説明

芳香族アゾメチン樹脂の製造方法

【課題】安価に入手可能な原料を用いて、溶解性に優れ、且つ機械的強度の高い芳香族アゾメチン樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】下記式Iで表される芳香族ジアミン及び下記式IIで表される芳香族ジアルデヒドのうち少なくとも一方を含む原料を、溶媒中で縮合反応することを含む、芳香族アゾメチン樹脂の製造方法であって、前記芳香族ジアルデヒド及び芳香族ジアミンの合計100重量部に対して、前記縮合反応中の前記溶媒が5〜100重量部となるように制御する、芳香族アゾメチン樹脂の製造方法。


上記式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族アゾメチン樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドを混合加熱して得られる芳香族アゾメチン樹脂は、硬くて耐熱性に優れる。そのため、電子機器・電気機器用の材料としてだけでなく、宇宙分野、航空分野や電子通信分野など、幅広い分野での利用が期待されている樹脂である。
【0003】
上記の用途に用いるために芳香族アゾメチン樹脂をシートやフィルムに加工する場合、芳香族アゾメチン樹脂の有する性質に起因して、何らかの処理が別途に必要となる。そこで、様々な試みがなされている。
【0004】
例えば、メタ配置の芳香族ジアミンと、メタ配置の芳香族ジアルデヒドと、不飽和アミンとを、溶媒中で縮合反応させることにより芳香族アゾメチンを合成する技術が開示されている(特許文献1〜3)。
【0005】
また、例えば、側鎖にフッ素を導入した置換基を有する芳香族アゾメチン樹脂を合成する技術が開示されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−140067
【特許文献2】特開平5−140069
【特許文献3】特開平5−163347
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】PNANAV KUMAR GUTCH,Journal of Polymer Science;PartA:Polymer Chemistry,Vol.39,p.383−388(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示の技術に基づいたとしても、機械的強度の高い芳香族アゾメチン樹脂が得られ難いという問題がある。また、非特許文献1に開示の技術に基づいたとしても、芳香族アゾメチン樹脂合成の原料となる、フッ素を導入した置換基を有する芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドは、非常に高価であり、原料として一般的ではないため、実用上適さないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、安価に入手可能な原料を用いて、溶解性に優れ、且つ機械的強度の高い芳香族アゾメチン樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、メタ配置を有する、芳香族ジアルデヒド及び芳香族ジアミンのうち少なくとも一方を原料として用いることにより、溶媒への溶解性に優れる芳香族アゾメチン樹脂が得られることを見出した。
【0011】
しかし、上記の芳香族アゾメチン樹脂を用いてフィルムを製造しようとすると、前記芳香族アゾメチン樹脂が折れ曲がった構造を採ることから、合成中に分子が十分に伸張できず、そのため、高い強度のフィルムを得ることは困難であった。
【0012】
そこで、本発明は、芳香環がメタ配置を有する化合物を用いた場合であっても、高い強度のフィルムが得られる芳香族アゾメチン樹脂の所定の重合条件が存在することを見出した。前記所定の重合条件とは、メタ配置の芳香族ジアミンとメタ配置の芳香族ジアルデヒドとを溶媒中で縮合反応させる方法において、前記芳香族ジアミン及び前記芳香族ジアルデヒドの合計100重量部に対し、溶媒を5〜100重量部で反応させるというものである。以上の知見に基づき、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、本発明の一態様は、下記式Iで表される芳香族ジアミン及び下記式IIで表される芳香族ジアルデヒドのうち少なくとも一方を含む原料を、溶媒中で縮合反応することを含む、芳香族アゾメチン樹脂の製造方法であって、前記芳香族ジアルデヒド及び芳香族ジアミンの合計100重量部に対して、前記縮合反応中の前記溶媒が5〜100重量部で調整し、反応させる、芳香族アゾメチン樹脂の製造方法である。
【化1】

【化2】

【0014】
上記式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数20以下のアルキル基である。
【0015】
また、本発明の他の態様は、下記式Iで表される芳香族ジアミン及び下記式IIで表される芳香族ジアルデヒドを、溶媒中で縮合反応することを含む、芳香族アゾメチン樹脂の製造方法であって、前記芳香族ジアルデヒド及び芳香族ジアミンの合計100重量部に対して、前記縮合反応中の前記溶媒が5〜100重量部で調整し、反応させる芳香族アゾメチン樹脂の製造方法である。
【化3】

