説明

色調調整装置、光源装置及びスペクトル測定装置

【課題】 より簡易の構成で光束の色調が行われる色調調整装置、光源装置及びスペクトル測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 色調調整装置(10)は、入力光束(IL)を波長ごとに分散する分散素子(11)と、分散素子(11)で分散された光束を結像する第1結像光学系(12)と、結像光学系による結像面上で分散された複数の光束に対応して、透過率(T)を可変する透過率可変素子(132)を複数配置した透過率可変部(13)と、透過率可変部(13)を通過した複数の光束を合成し出力光束(OL)を射出する合成光学系(14)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多波長成分を含む光束の色調調整が行われる色調調整装置、光源装置及びスペクトル測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な機器の検査に単色光または所望の分光特性を持った光が必要である。このうち、単色光については白色光源などの光を分光器に導くことにより比較的簡単に作ることができる。一方、CCD(Charge Coupled Device)などの検査には、所定の波長分布を持った光が使用される。所定の波長分布を持った光を形成する方法として、従来、多層膜を用いたフィルタが用いられていた。
【0003】
しかしながら、多層膜を用いたフィルタの場合、比較的安価に作ることができるが、自由にスペクトル分布を作ることは難しい。また、蒸着により多層膜を形成したフィルタは同じものを数多く作る場合、コストを下げることができるが、多くの種類のものを少量作る場合はコストが高くなる。また、特に開発の段階での評価では多くの種類の分光特性を持ったフィルタが要求される。
【0004】
特許文献1に開示された色調調整装置は上記の問題点を克服するためのものである。当該色調調整装置は、入力光を互いに直交する振動方向を持った2つの直線偏光に分離する偏光子と、その偏光子で分離された直線偏光の各々を分光して形成したスペクトラム像を液晶空問変調素子により偏光変調し、偏光変調した直線偏光を合波して偏光子に再入射させる液晶空間変調素子を用いたゼロ分散型分光器とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−170850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では多層膜を用いない色調調整装置が開示されているが、その色調調整装置は偏光現像を利用し、偏光子などの偏光装置が配置されているため、全体装置が大型化になる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、より簡易の構成で光束の色調が行われる色調調整装置、光源装置及びスペクトル測定装置を提供することを目的とする。
【0008】
第1の観点の色調調整装置は、入力光束を波長ごとに分散する分散素子と、分散素子で分散された光束を結像する第1結像光学系と、結像光学系による結像面上で分散された複数の光束に対応して、透過率を可変する透過率可変素子を複数配置した透過率可変部と、透過率可変部を通過した複数の光束を合成し出力光束を射出する合成光学系とを備える。
【0009】
第2の観点の光源装置は、所定の波長幅を有する光源と、光源から射出された光束を入射光束とする第1観点の色調調整装置とを備える。
【0010】
第3の観点のスペクトル測定装置は、所定の波長幅の光束を発する被検物の波長ごとのスペクトルを測定するスペクトル測定装置である。当該スペクトル測定装置は被検物から光束を波長ごとに分散する分散素子と、分散素子で分散された光束を結像する第1結像光学系と、結像光学系による結像面上で分散された複数の光束に対応して、透過率を可変する透過率可変素子を複数配置した透過率可変部と、透過率可変部を通過した複数の光束を合成し出力光束を射出する合成光学系と、出力光束の光量を検出する光量検出器と、光量検出器の光量検出結果に基づいて透過率可変部の透過率可変素子を可変する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、色調調整後の光束の光量が多く、より簡易の構成で光束の色調が行われる色調調整装置、光源装置及びスペクトル測定装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の色調調整装置10を説明するための図である。 (a)は、本実施形態の色調調整装置10において、入射光束ILを例として説明する図である。 (b)は、色調調整装置10において、入射光束ILの波長と光強度(光量)との関係を示したグラフである。 (c)は、色調調整装置10において、エレクトロクロミック素子13に入射する直前の光束IL’の形状を示した断面図である。 (d)は、色調調整装置10において、エレクトロクロミック素子13を射出した直後の光束OL’の形状を示した断面図である。 (e)は、色調調整装置10において、射出光束OLの波長と光強度(光量)との関係を示したグラフである。
