説明

色測定装置、および、色測定方法

【課題】多点測定の測定領域の設定を容易にかつ短時間で行うことができる色測定装置を提供する。
【解決手段】表示装置2に表示された画像を撮像する撮像部40と、複数の測定領域が設定された教示画像または色測定用の計測画像を選択して表示装置2に表示させる信号発生部20と、撮像部40を制御して表示装置2に表示された画像を撮像させるカメラ制御部51と、撮像部40で撮像した教示画像を画像処理して測定領域を認識する測定領域認識部52と、撮像部40で撮像した計測画像における測定領域認識部52で認識した測定領域に対応する計測領域毎の色を測定する色測定部53と、を備える。測定領域認識部52は、複数の測定領域と測定領域以外の非測定領域とが異なる色度または輝度で表された教示画像を画像処理し測定領域を認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色測定装置、および、色測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置における表示画像の品質を検査するために、RGBフィルターを装備する単板または三板のカラーカメラと、カメラによる測定値を補正する演算装置とを備えた色測定装置が使用される(特許文献1)。
また、順次送りの三刺激値フィルターを装備するカラーカメラと、三刺激値それぞれの画像データを結合して色度を演算する制御装置とを備えた色測定装置が知られている(特許文献2)。この特許文献2に記載の三刺激値のそれぞれのフィルターは、円形のフォルダーにセットされ、このフォルダーが回転することで受光素子に順次対向するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−233333号公報
【特許文献2】特開平6−201472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、表示装置の用途が従来の文字表示から自然画、あるいはグラフィック画像などに変化し、より色彩豊かな画像が投影される場面が多くなっている。一方、プロジェクターの明るさは使用場所を選ばないほどに明るくなり、プロジェクターの光エネルギー密度は増すばかりである。このため、光源であるランプ、電気光学変換素子、あるいは内部光学部品の光学歪みを引き起こし、ひいては色均一性能の劣化に繋がる。この色均一性能を高精度、かつ高速に測定することが高性能な色均一性を有する表示装置の開発、製造に必須となってきている。
【0005】
このような色均一性能の測定のために、表示装置の品質検査において、画面内の多点色彩計測を容易に行う必要性が高まっている。
ところで、前記特許文献1,2には、画面内での多点測定に関しては記載されていない。従来、このような測定装置では、測定者がマウスを用いた入力操作により、測定位置を1点、1点設定入力していた。この際、多点測定の精度向上を望むユーザーにおいては、数百箇所の測定位置を設定入力する場合もあり、測定のための設定操作に膨大な時間を要する不都合がある。また、マウスでの入力操作により、正確性を損なわずに測定位置を設定するのは、非常に煩雑である。さらに、円形の領域や楕円の領域などの矩形領域以外の変形領域を正確に設定するのはさらに煩雑で、時間を要する。このように、従来の測定方法では、測定のための設定操作に膨大な時間を要する不都合がある。
本発明の目的は、多点測定の測定領域の設定を容易にかつ短時間で行うことができる色測定装置、および、色測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に記載の色測定装置は、表示装置に表示された画像を撮像する撮像部と、複数の測定領域が設定された教示画像または色測定用の計測画像を選択して前記表示装置に表示させる画像表示制御部と、前記撮像部を制御して前記表示装置に表示された画像を撮像させるカメラ制御部と、前記撮像部で撮像した教示画像を画像処理して前記測定領域を認識する測定領域認識部と、前記撮像部で撮像した計測画像における前記測定領域認識部で認識した測定領域に対応する計測領域毎の色を測定する色測定部と、を備え、前記教示画像は、前記複数の測定領域と、これら測定領域以外の非測定領域とが、異なる色度または輝度で表され、前記測定領域認識部は、前記測定領域および非測定領域における色度または輝度の違いに基づいて、前記撮像部で撮像した教示画像を画像処理することで前記測定領域を認識することを特徴とする。