【化4】

【0016】
上記式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数20以下のアルキル基である。
【0017】
また、本発明の他の態様は、上記の製造方法により得られた芳香族アゾメチン樹脂に溶媒をさらに添加し、当該樹脂溶液の粘度を低下させることを含む、キャスト溶液の製造方法である。
【0018】
また、本発明のさらに他の態様は、上記の製造方法により得られたキャスト溶液をキャストし、加熱乾燥することを含む、フィルムの製造方法である。
【0019】
また、本発明のさらに他の態様は、上記の製造方法により得られたキャスト溶液に芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドをさらに添加し、得られた溶液をキャストし、加熱乾燥することを含むフィルム状芳香族アゾメチン樹脂の製造方法であって、さらに添加した前記芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドの縮合反応と、フィルムの乾燥とを同時に行わせる、フィルム状芳香族アゾメチン樹脂の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、安価に入手可能な原料を用いつつ、溶解性に優れ、且つ機械的強度の高い芳香族アゾメチン樹脂が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】芳香族ジアルデヒドとしてテレフタルアルデヒド、及び芳香族ジアミンとして2,4-ジアミノトルエンを用いた場合に、分子全体が丸くなる様子を示した概略図である。
【図2】実施例1により得られた芳香族アゾメチン樹脂が、アゾメチンに特有な−HC=N−基を有することを核磁気共鳴(NMR)スペクトルにより確認したグラフである。
【図3】実施例1により得られた芳香族アゾメチン樹脂が、アゾメチンに特有な−HC=N−基を有することを赤外線吸収(IR)スペクトルにより確認したグラフである。
【図4】実施例1により得られた芳香族アゾメチン樹脂の分子量を推定するために行った、GPCによる評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0023】
本実施の形態に係る芳香族アゾメチン樹脂の製造方法は、下記式Iで表される芳香族ジアミン及び下記式IIで表される芳香族ジアルデヒドのうち少なくとも一方を含む原料を、溶媒中で縮合反応することを含み、前記芳香族ジアルデヒド及び芳香族ジアミンの合計100重量部に対して、前記縮合反応中の前記溶媒が5〜100重量部で調整し、反応させるものである。
【化5】

【化6】

【0024】
上記式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数20以下のアルキル基である。
【0025】
また、上記した本実施の形態の中でも、上記式Iで表される芳香族ジアミン及び上記式IIで表される芳香族ジアルデヒドを共に用いて溶媒中で縮合反応することもまた、後述の理由より好ましいといえる。
【0026】
本実施の形態の製造方法により得られる芳香族アゾメチン樹脂は、平面構造になりやすいと考えられる。
【0027】
また、前記芳香族アゾメチン樹脂中のベンゼン環はメタ配置を有するため、分子が折れ曲がり、分子量が増大し難い高分子であると考えられる。
【0028】
このような高分子の例を図1に示す。図1は、芳香族ジアルデヒドとしてテレフタルアルデヒド、及び芳香族ジアミンとして2,4-ジアミノトルエンを用いた場合に、分子全体が丸くなる様子を示した概略図である。換言すれば、図1は、(環状の)芳香族アゾメチン樹脂の一例を示す概略図である。かかる場合、重合開始点(図1中の「始点」)へ重合終点(図1中の「終点」)が近づくため、環状の高分子を生成する可能性が高いと考えられる。
【0029】
そして、この環状の高分子の分子量は10,000以下(場合によっては1,000以下)となり得る。このように小さな分子量では、芳香族アゾメチン樹脂を強度の高いフィルムに加工することが極めて困難となる。
【0030】
本発明者らは、かかる困難性を解決するために鋭意研究した。その結果、このように小さな環状となりやすい高分子であっても、重合時の固形分濃度を極めて高く保ちながら重合を進めることにより、分子量を高くさせることができることを見出した。下記式IIIは、小さな環状高分子が組み合うことで分子量が増大すると推定した模式的な式である。
【化7】

【0031】
実際、上記の重合方法により合成された芳香族アゾメチン樹脂は、フィルムに加工しても十分な強度を有する。
【0032】
一方、重合時の固形分濃度が十分に高くない場合、分子量は殆ど増大せず、結果的に芳香族アゾメチン樹脂をフィルムに加工しても、極めて低い強度に留まる。
【0033】
後述するように、芳香族ジアミンと芳香族ジアルデヒドとの合計100重量部に対し、溶媒が100重量部以下となるような高い濃度で重合を行うと、芳香族アゾメチン樹脂の分子量が大幅に増大する。
【0034】
芳香族アゾメチン樹脂の製造方法は、以下に制限されないが、例えば、下記式IVに示すスキームに従って製造(合成)することができる。
【化8】

