説明

芳香族ビニル系樹脂組成物

【課題】細菌等の繁殖を防除し、抗菌性に優れ、且つ抗菌効果の持続性に優れた成形品、皮膜等を与える芳香族ビニル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、〔A〕芳香族ビニル系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂と、〔B〕抗菌剤と、〔C〕ポリオレフィンワックスとを含有し、抗菌剤〔B〕は、チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物と、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物から選ばれた少なくとも1種とを含み、抗菌剤〔B〕及びポリオレフィンワックス〔C〕の含有量は、熱可塑性樹脂〔A〕100部に対して、0.01〜10部及び0.1〜20部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌等に対する抗菌性に優れ、抗菌効果の持続性に優れた成形品を与える芳香族ビニル系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清潔、快適且つ健康な環境を得る目的で、抗菌剤を含む、成形品、皮膜、これらの形成材料等が広く用いられている。
例えば、特許文献1には、樹脂に配合する生物抵抗性を有する薬剤が、ニトリル系化合物、ピリジン系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びベンズイミダゾール系化合物からなる群より選択される少なくとも4種の化合物であり、且つ、薬剤の含有量が、成形品を構成する全成分に対して0.05〜30重量%の範囲である生物抵抗性成形品が開示されている。また、特許文献2には、ベンズイミダゾール系化合物と、有機ヨード系化合物と、チアゾール系化合物と、ハロアルキルチオ系化合物とを特定の割合で含む防かび剤を含有する樹脂組成物の、防かび性、防菌性、防藻性、防臭性及び防腐性に優れていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−157111号
【特許文献2】特開2009−263288号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂成形品の表面における汚れは、物理的な汚れ、自然発生的な汚れ等、様々であり、病院、学校、幼稚園、保育園、駅構内等の公共施設や家庭内におけるトイレ、洗面所、廊下、階段等において、抗菌性を有する材料を用いることが望まれている。
しかしながら、有機系抗菌剤を含むスチレン系樹脂組成物においては、成形品とした場合に、抗菌剤が樹脂表面からブリードアウトし難く、通常の配合量では、抗菌性が発現しにくく、抗菌効果の持続性も十分に発揮されない場合があった。
本発明の目的は、細菌等の繁殖を防除し、抗菌性に優れ、且つ抗菌効果の持続性に優れた成形品、皮膜等を与える芳香族ビニル系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、芳香族ビニル系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂に、特定の成分を含む抗菌剤と、ポリオレフィンワックスとを、特定量配合した樹脂組成物が、抗菌性に優れ、且つ抗菌効果の持続性に優れた成形品、皮膜等を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下に示される。
1.〔A〕芳香族ビニル系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂と、〔B〕抗菌剤と、〔C〕ポリオレフィンワックスとを含有する芳香族ビニル系樹脂組成物であって、
上記抗菌剤〔B〕は、チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物と、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物からなる群から選択される少なくとも1種とを含み、
上記抗菌剤〔B〕及び上記ポリオレフィンワックス〔C〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、それぞれ、0.01〜10質量部及び0.1〜20質量部であることを特徴とする芳香族ビニル系樹脂組成物。
2.上記チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物の含有量、並びに、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の含有量の合計、の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、80〜99.99質量%及び0.01〜20質量%である上記1に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物。
3.上記抗菌剤〔B〕が、チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物と、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物からなる群から選択される少なくとも2種とを含む上記1に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物。
4.上記チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物の含有量、並びに、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物からなる群から選択される少なくとも2種の含有量の合計、の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、80〜99.99質量%及び0.01〜20質量%である上記3に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物。
5.上記チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物が、ベンズイミダゾールカルバミン酸誘導体である上記1〜4のいずれか1項に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物。
6.上記ポリオレフィンワックス〔C〕が、ポリエチレンワックスである上記1〜5のいずれか1項に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物。
7.更に、含フッ素重合体を含有し、該含フッ素重合体の含有量が、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.01〜10質量部である上記1〜6のいずれか1項に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物。
8.上記1〜7のいずれか1項に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物によれば、細菌等の繁殖を防除し、抗菌性に優れ、更に抗菌効果の持続性に優れる成形品(中実体、発泡体を含む)等を得ることができる。特に、トイレ、洗面所、廊下、階段等において、細菌の繁殖に対する抗菌性に優れ、更に抗菌効果の持続性に優れている。従って、本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物を用いて製造された成形品、皮膜等は、抗菌性が求められる用途に好適である。成形品としては、例えば、洗面所やトイレにおける部材や用品、廊下や階段等における部材、空調機、加湿機、空気清浄機等の部材、台所用品等として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味する。また、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0008】
本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物は、熱可塑性樹脂〔A〕と、抗菌剤〔B〕と、ポリオレフィンワックス〔C〕とを含有する組成物であって、上記抗菌剤〔B〕は、チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物と、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物からなる群から選択される少なくとも1種とを含み、上記抗菌剤〔B〕及び上記ポリオレフィンワックス〔C〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、それぞれ、0.01〜10質量部及び0.1〜20質量部であることを特徴とする。
【0009】
上記熱可塑性樹脂〔A〕は、芳香族ビニル系樹脂を主成分とする樹脂である(但し、含フッ素重合体を除く)。この熱可塑性樹脂〔A〕は、芳香族ビニル系樹脂のみからなる熱可塑性樹脂であってよいし、芳香族ビニル系樹脂と、芳香族ビニル系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂との組み合わせ(アロイ樹脂等)であってもよい。後者の場合、芳香族ビニル系樹脂の含有量の下限値は、成形加工性、機械的物性等の観点から、上記熱可塑性樹脂〔A〕を100質量%とした場合に、好ましくは20質量%、より好ましくは30質量%、更に好ましくは40質量%である。また、上限値は、好ましくは99質量%、より好ましくは95質量%、更に好ましくは90質量%である。
【0010】
芳香族ビニル系樹脂としては、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む樹脂であれば、特に限定されず、例えば、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂等の芳香族ビニル系ゴム強化樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の芳香族ビニル系(共)重合体等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記芳香族ビニル系樹脂としては、芳香族ビニル系ゴム強化樹脂が好ましい。
【0011】
上記芳香族ビニル系ゴム強化樹脂は、ゴム質重合体(以下、「ゴム質重合体(a1)」という。)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(a2)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(以下、「ゴム強化ビニル系樹脂(A1)」という。)、又は、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体に由来する構造単位を含む(共)重合体(以下、「(共)重合体(A2)」という。)との組み合わせ(混合物)である。
【0012】
上記ゴム質重合体(a1)は、室温でゴム質であれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよいが、ジエン系重合体(ジエン系ゴム質重合体)及び非ジエン系重合体(非ジエン系ゴム質重合体)が好ましい。更に、上記ゴム質重合体(a1)は、架橋重合体であってもよいし、非架橋重合体であってもよい。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
上記ジエン系重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体ゴム;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体ゴム;天然ゴム等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。また、これらの共重合体は水素添加(但し、水素添加率は50%未満。)されたものであってもよい。上記ジエン系重合体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
