説明

色域外郭情報生成装置、及びプログラム

【課題】出力装置(デバイス)非依存な色空間上にランダムに分布する、色域外郭上にある複数の点から、色域外郭を特定する情報を生成すること。
【解決手段】出力装置に依存しない色空間内の複数の点をそれぞれ表す、複数の座標情報を受け入れ、当該受け入れた複数の座標情報で特定される色空間内の点のそれぞれを頂点として四面体分割処理を行う。得られた三角形の分割面のうち、最も外側にあり、凸包を形成する三角形の分割面の集合を、外郭情報として、この外郭情報に含まれる三角形の分割面の一つを対象分割面、対象分割面を含んだ四面体を注目四面体として、注目四面体が予め定めた条件を満足するか否かを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色域外郭情報生成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元測定装置より出力されたランダムで、位相情報を持たない複数の測定点よりなる三次元の点群から、自由曲面などを生成するために使用する三角網を生成するに当たり、三角網を生成するための仮想球を用意し、この仮想球に接する3つの測定点で構成される三角形を仮想球を重複することなく移動させながら順次生成することで、三次元の点群より三次元の三角網を生成する。仮想球を重複することなく連続的に移動させて三角形を順次生成すれば、どの方向から見ても互いに重なり合う点群であっても、精度の高い三角網を生成できる。仮想球に接する3点はほぼ正三角形に近い三角形となるので、三角網を構成する三角形の集合体もほぼ正三角形の集合体となり、工業的に価値の高い三角網を生成できるという技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−14492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出力装置(デバイス)非依存な色空間上にランダムに分布する、色域外郭上にある複数の点から、色域外郭を特定する情報を生成すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、色域外郭情報生成装置であって、出力装置に依存しない色空間内の複数の点をそれぞれ表す、複数の座標情報を受け入れる手段と、前記受け入れた複数の座標情報で特定される色空間内の点のそれぞれを頂点として四面体分割処理を行う手段と、前記四面体分割処理により得られた三角形の分割面のうち、最も外側にあり、凸包を形成する三角形の分割面の集合を、外郭情報として生成する手段と、前記生成した外郭情報に含まれる三角形の分割面の一つを対象分割面として選択し、当該対象分割面を含んだ四面体を注目四面体として、当該注目四面体が予め定めた条件を満足するか否かを判断し、満足しない場合は、当該注目四面体に含まれる三角形の分割面のうち、前記対象分割面以外の、三角形の分割面を選択し、前記外郭情報から前記対象分割面を除くとともに、前記選択した三角形の分割面を前記外郭情報に含めて外郭情報を補正する補正手段と、を含むこととしたものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の色域外郭情報生成装置であって、前記補正手段の判断に用いる前記条件は、(1)前記対象分割面を含む注目四面体のうち、当該注目四面体の重心からの距離が最も近い頂点が、前記対象分割面の頂点であるか否か、(2)前記注目四面体に含まれる三角形の分割面であって、前記対象分割面以外の三角形の分割面において、前記注目四面体の頂点のうち前記対象分割面に含まれない頂点を挟む角が予め定めた角度条件を満足するか否か、(3)前記注目四面体に含まれる三角形の分割面の各面積の比が、予め定めた面積比条件を満足するか否か、(4)前記注目四面体に含まれる三角形の分割面に立つ法線ベクトル間の内積の符号が、予め定めた符号条件を満足するか否か、の少なくともいずれかの条件であることとしたものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の色域外郭情報生成装置であって、前記角度条件は、前記注目四面体に含まれる三角形の分割面であって、前記対象分割面以外の三角形の分割面において、前記注目四面体の頂点のうち前記対象分割面に含まれない頂点を挟む角の余弦の値が予め定めた値域にあるか否かの条件であることとしたものである。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の色域外郭情報生成装置であって、前記補正手段により補正された後の外郭情報に含まれる三角形の分割面に含まれる頂点を、出力装置に依存しない色空間内の外郭点として、当該外郭点を、それぞれ位相を保存しつつ二次元内の対応する点に写像する写像手段と、前記写像手段により得られた二次元内の複数の点の凸包内部を三角形分割し、その結果を分割情報として生成する分割手段と、前記分割手段により得られた分割情報に基づいて、前記外郭点をその境界に含む色空間内の立体形状を特定する情報を、色域外郭情報として生成する手段と、をさらに含むこととしたものである。
