説明

色変換処理プログラム,処理装置,および処理方法

【課題】 カラー表現される資料データの色を,統一感があり,かつ強調の表現効果を維持したまま色変換する。
【解決手段】 オブジェクト情報取得部15はスライド2のオブジェクトのRGB値を取得する。各強調対象決定部16は,オブジェクトのRGB値の平均値を算出し,RGB平均値が最小値のオブジェクトを取り出して,全要素に対する割合を算出し,当該取り出した要素の割合が所定値を超えない場合に,最小値から強調部品値を決定する。色適用判断部18は,スライド2のオブジェクトを取り出し,RGB平均値が強調部品値以下であれば強調部品と判定する。色適用部19は,強調部品のオブジェクトの背景をカラーパレットで指定された強調色に,文字を強調色に対応付けられた文字色に変換し,強調部品以外のオブジェクトの背景を基調色の背景色に,文字を基調色に対応付けられた文字色に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,カラー表現された書類やスライドなどの資料データを構成する要素の色を変換する処理に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータを用いて作成される提案書や資料などの書類やスライドなどの資料(以下,単に「資料データ」という)は,カラー表現が前提となっている。コンピュータのデータ作成処理プログラムによって簡単に色つきの資料データが作成できる。そのため,資料データに多くの色が使用される傾向がある。また,資料データのどの要素にどの色を使用するかの判断は,作成者に委ねられているため,作成者の考えや嗜好に影響されやすい。
【0003】
さらに,資料データは,コンピュータのデータ記憶装置に保存して再利用できる。そのため,作成者や作成時期・場所が異なる様々な資料データが組み合わされ,新たな資料データが作成されることも多くなっている。元の資料データがそのまま流用されて作成された資料データでは,色使いがばらばらで,配色の統一感が損なわれていることがある。また,使用される色が多過ぎて,かえって見づらくなっていることがある。
【0004】
したがって,多色使いの資料データを見やすくするために,使用する色の範囲を指定したり,色数を抑えたりして色のバランスを考慮するなど,配色に対する意識が高くなっている。
【0005】
配色を考慮した文書作成を支援する従来技術として,基準となる色を指定し,基準色の彩度または明度に応じて文書内の色を明度または彩度の一方を変動させ,明度や彩度が調和した配色となるように色変換を行う配色処理が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−081104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カラー表現される資料データを作成する場合に,全体として統一感がある配色を考慮することだけでなく,強調されるべき部分が適切に強調表現されていることが必要である。重要な部分が容易に把握できるように,その部分だけ色を変えて目立たせることは,一般的な表現手法であるが,強調部分の割合が多過ぎると,強調部分と他の部分との区別がつきにくくなり,かえって強調の効果が失われてしまう。例えば,強調する部分は,一覧可能な範囲の10%〜15%程度の割合である場合に,最も効果的に印象を与えことができることが経験則として認識されている。
【0007】
したがって,統一感のある配色だけでなく,強調部分と通常の部分との割合を考慮して強調表現されるような資料データを作成する必要がある。
【0008】
従来では,作成者が手作業で要素に適用色を指定したり,または,いったん資料データの要素をグレースケールで表示したりして,グレースケールをもとに適用する色を指定するなどの作業を行っていた。特に,分量の多い資料データが複数の者で分担して作成される場合に,強調する部分の特定,強調する部分に適用する色などの判断は,作成者個々に委ねられ,また,作業コンピュータの色設定環境が同じであるとは限らず,全体を通じた統一的な判断は,いっそう困難であった。
【0009】
前記の特許文献1の技術では,ユーザが指定した基準色の明度または彩度の値の高低によって,彩度または明度を変動させて文書を配色する複数の色を生成し,生成した色と基準色との明度の対比が大きい範囲を,強調部分の明度値の範囲として使用し,ユーザが指定した強調部分の色数分だけ変換色が生成される。そのため,基準色をもとにした統一的な配色を行うことができる。しかし,強調部分は,明度値の対比が高い色を用いて色変換されるだけであり,強調部分の表現効果を考慮した色変換を行うことはできなかった。