また、上記非ジエン系重合体としては、エチレン単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位を含むエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム;ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーンゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム;共役ジエン系化合物よりなる単位を含む(共)重合体を水素添加してなる重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。また、これらの共重合体は水素添加(但し、水素添加率は50%以上。)されたものであってもよい。上記非ジエン系重合体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
上記ゴム質重合体(a1)として、ジエン系重合体を用いた場合に得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)を含む樹脂は、一般に、「ABS樹脂」といわれている。また、上記ゴム質重合体(a)として、エチレン・α−オレフィン共重合体及び/又はエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体を用いた場合に得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)を含む樹脂は、一般に、「AES樹脂」といわれている。更に、上記ゴム質重合体(a)として、アクリル系ゴムを用いた場合に得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)を含む樹脂は、一般に、「ASA樹脂」といわれている。
【0016】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられるビニル系単量体(a2)は、芳香族ビニル化合物のみでもよいし、この芳香族ビニル化合物と、例えば、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等の、芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物とを組み合わせて用いることができる。
従って、上記ビニル系単量体(a2)としては、芳香族ビニル化合物の1種以上、あるいは、芳香族ビニル化合物の1種以上と、該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物の1種以上とを組み合わせた単量体を用いることができる。
【0017】
上記芳香族ビニル化合物としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
【0018】
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物からなる単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、上記化合物以外に、必要に応じて、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物を用いることができる。例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明において、上記ビニル系単量体(a2)は、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むことが好ましく、その合計使用量は、成形加工性、耐薬品性、寸法安定性、成形外観性等の観点から、ビニル系単量体(a2)全量に対し、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%である。また、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の使用比率は、成形加工性、耐薬品性、寸法安定性、成形外観性等の観点から、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%、より好ましくは50〜95質量%及び5〜50質量%、更に好ましくは60〜95質量%及び5〜40質量%である。
【0022】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)として、好ましい樹脂は、下記(1)〜(3)に例示される。
(1)ゴム質重合体(a1)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなるビニル系単量体(a2)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂
(2)ゴム質重合体(a1)の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物からなるビニル系単量体(a2)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂
(3)ゴム質重合体(a1)の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びマレイミド系化合物からなるビニル系単量体(a2)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂
【0023】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a1)の存在下に、ビニル系単量体(a2)を重合することにより製造することができる。重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、又は、これらを組み合わせた重合法とすることができる。
【0024】
尚、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造の際には、ゴム質重合体(a1)及びビニル系単量体(a2)は、反応系において、上記ゴム質重合体(a1)全量の存在下に、上記ビニル系単量体(a2)を一括添加して重合を開始してよいし、分割して又は連続的に添加しながら重合を行ってもよい。また、上記ゴム質重合体(a1)の一部存在下、又は、非存在下に、上記ビニル系単量体(a2)を一括添加して重合を開始してよいし、分割して又は連続的に添加してもよい。このとき、上記ゴム質重合体(a1)の残部は、反応の途中で、一括して、分割して又は連続的に添加してもよい。
【0025】
乳化重合によりゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
【0026】
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体(a2)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%である。
尚、上記重合開始剤は、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
【0027】
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体(a2)全量に対し、通常、0.05〜2.0質量%である。
尚、上記連鎖移動剤は、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
【0028】
上記乳化剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;高級脂肪族カルボン酸塩、脂肪族リン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、アルキルエーテル型化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体(a2)全量に対し、通常、0.3〜5.0質量%である。
【0029】
乳化重合は、ビニル系単量体(a2)、重合開始剤等の種類に応じ、公知の条件で行うことができる。この乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
尚、上記芳香族ビニル系樹脂に、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂を2種以上含有させる場合には、各ラテックスから樹脂を単離した後、混合してもよいが、他の方法として、各樹脂をそれぞれ含むラテックスの混合物を凝固する等の方法がある。
【0030】
溶液重合、塊状重合及び塊状−懸濁重合によるゴム強化芳香族ビニル系樹脂の製造方法は、公知の方法を適用することができる。
【0031】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率は、成形加工性並びに得られる成形品の表面外観性及び耐衝撃性の観点から、好ましくは30〜150質量%、より好ましくは50〜120質量%である。上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率が小さすぎると、本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物及びそれを含む成形品の表面外観性及び耐衝撃性が低下することがある。また、グラフト率が大きすぎると、成形加工性が劣る。
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラムをアセトン(但し、ゴム質重合体(a1)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)に溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(質量%)={(y−x)/x}×100
【0032】
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のアセトン(但し、ゴム質重合体(a1)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)による可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1dl/g、より好ましくは0.3〜0.8dl/gである。この範囲とすることにより、本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物の成形加工性に優れ、得られる成形品の耐衝撃性にも優れる。
尚、上記グラフト率及び極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を調整することにより、容易に制御することができる。
【0033】
尚、前述のように、上記芳香族ビニル系樹脂が芳香族ビニル系ゴム強化樹脂である場合には、この芳香族ビニル系ゴム強化樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のみであってもよく、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体に由来する構造単位を含む(共)重合体(A2)との組み合わせであってもよい。この(共)重合体(A2)を形成するビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物を含み、更に、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物及び官能基を有する化合物から選ばれる1種以上を併用することができる。従って、上記(共)重合体(A2)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いたビニル系単量体(a2)と全く同じ組成の成分を重合して得られる重合体であってもよいし、異なる組成で同じ種類の単量体を重合して得られる重合体であってもよいし、更には、異なる種類の単量体を重合して得られる重合体であってもよい。これらの各重合体が2種以上含まれるものであってもよい。
【0034】
上記(共)重合体(A2)としては、下記(4)〜(8)に例示される。尚、各単量体は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられる化合物を適用でき、好ましい化合物も同様である。