【0007】
この発明では、複数の測定領域と、これら測定領域以外の非測定領域とが、異なる色度または輝度で表された教示画像を表示装置に表示させて撮像し、教示画像の測定領域が、非測定領域に対して色度または輝度の少なくとも一方が異なる点を利用して画像処理することで測定領域を認識する。例えば、教示画像における測定領域の輝度が、被測定領域の輝度よりも高い場合には、そられの各領域の輝度を区分けする閾値を用いて輝度が高い領域のみを抽出すれば、測定領域を認識できる。
そして、表示装置に計測画像を表示させて撮像し、撮像した計測画像における既に認識した測定領域に対応した計測領域毎の色を測定する。
このことにより、計測画像における色を測定する計測領域は、前記教示画像における測定領域を認識する画像処理で自動的に設定され、ユーザーがマウスなどで計測領域を設定する入力操作を不要にできる。従って、表示装置の計測画像に多数の計測領域を容易に設定でき、多点測定するための計測領域を高精度に短時間で設定できる。
【0008】
そして、本発明では、前記撮像部は、前記表示装置に表示された画像を撮像する3つのカメラと、これらカメラに1つずつ設けられる三刺激値の3つのフィルターと、を備え、前記カメラ制御部は、前記表示装置に表示された画像を前記カメラで同時に撮像させる制御を行い、前記測定領域認識部は、前記各カメラで撮像した教示画像をそれぞれ画像処理して前記測定領域をそれぞれ認識し、前記色測定部は、前記各カメラで撮像した計測画像における前記測定領域認識部で認識した測定領域に対応する計測領域毎の色をそれぞれ測定することが好ましい。
【0009】
この発明では、三刺激値の3つのフィルターを1つずつ設けた3つのカメラで同時に撮像するので、各表示色で順次画像走査する必要がなく、時間短縮が図れる。さらに、フリッカーの影響を防止するために各表示色で1秒以上測定することにより測定時間が長くなるという不都合も防止できる。このように、三刺激値の3つのフィルターを3つのカメラに1つずつ設けるので、色の測定でも安価なモノクロカメラを用いることができ、測定時間も短縮できる。
【0010】
また、本発明では、前記色測定部で測定した計測領域毎の色の測定値と、前記計測画像の各計測領域を基準色度計で測定して得られる色基準値とに基づいて、色校正値を算出する色校正値算出部と、前記色校正値算出部で算出した色校正値に基づいて、前記色測定部で測定した測定値を補正して色補正値を算出する色補正値算出部と、を備えたことが好ましい。
【0011】
この発明では、色校正値算出部は、色測定部で測定した測定値と、基準色度計で測定した色基準値とに基づいて色校正値を算出する。色補正値算出部は、この色校正値に基づいて、色測定部の測定値を補正して色補正値を算出する。
なお、基準色度計は、色測定部の校正用であるため、測定の開始時のみ用いればよく、前記色校正値が求められた後は、使用する必要がない。このため、基準色度計は、例えば、分光タイプの色彩輝度計のように、高精度の測定が可能であるが、測定時間が長くなるタイプのものも利用できる。このような基準色度計を用いて色校正値を求めれば、色測定部で測定した値を、前記基準色度計の計測値を基準に補正でき、この補正後の色補正値によればより正確な色の測定値を求めることができる。
【0012】