【図2】(a)は、エレクトロクロミック素子13をZ軸方向から見た平面図である。 (b)は、(a)に示されたエレクトロクロミック材132と光束の波長との対応関係を示した図である。
【図3】第1の実施例の色調調整装置10において、色調調整の一例を示した図である。
【図4】第2の実施例の色調調整装置20において、色調調整の一例を示した図である。
【図5】第3の実施例の光源装置30において、光学系の概要を示した図である。
【図6】第4の実施例の光源装置30’において、光学系の概要を示した図である。
【図7】第5の実施例のスペクトル測定装置40において、光学系の概要を示した図である。
【図8】第6の実施例のスペクトル測定装置40’において、光学系の概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<色調調整装置10>
<<色調調整装置10の概要>>
色調調整装置10の概要について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は本実施形態の色調調整装置10を説明するための図である。図1(a)は、入射光束ILを例として説明する図である。図1(b)は入射光束ILの波長と光強度(光量)との関係を示したグラフである。図1(c)は、エレクトロクロミック素子13に入射する直前の光束IL’の形状を示した断面図である。図1(d)はエレクトロクロミック素子13を射出した直後の光束OL’の形状を示した断面図である。図1(e)は射出光束OLの波長と光強度(光量)との関係を示したグラフである。
【0014】
図1(a)に示された色調調整装置10は、透過率可変部であるエレクトロクロミック素子13を備える。また、このエレクトロクロミック素子13の入射光束IL側には分散素子11であるプリズムP及び結像光学系12が設けられている。また、エレクトロクロミック素子13の射出光束OL側にはコリメータ141及び合成素子142であるプリズムPより構成された合成光学系14が設けられている。
【0015】
透過率可変部であるエレクトロクロミック素子13は図1(a)に示されたようにY軸方向で並んでいる複数のエレクトロクロミック材132(132a〜132g)がZ軸方向で光学窓131a及び光学窓131bに挟んで構成されている。エレクトロクロミック素子13については図2を参照しながら後述する。プリズムP(11)及びエレクトロクロミック素子13は、結像光学系12の焦点に設けられ、エレクトロクロミック素子13及びプリズムP(142)は、コリメータ141の焦点に設けられる。
【0016】
結像光学系12及びコリメータ141は同じ形状で同じ屈折率を持ったテレセントリック光学系が好ましい。この結像光学系12及びコリメータ141が同じ凸レンズであると、本実施形態の色調調整装置10は、エレクトロクロミック素子13の中心を通過するY軸に対して対称な配置となる。なお、図1(a)では分散素子11及び合成素子142として同じ形状で同じ屈折率を持つプリズムPが用いられているが、回折格子が用いられてもよい。
【0017】
図1(a)に示されたように、入射光束ILはプリズムP(11)の入射面S11から色調調整装置10に入射する。本実施形態の入射光束ILは、例えばその波長が450nm〜800nmである白色光が用いられる。
【0018】
プリズムP(11)に入射する入射光束ILは、図1(b)に示されたように波長と光強度(光量)との関係が山形の連続な分布である。この入射光束ILは、図1(a)に示されたようにプリズムP(11)の分散作用によって波長ごとに分散される。プリズムP(11)の射出面S12から射出された各波長の光束は、結像光学系12によりエレクトロクロミック素子13上に結像し、集光される。本実施例では、点線でエレクトロクロミック材132bに入射される波長λbの光束を示し、一点鎖線でエレクトロクロミック材132dに入射される波長λdの光束を示し、破線でエレクトロクロミック材132fに入射される波長λfの光束を示している。ここで、入射光束ILが点線、一点鎖線及び破線の三本の光に分割されているが、実際は入射光束ILに含まれた波長の数量によって複数の光束に分割される。すなわち、光束がエレクトロクロミック素子13のエレクトロクロミック材132bからエレクトロクロミック材132fまでの範囲で任意のエレクトロクロミック材132を照射することができる。また、エレクトロクロミック素子13に入射する直前の光束IL’の断面形状は、図1(c)に示されたように長軸がY軸方向で伸びている。ここで、説明のため光束IL’の断面形状が幅広く描かれているが、実際にはY軸方向の直線である。また、例えば光束IL’の端部Aは波長が800nm前後である赤色光に対応し、光束IL’の端部Bは波長が450nm前後の紫色光に対応する。図1(c)では説明のため、赤色側を白で紫色側を黒で描いてある。
