説明

色調整可能な照明素子

色調整可能な照明素子について示した。当該色調整可能な照明素子は、誘電体バリア放電ランプの組立体を有し、各ランプには、希ガスまたは混合希ガスが充填され、Xe低圧放電によって、不可視UV放射線が発生し、該放射線は、電球の内面にコーティングされた、一つあるいはいくつかの蛍光体によって可視光に変換され、いくつかの誘電体バリア放電ランプの前記可視光は、光学手段によって混合され、均一に放射される。そのような誘電体バリア放電ランプの組立体は、任意の色温度を有する白色光、および飽和着色光の発生に有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、誘電体バリア放電ランプの組立体を有する色調整可能な照明素子に関し、当該照明素子内で不可視UV線は、電球の内面にコーティングされた一つのまたはいくつかの蛍光体によって、可視光に変換される。
【背景技術】
【0002】
現在、拡散平面光を放射する照明素子は、広く利用されている。これらの照明素子では、色の種類を増やす方向に開発が進められている。一つのハウジング内において、いくつかの着色ランプを使用することによって、そのようなランプの光を光学手段によって混合することができ、使用色の比率を調整することによって、照明素子から放射される光の色点を変化させることが可能になる。この効果は、異なる種類のランプを用いることで得られる。しかしながらこれらのランプは、未だ多くの問題を抱えており、本発明ではこれらの問題が解決される。
【0003】
従来の照明システムの本質的な問題は、可視Hgスペクトルの含有比のため、着色ランプが飽和色を放射せず、得られる色範囲が制限されることである。また、そのようなランプは、ある程度までしか暗色化することができず、これは、これらのランプを使用する上で問題となる。
【0004】
ランプをLEDに置き換えた場合、飽和原色を得ることが可能となる。しかしながらLEDの放射バンドの半波値は低く、完全なCIE色三角の再現のためには、多くの異なるLED(赤、緑、青、橙黄、青緑)を用いなければならない。さらに、現在利用することのできるLEDの光収率は、未だ低く、これは、十分な明度を得るには、多くの数のLEDを使用する必要があることを意味する。この場合、LEDをベースとするシステムのコストが増大する。
【0005】
またカラーフィルタとともに使用される電球は、非効率的であり、関連する放熱の問題との複合的な影響により、大きな出力損失が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、以下の特性を有するシステムに対する要望がある:
高い色飽和度;小型形状;完全暗色化性;十分な寿命;良好な効率;単位ルーメン当たりの低価格化である。
【0007】
現在利用可能なシステムで、そのような条件を完全に満足するものは見当たらない。
【0008】
本発明は、各種光色の発光体または光タイルに、希ガスを含む誘電体バリア放電ランプを利用することを基本的特徴とする。これにより、希ガス誘電体バリア放電ランプの多くの利点を利用することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、誘電体バリア放電ランプの組立体を有する色調整可能な照明素子であって、各ランプには、希ガスまたは混合希ガスが充填され、Hg低圧放電によって、不可視UV放射線が発生し、該放射線は、電球の内面にコーティングされた、一つあるいはいくつかの蛍光体によって可視光に変換され、いくつかの誘電体バリア放電ランプの前記可視光は、光学手段によって混合され、均一に放射されることを特徴とする、色調整可能な照明素子が得られる。
【0010】
本発明による照明素子の特に好適な例では、混合希ガスは、キセノンとネオンを有する。そのような照明素子は、ほぼ優先的にUV光のみを放射し、このUV光は、蛍光体によって可視光に変換される。
【0011】
純キセノン(Xe2*−エキシマ−放電)が使用される場合、波長172nmと150nmのUV光が放射され、これは、プラズマが実質的に不可視であることを意味する。ネオンの混合体は、ネオンの量に応じて、放電ランプの点灯電圧を2kVから200Vまで低下することができる点で有意である(ペニング効果)。これにより、現在市販されているネオン放電ランプ用の電子駆動ユニットを使用することが可能となる。ただしキセノン比は、少なくとも10%である必要があり、これを満たさない場合、580から700nmの間のネオンの共鳴線も放射される。これは、青、緑または赤ランプの色の明瞭度を著しく低下させる。そのようなランプで、赤のスペクトル領域の光を放射する場合のみ、高いネオン濃度が使用される。
