pの色特性を示す網点面積率Y%として取得する。この階調値・網点面積率変換装置3000は、再現色出力装置4000に、各画素pに対応する網点面積率Y%の値を出力する(ステップST52)。
具体的に説明すると、階調値・網点面積率変換装置3000は、LUTデータベース1600に保存されているテーブルにおいて、デジタル画像データの各画素の階調値データKj,pと同じ階調値データKと対応付けられている網点面積率Y%を取得し、再現色出力装置4000に出力する。
【0153】
再現色出力装置4000は、取得したデジタル画像データの各画素の階調値データKj,pに対応する網点面積率Y%に従い、例えば、被写体の画像を媒体上に印刷する。
【0154】
以上のように、分光に拡張したモデル(反射率ベース色予測モデル、光学濃度ベース色予測モデル)を用いて予め作成されたLUTを用いることにより、被写体を分光的に撮影することなく、通常用いるような撮影機材で撮影された画像から、分光反射率を印刷で近似再現することが可能となる。つまり、被写体から分光反射率を計測するための装置(例えば、分光側色計やこの機能を備えるカメラ等)を用いることなく、一般的なカメラで撮影した被写体を、分光反射率に基づき算出された再現色により印刷することができる。また、この場合、その都度、被写体の分光反射率の推定を行うこともなく、さらに、その都度、網点面積率算出の為の最適化計算を行うことも必要ない。これは先行技術文献にあるような従来技術では成しえず、簡便さにおいて優れる構成である。
【0155】
また、カラーマッチングの一つの方法として、入力の三刺激値と出力の三刺激値を一致させる方法がとられてきた。一般的に、三刺激値を定量化する空間としてCIE(国際照明委員会)が規定したCIE-XYZ表色系やCIE-Lab表色系を用いる。デジタル撮像機器で取得した画像は、デバイスに非依存な色空間であるXYZ色空間やL*a*b*色空間において処理され、出力される。しかし、この方法は、特定の光源下において被写体の色とそれを再現した色(出力色、再現値)の双方の三刺激値XYZやL*a*b*値が一致していたとしても、異なる照明光源下において異なる値となり、被写体の色を再現できない光源依存といった問題を持つ。
【0156】
そこで、上述の光源依存の問題を解決し、不特定の光源下においても被写体の色を再現するカラーマッチングの方法として、分光的に色を再現する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。そして、分光的に色を再現するカラーマッチングの方法を用いることで、被写体と分光反射率が近い再現を可能とする印刷システムを実現できる。
【0157】
また、印刷システムの構築のためには、一般的にLUTを用いる。カラーマネージメントにおけるLUTは、入力された色情報を印刷で再現するための網点面積率に変換する参照テーブル等がある。LUTの利用により、網点面積率を求めるための計算の回数を削減し、計算を行うデバイスにかかる処理負荷を低減し、処理速度の低下を防ぐことが出来る。
このLUTを作成するために、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)といった色の出力信号値(印刷では、網点面積率に相当する。)と、これらを印刷してできるカラーパッチの実測から求まる分光反射率データを主成分分析して取得した主成分係数とを対応付けている。
【0158】
このようにしてLUTを用いる場合、被写体が変わるたびに、被写体の分光反射率データの取得とそれに対する主成分分析を必要とする。そのため、分光反射率を撮影にて取得する撮影負荷と、得られた分光反射率から主成分分析を行う計算負荷が大きい。さらに、 LUTの作成には、印刷色の情報を得る為に多くのカラーパッチの印刷、および測定を必要とすることから、印刷の分光反射率データ取得に関わる測定負荷が大きいといった問題点もある。例えば、C、M、Y、K、R、Gの網点面積率を各々5分割した場合は、5×5×5×5×5×5=15625色のカラーパッチの測定が必要となる。また、精度を高めるためにカラーバッチの数を各々6分割した場合、6×6×6×6×6×6=46656色のカラーパッチの測定が必要となる。
【0159】
本実施形態に係る印刷システムは、このような事情を考慮し、上記の問題を解決すべくなされたものであって、被写体と印刷色の分光反射率データ取得に関わる負荷を削減し、処理速度を高めることのできるLUT(階調値・網点面積率変換テーブル)を作成・使用することで構成される、被写体の分光反射率を近似再現する印刷システムを提供するができる。