【0019】
エレクトロクロミック素子13に入射した光束IL’は、エレクトロクロミック素子13の透過率を、エレクトロクロミック材132に与える電圧を符号も含めて変化することで、光量が調整される。例えば、エレクトロクロミック素子13は、波長λb、つまり、赤色に対応するエレクトロクロミック材132bに与える電圧を、符号を含めて変化させることで、波長λbの光束の光量を調整することができる。これにより、エレクトロクロミック素子13を透過した直後の光束OL’の断面形状は、図1(d)に示されたように波長λbに対応される部分の光量が変化される。
【0020】
エレクトロクロミック素子13を透過した光束OL’はコリメータ141を透過し、コリメータ141を通過した光束OL’はプリズムP(142)の入射面S21に入射する。その後、図1(a)に示されたようにプリズムP(142)の合成作用によって、再び合成されて射出面S22から射出光束OLとなって射出される。このとき、射出光束OLの波長と光強度(光量)との関係は図1(e)のグラフに示されたものとなる。つまり、波長と光強度(光量)との関係は波長λbの光強度(光量)が変更されている。人間の眼で観察すれば、射出光束OLは赤色の波長λbの光強度(光量)が変更されたので、入射光束ILよりも青っぽい白色として観察される。
以上説明したように、色調調整装置10は、エレクトロクロミック素子13を使って入射光束ILの色調を調整して別の色調の射出光束OLを射出することができる。
【0021】
次に、エレクトロクロミック素子13について、図2を参照しながら詳述する。
図2は、エレクトロクロミック素子13と光の波長との対応関係を説明するための図である。図2(a)は、エレクトロクロミック素子13をZ軸方向から見た平面図である。図2(b)は、図2(a)に示されたエレクトロクロミック材132と光の波長との対応関係を示した図である。
【0022】
図2(a)に示されたように、エレクトロクロミック素子13はY軸方向で並んでいる複数のエレクトロクロミック材132を備える。本実施形態ではエレクトロクロミック素子13は7つのエレクトロクロミック材132(132a〜132g)で描かれている。各エレクトロクロミック材132のY軸方向の間隔は例えば10ミクロンメートル程度である。また、各エレクトロクロミック材132は、X軸方向で二つの電極133にそれぞれ挟まれている。
【0023】
図2(a)に示されたエレクトロクロミック素子13のエレクトロクロミック材132は、電圧をかけることで、光の透過率を調整できる特性を持つ材料である。本実施形態では、エレクトロクロミック特性を示す有機/金属ハイブリッドポリマーが用いられる。この有機/金属ハイブリッドポリマーは、金属イオンと有機分子とが数珠つなぎになった新しいタイプの材料である。
【0024】
エレクトロクロミック材132はその両側に設けられた電極133によって電圧の符号と強度とを任意かつ独立に変化することができ、エレクトロクロミック材132の透過率はエレクトロクロミック材132に印加される電圧の符号(プラスマイナス)も含めた変化に基づいて変化する。
【0025】
一方、図1(c)又は図2(b)に示されるように、エレクトロクロミック素子13に入射する光束IL’は、Y軸方向に赤色から紫色に分散される。このため、エレクトロクロミック素子13に入射した光は、各波長の光が通過する位置にあるエレクトロクロミック材132(132b〜132f)に対応させることができる。そして、エレクトロクロミック材132は印加される電圧によってそれぞれの透過率が調整される。例えば、エレクトロクロミック材132bは入射光束ILに含まれた波長λbが800nm前後である赤色光に対応し、その赤色光の光量を調整することができる。また、エレクトロクロミック材132fは入射光束ILに含まれた波長λfが450nm前後である紫色光に対応し、その紫色光の光量を調整することができる。
【0026】
各エレクトロクロミック材132に入射する光の波長域と、現在設定されている透過率の情報は、記憶装置(不図示)によって記録、管理されている。これらの情報を記録装置から演算装置(不図示)は受け取り、所望の透過率に変更するためには、符号も含めていくらの電圧を印加すればよいかを計算し、その計算結果に基づき電極133に電圧が与えられる。
【0027】
つまり、エレクトロクロミック材132(132a〜132g)に印加される電圧を調整することで、所望の波長域の光量を調整することができる。なお、印加電圧に対する透過率変化の感度は波長によって異なるため、各エレクトロクロミック材132に対応する波長域での透過率変化の感度情報も記録装置に記録しておき、演算装置で波長情報と合わせて印加電圧を計算する際に使用できるようにする。