【0009】
請求項5記載の発明は、プログラムであって、コンピュータを、出力装置に依存しない色空間内の複数の点をそれぞれ表す、複数の座標情報を受け入れる手段と、前記受け入れた複数の座標情報で特定される色空間内の点のそれぞれを頂点として四面体分割処理を行う手段と、前記四面体分割処理により得られた三角形の分割面のうち、最も外側にあり、凸包を形成する三角形の分割面の集合を、外郭情報として生成する手段と、前記生成した外郭情報に含まれる三角形の分割面の一つを対象分割面として選択し、当該対象分割面を含んだ四面体を注目四面体として、当該注目四面体が予め定めた条件を満足するか否かを判断し、満足しない場合は、当該注目四面体に含まれる三角形の分割面のうち、前記対象分割面以外の、三角形の分割面を選択し、前記外郭情報から前記対象分割面を除くとともに、前記選択した三角形の分割面を前記外郭情報に含めて外郭情報を補正する補正手段と、として機能させることとしたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によると、出力装置に依存しない色空間上にランダムに分布する、色域外郭上にある複数の点から、色域外郭を特定する情報を生成できる。
【0011】
請求項2記載の発明によると、請求項2に示す4つの条件を用い、出力装置に依存しない色空間上にランダムに分布する、色域外郭上にある複数の点から、色域外郭を特定する情報を生成できる。
【0012】
請求項3記載の発明によると、前記注目四面体の頂点のうち前記対象分割面に含まれない頂点を挟む角の余弦の値が予め定めた値域にあるか否かの条件を用い、出力装置に依存しない色空間上にランダムに分布する、色域外郭上にある複数の点から、色域外郭を特定する情報を生成できる。
【0013】
請求項4記載の発明によると、出力装置に依存しない色空間上にランダムに分布する、色域外郭上にある複数の点から、色域外郭を特定する情報を生成できる。
【0014】
請求項5記載の発明によると、出力装置に依存しない色空間上にランダムに分布する、色域外郭上にある複数の点から、色域外郭を特定する情報を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置の例を表す構成ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置の例を表す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置において生成される四面体の例を表す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置において利用される判定の条件の一例を表す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置において利用される判定の条件の別の一例を表す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置において利用される判定の条件のまた別の一例を表す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置において利用される判定の条件のさらに別の一例を表す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置の動作例を表すフローチャート図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置のもう一つの例を表す機能ブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置における位相保存写像の例を表す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置における位相保存写像の例を表すもう一つの説明図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置における別の位相保存写像の例を表す説明図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る色域外郭情報生成装置の処理の一部の例を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る色域外郭情報生成装置1は、デバイス非依存(device independent)な色の情報を、出力対象デバイスの色再現可能範囲に写像する、いわゆるガモット(Gamut)・マッピング等において必要となる色域外郭の情報を得るもので、カラープリンタや、カラーの画像形成装置、スキャナ等を複合的に含んだ複合機、あるいはカラーの印刷機、さらにはそれらを制御するコンピュータ等の情報処理装置に備えられ、利用されるものである。
