説明

色調に優れたマレイミド・オレフィン共重合体及びその製造方法

【課題】 色調悪化の原因となる未反応マレイミド単量体の含有量が少なく、光学材料、電子部品等に利用可能な高透明性マレイミド・オレフィン共重合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 炭素数2〜4のオレフィン残基単位及びマレイミド単量体残基単位よりなるマレイミド・オレフィン共重合体であって、未反応マレイミド単量体の含有量が1500ppm以下である高透明性マレイミド・オレフィン共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調に優れたマレイミド・オレフィン共重合体に関するものであり、さらに詳しくは、色調悪化の原因となる未反応マレイミド単量体の含有量が少なく、光学材料、電子部品等に利用可能な高透明性マレイミド・オレフィン共重合体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マレイミド共重合体は、透明性、耐熱性及び機械特性に優れた樹脂として、光学材料、電子部品等幅広い用途での展開が期待されており、一般的にラジカル共重合することにより製造され、その製造方法として多くの製造方法が提案されている(例えば特許文献1,2参照。)。
【0003】
【特許文献1】米国特許第2971939号公報
【特許文献2】特開2006−036914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に提案された方法においては、マレイミド単量体およびオレフィン単量体を重合し、貧溶剤に沈殿させることでマレイミド・オレフィン共重合体を単離しており、該方法でもマレイミド単量体の除去が不十分であるために残存するマレイミド単量体により該共重合体の色相が悪化するという課題を有する。また、マレイミド・オレフィン共重合体を貧溶剤に沈殿させる際、多量の貧溶剤を使用することで、貧溶剤の使用量が多くなり製造コストが高くなる、貧溶剤タンクの容量が大きくなり設備費が高くなる等の課題を有する。
【0005】
また、特許文献2に提案された方法においては、マレイミド・オレフィン共重合体の共重合組成を制御するため、重合中にマレイミド単量体を追加してマレイミド単量体とオレフィン単量体の残存比を特定の範囲内になるように保持しており、追加されたマレイミド単量体が多量に残存する結果、マレイミド・オレフィン共重合体の色調を悪化させるという課題を有する。
【0006】
そこで、本発明は、残存する未反応マレイミド単量体の含有量が低いことから色調に優れたマレイミド・オレフィン共重合体及び該マレイミド・オレフィン共重合体を安価に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意検討した結果、マレイミド・オレフィン共重合体中に含まれる未反応マレイミド単量体が色調悪化の原因となること、該マレイミド単量体の含有量を特定量以下とすることで、色調に優れる高透明性マレイミド・オレフィン共重合体となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、炭素数2〜4のオレフィン残基単位及び下記一般式(1)で示されるマレイミド単量体残基単位よりなるマレイミド・オレフィン共重合体であって、下記一般式(2)で示される未反応マレイミド単量体の含有量が1500ppm以下であることを特徴とする高透明性マレイミド・オレフィン共重合体に関するものである。
【0009】
【化1】

(1)
(ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を示す。)
【0010】
【化2】

(2)
(ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を示す。)
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は、上記一般式(2)で示される未反応マレイミド単量体の含有量が1500ppm以下である炭素数2〜4のオレフィン残基単位及び上記一般式(1)で示されるマレイミド単量体残基単位よりなるマレイミド・オレフィン共重合体である。
【0012】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体を構成する炭素数2〜4個のオレフィン残基単位としては、例えばエチレン残基単位、プロピレン残基単位、1−ブテン残基単位、2−ブテン残基単位、イソブテン残基単位等が挙げられ、その中でも容易に高分子量を有し、耐熱性及び機械特性に優れる高透明性マレイミド・オレフィン共重合体が得られることからイソブテン残基単位が好ましい。また、該オレフィン残基単位は、1種または2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0013】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体を構成する該マレイミド単量体残基単位のRは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基を示し、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等を挙げることができ、シクロアルキル基としては、例えばシクロブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。そして、炭素数が6を越えるアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基である場合、排除体積効果が大きく共重合反応が進行し難く共重合体を得ることが困難となる。該マレイミド単量体残基単位としては、例えばマレイミド単量体残基単位、N−メチルマレイミド単量体残基単位、N−エチルマレイミド単量体残基単位、N−プロピルマレイミド単量体残基単位、N−ブチルマレイミド単量体残基単位、N−ヘキシルマレイミド単量体残基単位、N−シクロプロピルマレイミド単量体残基単位、N−シクロブチルマレイミド単量体残基単位、N−シクロヘキシルマレイミド単量体残基単位、N−フェニルマレイミド単量体残基単位等が挙げられ、その中でも、容易に耐熱性、機械特性に優れた高透明性マレイミド・オレフィン共重合体が得られることからN−フェニルマレイミド単量体残基単位が好ましい。また、該マレイミド単量体残基単位は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0014】