以下、色調調整装置10について図3に示された光路を参照しながら、より詳しく説明する。
【0028】
(第1の実施例)
図3は、第1の実施例の色調調整装置10において、色調調整の一例を示した図である。
<<色調調整装置10の構成>>
【0029】
図3に示された色調調整装置10は、透過率可変部であるエレクトロクロミック素子13を備える。また、このエレクトロクロミック素子13入射光束IL側には分散素子11及び結像光学系12が設けられている。また、エレクトロクロミック素子13の射出光束OL側にはコリメータ141及び合成素子142より構成された合成光学系14が設けられている。図3では、分散素子11及び合成素子142として回折格子を使用している。
色調調整装置10の色調調整について、図3を参照しながら説明する。
【0030】
<<色調調整装置10の色調調整>>
図3に示されたように、入射光束ILは−Z側から色調調整装置10の分散素子11に垂直に入射する。第1の実施例では、入射光束ILは互いに異なる波長λ1、λ2からなる光である。
【0031】
図3に示されたように、入射光束ILは波長λ1および波長λ2を含んでいるため、分散素子11から射出するときに光束が波長のλ1である光Lλ1及び波長のλ2である光Lλ2に分けられて結像光学系12に入射される。なお、一点鎖線で波長のλ1である光Lλ1を示し、破線で波長のλ2である光Lλ2を示す。このとき、エレクトロクロミック素子13が結像光学系12の焦点に設けられるため、波長λ1の光は全てエレクトロクロミック素子13のエレクトロクロミック材132cに集光され、波長λ2の光は全てエレクトロクロミック素子13のエレクトロクロミック材132eに集光される。
【0032】
そして、必要に応じてエレクトロクロミック材132c及び132eに印加される電圧を符号も含めて調整し、エレクトロクロミック材132c及び132eの透過率を変化させることで、対応する波長域の光に対して光量調整を行った射出光束OLが得られる。
【0033】
例えば、図示しない制御部により図3に示されたエレクトロクロミック材132cに印加される電圧を透過率がn%になるように調整する。これにより、エレクトロクロミック材132cから射出する光Lλ1の強度(光量)が入射時のn%に調整できる。各エレクトロクロミック材に印加される電圧は別々に調整できるため、エレクトロクロミック材132eに対応する光Lλ2には異なる透過率変化を与えられる。
【0034】
エレクトロクロミック素子13を透過した光束はコリメータ141に入射される。エレクトロクロミック素子13はコリメータ141の焦点に設けられているため、エレクトロクロミック素子13を通過した光束はコリメータ141によって再び平行光となる。
【0035】
最後、平行光となって合成素子142に入射された光束は、合成素子142により射出光束OLになって色調調整装置10から射出される。
【0036】
以上の説明により、色調調整装置10は入射光束ILに含まれた波長の異なる光が通過する各エレクトロクロミック材132に印加される電圧を個別に調整することで、各エレクトロクロミック材132の透過率を個別に変化させることができる。すなわち、各エレクトロクロミック材132を通過する波長域の光の強度(光量)を個別に調整することができる。これにより、所望の色調の射出光束OLが形成できる。
【0037】
(第2の実施例)
第2の実施例の色調調整装置20について図4を参照しながら説明する。
なお、第1の実施例と同じ構成要素については、同符号を付しその説明を省略する。
【0038】
<<色調調整装置20の構成>>
図4は、第2の実施例の色調調整装置20の一例を示した図である。第2の実施例の色調調整装置20は、図4に示されたように第1の実施例と同じ構成である分散素子11及び結像光学系12を備えている。分散素子11の配置位置も第1の実施例と同じに結像光学系12の焦点である。また、分散素子11の入射光束IL側にはハーフミラー15が設けられ、結像光学系12の射出光束OL側には透過率可変部である反射型エレクトロクロミック素子16が設けられている。また、反射型エレクトロクロミック素子16は第1の実施例と同じように結像光学系12の焦点位置に設けられているが、その構成が第1の実施例のエレクトロクロミック素子13と異なっている。このため、以下、反射型エレクトロクロミック素子16の構成について詳述する。
【0039】
反射型エレクトロクロミック素子16は、図4に示されたようにY軸方向で並んでいる7個のエレクトロクロミック材132(132a〜132g)がZ軸方向で光学窓131a及び反射素子である平面鏡134に挟んで構成されている。平面鏡134は例えばガラスにアルミ蒸着したものである。また、第2の実施例の反射型エレクトロクロミック素子16の各エレクトロクロミック材132は、XY平面においてX軸方向で二つの電極133にそれぞれ挟まれている(図2(a)を参照)。
