説明

色変換装置及び色変換プログラム

【課題】簡易に出力色再現域の活用効率を向上させることのできる色変換装置及び色変換プログラムを得る。
【解決手段】出力側デバイスの色再現域である出力色再現域の外郭を、入力側デバイスの色再現域である入力色再現域の外郭に近づけるように補正することにより補正色再現域を生成し(ステップ102)、前記入力色再現域の画像信号である入力画像信号を、前記補正色再現域内にマッピングし(ステップ104)、当該補正色再現域内にマッピングされた画像信号を、前記出力色再現域内の画像信号となるように整合させる(ステップ106)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換装置及び色変換プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー画像を出力する装置(デバイス)として、表示装置(所謂ディスプレイ装置)や、画像形成装置(所謂プリンタ)等がある。これらの出力装置では、各々の出力方式の違い等によって再現可能な色範囲が異なっている。例えば、CRTディスプレイ装置では、出力方式が蛍光体を光らせる方式であるため、明度の高い領域で鮮やかな色を表現できる。一方、プリンタでは、色材を重ねて色を表現する方式であるため、1次色以外では高明度高彩度の色を表現することは難しく、全体的に低明度領域での色再現が可能である。
【0003】
このように、出力装置に応じて色再現域が異なるため、例えばCRTディスプレイ装置上で作成した画像をプリンタで印刷する場合等、異なる出力装置で同じカラー画像信号による出力を行おうとすると、再現できない色が生じる場合がある。
【0004】
そのため、少なくとも再現できない色については最も近いと考えられる色に置き換えて出力し、画像全体として当該出力装置においては最良の画質で再現できるようにしている。このとき、与えられたカラー画像信号を、出力装置の色再現域内の色に置き換える色域マッピング(所謂ガマット(Gamut)マッピング)が必要となる。
【0005】
ところで、この色域マッピング技術においては、入力側デバイスの色再現域である入力色再現域の画像信号である入力画像信号を、出力側デバイスの色再現域である出力色再現域に圧縮する手法が多く採られているが、この場合、出力色再現域が入力色再現域より大きな場合には、出力色再現域を十分に活用することができなかった。
【0006】
そこで、従来、この問題を解決するために適用できる技術として、特許文献1〜特許文献3には、色域マッピングを施す前に入力色再現域を参照し、当該入力色再現域を、出力色再現域を包含する補正色再現域に変形して、当該補正色再現域から出力色再現域にマッピングする技術が開示されている。
【0007】
特に、上記特許文献2に開示されている技術では、補正色再現域から出力色再現域へのマッピング時に非線形にマッピングを行ったり、上記特許文献3に開示されている技術では、補正色再現域を生成する際に出力色再現域内部の色があまり変わらないように非線形に写像したりすることで、出力側デバイスにより再現できる色があまり変わってしまわないように工夫を行っている。
【特許文献1】特開2000−184222号公報
【特許文献2】特開2003−153018号公報
【特許文献3】特開2005−184602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の技術背景においてなされたものであり、簡易に出力色再現域の活用効率を向上させることのできる色変換装置及び色変換プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の色変換装置は、出力側デバイスの色再現域である出力色再現域の外郭を、入力側デバイスの色再現域である入力色再現域の外郭に近づけるように補正することにより補正色再現域を生成する生成手段と、前記入力色再現域の画像信号である入力画像信号を、前記補正色再現域内にマッピングするマッピング手段と、前記マッピング手段により前記補正色再現域内にマッピングされた画像信号を、前記出力色再現域内の画像信号となるように整合させる整合手段と、を備えている。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記生成手段が、前記補正色再現域を、前記出力色再現域の外郭が前記入力色再現域の内部に含むように補正することにより生成するものである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記生成手段が、前記補正色再現域を、前記出力色再現域の外郭が前記入力色再現域の内部に含み、かつ前記出力色再現域の最大彩度を有する点であるカスプ点の移動量を評価して補正することによって生成するものである。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記生成手段が、前記補正色再現域を、前記出力色再現域の外郭が前記入力色再現域の内部に含み、かつ前記カスプ点の移動量が最小となるように補正することによって生成するものである。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の発明において、前記整合手段が、前記生成手段により前記補正色再現域を生成する際に行った前記出力色再現域の外郭に対する補正の逆補正を前記補正色再現域内にマッピングされた画像信号に対して行うことにより前記整合を行うものである。
【0014】