【0017】
本実施の形態の色域外郭情報生成装置1は、図1に例示するように、制御部11、記憶部12、入力部13、出力部14を含んで構成される。
【0018】
ここで制御部11はCPU(Central Processing Unit)等のプログラム制御デバイスであり、記憶部12に格納されたプログラムに従って動作する。本実施の形態では、この制御部11が、出力装置に依存しない色空間内(対象色空間と呼ぶ)の複数の点をそれぞれ表す、複数の座標情報を受け入れ、この受け入れた複数の座標情報で特定される色空間内の点のそれぞれを頂点として四面体分割処理を行い、これにより得られた三角形の分割面のうち、最も外側にあり、凸包を形成する三角形の分割面の集合を、外郭情報として、当該生成した外郭情報に含まれる三角形の分割面の一つを対象分割面として選択し、当該対象分割面を含んだ四面体を注目四面体として、当該注目四面体が予め定めた条件を満足するか否かを判断し、満足しない場合は、当該注目四面体に含まれる三角形の分割面のうち、対象分割面以外の、三角形の分割面(3つ)を選択し、外郭情報から対象分割面を除くとともに、選択した三角形の分割面を外郭情報に含めて外郭情報を補正する処理を実行する。この制御部11の詳しい処理の内容については後に述べる。
【0019】
記憶部12は、メモリデバイス等であり、制御部11によって実行されるプログラムを保持する。この記憶部12に格納されたプログラムは、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等のコンピュータ可読な記録媒体に格納されて提供され、この記憶部12に複写等されて格納されたものであってもよい。また、この記憶部12は、制御部11のワークメモリとしても動作する。
【0020】
入力部13は、外部の装置から情報の入力を受け入れるインタフェース装置であり、本実施の形態では、予め定めた、出力装置に依存しない色空間内(以下、対象色空間と呼ぶ)の立体で表される出力対象デバイスの表現可能色域に存在する複数の点を含んだ点群について、それらの上記対象色空間内での座標を表す情報の入力を受け入れる。そして入力部13は、当該受け入れた情報を制御部11に出力する。ここで出力装置に依存しない色空間(Device independent color space)とは、例えばXYZやL*a*b*等の色空間である。
【0021】
出力部14は、制御部11から入力される指示に従って、対象色空間内で、出力対象デバイスの色再現可能範囲を表す立体形状を特定する情報である、色域外郭情報を出力する。
【0022】
次に制御部11による、色域外郭情報の生成処理の例について説明する。本実施の形態の制御部11は、機能的には図2に例示するように、点群受入部21と、四面体分割部22と、初期外郭情報生成部23と、判定部24と、出力部25とを含んで構成されている。
【0023】
点群受入部21は、L*a*b*色空間など出力装置に依存しない対象色空間における複数の点の座標情報を受け入れる。以下では、この座標情報を(xi,yi,zi)と書く。ここでのx,y,zは色空間の3つの成分を表し、特にxyz色空間や、XYZ色空間の各成分を表すものに限らない。つまり、x,y,zは、それぞれ、L*,a*,b*であってもよい。
【0024】
四面体分割部22は、点群受入部21にて受け入れた点群に含まれる各点をそれぞれ頂点とした複数の四面体を形成する。この処理は四面体分割として広く知られた処理であるので、ここでの詳しい説明を省略するが、この一例としてはドロネーの三角形分割の方法を三次元に拡張した方法を採用できる。
【0025】
初期外郭情報生成部23は、四面体分割部22で得られた四面体に含まれる三角形の面(分割面)のうち、最も外側にある(凸包を形成する)三角形の面を選択する。具体的には、四面体分割部22で得られた四面体を構成する三角形のうち、1つの四面体にしか属さない三角形を選択すればよい。初期外郭情報生成部23は、当該選択した三角形を特定する情報(選択した三角形に含まれる各頂点の座標情報でよい)の集合を、初期的な外郭情報として生成する。
【0026】