【0010】
また,資料データの中で,色だけが異なる語句などの文字部分が強調されている場合には,明度および彩度による判定が行えず,適切な色変換を行うことができなかった。
【0011】
さらに,文字が含まれる図形的要素が強調されている場合に,要素の背景色のみが変換され,要素内で背景と重なる文字色が変換されないために,文字が見えにくくなることがあった。
【0012】
本発明の目的は,全体として統一感のある色が適用され,かつ,強調の表現効果を維持した資料データの色変換処理を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は,カラー表現される資料データを構成する要素の色を変換する色変換処理を,コンピュータに実行させるための色変換処理プログラムであって,以下の処理を行うものである。
【0014】
本発明を実行するコンピュータは,要素の背景色として用いられる同系の複数の色と,前記各色と対応付けられた文字色とで構成されるカラーパレットを保持しておく。
【0015】
そして,色変換の対象とする資料データの各要素のRGB値を取得する。各要素のRGB各値の平均値を算出し,RGB平均値が最小値の要素を取り出し,当該取り出した要素と全要素との割合を算出し,当該取り出した要素の割合が所定値を超えない場合に,この最小値にもとづいて強調部品値を決定する。
【0016】
そして,資料データの要素を一つずつ取り出し,このRGB平均値が強調部品値以下である場合にその要素を強調部品と判定する。強調部品については,その背景をカラーパレットで指定された強調色に,文字を前記強調色に対応付けられた文字色に変換する。また,強調部品以外の要素については,その背景を基調色の背景色に,文字を基調色に対応付けられた文字色に変換する。
【0017】
かかる処理により,資料データを構成する要素に所定のカラーパレットから選択された色を適用して統一感を生じさせ,かつ,強調したい部分が効果的に表現されるような資料データ作成処理を支援することができる。
【0018】
特に,処理対象の資料データの強調させた要素は,スライドやページなど所定の範囲内で適切な割合で出現している場合のみ強調部品と判断されるため,強調させた要素が多すぎる場合には強調色が適用されない。よって,作成者に,強調部分の過多を気付かせ,適切な強調表現への修正の機会を与えることができる。
【0019】
さらに,カラーパレットにおいて要素の背景色と対応付けて文字色を設定するため,強調部品の背景と文字の色を適切な対比で変換することができ,色変換処理後に強調部品の要素内の文字が見づらくなることを防ぐことができる。
【0020】
また,本発明では,前記強調部品特定処理において,最小値から,強調部品値より値が大きい第2の強調部品値を決定し,前記色適用処理において,強調部品以外の要素であって,RGB平均値が前記第2の強調部品値以下である要素を準強調部品と判定し,カラーパレットに含まれる前記強調色より明るい色を用いて準強調部品を色変換することができる。これにより,多段階の強調表現を保持した色変換を行うことができる。
【0021】
さらに,本発明では,前記要素情報取得処理において,資料データの文字の文字色およびフォントを取得し,前記強調部品特定処理において,取得された文字色/フォントの文字の出現数を文字色/フォントごとに算出し,文字出現数の全文字数に対する割合が所定値を超えない文字色/フォントであって出現文字数が最少のものを強調文字色/強調フォントとして決定し,前記色適用処理において,前記資料データの文字のうち強調文字色/強調フォントに該当する文字を強調文字と判定し,強調文字の色を所定の文字色に変換し,または強調文字を含む要素を強調部品と特定して強調部品の背景および文字の色を前記強調色に変換することができる。
【0022】
これにより,資料データの文字について,文字色やフォントによって強調させた語句(文字)が適切な割合で強調されている場合に,これらの強調された語句に対する強調表現を適切に保持することができる。
【0023】
さらに,本発明では,資料データの要素のうち,RGB値各々が同値である要素,または,ユーザによって指定された要素または文字を非変換対象とし,前記色適用処理において,非変換対象と設定された要素のRGB値をそのまま保持することができる。
