説明

芝刈機

【課題】
レバー操作により車輪軸を円弧状に移動させる構造の後輪駆動の歩行用芝刈機であっても、ハウジング外部へ刈草および小石などが飛散しないようにし、且つ芝面の凸部乗り上げによる走行不能を抑制することである。
【解決手段】
ハウジングの側方に車輪軸に支持された2部材で構成され、左右へのスライド移動および上方へのクランク移動が可能な飛散防護カバーを設けることで達成される。カバー部材は、上下方向に調節可能な車輪に追従して移動すると共に、ハウジングの下端より下方の領域を覆うよう構成していることで、小石や芝草が本体から飛び出るのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等の動力によって回転刃を駆動して芝を刈り取るための芝刈機に関し、特に、刈り高さ調節機能付きの自走式の芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の芝刈機において、垂直軸周りに回転する刈刃の回転軌跡の上面と側面とを覆うハウジングが設けられ、ハウジングの後方側に延出したハンドルを作業者が把持した状態で作業を行うものが知られている。芝刈機は芝面上を前方に移動する際に刈刃がその回転で芝を刈り取ると共に、刈り取られた刈草は、刈刃の回転に伴って発生する空気流とハウジングの内面に案内され、ハウジングの後方開口部に連結された集草部へ送られ集積される。芝刈機の移動には、作業者自身がハンドルを押す手押し式のものと、例えば駆動源の動力を利用して車輪を回転させることで移動を行う自走式のものがある。
【0003】
また、刈り高さの調整は、ハウジングの前後に配設された車輪の位置移動により調整する形式の芝刈機が多く普及しており、特に構造が簡単で操作が安易なレバー操作により車輪軸を円弧状に移動させる構造が主流となっている。そのため、ハウジングと芝面の間には、ハウジングの下端が芝面に当接し移動不可とならないよう隙間が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−230012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のようにハウジングの下端と芝面の間に隙間を設けると、刈刃で刈り取られ空気流で吹き飛ばされた刈草および、刈刃ではじかれた小石などの一部が隙間を通りハウジングの外部へ飛散してしまう可能性があるため、隙間は必要最小とすることが望ましい。しかしながら、車輪を円弧状に位置移動させ刈り高さを高くすると、ハウジングと芝面の間の隙間が広くなり、結果飛散物が多くなるという不都合があった。
【0006】
また、原動部を介して後輪駆動をする歩行用芝刈機において、芝面に突出部があると、ハウジングの下端が突出部に乗り上げ後輪が芝面より浮いて空転し、走行が困難となることがあり、特にハウジングの下端と芝面の隙間が小さいほど発生しやすく作業効率を著しく低下させるという不都合があった。
【0007】
本発明は、刈り高さを調整しても、ハウジング下端と芝面の間の隙間を一定とし、且つ前記隙間より高い芝面の突出部があっても、後輪駆動を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次の通りである。本発明の一つの特徴によれば、動力源と、動力源により回転する刈刃と、刈刃の周囲を覆う側壁を備えると共に、動力源を保持するハウジングと、ハウジングの前後に設けられ、少なくとも一方が動力源により回転駆動する車輪と、前後の車輪の間に設けられ、刈刃からみて側壁より外側を覆うカバー部材と、を備える芝刈機において、カバー部材は、ハウジングの前後方向に分割して設けられ、分割した各々のカバー部材が相対位置可変に接続して構成される。
【0009】
本発明の他の特徴によれば、車輪のうち少なくとも一方は、刈刃の取付高さに対して上下方向に調節可能に設けられる。
【0010】
本発明の他の特徴によれば、カバー部材は、上下方向に調節可能な車輪に追従して移動すると共に、ハウジングの下端より下方の領域を覆うよう設けられる。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、前後の車輪は、各々の間隔が可変に設けられる。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、分割可能なカバー部材は、一方が突起部を備え、他方が突起部が係止可能な長穴を備えて構成される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、動力源と、動力源により回転する刈刃と、刈刃の周囲を覆う側壁を備えると共に、動力源を保持するハウジングと、ハウジングの前後に設けられ、少なくとも一方が動力源により回転駆動する車輪と、前後の車輪の間に設けられ、刈刃からみて側壁より外側を覆うカバー部材と、を備える芝刈機において、カバー部材は、ハウジングの前後方向に分割して設けられ、分割したカバー部材が相対位置可変に接続されていることにより、歩行用芝刈機において車輪間から刈り草及び小石等がハウジング本体から外部へ飛散することを抑制すると共に、芝面に突出部があった場合にも乗り上げにより駆動輪が空回りすることを抑制できるため、作業効率を向上させることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、車輪のうち少なくとも一方は、刈刃の取付高さに対して上下方向に調節可能に設けられることにより、刈込高さを容易に調節することが可能となる。