そして、本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の具体的例示としては、例えばマレイミド・エチレン共重合体、マレイミド・1−ブテン共重合体、マレイミド・イソブテン共重合体、N−メチルマレイミド・エチレン共重合体、N−メチルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体、N−エチルマレイミド・エチレン共重合体、N−エチルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−エチルマレイミド・イソブテン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・エチレン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・イソブテン共重合体、N−フェニルマレイミド・エチレン共重合体、N−フェニルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体等を挙げることができ、その中でも容易に高分子量を有し、耐熱性及び機械特性に優れる高透明性マレイミド・オレフィン共重合体となることからN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体であることが好ましい。
【0015】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は、該マレイミド単量体残基単位を誘導する上記一般式(2)で示されるマレイミド単量体の未反応成分の含有量が1500ppm以下となることから優れた透明性を達成するものである。未反応マレイミド単量体の含有量が1500ppmを越える場合、本発明の目的を達成することができない。ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基を示し、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等を挙げることができ、シクロアルキル基としては、例えばシクロブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。該マレイミド単量体としては、例えばマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドを挙げることができる。
【0016】
また、本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は、特に色調に優れたものとなることから、該マレイミド・オレフィン共重合体/アクリロニトリル・スチレン共重合体=43/57(重量%)からなる厚さ0.100mmのフィルムを調製し、カラーコンピューターにて測定した該フィルムの黄色度が1以下となるものが好ましい。
【0017】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は、耐熱性及び機械特性にも優れるマレイミド・オレフィン共重合体となることから、該マレイミド単量体残基単位量55〜65モル%を含有するマレイミド・オレフィン共重合体であることが好ましい。また、成形性、機械特性、色相等に優れるものとなることから、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCという)を用い、N−メチルピロリドンを溶媒とし40℃の温度で測定した際の標準ポリスチレン換算値の重量平均分子量(Mw)が、1×10〜3×10であることが好ましい。
【0018】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の製造方法としては、該未反応マレイミド単量体の含有量が1500ppm以下であるマレイミド・オレフィン共重合体を製造することが可能であれば如何なる製造方法を用いてもよく、その中でも特に効率よく本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体を製造することが可能となる製造方法の具体的例示を以下に説明する。
【0019】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は、炭素数2〜4個のオレフィン単量体、上記一般式(2)で示されるマレイミド単量体の重合を行いマレイミド・オレフィン共重合体の製造を行うに際し、該マレイミド単量体の仕込み量に対するマレイミド単量体の重合反応率が99%以上、好ましくは99.5%以上に到達するまで重合を行うことにより、特別な後処理等を必要とせず容易に製造することが可能となる。
【0020】
ここで、炭素数2〜4個のオレフィン単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン等が挙げられ、その中でも容易に高分子量を有し、耐熱性及び機械特性に優れる高透明性マレイミド・オレフィン共重合体が得られることからイソブテンが好ましい。また、該オレフィン単量体は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。また、該マレイミド単量体としては、未反応マレイミド単量体と同様のものを例示することができる。
【0021】
この際のマレイミド単量体とオレフィン単量体の共重合を行う際のオレフィン単量体の使用量としては、マレイミド・オレフィン単量体が得られる限りにおいて特に制限は無いが、生産効率よく高分子量の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体を製造できることから、マレイミド単量体:オレフィン単量体=1:0.7〜1:2(モル比)であることが好ましい。
【0022】
また、重合方法としては、マレイミド・オレフィン共重合体が得られる限りにおいて特に制限は無いが、その中でも乳化剤、分散剤の透明性への影響や、反応器壁面へのスケール付着による伝熱能力の低下を懸念する必要が無いことから溶液重合が好ましい。溶液重合後のポリマーの回収方法としては、マレイミド・オレフィン共重合体が得られる限り特に制限は無く、例えば、溶液重合後に貧溶剤により沈殿させ濾過・乾燥する方法;重合後のマレイミド・オレフィン共重合体溶液を減圧乾燥することで溶剤を除去する方法等が挙げられ、そのなかでも多量の溶剤を必要とせず、製造設備費が安くなるため、減圧乾燥によりマレイミド・オレフィン単量体を回収する方法が好ましい。減圧乾燥により溶剤を除去する方法としては、重合後のポリマー溶液を薄膜状に展開し乾燥する方法、ベントタイプスクリュー押出機により乾燥する方法等が挙げられる。
【0023】
