説明

芝刈り機

【課題】芝草を切断する回転刃を備えた手持ち式芝刈り機において、芝草の刈り屑が周囲に飛散することを防止する。
【解決手段】回転刃2の上部に近接して、これと一体に回転し、スクリュウコンベアのように芝草の刈り屑をすくい上げて、上方に搬送する回転搬送部材4を設ける。回転搬送部材4の上方に集草空間Sが形成されるように、それを上方からカバー部材5で覆う。回転搬送部材4には、刈り屑をすくい上げる羽根部42の他に、集草空間S内で刈り屑を回転方向に搬送するための立壁部を設ける。カバー部材5の後部には刈り屑を排出するための開口を設ける。そこから排出される刈り屑を受け止める屑受け部を、ハウジング1に対し高さ調節可能に取り付けられたベース部材7に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する切断刃によって芝草を刈り取るようにした芝刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、片手でも使用できる手持ち式の芝刈り機として、切断刃を2枚、上下に重ね合わせて設け、両者の切刃により芝草を鋏み切るようにしたものが公知である。それらは、櫛状に設けられた切刃を有する切断刃が相互に揺動する揺動式のものと、外周側に切刃を有する円盤状の切断刃が回転する回転式のものと、に大別される。また、回転式のものでは単一の切断刃を回転させて、芝草を刈り取るようにしたものもある。
【0003】
そうして切断刃が回転するものでは、これにより刈り取られた芝草の刈り屑が遠心力によって水平方向に飛散し、後の掃除が面倒だという不具合を生じるが、例えば特許文献1に記載のものでは、回転する切断刃の上方をフードで覆うとともに、その切断刃に一体にファンを設けて上向きに風を発生させ、これにより芝草の刈り屑を吸い上げて、前記フードの上方に設けた刈り屑収集袋に収集するようにしている。
【特許文献1】実開昭49−138056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、手持ち式の芝刈り機では切断刃をあまり高速で回転させることができず、これと一体にファンを設けても強い風は起こらない。一方で芝草の刈り屑は、水分を含むとかなり重くなることもあり、前記従来例のものでは、実際には芝草の刈り屑を狙い通りに吸い上げることができず、その飛散を防止できるものではなかった。
【0005】
斯かる点に鑑みて、本発明は、上述の如き回転式の芝刈り機において刈り取った芝草を収集するための構造に工夫を凝らし、刈り屑が周囲に飛び散らないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明では、回転する切断刃の上部に近接して、これと一体に回転し、スクリュウコンベアのように芝草の刈り屑をすくい上げて上方に搬送する回転搬送部材を設けたものである。
【0007】
すなわち、請求項1の発明は、回転する切断刃によって芝草を刈り取るようにした芝刈り機を対象とし、該切断刃の上部に近接して、これと一体に回転するように設けられ、その回転に伴い前記芝草の刈り屑をすくい上げて上方に搬送する回転搬送部材と、この回転搬送部材の上方に集草空間を形成するように該回転搬送部材を上方から覆うカバー部材と、を備えるものとする。
【0008】
前記構成の芝刈り機では、回転する切断刃によって芝草が刈り取られると、その刈り屑が切断刃と一体に回転する回転搬送部材によりすくい上げられて、上方のカバー部材により覆われた集草空間に搬送されるようになる。
【0009】
つまり、従来までのようにファンにより発生させた風によって吸い上げるのではなく、スクリュウコンベアのように刈り屑をすくい上げて搬送することで、芝草が水分を含んで重いときでも、その刈り屑をより確実に上方の集草空間へ搬送して、周囲への飛散を防止することができる。
【0010】
請求項2の発明では、前記回転搬送部材には、下端が切断刃の切刃の刃先に近接する一方、上端が集草空間に連通する螺旋状の搬送路を形成するとともに、その集草空間において回転方向の前側へ刈り屑を搬送するための搬送腕部を設ける。そして、その搬送腕部によって回転搬送部材の回転方向に搬送される刈り屑を排出するための開口を、カバー部材の後部に形成するものとする。
【0011】