本発明に記載の色測定方法は、複数の測定領域およびこれら測定領域とは異なる色度または輝度で表される非測定領域を有する教示画像を、表示装置に表示させる教示画像表示制御工程と、この教示画像表示制御工程で前記表示装置に表示された教示画像を撮像部により撮像して撮像教示画像を得る教示画像撮像工程と、この教示画像撮像工程で取得した撮像教示画像を、前記測定領域および非測定領域における色度または輝度の違いに基づいて画像処理することで前記測定領域を認識する測定領域認識工程と、前記表示装置に計測画像を表示させる計測画像表示工程と、前記計測画像表示工程で表示された計測画像を前記撮像部により撮像して撮像計測画像を得る計測画像撮像工程と、この計測画像撮像工程で取得した撮像計測画像における前記測定領域認識工程で認識した測定領域に対応する計測領域毎の色を測定する色測定工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この発明では、本発明に記載の色測定装置と同様の作用効果を奏する。
すなわち、教示画像表示制御工程で測定領域および非測定領域を有する教示画像を表示装置に表示させ、教示画像撮像工程で撮像する。撮像した撮像教示画像を、測定領域および非測定領域における色度または輝度の違いに基づいて画像処理する測定領域認識工程を実施して測定領域を認識する。そして、計測画像表示工程で表示装置に計測画像を表示させ、計測画像撮像工程で撮像し、撮像した計測画像における既に認識した測定領域に対応した計測領域毎の色を色測定工程で測定する。
このことにより、計測画像における色を測定する計測領域をユーザーが設定する入力操作が不要となり、表示装置の計測画像に多数の計測領域を容易に設定でき、多点測定するための計測領域を高精度で短時間で設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る色測定装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】前記実施形態における教示画像を模式的に示す図。
【図3】前記実施形態におけるXフィルターが設けられたモノクロカメラで撮像した教示画像を模式的に示す図。
【図4】前記実施形態におけるYフィルターが設けられたモノクロカメラで撮像した教示画像を模式的に示す図。
【図5】前記実施形態におけるZフィルターが設けられたモノクロカメラで撮像した教示画像を模式的に示す図。
【図6】前記実施形態における色測定のための測定領域を設定する動作を示すフローチャート。
【図7】前記実施形態における色測定・補正処理する動作を示すフローチャート。
【図8】本発明の変形例に係る教示画像を模式的に示す図。
【図9】本発明の他の変形例に係る教示画像を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[色測定装置の構成]
図1に示すように、色測定装置1は、検査対象となる表示装置2で表示される画像における複数箇所の色を測定する色測定機能を備えた装置である。
この色測定装置1は、制御部10と、表示装置2で所定の画像を表示させる信号を発生する画像表示制御部としての信号発生部20と、記憶部30と、表示装置2に表示された画像を撮像する撮像部40と、撮像した撮像画像を画像処理する画像処理部50と、を備えている。
【0016】
制御部10は、信号発生部20、記憶部30および画像処理部50を制御する。すなわち、制御部10は、表示装置2の表示画面の色を多点(複数領域)で測定する処理を実施する。また、多点で測定した色(測定値)により、表示装置2の色均一性の評価も行う。このため、制御部10は、信号発生部20、記憶部30および画像処理部50に適宜制御信号を出力し、色測定装置1全体の動作を制御する。
【0017】
信号発生部20は、表示装置2に計測用の計測画像や教示画像などの画像を表示させる信号を発生する。具体的には、信号発生部20は、制御部10から出力される制御信号に基づいて、画像を表示させる表示制御信号を発生し、表示装置2へ送信して表示装置2で教示画像や計測画像を表示させる。
なお、表示装置2としては、図1に示すように、信号発生部20からの表示制御信号により教示画像や計測画像を表示させる状態と、信号発生部としての内蔵OSD(On Screen Display)2Aからの表示制御信号により教示画像や計測画像を表示させる状態とを切り替える切替部2Bを有するものでもよい。
【0018】
記憶部30には、色測定装置1を制御する各種プログラムや、表示装置2に表示させる教示画像や計測画像のデータなどが記憶されている。
【0019】
