説明

芳香族ジアミン及びその製造方法、アラミド繊維及びその製造方法

本発明は、不純物を効果的に除去し、酸化を防止することによって、高い純度を有する芳香族ジアミン、及びその製造方法と、太陽光、空気、水分などの外部環境に長時間露出されても変質を防止することによって、向上した耐変色性を有するアラミド繊維、及びその製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ジアミン及びその製造方法、アラミド繊維及びその製造方法に係り、より具体的には、機械的物性及び耐変色性が向上した芳香族ジアミン及びその製造方法、アラミド繊維及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アラミド繊維と称される全芳香族ポリアミド繊維は、ベンゼン環がアミド基(CONH)を通じて直線的に連結された構造を持つパラ系アラミド繊維と、そうでないメタ系アラミド繊維とを含む。パラ系アラミド繊維は、高強度、高弾性、低収縮などの優れた特性を有しているが、直径5mm程度の細い糸で2トンの自動車を持ち上げることができる程度の強大な強度を有しているので、防弾用途で使用されるだけでなく、宇宙航空分野の先端産業において多様な用途で使用されている。また、アラミド繊維は、500℃以上で黒く炭化するので、高耐熱性が要求される分野でも脚光を浴びている。
【0003】
アラミド繊維は、芳香族ジアミンと芳香族二酸ハロゲン化物とをN−メチル−2−ピロリドンを含む重合溶媒中で重合させることによって、全芳香族ポリアミド重合体を製造する工程、この重合体を濃硫酸溶媒に溶解させて紡糸ドープを製造する工程、前記紡糸ドープを紡糸口金を通じて紡糸した後、紡糸物を非凝固性流体及び凝固浴槽を順次に経るようにすることによって、フィラメントを製造する工程、及び前記フィラメントを水洗、乾燥及び熱処理する工程を経て製造される。
【0004】
しかし、従来の芳香族ジアミンは、純度が低く、高い反応性によって酸素などに露出されると容易に変質するため、これから製造されたアラミド重合体は、分子量が低く、均一でない分子量を有することになる。これによって、このようなアラミド重合体を用いて製造されたアラミド繊維は、色相特性が低下し、物性が低下するという問題がある。
【0005】
また、従来のアラミド繊維は、太陽光、空気、水分などの外部環境に長時間露出される場合、変色してしまい物性が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するために案出されたもので、本発明は、不純物を効果的に除去し、酸化を防止することによって、高い純度を有する芳香族ジアミン、及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、太陽光、空気、水分などの外部環境に長時間露出されても変質を防止することによって、向上した耐変色性を有するアラミド繊維、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような目的を達成するために、本発明の一側面は、15ppm以下の不純物を含むことを特徴とする芳香族ジアミンを提供する。
【0008】
本発明の他の側面は、高純度の芳香族ジアミンと芳香族二酸ハロゲン化物を重合させて得られた芳香族ポリアミド重合体と、前記芳香族ポリアミド重合体に添加された安定剤とを含み、色相保持率(ΔL)が−18.0〜−12.0であることを特徴とするアラミド繊維を提供する。
【0009】
本発明の更に他の側面は、芳香族ジアミンに精製補助剤を添加する工程と、前記精製補助剤が添加された芳香族ジアミンを精製する工程とを含む芳香族ジアミンの製造方法を提供する。
【0010】
本発明の更に他の側面は、高純度の芳香族ジアミンを製造する工程と、前記芳香族ジアミンと芳香族二酸ハロゲン化物とを重合させて芳香族ポリアミド重合体を製造する工程と、前記芳香族ポリアミド重合体を溶媒に溶解させて紡糸ドープを製造する工程と、前記紡糸ドープを紡糸することによってアラミドフィラメントを製造する工程と、を含む、アラミド繊維の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、次のような効果がある。
【0012】
第一、不純物を効果的に除去し、酸化を防止することによって、高い純度を有する芳香族ジアミンを得ることができ、このような高純度の芳香族ジアミンは優れた物性及び色相が要求される多様な分野に活用できる。
【0013】
第二、太陽光、空気、水分などの外部環境に長時間露出されても、向上した耐変色性及び優れた物性を有するアラミド繊維を得ることができ、このような優れた特性を有するアラミド繊維は多様な分野に活用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲内で本発明の様々な変更及び変形が可能であるという点は当業者にとって自明である。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明、及びその均等物の範囲内に含まれる変更及び変形を全て含む。