(4)芳香族ビニル化合物のみを重合して得られた(共)重合体の1種以上。
(5)芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(6)芳香族ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(7)芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(8)芳香族ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物を除く他の化合物とを重合して得られた共重合体の1種以上。
本発明において、これらの態様は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
従って、上記(共)重合体(A2)の具体例としては、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・α−メチルスチレン共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体等が挙げられる。
【0036】
上記(共)重合体(A2)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜0.8dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。尚、この(共)重合体(A2)の極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の場合と同様、製造条件を調整することにより制御することができる。
【0037】
上記芳香族ビニル系ゴム強化樹脂のアセトン(但し、ゴム質重合体(a1)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)による可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜0.8dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性と耐衝撃性との物性バランスに優れる。
【0038】
ここで、上記芳香族ビニル系ゴム強化樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のみからなる場合、及び、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体の重合によって得られた(共)重合体(A2)とからなる場合のいずれにおいても、本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物中のゴム質重合体(a1)の含有量は、好ましくは5〜30質量%である。上記ゴム質重合体(a1)の含有量が上記範囲にあると、本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物及びそれを含む成形品の耐衝撃性、表面外観性、剛性、耐熱性等に優れる。
【0039】
本発明に係る熱可塑性樹脂〔A〕としては、上記のように、芳香族ビニル系樹脂と、他の熱可塑性樹脂(但し、含フッ素重合体を除く)との組み合わせであってもよい。
他の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂;オレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリ塩化ビニル、エチレン・塩化ビニル重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル酸エステルの1種以上を用いた(共)重合体等のアクリル系樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のイミド系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール;フェノキシ樹脂;感光性樹脂;液晶ポリマー;生分解性プラスチック等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
他の熱可塑性樹脂としては、芳香族ビニル系ゴム強化樹脂とアロイ樹脂を形成する、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリアミド系樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。
【0040】
上記熱可塑性樹脂〔A〕が他の熱可塑性樹脂を含む場合、他の熱可塑性樹脂の含有量の上限値は、成形加工性、機械的物性等の観点から、好ましくは80質量%、より好ましくは70質量%、更に好ましくは60質量%である。また、下限値は、好ましくは1質量%、より好ましくは5質量%、更に好ましくは10質量%である。
【0041】
上記ポリエステル系樹脂は、分子の主鎖中にエステル結合を有する樹脂であれば、特に限定されず、飽和ポリエステル樹脂であってよいし、不飽和ポリエステル樹脂であってもよい。これらのうち、飽和ポリエステル樹脂が好ましい。また、単独重合ポリエステルであってよいし、共重合ポリエステルであってもよい。更に、結晶性樹脂であってよいし、非晶性樹脂であってもよい。
【0042】
上記ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ポリネオペンチルテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等の単独重合ポリエステル、アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンナフタレート単位を主として含有する共重合ポリエステル、液晶ポリエステル等が挙げられる。これらのうち、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
上記オレフィン系樹脂は、炭素数が2以上のα−オレフィンからなる単量体単位を含む重合体であれば、特に限定されない。好ましいオレフィン系樹脂は、炭素数2〜10のα−オレフィンからなる単量体単位を含む重合体である。従って、炭素数2〜10のα−オレフィンからなる単量体単位の1種以上を主として含む(共)重合体;炭素数2〜10のα−オレフィンからなる単量体単位の1種以上と、このα−オレフィンと共重合可能な化合物からなる単量体単位の1種以上とを主として含む共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
上記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン・ブテン−1共重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体が好ましく、プロピレン単位を、全単量体単位に対して、50質量%以上含む重合体、即ち、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体がより好ましい。尚、上記エチレン・プロピレン共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体等があるが、ランダム共重合体が特に好ましい。
【0045】
上記オレフィン系樹脂は、結晶性であってよいし、非晶性であってもよい。好ましくは、室温下、X線回折により、20%以上の結晶化度を有するものである。
上記オレフィン系樹脂の融点(JIS K7121に準拠)は、好ましくは40℃以上である。
また、上記オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、通常、10,000超えであり、好ましくは15,000以上である。メルトフローレート(JIS K7210に準拠。)は、成形性の観点から、好ましくは0.01〜500g/10分であり、各値に相当する分子量を有するものが好ましい。
【0046】
上記オレフィン系樹脂としては、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン等を用いることもできる。
【0047】
上記ポリカーボネート樹脂は、主鎖にカーボネート結合を有するものであれば、特に限定されず、芳香族ポリカーボネートでよいし、脂肪族ポリカーボネートでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。本発明においては、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。尚、このポリカーボネート樹脂は、末端が、R−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。このポリカーボネート樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
上記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、溶媒として塩化メチレンを用い、温度20℃で測定された溶液粘度より換算した場合、好ましくは12,000〜40,000である。この粘度平均分子量が上記範囲にあると、成形加工性に優れ、得られる成形品の耐衝撃性、靭性及び耐薬品性に優れる。
上記ポリカーボネート樹脂は、全体としての粘度平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
上記ポリカーボネート樹脂は、ポリエステル系樹脂と組み合わせて、アロイとして用いることもできる。
【0050】
上記ポリアミド系樹脂は、主鎖に酸アミド結合(−CO−NH−)を有する樹脂であれば、特に限定されない。
上記ポリアミド系樹脂としては、ナイロン4、6、7、8、11、12、6.6、6.9、6.10、6.11、6.12、6T、6/6.6、6/12、6/6T、6T/6I等が挙げられる。
【0051】
尚、ポリアミド系樹脂の末端は、カルボン酸、アミン等で封止されていてもよい。カルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第1級アミン等が挙げられる。
上記ポリアミド系樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
上記熱可塑性樹脂〔A〕としては、芳香族ビニル系ゴム強化樹脂;芳香族ビニル系ゴム強化樹脂とポリエステル系樹脂とからなるアロイ樹脂;芳香族ビニル系ゴム強化樹脂とオレフィン系樹脂とからなるアロイ樹脂;芳香族ビニル系ゴム強化樹脂とポリエステル系樹脂とからなるアロイ樹脂;芳香族ビニル系ゴム強化樹脂とポリカーボネート樹脂とからなるアロイ樹脂;並びに、芳香族ビニル系ゴム強化樹脂とポリアミド系樹脂とからなるアロイ樹脂が好ましい。
【0053】
上記熱可塑性樹脂〔A〕がアロイ樹脂を含む場合、芳香族ビニル系樹脂と、アロイ樹脂を構成する他の熱可塑性樹脂との相溶性を高めるために、必要に応じて、相溶化剤を用いることができる。相溶化剤は、特に限定されず、公知の相溶化剤を用いることができる。
【0054】
次に、抗菌剤〔B〕について説明する。尚、この抗菌剤〔B〕は、防かび剤等の作用をも有する成分である。
この抗菌剤〔B〕は、ベンズイミダゾール環を有し、チアゾール基を有さない、チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物(以下、「成分(b1)」ともいう。)と、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物からなる群から選択される少なくとも1種とを含む成分である。必要に応じて、後述する他の化合物を含むことができる。
【0055】
上記成分(b1)としては、ベンズイミダゾールカルバミン酸誘導体、チオベンズイミダゾール誘導体、スルホニル基含有ベンズイミダゾール誘導体等が挙げられる。これらは、単独であるいは組み合わせて用いることができる。本発明において、成分(b1)は、ベンズイミダゾールカルバミン酸誘導体であることが好ましい。
【0056】
上記ベンズイミダゾールカルバミン酸誘導体は、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化1】

〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基若しくは他の有機基であり、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基若しくは他の有機基であり、Rは、炭化水素基である。〕
【0057】
上記一般式(1)で表される化合物としては、1H−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、1−ブチルカルバモイル−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、6−ベンゾイル−1H−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、6−(2−チオフェンカルボニル)−1H−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
上記チオベンズイミダゾール誘導体は、好ましくは、下記一般式(2)で表される化合物である。
【化2】

〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基若しくは他の有機基であり、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基であり、Rは、有機基である。〕
【0059】
また、上記スルホニル基含有ベンズイミダゾール誘導体としては、1−ジメチルアミノスルホニル−2−シアノ−4−ブロモ−6−トリフルオロメチルベンズイミダゾール等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
本発明に係る成分(b1)としては、1H−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル及び1−ブチルカルバモイル−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルが好ましく、なかでも、1H−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルが特に好ましい。
【0061】
上記有機ヨード系化合物(以下、「成分(b2)」ともいう。)は、ヨウ素原子を有する有機化合物である。但し、ハロアルキルチオ系化合物を除くものとする。
上記成分(b2)としては、ヨードスルホニル化合物、ヨウ化不飽和脂肪族化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは組み合わせて用いることができる。本発明においては、ヨードスルホニル化合物が好ましい。
【0062】
上記ヨードスルホニル化合物としては、ヨードスルホニルベンゼン誘導体が好ましく、ジヨードメチル−p−トリルスルホン(1−ジヨードメチルスルホニル4−メチルベンゼンともいう。)、1−ジヨードメチルスルホニル4−クロロベンゼン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、これらのうち、ジヨードメチル−p−トリルスルホンが好ましい。
【0063】
また、上記ヨウ化不飽和脂肪族化合物としては、3−ヨード−2−プロパルギルブチルカルバミン酸、4−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマール、3−エトキシカルボニルオキシ−1−ブロモ−1,2−ジヨード−1−プロペン、2,3,3−トリヨードアリルアルコール等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
本発明に係る成分(b2)としては、ジヨードメチル−p−トリルスルホンが特に好ましい。
【0065】
上記チアゾール系化合物(以下、「成分(b3)」ともいう。)は、チアゾール基を有する化合物である。
上記成分(b3)としては、チアゾール基含有ベンズイミダゾール誘導体、イソチアゾリン−3−オン誘導体、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンズチアゾール誘導体、イソチアゾール誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、チアゾール基含有ベンズイミダゾール誘導体が好ましい。
【0066】
上記チアゾール基含有ベンズイミダゾール誘導体は、好ましくは、下記一般式(3)で表される化合物である。
【化3】

〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、スルホン酸(塩)基、ニトロ基、ヒドロキシル基、置換基を有してもよい炭化水素基、他の有機基であり、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有してもよいアリール基であり、Rは、アルキレン基である。また、mは0又は1である。〕
【0067】
上記一般式(3)で表される化合物としては、以下に例示される。
【化4】

左側の化合物は、2−(4−チアゾリル)−1H−ベンズイミダゾールである。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【0068】
上記イソチアゾリン−3−オン誘導体は、好ましくは、下記一般式(4)で表される化合物である。
【化9】

〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子若しくは置換基を有してもよい炭化水素基であり、Rは、置換基を有してもよい炭化水素基である。〕
【0069】
上記一般式(4)で表される化合物としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−5−フェニル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ヒドロキシメチル−4−イソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
上記1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン誘導体は、好ましくは、下記一般式(5)で表される化合物である。
【化10】

〔式中、R及びR10は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、シアノ基若しくは置換基を有してもよい炭化水素基であり、Rは、水素原子又は有機基である。〕
【0071】
上記一般式(5)で表される化合物としては、以下に例示される。
【化11】

【化12】

【化13】

【0072】
上記ベンズチアゾール誘導体は、好ましくは、下記一般式(6)及び(7)で表される化合物である。
【化14】

〔式中、R及びR10は、同一又は異なって、水素原子若しくは置換基を有してもよい炭化水素基であり、Rは、−SM(Mは、Na、Zn等の金属原子である)又は有機基である。〕
【化15】