【0035】
芳香族アゾメチン樹脂は、上記スキームの通り、芳香族ジアミンと芳香族ジアルデヒドとを溶媒中で混合し、加熱攪拌することにより合成することができる。本実施の形態においては、溶媒への溶解性を向上させる観点から、上記の芳香族ジアルデヒド及び芳香族ジアミンとして、分子に湾曲構造を与えるメタ配置を有する化合物が少なくとも含まれる。
【0036】
<芳香族ジアミン>
【0037】
本実施の形態における、原料としての芳香族ジアミンは、下記式Iで表される。
【化9】

【0038】
上記式中、R1は、水素原子又は炭素数20以下のアルキル基を示す。
【0039】
R1が採り得る炭素数20以下のアルキル基としては、以下に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n―ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロプロピルエチル基、及びシクロブチルメチル基が挙げられる。R1が採り得る炭素数が20以下であると、得られる芳香族アゾメチン樹脂の溶解性が向上する。R1は、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基であることがより好ましい。
【0040】
上記式Iで表される芳香族ジアミンとしては、以下に制限されないが、アミノ基がメタ配置を採っており、且つ分子に剛直構造及び湾曲構造を与えるという観点から、1,3−ジアミノベンゼン(メタフェニレンジアミンともいう)、及び2,4−ジアミノトルエンが好ましい。中でも、溶媒への溶解性が一層向上するという観点から、ベンゼン環にメチル基が付いている2,4−ジアミノトルエンがより好ましい。
【0041】
ここで、芳香族ジアルデヒド(後述)のアルデヒド基がメタ配置を有する場合には、芳香族ジアミンはメタ配置を有さなくてもよい。かかる場合には、芳香族ジアミンとして、例えば、パラ配置を有するパラフェニレンジアミンを用いてもよい。
【0042】
<芳香族ジアルデヒド>
【0043】
本実施の形態における、原料としての芳香族ジアルデヒドは、下記式IIで表される。
【化10】