判定部24は、生成された外郭情報に含まれる情報で特定される、三角形の分割面を順次、一つずつ対象分割面として選択する。そして選択した当該対象分割面を含んだ四面体を注目四面体として、当該注目四面体が予め定めた条件(外郭条件と呼ぶ)を満足するか否かを判定する。この判定は、
(1)対象分割面を含む注目四面体のうち、当該注目四面体の重心からの距離が最も近い頂点が、対象分割面に含まれる頂点であるか否か、
(2)注目四面体に含まれる三角形の分割面であって、対象分割面以外の三角形の分割面において、注目四面体の頂点のうち対象分割面に含まれない頂点を挟む角が予め定めた角度条件を満足するか、
(3)注目四面体に含まれる三角形の分割面の各面積の比が、予め定めた面積比条件を満足するか、
(4)注目四面体に含まれる三角形の分割面に立つ法線ベクトル間の外積の符号が、予め定めた符号条件を満足するか、
の少なくともいずれかの条件としておく。これらの条件の各々については後に述べる。なお、複数の条件を組み合わせる場合は、それらの論理和または論理積など、論理演算結果を用いることとする。また、(2)の角度条件は、注目四面体に含まれる三角形の分割面のうち、対象分割面以外の三角形の分割面において、注目四面体の頂点のうち対象分割面に含まれない頂点を挟む角の余弦の値が予め定めた値域にあるか否かの条件である。
【0027】
ここで条件を満足しない場合は、判定部24は、注目四面体に含まれる三角形のうち、選択した対象分割面以外の、三角形の分割面を新たな分割面として選択する。そして、外郭情報から対象分割面を除くとともに、新たな分割面として選択した三角形を特定する情報(選択した三角形に含まれる各頂点の座標情報でよい)を、外郭情報に含めて外郭情報を補正する。これはつまり、図3に例示するように、各頂点をA,B,C,Dとする注目四面体Tの分割面の一つである対象分割面(例えば図3の三角形ABC)を削除し、注目四面体に残る3つの分割面(三角形ABD、ACD、BCD)を新たな分割面として選択することを意味する。
【0028】
判定部24は、この処理を、外郭情報に含まれる情報で特定される、三角形の分割面の各々について処理を行い、処理を終了すると、外郭情報を出力部25に出力する。出力部25は、判定部24が出力する外郭情報を、出力する。
【0029】
ここで、上記外郭条件のそれぞれについて述べる。(1)対象分割面を含む注目四面体のうち、当該注目四面体の重心からの距離が最も近い頂点が、対象分割面に含まれる頂点であるか否か、の条件は、図4に例示するように、頂点A,B,C,Dからなる注目四面体において、分割面である三角形BCDが対象分割面となっているとき、この注目四面体の重心Wから各頂点A,B,C,Dまでの距離が最も短くなる頂点がAである場合、つまり、WA<WB、WC、WDである場合、(1)対象分割面を含む注目四面体のうち、当該注目四面体の重心からの距離が最も近い頂点が、対象分割面に含まれる頂点でない、と判断するものである。
【0030】
これにより、注目四面体が扁平に過ぎるような場合に、対象分割面を外郭情報から除去して、当該注目四面体の内部を色域外であることとするのである。
【0031】
また、(2)注目四面体に含まれる三角形の分割面であって、対象分割面以外の三角形の分割面において、注目四面体の頂点のうち対象分割面に含まれない頂点を挟む角が予め定めた角度条件を満足するか、図5に例示するように、頂点A,B,C,Dからなる注目四面体において、分割面である三角形BCDが対象分割面となっているとき、α=角BAC、β=角CAD、γ=角DABの各角度の余弦、cosα、cosβ、cosγのそれぞれが予め定めた値の範囲にあること、つまり、予め定めた下限値Vminと、上限値Vmaxとの間にあること:
Vmin<cosθ<Vmax (θはα、β、γのいずれか)
または、
Vmin≦cosθ<Vmax (θはα、β、γのいずれか)
または、
Vmin<cosθ≦Vmax (θはα、β、γのいずれか)
または、
Vmin≦cosθ≦Vmax (θはα、β、γのいずれか)
である場合に条件を満足するとする。
【0032】
もしくは、この(2)の条件は、上記cosα、cosβ、cosγのそれぞれの符号(正負)を用い、cosα、cosβ、cosγがそれぞれ正、正、負である場合は条件を満足しない、などとしてもよい。
【0033】
これによって、扁平に過ぎる注目四面体や、頂点の一つが他の頂点から著しく遠い注目四面体の内部を色域外であることとするのである。
【0034】