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
まず、芳香族ジアミン及びその製造方法について説明する。
【0017】
芳香族ジアミンは、多様な分野に用いられることができ、特にアラミド重合体の製造に用いられることができる。このようなアラミド重合体は芳香族ジアミンと芳香族二酸ハロゲン化物とを反応させて製造する。万一、高い分子量及び均一な分子量を有するアラミド重合体を得るためには、芳香族ジアミンと芳香族二酸ハロゲン化物の純度が高くなければならない。
【0018】
アラミド重合体の一の原料物質である芳香族ジアミンは、通常、多量の不純物を含む。このような不純物はクロロアニリンを含むことができ、前記クロロアニリンは重合終結剤の役割を行うことができる。したがって、万一、芳香族ジアミンがクロロアニリンのような不純物を多量に含む場合、これから製造されたアラミド重合体は、低い分子量及び均一でない分子量を有することになる。
【0019】
上記のように、芳香族ジアミンの純度は、最終製品の物性に非常に大きな影響を及ぼすことがある。すなわち、低純度の芳香族ジアミンから製造されたアラミド重合体は、低い分子量及び均一でない分子量を有するため、これから製造された成形体は物性が低下するという問題が発生する。例えば、低純度の芳香族ジアミンから製造されたアラミド重合体をアラミド繊維の製造に用いる場合、このようなアラミド繊維から製造された防弾衣は十分な防弾性能を発現できなくなるため、人体の安全を担保できないという問題が発生し得る。
【0020】
これによって、高純度を有する芳香族ジアミンを製造するための効率的な精製方法について説明する。
【0021】
芳香族ジアミンの精製は、熱蒸留方法を通じて円滑に行われることができる。
【0022】
前記芳香族ジアミンは、パラフェニレンジアミンまたはメタフェニレンジアミンを含むことができ、前記パラフェニレンジアミンは267℃の沸点を有し、前記メタフェニレンジアミンは284〜287℃の沸点を有する。
【0023】
一方、前記芳香族ジアミンに含まれた不純物は、アニリンまたはパラクロロアニリンを含むことができ、前記アニリンは184.4℃の沸点を有し、前記パラクロロアニリンは232℃の沸点有する。
【0024】
このように、芳香族ジアミンと、アニリンのような不純物とは沸点の差が大きいため、熱蒸留方法を用いて芳香族ジアミンから不純物を容易に分離させることができる。
【0025】
このような熱蒸留方法は、沸点が異なる芳香族ジアミンと不純物とを互いに分離するために、芳香族ジアミンを蒸留塔(distillation column)に入れて加熱する工程を通じて行われる。すなわち、沸点が高い芳香族ジアミンは蒸留塔の低い部分に位置し、沸点が低い不純物は蒸留塔の高い部分に位置するので、各位置に管を連結して芳香族ジアミンと不純物とをそれぞれ分離することになる。
【0026】
しかし、芳香族ジアミンと不純物との沸点の差が大きくない場合、一回の精製工程で業界で必要とする水準の純度を持つ芳香族ジアミンを得るのが困難であることがある。これによって、業界で必要とする水準の純度を得るために、精製された芳香族ジアミンは2回ないし3回再精製されることがある。このように、精製を複数回実施する場合、精製コストが大きく上昇するため、経済性が低下し、また高純度の芳香族ジアミンを得るのにも限界があることがある。
【0027】
これによって、本発明は、精製工程を容易にし、純度を高めるために、芳香族ジアミンを精製する以前に、芳香族ジアミンに精製補助剤を添加する。
【0028】
前記精製補助剤としては有機溶媒を使用することができる。前記有機溶媒は芳香族ジアミンから不純物を容易に分離する役割をする。
【0029】
このような有機溶媒は、芳香族ジアミンの沸点よりも低い沸点を有することが好ましい。すなわち、前記有機溶媒が、前記芳香族ジアミンの沸点よりも低く、不純物の沸点と類似した沸点を有することによって、不純物が芳香族ジアミンから容易に分離されるように助ける役割をする。
【0030】
前記有機溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルスルホキシド(DMSO)などを使用することができる。
【0031】
前記有機溶媒は、不純物の重量対比1乃至100,000倍の範囲内で添加することができる。万一、前記有機溶媒の添加量が1倍未満である場合、不純物が芳香族ジアミンから容易に分離されないことがある。一方、前記有機溶媒の添加量が100,000倍を超過する場合、精製効果は増加せずに費用だけ増加することがある。
【0032】
このように、精製補助剤として有機溶媒を添加して芳香族ジアミンを精製することによって、一回の精製工程でも、必要とする水準の高純度の芳香族ジアミンを得ることができるので、精製コストが節減され、精製時間が短縮されるという利点が生じる。