この構成では、回転する切断刃の切刃によって刈り取られた芝草の刈り屑が直ちに搬送路に導かれ、回転搬送部材の回転に伴い螺旋状の搬送路を上方に移動して、集草空間に搬送される。そして、その集草空間において搬送腕部により回転方向に搬送されて、カバー部材の後部開口から芝刈り機の後方に向かって排出されるようになる。
【0012】
つまり、集草空間に収集した芝草の刈り屑がそこに滞留することなく、連続的に芝刈り機の後方に排出されることになるので、集草空間をあまり大きくする必要がなく、芝刈り機をコンパクトに構成する上で有利になる。
【0013】
その場合に、好ましいのは、そうしてカバー部材の後部の開口から排出される芝草の刈り屑を受け止めるためのレシーバを備えることであり(請求項3の発明)、こうすれば、前記のように集草空間から連続的に排出される刈り屑がレシーバに受け止められて、そこに堆積するようになる。そうして堆積した刈り屑が或る程度以上、多くなれば、これを屑箱等に捨てればよい。
【0014】
また、好ましいのは、前記のような構成の芝刈り機本体の下部に、切断刃と略平行なベース面を有するベース部材を高さ調節可能に取り付けて、このベース部材に前記レシーバを一体に設けることである(請求項4の発明)。
【0015】
そうして芝刈り機本体に取り付けたベース部材は切断刃と略平行なベース面を有するので、本体を芝生の上に置いて滑らせるように移動させながら、芝草を均一な高さに揃えて刈り取ることができる。また、その刈り込み高さは、ベース部材の高さ調節により設定できる。つまり、芝草をきれいに刈り込むことが容易になる。
【0016】
そして、そのように芝刈り機を支えるベース部材には或る程度以上、大きなベース面を設ける必要があるが、このベース面の上方を刈り屑のレシーバとして利用すれば、芝刈り機をコンパクトに構成しつつ、十分な容量のレシーバを設けることができる。
【0017】
さらに、好ましいのは、前記のように回転搬送部材を上方から覆って集草空間を形成するカバー部材を、上方に移動して集草空間の外周の少なくとも一部を開放できるように設けることである(請求項5の発明)。こうすれば、集草空間に残った刈り屑の除去も容易に行える。また、上方への移動によってカバー部材が切断刃から離れることになるので、背の高い芝草の刈り取りも容易になる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係る芝刈り機によると、切断刃を回転させるようにしたものにおいて、その切断刃の上部に近接させて、スクリュウコンベアのように芝草の刈り屑をすくい上げ、上方に搬送する回転搬送部材を設けたから、例えば水分を含んで重くなった刈り屑もより確実に上方の集草空間に収集することができ、刈り屑の周囲への飛散を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1乃至図6には、本発明を適用した手持ち式の芝刈り機、特に回転刃及び固定刃を備えた芝刈り機Aの実施形態を示す。この芝刈機Aは、駆動源やその制御回路、伝動ギヤ等を収容するハウジング1(芝刈り機本体)の前側(図1、2の右側)下部に、概略円盤状の回転刃2及び固定刃3(上側及び下側の切断刃)が上下に重ね合わされて設けられており、上側に位置する回転刃2を回転させ、その外周の切刃2a,2a,…(図4参照)と下側の固定刃3の切刃3a,3a,…とにより芝草を鋏み切って、刈り取るようにしたものである。また、回転刃2の上部に近接して、詳しくは後述するが、それと一体に回転してスクリュウコンベアのように芝草の刈り屑を上方に搬送する回転搬送部材4が設けられている。
【0021】
前記ハウジング1は、例えば左右二つ割りの樹脂製部品を組み合わせてなり、その前側には図示しない電動モータ(駆動源)を上下方向に向けて収容するハウジング本体10が形成されるとともに、このハウジング本体10の上部から後側に向かって、後端側が下方に湾曲するように延びる概略J字状のハンドル11が一体に設けられている。また、そのハンドル11の下端から前側の斜め下方に向かって延びて、後述の如くベース部材7を保持するベース保持部12が設けられ、このベース保持部12の前側上部がハウジング本体10の下部に連繋されている。
【0022】
前記ハウジング本体10は全体として上窄まりの円筒状とされていて、その下側部分は、ベース保持部12に繋がる後側の部位を除いて、周囲を半透明の樹脂製カバー部材5(図1では斜線を入れて示す)により覆われている。このカバー部材5は、図3や図4にも示すように、ハウジング本体10の下側部分から下方の回転搬送部材4の上部までを覆う概略傘状のカバー部50と、その後端から左右に相対向しつつ後方に延びる一対の腕部51,51とを備え、さらにその左側の腕部51に沿うように後方に延びる延出部52が形成されていて、その後端が後方に向かい開口している(開口52a)。