さらに(3)注目四面体に含まれる三角形の分割面の各面積の比が、予め定めた面積比条件を満足するか、という条件は次のようなものである。すなわち、図6に例示する頂点A,B,C,Dからなる注目四面体についての拡張された余弦定理を利用し、αを三角形ABCを含む平面と三角形ACDとを含む平面とのなす角、βを三角形ACDを含む平面と三角形ABDとを含む平面とのなす角、γを三角形ABCを含む平面と三角形ABDとを含む平面とのなす角とし、三角形ABCの面積をA1、三角形ACDの面積をA2、三角形ABDの面積をA3、三角形BCDの面積をA4としたとき、
【0035】
【数1】

となることを用いて、R14=A1/A4、R24=A2/A4、R34=A3/A4の各面積比を求める(面積A4は、式(1)から求める)。
【0036】
そして、これらの面積比R14,R24,R34が、いずれも予め定めた下限Rminと上限Rmaxとの間にある場合に、条件を満足すると判断し、そうでない場合に条件を満足しないとして対象分割面を特定する情報を、外郭情報から削除する。なお、Rmin≦1≦Rmaxとしてもよい。
【0037】
これにより、底面と側面との面積が大きく異なる場合(注目四面体が過度に扁平な場合)に、当該注目四面体の内部を色域外であることとする。
【0038】
さらに、(4)注目四面体に含まれる三角形の分割面に立つ法線ベクトル間の外積の符号が、予め定めた符号条件を満足するか、の条件は、図7に例示する頂点A,B,C,Dからなる注目四面体について、三角形ABCを含む平面の法線ベクトルV1と、三角形ACDを含む平面の法線ベクトルV2と、三角形ABDを含む平面の法線ベクトルV3と、三角形BCDを含む平面の法線ベクトルV4とを用い、これらのベクトル間の内積、V1・V4、V2・V4、V3・V4、V1・V2、V1・V3、V2・V3を演算し、これら内積の符号がいずれも負であるときに、条件を満足すると判断し、そうでない場合に条件を満足しないとして対象分割面を特定する情報を、外郭情報から削除する。
【0039】
本実施の形態の色域外郭情報生成装置1は、以上の構成を備えてなり、次のように動作する。本実施の形態の色域外郭情報生成装置1は、図8に例示するように、出力装置に依存しない色空間内の複数の点をそれぞれ表す、複数の座標情報を受け入れる(S1)。そして色域外郭情報生成装置1は、この受け入れた複数の座標情報で特定される色空間内の点のそれぞれを頂点として四面体分割処理を行う(S2)。
【0040】
色域外郭情報生成装置1は、処理S2にて得られた三角形の分割面のうち、最も外側にあり、凸包を形成する三角形の分割面を特定する情報の集合を、外郭情報として生成する(S3)。色域外郭情報生成装置1は、次に、この外郭情報に含まれる情報で特定される三角形の分割面の各々について、次の処理を行うようループを開始し(S4:ループの開始)、当該生成した外郭情報に含まれる三角形の分割面のうち、未選択の分割面の一つを対象分割面として選択する(S5)。
【0041】
色域外郭情報生成装置1は、処理S5で選択した対象分割面を含んだ四面体を注目四面体として、当該注目四面体が予め定めた条件を満足するか否かを判断する(S6)。ここで条件を満足すると判断されると(処理S6においてYesであると)、処理S4に戻って、次の分割面を選択して処理を続ける。なお、ここで外郭情報に含まれるすべての分割面について選択されたならば(選択されていない分割面がなければ)、ループを抜けて、外郭情報を出力する(S10)。
【0042】
一方、処理S6において注目四面体が予め定めた条件を満足しないと判断されると(処理S6においてNoであると)、外郭情報から、対象分割面を特定する情報を削除する(S8)。そして注目四面体に含まれる三角形の分割面のうち、対象分割面以外の三角形の分割面を特定する情報を外郭情報に追加し(S9)、処理S4に戻って、次の分割面を選択して処理を続ける。なお、ここで外郭情報に含まれるすべての分割面について選択されたならば(選択されていない分割面がなければ)、ループを抜けて、外郭情報を出力する(処理S10へ移行)。
【0043】
さらに本実施の形態の外郭情報生成装置1は、ここで出力する外郭情報について次のような処理を加えて行ってもよい。すなわち、処理S10にて出力される外郭情報に含まれる三角形の分割面に含まれる頂点を、出力装置に依存しない色空間内の外郭点として、当該外郭点を、それぞれ位相を保存しつつ二次元内の対応する点に写像し、この写像により得られた二次元内の複数の点の凸包内部を三角形分割し、その結果を分割情報として生成する。そして外郭情報生成装置1は、当該分割情報に基づいて、外郭点をその境界に含む色空間内の立体形状を特定する情報を、色域外郭情報として生成することとしてもよい。
【0044】
