説明

芳香族アミド類の製造法

【課題】工業薬品、特にカラー写真感光材料に用いられるシアンカプラーとしての使用において十分な高品質の芳香族アミド類を工業的に容易に製造する方法を提供する。
【解決手段】o−ニトロフェノール類を炭素数10以下の芳香族系不活性溶媒中、白金系触媒の存在下に接触還元しo−アミノフェノール類を得、これを単離することなく硫黄分含量が0.5%以下(酸クロリド重量基準)のフェノキシアルカン酸クロリド類と、酸素濃度が1%以下の不活性ガス雰囲気下で縮合反応させて、式(4)で示される芳香族アミド類を得る製造法であって、アミド化縮合反応後、芳香族系不活性溶媒を減圧下で濃縮し、芳香族アミド類を晶析する工程を含む式(4)で示される芳香族アミド類の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー写真薬シアンカプラーとして用いられる芳香族アミド類の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー写真薬シアンカプラーとして使用される芳香族アミド類の製造法としては、o−アミノフェノール類を酢酸中で、酢酸ソーダの存在下、酸クロリド類と縮合反応させる方法(特許文献1) 、o−アミノフェノール類の塩酸塩をアセトン溶媒中、キノリンの存在下に酸クロリド類と反応させる方法(特許文献2)、Ni系触媒で水添して得られるo−アミノフェノール類を酸クロリド類と縮合反応させる方法(特許文献3)、o−アミノフェノール類の塩酸塩を酸クロリド類と縮合反応させる方法(特許文献4)等が知られている。
【0003】
しかしながらこれらの方法では、o−アミノフェノール類を塩酸塩や硫酸塩として一旦分離する工程、あるいは、水などの貧溶媒で稀釈晶析して芳香族アミド類を分離する工程が必要であることから、得られた芳香族アミド類の品質がカラー写真薬シアンカプラーとしての使用においては十分なものではないと言う問題点や、溶媒の回収、再使用が容易でない等の問題点があった。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−73258号公報
【特許文献2】米国特許第2801171号公報
【特許文献3】特許第3460264号公報
【特許文献4】特許第3765837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、工業薬品、特にカラー写真感光材料に用いられるシアンカプラーとしての使用において十分な高品質の芳香族アミド類を工業的に容易に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、高品質の写真薬カプラーを工業的に有利に得るための方法について検討した結果、本発明者らは、o−アミノフェノール類を塩酸塩または硫酸塩などとして単離することなく、窒素などの不活性ガス雰囲気下でアミド化縮合反応し、芳香族系不活性溶媒を減圧下で濃縮して、芳香族アミド類を晶析することにより、簡便で収率よく、且つ、工業的に有利な生産性に優れた方法で高品質の芳香族アミド化合物が得られることを見いだし本発明を完成した。
すなわち本発明は、式(1)
【化1】

(式中、Rは低級アルキル基を表す。)
で示されるo−ニトロフェノール類を炭素数10以下の芳香族系不活性溶媒中、白金系触媒の存在下に接触還元し、式(2)
【化2】

(式中、Rは低級アルキル基を表す。)
で示されるo−アミノフェノール類を得、これを単離することなく式(3)
【化3】

(式中、R〜R は水素原子もしくは低級アルキル基を表す)
で示される硫黄分含量が0.5%以下(酸クロリド重量基準)の酸クロリド類と、
酸素濃度が1%以下の不活性ガス雰囲気下で縮合反応させて、式(4)
【化4】