【0024】
これにより,RGB各値が同値であるようなグレー色系の要素や,ユーザが指定した要素などの色を色変換から排除して,柔軟な色変換処理を実現することができる。
【0025】
なお,RGB各値が同値の要素(グレー色系)が非変換対象であるのは,RGB値が均衡し,どのような色とも調和できるからである。
【0026】
さらに,本発明は,別の態様として,前記の処理を実現する処理部を備える処理装置,または,コンピュータが行う前記処理のステップを備える処理方法であってもよい。
【0027】
なお,本発明にかかるプログラムは,コンピュータが読み取り可能な可搬媒体メモリ,半導体メモリ,ハードディスクなどの適当な記録媒体に格納することができ,これらの記録媒体に記録して提供され,または,通信インタフェースを介して種々の通信網を利用した送受信により提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば,資料データを構成する要素や文字の色を,カラーパレットからユーザが選択した色を用いて一括して変換するだけでなく,資料データ内で強調されている要素を識別し,色変換処理後も強調表現を維持することができる。
【0029】
特に,所定の範囲内で要素が適切な割合で強調されている場合にのみ,その要素を強調色で色変換するため,強調部分の割合を作成者に気付かせることができ,強調表現の効果を意識した資料データ作成作業を支援することができる。
【0030】
また,色変換処理の対象としない要素をユーザ指定できるため,柔軟な強調表現に対応することができる。
【0031】
このように,従来は手作業によって行っていた強調部分の色変換処理を自動化できるため,資料データ作成作業の負担を軽減し,見栄えの良い資料データを簡単に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は,本発明を実施するための最良の形態における構成例を示す図である。
【0033】
本発明にかかる色変換処理装置1は,資料データであるスライド2を構成する要素および文字(以下,オブジェクトという)の色を,予め備えられたカラーパレットの色を用いて変換処理し,処理結果である処理済みスライド2’を出力する装置である。
【0034】
本形態では,処理対象とするオブジェクトは,文字データおよび文字を含む図形データとし,写真などのイメージデータは対象としない。また,オブジェクトに対する強調表現を2段階とし,最も強調したいオブジェクトを強調部品,次に強調したいオブジェクトを準強調部品とする。
【0035】
図2は,強調部品および準強調部品の全体に対する適切な割合の例を示す図である。
【0036】
この割合例において,処理前のスライド2の中で,強調のために濃い色が適用されているオブジェクト数が全オブジェクト数に対して15%である場合に,これらのオブジェクトは強調部品として特定され,カラーパレットで用意された強調部品用の「強調色」が適用される。強調部品を10%〜15%程度に抑えることによって,何を主張しているのかを明確にすることができる。
【0037】
また,強調部品の次に濃い色が適用されているオブジェクト数が全オブジェクト数に対して20%である場合に準強調部品として特定され,カラーパレットで用意された準強調部品用の「準強調色」が適用される。準強調部品を全体の20%程度に抑える理由は,やや強調するような表現を多用すると,かえって強調したい点が不明確になってしまうからである。
【0038】
なお,強調部品または準強調部品以外のオブジェクトは,非強調部品として基調色が適用される。
【0039】
図3は,カラーパレットの例を示す図である。
【0040】
カラーパレットには,同系の色で構成されるカラーグループ(例えば,青色,緑色など)が設定される。各カラーグループでは,明るさが異なる複数の色が定義される。色は,強調部品の背景色に適した「強調系明暗色(強調色)」,準強調部品の背景色に適した「やや強調系明暗色(準強調色)」が用意される。強調色および準強調色は,それぞれ同時に適用される文字色が対応付けられて定義される。
【0041】