【0015】
請求項3の発明によれば、カバー部材は、上下方向に調節可能な車輪に追従して移動すると共に、ハウジングの下端より下方の領域を覆うことにより、車輪が刈刃に対して上下方向に移動したとしても芝刈機から刈り草が飛散することを抑制できる。
【0016】
請求項4の発明によれば、前後の車輪は、各々の間隔が可変に設けられることにより、刈り高さの調整機構を簡単な構成で実現することが可能となる。
【0017】
請求項5の発明によれば、分割可能なカバー部材は、一方が突起部を備え、他方が突起部が係止可能な長穴を備えることにより、簡素な構成でカバー部材を構成することが可能となる。
【0018】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る芝刈機の上面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る芝刈機の側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る芝刈機の平面拡大図である。
【図4】飛散防止カバーの詳細図である。
【図5】刈高さを調節した時の芝刈機の側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る芝刈機の使用状態を示す説明図である。
【図7】従来の芝刈機の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の機能を有する部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係る芝刈機の上面図、図2は本発明の実施形態に係る芝刈機の側面図、図3は本発明の実施形態に係る芝刈機の平面拡大図である。本明細書において図1における紙面の左右方向を芝刈機1の前後方向、上下方向を左右方向、更に図2における紙面上下方向を芝刈機1の上下方向と定義し、説明を行う。図中の矢印7はこの芝刈機1の移動(作業)方向を示している。
【0022】
図1及び図2において、芝刈機1は、メインデッキ4(ハウジング)、駆動源としてのエンジン8、ハンドル5を備えている。
【0023】
メインデッキ4は、前後に設けられた左右一対の前車輪2および、後車輪3をそれぞれ車軸12および車軸13を中心に回転自在に支持している。メインデッキ4の上部には、エンジン8が、図示しないクランクシャフトが地面と垂直に上下方向に延びるよう横置きに配置されている。メインデッキ4の中央底部には、図示しないクラッチ等を介してクランクシャフトに連結される回転軸28が設けられ、回転軸28にはナタ状の刈刃10が固定されている。メインデッキ4は、刈刃10の回転軌跡の上面と外周面とを覆う平面視円形状をなすハウジング11を備えている。メインデッキ4のハウジング11はエンジン8の回転により起こされるファン風が流れるボリュート部の役割を果たし、後方側に形成された芝の排出口を介して、刈り取った芝を集層バッグ22と連通するよう設けられている。集層バッグ22は開口を備えた箱状に形成され、メインデッキ4の排出口に着脱可能となっている。
【0024】
メインデッキ4の後部には後上方に突出したハンドル5が設けられている。尚、エンジン8は、刈刃10だけでなくメインデッキ4に設けられた図示しない動力伝達機構により車輪3を回転可能なよう構成されており、芝刈機1を走行させることができるようになっている。ハンドル5には、ハンドル5には原動機8の図示しないスロットルに接続された駆動スイッチ6や、後輪駆動の動力伝達をオンオフの切替を行う操作スイッチが設けられている。
【0025】
車輪2、車輪3はそれぞれ、刈高さ調節レバー14を回動することで、高さ調整レバー14の回転軸15を中心に円弧移動し、メインデッキ4に対して複数の高さ位置で固定することができる。これによ刈刃4と芝面の位置が変わり刈高さを調整することができるようになっている。尚、このような刈高さ調整方式であるため、車輪2、3の刈刃4との高さ関係を調節する際に同時に前後方向にも移動することになり、車輪2と車輪3の間隔も変更される。
【0026】
メインデッキ4の外側には、飛散防護カバー20が設けられている。飛散防護カバー20は前側カバー16と後側カバー17とにより構成され、芝刈機1の左右にそれぞれ設けられている。前側カバー16と後側カバー17は、芝面と所定の間隔を有しながらメインデッキ4の下端4aより下方を覆っている。
【0027】
前側カバー16は、金属板からなり、一端が前輪2の車軸12に回動可能に設けられると共に他端側には突起部18が設けられ、前後方向に後側カバー17と一部がオーバーラップするよう設けられている。
【0028】
後側カバー17は、前側カバー16と同じく金属板からなり、一端が後輪3の車軸13に回動可能に設けられると共に他端側には1つの長穴部9および上端に曲げ部27が設けられている。
【0029】
飛散防護カバー20は、後側カバー17に設けた1つの長穴部19に後側カバー16に設けた1つの突起部18が勘め合わさることで図4(b)のように構成される。突起部18は長穴部19の内部を移動可能に設けられている。
【0030】
前側カバー16には1つの突起部18および上端に曲げ部26が設けられ、後側カバー17に当接すると共に後側カバー17の曲げ部27も同様に前側カバー16に当接することで、曲げ部27と共に飛散防護カバー20が下方に向かって折り曲がることを規制している。尚、曲げ部26、27は上端のみに設けられているため、飛散防護カバー16、17は下からの力により、突起部18が長穴部19内をスライド移動すると共に、前後方向の中央部近傍が折り曲がりながら上方に移動することが可能となっている。