〔式中、R、R10及びR11は、同一又は異なって、水素原子若しくは置換基を有してもよい炭化水素基であり、R12は、R13は、同一又は異なって、有機基である。〕
【0073】
上記一般式(6)で表される化合物としては、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンズチアゾールナトリウム、2−メルカプトベンズチアゾール亜鉛等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
上記成分(b3)としては、2−(4−チアゾリル)−1H−ベンズイミダゾールが特に好ましい。
【0075】
上記ハロアルキルチオ系化合物(以下、「成分(b4)」ともいう。)は、−S−C−X結合(X:ハロゲン原子)を有する化合物である。
上記成分(b4)としては、ハロアルキルチオスルファミド誘導体、ハロアルキルチオフタルイミド誘導体、ハロアルキルチオテトラヒドロフタルイミド誘導体等が挙げられる。これらは、単独であるいは組み合わせて用いることができる。本発明においては、ハロアルキルチオスルファミド誘導体が好ましい。
【0076】
上記ハロアルキルチオスルファミド誘導体としては、N−トリクロロメチルチオ−N−(フェニル)メチルスルファミド、N−トリクロロメチルチオ−N−(4−クロロフェニル)メチルスルファミド、N−(1−フルオロ−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオ)−N−(フェニル)メチルスルファミド、N−(1,1−ジフルオロ−1,2,2−トリクロロエチルチオ)−N−(フェニル)メチルスルファミド、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、N,N−ジメチル−N’−(p−トリル)−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記ハロアルキルチオスルファミド誘導体のうち、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミドが好ましい。
【0077】
上記ハロアルキルチオフタルイミド誘導体としては、N−フルオロジクロロメチルチオフタルイミド、N−トリクロロメチルチオフタルイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記ハロアルキルチオテトラヒドロフタルイミド誘導体としては、N−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオテトラヒドロフタルイミド、N−トリクロロメチルチオテトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
本発明に係る成分(b4)としては、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミドが特に好ましい。
【0079】
本発明に係る抗菌剤〔B〕は、成分(b1)と、成分(b2)、(b3)及び(b4)から選ばれた少なくとも1種とが含まれている。このとき、上記成分(b1)の含有量、並びに、成分(b2)、(b3)及び(b4)からなる群から選択される少なくとも1種の含有量の合計、の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは80〜99.99質量%及び0.01〜20質量%、より好ましくは85〜99.97質量%及び0.03〜15質量%、更に好ましくは88〜99.85質量%及び0.15〜12質量%、特に好ましくは91〜99.7質量%及び0.3〜9質量%である。上記割合で組み合わされたものであると、本発明の組成物において、細菌の繁殖を防除し、抗菌性等の持続性が一段と優れる。
【0080】
上記成分(b1)と、上記成分(b2)、(b3)及び(b4)から選ばれた少なくとも1種とが組み合わされた場合の具体例は、以下に示される。
(1)チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物及び有機ヨード系化合物の組み合わせ
(2)チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物及びチアゾール系化合物の組み合わせ
(3)チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物の組み合わせ
(4)チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物、有機ヨード系化合物及びチアゾール系化合物の組み合わせ
(5)チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物、有機ヨード系化合物及びハロアルキルチオ系化合物の組み合わせ
(6)チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物の組み合わせ
(7)チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物の組み合わせ
【0081】
上記抗菌剤〔B〕において、成分(b1)と、成分(b2)、(b3)及び(b4)から選ばれた1種との組み合わせである場合、その例は、上記(1)〜(3)の通りである。この場合、上記成分(b1)の含有量、並びに、上記成分(b2)、成分(b3)及び成分(b4)からなる群から選択された1種の含有量、の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは80〜99.99質量%及び0.01〜20質量%、より好ましくは85〜99.97質量%及び0.03〜15質量%、更に好ましくは88〜99.85質量%及び0.15〜12質量%、特に好ましくは91〜99.7質量%及び0.3〜9質量%である。上記抗菌剤〔B〕がこの割合で組み合わされたものであると、細菌の繁殖を防除し、抗菌性等の持続性が一段と優れる。
【0082】
本発明においては、細菌等の繁殖を防除し、更に、抗菌性に優れ、これらの効果の持続性に特に優れることから、上記抗菌剤〔B〕は、成分(b1)と、成分(b2)、(b3)及び(b4)から選ばれた少なくとも2種との組み合わせ、即ち、上記態様(4)〜(7)が好ましい。この場合、上記成分(b1)の含有量、並びに、上記成分(b2)、成分(b3)及び成分(b4)からなる群から選択された2種の含有量、の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは80〜99.99質量%及び0.01〜20質量%、より好ましくは85〜99.97質量%及び0.03〜15質量%、更に好ましくは88〜99.85質量%及び0.15〜12質量%、特に好ましくは91〜99.7質量%及び0.3〜9質量%である。
【0083】
上記のように、抗菌剤〔B〕は、上記必須成分に加えて、更に、他の化合物を含んでもよい。他の化合物としては、有機ブロム系化合物等が挙げられる。
上記有機ブロム系化合物は、臭素原子を有する有機化合物である。但し、ハロアルキルチオ系化合物を除くものとする。
上記有機ブロム系化合物としては、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2,2−ジブロモ−4−ニトリロブタンアミド、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、2−ブロモ−2−ブロモメチルグルタロニトリル等のニトリル基(シアン基)含有化合物;2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ブタンジオール、3−ブロモ−3−ニトロ−2,4−ペンタンジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール等のアルコール性水酸基含有化合物;α−ブロモシンナムアルデヒド、2,2−ジブロモアセトフェノン、2,2−ジブロモ−4’−ヒドロキシアセトフェノン、2−ブロモ−4’−ヒドロキシアセトフェノン、ビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテン、ベンジルブロモアセテート、1,2−ジブロモプロピオンアルデヒド、N−ブロモアセトアミド、ヘキサブロモジメチルスルホン、ブロモメチルチオシアネート、ω−ブロモオキシイミノアセトフェノン、ブロモ酢酸エチルチオフェニルエステル、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、5−ブロモサリチルアニリド、3,4−ジブロモサリチルアニリド、3,4’,5−トリブロモサリチルアニリド、3,5−ジブロモサリチル酸、3,5−ジブロモサリチルアルデヒド、2,4,6−トリブロモフェノール、1−ブロモ−3−エトキシカルボニルオキシ−1,2−ジヨード−1−プロペン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記抗菌剤〔B〕が、これらの有機ブロム系化合物を含有する場合、バシルス属、クロストリジウム属等の芽胞菌並びに木材腐朽菌に対する抗菌性に優れる。
尚、上記化合物のうち、好ましくは2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン等のニトリル基(シアン基)含有化合物;2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール等のアルコール性水酸基含有化合物;ビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテン及びヘキサブロモジメチルスルホン、より好ましくは2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール及び1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、特に好ましくは2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールである。
【0084】
上記抗菌剤〔B〕が、有機ブロム系化合物を含む場合、この有機ブロム系化合物の含有量は、成分(b1)を100質量部とした場合に、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.02〜2.5質量部、更に好ましくは0.03〜2質量部である。有機ブロム系化合物が上記割合で含有されると、得られる成形品等において、細菌等に対する優れた抵抗性を得ることができる。
【0085】
上記抗菌剤〔B〕は、更に他の抗菌剤を含有することもできる。他の抗菌剤としては、有機系抗菌剤、無機系抗菌剤、有機・無機抗菌剤等が挙げられる。
有機系抗菌剤としては、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4,6−トリフルオロイソフタロニトリル等のニトリル系化合物;2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルホニルピリジン、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム等のピリジン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機系抗菌剤としては、銀イオン保持タイプ、銀錯塩保持タイプ等の銀系抗菌剤;酸化チタン系抗菌剤;銅系抗菌剤;酸化亜鉛系抗菌剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
上記抗菌剤〔B〕は、粉体又は粉体混合物であってよいし、水、有機溶剤、又は、これらの混合媒体に分散あるいは溶解されてなる組成物であってもよい。また、上記抗菌剤〔B〕は、上記の粉体混合物、及び、媒体に分散あるいは溶解されてなる組成物以外に、後述する添加剤を所定量含む混合物等として用いることができる。混合方法は、従来、公知の方法であってよく、乾式法及び湿式法のいずれでもよい。混合装置としては、ロッキングミル、タンブラーミキサー、ドラムミキサー、ミキシングシェーカー、ロッキングシェーカー、V型混合機、W型混合機等が挙げられる。
【0087】
本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物において、上記抗菌剤〔B〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.01〜10質量部であり、好ましくは0.05〜8質量部、より好ましくは0.08〜5質量部、特に好ましくは0.1〜3質量部である。上記抗菌剤〔B〕の含有量が上記範囲にあると、得られる成形品等の表面において、細菌の繁殖を防除し、更に、抗菌性に優れ、これらの効果の持続性に優れる。尚、上記抗菌剤〔B〕の含有量が多すぎると、得られる成形品等の外観性が低下し、含有量が少なすぎると抗菌性が不十分となる。