撮像部40は、3つのモノクロカメラ41,42,43を備えている。これらモノクロカメラ41〜43には、三刺激値の3つのフィルターであるXフィルター44X、Yフィルター44Y、およびZフィルター44Zがそれぞれ1つずつ設けられている。
モノクロカメラ41〜43は、画像処理部50に接続されて制御される。
【0020】
画像処理部50は、撮像部40を制御し、撮像部40で撮像した画像を処理する。
この画像処理部50は、カメラ制御部51と、測定領域認識部52と、色測定部53と、色校正値算出部54と、色補正値算出部55とを有する。
【0021】
カメラ制御部51は、モノクロカメラ41〜43を制御し、表示装置2に表示される画像を撮像させ、その撮像データをモノクロカメラ41〜43から取得する。なお、カメラ制御部51は、3つのモノクロカメラ41〜43を同期させて前記画像を同時に撮像させる。
【0022】
測定領域認識部52は、表示装置2に表示された図2に示すような教示画像60を、撮像部40のモノクロカメラ41〜43で撮像させ、得られた撮像教示画像をそれぞれ画像処理する。
ここで、教示画像60は、複数、例えば本実施形態では16個の白色の明るい測定領域61と、16個の測定領域61を格子状に分割する黒色の暗い非測定領域62を有している。なお、この図2は、説明の都合上、各測定領域61を特定するための識別番号a1〜a16を付す。
この測定領域認識部52における画像処理としては、モノクロカメラ41〜43で得られた画像の輝度データを所定の閾値と比較し、例えば教示画像60の複数の測定領域61を示す明るい部分を「1」,測定領域61を区分する非測定領域62を示す暗い部分を「0」とする二値画像に変換する二値化処理が例示できる。
そして、測定領域認識部52は、この二値化処理により、モノクロカメラ41〜43毎に測定領域61を認識し、記憶部30へ適宜記憶させる。
【0023】
具体的には、モノクロカメラ41〜43で教示画像60をそれぞれ撮像して得られた撮像教示画像は、各モノクロカメラ41〜43の位置と表示装置2との位置関係から、例えば図3〜図5に示すように、それぞれ歪んだ状態で撮像される。具体的には、モノクロカメラ41で取得した撮像教示画像は、図3に示すXカメラ画像60Xのように歪む。また、モノクロカメラ42で取得した撮像教示画像は、図4に示すYカメラ画像60Yのように歪む。さらに、モノクロカメラ43で取得した撮像教示画像は、図5に示すZカメラ画像60Zのように歪む。
なお、図3〜図5は、説明の都合上、教示画像60の測定領域61に対応する各測定領域61X,61Y,61Zに、教示画像60に対応して識別番号a1〜a16を付す。
これら歪んだ状態のXカメラ画像60X、Yカメラ画像60Y、Zカメラ画像60Zを二値化処理することで、Xカメラ画像60X、Yカメラ画像60Y、Zカメラ画像60Zの各測定領域61X,61Y,61Zが認識される。
【0024】
色測定部53は、表示装置2に表示される色測定対象の計測画像を、カメラ制御部51の制御により撮像部40のモノクロカメラ41〜43で撮像させる。そして、色測定部53は、この撮像した計測画像において、測定領域認識部52で認識した測定領域61X,61Y,61Zに対応する計測領域毎の色データを取得する。具体的には、撮像した計測画像の各計測領域に含まれている全画素の輝度データの平均値を色測定値(X特性値、Y特性値、Z特性値)として取得する。測定した計測領域毎の色測定値は、記憶部30に適宜記憶される。
【0025】
より具体的には、例えばXカメラ画像60Xの識別番号a1の測定領域の2値画像をX(a1)とし、識別番号a1の測定領域内の総画素数をNa1とする。
また、計測画像をモノクロカメラ41〜43で撮像して得られた画像データをX1,Y1,Z1とする。
この場合、色測定部53は、計測画像X1における識別番号a1の測定領域に対応する計測領域のX特性値を、以下の式1に示すように算出する。
【0026】
[式1]
a1領域X特性値=Σ(X1∩X(a1))/Na1 …(1)
【0027】