【0033】
上記工程により製造された芳香族ジアミンは、不純物であるクロロアニリンの濃度が5ppm以下になることができる。前記クロロアニンはパラクロロアニリンを含む。
【0034】
一方、熱蒸留によって芳香族ジアミンを精製する場合、前記芳香族ジアミンは高温状態で酸素を含む空気に露出される。このように、芳香族ジアミンが高温状態で酸素に露出される場合、反応性が良い芳香族ジアミンは酸素と容易に反応して酸化することによって、ニトロ(nitro)化合物に変質する。このように酸化した芳香族ジアミンは不純物として作用するため、これを含んだ芳香族ジアミンから製造されたアラミド重合体は濃い有色を帯びるようになって、色相特性の低下をもたらす。このように、色相特性が低下したアラミド重合体を用いて製造された成形体も、変色によって顧客の信頼性が低下することがある。
【0035】
このような芳香族ジアミンの酸化を防止するために、本発明は、芳香族ジアミンを精製する以前に精製補助剤である酸化防止剤を芳香族ジアミンに添加する。前記酸化防止剤は、精製工程中に、酸素と芳香族ジアミンとが接触するのを防止する役割をする。すなわち、芳香族ジアミンよりも反応性の良い酸化防止剤は酸素と容易に反応するので、芳香族ジアミンが酸素と接触して反応するのを遮断することによって、酸化防止剤は芳香族ジアミンの酸化を防止することになる。
【0036】
前記酸化防止剤はヒドラジンを含むことができる。前記ヒドラジン酸化防止剤は、空気中の酸素と、下記の反応式1のように反応して酸素を除去する。
【0037】
[反応式1]
+O→N+2H
【0038】
また、前記酸化防止剤は、次の化学式1で表されるヒドラジン化合物を含むことができる。
【0039】
[化学式1]
N−NR
【0040】
このとき、前記R、R、R及びRは、独立に、脂肪族基、芳香族基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アミノ基、イミノ基、アゾ基、カルボニル基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、ハロアルキル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基、スルフィニル基、スルホニル基またはヘテロサイクリック基であってもよい。また、前記R、R、R及びRから選択された2個の置換基は互いに任意に結合して形成された環化合物であってもよい。
【0041】
このように、酸化防止剤が添加された後に精製された芳香族ジアミンは、10ppm以下の酸化した芳香族ジアミンを含むことができる。
【0042】
前記精製補助剤が添加された後に精製された芳香族ジアミンは、パラ−フェニレンジアミン、メタ−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、1,3−ジアミノビフェニル、2,6−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、または4,4’−ジアミノベンズアニリドを含むことができる。
【0043】
前記精製補助剤が添加された後に精製された芳香族ジアミンは、15ppm以下の不純物を含むことができる。
【0044】
次に、アラミド重合体及びその製造方法について説明する。
【0045】
まず、上述したように、高純度で精製された芳香族ジアミンを重合溶媒に溶かして、混合溶液を製造する。
【0046】
このような重合溶媒は有機溶媒に無機塩を添加して製造する。前記有機溶媒としては、アミド系有機溶媒、ウレア系有機溶媒、またはこれらの混合有機溶媒を用いることができ、その具体的な例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N,N,N’,N'−テトラメチルウレア(TMU)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0047】
前記芳香族ジアミンは空気に敏感に反応して容易に変色し、変色した芳香族ジアミンは不純物として作用することになる。このように、変色した芳香族ジアミンが含まれた芳香族ジアミンから製造されたアラミド重合体は、分子量が低下し、色相特性が低下することがある。
【0048】
このような芳香族ジアミンの変色を防止するために、本発明は、前記芳香族ジアミンに安定剤を添加する。前記安定剤は、有機リン系、フェノール系、ヒンダード(hindered)アミン系安定剤を含むことができる。特に、前記安定剤としてホスフィン(phosphine)系化合物を使用して芳香族ジアミンを安定化させることができる。
【0049】
前記ホスフィン系安定剤は、エチルホスフィン、n−ブチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジ(n−ブチル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ(n−ブチル)ホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、またはトリフェニルホスフィンを含むことができる。