【0088】
本発明に係わるポリオレフィンワックス〔C〕は、オレフィンに由来する構造単位を含み、通常、25℃で固体の(共)重合体である。
上記ポリオレフィンワックス〔C〕を構成する重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン共重合体、酸化ポリエチレン等が挙げられる。
尚、上記オレフィン共重合体には、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、デセン−1、4−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1等のオレフィンに由来する構造単位を2種以上含む共重合体;これらのオレフィンに由来する構造単位の1種以上と、オレフィンと共重合可能な重合性不飽和化合物、例えば、不飽和カルボン酸及びその酸無水物((メタ)アクリル酸、無水マレイン酸等)、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等)等、に由来する構造単位とを含む共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0089】
上記ポリオレフィンワックス〔C〕の構造は、線状構造であってよいし、分岐構造であってもよい。
また、上記ポリオレフィンワックス〔C〕の数平均分子量は、抗菌性を短時間で発現することから、好ましくは100〜10,000、より好ましくは500〜10,000、更に好ましくは800〜9,000、特に好ましくは1、000〜8,000である。
更に、上記ポリオレフィンワックス〔C〕の粘度(140℃)は、好ましくは100〜10,000cps、より好ましくは100〜5,000cpsである。
上記ポリオレフィンワックス〔C〕は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、ポリエチレンワックス及び酸化ポリエチレンワックスが好ましく、ポリエチレンワックスが特に好ましい。
【0090】
本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物において、上記ポリオレフィンワックス〔C〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.1〜20質量部であり、好ましくは0.2〜15質量部、より好ましくは0.5〜10質量部である。上記重合体〔C〕の含有量が上記範囲にあると、得られる成形品等において、細菌等の繁殖を防除し、抗菌性に優れ、これらの効果の持続性に優れる。尚、上記重合体〔C〕の含有量が多すぎると、得られる成形品の耐熱性、機械的物性等が低下し、含有量が少なすぎると、抗菌性の持続性が不十分となる。
【0091】
上記含フッ素重合体としては、テトラフルオロエチレンに由来する構造単位を有する(共)重合体、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、テトラフルオロエチレンに由来する構造単位を有する(共)重合体が好ましい。
上記含フッ素重合体が共重合体である場合、テトラフルオロエチレンに由来する構造単位と、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)化合物、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、エチレン、プロピレン等から選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位と、を有する重合体とすることができる。尚、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)化合物は、例えば、パーフルオロアルコキシル基の炭素数が1〜8である化合物とすることができる。
【0092】
上記含フッ素重合体としては、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0093】
本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物が含フッ素重合体を含む場合、その含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部である。その含有量の下限値は、好ましくは0.01質量部超え、より好ましくは0.05質量部超え、更に好ましくは0.1質量部超え、特に好ましくは0.2質量部超えである。また、上限値は、好ましくは5質量部未満、より好ましくは3質量部未満、更に好ましくは1質量部未満である。上記含フッ素重合体の含有割合が上記範囲にあると、細菌の死滅率を向上させることができる。尚、芳香族ビニル系樹脂組成物に含まれる含フッ素重合体の含有量が多すぎると、得られる成形品における層状剥離等の不具合が生じることがあり、それにより外観性の低下が発生する場合がある。
【0094】
本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物は、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、耐候剤、耐光剤、老化防止剤、帯電防止剤、滑剤、結晶核剤、充填剤、難燃剤、発泡剤、展着剤、増量剤、賦形剤、硬化剤、着色剤、香料、分散剤、レベリング剤、消泡剤、艶消剤、凍結防止剤等の添加剤を含有することができる。
【0095】
本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物は、通常、常温で固体であり、各成分又はその混合物を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー等に供給し、混練することにより製造することができる。好ましい製造方法は、押出機を用いる方法であり、なかでも、多軸押出機を用いる方法、及び、押出機と、バンバリーミキサー、連続ニーダー等とを組み合わせた方法が好ましい。更に、原料成分の混練に際して、全量を一括して混練してもよく、多段等の、分割配合しながら混練してもよい。
【0096】
尚、組成物の製造に際して、予め、熱可塑性樹脂〔A〕の一部と、抗菌剤〔B〕とを用いてなる、抗菌剤〔B〕を高濃度(例えば、3〜50質量%)で含まれるマスターバッチ樹脂(S1)、並びに、熱可塑性樹脂〔A〕の残部と、ポリオレフィンワックス〔C〕とを用いてなる、抗菌剤〔B〕を含有していないマスターバッチ(S2)を調製し、両者を混練する方法を適用することができる。この場合、組成物における抗菌剤〔B〕の分散性をより向上させることができる。尚、含フッ素重合体を含む組成物を製造する際にも、熱可塑性樹脂〔A〕(の一部)と併用することにより、抗菌剤〔B〕の優れた分散性を得ることができる。
【0097】
本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物を用いて、成形品を得ることができる。また、本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂〔A〕、抗菌剤〔B〕及びポリオレフィンワックス〔C〕等を2以上に分割させてなる原料組成物を用いて、成形品を得ることもできる。
本発明の成形品は、その全体に渡って均一組成であってよいし、所定の方向に対して抗菌剤〔B〕、ポリオレフィンワックス〔C〕、含フッ素重合体等の濃度が変化しているものであってよいし、本発明の効果を所望する特定の部位が、本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物により形成されたものであってもよい。
【0098】
本発明の成形品において、その形態は、特に限定されず、板状、線状、輪状、網状、筒状、半筒状等の所定形状体(フィルム、繊維、管等)又は異形体とすることができる。これらは、中実体及び発泡体のいずれでもよい。また、本発明の成形品は、任意の場所に、貫通孔、溝、凹部、凸部等を備えてもよい。
【0099】
本発明の成形品は、ペレット等の均一組成の芳香族ビニル系樹脂組成物を用いて、射出成形、(共)押出成形(シート成形、フィルム成形)、異形押出成形、プレス成形、真空成形、発泡成形、溶融紡糸、乾式紡糸、湿式紡糸等の公知の方法により製造することができる。また、上記のように、所望の部位に、本発明の効果を発現させる場合には、その部位に、芳香族ビニル系樹脂組成物が偏在するように製造することができる。また、本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物を構成するように、抗菌剤〔B〕やポリオレフィンワックス〔C〕の含有割合の異なる組成物の複数を用い、例えば、これらを段階的に供給して製造することもできる。
【0100】
本発明において、上記芳香族ビニル系樹脂組成物によって形成された成形品以外に、他の材料からなる物品又は層の表面に、上記芳香族ビニル系樹脂組成物を含む樹脂層を備える積層物(複合物品、積層フィルム、積層シート等);上記芳香族ビニル系樹脂組成物を含む樹脂層の2種以上からなる積層物;他の材料からなる物品の表面に、上記芳香族ビニル系樹脂組成物を、塗料等として用いて形成された皮膜を備える積層物(複合物品、積層フィルム、積層シート等)とすることもできる。本発明の成形品は、これらの製品を使用中、輸送中又は保管中に菌、生物等が発生あるいは繁茂し、製品に付着、繁殖等する場所における用途に好適である。
【0101】
本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物を成形してなる成形品は、細菌等に対して抵抗性を有する。
細菌としては、酵母、芽胞菌、放線菌、大腸菌、緑膿菌、枯草菌、黄色ブドウ球菌等が挙げられ、具体例としては、Bacillus cereus、Bacillus subtillis、Clostridium botulinum、Clostridium perfringens、Escherichia coli、Enterbacter aerogenes、Lactobacillus bulgericus、Micrococcus glatamicus、Paecilomyces lilacinus、Pseudomonas aeruginosa、Pseudononas fluresceus、Proteus vulgaris、Pythium vanterpoolii、Rhizoctonia violacea、Rhizoctonia solani、Streptomyces aureofaciene、Staphylococcus aureus、Staphylococcus faecalis、Salmonella arizonae、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces rouxii、Streptoverticillium reticulum、Salmonella paratyphi等が挙げられる。
【実施例】
【0102】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0103】
1.原料成分
樹脂組成物の製造に用いた成分を以下に示す。
1−1.熱可塑性樹脂〔A〕
樹脂(A1)として、ABS樹脂(商品名「テクノABS 350」、テクノポリマー社製)を用いた。
樹脂(A2)として、AES樹脂(商品名「テクノAES 110」、テクノポリマー社製)を用いた。
樹脂(A3)として、ASA樹脂(商品名「テクノASA AR11」、テクノポリマー社製)を用いた。
樹脂(A4)として、ABS/PCアロイを用いた。ABS/PCアロイは、ABS樹脂(商品名「テクノABS 350」、テクノポリマー社製)と、ポリカーボネート樹脂(商品名「NOVAREX 7022PJ」、三菱エンジニアリングプラスチック社製)とを、質量比1対1の割合でヘンシェルミキサーに供給し、室温で混合した後、ナカタニ機械社製単軸押出機「NVC50」(型式名)を用いた溶融混練により得られた樹脂(ペレット状)である。尚、溶融混練の際のシリンダー温度は、230℃〜270℃である。
【0104】
1−2.抗菌剤〔B〕の成分
チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物(b1)として、下記の1H−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルを用いた。
【化16】

