説明

芳香族化合物の新規製造方法

【課題】 食品、医薬品及び化粧品等の分野で有用な芳香族化合物の効率的な製造方法の提供。
【解決手段】 芳香族アルデヒドもしくは芳香族カルボン酸誘導体をグリニャール試薬と反応させ、次いで水酸基の保護基を除去することを特徴とする式[I]で示される芳香族化合物の製造方法。


(式[I]中の、R1およびR2は水素原子、低級アルキル基またはフェノール性水酸基の保護基であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Bは−CH(OH)−、または−C(=O)−であり、nは1〜14の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族アルデヒドもしくは芳香族カルボン酸誘導体をグリニャール試薬と反応させることを特徴とする、芳香族化合物の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ショウガオールは、ジンゲロールと並ぶ生姜抽出物の主要成分であり、例えば、血行促進作用(特許文献1)、体臭抑制効果(特許文献2)、抗酸化効果(非特許文献1)、保湿効果(非特許文献2)等を有することが知られている芳香族化合物である。
ショウガオール及びその類縁化合物(以下、ショウガオール類とも言う)の製造方法としては、ジンゲロンと脂肪族アルデヒドとを塩基の存在下で反応させてジンゲロール類を調製し、さらにこのジンゲロール類を酸触媒の存在下で加熱することにより、脱水させてショウガオール類に変換する方法が知られている(特許文献3)。しかし、当該公報に記載された製造方法では、脂肪族アルデヒドを過剰量用いているにもかかわらずジンゲロール類の収率が低く、ショウガオール類を良好な収率で得ることが難しい。また、6−ショウガオールは、生体内で1−(4’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−デカン−10−オール−3−オンや1−(4’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−デカン−3,10−ジオールなどに代謝されることが知られている(非特許文献3)。このようなショウガオールの代謝物などの高極性な化合物を得るには、例えば、6−ショウガオールをAspergillus nigerの培地に加え2日もしくは7日間培養した後、溶媒による抽出、さらにHPLCでの分離を行うことが必要であった。
【0003】
これまでに本発明者らは、ショウガオール類を大量に生産できる方法について検討し、ショウガオール類を対象とする工業的製造法を創作し、ショウガオール類の製造法を確立し、特定のショウガオール類を得るとともに(特許文献4)、それらのショウガオール類にチロシナーゼ活性を阻害する性質があることを見出し報告した(特許文献5)。
また、ショウガオール類が水溶性に不十分なことから、人に適用することが困難な場合があり、水溶性のより大きなショウガオール類縁化合物が求められている。さらに、上記の如く、これまで高極性なショウガオール類の代謝物は半合成的な手法で調製することが主体であり、これらの高極性なショウガオール類の代謝物などを効率的且つ安価な化学合成方法で得ることは至難であった。
【0004】
【特許文献1】特開平6−183959号公報(発明の詳細な説明)
【特許文献2】米国特許6264928号(発明を実施するための最良の形態)
【特許文献3】特開平8−40970号公報(発明の詳細な説明)
【特許文献4】特開2003−327574(発明の詳細な説明)
【特許文献5】特願2003−086818(発明の詳細な説明)
【非特許文献1】Kikuzaki, H. et al., J.Food Sci., 58, 1407 - 1410(1993)
【非特許文献2】鈴木正人 監修、「新しい化粧品機能素材300 上巻」、311−312頁、シーエムシー出版、2002年
【非特許文献3】Takahashi, H. et al., Phytochemistry, 34,1497-1500 (1993)
【非特許文献4】Lee, S. S., Arch. Pharm. Res., 18, 136-137 (1995)
【非特許文献5】Osawa, K. et al., Life Sciences, 70, 2165-2175(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、このような状況を鑑み、式[I]で示される芳香族化合物(以下、化合物[I]という、他一般式で同様に示される化合物を同様に表記する)の効率的な製造法を提供することにある。
【0006】
【化1】

【0007】
式[I]中の、R1およびR2は水素原子、低級アルキル基またはフェノール性水酸基の保護基であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Bは−CH(OH)−、または−C(=O)−であり、nは1〜14の整数である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題について鋭意検討を重ねた結果、芳香族アルデヒドもしくは芳香族カルボン酸誘導体とグリニャール試薬の反応を利用することで、化合物[I]を高収率で製造できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明の一つは、下記式[II]で示される化合物[II]と式[III]で示されるグリニャール試薬(試薬[III]という)を反応させ、次いで水酸基の保護基を除去することを特徴とする化合物[I]の製造方法である。
【0010】
【化2】