【0050】
このような安定剤は、芳香族ジアミンが空気、水分などの外部環境に露出されるとしても、外部物質から前記芳香族ジアミンを保護するので、芳香族ジアミンが変色するのを防止する。
【0051】
次に、前記混合溶液を攪拌しながら、前記混合溶液に所定量の芳香族二酸ハロゲン化物を添加して予備重合させる。
【0052】
本発明の一実施例によれば、前記予備重合工程は、反応器内で0〜45℃に反応温度を維持しながら行い、反応時間は、3〜15分程度で十分な重合時間を付与し、全芳香族ポリアミド重合体の製造に必要な芳香族二酸ハロゲン化物の全体量のうち20〜40%のみを予備重合工程中に添加することが好ましい。
【0053】
予備重合工程を完了した後、0〜10℃の状態で温度を下げて、前記予備重合体に芳香族二酸ハロゲン化物を追加で添加して、最終重合体を製造する。重合工程により得られる芳香族ポリアミド重合体の具体的な例は、ポリ(パラフェニレンテレフタル−アミド:PPD−T)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレン−ジカルボン酸アミド)、またはポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)を挙げることができる。
【0054】
次に、重合反応中に生成された酸をアルカリ化合物を用いて中和させる。前記アルカリ化合物は、NaOH、LiCO、CaCO、LiH、CaH、LiOH、Ca(OH)、LiOまたはCaOのアルカリ金属、アルカリ土金属の炭酸塩、アルカリ土金属の水素化物、アルカリ土金属の水酸化物、またはアルカリ土金属の酸化物からなる群から選択される。
【0055】
次に、粉砕された芳香族ポリアミド重合体から重合溶媒を抽出する。重合により得られた芳香族ポリアミド重合体中には、重合工程のために使用した重合溶媒が含有されているため、このような重合溶媒を重合体から抽出しなければならず、抽出された重合溶媒は重合工程に再使用することができる。このような抽出工程は、水を用いて行うことが最も効果的で且つ経済的である。
【0056】
次に、抽出工程後に、残留する水を脱水し、その後、乾燥工程を経て芳香族ポリアミド重合体が得られる。
【0057】
次に、アラミド繊維及びその製造方法について説明する。
【0058】
まず、前記芳香族ポリアミド重合体を97乃至100%の濃度を有する濃硫酸溶媒に溶解させて、紡糸ドープを製造する。
【0059】
このとき、上述した芳香族ジアミンに安定剤を投入する代わりに、前記紡糸ドープに安定剤を投入することができる。万一、上述した方法で精製された高純度の芳香族ジアミンが重合段階で酸素と接触するのが防止されることができれば、紡糸ドープに安定剤を投入することが経済性面において有利であり、アラミド繊維の変色防止面においてもより効率的である。すなわち、紡糸ドープに安定剤を投入する場合、安定剤の損失を最小化することができ、より均一に安定剤を重合体に分散させることができるので、アラミド繊維の変色防止を極大化させることができる。
【0060】
前記紡糸ドープを、紡糸口金(spinneret)を用いて紡糸(spinning)した後、エアギャップ(air gap)を経て、凝固液が収容された凝固槽(coagulation bath)内で凝固させることによりフィラメント(filament)を形成する。
【0061】
次に、得られたフィラメントに残存する硫酸を除去する。紡糸ドープの製造に使用された硫酸は、紡糸物が凝固槽を通過しながらほぼ除去されるが、完全に除去されずに残存することがある。また、紡糸物から硫酸が均一に取り出されるようにするために、凝固槽の凝固液に硫酸を添加する場合、得られるフィラメントには硫酸が残存する確率が高い。フィラメントに残存する硫酸は、その量がどんなに少量といってもアラミド繊維の特性に悪影響を及ぼすことがあるため、フィラメントに残存する硫酸を完全に除去するのが非常に重要である。フィラメントに残存する硫酸は、水、または水とアルカリ溶液との混合溶液を用いた水洗工政を通じて除去することができる。
【0062】
このように水洗されたアラミドフィラメントを乾燥させる。加熱された乾燥ロール(drying roll)にフィラメントが当たる時間を調節したり、または前記乾燥ロールの温度を調節することによって、フィラメントの水分含有量を調節することができる。
【0063】
次に、乾燥が完了したフィラメントを紙管に巻き取って、アラミド繊維の製造を完成する。
【0064】
前記アラミド繊維は、多数のアミン(amine)または酸(acid)末端基を含んでいる。特にアミン末端基は反応性が良いので、太陽光、空気、水分などの外部環境に長時間露出される場合、容易に変質し、これによって、アラミド繊維は物性が急激に低下し、色相特性が低下することがある。