(式中、R1 〜R4 は前記と同じ意味を表わす)
で示される芳香族アミド類を得る製造法であって、アミド化縮合反応後、芳香族系不活性溶媒を減圧下で濃縮し、式(4)で示される芳香族アミド類を晶析する工程を含むことを特徴とする式(4)で示される芳香族アミド類の製造法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法により、工業薬品、特にカラー写真感光材料に用いられるシアンカプラーとしての使用において十分な高品質の芳香族アミド類を工業的に有利に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において用いられる式(1)で表されるo−ニトロフェノール類について説明する。
式(1)のo−ニトロフェノール類の置換基であるR1 としては例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルなどの低級アルキル基が挙げられる。 具体化合物としては、例えば2−ニトロ−4,6−ジクロロ−5−メチルフェノ−ル、2−ニトロ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノ−ル、2−ニトロ−4,6−ジクロロー5−n−プロピルフェノ−ル、2−ニトロ−4,6−ジクロロ−5−イソプロピルフェノ−ル、2−ニトロ−4,6−ジクロロ−5−n−ブチルフェノ−ル、2−ニトロ−4,6−ジクロロ−5−sec −ブチルフェノ−ルが例示される。
【0009】
本発明において用いられる式(2)のo−アミノフェノール類について説明する。
式(2)のo−アミノフェノール類の置換基であるR1としては例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチルなどの低級アルキル基が挙げられる。
具体化合物としては、例えば2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−メチルフェノール、2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノール、2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−n−プロピルフェノール、2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−イソプロピルフェノール、2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−n−ブチルフェノール、2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−sec−ブチルフェノールが例示される。
これらの化合物は式(1)で示されるo−ニトロフェノール類を炭素数10以下の芳香族系不活性溶媒中、白金系触媒の存在下に接触還元して得られる。
【0010】
次に、硫黄分含量が0.5%以下の式(3)の酸クロリド類について説明する。
式(3)の酸クロリド類の置換基R2 、R3 、R4 としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、t−ヘキシル基等の低級アルキル基または水素原子があげられる。本発明のアミド化縮合反応では、硫黄分(酸クロリド重量基準でみた量)が多くなると写真用カップラーとして性能が低下する。硫黄分が0.5%以下、より好ましくは0.3%以下の式(3)の酸クロリド類がアミド化縮合反応に用いられる。
【0011】
具体的な酸クロリド類としては、2−エチルフェノキシ酢酸クロリド、4−エチルフェノキシ酢酸クロリド、α−(2−イソプロピルフェノキシ)酪酸クロリド、α−(3,5−ジイソプロピルフェノキシ)酪酸クロリド、α−(2−t−アミル−4−メチルフェノキシ)酪酸クロリド、α−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)酪酸クロリド、α−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)吉草酸クロリド等のα−置換脂肪族カルボン酸クロリド類が例示される。
【0012】
かかる式(3)の酸クロリド類は、例えば硫黄分を含まないホスゲンや塩化オキザリル等をカルボン酸に反応せしめる方法や、オキシ塩化燐をカルボン酸に反応せしめる方法(特開2003−26630号公報)でも得られる。
また、カルボン酸に塩化チオニルを反応させて得られた酸クロリド類の硫黄分を上記の水準まで減らすため蒸留精製して硫黄分含量が0.5%以下、より好ましくは0.3%以下とした物を用いてもよい。
【0013】
次に、式(3)の酸クロリド類を式(2)のo−アミノフェノール類とアミド化縮合反応させる工程について以下説明する。
酸クロリド類の使用量は、式(2)のo−アミノフェノールに対して通常、0.95〜1.05モル倍であり、より好ましくは0.99〜1.00モル倍である。
【0014】
アミド化縮合反応は式(1)の接触水添で用いた炭素数10以下の芳香族系不活性溶媒中で実施される。不活性溶媒としてはトルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、クロロベンゼンなどが挙げられ、好ましくはトルエン、キシレンが単独もしくは混合して用いられる。その使用量はo−アミノフェノール類に対して通常5〜20重量倍、好ましくは6〜10重量倍である。
【0015】
反応温度は通常30〜40℃である。
反応は通常、o−アミノフェノール類と芳香族系不活性溶媒の中に酸クロリドを滴下するか、10℃以下ですべての試剤を仕込んでから加熱昇温して実施される。
アミド化縮合は、雰囲気中の酸素がo−アミノフェノール類を酸化し、反応に影響を及ぼすので、高純度の芳香族アミド類をより収率よく得るために、酸素濃度1%以下の窒素等の不活性ガス雰囲気下で実施される。
【0016】
この反応においては塩化水素が発生することから、脱酸剤を用いることが好ましい。脱酸剤を用いることにより反応をより容易に行うことができる。
使用できる脱酸剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩などの無機塩基類があげられる。
その使用量は、二酸塩基を用いたときはo−アミノフェノール類に対して通常0.75モル倍程度までであり、一酸塩基を用いたときは、1.5モル倍程度までである。
【0017】
本発明においては、アミド化縮合反応後の反応液から不活性溶媒を減圧下で濃縮し、式(4)で示される芳香族アミド類を晶析する工程を含む。本工程はどの段階で実施しても良い。通常、反応後の第一の工程において実施されるが、反応液を水洗浄し分液により水分離した反応液において実施することが水溶解性の不純物を除去する点からより好ましい。本発明の工程を実施後、ろ過工程に供し目的物である高品質の芳香族アミド類を収率よく取り出すことができる。ろ過工程に供し取り出した芳香族アミド類のウエットケーキ中には水分を実質的に含まないことから乾燥工程で不活性溶媒を煩雑な操作を行うことなく回収することができ、不活性溶媒の再使用が容易に行える。
【0018】
本発明において、不活性溶媒を減圧下で濃縮する温度は30〜60℃が好ましい。濃縮温度が30℃未満の場合は濃縮に長時間要し、好ましくない。60℃を超えた場合は得られる芳香族アミド類が着色し易く、好ましくない傾向がある。
【0019】
晶析温度は0〜60℃が好ましく、結晶ろ過温度は0〜25℃が好ましい。ろ過温度が0℃未満の場合は不純物の除去が十分でなく、高品質の芳香族アミド類が得られない傾向がある。ろ過温度が25℃を超える場合には、芳香族アミド類がろ液に溶出するため収率が低下する傾向がある。ろ過した結晶は、必要に応じて洗浄し、乾燥することによって残存溶媒や水分の除かれた芳香族アミド化合物として得られる。
【0020】
濃縮後の不活性溶媒量は芳香族アミド類に対して、好ましくは1.0〜2.5倍量で実施される。溶媒量が1.0倍量未満の場合は晶析液の流動性が低下し、ろ過工程での不純物除去が不充分で、着色成分が残り易く、高純度の芳香族アミド類が得られない。
溶媒量が2.5倍量を超えると、ろ液に溶出する芳香族アミド類が多くなり収率が低下する傾向がある。
【0021】
かかる方法で得られる式(4)の芳香族アミド類としては、例えば、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミド、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミド、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)酢酸アミド、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)酢酸アミド、2−(2−t−ペンチル4−メチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミド、2−(2−t−ペンチル4−メチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミド、2−(2−t−ペンチル4−メチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)酢酸アミド、2−(2−t−ペンチル4−メチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)酢酸アミド、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)吉草酸アミド、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)吉草酸アミド等が例示される。
【0022】