【0044】
上記式中、R2は、水素原子又は炭素数5以下のアルキル基を示す。
【0045】
R2が採り得る炭素数5以下のアルキル基としては、以下に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n―ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロプロピルエチル基、及びシクロブチルメチル基が挙げられる。なお、上記のR1及びR2はそれぞれ独立している。
【0046】
芳香族ジアルデヒドとしては、以下に制限されないが、アルデヒド基がメタ配置を有し、且つ分子に剛直構造を与える化合物の例として、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボキシアルデヒド、イソフタルアルデヒド、及びテレフタルアルデヒドが挙げられる。中でも、分子に剛直構造且つ湾曲構造を与えるという観点から、イソフタルアルデヒドが好ましい。
【0047】
ここで、上記と同様に、芳香族ジアミン(上述)のアミノ基がメタ配置を有する場合には、芳香族ジアルデヒドはメタ配置を有さなくてもよい。かかる場合には、芳香族ジアルデヒドとして、以下に制限されないが、例えば、パラ配置のテレフタルアルデヒドを用いることができる。
【0048】
上記式IIで表される芳香族ジアルデヒド以外の芳香族ジアルデヒドを適宜加えてもよい。このような芳香族ジアルデヒドとして、以下に制限されないが、分子に剛直構造を与えるという観点から、2,2'−ビピリジン−4,4’−ジカルボキシアルデヒドが挙げられる。
【0049】
<その他の原料成分>
【0050】
本実施の形態における原料に含まれるモノマー成分は、上記した芳香族ジアミンと芳香族ジアルデヒドとからなることが好ましい。即ち、かかる場合には、本実施の形態に係る芳香族アゾメチン樹脂の製造方法は、上記式Iで表される芳香族ジアミン及び上記式IIで表される芳香族ジアルデヒドを溶媒中で縮合反応することを含むものである。
一方、本実施の形態における原料に含まれるモノマー成分として、上記した芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドの他に、場合により、逆に重合度を小さい方向へと制御する目的で、芳香族モノアミンや芳香族モノアルデヒドを少量加えてもよい。芳香族モノアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、アニリン、メタトルイジン、パラトルイジン、メタアミノベンゾニトリル、パラアミノベンゾニトリルが挙げられる。芳香族モノアルデヒドとしては、以下に制限されないが、例えば、ベンズアルデヒドが挙げられる。
【0051】
<溶媒>
【0052】
本実施の形態における溶媒は、上記原料、即ち縮合反応の出発原料をある程度溶解するものであって、縮合反応を阻害しないものであれば、特に制限されることはない。例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、及びテトラヒドロフランが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、溶解性が良好であって沸点が比較的低いため、除去しやすいという観点から、ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0053】
上記溶媒の添加量は、本発明の技術的原理に関わる。具体的にいえば、本発明の技術的原理は、「原料/(原料+溶媒)」で表される原料の濃度を極力高くする、即ち、溶媒の添加量を極力少なくした上で、所定の縮合反応を行うことである。
【0054】
かかる方法を具体的に説明すると、原料中の上記式Iで表される芳香族ジアミン及び上記式IIで表される芳香族ジアルデヒドの合計(100重量部とする)に対して、上記溶媒が5〜100重量部(好ましくは5〜80重量部)となるように制御するというものである。
【0055】
上記溶媒量が100重量部以下の場合には、分子量が増大し、結果として強度の高い樹脂は得られやすくなる傾向となる(上記溶媒量が80重量部以下の場合にはかかる傾向が一層強くなる)。他方、上記溶媒量が5重量部以上の場合、縮合反応中の攪拌が極めて容易となり、反応自体がスムーズに進む。このように、溶媒量を上記所定の範囲として縮合反応を行うことによって、芳香族アゾメチン樹脂が高い収率で合成されると共に、得られる芳香族アゾメチン樹脂の物性(強度など)が非常に優れたものとなる。
【0056】
さらに、上記溶媒の量は、上述した通り、5〜80重量部となるように制御することが好ましい。より好ましくは5〜50重量部であり、さらに好ましくは10〜30重量部である。
【0057】
上述のように、芳香族アゾメチン樹脂を製造しようとする際、従来技術では、環状の高分子は、分子量が10,000以下(場合によっては1,000以下)の非常に小さな高分子しか得られなかった。しかし、溶媒量を上記のように制限して縮合反応を行うことにより、環状体同士が組み合って、得られる(環状の)芳香族アゾメチン樹脂の分子量を有意に増大させることができる。本実施の形態により得られる芳香族アゾメチン樹脂の分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上である。
【0058】
また、本実施の形態により、分子量が増大した場合、直線状に分子量が増大する場合と比べて、溶解性がより阻害されにくいという利点を併せ持つ。
【0059】
<縮合反応を含む芳香族アゾメチン樹脂の製造条件>
【0060】
縮合反応の温度や時間については、以下に制限されないが、通常、窒素雰囲気下、50℃〜150℃程度で30分〜5時間反応させればよい。ここで、上記した好ましい溶媒であるジメチルホルムアミドを用いる場合には、縮合反応中に生じ得る副反応を防ぐ観点から、140℃で約2時間反応させることが好適である。
【0061】
また、縮合反応という観点から、原料である芳香族ジアルデヒド及び芳香族ジアミンは、アミン基:アルデヒド基が1:1(モル比)となるように配合することが好ましい。
【0062】