【0040】
このような構成によれば、結像光学系12を通過して反射型エレクトロクロミック素子16に入射した各波長の光束は、その光束の結像する位置にあるエレクトロクロミック材132(132a〜132g)の透過率を、平面鏡での反射前後での影響を考慮して印加電圧を変化させることで調整し、反射型エレクトロクロミック素子16の入射光束ILに対して光量の調整が行われる。これにより、第2の実施例でも所望の色調をもつ射出光束OLを形成できる。
【0041】
また、第2の実施例の色調調整装置20は、第1の実施例の色調調整装置10と比べれば、Z軸方向により短縮されている。以下、色調調整装置20の色調調整について、光路を参照しながら詳述する。
【0042】
<<色調調整装置20の色調調整>>
第2の実施例の色調調整装置20の色調調整は、図4に示されたように入射光束ILが+Z軸方向に沿って色調調整装置20のハーフミラー15に入射する。第2の実施例でも、入射光束ILは波長λ1および波長λ2を含んでいる。
【0043】
図4に示されたように、ハーフミラー15を透過した光束は垂直に分散素子11に入射する。入射光束ILは互いに異なる波長λ1および波長λ2を含んでいるため、分散素子11から射出するときに光束が波長のλ1である光Lλ1及び波長のλ2である光Lλ2に分けられて結像光学系12に入射される。なお、一点鎖線で波長のλ1である光Lλ1を示し、破線で波長のλ2である光Lλ2を示す。このとき、反射型エレクトロクロミック素子16が結像光学系12の焦点に設けられるため、波長λ1の光は全て反射型エレクトロクロミック素子16のエレクトロクロミック材132cに集光され、波長λ2の光は全て反射型エレクトロクロミック素子16のエレクトロクロミック材132eに集光される。
【0044】
このとき、図示しない制御部によりエレクトロクロミック材132c及び132eに印加される電圧を調整することで、エレクトロクロミック材132c及び132eの透過率を任意に変化させることができる。したがって、エレクトロクロミック材132cに集光された波長λ1の光及びエレクトロクロミック材132eに集光された波長λ2の光束が反射型エレクトロクロミック素子16で光量調整が行われる。
【0045】
但し、反射型エレクトロクロミック素子16では、波長λ1の光及び波長λ2の光が平面鏡134で反射されることで2度通過することになる。そのため、例えばエレクトロクロミック材132cで透過率が50%で設定されると、波長λ1の光が平面鏡134に届くまでに50%減衰されて、さらに反射鏡134で反射された波長λ1の光が射出されるまでに50%減衰され、往復で25%に減衰される。
【0046】
そして、エレクトロクロミック材132で光量調整の行われた光束は平面鏡134反射され再び結像光学系12に入射される。また、平面鏡134の反射光は元の光Lλ1及びLλ2の反対側から結像光学系12に入射するため、結像光学系12により再び平行光となって分散素子11に入射する。このときの入射光は最初の入射光束ILの反対側から分散素子11に入射するため、分散素子11は第1の実施例で説明された合成素子142(図3を参照)の役割をする。したがって、波長の異なる光束は分散素子11により合成され、−Z軸方向に沿って分散素子11から射出する。
【0047】
その後、分散素子11から射出した光束はハーフミラー15に反射され、+Y軸方向に向かう射出光束OLとなって色調調整装置20から射出する。
【0048】
以上の説明によれば、色調調整装置20は入射光束ILに含まれた波長の異なる光が通過する各エレクトロクロミック材132に印加される電圧を調整することで、対応する波長域の光の透過率を変化させることができる。したがって、必要な色調の射出光束OLが得られる。
【0049】
<光源装置30>
(第3の実施例)
第3の実施例の光源装置30について、図5を参照しながら説明する。
図5は、第3の実施例の光源装置30における光学系の概要を示した図である。以下の図5の説明において、図1〜図4に示された構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付して説明する。
【0050】
図5に示された光源装置30は、図3に示された第1の実施例の色調調整装置10に光源31が付属している。このため、色調調整装置10と同一の部分の説明を省略し、異なる部分についてのみ説明を行う。
【0051】
光源31から出射した入射光束ILは、図示はしていないがコリメータで平行光にし、+Z軸方向に向かって色調調整装置20に入射する。色調調整装置20内での光路は第1の実施例の色調調整装置20の色調調整で説明された光路と同じであるため、ここで説明を省略する。光源装置30の光源31としては連続スペクトルを持つ白色光源でもよい。白色光源を用いた場合では、白色光に含んでいる様々な光がエレクトロクロミック素子13エレクトロクロミック材132(132a〜132g)にそれぞれ対応される。例えば、波長λbの赤色光がエレクトロクロミック材132bに対応され、波長λfの紫色光がエレクトロクロミック材132fに対応される(図2(b)を参照)。