重合反応を行う際には、ラジカル重合開始剤を用いればよく、該ラジカル重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレ−ト、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤が挙げられる。該ラジカル重合開始剤は仕込み段階、昇温中、反応中に適宜添加すればよい。また、ラジカル共重合反応を行う際の重合温度は、該ラジカル重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定すればよく、一般的には40℃〜120℃の範囲で行うことが好ましい。
【0024】
重合溶媒としては、公知の重合溶媒を用いることができ、例えば水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキセンオキシド等の環状エーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸エステル類又は芳香族溶媒とアルコ−ルの混合溶媒等が挙げられる。そして、重合溶媒量としては、該オレフィン単量体及び該マレイミド単量体の総単量体量に対して2〜5倍の重量であることが好ましい。
【0025】
また、分子量の調節は、単量体濃度、ラジカル重合開始剤量、重合温度等の条件設定により調整することが可能である。また、連鎖移動剤の添加により調整してもよく、そのような連鎖移動剤としては、例えばラウリルメルカプタン、硫黄等の硫黄化合物;アミン、尿素等の窒素化合物;ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;α−メチルスチレンのダイマー等が例示できる。
【0026】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は、本発明の目的を逸脱しない範囲内で他の樹脂とブレンドしても良い。例えば、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−メチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレート−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は、色調に優れたものであり、光学部材用樹脂材料として適したものである。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
〜マレイミド・オレフィン共重合体の構造確認〜
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JSX)のH−NMR測定により行い、その構造確認を行った。
【0030】
〜マレイミド単量体の含有量の測定〜
クロロホルムを溶媒としてGPC(東ソー株式会社製、商品名HLC−8020GPC)を用いて40℃で測定し、波長316nmの吸収強度によりマレイミド・オレフィン共重合体中のマレイミド単量体の含有量を測定した。
【0031】
〜重量平均分子量(Mw)の測定〜
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒としてGPC(東ソー株式会社製、商品名HLC−8020GPC)を用いて40℃で測定し、得られた溶出曲線により標準ポリスチレン換算値として測定した。
【0032】
〜色調(黄色度の測定)〜
得られたマレイミド・オレフィン共重合体19.6gをアクリロニトリル・スチレン共重合体(ダイセル化学製、商品名セビアン080)26.0gと塩化メチレン60gと混合し、スターラーにより溶解させた。この溶液を流延法により製膜して厚み0.100mmのフィルムとし、カラーコンピューター(スガ試験機株式会社製、商品名SMカラーコンピューター)を用い、黄色度(YI)の測定を行った。
【0033】
実施例1
撹拌機、窒素導入管、オレフィン導入管、温度計および脱気管の付いた3リットルオートクレーブ中にN−フェニルマレイミド327g(1.89モル)、ラジカル重合開始剤として72重量%t−ブチルパーオキシピバレート0.9gおよび重合溶媒としてメチルエチルケトン603gを仕込み、窒素で数回パージした後、オレフィン導入管から液化イソブテン103g(1.84モル)を仕込み、60℃まで昇温して11時間反応を行った。表1に重合条件を示す。
【0034】
重合反応終了後、該重合溶液をテフロン(登録商標)シート上に薄膜状に展開し、40℃で真空乾燥を実施した。N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体フレーク390gを回収し、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造、重量平均分子量及び残存N−フェニルマレイミドの含有量の測定を行った。
【0035】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体は、N−フェニルマレイミド残基単位60モル%を含有し、Mwが150000であった。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体はN−フェニルマレイミド単量体を1200ppm含有するものであった。
【0036】
N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造及び残存N−フェニルマレイミドの含有量よりN−フェニルマレイミドの重合反応率を算出したところ99.7%であった。
【0037】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体をアクリロニトリル・スチレン共重合体と混合し、フィルムのYIを測定した。得られたフィルムのYIは1.0と色調に優れていた。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0038】
比較例1
重合時間11時間の代わりに、重合時間を10時間とした以外は、実施例1と同様の方法によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の製造を行った。
N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体フレーク380gを回収し、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造、重量平均分子量及び残存N−フェニルマレイミドの含有量の測定を行った。