更に、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の発明において、前記出力色再現域が、デバイス非依存の色空間の色再現域であり、前記マッピング手段により前記補正色再現域内にマッピングされた画像信号を、予め定められた変換モデルにより前記出力側デバイスの色空間の画像信号に変換する変換手段を更に備え、前記整合手段が、前記変換モデルに含まれ、前記マッピング手段により前記補正色再現域内にマッピングされた画像信号に対して前記整合を行うものである。
【0015】
一方、上記目的を達成するために、請求項7に記載の色変換プログラムは、出力側デバイスの色再現域である出力色再現域の外郭を、入力側デバイスの色再現域である入力色再現域の外郭に近づけるように補正することにより補正色再現域を生成する生成ステップと、前記入力色再現域の画像信号である入力画像信号を、前記補正色再現域内にマッピングするマッピングステップと、前記マッピングステップにより前記補正色再現域内にマッピングされた画像信号を、前記出力色再現域内の画像信号となるように整合させる整合ステップと、をコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1及び請求項7に記載の発明によれば、本発明を適用しない場合に比較して、簡易に出力色再現域の活用効率を向上させることができる、という効果が得られる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、本発明を適用しない場合に比較して、出力色再現域の活用効率を、より向上させることができる、という効果が得られる。
【0018】
また、請求項3に記載の発明によれば、本発明を適用しない場合に比較して、より簡易に出力色再現域の活用効率を向上させることができる、という効果が得られる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明によれば、本発明を適用しない場合に比較して、より簡易に出力色再現域の活用効率を向上させることができる、という効果が得られる。
【0020】
また、請求項5に記載の発明によれば、本発明を適用しない場合に比較して、より簡易に出力色再現域の活用効率を向上させることができる、という効果が得られる。
【0021】
更に、請求項6に記載の発明によれば、本発明を適用しない場合に比較して、より簡易に出力色再現域の活用効率を向上させることができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施の形態に係る色変換装置の構成を説明する。図1は、本発明に係る色変換装置の構成例を示すブロック図である。ここで説明する色変換装置は、ディジタル複写機やプリンタ等といった画像出力装置に搭載され、若しくはその画像出力装置に接続するサーバ装置に搭載され、またはその画像出力装置に動作指示を与えるコンピュータ(ドライバ装置)に搭載されて用いられるもので、図例のように、入力部1と、出力部2と、ユーザ・インタフェース( 以下「UI」と称する。)部3と、色空間信号変換部4と、を備えたものである。
【0024】
ここで、入力部1は、入力側デバイスからの入力画像信号を取得するためのものである。なお、入力画像信号としては、例えば、CRTディスプレイ装置等に表示させるためのRGB色空間におけるカラー画像信号、CIELab色空間におけるカラー画像信号、YMCK色空間におけるカラー画像信号等が挙げられる。本実施の形態では、入力画像信号がRGB色空間のカラー画像信号である場合について説明する。
【0025】
一方、出力部2は、出力側デバイスに出力画像信号を出力するためのものである。なお、出力画像信号としては、例えば、プリンタ等に印刷させるためのYMC色空間あるいはYMCK色空間のカラー画像信号が挙げられる。本実施の形態では、出力画像信号がYMCK色空間のカラー画像信号である場合について説明する。
【0026】
また、UI部3は、ユーザによる操作に応じて、色空間信号変換部4に対する各種設定を行うためのものである。
【0027】
更に、色空間信号変換部4は、入力部1が取得した入力画像信号を、出力部2で出力する出力画像信号に変換するためのものである。なお、色空間信号変換部4では、主として、入力画像信号に対する色域マッピングを行うことにより、入力画像信号を出力画像信号へ変換する。
【0028】
次に、色空間信号変換部4の構成について、図2を参照しつつ詳細に説明する。なお、図2は、本実施の形態に係る色空間信号変換部4の構成例を示すブロック図である。
【0029】
図例のように、色空間信号変換部4は、入力色空間変換部11と、色域マッピング部14と、出力色空間変換部15と、メモリ16と、を備えたものである。
【0030】
入力色空間変換部11は、入力画像信号の色空間が後段で用いる色空間と異なる場合に、後段で用いる色空間への色空間変換処理を行うものである。例えば、入力画像信号がRGB色空間の信号であるのに対して、色域マッピング部14での処理が装置に依存しない色空間、例えばCIE−L色空間で行われる場合であれば、入力色空間変換部11は、RGB色空間からL色空間への変換を行う。本実施の形態では、装置に依存しない色空間としてCIE−L色空間を用いた場合について説明するが、これに限らず、Jch等の装置に依存しない他の色空間を用いてもよい。ただし、無彩色軸方向へ色域マッピングした際に色相が変化しない色空間を用いることが好ましい。
【0031】