【0011】
式[II]中の、R1およびR2は水素原子、低級アルキル基またはフェノール性水酸基の保護基であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Xは水素原子、または脱離基である。
【0012】
【化3】

【0013】
式[III]中の、R3はアルコール性水酸基の保護基であり、nは1〜14の整数であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧品等の分野でチロシナーゼ活性阻害剤、および抗酸化剤として有用である化合物[I]を、入手容易な原料を用い、低コストで製産効率の優れた製造方法を可能としたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、低級アルキル基とは、炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖アルキル基を示し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、及びt−ブチル基を挙げることができ、好適にはメチル、又は、エチルである。
【0016】
本発明において、フェノール性水酸基又はアルコール性水酸基の保護基は、導入および除去が容易な保護基であることが好ましく、シリル型保護基、ベンジル型保護基、エーテル型保護基等が例示される。具体的には、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ベンジル基、p―メトキシベンジル基、テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、1−エトキシエチル基が好適である。
【0017】
本発明において、炭素数1〜4のアルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であり、好ましくはエチレン基またはブチレン基であり、さらに好ましくはエチレン基である。
【0018】
また、本発明における式[III]で示されるグリニャール試薬は、炭素数1〜14までの直鎖または分枝鎖アルキレン基を有するものである。例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、s−ブチレン、t−ブチレン、n−ペンチレン、n−ヘキシレン、n−ヘプチレンおよびn−オクチレン基などを挙げることができ、好ましくは炭素数1〜11のアルキレン基である。
【0019】
本発明において、脱離基とは、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、N−スクシンイミドオキシ基、N−フタルイミドオキシ基等の環状イミドオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基等の低級アルコキシカルボニルオキシ基、ジメチルホスホリルオキシ基、ジフェニルホスホリルオキシ基のようなホスホリルオキシ基、イミダゾール、トリアゾール等のヘテロアリール基、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基、塩化メタンスルホニルオキシ基、塩化ベンゼンスルホニルオキシ基、塩化トルエンスルホニルオキシ基等の塩化スルホニルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基のようなトリフラート基などであり、好ましくは塩素、N−スクシンイミドオキシ基である。
【0020】
本発明の化合物[I]の製造方法について説明する。
化合物[I]は、化合物[II]と試薬[III]を反応させ、下記に示される化合物[IV]を製造し[A1工程]、その後、化合物[IV]のアルコール性水酸基の保護基の除去、ならびに必要によって行われるフェノール性水酸基の保護基の除去を経ることで製造することができる[A2工程]。
【0021】
【化4】

【0022】
式[IV]中の、R1およびR2は水素原子、低級アルキル基またはフェノール性水酸基の保護基であり、 R3はアルコール性水酸基の保護基であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Bは−CH(OH)−、または−C(=O)−であり、nは1〜14の整数である。
【0023】
[A1工程]では、化合物[II]を溶解した溶液に、試薬[III]を溶解した溶液を滴下して行うのが好ましい。
[A1工程]においては、化合物[II]に対して、試薬[III]の割合が、0.7〜1.3化学当量であることが好ましく、さらに好ましくは、0.9〜1.1化学当量である。
【0024】
[A1工程]に使用する溶媒は、エーテル系溶媒が適当である。具体的には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテルなど公知の溶媒を適宜選択して使用することができる。またこれらの溶媒を組み合わせて使用することも可能である。
【0025】
[A1工程]の反応の温度は、−78℃〜70℃が好ましく、より好ましくは−20℃〜30℃である。この反応温度が低すぎる場合は温度維持にコストがかかり、また、反応温度が高すぎる場合は副反応が進行する場合がある。
[A1工程]の反応終了後は、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー等の公知の方法により、化合物[IV]を得ることができる。
【0026】
[A2工程]において、化合物[IV]におけるアルコール性水酸基の保護基の除去、ならびに必要によって行われるフェノール性水酸基の保護基の除去の方法は、保護基の種類によって異なるが、一般に有機合成化学の分野において周知の方法、例えばT.W.Greene.,「Protective Groups in Organic Synthesis」,John Wiley&Sonsに記載の方法に準じて行うことができる。
[A2工程]の反応終了後は、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー等の公知の方法により、目的とする化合物[I]を得ることができる。
【0027】
化合物[II]は、G.Solladie,et al.,J.Org.Chem.,58,2181(1993)、B.Umezawa, et al.,Chem.Pharm.Bull.,28,1003-1005(1980)、等の文献に記載の方法により合成することができる。
【0028】
試薬[III]は、金属マグネシウムを分散させたエーテル系溶媒に、下記式(V)で示されるハライド化合物(化合物[V])を添加することで調製することができる。
【0029】
【化5】