上述の通り、本実施形態に係る階調値・網点面積率変換テーブルは、予め区切られた階調値データKと、網点面積率Y%とを対応付けるテーブルである。すなわち、本実施形態に係るLUT作成装置1000は、全ての階調値に対応する網点面積率Y%の最適化処理を行っているわけではない。これにより、階調値・網点面積率変換テーブルの作成に要する処理負荷を削減し、作成処理に要する時間を短縮することができる。しかし、階調値・網点面積率変換装置3000は、この階調値・網点面積率変換テーブルを参照し、テーブルに規定されていない階調値に対応する網点面積率Y%を補間することができる。よって、階調値・網点面積率変換装置3000は、階調値・網点面積率変換テーブルに規定されていない階調値を示す情報が画像入力装置2000から入力した場合であっても、この階調値に対応する網点面積率Y%を、階調値・網点面積率変換テーブルを参照するとともに、例えば、補間法や多項式近似等の演算により、求めることができる。
なお、本発明はこれに限られず、階調値・網点面積率変換テーブルは、全ての階調値と、網点面積率Y%とを対応付けるテーブルであってもよい。
【0160】
ここで、本実施形態に係る色予測において、公知技術による分光反射率予測、および本発明による分光反射率予測により算出される分光反射率について、図13を参照して説明する。なお、図13に示すデータは、実験で得られたデータの一例である。
この実験では、印刷部19あるいは印刷部1376が網点面積率100%で原色CMYを市松模様に印刷したカラーパッチを用いて、このカラーパッチを測定して分光反射率Rmeasure(λ)を得る。また、上述のステップST22〜24あるいはステップST35〜37に説明したように、光学濃度ベース色予測モデルである分光光学濃度予測部15あるいは分光光学濃度予測部136を用いて予測分光反射率R(λ)を算出する。
この光学濃度ベース色予測モデルによって得た予測分光反射率R(λ)と分光反射率Rmeasure(λ)との関係を、図13(a)に示す。
【0161】
また、上述のステップST2〜5あるいはステップST39〜26に説明したように、反射率ベース色予測モデルである分光反射率予測部21あるいは分光反射率予測部135を用いて予測分光反射率R(λ)を算出する。
この反射率ベース色予測モデルによって得た予測分光反射率R(λ)と分光反射率Rmeasure(λ)との関係を、図13(b)に示す。
さらに、上述のステップST1〜5、22〜27あるいはステップST35〜44に説明したように、反射率ベース色予測モデルである分光反射率予測部21あるいは分光反射率予測部135が算出した予測分光反射率R(λ)と、光学濃度ベース色予測モデルである分光光学濃度予測部15あるいは分光光学濃度予測部136が算出した予測分光反射率R(λ)とを、重み係数に応じた割合で混合する混合色予測モデルを用いて混合予測分光反射率R(λ)を算出する。
この混合色予測モデルによって得た混合予測分光反射率R(λ)と分光反射率Rmeasure(λ)との関係を、図13(c)に示す。
【0162】
図13(a)に示す通り、光学濃度ベース色予測モデル(光学濃度モデル)によって得た予測分光反射率R(λ)は、分光反射率Rmeasure(λ)に比べて、その分光反射率が全体的に高くなる。
一方、図13(b)に示す通り、反射率ベース色予測モデル(反射率モデル)によって得た予測分光反射率R(λ)は、分光反射率Rmeasure(λ)に比べて、その分光反射率が全体的に低くなる。
このように、光学濃度ベース色予測モデルによって得た予測分光反射率R(λ)と、反射率ベース色予測モデルによって得た予測分光反射率R(λ)は、分光反射率Rmeasure(λ)に対して相反する値をとる関係であることがわかる。
なお、このような両モデルから得られる予測分光反射率R(λ)と予測分光反射率R(λ)とが相反する関係であることは、他のカラーパッチを用いた実験において得られたデータも示すものであった。
この関係を利用して、混合色予測モデルが、両モデルから得られる予測分光反射率R(λ)と予測分光反射率R(λ)とを重み係数wに応じた割合で混合し、混合予測分光反射率R(λ)を算出する。これにより、図13(c)に示す通り、実測値である分光反射率Rmeasure(λ)に近い混合予測分光反射率R(λ)を算出することができる。
【0163】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、以下のような構成であってもよい。
例えば、上記実施形態においては、説明簡略化のため、3色の一次色原色におけるモデルの説明を行ったが、本発明はこれに限られず、例えばプロセス4色や、特色を含めた5色以上を用いる印刷部19や印刷機のカラーマッチングにおいても利用可能である。
また、重み係数算出部23は、網点面積率50%に対応する二次色の予測分光反射率RD,k(λ)を読み出して重み係数wを算出する例を説明したが、本発明はこれに限られず、二色以上の多次色で印刷されたカラーパッチから得られる予測分光反射率RD,k(λ)であればよい。また、網点面積率も50%以外であってもよい。