以上、本発明の方法によりカルボン酸クロリド類とアミノフェノールから式(4)の芳香族アミド類が収率よく簡便な方法で得られ、その品質は色相が良好で、HPLC純度99.5%以上と高く、該芳香族アミド類は優れた画像を形成するシアンカップラーとなる。
【0023】
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明において式(1)で示される化合物の含有量は、試料を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により以下の条件で分離し、230nmの検出波長で測定した場合の(1)で示される化合物の面積百分率によって表される。
カラム:Capcellpack C18(5μm、4.0mmφ×250mm)
移動相:A液:アセトニトリル(90%)、B液:水(10%)
流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:UV 230nm
【0024】
(参考例1)
2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)酪酸320.5g(1.0モル)とキシレン100gを1Lフラスコに仕込み、N,N−ジメチルホルムアルデヒド24.1g(0.33モル)を仕込む。窒素雰囲気下、35℃に保温してオキシ塩化燐107.3g(0.70モル)を2時間で滴下し、更に50℃で12時間保温撹拌することにより反応を完結せしめた。同温度で0.5時間静置する事によりキシレン層と副生成物層は容易に分液された。次いで、下層に分離する副生成物を分液除去し、2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)酪酸クロリドのキシレン溶液430gを得た。含有量を分析した結果、2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)酪酸クロリドの濃度は78.0%で、硫黄分は1ppm以下(検出限界以下)であった。
【0025】
(参考例2)
2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)酪酸320.5g(1.0モル)とトルエン100gを1Lフラスコに仕込み、N,N−ジメチルホルムアルデヒド24.1g(0.33モル)を仕込む。窒素雰囲気下、35℃に保温してオキシ塩化燐107.3g(0.70モル)を2時間で滴下し、更に50℃で12時間保温撹拌することにより反応を完結せしめた。同温度で0.5時間静置する事によりトルエン層と副生成物層は容易に分液された。次いで、下層に分離する副生成物を分液除去し、2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)酪酸クロリドのトルエン溶液430gを得た。含有量を分析した結果、2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)酪酸クロリドの濃度は78.0%で、硫黄分は1ppm以下(検出限界以下)であった。
【実施例1】
【0026】
2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミドの製造
2−ニトロ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノール23.6g(0.1モル)とキシレン100gを500mlオートクレーブに仕込み、3%白金カーボン触媒0.15gを仕込む。窒素置換後、40℃以下、水素ガスで接触水添する。水素吸収が無くなり、還元が終了したら触媒を濾過して、2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノールのキシレン溶液144gを得た。2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノールの収率は100%であった。
得られた2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノールのキシレン溶液124gに、参考例1で得られた2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)酪酸クロリドのキシレン溶液43.4g(0.1モル)と7%重曹水174gを、温度30〜50℃で滴下、撹拌し、4時間反応した。反応後、45〜50℃で0.5時間静置することによりキシレン層と水層に容易に分液された。次いで、下層の水層を除去し、同温度で水100gを仕込んで、水洗、分液した。
2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミドを含むキシレン層161gを2.0kPaの減圧下、温度30〜60℃で75gまで濃縮した後、5℃まで冷却晶析した。晶析後、5℃で濾過し、40gのキシレンで結晶を洗浄して白色結晶を得た。乾燥後の2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミドのアミド化工程収率は94.1%であった。
品質は、mp145−146℃、純度99.8%、10w/v%酢酸エチル溶液の456nm吸光度(1cmセル)0.01と良好であった。
【実施例2】
【0027】
2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミドの製造
2-ニトロ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノール23.6g(0.1モル)とトルエン100gを500mlオートクレーブに仕込み、3%白金カーボン触媒0.15gを仕込む。窒素置換後、40℃以下、水素ガスで接触水添する。水素吸収が無くなり、還元が終了したら触媒を濾過して、2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノールのトルエン溶液144gを得た。2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノールの収率は100%であった。
得られた2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノールのトルエン溶液124gに、参考例2で得られた2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)酪酸クロリドのトルエン溶液43.4g(0.1モル)と7%重曹水174gを、温度30〜50℃
で滴下、撹拌し、4時間反応した。反応後、45〜50℃で0.5時間静置することによりトルエン層と水層に容易に分液された。次いで、下層の水層を除去し、同温度で
水100gを仕込んで、水洗、分液した。
2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミドを含むトルエン層161gを6.0kPaの減圧下、温度30〜60℃で65gまで濃縮した後、20℃まで冷却晶析した。晶析後、20℃で濾過し、40gのトルエンで結晶を洗浄して白色結晶を得た。乾燥後の2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミドのアミド化工程収率は93.9%であった。
品質は mp145−146℃、純度99.9%、10w/v%酢酸エチル溶液の456nm吸光度(1cmセル)0.01と良好であった。
【0028】
(比較例1)
2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミドの製造
2-ニトロ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノール23.6g(0.1モル)とトルエン100gを500mlオートクレーブに仕込み、3%白金カーボン触媒0.15gを仕込む。窒素置換後、40℃以下、水素ガスで接触水添する。水素吸収が無くなり、還元が終了したら触媒を濾過して、2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノールのトルエン溶液144gを得た。2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノールの収率は100%であった。
得られた2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−エチルフェノールのトルエン溶液124gに、参考例2で得られた2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)酪酸クロリドのトルエン溶液43.4g(0.1モル)と7%重曹水174gを、温度30〜50℃
で滴下、撹拌し、4時間反応した。反応後、45〜50℃で0.5時間静置することによりトルエン層と水層に容易に分液された。次いで、下層の水層を除去し、同温度で
水100gを仕込んで、水洗、分液した。
2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミドを含むトルエン層161gを23.0kPaの減圧下、温度65〜80℃で75gまで濃縮した後、5℃まで冷却晶析した。晶析後、5℃で濾過し、40gのトルエンで結晶を洗浄して白色結晶を得た。乾燥後の2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)−N−(3,5−ジクロロ−4−エチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタンアミドのアミド化工程収率は94.0%であった。
品質は mp145−146℃、純度99.7%、10w/v%酢酸エチル溶液の456nm吸光度(1cmセル)0.10と不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】