この処理を行う外郭情報生成装置1の制御部11は、機能的には図9に示すように、点群受入部21と、四面体分割部22と、初期外郭情報生成部23と、判定部24と、位相保存写像部31と、三角形分割情報生成部32と、適用部33と、出力部25とを含んで構成される。また、本実施の形態のある例では、位相保存写像部31は、球体生成部41と、球面写像部42と、平面射影部43とを含む。なお、図2に例示したものと同様の構成となるものについては、同じ符号を付して、これまでの説明を繰り返しての説明を省略する。
【0045】
位相保存写像部31は、判定部24が出力する外郭情報から、当該外郭情報に含まれる情報で特定される三角形の分割面に含まれる各頂点の座標情報を取り出す。この座標情報は、L*a*b*色空間など出力装置に依存しない対象色空間における複数の外郭点の情報を意味する。
【0046】
位相保存写像部31は、対象色空間内に生成した仮想の平面Pに対し、位相を保存しつつ、上記外郭点を射影する。図9に例示した構成を備える場合、この位相保存写像部31の球体生成部41は、対象色空間内に仮想的な球体Sを生成する。この仮想球体Sの中心(基準点座標)は、外郭点が存在する仮想的な面の内側にあるようにする。一例として、中心の座標は、全部でN個の外郭点の座標の平均としてもよい。すなわち、各外郭点の座標が(xi,yi,zi)で表されるとき(i=1,2,…,N)、中心の座標を、(Σxi/N,Σyi/N,Σzi/N)と定めてもよい。また別の例では、仮想的な球体Sの中心を、対象色空間の定義域の中心(L*a*b*の場合は、L*=50.0、a*=0.0、b*=0.0)としてもよい。この仮想的な球体Sの半径についてはどのようにしてもよいが、例えば色空間ごとに予め定めた値としてもよい。例えばL*a*b*の場合は、半径r=0.5としてもよい。
【0047】
球面写像部42は、入力された外郭点(xi,yi,zi)(ただしi=1,2,…,N)を、仮想的な球体Sの表面に写像する。この写像の際、各外郭点の隣接関係(写像前の最近傍の外郭点は、写像後も最近傍となるように)を変えないように、位相を保存した状態で写像を行う。具体的には、仮想球体Sの中心(基準点座標)Oと写像の対象となる外郭点とを結ぶ線分、または当該線分を延長した線と、仮想球体Sの表面との交点の座標(ui,vi,wi)を得て、当該交点座標を、写像の対象となる外郭点の写像先とする(図10(a))。球面写像部42は、もとの外郭点を識別する識別情報(ここでは番号iとする)及び対応する外郭点の座標(xi,yi,zi)と、対応する写像後の座標(ui,vi,wi)とを互いに関連づけて記憶部12に保持する(図10(b))。
【0048】
平面射影部43は、球面写像部42が外郭点を写像して得た球体Sの表面上の各点(ui,vi,wi)を、さらに二次元の平面P上に写像する。この写像においても位相を保存した状態で写像を行う。この写像は、図11(a)に例示するような、立体射影(ステレオグラフ射影)を用いればよい。この立体射影では写像先の平面Pを仮想球体Sに接する位置に配し、仮想球体Sと平面Pとの接点と仮想球体Sの中心とを結ぶ線分を延長し、当該延長した線分と、平面Pに対する側の球体Sの表面との交点を極とする。
【0049】
そして平面射影部43は、この極と、球面写像部42が外郭点を写像して得た球面S上の各点(ui,vi,wi)とを結ぶ各線分を延長し、当該延長した各線分と、平面Pとの各交点(ξi,ηi,ζi)を写像先の座標とする。そしてもとの外郭点の座標(xi,yi,zi)と、写像後の座標(ui,vi,wi)とを関連づけた表において、写像前の座標(ui,vi,wi)を、対応する写像後の座標(ξi,ηi,ζi)で置き換える(図11(b))。これにより、元の外郭点の座標(xi,yi,zi)と平面Pに写像した後の座標(ξi,ηi,ζi)とが互いに関連づけられた表が得られる。この例のようにして、位相保存写像部31は、対象色空間内に生成した仮想の平面P上に、位相を保存しつつ、抽出した外郭点を射影する。
【0050】
三角形分割情報生成部32は、位相保存写像部31が写像して得た平面P上の各点(ξi,ηi,ζi)を頂点として、三角形分割処理を実行する。この三角形分割の処理は、ドロネーの三角形分割として広く知られた処理を適用できるので、ここでの詳しい説明を省略する。このドロネーの三角形分割の処理により、三角形分割時に辺で結ばれるべき平面P上の複数対の点(点のペア)が見出される。具体的には三角形分割情報生成部32は、ドロネーの三角形分割により、辺で結ばれる頂点の識別情報の組を三角形分割情報として生成する。
【0051】
一例としてこの三角形分割情報は、各点の識別情報ごとに、当該識別情報に隣接する他の点の識別情報(辺で結ばれる識別情報のリスト)を関連づけたものである。
【0052】