【0030】
式[V]中のR3、n、Xは式[III]で定義した通りである。
【0031】
本反応においては、化合物[V]に対して、マグネシウムの割合が、1〜10化学当量であることが好ましく、さらに好ましくは、1〜3化学当量である。
【0032】
本反応では、反応系内に残っている水分などの不純物やマグネシウム表面の酸化皮膜などによって、試薬の調製に困難を生じる場合があるが、そのような場合はマグネシウムを活性化することで解決することができる。マグネシウムを活性化するには、ヨウ素、ヨウ化メチル、臭化メチル、ジブロモエタンなどを反応初期に添加する方法、マグネシウムを窒素雰囲気下で機械的に攪拌する方法、活性化マグネシウム粉末を使用するRieke法、および特開平09−316083号公報に記載されているグリニャール試薬を反応初期に添加する方法などが例示できる。
【0033】
本反応に使用する溶媒は、エーテル系溶媒が適当である。具体的には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテルなど公知の溶媒を適宜選択して使用することができる。またこれらの溶媒を組み合わせて使用することも可能である。
【0034】
本反応の温度は、−20℃〜100℃が好ましく、より好ましくは0℃〜70℃である。この反応温度が低すぎる場合は温度維持にコストがかかり、また、反応温度が高すぎる場合は副反応が進行する場合がある。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なおPhはフェニル基を示す。
【0036】
(合成例1)グリニャール試薬のテトラヒドロフラン溶液の製造
化合物1をマグネシウムと反応させ化合物2を調製した。
すなわち、金属マグネシウム(削り状)(3.41g,140mmol)とテトラヒドロフラン(35mL)を窒素置換したフラスコに入れた。この混合物に0.98Mのメチルマグネシウムブロミド/テトラヒドロフラン溶液(4mL)、および化合物1(1.0g,3.75mmol)を滴下した。室温で30分間攪拌した後、化合物1(17.7g,66.3mmol)をテトラヒドロフラン(70mL)溶液を6時間かけて滴下した。70℃にて16時間攪拌し、0.47Mの化合物2のテトラヒドロフラン溶液(109mL)を得た。
【0037】
○化合物1の化学式
【0038】
【化6】

【0039】
○化合物2の化学式
【0040】
【化7】

【0041】
(実施例1)〔1−(4’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−ドデカン−3,12−ジオールの製造〕
【0042】
化合物3のテトラヒドロフラン溶液に、合成例1で得た化合物2のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、化合物4を製造した。次いで水酸基の保護基の除去を行い化合物5を得た。
【0043】
○化合物3の構造式
【0044】
【化8】

【0045】
すなわち、化合物3(10.0g,45.0mmol)をテトラヒドロフラン(200mL)に溶解した溶液に、窒素雰囲気下、0℃にて0.47Mの化合物2(100mL)を滴下した。同温にて一時間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)を加えた。分取した有機相を飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)で2回洗浄し、次いで合わせた水相を酢酸エチル(100mL)で抽出した。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色中粘度液状の化合物11.8g(62%)を得た。
【0046】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.24-1.77(18H,m), 2.62-2.75(2H, m), 3,36(3H, s), 3.50-3.53(5H, m), 3.61-3.63(1H, m), 3.87(3H, s), 4.62(2H, s), 5.19(2H, s), 6.71-6.75(2H, m), 7.05(1H, d) であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3400, 2920, 1723, 1600, 1517, 1453, 1435, 1400, 1250であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素66.96%、水素9.77%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物4であることを確認した。
【0047】
○化合物4の構造式
【0048】
【化9】