なお、入力画像信号が装置に依存しない色空間の信号である場合には、入力色空間変換部11における処理は必要ないため、当該入力色空間変換部11を設けなくても構わない。
【0032】
また、色域マッピング部14は、入力色空間変換部11から出力された入力画像信号を、出力側デバイスで再現できる範囲の出力画像信号へマッピングするものである。
【0033】
また、出力色空間変換部15は、出力画像信号の色空間が当該出力画像信号を受け取る出力側の画像出力装置で用いる色空間と異なる場合に、当該画像出力装置で用いる色空間への色空間変換処理を行うものである。例えば、画像出力装置がプリンタ等である場合、当該画像出力装置は、YMC色空間またはYMCK色空間の画像信号を取り扱うものが殆どである。このような場合に、出力色空間変換部15は、装置に依存しない色空間、例えばCIE−L色空間からYMC色空間またはYMCK色空間への色空間変換処理を行う。もちろん、装置に依存しない色空間のまま出力してもよく、この場合には出力色空間変換部15における処理は不要なため、当該出力色空間変換部15を設けなくてもよい。
【0034】
更に、メモリ16は、入力側デバイスの色再現域を表す色再現域データや出力側デバイスの色再現域を表す色再現域データ、後述する色変換処理ルーチン・プログラム等が記憶されている。
【0035】
次に、色域マッピング部14の構成について、図3を参照しつつ詳細に説明する。なお、図3は、本実施の形態に係る色域マッピング部14の構成例を示すブロック図である。
【0036】
図例のように、色域マッピング部14は、補正色再現域生成処理部14Aと、マッピング部14Bと、整合処理部14Cと、を備えている。
【0037】
補正色再現域生成処理部14Aは、出力側デバイスの色再現域である出力色再現域の外郭を、入力側デバイスの色再現域である入力色再現域の外郭に近づけるように補正することにより補正色再現域を生成するものである。また、マッピング部14Bは、入力色再現域の画像信号である入力画像信号を、補正色再現域内にマッピングするものである。更に、整合処理部14Cは、マッピング部14Bにより補正色再現域内にマッピングされた画像信号を、出力色再現域内の画像信号となるように整合させるものである。
【0038】
これらの各部11〜16は、例えば画像出力装置、サーバ装置またはドライバ装置が具備するもので、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の組み合わせからなるコンピュータが、所定プログラムを実行することによって、それぞれ実現することができる。
【0039】
次に、色空間信号変換部4で実行される色変換処理ルーチン・プログラムについて、図4に示すフローチャートを参照しつつ説明する。なお、図4に示す処理は、例えばユーザのUI部3の操作により色変換が指示されると実行される。
【0040】
まず、ステップ100では、入力色再現域及び出力色再現域を求め、メモリ16に記憶する。このとき、装置に依存しない色空間、例えばCIE−L色空間において求めるとよい。なお、以下の説明では、CIE−L色空間において出力側デバイスの色再現域へのマッピングを行うものとする。
【0041】
図5は、色再現域の一例を示す概念図である。一般に、色再現域は一様ではなく、図例のような複雑な3次元形状を有している。同図に示した立体の内側が、色再現が可能な領域であり、その外側は色を再現できない領域である。従って、色再現域を求めるにあたっては、色再現が可能な領域と色を再現できない領域との境界を示す面(外郭面)の情報(外郭データ)を求めておく。上述のように当該外郭面の形状は一様ではないので、例えば三角形などの多角形状に分割して表現しておくとよい。図例では、外郭面の一部のみ、三角形状に分割して図示しているが、このような分割を外郭面の全面について行うことになる。このような外郭データを算出する方法としては、例えば、特開2005−063093号公報、特開2005−260801号公報等に記載されているような方法を適用することができるが、入力側デバイス及び出力側デバイスの各々における色再現域の外郭面を示す外郭データを求める手法であれば、如何なる手法を適用してもよい。
【0042】
外郭データは、例えば外郭面を三角形に分割した場合には、各三角形の頂点(以下、「外郭構成点」という。)の明度、彩度、及び色相角の対応関係を示す外郭面ルックアップテーブルとすることができるが、これに限られるものではない。
【0043】
求めた入力色再現域及び出力色再現域の外郭を表す外郭データは、メモリ16に記憶される。
【0044】
次のステップ102では、導出した出力色再現域の外郭を入力色再現域の外郭に近づけるように補正することにより補正色再現域を生成する補正色再現域生成処理を実行する。なお、本実施の形態に係る色変換処理ルーチン・プログラムでは、当該補正色再現域生成処理として、出力色再現域の外郭が入力色再現域の内部に含むように補正することによって補正色再現域を生成する処理を適用しており、一例として次のように行っている。
【0045】
まず、入力色再現域の外郭データ及び出力色再現域の外郭データのうち、L色空間における最大彩度を有する点であるCUSP点(カスプ点)を色相角断面毎に算出する。
【0046】
次に、色相角断面毎に、入力色再現域のCUSP点とグレイ軸(L軸)で構成される三角形(以下、「入力色再現域三角形」という。)の外部に存在する出力色再現域のCUSP点を、当該入力色再現域三角形の辺上、又は内部に位置するように補正する。
【0047】