【0023】
また、前記左右一対の腕部51,51には、それぞれの後部で左右外方に突出するようにボス部53が設けられていて、図示省略のねじ等によりハウジング本体10に対し回動可能に連結されている。これによりカバー部材5は、ボス部53において左右方向の軸の周りに回動可能とされ、図1等に示すようにカバー部50の下縁が回転刃2と略平行になる下側位置と、そこから上方に回動された上側位置とのいずれかに位置づけられるようになっている。
【0024】
尚、前記カバー部50の前側の上部には、これをハウジング本体10に係止するための係止爪部54が設けられている。すなわち、ハウジング本体10の前部には、上下に離間してそれぞれ前記係止爪部54を係止可能な2つのスリット10a,10bが形成されており、このいずれかのスリット10a,10bにより前記カバー部50の係止爪部54が係止されることで、カバー部材5が前記上側位置及び下側位置にそれぞれ保持されるようになっている。
【0025】
前記ハウジング1のハンドル11の内部には、図示しないが電動モータのON・OFFスイッチが配設されるとともに、このハンドル11を把持した手の指で操作しやすいよう、ハンドル11の前側下部にはトリガー6が配設されており、このトリガー6が操作されて、ON・OFFスイッチがON・OFF切換えられることで、電動モータが起動し又は停止するようになっている。
【0026】
また、前記ベース保持部12には、その長手方向に伸びる長穴12aが左右に貫通して形成されており、ここにはベース部材7を締結するためのボルト8が挿通されるようになっている。この長穴12aの上辺は、ボルト8の軸部に対応する大きさの凹部が複数(図の例では5つ)並んだ波形に形成されており、そのいずれかに対応するように位置づけたボルト8によって、ベース部材7をベース保持部12に締結することができる。尚、この例では図2のみに実線で示すが、ボルト8の端部に樹脂製の把持部8aが取り付けられており、使用者は指でボルト8を緩めたり、締め付けたりすることができる。
【0027】
そうしてボルト8によりベース部材7を締結する位置を長穴12aに沿ってベース保持部12の前側に移動させれば、図5に示すようにベース部材7がハウジング1に対し低くなる(ベース部材7によって支持されるハウジング1の位置が高くなる)一方、反対に後側に移動させれば、ベース部材7はハウジング1に対して高くなる。つまり、ベース部材7は、ハウジング1に対して高さ調節可能に取り付けられるようになっている。
【0028】
図4の分解斜視図に示すように、回転刃2及び固定刃3は、それぞれ外周側に複数の切刃2a,…,3a,…を有している。図の例では回転刃2は、円盤状の本体外周から径方向外方に延びていて、その回転方向前側に刃先が形成された3つの切刃2a,2a,…を有し、一方、固定刃3は、その外周に櫛状に多数の切刃3a,3a,…を有している。固定刃3は、ハウジング本体10に支持された固定軸9(図1を参照)の下端に回動不能に固定され、一方、回転刃2は、刃先を該固定刃3と摺接するようにして、固定軸9の下端側外周に回動自在に支持されている。
【0029】
そして、前記回転刃2は、上方の回転搬送部材4を介して伝動ギヤからの回転力を受け入れて、図2、3において反時計回りに回転され、その切刃2a,2a,…がそれぞれ固定刃3の多数の切刃3a,3a,…と順次、交差して、芝草を次々と鋏み切るようになっている。
【0030】
すなわち、まず、回転搬送部材4は、図4に示すように円筒部40の内周側に略同軸にボス部41が設けられており、このボス部41の上側内周には、図示しない伝動ギヤの軸部外周に設けられた複数の突条と噛み合うように複数の(図の例では3つの)溝41a,41a,…が形成される一方、ボス部41の下側外周には、回転刃2の中心孔内周に形成された複数の(図の例では6つの)凹部2b,2b,…と噛み合うように複数の突条(図示せず)が形成されている。つまり、回転搬送部材4のボス部41は、伝動ギヤからの回転力を回転刃2へ伝達する機能を有する。
【0031】