【0065】
これによって、本発明のアラミド繊維は安定剤を含んでいる。
【0066】
このような安定剤をアラミド繊維に付与する工程は、上述したように、重合工程または紡糸工程中に行われることができ、アラミドフィラメントが生成された後、巻き取る前に行われることができる。
【0067】
前記巻き取り前にアラミドフィラメントに安定剤を付与する場合、フィラメント製造装置を用いることによって、生産性及び生産コスト面において有利であり、安定剤をアラミドフィラメントに均一で且つ容易に処理できるという利点がある。
【0068】
前記アラミドフィラメントに安定剤を付与する方法は、多様な方法を通じて行われることができる。例えば、ディッピング(dipping)方法、ローラ(roller)方法、スプレー(spray)方法などを用いてアラミドフィラメントに安定剤が付与されることができる。
【0069】
このような工程を通じて製造されたアラミド繊維は、20乃至10,000ppmの安定剤を含むことができる。万一、前記安定剤が20ppm未満である場合、アラミド繊維の変色防止が円滑になされることができず、一方、前記安定剤が10,000ppmを超過する場合、アラミド繊維の変色防止の効果は大きくなく、多量の安定剤によって結晶性が低下するため、アラミド繊維の物性が低下することがある。
【0070】
このように、高純度で精製された芳香族ジアミンを使用して製造され、安定剤が添加されたアラミド繊維は、耐変色性に優れるので、−18.0〜−12.0の色相保持率を有することになる。
【0071】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の理解を助けるためのもので、これによって本発明の権利範囲が制限されてはならない。
【実施例】
【0072】
芳香族ジアミンの製造
【0073】
実施例1
【0074】
98%の純度を有するパラフェニレンジアミン(p−phenylenediamine)に、精製補助剤として有機溶媒であるトルエンを不純物対比10倍を添加した後、これを蒸留塔で熱蒸留させて、精製されたパラフェニレンジアミンを得た。
【0075】
実施例2ないし4
【0076】
前述した実施例1において、前記有機溶媒であるトルエンを不純物対比それぞれ1倍、100倍、及び1,000倍を添加したことを除いては、実施例1と同一の方法によりパラフェニレンジアミンを得た。
【0077】
比較例1
【0078】
前述した実施例1において、前記有機溶媒であるトルエンを添加しないことを除いては、実施例1と同一の方法によりパラフェニレンジアミンを得た。
【0079】
上記の実施例1ないし4、及び比較例1によって製造された各パラフェニレンジアミンの純度は、下記の方法により測定され、その測定結果を表1に示した。
【0080】
パラフェニレンジアミンの純度(%)測定
【0081】
ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて下記の条件及び順序によって定量分析して、パラフェニレンジアミン(PPD)の純度を測定した。
【0082】
前記ガスクロマトグラフィーの測定条件は、次の通りである。
【0083】
1)測定装置:Agilent 6890
2)Integration:GC Chemstation
3)Carrier gas:He
4)Flow:1.5ml/分
5)Split ratio:10:1(15ml/分)
6)Injection concentration:10wt% SMPL in 99.9% メタノール
7)Colume:Rtx−1701、30m×0.32mm×1.0μm
8)Temperature profile:injector 280℃、detector 280℃、40分×140℃、30℃/分 to 240℃、20分×240℃
【0084】
前記ガスクロマトグラフィーの測定順序は、次の通りである。
【0085】
1)製造されたパラフェニレンジアミンを純度99.99%の試薬級メタノールに完全に溶かして、10wt%のサンプルを作る。
2)前記サンプルを注射器を用いて投入し、上述した条件下で定量分析を行う。
【0086】
【表1】

【0087】
実施例5
【0088】
芳香族ジアミンであるパラフェニレンジアミン(p−phenylenediamine)に、有機溶媒であるトルエンを、前記パラフェニレンジアミン対比50重量%を添加した後、酸化防止剤であるヒドラジンを、前記パラフェニレンジアミン対比5重量%添加して混合液を作った後、このような混合液を蒸留塔で熱蒸留させて、精製されたパラフェニレンジアミンを得た。
【0089】
実施例6ないし10
【0090】
前述した実施例5において、前記酸化防止剤であるヒドラジンの濃度を、前記パラフェニレンジアミン対比それぞれ1、20、50、70、及び90重量%で添加したことを除いては、実施例5と同一の方法によって精製されたパラフェニレンジアミンを得た。