【0052】
(第4の実施例)
第4の実施例の光源装置30’について、図6を参照しながら説明する。
図6は、第4の実施例の光源装置30’における光学系の概要を示した図である。以下の図6の説明において、図4に示された構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付して説明する。
【0053】
図6に示された光源装置30’は、図4に示された第2の実施例の色調調整装置20に光源31が付属している。また、第4の実施例で用いられる光源31は第3の実施例に説明された光源31と同じく構成であり、第3の実施例と同じく図示はしていないが、光源から発した光束をコリメータで平行光にしてから色調調整装置20に入射させる。
【0054】
<スペクトル測定装置40>
(第5の実施例)
第5の実施例のスペクトル測定装置40について、図7を参照しながら説明する。
図7は、第5の実施例のスペクトル測定装置40において、光学系の概要を示した図である。以下の図7の説明において、図1〜図3、図5に示された構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付して説明する。
【0055】
図7に示されたスペクトル測定装置40は、図3に示された色調調整装置10に、光量検出器42、制御部43が付属されている。スペクトル被検物41はある波長の光を発している検査対象物である。スペクトル被検物41は色調調整装置10の−Z側に配置され、スペクトル被検物41から発した光束は、図示はしていないがコリメータで平行光にしてから、色調調整装置10に入射する。スペクトル被検物41からの光束は折り曲げミラー、光ファイバーなどを介してもよいが、最終的に平行光にして色調調整装置10に入射させる。光量検出器42は色調調整装置20の射出光束OL側に設けられる。光量検出器42はCCD、CMOSなどで構成される。制御部43は演算装置及び記憶装置などを含んでおり、エレクトロクロミック素子13及び光量検出器42に接続される。制御部43は光量検出器42の出力結果に基づいてエレクトロクロミック素子13のエレクトロクロミック材132に印加される電圧の電圧を調整する。すなわち、エレクトロクロミック材132の透過率を調整することができる。
【0056】
また、他の部分の構成は図3に示された色調調整装置10と同じであるため、説明を省略する。以下、スペクトル測定装置40によりスペクトルを測定する原理について説明する。
【0057】
まず、スペクトル被検物41から放出された入射光束ILが色調調整装置10に入射する。このとき、色調調整装置10を通過して光量が変化された光束が合成素子142により合成されて色調調整装置10を射出する(第5の実施例の色調調整を参照)。合成素子14から射出した射出光束OLは光量検出器42に入射し光量検出器42によって射出光束OLの光量Itotalが測定される。このとき、波長λの光束の光量をIλ、分散素子11が分光したスペクトル上、波長λの位置に配置されたエレクトロクロミック材132(132a〜132g)の透過率をTλとすると、色調調整後に合成した光束の光量Itotalは数式(1)で求められる。
【数1】

…(1)

【0058】
そして、エレクトロクロミック素子13上の測定しようとする波長λに対応する位置にあるエレクトロクロミック材132(132a〜132g)の透過率TλのみをT’λに変化させる。エレクトロクロミック材132の透過率がT’λに調整された後の射出光束OLの光量I’totalを光量検出器42により測定する。その光量I’totalは数式(2)で表現できる。
【数2】

…(2)

【0059】
数式(1)と数式(2)とを合わせると、数式(3)となり、
【数3】

…(3)
【0060】
最後に、数式(3)を整理すれば、数式(4)に示されたように測定しようとする波長λに対応する光束の光量Iλが求められる。
【数4】

…(4)
【0061】
(第6の実施例)
第6の実施例のスペクトル測定装置40’について、図8を参照しながら説明する。
図8は、第6の実施例のスペクトル測定装置40’において、光学系の概要を示した図である。図8に示されたスペクトル測定装置40’は、図4に示された色調調整装置20に、光量検出器42、制御部43が付属されている。図示はしていないが、被検物からの光束をコリメータで平行光にしてから色調調整装置20に入射させることは、第5の実施例と同様である。
【0062】