例えば,図3に示すように,カラーパレットで用意された青色グループには,強調色として,明るさの異なる3つの明暗色,準強調色として3つのやや明暗色が定義される。また,元のオブジェクトがグラデーションである場合に対応させて,グラデーションが定義された強調色,準強調色が定義される。また,強調色の各々に対応付けられた文字色(白色),準強調色に対応付けられた文字色(黒色)が定義される。なお,オブジェクトの枠線の色も,強調色,準強調色,基調色各々に対応付けて定義される。
【0042】
色変換処理装置1は,CPUおよびメモリからなるコンピュータであり,ソフトウェアプログラムなどによって構成される,事前定義設定部11,事前定義記憶部12,カラーパレット選択部13,カラーパレット記憶部14,オブジェクト情報取得部15,強調対象決定部16,強調部品値記憶部17,色適用判断部18,および色適用部19を備える。
【0043】
事前定義設定部11は,スライド2を構成するオブジェクトのうち色変換処理の対象としないもの(非変換対象)を指定し,この指定情報を事前定義記憶部12に格納する。非変換対象は,オブジェクトの形状やデータ種をもとに指定される。オブジェクトの属性として,例えば,矩形,丸,矢印などの図形種別を用いて指定する。また,事前定義設定部11は,処理対象をスライド2のページとするか,ユーザ指定によって選択されたオブジェクトとするかなど,処理単位とする範囲の設定を行う。
【0044】
カラーパレット選択部13は,カラーパレット記憶部14に格納された図3に示すようなカラーパレットの中から,強調部品に適用する強調色,準強調部品に適用する準強調色などを選択する。
【0045】
オブジェクト情報取得部15は,スライド2を構成する各オブジェクトについて,オブジェクトの背景または文字のRGB表色系の色情報(R値,G値,B値),また,文字の色情報(R値,G値,B値)およびフォント名を取得する。
【0046】
強調対象決定部16は,スライド2を構成するオブジェクトを強調部品または準強調部品と特定するための閾値を決定する。具体的には,スライド2の各オブジェクトのRGB各値の平均値を算出し,算出したRGB平均値が最小値であるオブジェクトをすべて取り出す。取り出されたオブジェクト数と全オブジェクト数との割合を算出し,取り出されたオブジェクトの割合が所定値を超えなければ,この最小値にもとづいて強調部品値を決定する。なお,最小値を持つオブジェクトと全オブジェクトとの割合は,オブジェクト数だけでなく,オブジェクトの面積を用いてもよい。
【0047】
また,カラーパレットに準強調色が指定されている場合に,強調部品値の場合と同様に処理して準強調部品値を算出する。
【0048】
また,スライド2の文字について,文字色/フォントごとに出現数を算出する。そして,文字色/フォントごとに,文字出現数と全文字数との割合を算出し,文字出現数の割合が所定値を超えない文字色/フォントであって出現文字数が最少のものを強調文字色および強調フォントとして決定する。
【0049】
強調部品値記憶部17は,強調対象決定部16で決定された強調部品値,準強調部品値,強調文字色,および強調フォントを記憶する。
【0050】
色適用判断部18は,スライド2のオブジェクトのRGB平均値が強調部品値以下である場合にそのオブジェクトを強調部品と,RGB平均値が強調部品値を超え準強調部品値以下である場合にそのオブジェクトを準強調部品と判定する。さらに,スライド2の文字のうち,強調文字色または強調フォントのいずれかに該当する文字を強調文字と判定する。
【0051】
色適用部19は,強調部品と判定されたオブジェクトの背景の色を強調色に変換し,文字を強調色に対応付けられた文字色に変換する。また,準強調部品と判定されたオブジェクトについても同様に色変換処理を行う。また,強調文字および強調文字を含むオブジェクトも強調部品として色変換処理を行う。
【0052】
図4は,スライド2のオブジェクトに対する変換処理の流れを示す図である。
【0053】
ステップS1では,色変換処理装置1の事前定義設定部11は,ユーザが入力した指定にもとづいて,事前定義として,色変換処理を行わない非変換対象とするオブジェクトの種別を設定する。
【0054】
次にステップS2では,カラーパレット選択部13は,カラーパレット記憶部14に格納されたカラーパレットから,オブジェクトに適用するカラーグループ,強調色,基調色などを選択する。
【0055】
ステップS3では,事前定義設定部11は,処理対象範囲とする単位を選択する。例えば,スライド/ページ単位,またはユーザが選択したオブジェクト群とする。
【0056】