【0049】
化合物4(2.30g,5.57mmol)をテトラヒドロフラン(20mL)に溶解した溶液に、1M塩酸水溶液(6mL)を加えた。室温にて5時間攪拌後、1M水酸化ナトリウム水溶液(6mL)を加えた。反応混合物に酢酸エチル(10mL)および飽和食塩水(10mL)を加え分配した。有機相を分取した後、水相を酢酸エチル(10mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色結晶性の化合物1.51g(84%)を得た。
【0050】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.24-1.77(18H,m), 2.67-2.75(2H, m), 3.59-3.64(3H, m), 3.88(3H, s), 5.47(1H, s), 6.69-6.71(2H, m), 6.83(1H, d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3394, 2931, 1723, 1603, 1517, 1453, 1430, 1368, 1270, 1035であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素70.33%、水素9.94%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物5であることを確認した。
【0051】
○化合物5の構造式
【0052】
【化10】

【0053】
(合成例2)グリニャール試薬のテトラヒドロフラン溶液の製造
合成例1の方法に従い化合物6(5.62g,20.0mmol)から、0.53Mの化合物7のテトラヒドロフラン溶液(31mL)を得た。
【0054】
○化合物6の化学式
【0055】
【化11】

【0056】
○化合物7の化学式
【0057】
【化12】

【0058】
(実施例2)〔1−(4’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−トリデカン−3,13−ジオールの製造〕
実施例1の方法に従い、化合物3のテトラヒドロフラン溶液に、合成例2で得た化合物7のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、化合物8を製造した。次いで水酸基の保護基の除去を行い化合物9を得た。
【0059】
すなわち、化合物3(2.24g,10.0mmol)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解した溶液に、窒素雰囲気下、0℃にて0.53Mの化合物7(19.8mL)を滴下した。同温にて一時間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)を加えた。分取した有機相を飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)で2回洗浄し、合わせた水相を酢酸エチル(25mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色中粘度液状の化合物3.01g(71%)を得た。
【0060】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.24-1.76(20H,m), 2.62-2.77(2H, m), 3,36(3H, s), 3.50-3.53(5H, m), 3.62-3.66(1H, m), 3.87(3H, s), 4.62(2H, s), 5.19(2H, s), 6.71-6.75(2H, m), 7.05(1H, d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3400, 2920, 1723, 1600, 1517, 1453, 1435, 1400であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素67.57%、水素9.92%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物8であることを確認した。
【0061】
○化合物8の構造式
【0062】
【化13】

【0063】
化合物8(3.01g,7.05mmol)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解した溶液に、1M塩酸水溶液(10mL)を加えた。室温にて5時間攪拌後、1M水酸化ナトリウム水溶液(10mL)を加えた。反応混合物に酢酸エチル(25mL)および飽和食塩水(25mL)を加え分配した。有機相を分取した後、水相を酢酸エチル(25mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色結晶性の化合物1.92g(80%)を得た。
【0064】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.24-1.77(20H,m), 2.63-2.73(2H, m), 3.59-3.68(3H, m), 3.88(3H, s), 5.49(1H, s), 6.68-6.71(2H, m), 6.83(1H, d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3394, 2931, 1723, 1603, 1517, 1453, 1430, 1368, 1270, 1035であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素70.97%、水素10.12%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物9であることを確認した。
【0065】
○化合物9の構造式
【0066】
【化14】

【0067】
(合成例3)グリニャール試薬のテトラヒドロフラン溶液の製造
合成例1の方法に従い化合物10(5.62g,20.0mmol)から、0.44Mの化合物11のテトラヒドロフラン溶液(31mL)を得た。
【0068】
○化合物10の化学式
【0069】
【化15】