【0105】
有機ヨード系化合物(b2)として、下記のジヨードメチル−p−トリルスルホンを用いた。
【化17】

【0106】
チアゾール系化合物(b3)として、2−(4−チアゾリル)−1H−ベンズイミダゾールを用いた。
【0107】
ハロアルキルチオ系化合物(b4)として、下記のN,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミドを用いた。
【化18】

【0108】
1−3.ポリオレフィンワックス〔C〕
ポリオレフィンワックス(C1)として、ポリエチレンワックス(商品名「サンワックス171−P」、三洋化成工業社製)を用いた。数平均分子量は1,500である。
ポリオレフィンワックス(C2)として、カルボン酸変性ポリエチレンワックス(商品名「WAX CERIDUST VP3715」、クラリアントジャパン社製)を用いた。数平均分子量は5,100である。
ポリオレフィンワックス(C3)として、ポリエチレンワックス(商品名「サンワックス161−P」、三洋化成工業社製)を用いた。数平均分子量は5,000である。
【0109】
1−4.含フッ素重合体〔D〕
含フッ素重合体(D1)として、アクリロニトリル−スチレン樹脂カプセル化ポリテトラフルオロエチレン(商品名「Blendex449」、GEスペシャリティケミカルズ社製)を用いた。
含フッ素重合体(D2)として、ポリテトラフルオロエチレン(商品名「ポリフロンFA−500C」、ダイキン工業社製)を用いた。
【0110】
2.抗菌剤〔B〕の調製
上記の成分(b1)〜(b4)を、表1に記載の割合で、V型混合機に供給し、室温で30分間混合し、抗菌剤(B1)〜(B7)を得た。
【0111】
【表1】

【0112】
3.芳香族ビニル系樹脂組成物の調製及び評価
実施例1〜14及び比較例1〜3
上記の熱可塑性樹脂〔A〕、抗菌剤〔B〕、ポリオレフィンワックス〔C〕及び含フッ素重合体〔D〕を、表2に記載の割合で、ヘンシェルミキサーに供給し、室温で混合した後、ナカタニ機械社製単軸押出機「NVC50」(型式名)を用いて溶融混練し、ペレット(芳香族ビニル系樹脂組成物)とした。尚、溶融混練の際のシリンダー温度は、180℃〜200℃とした。
【0113】
【表2】

【0114】
上記で得られたペレットを十分に乾燥した後、樹脂の溶融温度が180℃〜240℃となるように設定した日本製鋼所社製射出成形機「J35AD」(型式名)を用いて、長さ80mm、幅55mm及び厚さ2.4mmの平板状成形品を得た。そして、この平板状成形品を切削加工することにより、長さ50mm、幅50mm及び厚さ2.4mmの評価用試験片を作製した。尚、抗菌活性値を得るため、成分〔B〕、〔C〕及び〔D〕を含まない、成分〔A〕のみからなる比較用試験片も作製した。
【0115】
上記で得られた評価用試験片を、JIS Z2801:2000「抗菌加工製品−抗菌性試験法・抗菌効果」5.2プラスチック製品の試験方法に準じて、黄色ぶどう球菌及び大腸菌を試験菌とする抗菌試験に供した。そして、抗菌活性値を算出し、表3に示した。
尚、抗菌活性値は、菌液付き比較用試験片を用いて所定時間培養させた後の菌数を、菌液付き評価用試験片を用いて所定時間培養させた後の菌数で除して得られた数の対数値であり、通常、抗菌活性値が2.0以上(99%の死滅率)であると、抗菌効果がある。
【0116】
この試験の詳細は、以下のとおりである。
1)培地
精製水1,000mLに、肉エキス3.0g、ペプトン10.0g及び塩化ナトリウム5.0gをフラスコへ入れて混合し、内容物を十分に溶解した。その後、溶液がpH7.0〜7.2となるように、水酸化ナトリウム及び塩酸溶液を用いて調整した。次いで、高圧殺菌処理を行い、試験用ブイヨン培地とした。
2)試験菌液
ブイヨン培地を、精製水により500倍に希釈した。その後、水酸化ナトリウム及び塩酸溶液を用いて、pH6.8〜7.2に調整した。次いで、高圧蒸気殺菌し、1/500NBとした。試験菌を1/500NBに分散させ、顕微鏡により菌数が2.0×10個/mLとなるように調整し、これを試験菌液とした。
3)試験片の清浄化
評価用試験片の表面を、エタノールを吸収させた脱脂綿で2回ふいた後、十分に乾燥させた。
4)菌液滴下
上記試験菌液0.4mLを、清浄化した試験片に滴下(接種)し、その上に被覆フィルムを被せて、シャーレに静置し、蓋をした。
5)培養条件
菌液の滴下された試験片を収容したシャーレを、温度・湿度サーモスタット付きサーキュレーターを用いて、温度35℃±1℃、相対湿度90%以上の条件下、24時間、48時間、72時間培養した。
【0117】
【表3】