縮合反応により、副生成物として水が発生する。かかる水を除去するためには、フラスコ内に窒素を流して乾燥させる方法か、又は縮合反応中にトルエンを滴下し共沸により除く方法を用いることが好ましい。トルエンの滴下量は、原料を溶解する溶媒100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましい。
【0063】
[キャスト溶液の製造方法]
【0064】
第2の実施の形態に係るキャスト溶液の製造方法は、上記第1の実施の形態に係る製造方法により得られた芳香族アゾメチン樹脂に溶媒をさらに添加し、当該樹脂溶液の粘度を低下させることを含む。
【0065】
上記した本実施の形態に係る製造方法により得られた芳香族アゾメチン樹脂の溶液は、粘度が比較的高くなる。そこで、本発明者らは、適量の溶媒をさらに添加し、当該樹脂溶液の粘度を下げることが好ましいことを見出した。そして、当該樹脂溶液の粘度を下げることにより、その後のハンドリングやフィルムの製造が一層容易となる。
【0066】
ここで、上記「適量」とは、原料100重量部に対して、追加する溶媒が50〜300重量部の範囲を意味する。また、フィルムをキャストするのに不都合がなければ、前記「適量」の範囲に300重量部超も含まれ得る。
【0067】
本実施の形態の製造方法により所望のキャスト溶液を得るためには、上記第1の本実施の形態に係る製造方法により得られた芳香族アゾメチン樹脂が出発物質として必要である。なぜなら、かかる芳香族アゾメチン樹脂は、メタ配置を有する、芳香族ジアミン及びメタ配置を有する芳香族ジアルデヒドのうち、少なくとも一方を主たる原料としている。しかし、主たる原料として、メタ配置を有さない芳香族ジアミン且つメタ配置を有さない芳香族ジアルデヒドを用いた場合には、得られる樹脂は難溶性となる。そのため、キャスト溶液を製造できないからである。
【0068】
上記の芳香族ジアミン又は芳香族ジアルデヒドのうち少なくともいずれか一方をメタ配置にすることにより、得られる芳香族アゾメチン樹脂は可溶性となる。これに対し、芳香族ジアミン又は芳香族ジアルデヒドが共にパラ配置の場合には、得られる芳香族アゾメチン樹脂は難溶性となる。なお、芳香族アゾメチン樹脂の合成用原料である芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドにおけるメタ配置のもののモル数としては、以下に制限されないが、得られる芳香族アゾメチン樹脂を可溶性にするという観点から、前記原料中の芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドのうち、50モル%以上がメタ配置をとっているものであることが好ましい。
【0069】
低下後の粘度としては、特に制限されないが、ハンドリングを一層容易にする観点から、100Pa・s以下が好ましく、20〜70Pa・sがより好ましい。その後、ろ過などによって溶液中のゴミ等を除いて得られた液は、そのままキャスト溶液として用いることができる。なお、本明細書における「粘度」は、TOKI産業(株)製のTV22型回転粘度計を用いて、25℃で測定して得られる値である。
【0070】
さらに添加し得る上記溶媒としては、以下に制限されないが、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、及びテトラヒドロフランが挙げられる。中でも、乾燥の容易さと、乾燥中に泡を生じにくいという観点から、沸点が150℃程度の溶剤として、好ましくは、ジメチルホルムアミドである。
【0071】
上記溶媒をさらに添加し得るタイミングとしては、以下に制限されないが、例えば、芳香族アゾメチン樹脂を合成するための縮合反応後が挙げられる。特に、縮合反応後の溶液には、上記列挙した溶媒を用いてもよいし、代わりに貧溶媒を加えてもよい。これにより、高分子を析出させることができ、これを分離、乾燥すれば粉体の形で得ることができる。なお、前記貧溶媒としては、以下に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノール等のアルコール類、ペンタン、ヘキサン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、並びに水(好ましくは多量の水)が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
[フィルムの製造方法]
【0073】
第3の実施の形態に係るフィルムの製造方法は、上記第2の本実施の形態に係る製造方法により得られたキャスト溶液を原料として、これをキャストし、加熱乾燥することを含む。以下、具体例を挙げつつ説明する。
【0074】
まず、前記キャスト溶液を、ポリエチレンテレフタレートの支持シート上に、ナイフコーター等を用いて均一にキャストを行う。次に、120〜200℃に制御された加熱オーブン中で10分〜2時間加熱乾燥することによって、所望のフィルムが得られる。
【0075】
[フィルム状芳香族アゾメチン樹脂の製造方法]
【0076】
第4の実施の形態は、フィルム状芳香族アゾメチン樹脂の製造方法に係る。具体的には、上記のキャスト溶液に、芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドをさらに添加し、得られた溶液をキャストし、加熱乾燥することを含み、さらに添加した前記芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドの縮合反応と、フィルムの乾燥とを同時に行わせることによって、所望のフィルムを製造することができる。かかるフィルムは、フィルム状の芳香族アゾメチン樹脂と換言することができる。さらに、加える芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドとしては、以下に制限されないが、例えば、メタ配置のものを含むことなくパラ配置を有する、芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドを用いてもよい。
【0077】
本実施の形態の芳香族アゾメチン樹脂をフィルム化する方法としては、上述の方法以外にも、以下に制限されないが、押出機及びTダイを用いたフィルム成形、並びに平行平板プレス機及び金型を用いたプレス成形などの公知の方法を用いてもよい。