【0070】
○化合物11の化学式
【0071】
【化16】

【0072】
(実施例3)〔1−(4’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−テトラデカン−3,14−ジオールの製造〕
実施例1の方法に従い、化合物3のテトラヒドロフラン溶液に、合成例3で得た化合物11のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、化合物12を製造した。次いで水酸基の保護基の除去を行い化合物13を得た。
【0073】
すなわち、化合物3(2.24g,10.0mmol)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解した溶液に、窒素雰囲気下、0℃にて0.53Mの化合物11(23.9mL)を滴下した。同温にて一時間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)を加えた。分取した有機相を飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)で2回洗浄し、合わせた水相を酢酸エチル(25mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色中粘度液状の化合物3.47g(79%)を得た。
【0074】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.24-1.76(22H,m), 2.62-2.77(2H, m), 3,36(3H, s), 3.50-3.53(5H, m), 3.62-3.66(1H, m), 3.87(3H, s), 4.62(2H, s), 5.19(2H, s), 6.71-6.75(2H, m), 7.05(1H, d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3400, 2920, 1723, 1600, 1517, 1453, 1435, 1400, 1250であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素68.15%、水素10.07%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物12であることを確認した。
【0075】
○化合物12の構造式
【0076】
【化17】

【0077】
化合物12(3.47g,7.88mmol)をメタノール(20mL)およびクロロホルム(40mL)の混合溶媒に溶解した溶液に、12M塩酸水溶液(1mL)を加えた。室温にて5時間攪拌後、1M水酸化ナトリウム水溶液(12mL)を加えた。溶媒を留去した後、残渣を酢酸エチル(25mL)に希釈し、飽和食塩水(25mL)で洗浄した。有機相を分取した後、水相を酢酸エチル(25mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色結晶性の化合物2.46g(89%)を得た。
【0078】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.24-1.77(22H,m), 2.60-2.73(2H, m), 3.60-3.68(3H, m), 3.87(3H, s), 5.49(1H, s), 6.68-6.71(2H, m), 6.83(1H, d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3394, 2931, 1723, 1603, 1517, 1453, 1430, 1368, 1270, 1035であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素71.55%、水素10.29%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物13であることを確認した。
【0079】
○化合物13の構造式
【0080】
【化18】

【0081】
(合成例4)
フェルラ酸メチルエステルから化合物14を合成した。
すなわち、フェルラ酸メチルエステル(31.6g,150mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(34.0mL,195mmol)をクロロホルム(250mL)に溶解した溶液に、氷冷下95%クロロメチルメチルエーテル(14.4mL,182mmol)を滴下した。室温で18時間攪拌後、さらに60℃で2時間攪拌した。放冷後、蒸留水(100mL)を加えて分配し、有機層を回収し、水層をクロロホルム(50mL)で2回洗浄した。合わせた有機層を濃縮後、残渣をイソプロピルアルコール(15mL)に溶解した。2N水酸化ナトリウム水溶液(80mL)を加えて、30分間攪拌し、エステル基の加水分解を行った。つぎに、氷冷下で2N塩酸(90mL)を加えた。反応混合物をクロロホルム(100mL)で1回抽出し、さらにクロロホルム(50mL)で2回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。
得られた抽出液およびN−ヒドロキシこはく酸イミド(17.3g,150mmol)をテトラヒドロフラン(250mL)に溶解した溶液に、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(32.6g,158mmol)を加えた。室温で2時間攪拌後、蒸留水(5mL)を加え、一夜放置した。生成した不溶物を濾別し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、無色結晶状の化合物41.9g(83%)を得た。
【0082】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、2.85-3.04(8H, m), 3.52(3H, s), 3,87(3H, s), 5.21(2H, s), 6.74-6.78(2H, m), 7.08(1H, d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、 2920, 1740, 1600, 1517, 1453, 1435, 1400, 1250であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素56.97%、水素5.68%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物14であることを確認した。
【0083】
○化合物14の構造式
【0084】
【化19】

