説明

芳香族化合物の製造方法

【課題】メタン転換率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度(ベンゼンとトルエンとキシレンの合計生成速度)の活性寿命安定性を向上させてベンゼン、トルエン等の有用成分である芳香族化合物の生成量を増大させること。
【解決手段】前記課題を解決するための芳香族化合物の製造方法は、担体であるメタロシリケートにモリブデンと銀を担持してなる触媒に低級炭化水素及び炭酸ガスを反応させて芳香族化合物を生成する。この芳香族化合物の製造方法においては、炭酸ガスの添加量は反応ガス全体に対して0.5〜6%の範囲に設定するとよい。前記モリブデンは前記焼成した後の担持濃度が前記担体に対して2〜12重量%となると共に前記銀はモリブデンとのモル比Ag:Mo=X:1の比率Xが0.01〜0.3となるように担持するとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタンを主成分とする天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートの高度利用に関する。天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートは地球温暖化対策として最も効果的なエネルギー資源と考えられ、その利用技術に関心が高まっている。メタン資源はそのままクリーン性を活かして次世代の新しい有機資源、燃料電池用の水素資源として注目されている。特に本発明はメタンからプラスチック類などの化学製品原料であるベンゼン及びナフタレン類を主成分とする芳香族化合物と高純度の水素ガスを効率的に製造するための触媒化学変換技術及びその触媒製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
メタンからベンゼン等の芳香族化合物と水素とを製造する方法としては触媒の存在下にメタンを反応させる方法が知られている。この際の触媒としてはZSM−5系のゼオライトに担持されたモリブデンが有効とされている(非特許文献1)。しかしながら、これらの触媒を使用した場合でも、炭素の析出が多いことやメタンの転換率が低いという問題を有している。この問題を解決するためにMo(モリブデン)等の触媒材料を多孔質のメタロシロケートに担持した触媒が提案されている(特許文献1、特許文献2等)。
【0003】
特許文献1及び特許文献2は担体である7オングストロームの細孔径を有する多孔質のメタロシリケートに金属成分が担持された触媒を用いることで低級炭化水素が効率的に芳香族化合物化され、これに付随して高純度の水素が得られることが確認されている。前記特許文献によると担体には前記金属成分としてモリブデン、コバルト、鉄等が担持されている。
【非特許文献1】JOURNAL OF CATALYSIS,1997,pp.165,pp.150〜161
【特許文献1】特開平10−272366号公報
【特許文献2】特開平11−60514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタンからベンゼン等の芳香族化合物と水素を製造する方法としては触媒の存在下にメタンを反応させる方法としてZSM−5にモリブデンを担持した触媒が有効とされている。
【0005】
しかしながら、メタン転換率(芳香族化合物と水素の生成に利用されるメタンの利用率)が低い。
【0006】
この問題を改善するために特許文献1や特許文献2のようにモリブデン及びこれに他の第二金属を多孔質のメタロシリケートに担持した触媒が提案されているが、メタン転換率をより一層改善させると共に芳香族化合物の製造効率を高めるために、さらに優れた触媒の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、前記課題を解決するための芳香族化合物の製造方法は、担体であるメタロシリケートにモリブデンと銀を担持してなる触媒に低級炭化水素及び炭酸ガスを反応させて芳香族化合物を生成する。
【0008】
この芳香族化合物の製造方法によれば、メタン転換率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度(ベンゼンとトルエンとキシレンの合計生成速度)の活性寿命安定性が向上する。
【0009】
前記メタロシリケートとしては例えばZSM−5やMCM−22が挙げられる。また、前記モリブデンは前記焼成した後の担持濃度が前記担体に対して2〜12重量%となると共に前記銀はモリブデンとのモル比Ag:Mo=X:1の比率Xが0.01〜0.3となるように担持するとよい。前記活性寿命安定性の向上が確実となる。前記メタロシリケートにモリブデン及び銀を担持した後の焼成温度は400〜700℃の範囲で設定するとよい。触媒の強度及び特性が維持される。
【0010】
前記芳香族化合物の製造方法においては、炭酸ガスの添加量は反応ガス全体に対して0.5〜6%の範囲に設定するとよい。ベンゼン、トルエン等の有用成分である芳香族化合物の生成量が安定する。
【発明の効果】
【0011】