【0078】
本実施の形態の技術的原理は、上記した芳香族アゾメチン樹脂の製造の後に行われ得るフィルムの製造の際に、さらに原料(芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドを含む)を加えることによって、フィルムを乾燥させるのと同時に、芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドを縮合反応させるというものである。
【0079】
上記第1の本実施の形態により得られる芳香族アゾメチン樹脂を製造するための主たる原料として、メタ配置を有する、芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドのうち、少なく一方であることが好ましい。
また、上記第1の本実施の形態により得られる芳香族アゾメチン樹脂を製造するための主たる原料として、メタ配置を有さない芳香族ジアミン且つメタ配置を有さない芳香族ジアルデヒドを用いた場合、得られる樹脂が難溶性となるため、キャスト溶液を製造できない。しかし、上記第3の本実施の形態により得られるキャスト溶液に、メタ配置を有さない芳香族ジアミン及びメタ配置を有さない芳香族ジアルデヒドを少量加えた場合、例外的に所望のフィルムを成形することができる。
【0080】
本実施の形態においてさらに添加する芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドとして、上記第1の本実施の形態とは異なり、特に制限されることはなく、例えば、両方ともパラ配置を有するパラフェニレンジアミン及びテレフタルアルデヒドを使用してもよい。即ち、本実施の形態に限っては、メタ配置を有する、芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドを全く使用しなくてもよい。換言すれば、本実施の形態で用いられる芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドは、オルト配置、メタ対置及びパラ配置よりなる群から選択される1種以上を有する。そして、前記オルト配置及びパラ配置を有する芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドとしては、以下に制限されないが、例えば、上記式I及び式IIで表されたメタ配置の化学式を、それぞれオルト配置及びパラ配置に置き換えたものが挙げられる。
【0081】
ただし、本実施の形態においてさらに添加する芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドの合計量は、上記キャスト溶液の固形分(100重量部)に対して、5〜100重量部であることが好ましい。上記範囲内の場合、フィルムの乾燥中に生じ得る、フィルム内部での不溶性の芳香族アゾメチン樹脂の凝集を防止でき、フィルムの表面性を向上させることができるとともに、添加の効果を十分に発揮させることができるからである。上記の理由に基づき、さらに添加する芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドの合計量は、上記キャスト溶液の固形分(100重量部)に対して、5〜50重量部であることがより好ましい。
【0082】
このような、メタ配向に限られない、芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドのさらなる添加の目的や効果は多様である。例えば、パラ配置を有する、芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドを添加すると、得られるフィルム状芳香族アゾメチン樹脂の線膨張率が低下し、且つ導電性が向上するなどの有利な効果が得られる。
【0083】
上記第1の本実施の形態により得られる芳香族アゾメチン樹脂、上記第3の本実施の形態により得られるフィルム、及び本実施の形態により得られるフィルム状芳香族アゾメチン樹脂はいずれも、高い耐熱性及び機械的強度のバランスに優れている。そのため、これらは、電気・電子部品、自動車部品、銅張り積層基板、耐火コーティング及び複合材マトリクス樹脂などに好適に用いられる。
【0084】
また、上記した目的物が全共役となる分子構造を有する場合には、優れた導電性も得られる。特に、分子中に電気陰性度の高い窒素原子を有するため、N型の半導体としての特性が十分に発揮され得る。
【実施例】
【0085】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに制限されるものではない。なお、以下において、「%」とは、質量%を意味する。
【0086】
[測定方法]
【0087】
本明細書における物性などの各測定方法は以下の通りである。
【0088】
<赤外線吸収スペクトル(IRスペクトル)>
【0089】
Bomem Michelson MB100 FT−IR スペクトロメータを用いて、FT−IRスペクトルを測定した。その際、KBrのペレットを測定に用い、乾燥空気中でのスペクトル積算回数は32回であった。
【0090】
<核磁気共鳴スペクトル(NMRスペクトル)>
【0091】
Varian Inova社製の1H−NMR(600MHz)を用いた。その際、重水素ジメチルスルホキシドを測定に使用し、 スペクトル積算回数は256回、緩和時間は10秒であった。
【0092】
<引張強度及び引張弾性率>
【0093】
インストロン Model 5565 ユニバーサルテスト機を用いた。その際、試料片にはTypeV ASTM D6−38−03を用い、引っ張り速度は1mm/分であった。
【0094】
<線膨張率>
【0095】
エスエスアイ・ナノテクノロジー社製のTMA/SS6100を用い、20〜120℃で加熱した時の線膨張率を測定した。
【0096】
<ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)スペクトル>
【0097】