適用部33は、三角形分割情報生成部32が生成した三角形分割情報を参照し、対象色空間内にある、抽出した各外郭点i=1,2,…,Nについて、次の処理を実行する。具体的に、識別情報iに関連づけられた他の点の識別情報を読み出し、当該読み出した関連づけられている識別情報で特定される外郭点と、識別情報iで特定される外郭点とを辺で結ぶ。これにより対象色空間内で三角形分割された仮想的な面を生成する。この面が、対象色空間内で、出力対象デバイスの色再現可能範囲の外郭(の少なくとも一部)を表すものとなり、この面が閉じていれば、この面で囲まれる対象色空間内の立体形状が、出力対象デバイスの色再現可能範囲を表すことになる。適用部33は、これにより得られた立体形状を特定する情報を、色域外郭情報として出力する。この情報は、適用部33で生成した対象色空間内の立体形状を表現できるものであればどのようなものでも構わない。例えば、外郭点の座標情報と、三角形分割情報とを含むものであってもよい。
【0053】
また位相保存写像部31は、ここまでに説明したものには限られない。例えば球面写像部42は、入力された外郭点(xi,yi,zi)(ただしi=1,2,…,N)を、仮想的な球体Sの表面に写像する際、位相を保存する写像として、次のようなものを用いてもよい。
【0054】
すなわち、例えばL*a*b*色空間であれば、
【0055】
【数2】

として、L*C*平面で、
【0056】
【数3】

と表すことのできる二次曲線の回転体(ただしL*0は、仮想的な球の中心座標のL*成分の値)を用い、写像の対象となる外郭点i=1,2,…,Nのそれぞれについて、回転体上に外郭点が存在するときのα=αi(ただしi=1,2,…,N)を求める。
【0057】
そして外郭点iについて、仮想球体Sの中心(基準点座標)と当該外郭点iとを含む平面Qで、
【0058】
【数4】

で表される二次曲線の回転体を切って得た二次曲線と、仮想球体との交点を求める。この交点は2つ得られるが、外郭点iに近い側の交点を選択して、その座標(ui,vi,wi)を得て、当該交点座標を、写像の対象となる外郭点の写像先とする(図12)。
【0059】
そして球面写像部42は、もとの外郭点を識別する識別情報(ここでは番号iとする)及び対応する外郭点の座標(xi,yi,zi)と、対応する写像後の座標(ui,vi,wi)とを互いに関連づけて記憶部12に保持する。この例のように、外郭点のそれぞれと当該球体の中心とを非線形な関数(ここでは二次関数としたがこれに限らない)で表される曲線で結び、当該曲線と仮想球体Sとの交点を写像先とすることとしてもよい。なお、この場合、仮想球体の半径は、写像した点同士の間隔が計算機イプシロンを下回らない程度に大きく設定する。
【0060】
次に、本実施の形態に係る色域外郭情報生成装置1の動作例について図13を参照しつつ述べる。以下の例では、仮想的な球面に対して写像を行う場合とする。色域外郭情報生成装置1は、図8で例示した処理S10で出力する外郭情報を記憶しておき(S11)、対象色空間内に仮想的な球体Sを生成する(S12)。そして色域外郭情報生成装置1は、入力された外郭点(xi,yi,zi)(ただしi=1,2,…,N)を、位相を保存しながら(つまり連続的な変形を行う写像により)仮想的な球体Sの表面に写像する(S13)。色域外郭情報生成装置1は、外郭点を識別する識別情報(ここでは番号iとする)及び対応する外郭点の座標(xi,yi,zi)と、対応する写像後の座標(ui,vi,wi)とを互いに関連づけて記憶する。
【0061】
次に色域外郭情報生成装置1は、外郭点を写像して得た仮想球体Sの表面上の各点(ui,vi,wi)を、さらに対象色空間内の仮想的な平面P上に写像する(S14)。この写像も位相を保存する(つまり連続的変形を行う写像である)ものとする。色域外郭情報生成装置1は、もとの外郭点の座標(xi,yi,zi)と、写像後の座標(ui,vi,wi)とを関連づけた表において、写像前の座標(ui,vi,wi)を、それぞれ対応する写像後の座標(ξi,ηi,ζi)で置き換える。これにより、元の外郭点の識別情報と、それらの座標(xi,yi,zi)とに対し、それぞれを平面Pに写像した後の座標(ξi,ηi,ζi)を互いに関連づけた表が得られる。
【0062】
色域外郭情報生成装置1は、平面P上の各点(ξi,ηi,ζi)を頂点として、三角形分割処理を実行する(S15)。この三角形分割の処理は、ドロネーの三角形分割として広く知られた処理を適用できる。この三角形分割の処理により、三角形分割時に辺で結ばれるべき平面P上の複数対の点(点のペア)が見出される。
【0063】
さらに色域外郭情報生成装置1は、当該三角形分割情報を参照し、対象色空間内にある各外郭点i=1,2,…,Nについて、当該外郭点と辺で結ばれるべき他の外郭点の情報を得て、これらを辺で結ぶ。これにより対象色空間内で三角形分割された仮想的な面を生成する(S16)。