この出力色再現域のCUSP点の補正に伴って、補正前の出力色再現域のCUSP点とグレイ軸で構成される三角形(以下、「出力色再現域三角形」という。)が、補正後の出力色再現域(補正色再現域)のCUSP点とグレイ軸で構成される三角形(以下、「補正色再現域三角形」という。)に写像されることになる。ここで、当該写像は、出力色再現域三角形を構成しているグレイ軸上の点の位置を変化させないように、彩度に応じて線形に変換することにより実現することができる。
【0048】
例えば、入力色再現域及び出力色再現域の各々の外郭が図6(A)に示すものである場合における、出力色再現域のCUSP点が入力色再現域三角形の辺上に位置するように補正することにより得られた補正色再現域の外郭の一例が図6(B)に、出力色再現域のCUSP点が入力色再現域三角形の内部に位置するように補正することにより得られた補正色再現域の外郭の一例が図6(C)に、各々示されている。
【0049】
なお、出力色再現域のCUSP点の補正方向と大きさは、色域マッピングとの関係に応じて任意に設定することができるが、一例として、出力色再現域のCUSP点からの距離が最小となる入力色再現域三角形の辺上の点を当該CUSP点の補正先として決定する方法を適用することができる。この距離が最小となる色差式部分を色域マッピングに応じて適切に設定することで、出力色再現域を有効に活用しつつ、明度重視や階調性重視等の要求に応じた色再現を実現することができる。ここでは、最も好適な例として、CUSP点の移動距離を最小とする例を挙げたが、当該移動距離を所定の範囲内とする方法を適用してもよい。
【0050】
なお、以上の例では、補正色再現域を生成するための補正ベクトルを、等色相角断面内の補正先を示すものとした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、出力色再現域のCUSP点を、デバイス非依存の色空間であるCIE−L色空間上で色差式が最小となる点に補正するような3次元色空間における補正ベクトルを生成し、当該補正ベクトルに基づいて出力色再現域の外郭を補正することにより補正色再現域を生成するようにしてもよい。
【0051】
次のステップ104では、入力された入力画像信号を、上記ステップ102の処理によって生成した補正色再現域内に色域マッピングするマッピング処理を実行する。なお、当該マッピング処理としては、従来既知の様々な手法を適用することができるが、本実施の形態に係る色変換処理ルーチン・プログラムでは、比較的単純である、補正色再現域におけるCUSP点の明度と等しいグレイ軸上の点を目標点(図6(B),図6(C)参照。)としてマッピングを行う手法を適用している。
【0052】
次のステップ106では、上記ステップ104の処理によって補正色再現域内に色域マッピングされた画像信号を出力色再現域内の画像信号となるように整合させる整合処理を実行する。なお、本実施の形態に係る色変換処理ルーチン・プログラムでは、当該整合処理として、上記ステップ102の処理において補正色再現域を生成する際に出力色再現域に対して行った補正の逆補正を、当該補正色再現域内にマッピングされた画像信号に対して施すことにより行っている。これにより、補正色再現域に対して色域マッピングを行ったことにより一時的にゆがめたデバイス非依存の色空間における画像信号を、元のデバイス非依存の色空間に戻すことができる。
【0053】
ステップ106の整合処理が終了すると本色変換処理ルーチン・プログラムが終了となる。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合せにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0056】
例えば、上記実施の形態では、本発明の整合手段を、色域マッピング部14に含めた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、出力色空間変換部15を、色域マッピング部14により補正色再現域内にマッピングされたデバイス非依存の色空間における画像信号を出力側デバイスの色空間の画像信号に変換する変換モデルを有するものとし、当該変換モデルを、上記色変換処理ルーチン・プログラムのステップ106の整合処理と同様の逆補正を行う変換も含めたものとすることにより、当該変換モデルに対して本発明の整合手段の役割を担わせる形態とすることもできる。この場合、本発明の整合手段を新たに設ける必要がなくなるので、上記実施の形態に比較して、演算負荷を軽減することができる。
【0057】
また、上記実施の形態では、色変換処理をソフトウェアによって実現した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、当該色変換処理をハードウェアにより実現する形態とすることもできる。この場合の形態例としては、例えば、図3に示した補正色再現域生成処理部14A、マッピング部14B、及び整合処理部14Cと同様に機能する機能デバイスを作成して用いる形態が例示できる。この場合は、上記実施の形態に比較して、色変換処理の高速化が期待できる。
【0058】
また、上記実施の形態では、線形に写像することにより出力色再現域から補正色再現域を生成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、非線形に写像することによって補正色再現域を生成する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0059】