【0091】
上記の実施例5ないし10、及び比較例1によって製造された各パラフェニレンジアミンのクロロアニリン及び酸化した芳香族ジアミンの含量は、上述したパラフェニレンジアミンの純度測定方法により測定され、その測定結果を表2に示した。
【0092】
【表2】

【0093】
アラミド繊維の製造
【0094】
実施例11
【0095】
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)にCaCl7重量%を添加した重合溶媒100mlに、実施例5によって精製され、1,000ppmのトリフェニルホスフィン(tri−phenylphosphine)安定剤が添加されたパラ−フェニレンジアミン5.00gを添加させて、混合溶液を製造した。前記混合溶液にテレフタロイルジクロライド3.18gを添加し、500rpmの回転力で6分間反応させることによって予備重合体を製造した。この予備重合体にテレフタロイルジクロライド5.61gを追加で添加し、15分間反応させることによって、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)重合体を製造した後、これを98%の濃硫酸溶媒に溶解させて、紡糸ドープ(spinning dope)を製造した。
【0096】
前記紡糸ドープを、紡糸口金を用いて紡糸した後、エアギャップを経て凝固槽内で凝固させることによってアラミドフィラメントを得、このアラミドフィラメントをアルカリ性溶液で水洗した。
【0097】
水洗処理されたアラミドフィラメントを150℃の温度で3秒間乾燥させた後、これをボビンに巻き取ることによってアラミド繊維を完成した。
【0098】
実施例12
【0099】
前述した実施例11において、前記安定剤としてトリフェニルホスフィンを使用する代わりに、フェノール系のIrganox1010(CIBA Chem.)を使用することを除いては、実施例11と同一の方法でアラミド繊維を製造した。
【0100】
実施例13
【0101】
前述した実施例11において、前記安定剤としてトリフェニルホスフィンを使用する代わりに、ヒンダードアミン系のTinuvin−292(CIBA Chem.)を使用することを除いては、実施例11と同一の方法でアラミド繊維を製造した。
【0102】
実施例14ないし19
【0103】
前述した実施例11において、前記安定剤をパラ−フェニレンジアミンに対してそれぞれ10ppm、500ppm、3000ppm、6000ppm、9000ppm、及び12000ppm添加したことを除いては、実施例11と同一の方法でアラミド繊維を製造した。
【0104】
実施例20
【0105】
前述した実施例11において、前記芳香族ジアミンに安定剤を添加する代わりに、乾燥したアラミドフィラメントを安定剤溶液に含浸させた後に巻き取ることを除いては、実施例11と同一の方法でアラミド繊維を製造した。この時、前記安定剤溶液の濃度は10重量%であった。
【0106】
比較例2
【0107】
前述した実施例11において、前記芳香族ジアミンに安定剤を添加しないことを除いては、実施11と同一の方法でアラミド繊維を製造した。
【0108】
上記の実施例11ないし20、及び比較例2によって得られたそれぞれのアラミド繊維の色相保持率、強度保持率及び弾性率保持率を下記の方法で測定し、その結果を表3に示した。
【0109】
色相保持率(ΔL)測定
【0110】
アラミド繊維の色は、KURABO社のCOLOR−7Xを使用して測定したL値と定義され、“色変化”は、初期の色がL1であるアラミド繊維を、Black Panel Temperature(65±3℃)、Exposure Light Source(Xenon−Arc)、Irradiance(0.35W/m×340nm)、Exposure Cycle(102min of Light only/18min Light and Water Spray)条件下で24時間放置した場合に発生する色変化(ΔL)を測定した。この時、試料は、直径107mmである紙管に、アラミド繊維を、巻き取り長さが190mmで、総重量が5kgになるように、均一な曲率を持つように巻き取って用意し、用意された試料の側面を任意の10地点を測定した後、最大数値及び最小数値を除外した8個の数値を平均して色相を測定した。
【0111】
強度保持率(%)及び弾性率保持率(%)測定
【0112】
強度保持率及び弾性率保持率は、放置前後のアラミド繊維の強度(g/d)及び弾性率(g/d)から下記の式を用いて測定した。前記アラミド繊維の強度及び弾性率は、インストロン試験機(Instron Engineering Corp、Canton、Mass)で長さが25cmであるサンプルが破断される時の強力(g)を測定した後、これをサンプルのデニール(denier)で割ることによって、サンプルの強度及び弾性率を求めた。この時、引張速度は、300mm/分とし、初荷重は、繊度×1/30gとした。この時、5個のアラミド繊維サンプルをテストした後、その平均値で求めた。