すなわち、計測画像X1と、測定領域の2値画像X(a1)との積を求めると、計測画像X1において、前記識別番号a1の測定領域に対応する計測領域内の画素データが抽出される。そして、この抽出された画素データの輝度値を積算し、その領域内の総画素数(Na1)で除算することで、その領域における平均輝度値がX特性値となる。
同様の処理を行うことで、計測画像X1におけるa1〜a16の各領域のX特性値、計測画像Y1におけるa1〜a16の各領域のY特性値、計測画像Z1におけるa1〜a16の各領域のZ特性値を求めることができる。従って、a1〜a16の各領域のX,Y,Zの特性値が、各領域の色測定値となる。
【0028】
色校正値算出部54は、色測定部53で算出された色測定値を校正するための色校正値を算出する。具体的には、表示装置2に表示された画像を、モノクロカメラ41〜43で測定して得られた色測定値と、基準色度計としての校正用基準色彩輝度計70で測定した際の色基準値とに基づいて、モノクロカメラ41〜43毎の測定した色測定値を色基準値と同値にする色校正値を算出する。
この際、表示装置2に教示画像60を表示し、色測定部53で各測定領域61毎の色測定値を求めるとともに、各測定領域61を校正用基準色彩輝度計70で測定した色基準値とを求め、各測定領域毎の色校正値を算出すれば、より精度の高い校正が可能となる。
この色校正値は、具体的には色基準値に対する色測定値の差分(色基準値から色測定値を引いた値)として算出される。色校正値算出部54は、この差分を色校正値とし記憶部30に記憶する。
【0029】
色補正値算出部55は、色校正値算出部54で算出した色校正値に基づいて、色測定部53で測定した色測定値を補正する。
具体的には、色補正値算出部55は、計測画像の各計測領域の色測定値に色校正値を加算し、各計測領域の色補正値(校正された色測定値)を算出する。
さらに、色補正値算出部55は、算出した各計測領域の色補正値を、測定結果として記憶部30に記憶するとともに、色データとして、画面表示や印刷出力などにより出力する。例えば、前記X,Y,Zの特性値から、色度や輝度を求めて色データとして出力する。また、各計測領域毎の色データのばらつきを色均一性の評価として、画面表示や印刷出力などにより出力する。
ユーザーは、これらの測定結果に基づいて、表示装置2を評価し、表示状態を調整する。
【0030】
[色測定方法]
次に、色測定装置1を用いた色測定方法を図面に基づいて説明する。
本実施形態に係る色測定方法は、図6に示す測定領域を設定する測定領域設定処理と、図7に示す色測定・補正処理とを実施する。なお、複数台の表示装置2を検査する場合、図6の測定領域設定処理は、同一種類の表示装置2を検査する場合には、最初に1回だけ行えばよい。その後は、各表示装置2に対して、図7の色測定・補正処理のみを行えばよい。
【0031】
(測定領域設定処理)
まず、測定領域設定処理について図6のフローチャートに基づいて説明する。
まず、事前準備として、3つのモノクロカメラ41〜43により撮像される被測定位置に、表示装置2を設置する。さらに、表示装置2を色測定装置1の信号発生部20に接続する。
この状態で、最初に教示画像表示制御工程S1が実施される。
この教示画像表示制御工程S1では、制御部10は記憶部30から教示画像60を読み出し、所定の制御信号を信号発生部20へ出力する。そして、信号発生部20は、表示制御信号を出力し、表示装置2に教示画像60を表示させる。
【0032】
次に、教示画像撮像工程S2が実施される。教示画像撮像工程S2では、カメラ制御部51が3つのモノクロカメラ41〜43を制御して、表示装置2に表示された教示画像60を同時に撮像する。この撮像により撮像教示画像であるXカメラ画像60X、Yカメラ画像60YおよびZカメラ画像60Zをそれぞれ取得する。これらXカメラ画像60X、Yカメラ画像60YおよびZカメラ画像60Zは、記憶部30に記憶される。
【0033】
次に、測定領域認識工程S3が実施される。測定領域認識工程S3では、教示画像撮像工程S2で取得したXカメラ画像60X、Yカメラ画像60YおよびZカメラ画像60Zをそれぞれ画像処理、例えば二値化処理する。この二値化処理により、Xカメラ画像60X、Yカメラ画像60YおよびZカメラ画像60Z毎の測定領域61X,61Y,61Zを認識する認識工程S31が実施される。