ステップS4では,オブジェクト情報取得部15は,スライド2のデータを読み込み,各オブジェクトの色情報としてRGB値を取得する。各文字の文字色およびフォントを取得する。
【0057】
ステップS5では,強調対象決定部16は,オブジェクトのRGB値の平均値を算出し,RGB平均値が最小値であるオブジェクトを取り出し,取り出したオブジェクト数と全オブジェクト数との割合を算出し,取り出したオブジェクト数の全オブジェクト数に対する割合が10%以下であれば,最小値から強調部品値を算出する。例えば,最小値を5%増加させた値を強調部品値とする。
【0058】
また,必要であれば,同様の処理によって,準強調部品値を算出する。
【0059】
また,文字の出現数を,文字色ごとに算出し,各文字色の文字出現数と全文字数との割合を算出する。そして,文字出現数の割合が所定値を超えない文字色,であって出現文字数が最少のものを強調文字色として決定する。同様に,フォントごとに文字出現数を算出し,全文字数との割合を算出して,文字出現数の割合が所定値を超えないフォントを強調フォントとして決定する。
【0060】
ステップS6で,スライド2の全オブジェクトについて色変換処理を開始し,色適用判断部18は,ステップS7〜ステップS12の処理をオブジェクト数分繰り返して(ステップS13),処理を終了する。
【0061】
まず,ステップS7では,オブジェクト情報取得部15が保持するスライド2のオブジェクトの色情報を取得する。
【0062】
ステップS8では,オブジェクトに適用する範囲を判定する。すなわち,オブジェクトが強調部品,準強調部品に該当するか,文字が,強調文字色,強調フォントに該当するかを判定する。オブジェクトのRGB平均値が強調部品値以下であれば強調部品と判定し,オブジェクトのRGB平均値が強調部品値より大きく準強調部品値以下であれば準強調部品と判定する。また,文字またはオブジェクトの文字が強調文字色または強調フォントのいずれかに該当すれば強調部品と判定する。
【0063】
適用範囲が強調部品であれば(ステップS9),オブジェクトの色をカラーパレットから選択された強調色で変換する(ステップS10)。
【0064】
オブジェクトの文字が強調文字色または強調フォントに該当する場合に,オブジェクトの背景色が白,黒,または灰色であれば,文字に対して所定の修飾処理,例えば,太文字,下線付けなどを行う。
【0065】
また,適用範囲が準強調部品であれば(ステップS9),オブジェクトの色を準強調色で変換する(ステップS11)。
【0066】
また,適用範囲が強調部品,準強調部品のいずれでもなければ,すなわち,基調部品であれば(ステップS9),オブジェクトの色を基調色で変換する(ステップS12)。
【0067】
以上の処理をオブジェクト数分繰り返し(ステップS13),全てのオブジェクトの色変換を行うことによって,スライド2のオブジェクトはカラーパレットで指定されたカラーグループを用いて表現され,強調されたオブジェクト,やや強調されたオブジェクトもそのまま表現が維持される。
【0068】
図5〜図8は,オブジェクトの色変換処理の具体例を示す図である。
【0069】
図5は,処理対象のスライド2の例を示す図である。図5のスライド2には,7つのオブジェクト(ob1〜ob7)が含まれている。図6は,図5のスライド2の各オブジェクト(ob1〜ob7)の背景色および文字色のRGB値を示す図である。各オブジェクトの背景色および文字色は,以下のように設定されている。
【0070】
オブジェクトob1の背景色=淡緑〜白のグラデーション,文字色=黒色;
オブジェクトob2の背景色=淡灰色,文字色=黒色;
オブジェクトob3の背景色=淡灰色,文字色=黒色;
オブジェクトob4の背景色=濃ピンク色,文字色=黒色;
オブジェクトob5の背景色=淡灰青色,文字色=黒色;
オブジェクトob6の背景色=淡灰青色,文字色=黒色;
オブジェクトob7の背景色=濃黄色,文字色=濃赤色;
さらに,図3に示すカラーパレットで,緑色系のグループから強調色(R:26,G:82,B:6),準強調色(R:165,G:233,B:171),基調色(R:255,G:255,B:255)が指定される。また,事前定義として,グレー(無色)系のオブジェクトは非変換対象に設定されているとする。
【0071】