【0031】
次にこのような芝刈機1の動作について説明する。エンジン8の駆動により、図中の点線矢印9で示す方向に刈刃10を回転させるとともに、後輪3が駆動され芝刈機1が矢印7方向に移動することで、刈刃10が芝面6の芝を順次刈り取る。刈刃10により刈り取られた刈草は、刈刃10の回転により発生した空気流23とハウジング11の内面に案内されて、図中の矢印23で示すように集草バッグ22内に排出される。
【0032】
空気流23は集草バッグ12を通過して外部に放出され、刈草のみが集草バッグ12内に残されて集積される。
【0033】
ここで、上記構成の芝刈機において、車輪2、車輪3の車軸には、飛散防護カバー16、17がそれぞれ回動自在に取り付けられているため、刈刃10により左右方向に飛散した刈草や小石等は飛散防護カバー20に阻まれて飛散を抑制される。
【0034】
図5は芝刈機1において前後の刈高さ調整レバー14を操作した2つの状態を示し、図5(b)は図5(a)より刈高さが低くなるよう操作されると共に、車輪2、3の間隔が広くなっている。上述のように、飛散防護カバー20は、二つの部材により構成されるものとしたため、図5のように車輪2、3が刈高さ調整のため円弧移動して車輪2、3の芯間距離が変化しても、飛散防護カバー20同士がスライド移動することで対応すると共に、飛散防護カバー20は、車輪2、3の車軸を支点としているため、飛散防護カバー20の下端と芝面との間の隙間は所定の間隔を維持するよう構成されている。
【0035】
また、図6のように芝面上に飛散防護カバー20の下端と芝面との間の隙間より高い突出部があり、前輪が突出部を乗り越え飛散防護カバー20が突出部に接触すると、図6のように前側カバー16、後側カバー17の接続部が上側にクランク移動することで、後輪が浮き上がり空転し走行不可能となることを抑制できる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるもの
ではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば上述の実施例
においては、操作部38を突起部35bと溝部40aによって第二回転刃22を移動させ
る構成としたが、ホルダ軸35に雄ねじを設け、コネクタ40に雌ねじを設ける構成とし
てもよく、これにより、操作レバー39を回転させることで第二回転刃22と第二固定刃
24の隙間を無段階で調整可能となる。また、第二ロッド36をワイヤーにし、小型のモ
ータで引き上げる手段や、アクチュエータを用いて移動させるなどの手段を用いることも
可能であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。さらに、固定刃及
び回転刃の刃部の形状、並びに回転刃を回転させる機構や固定刃及び固定刃をシャーシ2
に取付ける構造等は、上述の実施例に限定されず、その他の構造であっても良い。
【符号の説明】
【0036】
1は後輪駆動の歩行用芝刈機、2,3は車輪、4はメインデッキ、5はハンドル、6は芝面、7は芝刈機1の移動(作業)方向、8は原動機、9は刈刃回転方向、10は刈刃、11はハウジング、12は集草バッグ、13は矢印、14は刈高さ調節レバー、15は刈高さ調節レバーの回転軸、16は前側カバー、17は後側カバー、18は突起部、20は飛散防護カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源と、
前記動力源により回転する刈刃と、
前記刈刃の周囲を覆う側壁を備えると共に、前記動力源を保持するハウジングと、
前記ハウジングの前後に設けられ、少なくとも一方が前記動力源により回転駆動する車輪と、
前記前後の車輪の間に設けられ、前記刈刃からみて前記側壁より外側を覆うカバー部材と、を備える芝刈機において、
前記カバー部材は、前記ハウジングの前後方向に分割して設けられ、前記分割したカバー部材は相対位置可変に接続されることを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
前記車輪のうち少なくとも一方は、前記刈刃の取付高さに対して上下方向に調節可能に設けられることを特徴とする請求項1に記載の芝刈機。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記上下方向に調節可能な車輪に追従して移動すると共に、前記ハウジングの下端より下方の領域を覆うことを特徴とする請求項2に記載の芝刈機。
【請求項4】
前記前後の車輪は、各々の間隔が可変に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項5】
前記分割可能なカバー部材は、一方が突起部を備え、他方が前記突起部が係止可能な長穴を備えて構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−110296(P2012−110296A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263765(P2010−263765)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】