認識工程S31で認識した各測定領域61X,61Y,61Zには、ラベリング処理により、図3〜図5に示すように、教示画像60の測定領域61に対応して、図面中の左上から右側に上段から下段へ識別番号a1、a2、…、a16が順次付される。
次に、認識工程S31で認識したXカメラ画像60X、Yカメラ画像60YおよびZカメラ画像60Z毎の測定領域61X,61Y,61Zを、記憶部30に記憶させる記憶工程S32が実施される。このようにして、モノクロカメラ41〜43毎に測定領域61X,61Y,61Zが設定される。
【0034】
次に、カメラ補正工程S4が実施される。カメラ補正工程S4では、校正用基準色彩輝度計70を用いて、教示画像60の各測定領域61における色基準値を測定した測定データを画像処理部50の色校正値算出部54で取得させて、記憶部30に記憶させておく。
そして、色校正値算出部54は、色測定部53により、測定領域認識工程S3で認識した教示画像60のXカメラ画像60X、Yカメラ画像60YおよびZカメラ画像60Z毎の測定領域61X,61Y,61Zにおける色測定値をそれぞれ測定し、記憶部30へ記憶する。そして、色校正値算出部54は、予め記憶された色基準値から測定した色測定値を引いて色校正値を算出し、記憶部30に記憶させる。以上により、カメラ補正工程S4が終了し、測定領域設定処理が終了する。
【0035】
(色測定・補正処理)
次に、色測定・補正処理について図7のフローチャートに基づいて説明する。
本実施形態の色測定・補正処理は、表示装置2に表示された計測画像の色を多点で測定し、さらに表示装置2の色均一性の評価をする。
この色測定・補正処理では、図7に示すように、まず、計測画像表示工程S11が実施される。計測画像表示工程S11では、既に設置された表示装置2に色測定のための計測用の計測画像を表示させる。
【0036】
次に、計測画像撮像工程S12が実施される。計測画像撮像工程S12では、表示されている計測画像を3つのモノクロカメラ41〜43で同時に撮像し、各モノクロカメラ41〜43毎の撮像計測画像を取得する。取得された撮像計測画像は、それぞれ記憶部30に記憶される。
【0037】
次に、色測定工程S13が実施される。色測定工程S13は、計測画像撮像工程S12で取得した撮像計測画像において、測定領域61X,61Y,61Zに対応する計測領域の画像データを抽出し、前記式1に基づき、各計測領域のX特性値、Y特性値、Z特性値からなる色測定値を算出する。
【0038】
次に、画像処理工程S14が実施される。画像処理工程S14では、色補正値算出部55が、色測定工程S13で取得した各計測領域の色測定値に、カメラ補正工程S4で取得した色校正値をそれぞれ加算して色補正値を算出する。
さらに、色補正値算出部55は、算出した各計測領域の色補正値を、測定結果として記憶部30に記憶するとともに、色度や輝度などの色データとして、画面表示や印刷出力などにより出力する。また、各計測領域毎の色データのばらつきを色均一性の評価として、画面表示や印刷出力などにより出力する。
【0039】
以上により、1台目の表示装置2の色測定・補正処理が終了する。同機種の表示装置2を続けて検査する場合には、図7の色測定・補正処理のみを繰り返せばよい。
一方、機種が異なる表示装置2を検査する場合には、例えば、表示装置2のサイズなどが変わると、各モノクロカメラ41〜43で撮像した画像の歪み具合も変化して、測定領域61X,61Y,61Zも変わるため、図6の測定領域設定処理から再度実施すればよい。
【0040】
[実施形態の作用効果]
上述したように、上記実施形態では、複数の測定領域61と測定領域以外の非測定領域とを異なる色度または輝度で表す教示画像60を表示装置2に表示させて撮像し、画像処理して測定領域61を認識する。そして、表示装置2に計測画像を表示させて撮像し、撮像した計測画像における既に認識した測定領域61に対応した計測領域の色を測定する。