さらに、式(4)の演算式に示したように自然対数を用いて、分光反射率に基づき分光光学濃度を算出する例を説明したが、本発明はこれに限られず、例えば、10を底とした常用対数を用いるものであってもよい。
【0164】
また、図7に説明した混合色予測モデルにおいて、光学濃度算出部13による光学濃度の算出は、分光反射率予測部21および分光光学濃度予測部15による予測分光反射率および予測分光光学濃度の算出ができるタイミングであればよく、その順番は問わない。
また、分光反射率予測部21が予測分光反射率を算出する処理と、分光光学濃度予測部15が予測分光反射率を算出する処理は、その順番は任意に決められてよく、並行して同時に行われてもよく、いずれか一方が先に処理を行った後に他方の処理が行われる順番であってもよい。
また、図11に説明した印刷システムにおける階調値・網点面積率変換テーブルの作成方法において、分光光学濃度算出部133による分光光学濃度の算出は、分光反射率予測部135および分光光学濃度予測部136による予測分光反射率および予測分光光学濃度の算出ができるタイミングであればよく、その順番は問わない。
また、分光反射率予測部135が予測分光反射率を算出する処理と、分光光学濃度予測部136が予測分光反射率を算出する処理は、その順番は任意に決められてよく、並行して同時に行われてもよく、いずれか一方が先に処理を行った後に他方の処理が行われる順番であってもよい。
【0165】
さらに、上述において、原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、用紙の分光反射率R(λ)、ノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)等、カラーパッチからの反射光を測定し、この測定された分光反射光を用いると説明した。しかし、本発明はこれに限られず、以下に示すようなクベルカ・ムンクの式を用いて実測値に近似する分光反射率を算出するものであってもよい。この場合、色予測装置100、200、あるいは印刷物分光反射率予測装置1300は、このクベルカ・ムンクの式に従って実測値に近似する分光反射率を算出し、この算出された値である原色iの分光反射率Rmeasure,i(λ)、原色iベタの分光反射率Rt,i(λ)、用紙の分光反射率R(λ)、ノイゲバウア原色lベタの分光反射率Rt,l(λ)等、上述と同様の記憶領域に記憶させる構成部材(図示せず)を備える。
【0166】
【数21】

【0167】
なお、上述した第1〜3実施形態において、色予測装置100、200、LUT作成装置1000、および印刷物分光反射率予測装置1300による機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0168】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0169】
100、200・・・色予測装置、11・・・入力部、12・・・分光反射率データベース、13・・・光学濃度算出部、14・・・分光光学濃度データベース、15・・・分光光学濃度予測部、16・・・色予測テーブル作成部、17・・・出力部、21・・・分光反射率予測部、22・・・多次色分光反射率データベース、23・・・重み係数算出部、24・・・混合予測部、1000・・・LUT作成装置、1100・・・入力部、1200・・・分光反射率推定装置、1300・・・印刷物分光反射率予測装置、1400・・・最適化計算部、1500・・・階調値・網点面積率対応づけ部、1600・・・LUTデータベース、2000・・・画像入力装置、3000・・・階調値・網点面積率変換装置、4000・・・再現色出力装置、131・・・入力部、132・・・分光反射率データベース、133・・・光学濃度算出部、134・・・分光光学濃度データベース、135・・・分光反射率予測部、136・・・分光光学濃度予測部、137・・・印刷部、138・・・測定部、139・・・混合予測部、16・・・色予測テーブル作成部、17・・・出力部、21・・・分光反射率予測部、22・・・多次色分光反射率データベース、23・・・重み係数算出部、24・・・混合予測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーマッチングにおいて印刷機が印刷する再現色を表わす予測反射率を算出する色予測装置において、
当該印刷機が印刷媒体に印刷した印刷部分から測定される印刷反射率に基づき印刷光学濃度を算出する光学濃度算出部と、
前記印刷光学濃度に基づき前記再現色の印刷光学濃度を算出して、当該再現色の印刷光学濃度に基づき前記再現色を表わす第1予測反射率を算出する光学濃度予測部と、
を備えることを特徴とする色予測装置。
【請求項2】