また、回転搬送部材4の円筒部40の外周には3つの羽根部42,42,…が周方向に離間して設けられており、当該回転搬送部材4は、全体としては扁平なスクリュウのような形状となっている。この回転搬送部材4の円筒部40の上端は、図3に破線で示すように、ハウジング本体10の下端前部に対し下方のやや外周側に近接しており、一方、その外周の3つの羽根部42,42,…は、それぞれ、外周縁がカバー部材5のカバー部5の外周壁内面に近接している。
【0032】
そして、前記各羽根部42は、その回転方向前側の範囲(図の例では周方向長さの2/3くらいの範囲)が前側ほど下方に位置する傾斜部42aとされ、残りの範囲は水平部42bとされていて、この水平部42bの下面が、図1の如く下側位置にあるカバー部材5の外周壁下縁と略同じ高さに位置している。つまり、カバー部材5のカバー部50内には、回転搬送部材4の円筒部40よりも外周側で、その羽根部42,42,…の上方に概略環状の空間部Sが形成されている。
【0033】
また、前記各羽根部42の傾斜部42aの下端(回転方向前端)は、それぞれ、図6に拡大して示すように回転刃2の各切刃2aの刃先の回転方向後側に近接しており、このことで、前記のように回転刃2の切刃2aと固定刃3の切刃3aとによって鋏み切られた芝草の刈り屑が、回転搬送部材4の羽根部42の傾斜部42aによって直ちにすくい上げられるようになっている。さらに、各羽根部42の傾斜部42aの外周縁には、その回転方向の範囲に亘って上方に延びる円周壁部42cが形成されていて、その上端が水平部42bと略同じ高さに達している。
【0034】
このことで、回転搬送部材4には、その本体である円筒部40の外周に、羽根部42の傾斜部42aと円周壁部42cとによって囲まれて、下端が回転刃2の切刃2aの刃先に近接する一方、上端が上方の空間部Sに連通する螺旋状の搬送路が形成されており、回転刃2によって刈り取られた芝草の刈り屑を前記螺旋状搬送路によって上方の空間部Sへと搬送するようになっている。この空間部Sを以下、集草空間Sともいう。
【0035】
さらに、前記回転搬送部材4の羽根部42,42,…には、それぞれの水平部42bの回転方向後端から立ち上がり、且つ半径方向に延びる立壁部42dが形成され、その上端が円筒部40の上端と同じ高さにまで達している。この立壁部42dは、回転搬送部材4の回転に伴い集草空間S内を移動して、芝草の刈り屑を回転方向の前側へ搬送する搬送腕部として機能する。
【0036】
すなわち、回転搬送部材4の回転に伴いその羽根部42,42,…の傾斜部42aに沿って上方の集草空間Sに搬送された刈り屑は、今度は、その集草空間Sにおいて立壁部42dにより回転方向に搬送されることになり、その搬送方向が芝刈り機Aの後方となるハウジング1の左側にてカバー部材5の後方の延出部52に押し出され、その後端の開口52aから後方に向かって排出されるようになっている。
【0037】
そうしてカバー部材5の後部の開口52aから排出される刈り屑を受け止めるように、この実施形態ではハウジング1に取り付けられたベース部材7に、芝草の刈り屑を受け止める屑受け部R(レシーバ)が設けられている。このベース部材7は、例えば樹脂の射出成形、金属板のプレス成形等により形成され、図2に示すように上方から見て、概略矩形状の後半部分から前側に向かって相対的に幅の狭い延出部が設けられた異形の底板部70と、この底板部70の後縁から左側縁にかけて上方に立ち上り、上端がカバー部材5の後部の開口52aよりも高くなるように上方に延びる背板部71と、を備えている。
【0038】
図1、5に示すように、前記底板部70には、左右の中間部において後側ほど高くなるように傾斜して立ち上がる膨出部72が形成され、この膨出部72の後端側は背板部71の上端と同じ高さに達して、さらに上方の斜め後側に延びている。この膨出部72の上面がハウジング1のベース保持部12の下面に当接することで、ベース部材7の底板部70の下面(ベース面)が回転刃2と略平行に位置づけられる。
【0039】
また、前記ベース部材7の底板部70には、膨出部72の左右両側からそれぞれ立ち上がって、上部が膨出部72の上面よりも高くなるように延びる三角形状の腕部73,73が形成されている。この左右一対の腕部73,73は、ハウジング1のベース保持部12を左右両側から挟み、それぞれに形成された貫通孔に右側からボルト8が挿通されるようになっている。左側の腕部73の貫通孔には内周にねじが螺刻されており、ここにボルト8の軸部の先端側が螺入される。
【0040】