【0064】
このように本実施の形態の色域外郭情報生成装置1によると、出力装置(デバイス)非依存な色空間上にランダムに分布する、色域外郭上にある複数の点から、色域外郭を特定する情報を生成できる。
【符号の説明】
【0065】
1 色域外郭情報生成装置、11 制御部、12 記憶部、13 入力部、14 出力部、21 点群受入部、22 四面体分割部、23 初期外郭情報生成部、24 判定部、25 出力部、31 位相保存写像部、32 三角形分割情報生成部、33 適用部、41 球体生成部、42 球面写像部、43 平面射影部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力装置に依存しない色空間内の複数の点をそれぞれ表す、複数の座標情報を受け入れる手段と、
前記受け入れた複数の座標情報で特定される色空間内の点のそれぞれを頂点として四面体分割処理を行う手段と、
前記四面体分割処理により得られた三角形の分割面のうち、最も外側にあり、凸包を形成する三角形の分割面の集合を、外郭情報として生成する手段と、
前記生成した外郭情報に含まれる三角形の分割面の一つを対象分割面として選択し、当該対象分割面を含んだ四面体を注目四面体として、当該注目四面体が予め定めた条件を満足するか否かを判断し、満足しない場合は、当該注目四面体に含まれる三角形の分割面のうち、前記対象分割面以外の、三角形の分割面を選択し、前記外郭情報から前記対象分割面を除くとともに、前記選択した三角形の分割面を前記外郭情報に含めて外郭情報を補正する補正手段と、
を含むことを特徴とする色域外郭情報生成装置。
【請求項2】
前記補正手段の判断に用いる前記条件は、
(1)前記対象分割面を含む注目四面体のうち、当該注目四面体の重心からの距離が最も近い頂点が、前記対象分割面の頂点であるか否か、
(2)前記注目四面体に含まれる三角形の分割面であって、前記対象分割面以外の三角形の分割面において、前記注目四面体の頂点のうち前記対象分割面に含まれない頂点を挟む角が予め定めた角度条件を満足するか否か、
(3)前記注目四面体に含まれる三角形の分割面の各面積の比が、予め定めた面積比条件を満足するか否か、
(4)前記注目四面体に含まれる三角形の分割面に立つ法線ベクトル間の内積の符号が、予め定めた符号条件を満足するか否か、
の少なくともいずれかの条件であることを特徴とする請求項1記載の色域外郭情報生成装置。
【請求項3】
前記角度条件は、前記注目四面体に含まれる三角形の分割面であって、前記対象分割面以外の三角形の分割面において、前記注目四面体の頂点のうち前記対象分割面に含まれない頂点を挟む角の余弦の値が予め定めた値域にあるか否かの条件であることを特徴とする請求項2記載の色域外郭情報生成装置。
【請求項4】
前記補正手段により補正された後の外郭情報に含まれる三角形の分割面に含まれる頂点を、出力装置に依存しない色空間内の外郭点として、当該外郭点を、それぞれ位相を保存しつつ二次元内の対応する点に写像する写像手段と、
前記写像手段により得られた二次元内の複数の点の凸包内部を三角形分割し、その結果を分割情報として生成する分割手段と、
前記分割手段により得られた分割情報に基づいて、前記外郭点をその境界に含む色空間内の立体形状を特定する情報を、色域外郭情報として生成する手段と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の色域外郭情報生成装置。
【請求項5】
コンピュータを、
出力装置に依存しない色空間内の複数の点をそれぞれ表す、複数の座標情報を受け入れる手段と、
前記受け入れた複数の座標情報で特定される色空間内の点のそれぞれを頂点として四面体分割処理を行う手段と、
前記四面体分割処理により得られた三角形の分割面のうち、最も外側にあり、凸包を形成する三角形の分割面の集合を、外郭情報として生成する手段と、
前記生成した外郭情報に含まれる三角形の分割面の一つを対象分割面として選択し、当該対象分割面を含んだ四面体を注目四面体として、当該注目四面体が予め定めた条件を満足するか否かを判断し、満足しない場合は、当該注目四面体に含まれる三角形の分割面のうち、前記対象分割面以外の、三角形の分割面を選択し、前記外郭情報から前記対象分割面を除くとともに、前記選択した三角形の分割面を前記外郭情報に含めて外郭情報を補正する補正手段と、
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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