以上の発明によれば、メタン転換率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度(ベンゼンとトルエンとキシレンの合計生成速度)の活性寿命安定性が向上するので、ベンゼン、トルエン等の有用成分である芳香族化合物の生成量が増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明に係る低級炭化水素の芳香族化触媒はモリブデン及びその化合物から選ばれた少なくとも一種以上を触媒材料として含有する。そして、芳香族化合物を製造する際に前記低級炭化水素の芳香族化触媒は低級炭化水素の他に炭酸ガス(二酸化炭素)と反応させる。
【0013】
前記金属成分を担持する担体は実質的に4.5〜6.5オングストローム径の細孔を有する多孔質メタロシリケートを含んでいる。このメタロシリケートには第一金属成分としてモリブデンが担持され、モリブデン以外の第二金属成分として銀が担持される。前記モリブデン成分及び銀成分は酢酸銀または硝酸銀とモリブデン酸アンモニウムとで調製した含浸水溶液に前記メタロシリケートを添加してモリブデン成分と銀成分とをメタロシリケートに含浸させた後に乾燥及び焼成に供すれば前記メタロシリケートに担持される。このように多孔質メタロシリケートにMoC(炭化モリブデン)すなわちモリブデン成分を単独で担持するのではなくモリブデン成分に加えて銀を第二金属成分として担持することにより触媒の安定性が得られる。特に、メタン転換率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度(ベンゼンとトルエンとキシレンの合計生成速度)の活性寿命安定性が向上する。
【0014】
以下の比較例及び実施例を参照しながら発明に係る製造方法に供される低級炭化水素の芳香族化触媒について説明する。
【0015】
1.低級炭化水素の芳香族化触媒(以下、触媒と略称する)の製造
(比較例1)
比較例1の触媒はメタシリケートとしてアンモニウム型ZSM−5(SiO2/Al23=25〜60)が採用され、これにモリブデンのみが担持されたものである。
【0016】
(1)配合
無機成分の配合:ZSM−5(82.5重量%)、粘土(12.5重量%)、ガラス繊維(5重量%)
全体配合:前記無機成分(76.5重量%)、有機バインダー(17.3重量%)、水分(24.3重量%)
(2)成型
前記配合比率で前記無機成分と有機バインダーと水分とを配合し混練手段(ニーダ)によって混合、混練した。次に、この混合体を真空押し出し成型機によって棒状(径5mm×長さ10mm)に成型した。このときの成型時の押し出し圧力は2〜8MPaに設定した。
【0017】
通常炭化水素を改質するために使用する触媒担体は数μmから数百μmの粒径の粒子を用いて流動床触媒として使用している。この場合の触媒担体の製造方法は触媒の担体材料と有機バインダー、無機バインダー(通常は粘土を使用)と水を混合しスラリー状としてスプレードライヤーで造粒成型(成型圧力はない)した後に焼成する。この場合、成型圧力がないため、焼成速度を確保するために焼成助材として加える粘土の添加量が40〜60重量%程度であった。ここでは触媒の成型を真空押出成型機を用いて高圧成型することにより焼成助材として加える粘土等の添加材の添加量を15〜25重量%に低減することができる。そのため触媒活性も向上させることができる。
【0018】
(3)モリブデンの含浸
攪拌されたモリブデン酸アンモニウム水溶液に前記成型工程で得られた成型体を添加してモリブデン成分を前記成型体に含浸させた後に以下の乾燥及び焼成の工程に供した。尚、前記成型体は前記ZSM−5に対するモリブデンの重量比が6重量%となるように添加した。
【0019】
(4)乾燥、焼成
乾燥は成型時に添加した水分を除去するために70℃で12時間乾燥した後に90℃で約36時間乾燥した。焼成は昇温速度及び降温速度ともに90〜100℃/時とした。成型時に添加した有機バインダーが瞬時に燃焼しないように250〜500℃の温度範囲の中に2〜6時間程度の温度保持を2回実施し、バインダーを除去するようにした。昇温速度、降温速度がこれ以上のスピードであり、バインダーを除去するキープ時間を確保しない場合にはバインダーが瞬時に燃焼し、焼成体の強度が低下するためである。焼成温度は550〜800℃の範囲とした。550℃以下では担体の強度低下、800℃以上では特性の低下が起こるためである。尚、ここでは空気中で550℃、5時間焼成した。
【0020】
(5)炭化処理
前記焼成体をCH4とH2の混合ガス(メタン/水素=1/4の混合モル比)を流通下で700℃まで2時間で昇温させ、この状態を3時間維持した。その後、この雰囲気をCH4の反応ガスに切り替え、780℃まで昇温して比較例1に係る触媒を得た。
【0021】
(比較例2)
比較例2の触媒はモリブデンとコバルトとを担持したもので、含浸工程以外は比較例1の触媒の配合、成型、乾燥、焼成及び炭化処理の工程と同じ方法で製造した。
【0022】
含浸工程では酢酸コバルトとモリブデン酸アンモニウムとで調製した含浸水溶液を攪拌しながら前記成形工程で得た成形体を添加してモリブデン成分とコバルト成分とを前記成型体に含浸させた後に乾燥、蒸発乾固させた。そして、これを空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンとコバルトとを担持させた触媒を得た。尚、モリブデンの担持量はZSM−5に対して6重量%となるように、コバルトの担持量はモリブデンとのモル比でコバルト:モリブデン=0.3:1.0となるように設定した。