そうしてハウジング1のベース保持部12にベース部材7が取り付けられた状態で、図2に示すようにハウジング1の左側には、ベース部材7の底板部70の上方においてその後側から左側にかけて背板部71により囲まれて、カバー部材5の後部の開口52aから排出される刈り屑を受け止め、それを堆積させる屑受け部Rが形成されている。
【0041】
次に、この実施形態の手持ち式芝刈り機Aの作動について説明する。
【0042】
まず、使用者は、芝刈り機Aのハンドル11を把持してそれを芝生の上に置き、ベース部材7によって支持した状態で、ハンドル11のトリガー6を引く。すると電動モータが起動し、伝動ギヤを介して回転刃2が回転されて、その3つの切刃2a,2a,…がそれぞれ固定刃3の多数の切刃3a,3a,…と順次、交差して、これら多数の切刃3a,3a,…の間で上方に延びる芝草を次々と鋏み切ってゆく。
【0043】
そうして回転刃2及び固定刃3によって刈り取られた芝草の刈り屑は、回転刃2と一体に回転する回転搬送部材4の羽根部42によりすくい上げられ、図3に黒い矢印で示すように上方に搬送されて、周囲に飛び散ることなく、上方のカバー部材5により覆われた集草空間Sに至る。この空間部Sでは刈り屑は、今度は回転搬送部材4の各羽根部42の立壁部42dによって、同図に白抜きの矢印で示すように回転方向前側に搬送される。
【0044】
そうして集草空間Sを回転搬送部材4の回転方向に搬送される刈り屑は、遠心力によって徐々に外周側に片寄っていき、ハウジング1の左側においてカバー部材5の後方延出部52に押し出され、集草空間S内に滞留することなく、該後方延出部52の後端開口52aからからカバー部材5外へ連続的に排出される。こうして連続的に排出された刈り屑はベース部材7上の屑受け部Rに堆積し、それが或る程度以上、多くなれば、屑箱等に捨てられる。
【0045】
また、芝刈り機Aの使用後に、例えば水分を含んだ刈り屑が集草空間Sに残留している場合は、カバー部材5の前部を上方に引き上げ、その係止爪部54をハウジング本体10のスリット10aに係止させて、上側位置に保持する。こうすれば、集草空間Sの前側外周が開放されるので、その内部に残留している刈り屑を除去しやすい。また、そうして上側位置に保持すれば、カバー部材5が回転刃2から上方に大きく離れることになるから、背の高い芝草の刈り取りも容易になる。
【0046】
したがって、この実施形態に係る手持ち式芝刈り機Aによると、回転刃2及び固定刃3によって刈り取った芝草の刈り屑を、回転搬送部材4によりスクリュウコンベアのようにすくい上げて、上方に搬送するようにしたから、例えば水分を含んで重くなった刈り屑を従来よりも確実に上方に搬送し、周囲に飛散させることなく、カバー部材5によって覆われた集草空間Sに収集することができる。
【0047】
また、そうして集めた刈り屑を集草空間Sにおいて回転方向に搬送し、カバー部材5の後部の開口52aから連続的に後方へ排出して、ベース部材7上の屑受け部Rに堆積させるようにしたから、カバー部材5をあまり大きくする必要がなく、芝刈り機Aをコンパクトに構成する上で有利になる。
【0048】
さらに、そうしてベース部材7上の屑受け部Rに堆積する刈り屑を見れば、使用者は、芝草をどのくらい刈り取ったのかが一目で分かり、それが或る程度、多くなれば容易に屑箱等に捨てることができて、非常に利便性が高い。
【0049】
しかも、刈り屑を堆積させる屑受け部Rには或る程度以上の容量が必要だが、芝刈り機Aを芝生上に支持するベース部材7には本来、或る程度以上の大きさのベース面が必要とされ、このベース面に対応する底板部70上のスペースを屑受け部Rとして利用すれば、芝刈り機Aをコンパクトに構成しながら、屑受け部Rの容量は十分に確保することができる。
【0050】
さらにまた、そうして大きなベース面によって支持しているから、この実施形態の芝刈り機Aは、芝生の上を前後左右に滑らせるように移動させながら、芝草を均一な高さに揃えてきれいに刈り取ることが容易に行える。その刈り込み高さは、ボルト8を緩めてベース部材7の高さを変更することで、容易に変更できる。
【0051】
尚、上述した実施形態の芝刈り機Aでは、芝草の刈り屑を受け止める屑受け部Rをベース部材7に設けているが、これに限らず、屑受け部はベース部材7とは別に設けてもよい。また、刈り屑を排出するための開口52aは、カバー部材5の後部に限らず、側部に形成してもよい。
【0052】