ウォーターズ社製のWaters 440 ultraviolet(UV) detectorを用いた。その際、ポアサイズ1,000nm、100nm及び50nmの各スチレンゲルが充填されたカラムを直列につなぎ、溶出液にテトラヒドロフランを使用して測定した。
【0098】
<耐熱分解性>
【0099】
熱重量分析装置の高解像度のTGA2950(TAインスツルメント社製)を用いて、5℃/分の昇温速度で、5%重量が減少した時の温度(Td5%)を測定した。
【0100】
[実施例1]
【0101】
還流器を取り付けた容量300ccの丸底フラスコに、原料として、2,4−ジアミノトルエン(和光純薬製、品番201―06295)12.2g(0.1モル)、及びテレフタルアルデヒド(和光純薬製、品番203―03592)13.4g(0.1モル)を加えた。そして、フラスコ内に窒素を5mL/分の速度で30分間流して、窒素置換を行った。
【0102】
原料の合計量は25.6gであるが、これに対して20重量部、即ち5.1gのジメチルホルムアミド(和光純薬製、品番045−02916)を加えて、140℃に設定したオイルバス中で加熱溶解した。
【0103】
さらに、30mL/時の速度で、ゆっくりとトルエンをフラスコ内へ滴下した。滴下したトルエンは、縮合反応中に発生した水分と共沸化合物を形成し、当該共沸化合物を窒素の気流によって系外へと排気した。
【0104】
反応を進めるために、攪拌羽根を用いて120回転/分の速度で攪拌を行った。そして、攪拌が困難になる程度(反応開始から約20分後)まで粘度を上昇させた。その後は、静置した状態で2時間、反応を継続させた。
【0105】
次に、系内の粘度を下げるために、20gのジメチルホルムアミドをフラスコ内にさらに添加して、ゆっくりと攪拌しながら、全体が均一になるまで2時間攪拌を続け、その後常温まで冷却した。この溶液内のゴミ等をろ紙(東洋濾紙社製、商品名ADVANTEC4A)付きの吸引ろ過で除去した後、キャスト溶液として20℃で保存した。
【0106】
続いて、上記キャスト溶液の一部を、大量のメタノール中へ攪拌しながら滴下することによって固体を析出させた後、40℃に加熱した真空オーブン中で24時間、真空乾燥を行い、芳香族アゾメチン樹脂を得た。その後、破砕し、粉体とした上で、これを以下の分析用サンプルとした。
【0107】
得られた芳香族アゾメチン樹脂が、アゾメチンに特有な−HC=N−基を有することをNMRスペクトルにより確認した(図2)。−HC=N−基中の水素原子の化学シフトは、8.7〜8.8ppmと他に比して特に高いため、芳香族中の水素原子と明確に区別することができる。したがって、図2に示すように、2本の鋭いピークが所定の領域(図中の2本の矢印で指した部分)に見られることを確認した。
【0108】
また、得られた芳香族アゾメチン樹脂が、アゾメチンに特有な−HC=N−基を有することをIRスペクトルにより確認した(図3)。アゾメチン中のイミン官能基に特異的な吸収は、3050cm-1に観測される弱い吸収(図中の左側の矢印が示す部分)と1620cm-1に観測される強い吸収(図中の右側の矢印が示す部分)とがあるとされている。図3に示すように、これら2つの特異的な吸収を確認することができた。
【0109】
また、得られた芳香族アゾメチン樹脂の分子量を推定するために行った、GPCによる評価の結果を図4に示す。図4の結果より、Mn(数平均分子量)は8,200(ポリスチレン換算値)であり、Mw(重量平均分子量)は27,400(ポリスチレン換算値)であることが分かった。
【0110】
上記で製造した芳香族アゾメチン樹脂の溶液を、ポリエチレンテレフタレートの支持シート上に、クリアランスを0.5mmに調整したナイフコーターを用いて均一にキャストした。その後、145℃に設定した熱風オーブン中で2時間加熱乾燥することによって、厚さ60μmのシート状フィルムを得た。
【0111】
かかるフィルムの耐熱分解性、引張強度及び引張弾性率、並びに線膨張率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0112】
[実施例2]
【0113】
実施例1と同じ方法により製造したキャスト溶液40gを使用した。この溶液の固形分量は約20gであった。パラフェニレンジアミン1.08g(0.01モル)とテレフタルアルデヒド1.34g(0.01モル)とを前記キャスト溶液中に溶解させた。こうして得られた溶液を、実施例1と同じ方法でフィルム化し、フィルム状の芳香族アゾメチン樹脂を得た。当該樹脂の耐熱分解性、引張強度及び引張弾性率、並びに線膨張率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0114】
[比較例1]
【0115】
縮合反応時に加えた溶媒の量を、実施例1(5.1g)とは異なり、30gとした(約117重量部)。この点以外は、全て実施例1と同様にして芳香族アゾメチン樹脂を製造した。得られた芳香族アゾメチン樹脂の分子量を推定するために行った、GPCによる評価の結果を図4に示す。図4の結果より、Mn(数平均分子量)は2,100(ポリスチレン換算値)であり、Mw(重量平均分子量)は5,400(ポリスチレン換算値)であることが分かった。
【0116】
実施例1と比較例1との間で分子量(Mn、Mw)を比較すると、比較例1の方が有意に低分子量であることが分かった。比較例1では、縮合反応中の溶液の粘度上昇が殆ど見られなかった。そこで、さらに溶媒を加えることなく、縮合反応後に得られた樹脂をそのままキャスト溶液として用い、フィルムを製造した。得られたフィルムの耐熱分解性、引張強度及び引張弾性率、並びに線膨張率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0117】
[比較例2]
【0118】
<芳香族アゾメチン樹脂の製造(不溶化による失敗例)>
【0119】
縮合反応用原料に、パラフェニレンジアミン(和光純薬・品番164―01532)10.8g(0.1モル)とテレフタルアルデヒド(和光純薬・品番203―03592)13.4g(0.1モル)、及び溶媒としてジメチルホルムアミド50gを用いた点以外は、全て実施例1と同様にして反応を開始した。しかし、約20分後には反応溶液全体が濁り、2時間後に冷却したところ、ほぼ全ての樹脂が沈殿してしまい、以後の操作を行うことができなかった。
【表1】