【0023】
(比較例3)
比較例3の触媒はモリブデンと鉄とを担持したもので、含浸工程以外は比較例1の触媒の配合、成型、乾燥、焼成及び炭化処理の工程と同じ方法で製造した。
【0024】
含浸工程では酢酸鉄とモリブデン酸アンモニウムとで調製した含浸水溶液を攪拌しながら前記成形工程で得た成形体を添加してモリブデン成分と鉄成分とを前記成型体に含浸させた後に乾燥、蒸発乾固させた。そして、これを空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと鉄とを担持させた触媒を得た。尚、モリブデンの担持量はZSM−5に対して6重量%となるように、鉄の担持量はモリブデンとのモル比で鉄:モリブデン=0.3:1.0となるように設定した。
【0025】
(実施例1)
実施例1の触媒はモリブデンと銀とを担持したもので、含浸工程以外は比較例1の触媒の配合、成型、乾燥、焼成及び炭化処理の工程と同じ方法で製造した。
【0026】
含浸工程では酢酸銀とモリブデン酸アンモニウムとで調製した含浸水溶液を攪拌しながら前記成形工程で得た成形体を添加してモリブデン成分と銀成分とを前記成型体に含浸させた後に乾燥、蒸発乾固させた。そして、これを空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銀とを担持させた触媒を得た。尚、モリブデンの担持量はZSM−5に対して6重量%となるように、銀の担持量はモリブデンとのモル比で銀:モリブデン=0.3:1.0となるように設定した。
【0027】
(実施例2)
実施例2の触媒は銀:モリブデン=0.6:1.0のモル比で銀とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0028】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銀とモリブデン酸アンモニウムとで調製した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銀成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銀とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銀の担持量はモリブデンとのモル比で銀:モリブデン=0.6:1.0となるように設定した。
【0029】
(実施例3)
実施例3の触媒は銀:モリブデン=0.8:1.0のモル比で銀とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0030】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銀とモリブデン酸アンモニウムとで調製した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銀成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銀とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銀の担持量はモリブデンとのモル比で銀:モリブデン=0.8:1.0となるように設定した。
【0031】
(実施例4)
実施例4の触媒は銀:モリブデン=0.1:1.0のモル比で銀とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0032】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銀とモリブデン酸アンモニウムとで調製した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銀成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銀とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銀の担持量はモリブデンとのモル比で銀:モリブデン=0.1:1.0となるように設定した。
【0033】
(実施例5)
実施例5の触媒は銀:モリブデン=0.3:1.0のモル比で銀とモリブデンを担持したもので、成型体のサイズと含浸工程以外は比較例1の触媒の製造工程(成型、乾燥、焼成及び炭化処理)と同じ方法で製造した。
【0034】
成型工程では比較例1に係る無機成分と有機バインダーと水分との混合体を2〜8MPaの押し出し圧力で真空押し出し成型機によって棒状(径2.4mm×長さ5mm)に成型した。含浸工程では酢酸銀とモリブデン酸アンモニウムとで調製した含浸水溶液を攪拌し、この攪拌された状態の含浸水溶液に前記成型工程を経たZSM−5を含む成型体を添加して、モリブデン成分と銀成分とを前記成型体に含浸させた。その後、これを乾燥させた後に空気中で550℃、5時間焼成してモリブデンと銀とを担持させたZSM−5担体を得た。尚、前記含浸水溶液の調製にあたり、モリブデンの担持量は焼成後の触媒全体量に対して6重量%となるように、銀の担持量はモリブデンとのモル比で銀:モリブデン=0.3:1.0となるように設定した。