また、前記の実施形態では、カバー部材5によって回転搬送部材4の上方に集草空間Sを形成し、且つこれを回転搬送部材4の回転方向に搬送して、芝刈り機Aの左側後方へ連続的に排出するようにしているが、これに限らず、集草空間の容量を大きくして、そこに刈り屑を収集し、一杯になれば屑箱に捨てるようにようにしてもよい。
【0053】
さらに、前記の実施形態では本発明を、回転刃2及び固定刃3によって芝草を挟み切るようにした芝刈り機Aに適用しているが、これに限らず、単一の回転刃によって芝草を刈り取るように構成した芝刈り機にも本発明を適用できることは言うまでもない。
【0054】
さらにまた、前記の実施形態では本発明を手持ち式の芝刈り機Aに適用しているが、これに限らず、本発明は手持ち式でないものに適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上、説明したように、本発明は、回転式の芝刈り機において、芝草の刈り屑が周囲に飛散することを防止できるので、比較的狭い芝生の刈り込みに用いられる手持ち式のものに特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る手持ち式芝刈り機の側面図である。
【図2】同上面図である。
【図3】回転搬送部材とカバー部材とを取り出して、両者間に形成される集草空間を示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図4】カバー部材、回転搬送部材、回転刃及び固定刃の分解斜視図である。
【図5】ベース部材が最も低い位置にあるときの図1相当図である。
【図6】回転刃の切刃の刃先と回転搬送部材の羽根部下端との位置関係を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0057】
A 芝刈り機
R 屑受け部(レシーバ)
S 空間部(集草空間)
1 ハウジング(芝刈り機本体)
12 ベース保持部(芝刈り機本体の下部)
2 回転刃(切断刃)
2a 切刃
3 固定刃
3a 切刃
4 回転搬送部材
40 円筒部
42 羽根部
42a 羽根部の傾斜部(螺旋状搬送路)
42c 円周壁部(螺旋状搬送路)
42d 立壁部(搬送腕部)
5 カバー部材
50 カバー部
52 延出部
52a 開口
7 ベース部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する切断刃によって芝草を刈り取るようにした芝刈り機であって、
前記切断刃の上部に近接してこれと一体に回転するように設けられ、その回転に伴い前記芝草の刈り屑をすくい上げて上方に搬送する回転搬送部材と、
前記回転搬送部材の上方に集草空間が形成されるように、該回転搬送部材を上方から覆うカバー部材と、を備えることを特徴とする芝刈り機。
【請求項2】
回転搬送部材には、下端が切断刃の切刃の刃先に近接する一方、上端が集草空間に連通する螺旋状の搬送路が形成されるとともに、その集草空間において回転方向の前側へ刈り屑を搬送するための搬送腕部が設けられ、
前記搬送腕部によって回転方向に搬送される刈り屑を排出するための開口がカバー部材の後部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の芝刈り機。
【請求項3】
カバー部材の後部の開口から排出された刈り屑を受け止めるためのレシーバを備えることを特徴とする請求項2に記載の芝刈り機。
【請求項4】
切断刃及び回転搬送部材が設けられている芝刈り機本体の下部に、切断刃と略平行なベース面を有するベース部材が高さ調節可能に取り付けられ、
レシーバが前記ベース部材と一体に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の芝刈り機。
【請求項5】
カバー部材は、上方に移動して集草空間の外周の少なくとも一部を開放可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の芝刈り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−282603(P2007−282603A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116418(P2006−116418)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】