【0012】
使用蛍光体の性質に応じて、ランプは、蛍光体の発光のみによって定まる着色光を放射する。Xeエキシマプラズマのスペクトルは、可視光を含まないからである。その結果、好適な蛍光体を選定した場合(図8参照)、極めて高い色飽和度を得ることができる。キセノンまたはキセノン/ネオン放電の放射線(147、150、172nm)を有効に可視光に変換する蛍光体は、表1に示されている。
【0013】
【表1】

従って本発明の好適実施例では、赤、緑または青の光を放射する、いくつかの誘電体バリア放電ランプの組立体を有する色調整可能な照明素子であって、前記ランプには、一つのまたはいくつかの蛍光体が設置され、該蛍光体は、
2.1 赤:(Y,Gd)BO3:Eu、Y2O3:Eu、Y(V1-x-yPxNby)O4:Eu、GdMgB5O10:Ce,Mn、Mg4GeO5.5F:Mn、
2.2 緑: BaMgAl10O17:Eu,Mn、BaAl12O19:Mn、Zn2SiO4:Mn、LaPO4:Ce,Tb、(Y1-xGdx)BO3:Tb、InBO3:Tb、
2.3 青:Sr2P2O7:Eu、BaMgAl10O17:Eu、(Y1-xGdx)BO3:Ce、(Y1-xGdx)(V1-yPy)O4
の群から選定されることを特徴とする、色調整可能な照明素子が提供される。
【0014】
また好適な色調整可能な照明素子は、青または黄の光を放射する、いくつかの誘電体バリア放電ランプの組立体を有し、前記ランプには、一つのまたはいくつかの蛍光体が設置され、該蛍光体は、
3.1 青:BaMgAl10O17:Eu、(Y1-xGdx)BO3:Ce、(Y1-xGdx)(V1-yPy)O4
3.2 黄:(Y1-xGdx)3Al5O12:Ce、(Y1-xGdx)3(Al1-yGay)5O12:Ce、
の群から選定される。
【0015】
本発明のさらに別の好適例では、色調整可能な照明素子は、青緑または橙の光を放射する、いくつかの誘電体バリア放電ランプの組立体を有し、前記ランプには、一つのまたはいくつかの蛍光体が設置され、該蛍光体は、
4.1 青緑:BaMgAl10O17:Eu,Mn、
4.2 橙:(Sc1-xLux)BO3:Eu、(In1-xGdx)BO3:Eu、
の群から選定される。
【0016】
本発明の照明素子は、エネルギー効率が5から15%の間にあるため、カラーフィルタを用いた電球に比べて、より効率的であることは明らかである。ランプの放電は、極めて短い距離で生じるため、極めて多様なランプ形状を設計することが可能となる。これらのランプは、薄い管状であっても良く、大きな表面を有する平面型であっても良い。これらの特性によって、色調整可能な照明素子に極めて適した、電気変換放電ランプが提供される。
【0017】
本発明の照明素子の更なる利点は、各単一の誘電体バリア放電ランプの明度を独立に変化させることができることであって、これにより、個々に必要に応じて、照明素子の発光色を調整することが可能となる。さらに、適切な光学的フィルタ手段を使用することによって、得られる発光色を白色光が得られるように調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付図面を用いて、本発明をさらに説明する。
【0019】
(例1)青と黄の発光キセノン誘電体バリア放電ランプを備える光タイル
図6に示すように、孔−リット式光タイルには、青と黄の発光誘電体バリア放電ランプの組立体が設置されている。従来のアップ−フラッシュ−コーティング処理によって、青のランプには、蛍光体としてBaMgAl10O17:Eu(BAM)がコーティングされ、黄のランプには、(Y1-xGdx)3Al5O12:Ce(YAG)がコーティングされる。そのような光タイルのスペクトルは、図1に示されている。
【0020】
そのような光タイルの各ランプは、別個のドライバによって制御され、ランプの明度を独立に調整することができるという効果が得られる。従って、2つの着色誘電体バリア放電ランプの色座標によって定まる直線上に位置する各色点を調整することが可能となる(図2参照)。