【0035】
2.比較例及び実施例の触媒の評価
比較例及び実施例の触媒の評価法について述べる。図9に示したように固定床流通式反応装置1のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管(内径18mm)に評価対象の触媒を14g充填(ゼオライト率82.50%)した。そして、表1に示した条件に基づき前記反応管に反応ガスを供給した。すなわち、反応空間速度=3000ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度780℃、反応時間24時間、反応圧力0.3MPaの条件で、触媒と反応ガス(100メタン(CH4)+3炭酸ガス(CO2))とを反応させた。この際、生成物の分析を行い、メタン転換率、ベンゼン生成速度、ナフタレン生成速度及びBTX生成速度を経時的に調べた。前記生成物の分析はTCD−GC、FID−GCを用いて行った。
【0036】
メタン転換率、ベンゼン生成速度,ナフタレン生成速度及びBTX生成速度は次の通り定義される。
「メタン転換率(%)」=〔(「原料メタン流速」−「未反応のメタン流速」)/「原料メタン流速」〕×100
「ベンゼン生成速度」=「触媒1gあたり、1秒間に生成したベンゼンのnmol数」。
「ナフタレン生成速度」=「触媒1gあたり、1秒間に生成したナフタレンのnmol数」。
「BTX生成速度」=「触媒1gあたり、1秒間に生成したベンゼン、トルエン及びキシレンの合計nmol数」。
【0037】
【表1】

【0038】
図1は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のメタン転換率の経時的変化を示す。この特性図に示されたメタン転換率の経時的変化から明らかなように実施例1の触媒(モリブデンと銀とを担持した触媒(Ag/Mo))によれば従来技術に係る比較例1の触媒(モリブデンのみを担持した触媒(Mo))比較例2の触媒(モリブデンとコバルトとを担持した触媒(Co/Mo))、比較例3の触媒(モリブデンと鉄とを担持した触媒(Fe/Mo))と比較してメタン転換率の活性寿命の安定性が向上している。
【0039】
図2は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例1の触媒(Ag/Mo)によれば従来技術に係る比較例1の触媒(Mo)、比較例2の触媒(Co/Mo)、比較例3の触媒(Fe/Mo)と比較してベンゼン生成速度の活性寿命の安定性が向上している。
【0040】
図3は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のナフタレン生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例1の触媒(Ag/Mo)によれば従来技術に係る比較例1の触媒(Mo)、比較例2の触媒(Co/Mo)、比較例3の触媒(Fe/Mo)と比較してナフタレン生成速度の活性寿命の安定性が向上している。
【0041】
図4は比較例1〜比較例3及び実施例1に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のBTX生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例1の触媒(Ag/Mo)によれば従来技術に係る比較例1の触媒(Mo)、比較例2の触媒(Co/Mo)、比較例3の触媒(Fe/Mo)と比較してBTX生成速度の活性寿命の安定性が向上している。
【0042】
表2は前記評価法に基づき実施例2〜実施例5に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合の反応時間3時間から24時間後のメタン転換率、ベンゼン生成速度、BTX生成速度の変化率の一覧である。特に実施例4及び実施例5に係る触媒はメタン転換率、ベンゼン生成速度、BTX生成速度の変化率の観点からも実施例2及び実施例3に係る触媒よりも有効であることが確認できる。
【0043】
【表2】

【0044】
図5は実施例4及び実施例5に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のメタン転換率の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例4及び実施例5に係る触媒によればメタン転換率の活性寿命の安定性が向上している。
【0045】
図6は実施例4及び実施例5に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例4及び実施例5に係る触媒によればベンゼン生成速度の活性寿命の安定性が向上している。
【0046】
図7は実施例4及び実施例5に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のナフタレン生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例4及び実施例5に係る触媒によればナフタレン生成速度の活性寿命の安定性が向上している。