(式中、Rは低級アルキル基を表す。)
で示されるo−ニトロフェノール類を炭素数10以下の芳香族系不活性溶媒中、白金系触媒の存在下に接触還元し、式(2)
【化2】

(式中、R は低級アルキル基を表す。)
で示されるo−アミノフェノール類を得、これを単離することなく式(3)
【化3】

(式中、R〜Rは水素原子もしくは低級アルキル基を表す)
で示される硫黄分含量が0.5%以下(酸クロリド重量基準)の酸クロリド類と、
酸素濃度が1%以下の不活性ガス雰囲気下で縮合反応させて、式(4)
【化4】

(式中、R1 〜R4 は前記と同じ意味を表わす)
で示される芳香族アミド類を得る製造法であって、アミド化縮合反応後、芳香族系不活性溶媒を減圧下で濃縮し、式(4)で示される芳香族アミド類を晶析する工程を含むことを特徴とする式(4)で示される芳香族アミド類の製造法。
【請求項2】
減圧下で濃縮する温度が30〜60℃、晶析温度が0〜60℃であり、結晶濾過温度が0〜25℃であることを特徴とする請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
減圧濃縮後の芳香族系不活性溶媒の量が、芳香族アミド類の1.0〜2.5倍量の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造法。

【公開番号】特開2009−221115(P2009−221115A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64793(P2008−64793)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】