このことにより、計測画像における計測領域を設定するためのユーザーによる入力操作が不要となり、表示装置2の計測画像を多点測定する計測領域を自動的に、かつ、高精度に設定できる。このため、計測領域の設定作業を容易にかつ短時間で行える。そして、測定したい箇所や領域は、測定領域61および非測定領域62を異なる色度または輝度で描画した教示画像60を作成するのみでよく、測定領域61の変更も容易にできる。
【0041】
また、本実施形態では、3つのモノクロカメラ41〜43で同時に撮像するので、各表示色で順次画像走査する必要がなく、時間短縮が図れる。さらに、フリッカーの影響を防止するために各表示色で1秒以上測定することにより測定時間が長くなるという不都合も防止できる。このように、三刺激値の3つのXフィルター44X、Yフィルター44YおよびZフィルター44Zを3つのモノクロカメラ41〜43に1つずつ設けるので、色の測定でも安価なモノクロカメラ41〜43を用いることができ、測定時間も短縮できる。
【0042】
また、計測領域毎の色測定値を、校正用基準色彩輝度計70で測定して得られる色基準値に基づく色校正値で校正(補正)して、色補正値を算出している。このため、色校正値で校正しない場合に比べて、より正確な色測定値を求めることができる。また、校正用基準色彩輝度計70による色校正値の算出は、最初のみ行えば良く、その後は、モノクロカメラ41〜43による撮像のみで色を測定できるため、校正用基準色彩輝度計70のみで測定する場合に比べて測定時間も短くできる。
【0043】
[実施形態の変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
すなわち、図2に示す16分割の教示画像60を用いて説明したが、測定領域としては格子状に分割された16箇所に限られるものではない。例えば図8に示すように、ANSI(American National Standards Institute)215−1992で規定された測定点画像である教示画像60を用いて13箇所の円形領域を測定領域61として測定する構成としてもよい。さらに、例えば図9に示すように、884箇所に細かく格子状に分割された測定領域61を示す教示画像60を用いてもよい。なお、この図9では、測定領域61を黒色で表示し、非測定領域62として白色で表示する形態としている。これらのように、測定したい測定領域61を点あるいは領域で適宜示す各種形態の教示画像60を利用できる。
また、画像処理として二値化処理して説明したが、この限りではなく、色度および輝度の少なくとも一方が被測定領域とは異なる測定領域を認識できる各種画像処理を適用できる。
【0044】
そして、撮像部40として、三刺激値の3つのXフィルター44X、Yフィルター44YおよびZフィルター44Zが1つずつ装着された3つのモノクロカメラ41〜43を用いて説明したが、この限りではない。例えば、1つのカラーカメラを用いて、教示画像60や計測画像を撮像し撮像画像を取得する構成としてもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、図6に示す測定領域設定処理でカメラ補正工程S4を実施し、図7に示す色測定・補正処理で、色測定値を校正する画像処理工程S14を実施して説明したが、色校正値を算出せず、色測定工程S13で測定された色測定値により、色均一性の評価等を行ってもよい。
【0046】
さらに、前記実施形態では、図6に示す測定領域設定処理でカメラ補正工程S4を実施して色校正値を算出していたが、例えば、最初の1台目の表示装置2における色測定・補正処理において、色校正値の算出を行ってもよい。
【0047】
また、信号発生部20を設け、この信号発生部20から信号を表示装置2へ送信して表示装置2で教示画像60を表示させる構成を例示したが、この限りではない。
例えば、表示装置2に内蔵OSD2Aと切替部2Bとが設けられている場合には、切替部2Bの切替により、内蔵OSD2Aによって教示画像や計測画像を表示させるようにしてもよい。