【0039】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体は、N−フェニルマレイミド残基単位61モル%を含有し、Mwが150000であった。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体はN−フェニルマレイミドを5000ppm含有するものであった。
【0040】
N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造及び残存N−フェニルマレイミドの含有量よりN−フェニルマレイミドの重合反応率を算出したところ98.0%であった。
【0041】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体をアクリロニトリル・スチレン共重合体と混合し、フィルムのYIを測定した。得られたフィルムのYIは2.0と色調に劣るものであった。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0042】
実施例2
実施例1と同様のオートクレーブ中にN−フェニルマレイミド256g(1.48モル)、ラジカル重合開始剤として72重量%t−ブチルパーオキシピバレート0.9gおよび重合溶媒としてメチルエチルケトン595gを仕込み、窒素で数回パージした後、オレフィン導入管から液化イソブテン149g(2.66モル)を仕込み、60℃まで昇温して5時間反応を行った。表1に重合条件を示す。
【0043】
重合反応終了後、該重合溶液をテフロン(登録商標)シート上に薄膜状に展開し、40℃で真空乾燥を実施した。N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体フレーク319gを回収し、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造、重量平均分子量及び残存N−フェニルマレイミドの含有量の測定を行った。
【0044】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体は、N−フェニルマレイミド残基単位56モル%を含有し、Mwが220000であった。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体はN−フェニルマレイミドを1000ppm含有するものであった。
【0045】
N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造及び残存N−フェニルマレイミドの含有量よりN−フェニルマレイミドの重合反応率を算出したところ99.8%であった。
【0046】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体をアクリロニトリル・スチレン共重合体と混合し、フィルムのYIを測定した。得られたフィルムのYIは0.9と色調に優れていた。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0047】
比較例2
重合時間5時間の代わりに、重合時間を4時間とした以外は、実施例1と同様の方法によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の製造を行った。
【0048】
N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体フレーク308gを回収し、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造、重量平均分子量及び残存N−フェニルマレイミドの含有量の測定を行った。
【0049】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体は、N−フェニルマレイミド残基単位57モル%を含有し、Mwが220000であった。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体はN−フェニルマレイミドを4700ppm含有するものであった。
【0050】
N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造及び残存N−フェニルマレイミドの含有量よりN−フェニルマレイミドの重合反応率を算出したところ98.5%であった。
【0051】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体をアクリロニトリル・スチレン共重合体と混合し、フィルムのYIを測定した。得られたフィルムのYIは1.8と色調に劣るものであった。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数2〜4のオレフィン残基単位及び下記一般式(1)で示されるマレイミド単量体残基単位よりなるマレイミド・オレフィン共重合体であって、下記一般式(2)で示される未反応マレイミド単量体の含有量が1500ppm以下であることを特徴とする高透明性マレイミド・オレフィン共重合体。
【化1】

(1)
(ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を示す。)
【化2】

(2)
(ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を示す。)
【請求項2】
N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体。
【請求項3】
炭素数2〜4個のオレフィン単量体、上記一般式(2)で示されるマレイミド単量体の重合を行いマレイミド・オレフィン共重合体の製造を行うに際し、該マレイミド単量体の仕込み量に対するマレイミド単量体の重合反応率が99%以上に到達するまで重合を行うことを特徴とする高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項4】
重合反応率99%以上に到達した後、さらに減圧乾燥により回収することを特徴とする請求項3に記載の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項5】
重合反応率が99.5%に到達するまで重合を行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2008−156399(P2008−156399A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343997(P2006−343997)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】