事前定義により,スライド2のオブジェクトob2,ob3は,処理対象からはずされる。残りのオブジェクトob1,ob4〜ob7各々について,RGB平均値が算出され,オブジェクトob7のRGB平均値(=170)が最小値となる。したがって,オブジェクトob7と他のオブジェクトとの割合を算出し,所定の割合(例えば15%)を超えていないので,この最小値を強調部品値とする。さらに,オブジェクトob4のRGB平均値(=204)が次に小さい値であり,所定の割合を超えていないので,この最小値を準強調部品値とする。
【0072】
そして,色変換処理では,スライド2のオブジェクトのRGB平均値が,前記の強調部品値,準強調部品値と比べられて,適用する色が決定される。
【0073】
その結果,オブジェクトob7の背景および文字が強調色に変換され,オブジェクトob4の背景および文字が準強調色に変換され,オブジェクトob5,ob6が基調色に変換される。
【0074】
図7は,処理済みスライド2’の例を示す図である。図8は,図7の処理済みスライド2’のオブジェクトob1〜ob7の背景色および文字色のRGB値を示す図である。
【0075】
図5に示すように,処理前のスライド2では,色系統が異なる5色(淡緑色,淡灰色,濃ピンク色,淡青色,濃黄色)が適用されていた。しかし,図7に示すように,処理済みスライド2’のオブジェクトob1〜ob7には緑色系の色が適用され,色適用に統一感を生じさせ,さらに,強調させたいオブジェクトob7,ob4も適切に強調して表現されていることがわかる。
【0076】
以上,本発明をその実施の形態により説明したが,本発明はその主旨の範囲において種々の変形が可能であることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明を実施するための最良の形態における構成例を示す図である。
【図2】強調部品および準強調部品の全体に対する適切な割合の例を示す図である。
【図3】カラーパレットの例を示す図である。
【図4】オブジェクトに対する変換処理の流れを示す図である。
【図5】処理対象のスライドの例を示す図である。
【図6】図5のスライドのオブジェクトの背景色および文字色のRGB値を示す図である。
【図7】処理後のスライドの例を示す図である。
【図8】図7のスライドのオブジェクトの背景色および文字色のRGB値を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1 色変換処理装置
11 事前定義設定部
12 事前定義記憶部
13 カラーパレット選択部
14 カラーパレット記憶部
15 オブジェクト情報取得部
16 強調対象決定部
17 強調部品値記憶部
18 色適用判断部
19 色適用部
2 スライド
2’ 処理済みスライド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー表現される資料データを構成する要素の色を変換する色変換処理を,コンピュータに実行させるための色変換処理プログラムであって,
要素の背景色として用いられる同系の複数の色と,前記各色と対応付けられた文字色とで構成されるカラーパレットから,色変換処理で用いる強調色および基調色を選択するカラーパレット選択処理と,
前記資料データの各要素のRGB値を取得する要素情報取得処理と,
前記資料データの所定の範囲に含まれる要素について,各要素のRGB値の平均値を算出し,前記RGB平均値が最小の要素を取り出し,当該取り出した要素と前記所定の範囲の全要素との割合を算出し,前記取り出した要素の割合が所定値を超えない場合に,前記RGB値の最小値にもとづいて強調部品値を決定する強調部品特定処理と,
前記RGB平均値が前記強調部品値以下である前記要素を強調部品と判定し,前記強調部品の背景を前記強調色に,前記強調部品の文字を前記強調色に対応付けられた文字色に,前記強調部品以外の要素の背景を前記基調色の背景色に,前記強調部品以外の要素の文字を前記基調色に対応付けられた文字色に,それぞれ変換する色適用処理とを,
前記コンピュータに実行させるための
色変換処理プログラム。
【請求項2】
前記強調部品特定処理において,前記最小値から,前記強調部品値より値が大きい第2の強調部品値を決定する処理と,
前記色適用処理において,前記強調部品以外の要素であって,前記RGB平均値が前記第2の強調部品値以下である要素を準強調部品と判定し,前記カラーパレットに含まれる前記強調色より明るい色を用いて前記準強調部品を色変換する処理とを,
前記コンピュータに実行させるための
請求項1に記載の色変換処理プログラム。
【請求項3】