【0021】
図1に示す調整された色点は、x=0.346でy=0.400であり、すなわち色温度は、約5100Kである。この調整で、演色は、Ra=70となる。
【0022】
本例の組立体を用いて、図2のBAM−ランプとYAG−ランプの色点間の直線上に位置する色点を暗色化することにより、全ての色点を調整することができる。
【0023】
光タイルの光色は、キセノン誘電体バリア放電ランプの暗色化に影響を受ける。ただし、異なる着色ランプの原色によって定まる色域内にある、そのような光色だけを再現することができる。
【0024】
黄色ランプが変更された場合、低い色温度に調整することの可能な光タイルを得ることも可能である。そのような目的の場合、黄色ランプは、(Y1-xGdx)3Al5O12:Ce(YAG)と、YVO4:Eu(YVE)またはY(V1-x-yPxNby)O4:Eu(YVPE)からなる混合蛍光体でコーティングされる。混合体の比率に応じて、色点は、BAMと、YAG/YVEまたはYAG/YVPEの混合体の色点によって定まる直線上に位置付けられる。
【0025】
(例2)赤、緑および青の発光キセノン誘電体バリア放電ランプを備える光タイル
図5に示す孔−リット式光タイルには、赤、緑および青の発光誘電体バリア放電ランプの組立体が設置される。アップ−フラッシュ−コーティング処理によって、青のランプには、蛍光体としてBaMgAl10O17:Eu(BAM)がコーティングされ、緑のランプには、蛍光体として(Y,Gd)BO3:Tb(YGBT)が、また赤のランプには、蛍光体として(Y,Gd)BO3:Eu(YGBE)がコーティングされる。
【0026】
各ランプは、別個のドライバによって制御され、各ランプの明度は、独立に調整することができる。これにより、各着色誘電体バリア放電ランプの色座標によって定まる、色三角内に位置する各色点の調整が可能となる。
【0027】
図3には、前記光タイルの色点、x=0.325、y=0.305を示す。すなわち色温度は約5900Kである。この調整では、色再現は、Ra=87である。この組立体を用いて、図4示すBAM−、YGBT−およびYGBE−ランプの色点で定まる三角内に位置する色点を暗色化することによって、全ての色点を調整することができる。
【0028】
図4には、前述の図3で説明した色三角を示す。
【0029】
図5には、赤、緑および青の発光キセノン誘電体バリア放電ランプのいくつかのクラスタを有する光分散板で構成された、「チャンネル−リット式バックライト」を備える光タイルを示す。光分散板は、拡散開放板で被覆される。
【0030】
図6には、光分散板で構成された「チャンネル−リット式バックライト」を備える光タイルを示す。光分散板には、各々が、黄および青の発光キセノン誘電体バリア放電ランプで構成された、いくつかのクラスタが設置される。光分散板は、拡散開放板で被覆される。
【0031】
図7には、光分散板で構成された「サイド−リット式バックライト」を備える光タイルを示す。光分散板には、黄および青のキセノン誘電体バリア放電ランプのクラスタが設けられ、これらのクラスタは、光分散板の対向する両側に設置される。光分散板は、拡散開放板で被覆される。
【0032】
図8には、図5乃至7のタイルに一次光源として使用される、キセノン誘電体バリア放電ランプの色点を示す。また、表2には、図8に使用される蛍光体の略称リストを示す。
【0033】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】蛍光体として、BaMgAl10O17:Euおよび(Y1-xGdx)3Al5O12:Ceを有するキセノン誘電体バリア放電ランプを有する、光タイルのスペクトルを示す図である。
【図2】キセノン誘電体バリア放電ランプを有する光タイルの、調整可能な色点を含む色三角を示す図である。
【図3】蛍光体として、BaMgAl10O17:Eu、(Y,Gd)BO3:Tbおよび(Y,Gd)BO3:Euを有するキセノン誘電体バリア放電ランプを有する光タイルのスペクトルを示す図である。
【図4】BaMgAl10O17:Eu(BAM)、(Y,Gd)BO3:Tb(YGBT)および(Y,Gd)BO3:Eu(YGBE)のいずれかがコーティングされた、キセノン誘電体バリア放電ランプを有する光タイルの、調整可能な色点を含む色三角を示す図である。