カラーマッチングにおいて印刷機が印刷する再現色を表わす予測反射率を算出する色予測装置において、
当該印刷機が印刷媒体に印刷した印刷部分の印刷反射率をクベルカ・ムンク式により算出し、当該印刷反射率に基づき印刷光学濃度を算出する光学濃度算出部と、
前記印刷光学濃度に基づき前記再現色の印刷光学濃度を算出して、当該再現色の印刷光学濃度に基づき前記再現色を表わす第1予測反射率を算出する光学濃度予測部と、
を備えることを特徴とする色予測装置。
【請求項3】
前記印刷反射率に基づき前記再現色を表わす第2予測反射率を算出する反射率予測部と、
前記第1予測反射率と前記第2予測反射率を混合して、前記再現色を表わす第3予測反射率を得る混合予測部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の色予測装置。
【請求項4】
前記印刷機が複数の色を重ねて印刷媒体に印刷した混合色から測定される多次色反射率に対して、前記光学濃度予測部が算出する前記混合色を表わす前記第1予測反射率と、前記反射率予測部が算出する前記混合色を表わす前記第2予測反射率とを混合して算出される前記第3予測反射率を近似させる重み係数を算出する重み係数算出部をさらに備え、
前記混合予測部は、
前記重み係数算出部によって算出された重み係数に応じた混合比で、前記第1の予測反射率と前記第2の予測反射率を混合することを特徴とする請求項3に記載の色予測装置。
【請求項5】
前記反射率および前記光学濃度は、分光に拡張されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の色予測装置。
【請求項6】
前記色予測装置は、前記印刷機と接続されており、当該印刷機が備える光学素子によって測定された前記印刷反射率を入力することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の色予測装置。
【請求項7】
カラーマッチングにおいて印刷機が印刷する再現色を表わす予測反射率を算出する色予測方法において、
当該印刷機が印刷媒体に印刷した印刷部分から測定される印刷反射率に基づき印刷光学濃度を算出する工程と、
前記印刷光学濃度に基づき前記再現色の印刷光学濃度を算出して、当該再現色の印刷光学濃度に基づき前記再現色を表わす第1予測反射率を算出する工程と、
を備えることを特徴とする色予測方法。
【請求項8】
カラーマッチングにおいて印刷機が印刷する再現色を表わす予測反射率を算出するコンピュータを、
当該印刷機が印刷媒体に印刷した印刷部分から測定される印刷反射率に基づき印刷光学濃度を算出する光学濃度算出手段、
前記印刷光学濃度に基づき前記再現色の印刷光学濃度を算出して、当該再現色の印刷光学濃度に基づき前記再現色を表わす第1予測反射率を算出する光学濃度予測手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
上述の請求項3〜6のいずれか一項に記載の色予測装置と、
実空間における被写体の反射率として推定される推定反射率を、前記被写体を含む画像に基づき、予め決められた階調値ごとに算出する反射率推定部と、
前記色予測装置によって算出される前記第3予測反射率と前記推定反射率との差分が予め決められている収束条件を満たしているか否かを判定し、当該収束条件を満たしている前記推定反射率と前記第3予測反射率を最適値として出力する最適化計算部と、
前記最適化計算部から最適値として入力する前記推定反射率の前記階調値と、前記最適化計算部から最適値として入力する前記第3予測反射率の網点面積率とを対応付けて階調値網点面積率テーブルに書き込む対応づけ部と、
をさらに備えることを特徴とするテーブル作成装置。
【請求項10】
前記最適化計算部は、
前記収束条件を満たしていないと判定した場合、前記第3予測反射率を算出する際に設定される前記再現色を示す網点面積率を修正することを特徴とする請求項9に記載のテーブル作成装置。
【請求項11】
上述の請求項9あるいは10に記載のテーブル作成装置と、
前記被写体の画像を含む画像データを入力する画像入力装置と、
前記階調値網点面積率テーブルを参照して、前記画像データの各画素の階調値と対応する網点面積率を出力する変換装置と、
前記変換装置から入力する網点面積率に基づき前記被写体の画像を印刷する再現色出力装置と、
を備えることを特徴とする印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−259411(P2011−259411A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78934(P2011−78934)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】