また、第6の実施例の光量検出器42、制御部43は第5の実施例のスペクトル測定装置40で説明された光量検出器42、制御部43と同じである。さらに、第6の実施例のスペクトル測定装置40’によりスペクトルを測定する原理は、第5の実施例で説明されたスペクトル測定原理と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上、本発明の最適な実施例について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施例に様々な変更・変形を加えて実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
10、20 … 色調調整装置
11 … 分散素子
12 … 結像光学系
13 … エレクトロクロミック素子
131a、131b … 光学窓
132、132a〜132g … エレクトロクロミック材
133 … 電極
134 … 平面鏡
14 … 合成光学系
141 … コリメータ、 142 … 合成素子
15 … ハーフミラー
16 … 反射エレクトロクロミック素子
30、30’ … 光源装置
31 … 光源
40、40’ … スペクトル測定装置
41 … 光量被検物
42 … 光量検出器
43 … 制御部
IL … 入射光束
λ … 波長λの光束の光量
total、I’total … 射出光束OLの光量
λ1 … 波長λ1の光、 Lλ2 … 波長λ2の光
λ、T’λ … 透過率
OL … 射出光束
P … プリズム
λ1、λ2 … 波長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光束を波長ごとに分散する分散素子と、
前記分散素子で分散された光束を結像する第1結像光学系と、
前記結像光学系による結像面上で分散された複数の光束に対応して、透過率を可変する透過率可変素子を複数配置した透過率可変部と、
前記透過率可変部を通過した複数の光束を合成し出力光束を射出する合成光学系と、
を備える色調調整装置。
【請求項2】
前記合成光学系は、
前記第1結像光学系とは異なる位置に配置され、前記透過率可変部を通過した光束をコリメートする第2結像光学系と、
前記分散素子と同一の構成であり、前記複数の光束を合成する合成素子と、
を含む請求項1に記載の色調調整装置。
【請求項3】
前記合成光学系は、
前記透過率可変部を通過した光束を反射する反射素子を含み、
前記反射素子で反射された複数の光束は、前記透過率可変部を通過し前記第1結像光学系でコリメートされ、前記分散素子で複数の光束を合成し出力光束を射出する請求項1に記載の色調調整装置。
【請求項4】
前記入力光束と前記出力光束とをハーフミラー等で分岐させる手段を備える請求項3に記載の色調調整装置。
【請求項5】
前記分散素子は、光学プリズム又は回折格子を含む請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の色調調整装置。
【請求項6】
前記透過率可変部は、電界付加によって前記透過率可変素子の透過率を可変させるエレクトロクロミック素子を含む請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の色調調整装置。
【請求項7】
前記第1結像光学系は、透過率可変部側にテレセントリックである請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の色調調整装置。
【請求項8】
所定の波長幅を有する光源と、
前記光源から射出された光束を入射光束とする請求項1から請求項7のいずれか一項の色調調整装置と、
を備える光源装置。
【請求項9】
所定の波長幅の光束を発する被検物の波長ごとのスペクトルを測定するスペクトル測定装置において、
前記被検物から光束を波長ごとに分散する分散素子と、
前記分散素子で分散された光束を結像する第1結像光学系と、
前記結像光学系による結像面上で分散された複数の光束に対応して、透過率を可変する透過率可変素子を複数配置した透過率可変部と、
前記透過率可変部を通過した複数の光束を合成し出力光束を射出する合成光学系と、
前記出力光束の光量を検出する光量検出器と、
前記光量検出器の光量検出結果に基づいて前記透過率可変部の透過率可変素子を可変する制御部と、
を備えるスペクトル測定装置。
【請求項10】
前記分散素子は、光学プリズム又は回折格子を含む請求項9に記載のスペクトル測定装置。
【請求項11】
前記透過率可変部は、電界付加によって前記透過率可変素子の透過率を可変させるエレクトロクロミック素子を含む請求項9又は請求項10に記載のスペクトル測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−266476(P2010−266476A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115091(P2009−115091)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】