【0085】
(合成例5)グリニャール試薬のテトラヒドロフラン溶液の製造
合成例1の方法に従い化合物1(5.62g,20.0mmol)から、0.57Mの化合物2のテトラヒドロフラン溶液(31mL)を得た。
【0086】
(実施例4)〔1−(4’−ヒドロキシ−3’−メトキシフェニル)−ドデカン−12−オール−3−オンの製造〕
化合物14のテトラヒドロフラン溶液に、合成例4で得た化合物2のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、化合物15を製造した。次いで水酸基の保護基の除去を行い化合物16を得た。
【0087】
化合物14(3.37g,10.0mmol)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解した溶液に、窒素雰囲気下、0℃にて0.57Mの化合物2(18.4mL)を滴下した。同温にて1.5時間攪拌後、40℃に昇温しさらに2時間攪拌した。この反応混合物に、飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)を加えた。分取した有機相を飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)で2回洗浄し、次いで合わせた水相を酢酸エチル(25mL)で抽出した。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色中粘度液状の化合物1.28g(31%)を得た。
【0088】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.23-1.60(14H,m), 2.38(2H, t), 2.72(2H, t), 2.85(2H, t), 3.36(3H, s), 3.50-3.52(5H, m), 3.86(3H, s), 4.62(2H, s), 5.19(2H, s), 6.68-6.75(2H, m), 7.05(1H, d) であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3400, 2920, 1723, 1600, 1517, 1453, 1435, 1400, 1250であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素67.29%、水素9.33%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物15であることを確認した。
【0089】
○化合物15の構造式
【0090】
【化20】

【0091】
化合物15(2.30g,5.57mmol)をテトラヒドロフラン(20mL)に溶解した溶液に、1M塩酸水溶液(2mL)を加えた。室温にて5時間攪拌後、1M水酸化ナトリウム水溶液(2mL)を加えた。溶媒を留去した後、残渣を酢酸エチル(25mL)に希釈し、飽和食塩水(25mL)で洗浄した。有機相を分取した後、水相を酢酸エチル(25mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色結晶性の化合物1.51g(84%)を得た。
【0092】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.24-1.56(14H,m), 2.36(2H, t), 2.69(2H, t), 2.86(2H, t), 3.60-3.64(2H, m), 3.87(3H, s), 5.50(1H, s), 6.65-6.70(2H, m), 6.81(1H, d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3415,2920, 1705, 1611, 1520, 1463, 1455, 1365, 1278, 1236, 1151, 1122, 1064, 1028であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素70.77%、水素9.38%であった。
であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物16であることを確認した。
【0093】
○化合物16の構造式
【0094】
【化21】

【0095】
(合成例6)グリニャール試薬のテトラヒドロフラン溶液の製造
合成例1の方法に従い化合物17(5.62g,20.0mmol)から、0.66Mの化合物18のテトラヒドロフラン溶液(31mL)を得た。
【0096】
○化合物17の化学式
【0097】
【化22】

【0098】
○化合物18の化学式
【0099】
【化23】

【0100】
(実施例5)
化合物19のテトラヒドロフラン溶液に、合成例5で得た化合物18のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、化合物20を製造した。次いで水酸基の保護基の除去を行い化合物21を得た。
【0101】
○化合物19の構造式
【0102】
【化24】

【0103】
化合物19(3.05g,10.0mmol)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解した溶液に、窒素雰囲気下、0℃にて0.66Mの化合物18(16.4mL)を滴下した。同温にて一時間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)を加えた。分取した有機相を飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)で2回洗浄し、合わせた水相を酢酸エチル(25mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色中粘度液状の化合物1.25g(25%)を得た。
【0104】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.14-1.62(14H,m), 2.57-2.66(4H, m), 2.86(2H, m), 3.46(2H, t), 3.87(3H, s), 4.50(2H, s), 5.12(2H, s), 6.66-6.80(3H, m), 7.26-7.44(10H, m)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3400, 2920, 1723, 1600, 1517, 1453, 1435, 1400, 1250であった。
さらに、元素分析の結果は、炭素78.85%、水素8.42%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物20であることを確認した。
【0105】
○化合物20の構造式
【0106】
【化25】