その他、上記実施の形態で説明した色変換装置の構成(図1〜図3参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりすることができることは言うまでもない。
【0060】
また、上記実施の形態で説明した色変換処理ルーチン・プログラムの処理の流れ(図4参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において新たなステップを追加することができることは言うまでもない。
【0061】
更に、上記実施の形態で説明した補正色再現域生成処理の手法(図6参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において他の手法が適用できることも言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施の形態に係る色変換装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る色変換装置における色空間信号変換部の構成例を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係る色空間信号変換部における色域マッピング部の構成例を示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係る色変換処理ルーチン・プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】色再現域の一例を示す概念図である。
【図6】実施の形態に係る補正色再現域生成処理の説明に供する図であり、横軸が彩度で縦軸が明度とされたグラフである。
【符号の説明】
【0063】
1 入力部
2 出力部
3 UI部
4 色空間信号変換部
11 入力色空間変換部
14 色域マッピング部
14A 補正色再現域生成処理部(生成手段)
14B マッピング部(マッピング手段)
14C 整合処理部(整合手段)
15 出力色空間変換部
16 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力側デバイスの色再現域である出力色再現域の外郭を、入力側デバイスの色再現域である入力色再現域の外郭に近づけるように補正することにより補正色再現域を生成する生成手段と、
前記入力色再現域の画像信号である入力画像信号を、前記補正色再現域内にマッピングするマッピング手段と、
前記マッピング手段により前記補正色再現域内にマッピングされた画像信号を、前記出力色再現域内の画像信号となるように整合させる整合手段と、
を備えた色変換装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記補正色再現域を、前記出力色再現域の外郭が前記入力色再現域の内部に含むように補正することにより生成する
請求項1記載の色変換装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記補正色再現域を、前記出力色再現域の外郭が前記入力色再現域の内部に含み、かつ前記出力色再現域の最大彩度を有する点であるカスプ点の移動量を評価して補正することによって生成する
請求項2記載の色変換装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記補正色再現域を、前記出力色再現域の外郭が前記入力色再現域の内部に含み、かつ前記カスプ点の移動量が最小となるように補正することによって生成する
請求項3記載の色変換装置。
【請求項5】
前記整合手段は、前記生成手段により前記補正色再現域を生成する際に行った前記出力色再現域の外郭に対する補正の逆補正を前記補正色再現域内にマッピングされた画像信号に対して行うことにより前記整合を行う
請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の色変換装置。
【請求項6】
前記出力色再現域は、デバイス非依存の色空間の色再現域であり、
前記マッピング手段により前記補正色再現域内にマッピングされた画像信号を、予め定められた変換モデルにより前記出力側デバイスの色空間の画像信号に変換する変換手段を更に備え、
前記整合手段は、前記変換モデルに含まれ、前記マッピング手段により前記補正色再現域内にマッピングされた画像信号に対して前記整合を行うものである
請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の色変換装置。
【請求項7】
出力側デバイスの色再現域である出力色再現域の外郭を、入力側デバイスの色再現域である入力色再現域の外郭に近づけるように補正することにより補正色再現域を生成する生成ステップと、
前記入力色再現域の画像信号である入力画像信号を、前記補正色再現域内にマッピングするマッピングステップと、
前記マッピングステップにより前記補正色再現域内にマッピングされた画像信号を、前記出力色再現域内の画像信号となるように整合させる整合ステップと、
をコンピュータに実行させる色変換プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−271419(P2008−271419A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114618(P2007−114618)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】