【0047】
図8は実施例4及び実施例5に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のBTX生成速度の経時的変化を示す。この特性図から明らかなように実施例4及び実施例5に係る触媒によればBTX生成速度の活性寿命の安定性が向上している。
【0048】
以上の実施例の結果から明らかなようにメタロシリケートにモリブデンの他に第二金属成分として銀を担持して低級炭化水素の芳香族化触媒を成し、そしてこの触媒を低級炭化水素及び炭酸ガスと反応させることでメタン転換率、ベンゼン生成速度及びナフタレン生成速度の活性寿命安定性が向上することが示された。さらに、ベンゼン、トルエン等の有用成分であるBTX生成速度が安定することが示された。特に銀がモリブデンとのモル比Ag:Mo=X:1の比率Xが0.01〜0.3の範囲であると、メタン転換率がより一層安定し、触媒の活性寿命安定性が確実に向上することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】比較例1(Mo単一担時)、比較例2(Co/Mo同時担時)、比較例3(Fe/Mo同時担時)、実施例1(Ag/Mo同時担時)に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のメタン転換率の経時的変化。
【図2】比較例1(Mo単一担時)、比較例2(Co/Mo同時担時)、比較例3(Fe/Mo同時担時)、実施例1(Ag/Mo同時担時)に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化。
【図3】比較例1(Mo単一担時)、比較例2(Co/Mo同時担時)、比較例3(Fe/Mo同時担時)、実施例1(Ag/Mo同時担時)に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のナフタレン生成速度の経時的変化。
【図4】比較例1(Mo単一担時)、比較例2(Co/Mo同時担時)、比較例3(Fe/Mo同時担時)、実施例1(Ag/Mo同時担時)に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のBTX生成速度の経時的変化。
【図5】実施例4(AgとMoのモル比Ag/Mo=0.1)及び実施例5(AgとMoのモル比Ag/Mo=0.3)に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のメタン転換率の経時的変化。
【図6】実施例4(AgとMoのモル比Ag/Mo=0.1)及び実施例5(AgとMoのモル比Ag/Mo=0.3)に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化。
【図7】実施例4(AgとMoのモル比Ag/Mo=0.1)及び実施例5(AgとMoのモル比Ag/Mo=0.3)に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のナフタレン生成速度の経時的変化。
【図8】実施例4(AgとMoのモル比Ag/Mo=0.1)及び実施例5(AgとMoのモル比Ag/Mo=0.3)に係る触媒の各々をメタンガス及び炭酸ガスと反応させた場合のBTX生成速度の経時的変化。
【図9】低級炭化水素の芳香族化反応に用いた固定床流通式反応装置の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体であるメタロシリケートにモリブデンと銀を担持してなる触媒に低級炭化水素及び炭酸ガスを反応させて芳香族化合物を生成すること
を特徴とする芳香族化合物の製造方法。
【請求項2】
前記炭酸ガスの添加量は反応ガス全体に対して0.5〜6%の範囲であること
を特徴とする請求項1に記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項3】
前記メタロシリケートはZSM−5またはMCM−22であること
を特徴とする請求項1または2に記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項4】
前記モリブデンは前記焼成した後の担持濃度が前記担体に対して2〜12重量%となると共に前記銀はモリブデンとのモル比Ag:Mo=X:1の比率Xが0.01〜0.3となるように担持すること
を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項5】
前記メタロシリケートにモリブデン及び銀を担持した後の焼成温度は400〜700℃であること
を特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の芳香族化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−29771(P2009−29771A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7897(P2008−7897)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】