さらに、表示装置2に内蔵OSD2Aが設けられている場合には、信号発生部20を省略し、常に、内蔵OSD2Aによって表示装置2に教示画像や計測画像を表示させてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…色測定装置、2…表示装置、2A…教示画像としての内蔵OSD、2B…画像表示制御部として機能する切替部、20…画像表示制御部としての信号発生部、40…撮像部、41〜43…カメラであるモノクロカメラ、44X…フィルターであるXフィルター、44Y…フィルターであるYフィルター、44Z…フィルターであるZフィルター、51…カメラ制御部、52…測定領域認識部、53…色測定部、54…色校正値算出部、60…教示画像、61…測定領域、62…非測定領域、70…基準色度計としての校正用基準色彩輝度計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置に表示された画像を撮像する撮像部と、
複数の測定領域が設定された教示画像または色測定用の計測画像を選択して前記表示装置に表示させる画像表示制御部と、
前記撮像部を制御して前記表示装置に表示された画像を撮像させるカメラ制御部と、
前記撮像部で撮像した教示画像を画像処理して前記測定領域を認識する測定領域認識部と、
前記撮像部で撮像した計測画像における前記測定領域認識部で認識した測定領域に対応する計測領域毎の色を測定する色測定部と、を備え、
前記教示画像は、前記複数の測定領域と、これら測定領域以外の非測定領域とが、異なる色度または輝度で表され、
前記測定領域認識部は、前記測定領域および非測定領域における色度または輝度の違いに基づいて、前記撮像部で撮像した教示画像を画像処理することで前記測定領域を認識する
ことを特徴とする色測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の色測定装置において、
前記撮像部は、前記表示装置に表示された画像を撮像する3つのカメラと、これらカメラに1つずつ設けられる三刺激値の3つのフィルターと、を備え、
前記カメラ制御部は、前記表示装置に表示された画像を前記カメラで同時に撮像させる制御を行い、
前記測定領域認識部は、前記各カメラで撮像した教示画像をそれぞれ画像処理して前記測定領域をそれぞれ認識し、
前記色測定部は、前記各カメラで撮像した計測画像における前記測定領域認識部で認識した測定領域に対応する計測領域毎の色をそれぞれ測定する
ことを特徴とする色測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の色測定装置において、
前記色測定部で測定した計測領域毎の色の測定値と、前記計測画像の各計測領域を基準色度計で測定して得られる色基準値とに基づいて、色校正値を算出する色校正値算出部と、
前記色校正値算出部で算出した色校正値に基づいて、前記色測定部で測定した測定値を補正して色補正値を算出する色補正値算出部と、を備えた
ことを特徴とする色測定装置。
【請求項4】
複数の測定領域およびこれら測定領域とは異なる色度または輝度で表される非測定領域を有する教示画像を、表示装置に表示させる教示画像表示制御工程と、
この教示画像表示制御工程で前記表示装置に表示された教示画像を撮像部により撮像して撮像教示画像を得る教示画像撮像工程と、
この教示画像撮像工程で取得した撮像教示画像を、前記測定領域および非測定領域における色度または輝度の違いに基づいて画像処理することで前記測定領域を認識する測定領域認識工程と、
前記表示装置に計測画像を表示させる計測画像表示工程と、
前記計測画像表示工程で表示された計測画像を前記撮像部により撮像して撮像計測画像を得る計測画像撮像工程と、
この計測画像撮像工程で取得した撮像計測画像における前記測定領域認識工程で認識した測定領域に対応する計測領域毎の色を測定する色測定工程と、を備える
ことを特徴とする色測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−220823(P2011−220823A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90160(P2010−90160)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】