【図5】各々が、赤、緑および青の発光キセノン誘電体バリア放電ランプで構成されたいくつかのクラスタを有する、「チャンネル−リット式バックライト」を備える光タイルを示す図である。
【図6】各々が、黄および青の発光キセノン誘電体バリア放電ランプを有するいくつかのクラスタを有する、「チャンネル−リット式バックライト」を備える光タイルを示す図である。
【図7】各々が、黄および青の発光キセノン誘電体バリア放電ランプを有するいくつかのクラスタを有する、「サイド−リット式バックライト」を備える光タイルを示す図である。
【図8】図5乃至7の光タイルにおいて一次光源として使用される、キセノン誘電体バリア放電ランプの色点を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体バリア放電ランプの組立体を有する色調整可能な照明素子であって、各ランプには、希ガスまたは混合希ガスが充填され、Xeエキシマ放電によって、不可視UV放射線が発生し、該放射線は、電球の内面にコーティングされた、一つあるいはいくつかの蛍光体によって可視光に変換され、いくつかの誘電体バリア放電ランプの前記可視光は、光学手段によって混合され、均一に放射されることを特徴とする、色調整可能な照明素子。
【請求項2】
赤、緑または青の光を放射する、いくつかの誘電体バリア放電ランプの組立体を有し、前記ランプには、一つのまたはいくつかの蛍光体が設置され、該蛍光体は、
2.1 赤:(Y,Gd)BO3:Eu、Y2O3:Eu、Y(V1-x-yPxNby)O4:Eu、GdMgB5O10:Ce,Mn、Mg4GeO5.5F:Mn、
2.2 緑: BaMgAl10O17:Eu,Mn、BaAl12O19:Mn、Zn2SiO4:Mn、LaPO4:Ce,Tb、(Y1-xGdx)BO3:Tb、InBO3:Tb、
2.3 青:Sr2P2O7:Eu、BaMgAl10O17:Eu、(Y1-xGdx)BO3:Ce、(Y1-xGdx)(V1-yPy)O4
の群から選定されることを特徴とする請求項1に記載の、色調整可能な照明素子。
【請求項3】
青または黄の光を放射する、いくつかの誘電体バリア放電ランプの組立体を有し、前記ランプには、一つのまたはいくつかの蛍光体が設置され、該蛍光体は、
3.1 青:BaMgAl10O17:Eu、(Y1-xGdx)BO3:Ce、(Y1-xGdx)(V1-yPy)O4
3.2 黄:(Y1-xGdx)3Al5O12:Ce、(Y1-xGdx)3(Al1-yGay)5O12:Ce、
の群から選定されることを特徴とする請求項1に記載の、色調整可能な照明素子。
【請求項4】
青緑または橙の光を放射する、いくつかの誘電体バリア放電ランプの組立体を有し、前記ランプには、一つのまたはいくつかの蛍光体が設置され、該蛍光体は、
4.1 青緑:BaMgAl10O17:Eu,Mn、
4.2 橙:(Sc1-xLux)BO3:Eu、(In1-xGdx)BO3:Eu、
の群から選定されることを特徴とする請求項1に記載の、色調整可能な照明素子。
【請求項5】
前記各ランプの輝度は、適当な電子駆動ユニットによって、独立に変化させることができることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の、色調整可能な照明素子。
【請求項6】
前記ランプの輝度は、前記発光が白色となるように、適当な光学フィルタ手段によって調整されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の、色調整可能な照明素子。
【請求項7】
色彩に富む飽和光を発生させるための、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の、誘電体バリア放電ランプの組立体の利用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−531205(P2007−531205A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520064(P2006−520064)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051153
【国際公開番号】WO2005/006388
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】