【0113】
強度保持率(%)=(放置後の強度/放置前の強度)×100
【0114】
弾性率保持率(%)=(放置後の弾性率/放置前の弾性率)×100
【0115】
このとき、前記放置条件は、Q−UV装置(CLEVELAND、26200 First)で、45℃の温度で1008時間であった。
【0116】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
15ppm以下の不純物を含むことを特徴とする、芳香族ジアミン。
【請求項2】
前記不純物は、10ppm以下の酸化した芳香族ジアミンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の芳香族ジアミン。
【請求項3】
前記不純物は、5ppm以下のクロロアニリンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の芳香族ジアミン。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかによる芳香族ジアミンと、芳香族二酸ハロゲン化物とを重合させて得られた芳香族ポリアミド重合体と、
前記芳香族ポリアミド重合体に添加された安定剤と、を含み、
色相保持率(ΔL)が−18.0〜−12.0であることを特徴とする、アラミド繊維。
【請求項5】
前記安定剤は、有機リン系、フェノール系、及びヒンダードアミン系のうち少なくとも一つを含む、請求項4に記載のアラミド繊維。
【請求項6】
前記安定剤は、20ないし10,000ppmの範囲内で含有されることを特徴とする、請求項4に記載のアラミド繊維。
【請求項7】
芳香族ジアミンに精製補助剤を添加する工程と、
前記精製補助剤が添加された芳香族ジアミンを精製する工程とを含む、芳香族ジアミンの製造方法。
【請求項8】
前記精製補助剤は、酸化防止剤を含む、請求項7に記載の芳香族ジアミンの製造方法。
【請求項9】
前記酸化防止剤は、化学式1で表されるヒドラジン化合物を含むことを特徴とする、請求項8に記載の芳香族ジアミンの製造方法。
[化学式1]
N−NR
このとき、前記R、R、R及びRは、
独立に、脂肪族基、芳香族基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アミノ基、イミノ基、アゾ基、カルボニル基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、ハロアルキル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホ基、スルフィニル基、スルホニル基またはヘテロサイクリック基、又は、
前記R、R、R及びRから選択された2個の置換基は互いに任意に結合して形成された環化合物である。
【請求項10】
前記精製補助剤は、有機溶媒を含む、請求項9に記載の芳香族ジアミンの製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒は、前記芳香族ジアミンよりも低い沸点を有することを特徴とする、請求項10に記載の芳香族ジアミンの製造方法。
【請求項12】
前記有機溶媒は、芳香族ジアミンに含まれた不純物の重量対比1ないし100,000倍添加されることを特徴とする、請求項10に記載の芳香族ジアミンの製造方法。
【請求項13】
請求項7乃至12のいずれかによる芳香族ジアミンを製造する工程と、
前記芳香族ジアミンと芳香族二酸ハロゲン化物とを重合させて芳香族ポリアミド重合体を製造する工程と、
前記芳香族ポリアミド重合体を溶媒に溶解させて紡糸ドープを製造する工程と、
前記紡糸ドープを紡糸することによってアラミドフィラメントを製造する工程と、を含む、アラミド繊維の製造方法。
【請求項14】
前記紡糸ドープを紡糸する前に、前記芳香族ポリアミド重合体に安定剤を添加する工程をさらに含む、請求項13に記載のアラミド繊維の製造方法。
【請求項15】
前記アラミドフィラメントを製造した後、前記アラミドフィラメントに安定剤を処理する工程をさらに含む、請求項13に記載のアラミド繊維の製造方法。
【請求項16】
前記安定剤は、有機リン系、フェノール系、及びヒンダードアミン系のうち少なくとも一つを含む、請求項14又は15に記載のアラミド繊維の製造方法。

【公表番号】特表2013−515768(P2013−515768A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547025(P2012−547025)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/KR2010/009512
【国際公開番号】WO2011/081454
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】