前記要素情報取得処理において,前記資料データの文字の文字色およびフォントを取得する処理と,
前記強調部品特定処理において,前記取得された文字色の文字の出現数を前記文字色ごとに算出し,前記文字出現数の全文字数に対する割合が所定値を超えない文字色であって出現文字数が最少のものを強調文字色として決定し,前記取得されたフォントの文字の出現数を前記フォントごとに算出し,前記文字出現数の全文字数に対する割合が所定値を超えないフォントであって出現文字数が最少のものを強調フォントとして決定する前記強調部文字特定処理と,
前記色適用処理において,前記資料データの文字のうち前記強調文字色または前記強調フォントに該当する文字を強調文字と判定し,当該強調文字の色を所定の文字色に変換し,または当該強調文字を含む要素を強調部品と特定して当該強調部品の背景および文字の色を前記強調色に変換する処理とを,
前記コンピュータに実行させるための
請求項1ないし請求項2のいずれか一項に記載の色変換処理プログラム。
【請求項4】
前記資料データの要素のうち,ユーザによって指定された要素または文字を非変換対象とする非変換対象設定処理と,
前記色適用処理において,前記非変換対象の要素または文字を色変換処理の対象外とする処理とを,
前記コンピュータに実行させるための
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の色変換処理プログラム。
【請求項5】
前記非変換対象設定処理において,RGB値各々が同値である前記要素を非変換対象とする処理を,
前記コンピュータに実行させるための
請求項4に記載の色変換処理プログラム。
【請求項6】
カラー表現される資料データを構成する要素の色を変換する色変換処理を,コンピュータに実行させるための色変換処理装置であって,
要素の背景色として用いられる同系の複数の色と,前記各色と対応付けられた文字色とで構成されるカラーパレットから,色変換処理で用いる強調色および基調色を選択するカラーパレット選択部と,
前記資料データの各要素のRGB値を取得する要素情報取得部と,
前記資料データの所定の範囲に含まれる要素について,各要素のRGB値の平均値を算出し,前記RGB平均値が最小の要素を取り出し,当該取り出した要素と前記所定の範囲の全要素との割合を算出し,前記取り出した要素の割合が所定値を超えない場合に,前記RGB値の最小値にもとづいて強調部品値を決定する強調部品特定部と,
前記RGB平均値が前記強調部品値以下である前記要素を強調部品と判定し,前記強調部品の背景を前記強調色に,前記強調部品の文字を前記強調色に対応付けられた文字色に,前記強調部品以外の要素の背景を前記基調色の背景色に,前記強調部品以外の要素の文字を前記基調色に対応付けられた文字色に,それぞれ変換する色適用部とを備える
色変換処理装置。
【請求項7】
コンピュータが,カラー表現される資料データを構成する要素の色を変換する色変換処理方法であって,
要素の背景色として用いられる同系の複数の色と,前記各色と対応付けられた文字色とで構成されるカラーパレットから,色変換処理で用いる強調色および基調色を選択するカラーパレット選択処理ステップと,
前記資料データの各要素のRGB値を取得する要素情報取得処理ステップと,
前記資料データの所定の範囲に含まれる要素について,各要素のRGB値の平均値を算出し,前記RGB平均値が最小の要素を取り出し,当該取り出した要素と前記所定の範囲の全要素との割合を算出し,前記取り出した要素の割合が所定値を超えない場合に,前記RGB値の最小値にもとづいて強調部品値を決定する強調部品特定処理ステップと,
前記RGB平均値が前記強調部品値以下である前記要素を強調部品と判定し,前記強調部品の背景を前記強調色に,前記強調部品の文字を前記強調色に対応付けられた文字色に,前記強調部品以外の要素の背景を前記基調色の背景色に,前記強調部品以外の要素の文字を前記基調色に対応付けられた文字色に,それぞれ変換する色適用処理ステップとを備える
色変換処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−252425(P2008−252425A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90113(P2007−90113)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】