【0118】
表3から以下のことが分かる。
比較例1は、抗菌剤〔B〕及びポリオレフィンワックス〔C〕を含有しない組成物を用いた例であり、抗菌効果が認められなかった。比較例2は、抗菌剤〔B〕を含有し、ポリオレフィンワックス〔C〕を含有しない組成物を用いた例であり、抗菌性、及び、抗菌効果の持続性の両方が不十分であった。比較例3は、抗菌剤〔B〕を含有せず、ポリオレフィンワックス〔C〕を含有する組成物を用いた例であり、抗菌効果が認められなかった。
一方、実施例1〜14は、熱可塑性樹脂〔A〕、抗菌剤〔B〕及びポリオレフィンワックス〔C〕を所定の割合で含有した例であり、抗菌性に優れ、抗菌効果の持続性にも優れていた。特に、実施例12及び13は、芳香族ビニル系樹脂からなる熱可塑性樹脂〔A〕と、抗菌剤〔B〕と、ポリオレフィンワックス〔C〕と、含フッ素重合体〔D〕とからなる組成物を用いた例であり、実施例5よりも、抗菌性、及び、抗菌効果の持続性の両方について、更に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の芳香族ビニル系樹脂組成物を用いて形成された成形品又は皮膜等を有する物品は、これらの製品を使用中に、細菌等が発生あるいは繁茂し、製品に付着、繁殖等する場所における用途に好適である。
具体的な分野としては、生活用品、スポーツ・レジャー用品、建築土木資材、農林業用資材、漁業用資材、産業用資材、公共機関用資材、交通関係資材、弱電関係製品、繊維製品等が挙げられる。
生活用品としては、浴室用品、台所用品(三角コーナー、まな板、ボール、ざる等)、洗濯物干し用品、掃除用品(ブラシ等)、敷物、インテリア用品、文具(万年筆、シャープペンシル、ボールペン等)、カーテン、タオル、寝具、ベッド、雨具、ゴミ籠、花器、園芸用具、植木鉢、クッション、幟、旗等が挙げられる。
スポーツ・レジャー用品としては、スポーツ用具、スポーツ衣料、プロテクター、手袋、靴材、鞄材、グリップテーピング材、プール用品、公園用品、海浜用具、遮光材、テント、ロープ、ボートヨット用品等が挙げられる。
建築土木資材としては、テント類、養生シート、養生メッシュ、汚濁防止膜材、帆布、ルーフィング材、人工芝、建物内装材、建物内装材補強繊維、塗料補強繊維、壁土補強繊維等が挙げられる。
農林業用資材としては、水槽、桶、農業ホース、農業用フィルム、温室器材、寒冷紗、水耕栽培用資材、防虫ネット等が挙げられる。
漁業用資材としては、漁網、養殖用器材、係留ロープ、防舷材、シーアンカー、浮体等が挙げられる。
産業用資材としては、水道管、ホース、コンベアベルト、陸上ネット、陸上ロープ、フィルター、フェルト、各種容器、梱包材、排水取水側溝材、水処理材、食品加工場用資材や、制御装置、家電、コンピュータ等のボタン類、操作器具、光学機器、各種医療器具、水の蒸発材等が挙げられる。
公共機関用資材及び交通関係資材としては、自動車内外装材、ドアの取っ手、吊り革、自動販売機操作ボタン、エスカレーターの持ち手、案内ロープ、道路標識、広告掲示用品材、病院や療養所用のインテリア用品材、内装材等が挙げられる。
弱電関係製品としては、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、扇風機、乾燥機、空調機、加湿機、空気清浄機、電話機、電気ポット、炊飯器、食器洗浄機、食器乾燥機、電子レンジ、ミキサー、VTR、テレビ、時計、ステレオ、テープレコーダー、OA機器等が挙げられ、筐体、取っ手、トレイ、仕切、通気口、通水口等とすることができる。
繊維製品としては、繊維製品には織編み物、不機布、スパンボンド、フェルト、合成紙の中間製品や、更に加工された衣服(外衣、作業服、下着、靴下、帽子等)、衣料用編み物、産業用縫製品、紐、テープ、ロープ、リボン等が挙げられる。
また、加工された製品は、本発明の効果を、近傍の物品に与える目的でも使用される。例えば、細菌やかびの侵入を阻止する目的で製品を配置したり、飛来菌の侵入を少なくする目的でメッシュ製品を配置したりすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
〔A〕芳香族ビニル系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂と、〔B〕抗菌剤と、〔C〕ポリオレフィンワックスとを含有する芳香族ビニル系樹脂組成物であって、
上記抗菌剤〔B〕は、チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物と、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物からなる群から選択される少なくとも1種とを含み、
上記抗菌剤〔B〕及び上記ポリオレフィンワックス〔C〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、それぞれ、0.01〜10質量部及び0.1〜20質量部であることを特徴とする芳香族ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
上記チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物の含有量、並びに、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の含有量の合計、の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、80〜99.99質量%及び0.01〜20質量%である請求項1に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物。
【請求項3】
上記抗菌剤〔B〕が、チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物と、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物からなる群から選択される少なくとも2種とを含む請求項1に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物。
【請求項4】
上記チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物の含有量、並びに、有機ヨード系化合物、チアゾール系化合物及びハロアルキルチオ系化合物からなる群から選択される少なくとも2種の含有量の合計、の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、80〜99.99質量%及び0.01〜20質量%である請求項3に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物。
【請求項5】
上記チアゾール基非含有ベンズイミダゾール系化合物が、ベンズイミダゾールカルバミン酸誘導体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物。
【請求項6】
上記ポリオレフィンワックス〔C〕が、ポリエチレンワックスである請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物。
【請求項7】
更に、含フッ素重合体を含有し、該含フッ素重合体の含有量が、上記熱可塑性樹脂〔A〕100質量部に対して、0.01〜10質量部である請求項1〜6のいずれか1項に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の芳香族ビニル系樹脂組成物を成形してなる成形品。

【公開番号】特開2011−116919(P2011−116919A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277955(P2009−277955)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】