【0107】
<参考例1>
実施例1で得られた化合物4、実施例2で得られた化合物9、実施例3で得られた化合物13、および、比較対照としてアルブチン(東京化成工業製)を用いて、L−ドーパを基質としたチロシナーゼ活性阻害試験を行った。
具体的な試験手順は以下のとおりである。
【0108】
(1)リン酸二水素ナトリウム1.000gおよびリン酸水素二ナトリウム1.186gを蒸留水500mlに溶解したリン酸緩衝液1.80ml、L−DOPA32.7mgを蒸留水200mlに溶解した基質液1.00ml、および、検体をジメチルスルホキシドに溶解した試験液0.10mlを混合した。
(2)マッシュルームチロシナーゼ3.0mg(2400ユニット、シグマ社製)を蒸留水7.0mlに溶解した酵素液0.10mlを(1)で調製した溶液に加えて、15秒間攪拌した。得られた溶液を25℃で保持し、1分45秒後および2分45秒間後の475nmでの吸光度を測定した。
(3)上記(1)(2)の試験操作をそれぞれの検体およびブランク試験(ジメチルスルホキシドのみ)について3回行い、得られた数値を下記計算式に代入して、その平均値をチロシナーゼ活性阻害率(%)とした。
チロシナーゼ活性阻害率(%)=[(T1−T2)/T1]×100
T1=検体未添加溶液の2分45秒間後と1分45秒後の吸光度の差
T2=検体を加えた溶液の2分45秒間後と1分45秒後の吸光度の差
【0109】
本発明の化合物およびアルブチンをそれぞれ、酵素反応液中に0.125mg/ml、0.063mg/ml、および0.031mg/ml用いた場合の結果を表1に示した。
【0110】
【表1】

【0111】
試験の結果、本発明の化合物は、既存のチロシナーゼ活性阻害剤であるアルブチン以上の効果を有することがわかった。
【0112】
<参考例2>
実施例4で得られた化合物16、および比較対照としてアルブチン(東京化成工業製)を用いて、L−ドーパを基質としたチロシナーゼ活性阻害試験を行った。試験方法は参考例1に従った。
【0113】
本発明の化合物およびアルブチンをそれぞれ、酵素反応液中に0.125 mg/ml、0.063mg/ml、および0.031mg/ml用いた場合の結果を表2に示した。
【0114】
【表2】

【0115】
試験の結果、本発明の化合物は、既存のチロシナーゼ活性阻害剤であるアルブチン以上の効果を有することがわかった。
【0116】
<参考例3>
実施例1で得られた化合物4、実施例4で得られた化合物16、および、比較対照としてdl−α−トコフェロール(東京化成工業製)を用いて、安定ラジカルであるDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカルの消去試験を行った。
具体的な試験手順は以下のとおりである。
【0117】
100mMトリス−塩酸緩衝液(pH=7.4)80μlと化合物36のエタノール溶液20μl(最終濃度25μg/mL)に800μMのDPPHエタノール溶液100μlを添加し良く攪拌した。これを室温、暗所にて20分間静置した後、540nmの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した(試料溶液の吸光度)。
化合物4、化合物16および公知のラジカル消去剤であるdl−α―トコフェロールについても同様に試験を行った。
対照として100mMトリス−塩酸緩衝液(pH=7.4)80μl、エタノール20μlおよび800μMのDPPHエタノール溶液100μlを用いて上記と同様に操作し、吸光度を測定した(対照溶液の吸光度)。
それぞれ化合物について4回同様の測定を行い、その平均値を以下の式に代入し、DPPHラジカル消去率を算出した。結果を表9に示した。
DPPHラジカル消去率(%)=
{1−(試料溶液の吸光度/対照溶液の吸光度)}×100
【0118】
【表3】

本発明の化合物は、dl−α−トコフェロール以上のラジカル消去活性を有することがわかった。したがって、本発明の化合物は活性酸素、特にヒドロキシラジカルの消去剤として使用できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の芳香族化合物の製造方法は新規であり、ショウガオールやジンゲロールを始めとする、チロシナーゼ阻害剤や抗酸化剤などとして有用な生理活性を有する芳香族化合物を低コストで効率良く製造することが可能となり、医薬品、医薬部外品、化粧品及び食品の分野でその有益性は非常に高い。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[II]で示される化合物と式[III]で示されるグリニャール試薬を反応させ、次いで水酸基の保護基を除去することを特徴とする、下記式[I]で示される芳香族化合物の製造方法。
【化1】

(式中のR1、およびR2は水素原子、低級アルキル基またはフェノール性水酸基の保護基であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Bは−CH(OH)−、または−C(=O)−であり、nは1〜14の整数である。)
【化2】

(式中のR1、およびR2は水素原子、低級アルキル基またはフェノール性水酸基の保護基であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Xは水素原子、または脱離基である。)
【化3】

(式中R3はアルコール性水酸基の保護基であり、nは1〜14の整数である、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。)



【公開番号】特開2007−63165(P2007−63165A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249433(P2005−249433)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】