【0120】
実施例2では、分子形状が直線型である高分子が含まれるため、線膨張率が有意に低くなったと考えられる。比較例1では、縮合反応時の溶媒量が多い点以外は、全て実施例1と同様にしてサンプルを調整したが、分子量が有意に小さいことに起因して、実施例1及び2に比して引張強度が劣っていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の製造方法により得られる新規な芳香族アゾメチン樹脂は、耐熱性及び機械的強度のバランスに優れている。そのため、前記芳香族アゾメチン樹脂は、電気・電子部品、自動車部品、銅張り積層基板、プリント基板、耐火コーティングや複合材マトリクス樹脂などに好適に用いられる。特に、前記芳香族アゾメチン樹脂は2重結合と1重結合とが交互に現れる共役構造を有するため、今後、導電性高分子としての利用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iで表される芳香族ジアミン及び下記式IIで表される芳香族ジアルデヒドのうち少なくとも一方を含む原料を、溶媒中で縮合反応することを含む、芳香族アゾメチン樹脂の製造方法であって、
前記芳香族ジアルデヒド及び芳香族ジアミンの合計100重量部に対して、前記縮合反応中の前記溶媒が5〜100重量部で調整し、反応させる芳香族アゾメチン樹脂の製造方法。
【化1】

【化2】

上記式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数20以下のアルキル基である。
【請求項2】
下記式Iで表される芳香族ジアミン及び下記式IIで表される芳香族ジアルデヒドを、溶媒中で縮合反応することを含む、芳香族アゾメチン樹脂の製造方法であって、
前記芳香族ジアルデヒド及び芳香族ジアミンの合計100重量部に対して、前記縮合反応中の前記溶媒が5〜100重量部で調整し、反応させる芳香族アゾメチン樹脂の製造方法。
【化3】

【化4】

上記式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数20以下のアルキル基である。
【請求項3】
前記溶媒は、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、及びテトラヒドロフランよりなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の芳香族アゾメチン樹脂の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により得られた芳香族アゾメチン樹脂に溶媒をさらに添加し、該樹脂溶液の粘度を低下させることを含む、キャスト溶液の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒は、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アルコール類、脂肪族炭化水素類、及び水よりなる群から選択される1種以上である、請求項4に記載のキャスト溶液の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の製造方法により得られたキャスト溶液をキャストし、加熱乾燥することを含む、フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の製造方法により得られたキャスト溶液に、芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドをさらに添加し、得られた溶液をキャストし、加熱乾燥することを含むフィルム状芳香族アゾメチン樹脂の製造方法であって、
さらに添加した前記芳香族ジアミン及び芳香族ジアルデヒドの縮合反応と、フィルムの乾燥とを同時に行わせる、フィルム状芳香族アゾメチン樹脂の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−280857(P2010−280857A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136734(P2009−136734)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】